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ランマーク皮下注120mg、プラリア皮下注60mgシリンジ(いずれも一般名:デノスマブ)により、ビスフォスフォネート系製剤においても発現が確認されている顎骨壊死があらわれることがあります。先生方におかれましては、ランマーク又はプラリア投与中の患者に歯科治療が必要になった際には、下記を参考にご対応くださいますよう、お願い申し上げます。
~顎骨壊死の発現を防止するために~
米田 俊之 先生大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座 生化学教室 特任教授
浦出 雅裕 先生兵庫医科大学 名誉教授
監 修
適正使用のお願い
侵襲的な歯科治療の実施
※治療継続のリスクとベネフィットについては 歯科医・口腔外科医と処方医が考慮し判断する
非侵襲的な歯科治療の実施
患者に対しては、口腔内に異常を感じた場合、すみやかに受診するようにご説明ください口腔内を清潔に保つようにご指導ください定期的に歯科検査を受けるようにご指導ください
侵襲的な歯科治療の実施について、歯科医・口腔外科医と処方医及び患者と相談してください
【以下の問題が生じている場合】
う蝕歯や動揺の強い歯牙による激しい痛み摂食困難 など
*ランマーク又はプラリア投与の有無を患者にご確認ください
を投与中の患者*で歯科治療が必要な場合
口腔内診査・口腔内清掃
原則として、非侵襲的な歯科治療の実施を検討してください
ランマークプラリア
ランマーク及びプラリアにおける顎骨壊死について
顎骨壊死発現の病態生理は明らかではありませんが、機序に関する仮説のひとつとして、骨代謝の抑制が考えられています。ランマーク及びプラリアは、破骨細胞の形成、機能、生存を阻害することによって骨代謝を抑制するため、顎骨壊死の発現リスクを上昇させる可能性があります。これまで報告されている顎骨壊死の多くは、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科治療や局所感染に関連して発現しています。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科治療の既往等が知られています。
顎骨壊死の発現状況
ランマーク及びプラリアの有効成分であるデノスマブは、ビスフォスフォネート系製剤とは異なる作用機序で骨吸収抑制作用をもたらします。デノスマブは、破骨細胞の形成、機能、生存に必須のメディエーターであるRANKL*を特異的に阻害し、破骨細胞による骨吸収を抑制する抗体製剤です。
*RANKL : receptor activator for nuclear factor-κB ligand
デノスマブの作用
ランマークの第Ⅲ相臨床試験[骨転移を有する進行乳癌患者対象試験(日本が参加した国際共同試験)、骨転移を有するホルモン不応性(去勢抵抗性)前立腺癌患者対象試験(外国臨床試験)及び多発性骨髄腫又は骨転移を有する進行 固形癌(乳癌及び前立腺癌を除く)患者対象試験(外国臨床試験)]において、外部の独立判定委員会による標準的な基準に基づく盲検下での評価で顎骨壊死と判定された事象の発現率は1.8%(52/2,841例)でした。(承認時)
ランマークの第Ⅲ相臨床試験における顎骨壊死の発現状況
プラリアの骨粗鬆症患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験において、歯科・口腔外科領域の医学専門家による中央判定で顎骨壊死と判定された事象の発現率は0.1%(1/881例)でした。(承認時)
また、国内第Ⅱ相臨床試験では、医学専門家による中央判定は行われていませんが、顎骨壊死の疑いのある事象は認められませんでした。
プラリアの国内第Ⅲ相臨床試験における顎骨壊死の発現状況
3試験合計
1.8%(52/2,841例)
1.1%(10/878例)
ホルモン不応性前立腺癌患者対象試験
多発性骨髄腫又は進行固形癌患者対象試験
2.3%(22/943例)
進行乳癌患者対象試験
2.0%(20/1,020例)
発現率(顎骨壊死と判定された事象/総症例)
第Ⅲ相臨床試験 顎骨壊死と判定された事象の発現率
進行乳癌患者対象試験
1.4%(1/69例)
発現率(顎骨壊死と判定された事象/総症例)
第Ⅲ相臨床試験のうちの日本人患者 顎骨壊死と判定された事象の発現率
試験合計
0.1%(1/881例)
発現率(顎骨壊死と判定された事象/総症例)
国内第Ⅲ相臨床試験 顎骨壊死と判定された事象の発現率
承認時評価資料(臨床的安全性の概要)
承認時評価資料(国内第Ⅲ相臨床試験副作用発現状況)
ランマーク又はプラリアによる治療を受けている患者が、歯科又は口腔外科を受診する際には、以下のカードを提示するように処方医が指導しています。 いずれも表面に歯科・口腔外科の先生方へのお願い事項を記載しています。
(完成図)
Urade M, et al.: J Oral Maxillofac Surg. 69(11), e364-e371, 2011Yoneda T, et al.:J Bone Miner Metab. 28(4), 365-383, 2010 一部改変
(表) (裏)
歯科・口腔外科受診時に患者が提示するカード
顎骨壊死の正確な発生頻度は不明ですが、注射用ビスフォスフォネート(BP)製剤投与患者におけるBRONJ発生は、経口BP製剤投与患者におけるBRONJ発生にくらべてその頻度が高いことが欧米の調査報告により知られています。わが国においては、欧米に比較して、経口BP製剤投与患者におけるBRONJ発生報告の比率が高いようです。BRONJの臨床症状を表に示します。これらの症状の中で、下口唇を含むオトガイ部の知覚異常(Vincent症状)は、骨露出よりも前に見られるBRONJの予兆症状であるとされています。
62歳、BRONJ患者:口腔内に骨露出を認め(図1)、X線写真 では骨溶解像と遊離腐骨を認める(図2)。
顎骨壊死の臨床的特徴について
骨露出/骨壊死 疼痛 腫脹オトガイ部の知覚異常(Vincent症状)排膿 潰瘍 口腔内瘻孔や皮膚瘻孔歯の動揺 深い歯周ポケットX線写真:無変化~骨溶解像や骨硬化像
ランマーク又はプラリアで治療を受ける患者向けカード(原寸大)
図1表 BRONJの臨床症状 図2
参 考
※ここでは、ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw;BRONJ)を記載しています。
A5062013年6月印刷
RMK021ホRMK1L00805-0PI
2013年6月印刷PRL1L00800-0PI