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À la carte samco NOW vol.89 / 2015. APR. 5 1 昔ながらの老舗の佇まいで歴史ある姉小路通でも 一際目を引く御菓子司「亀末廣」。その暖簾を潜り、 代表銘菓「京のよすが」をはじめ京の風雅の心に彩 られた京菓子へのこだわり、先代から守り継ぐ商 いの教えなどをお訊きしました。 お客様の心と向き合う商いを大切に 歴史を刻む店構えを今日に受け継ぎ、風 格に満ちた佇まいで通りを行き交う人々の 心を捉える御菓子司「亀末廣」。初代亀屋源 助が京の地で創業したのは江戸時代の文 化元(1804)年でした。以来、極みの京菓子 を求めて吟味を重ね、やがて御所から御用 達を拝命し、徳川家の宿館であった二条城 にも銘菓を納めるようになります。大きく掲 げられた看板の額に配された木型も和菓子 の老舗の趣を際立たせています。特別注文 の場合、木型師が新たに専用の木型を作る のですが、その多くは一度使えば用済みと なるために、これを転用したそうです。麗ら かな春光に映える「寿恵飛呂」と染め上げら れた暖簾にも往時の風情を感じます。 「亀末廣」には先代から守り継ぐ家訓があ ります。「売って喜 ぶよりも、買って喜んでい ただく」というものです。「一人ひとりのお客様 との出会いと心のふれあいを大切にして来 ました。お電話やファックスでご注文があれ ば、当店からお送りするということはしていま すが、あくまでも店頭での販売が原則です。 百貨店やネットなどでの販売はしておりませ ん。お客様の嬉しげに 輝く表情が私どもの何 よりの幸 せです」と、7 代当主である父君の 下で商いを手伝う吉田 かな女さんはたおやか に微笑みます。 風雅の心が映える銘菓「京のよすが」 京菓子ならではの風雅な彩りと姿形で「亀 末廣」の代表銘菓として名高いのが「京のよ すが」です。四畳半の和室に見立てた秋田杉 の箱に趣向を凝らして極上の干菓子や有平 糖、落雁、半生菓子を詰め合わせたもので、 季節の煌めきを凝縮した一幅の名画のよう です。ご贔屓のお客様のご期待にお応えす るために、素材も極上のものを選りすぐって 用いています。小豆は丹波の大納言小豆、お 砂糖は和三盆といった具合です。 「京のよすが」の他にも「亀末廣」では数多 くの伝統の銘菓を愛でることができます。た とえば、戦 時 下 の 京 都で「和 菓 子 特 殊 銘 柄 18品」に選出された「竹裡」もその一つです。 上質の新丹波栗が入手できる秋季に限定販 売される逸品で、心待ちにされている常連の お客様も多数おられるとか。「これからも季節 の味わいを大切に、京の風雅を守り継ぎ、昔 ながらの店構えも継承できればと願っていま す」。その言葉に御菓子司の老舗ならではの 深き想いを垣間見た気がしました。 す え ひ ろ ちくり 京のよすが 御菓子司「亀末廣」 京都市中京区姉小路通烏丸東入ル TEL 075-221-5110 営業時間 8:30~18:00 ※年末のみ要予約 定 休 日 日曜・祝祭日 大納言 厳選された大納言 小豆と和三盆を使 い、シンプルなが ら素材の美味しさ が際立つ。 12 月~3月の 期間限定販売

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À la carte

samco NOW vol.89 / 2015. APR. 5

1昔ながらの老舗の佇まいで歴史ある姉小路通でも

一際目を引く御菓子司「亀末廣」。その暖簾を潜り、

代表銘菓「京のよすが」をはじめ京の風雅の心に彩

られた京菓子へのこだわり、先代から守り継ぐ商

いの教えなどをお訊きしました。

お客様の心と向き合う商いを大切に

 歴史を刻む店構えを今日に受け継ぎ、風格に満ちた佇まいで通りを行き交う人々の心を捉える御菓子司「亀末廣」。初代亀屋源助が京の地で創業したのは江戸時代の文化元(1804)年でした。以来、極みの京菓子を求めて吟味を重ね、やがて御所から御用達を拝命し、徳川家の宿館であった二条城にも銘菓を納めるようになります。大きく掲げられた看板の額に配された木型も和菓子の老舗の趣を際立たせています。特別注文の場合、木型師が新たに専用の木型を作るのですが、その多くは一度使えば用済みとなるために、これを転用したそうです。麗らかな春光に映える「寿恵飛呂」と染め上げられた暖簾にも往時の風情を感じます。 「亀末廣」には先代から守り継ぐ家訓があります。「売って喜ぶよりも、買って喜んでいただく」というものです。「一人ひとりのお客様との出会いと心のふれあいを大切にして来ました。お電話やファックスでご注文があれば、当店からお送りするということはしていますが、あくまでも店頭での販売が原則です。百貨店やネットなどでの販売はしておりません。お客様の嬉しげに輝く表情が私どもの何よりの幸せです」と、7代当主である父君の下で商いを手伝う吉田かな女さんはたおやかに微笑みます。

風雅の心が映える銘菓「京のよすが」

 京菓子ならではの風雅な彩りと姿形で「亀末廣」の代表銘菓として名高いのが「京のよすが」です。四畳半の和室に見立てた秋田杉の箱に趣向を凝らして極上の干菓子や有平糖、落雁、半生菓子を詰め合わせたもので、季節の煌めきを凝縮した一幅の名画のようです。ご贔屓のお客様のご期待にお応えするために、素材も極上のものを選りすぐって用いています。小豆は丹波の大納言小豆、お砂糖は和三盆といった具合です。 「京のよすが」の他にも「亀末廣」では数多くの伝統の銘菓を愛でることができます。たとえば、戦時下の京都で「和菓子特殊銘柄18品」に選出された「竹裡」もその一つです。上質の新丹波栗が入手できる秋季に限定販売される逸品で、心待ちにされている常連のお客様も多数おられるとか。「これからも季節の味わいを大切に、京の風雅を守り継ぎ、昔ながらの店構えも継承できればと願っています」。その言葉に御菓子司の老舗ならではの深き想いを垣間見た気がしました。

す え ひ ろ

ち くり

京のよすが

御菓子司「亀末廣」京都市中京区姉小路通烏丸東入ルTEL 075-221-5110営業時間 8:30~18:00 ※年末のみ要予約定 休 日 日曜・祝祭日

大納言厳選された大納言小豆と和三盆を使い、シンプルながら素材の美味しさが際立つ。※12月~3月の 期間限定販売