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LVDS(低電圧差動信号)回路のEMC対策
TDK EMC Technology 実践編
TDK株式会社 マグネティクスビジネスグループ 友成 寿緒
76
LVDS(Low Voltage Differential Signaling)は最もポピュ
ラーな差動伝送システムといえ、その汎用性の高さから高速伝送を
必要とする多くの機器で使用されております。本誌の別の章で述べ
られているUSB2.0やDVI、HDMI、DisplayPortなどが機器と機
器を結ぶ外部インタフェースであるのに対して、LVDSは機器内部
において基板と基板を結ぶ内部インタフェースとして多くの機器に
おいて使用されています。用途が多岐に渡りさまざまな機器で使用
されているため、ここではTV・モニタなどのディスプレイを例に
LVDSで起こりうるEMCの問題とその解決方法について説明しま
す。
図1はディスプレイにおけるメイン基板とパネルを接続する
LVDSの構成です。一般的にLVDS回路はクロックとデータライン
で構成されており、
LINK=Clock×1 +Data×5
で構成されます。
1つのDataラインの伝送レートはクロック周波数を7逓倍した数
字となります。
例えば、Clock=74MHzの場合
データライン1本あたり518Mbpsとなり、基本周波数は259MHzと
なります。
最近ではTVの高解像度化に伴い、1 LINKでは伝送容量が足りな
くなり、LINKを増やし2 LINKで伝送するケースも見られます。
この場合、Clock ×1 +Data ×10の構成となり、ライン数は倍近
くとなります。
LVDSの場合、差動ライン間では100Ωで終端されており、差動
信号に対してはインピーダンス整合されておりますが、同相成分に
対しては開放に近い状態となっているため、同相成分は端部にて反
射されてしまいます。反射された同相成分は基板間を結ぶケーブル
を伝播するため、不要輻射の要因の一つとなる可能性があります。
同相成分の除去はノイズ対策の基本ではありますが、LVDSではこ
の同相成分の影響が大きいため、特に考慮しなければなりません。
従って、同相成分が発生する場所・原因を理解することがLVDSの
ノイズ対策を行う上で重要となります。同相成分が発生する可能性
のあるものとして物理層を構成する基板とケーブルが挙げられます
(図2)。そこで基板とケーブルにおける同相成分発生要因を以下に
記します。
1 はじめに
2 LVDSにおけるEMC問題
図1 LVDSの構成例
Clock
Data1
Data2
Data3
Data4
Data5
LVDS TX LVDS RX
メイン基板側
DisplayのLVDS伝送では1 LINKあたりClock×1、Data×6 の構成
パネル側
PLL PLL
GraphicController
TrimingController
図2 輻射ノイズの原因となる同相成分の発生要因a)ドライバ出力部における 差動信号の非対称性
b)パターン配線における非対称性
c)基材の材料ばらつき
d)ケーブルの非対称性によって差動成分が同相成分に変換
e)GNDラインに基板GND層のノイズが伝播
ドライバ ドライバ
78
図5はTDKのLVDS向けコモンモードフィルタです。2012サイズ
であれば、100MHzにおけるインピーダンスが1000Ωの製品まで提
供可能です。1210サイズでは400Ωが提供できる最大インピーダン
スとなります。図にあるTCM-LシリーズはLVDS向けに特化して
開発した製品でその特長については後述いたします。
上記電気的特性以外に、形状も重要な要素の一つとなります。
LVDSラインはClockラインを含めて5本~ 11本の差動ラインとな
り、それに伴いフィルタも相当数必要となるため、小型であること
が必要条件となります。TDKは単品では業界最小形状である0605
形状、アレイ品では1608形状までをライナップしておりますのでご
要求に応じた提案が可能です。
ここまでコモンモードフィルタの特長とTDK-LVDS向けコモン
モードフィルタについて紹介してきましたが、その効果について実
際のセット評価結果を用いて結果を述べます。
図6はあるPCでの波形測定結果です。CLOCKが65MHzであるた
めDataレートは455Mbpsとなります。コモンモードフィルタを挿
入しても波形品質に影響を与えていないことがわかります。図7は
本PCを使用して輻射ノイズ測定を行った結果です。ノイズのピー
ク周波数である455MHzにおいてフィルタの効果がはっきりと表れ
ていることがわかります。
図5 TDK-コモンモードフィルタの形状別ラインナップ
同相成分除去のため、コモンモードインピーダンスは高ければ高いほど効果的です。各形状において最大インピーダンスの製品を推奨します。LシリーズはLVDS用に開発された製品です。後述するようにロングケーブルの時に効果を発揮します。
Size
Common mode impedance│Z│
12101005
20101608
100Ω
Array
Single 1210L
1608L 2010L
L series 標準CMFの推奨品
2012
1000Ω
0605 1005L
図6 Without filter
CLOCK(65MHz) DATA (227.5MHz)
200mV/DIV 5ns/DIV 200mV/DIV 1ns/DIV 200mV/DIV 500ps/DIV
200mV/DIV 5ns/DIV 200mV/DIV 1ns/DIV 200mV/DIV 500ps/DIV
No damage for signal integrity with TCM2010With TCM2010-201-4P
図7 CMFの輻射ノイズ抑制効果事例 (コモンモードインピーダンス200Ω品使用による)
10 100 1000 10000
70
0102030405060
(dBμV/m)
Frequency(MHz)
10 100 1000 10000
70
0102030405060
(dBμV/m)
Frequency(MHz)
Horizontal
FCC-B(3m)
FCC-B(3m)
455MHz
455MHz
41.0dB53.5dB
Vertical
ThroughTCM2010-201
ThroughTCM2010-201
40.5dB52.6dB
ノートパソコンのメイン基板とディスプレイ間のLVDSに対するCMFの輻射ノイズ評価結果。フィルタによって最大12dB[455MHz]のノイズ抑制効果を確認。使用したフィルタは、コモンモードインピーダンス200Ωの製品。
77
●基板 a) LVDSドライバの出力部におけるS+/S-の位相ズレ
b) 基板材料(誘電率)バラツキ
c) 配線のアンバランス性
などが原因として考えられます。
●ケーブル LVDSではHDMI、DVIのように規格で定められたケーブル仕様
がないためFPC、ツイナックスケーブル、ツイストペアケーブル
など、さまざまなケーブルが使用されております。種類によって伝
送特性が異なるため波形品質もケーブルよって差が出てきます。
しかしながら輻射ノイズの要因は共通していると考えます(ハー
ネスとプラグの接続・GNDの処理方法なども輻射ノイズに影響す
るためノイズ対策の重要な要因ではありますが、ケーブルの種類や
ケーブルメーカによっても異なるため、ここでは一般的要因として
挙げておりません)。
ケーブルからの輻射ノイズの要因は以下のように考えられます。
d) 差動ペアの+と-ラインのアンバランス性や、+ラインと-ラ
インの電磁的結合が弱いことによって、差動信号が同相成分
に変換される
e) 基板のGNDノイズがケーブルのシールド被覆部を伝播し、
ケーブルをアンテナとすることによってノイズ源となる
ことなどが考えられます。ケーブルが輻射ノイズの主要因の場合、
基板側のノイズ対策では効果が限定的となるため、ケーブル選定に
は注意が必要となります。
基板上の同相ノイズ発生要因a)、b)、c)に対して有効なのが
EMC対策部品のひとつであるコモンモードフィルタです(図3)。
TDKでもご要求に応じて提案できるようさまざまなコモンモー
ドフィルタをラインナップしております。高速差動インタフェース
のEMC対策では部品選択に注意が必要です。コモンモードフィル
タに要求される条件は
1.差動信号を減衰させない
2.同相除去比が高い
の2つです。
1.はケーブル長・種類がパネルのサイズによって変わるため、
ケーブル長に比例して損失が大きくなっても、信号品質を確保でき
るようフィルタが信号に対して影響を与えないようにするための条
件です。
2.はLVDSのクロック信号は解像度に応じて変わるため、低解
像度時に想定される数十MHz帯のノイズも抑制できるよう高い同
相除去比が必要となります。
上記2項目につながるコモンモードフィルタのパラメータは次の
ようになります。
1→差動特性インピーダンス(LVDSの特性インピーダンスは100Ω)
2→コモンモードインピーダンス
2は弊社カタログにて見ることができます(図4)。
1は弊社カタログでは提供していないパラメータとなるため、個
別に問い合わせ頂く必要があるのですが、TDKのコモンモードフ
ィルタは差動特性インピーダンスを考慮して開発されているため、
推奨部品による信号品質劣化はありません。
3 コモンモードフィルタの有効活用
図3 コモンモードフィルタ選択の注意条件 フィルタのパラメータ
・差動信号を減衰させない
・高同相除去比
差動特性インピーダンス
コモンモードインピーダンス
図4 コモンモードフィルタの周波数特性
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)
10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
コモンモードインピーダンス
測定回路
差動特性インピーダンス
78
図5はTDKのLVDS向けコモンモードフィルタです。2012サイズ
であれば、100MHzにおけるインピーダンスが1000Ωの製品まで提
供可能です。1210サイズでは400Ωが提供できる最大インピーダン
スとなります。図にあるTCM-LシリーズはLVDS向けに特化して
開発した製品でその特長については後述いたします。
上記電気的特性以外に、形状も重要な要素の一つとなります。
LVDSラインはClockラインを含めて5本~ 11本の差動ラインとな
り、それに伴いフィルタも相当数必要となるため、小型であること
が必要条件となります。TDKは単品では業界最小形状である0605
形状、アレイ品では1608形状までをライナップしておりますのでご
要求に応じた提案が可能です。
ここまでコモンモードフィルタの特長とTDK-LVDS向けコモン
モードフィルタについて紹介してきましたが、その効果について実
際のセット評価結果を用いて結果を述べます。
図6はあるPCでの波形測定結果です。CLOCKが65MHzであるた
めDataレートは455Mbpsとなります。コモンモードフィルタを挿
入しても波形品質に影響を与えていないことがわかります。図7は
本PCを使用して輻射ノイズ測定を行った結果です。ノイズのピー
ク周波数である455MHzにおいてフィルタの効果がはっきりと表れ
ていることがわかります。
図5 TDK-コモンモードフィルタの形状別ラインナップ
同相成分除去のため、コモンモードインピーダンスは高ければ高いほど効果的です。各形状において最大インピーダンスの製品を推奨します。LシリーズはLVDS用に開発された製品です。後述するようにロングケーブルの時に効果を発揮します。
Size
Common mode impedance│Z│
12101005
20101608
100Ω
Array
Single 1210L
1608L 2010L
L series 標準CMFの推奨品
2012
1000Ω
0605 1005L
図6 Without filter
CLOCK(65MHz) DATA (227.5MHz)
200mV/DIV 5ns/DIV 200mV/DIV 1ns/DIV 200mV/DIV 500ps/DIV
200mV/DIV 5ns/DIV 200mV/DIV 1ns/DIV 200mV/DIV 500ps/DIV
No damage for signal integrity with TCM2010With TCM2010-201-4P
図7 CMFの輻射ノイズ抑制効果事例 (コモンモードインピーダンス200Ω品使用による)
10 100 1000 10000
70
0102030405060
(dBμV/m)
Frequency(MHz)
10 100 1000 10000
70
0102030405060
(dBμV/m)
Frequency(MHz)
Horizontal
FCC-B(3m)
FCC-B(3m)
455MHz
455MHz
41.0dB53.5dB
Vertical
ThroughTCM2010-201
ThroughTCM2010-201
40.5dB52.6dB
ノートパソコンのメイン基板とディスプレイ間のLVDSに対するCMFの輻射ノイズ評価結果。フィルタによって最大12dB[455MHz]のノイズ抑制効果を確認。使用したフィルタは、コモンモードインピーダンス200Ωの製品。
77
●基板 a) LVDSドライバの出力部におけるS+/S-の位相ズレ
b) 基板材料(誘電率)バラツキ
c) 配線のアンバランス性
などが原因として考えられます。
●ケーブル LVDSではHDMI、DVIのように規格で定められたケーブル仕様
がないためFPC、ツイナックスケーブル、ツイストペアケーブル
など、さまざまなケーブルが使用されております。種類によって伝
送特性が異なるため波形品質もケーブルよって差が出てきます。
しかしながら輻射ノイズの要因は共通していると考えます(ハー
ネスとプラグの接続・GNDの処理方法なども輻射ノイズに影響す
るためノイズ対策の重要な要因ではありますが、ケーブルの種類や
ケーブルメーカによっても異なるため、ここでは一般的要因として
挙げておりません)。
ケーブルからの輻射ノイズの要因は以下のように考えられます。
d) 差動ペアの+と-ラインのアンバランス性や、+ラインと-ラ
インの電磁的結合が弱いことによって、差動信号が同相成分
に変換される
e) 基板のGNDノイズがケーブルのシールド被覆部を伝播し、
ケーブルをアンテナとすることによってノイズ源となる
ことなどが考えられます。ケーブルが輻射ノイズの主要因の場合、
基板側のノイズ対策では効果が限定的となるため、ケーブル選定に
は注意が必要となります。
基板上の同相ノイズ発生要因a)、b)、c)に対して有効なのが
EMC対策部品のひとつであるコモンモードフィルタです(図3)。
TDKでもご要求に応じて提案できるようさまざまなコモンモー
ドフィルタをラインナップしております。高速差動インタフェース
のEMC対策では部品選択に注意が必要です。コモンモードフィル
タに要求される条件は
1.差動信号を減衰させない
2.同相除去比が高い
の2つです。
1.はケーブル長・種類がパネルのサイズによって変わるため、
ケーブル長に比例して損失が大きくなっても、信号品質を確保でき
るようフィルタが信号に対して影響を与えないようにするための条
件です。
2.はLVDSのクロック信号は解像度に応じて変わるため、低解
像度時に想定される数十MHz帯のノイズも抑制できるよう高い同
相除去比が必要となります。
上記2項目につながるコモンモードフィルタのパラメータは次の
ようになります。
1→差動特性インピーダンス(LVDSの特性インピーダンスは100Ω)
2→コモンモードインピーダンス
2は弊社カタログにて見ることができます(図4)。
1は弊社カタログでは提供していないパラメータとなるため、個
別に問い合わせ頂く必要があるのですが、TDKのコモンモードフ
ィルタは差動特性インピーダンスを考慮して開発されているため、
推奨部品による信号品質劣化はありません。
3 コモンモードフィルタの有効活用
図3 コモンモードフィルタ選択の注意条件 フィルタのパラメータ
・差動信号を減衰させない
・高同相除去比
差動特性インピーダンス
コモンモードインピーダンス
図4 コモンモードフィルタの周波数特性
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)
10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)
10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
10
100
1000
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
101 100 1000 10000Frequency(MHz)
Impedance(Ω)
10
1
100
10000
1000
Impedance(Ω)
コモンモードインピーダンス
Analyzer
361 Common mode
361 Differential mode201 Differential mode
121 Differential mode900 Differential mode
201 Common mode121 Common mode
900 Common mode
ネットワークアナライザを用いたコモンモードフィルタの差動の特性インピーダンスの周波数特性例。広帯域に渡って、100Ωに近い値となっていることがわかり、インピーダンス整合されていることがわかる。また、特性インピーダンスを評価する方法としては、時間軸で評価するTDR(Time Domain Reflectometry)が一般的。
コモンモードインピーダンス
測定回路
差動特性インピーダンス
80
次に輻射ノイズの測定結果を図9に示します。EMC的に厳しい条
件にするためにCLOCK周波数は135MHzとしております。ケーブ
ルはLVDSでよく使用されるツイナックスケーブルを使用しており
ます。フィルタなし(図9a)ではLVDS信号の高調波で強いピー
クが確認されます。
TCM2010-201-4Pを使用すること(図9b)である程度除去できま
すが、500MHz以降のピークが目立ちます。そこでTCM2010L-201-
4Pを挿入したところ810MHzのピークがなくなりました(図9c)。
これは一つの事例ですが、通常のコモンモードフィルタでは効果
が得られない周波数に対して効果があること示しており、ケーブル
に依存した輻射ノイズに対しても効果的であることがわかります。
図9のノイズ測定結果において、135MHzの高調波成分が依然と
残っておりますが、GNDラインに重畳されているクロック系のノ
イズと推測されます。このようなGND系ノイズに対してはケー
ブル全体の同相成分を抑制するクランプフィルタが効果的です。
TDKでは薄型クランプフィルタを開発しており、図10にフラット
ケーブル用クランプフィルタを示します
以上、LVDS向けコモンモードフィルタについて特長とその効果
について説明しましたが、基板上で発生する同相ノイズに対してコ
モンモードフィルタは効果的です。
一方、ケーブルに依存した輻射ノイズ問題に対してもTCM-Lシ
リーズによって一定の効果を上げることができ、ノイズ対策におい
て機能する部品であると言えます。今後、ディスプレイの解像度が
上がると新しいインタフェース(DisplayPortやV-by-One)によ
って取って代わられると言われておりますが、コスト、特性的に成
熟したインタフェースといえるLVDSが今後もしばらく基板間イン
タフェースの主役であることに間違いありません。
従って、LVDSのノイズ対策は依然として重要となります。さら
にTVに無線機器が搭載されていくことを考えると、本編で紹介し
た部品の必要性は増していくと考えております。TDKは常に最新
のEMC問題に対して解答を提供できるよう取り組んでおりますの
で、お気軽にご相談頂きたいと考えております。
5 TDK薄型クランプフィルタ
6 まとめ
図9 TCM-Lシリーズ使用による輻射ノイズ抑制事例
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
a)コモンモードフィルタなし
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
b)TCM2010-201-4P使用時
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
c)TCM2010L-201-4P使用時ノイズレベルが全体的に低減している
800MHzでノイズ抑制効果が見られない
標準品のコモンモードフィルタで取りきれないノイズをTCM-Lシリーズは除去します。135MHzの高調波成分が残っていますが、GNDラインに重畳したクロック系のノイズと推測されます。このようなノイズに対してはクランプフィルタが効果的です。
図10 TDK薄型クランプフィルタ
ZCAT07R, 10R, 15R type
ZCAT07RZCAT10R
ZCAT15R
フェライトコア厚と製品の厚みが同寸法であることを特長としたTDK薄型クランプフィルタ。薄型LCD-TV、PDP-TV、DSC、DVCなど機器内にスペースがないセットに対して有効。
ZCAT25R, 30R type
ZCAT30R ZCAT25R
79
LVDSの輻射ノイズに対してコモンモードフィルタが効果的であ
ることがわかりますが、最近の傾向であるパネルサイズの大型化と
ともにLVDSケーブルも長くなる傾向にあり、そのことによって新
たな問題が発生しております。
その問題とは
1. ケーブルが長くなることによってインピーダンス不整合が
発生し、波形品質が悪化
2. ケーブルが長くなることにより輻射ノイズレベルが悪化
してしまうことです。
このような場合、3で紹介したコモンモードフィルタでは効果が
限定的となる可能性があります。このような問題を解決するために
新たに開発されたのがTCM-Lシリーズです。本コモンモードフィ
ルタは前述した問題に対して以下のような効果を持ちます。
1→反射成分除去による波形品質の改善
2→ 輻射ノイズレベルの低減
(差動特性改善による差動→同相成分の除去)
図8は実際にTCM-Lシリーズ使用してLVDS波形を測定した結果
です。フィルタを搭載しない状態では反射の影響により、波形に
高周波成分が重畳したようなEye Diagramとなっております。
この状態でTCM2010-201-4Pを搭載しても波形品質に変化はありま
せん。しかし、TCM2010L-201-4Pを搭載すると高周波の反射成分
が除去され、結果Eyeが広がり、波形品質が良くなる結果となりま
す。
4LVDS向けコモンモードフィルタTCM-Lシリーズの特長と効果
図8 TCM-Lシリーズ使用による波形整形効果事例
コモンモードフィルタなし
LVDS信号波形 CLOCK=75MHz(送信側)
波形のリンギングが大きく表れている 波形のリンギングはまだ残っている 波形のリンギングが解消されている
TCM2010-201-4P使用時 TCM2010L-201-4P使用時
コモンモードフィルタなし TCM2010-201-4P使用時 TCM2010L-201-4P使用時
LVDS信号波形 CLOCK=75MHz(受信側)
LVDSラインのコネクタ部、ケーブル部においてインピーダンス整合できていない場合に、LVDSの信号波形は大きく乱れます。この時、一般的なコモンモードフィルタでは乱れた波形をそのまま通過させますが、TCM-Lシリーズによって乱れた信号を整形することが可能です。インピーダンス不整合による波形歪み抑えられるため、結果的にノイズ抑制効果にも表れます。
80
次に輻射ノイズの測定結果を図9に示します。EMC的に厳しい条
件にするためにCLOCK周波数は135MHzとしております。ケーブ
ルはLVDSでよく使用されるツイナックスケーブルを使用しており
ます。フィルタなし(図9a)ではLVDS信号の高調波で強いピー
クが確認されます。
TCM2010-201-4Pを使用すること(図9b)である程度除去できま
すが、500MHz以降のピークが目立ちます。そこでTCM2010L-201-
4Pを挿入したところ810MHzのピークがなくなりました(図9c)。
これは一つの事例ですが、通常のコモンモードフィルタでは効果
が得られない周波数に対して効果があること示しており、ケーブル
に依存した輻射ノイズに対しても効果的であることがわかります。
図9のノイズ測定結果において、135MHzの高調波成分が依然と
残っておりますが、GNDラインに重畳されているクロック系のノ
イズと推測されます。このようなGND系ノイズに対してはケー
ブル全体の同相成分を抑制するクランプフィルタが効果的です。
TDKでは薄型クランプフィルタを開発しており、図10にフラット
ケーブル用クランプフィルタを示します
以上、LVDS向けコモンモードフィルタについて特長とその効果
について説明しましたが、基板上で発生する同相ノイズに対してコ
モンモードフィルタは効果的です。
一方、ケーブルに依存した輻射ノイズ問題に対してもTCM-Lシ
リーズによって一定の効果を上げることができ、ノイズ対策におい
て機能する部品であると言えます。今後、ディスプレイの解像度が
上がると新しいインタフェース(DisplayPortやV-by-One)によ
って取って代わられると言われておりますが、コスト、特性的に成
熟したインタフェースといえるLVDSが今後もしばらく基板間イン
タフェースの主役であることに間違いありません。
従って、LVDSのノイズ対策は依然として重要となります。さら
にTVに無線機器が搭載されていくことを考えると、本編で紹介し
た部品の必要性は増していくと考えております。TDKは常に最新
のEMC問題に対して解答を提供できるよう取り組んでおりますの
で、お気軽にご相談頂きたいと考えております。
5 TDK薄型クランプフィルタ
6 まとめ
図9 TCM-Lシリーズ使用による輻射ノイズ抑制事例
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
a)コモンモードフィルタなし
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
b)TCM2010-201-4P使用時
50 100 500 1000
80
60
40
20
0
Level(dBVμ/m)
Frequency(MHz)
c)TCM2010L-201-4P使用時ノイズレベルが全体的に低減している
800MHzでノイズ抑制効果が見られない
標準品のコモンモードフィルタで取りきれないノイズをTCM-Lシリーズは除去します。135MHzの高調波成分が残っていますが、GNDラインに重畳したクロック系のノイズと推測されます。このようなノイズに対してはクランプフィルタが効果的です。
図10 TDK薄型クランプフィルタ
ZCAT07R, 10R, 15R type
ZCAT07RZCAT10R
ZCAT15R
フェライトコア厚と製品の厚みが同寸法であることを特長としたTDK薄型クランプフィルタ。薄型LCD-TV、PDP-TV、DSC、DVCなど機器内にスペースがないセットに対して有効。
ZCAT25R, 30R type
ZCAT30R ZCAT25R
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LVDSの輻射ノイズに対してコモンモードフィルタが効果的であ
ることがわかりますが、最近の傾向であるパネルサイズの大型化と
ともにLVDSケーブルも長くなる傾向にあり、そのことによって新
たな問題が発生しております。
その問題とは
1. ケーブルが長くなることによってインピーダンス不整合が
発生し、波形品質が悪化
2. ケーブルが長くなることにより輻射ノイズレベルが悪化
してしまうことです。
このような場合、3で紹介したコモンモードフィルタでは効果が
限定的となる可能性があります。このような問題を解決するために
新たに開発されたのがTCM-Lシリーズです。本コモンモードフィ
ルタは前述した問題に対して以下のような効果を持ちます。
1→反射成分除去による波形品質の改善
2→ 輻射ノイズレベルの低減
(差動特性改善による差動→同相成分の除去)
図8は実際にTCM-Lシリーズ使用してLVDS波形を測定した結果
です。フィルタを搭載しない状態では反射の影響により、波形に
高周波成分が重畳したようなEye Diagramとなっております。
この状態でTCM2010-201-4Pを搭載しても波形品質に変化はありま
せん。しかし、TCM2010L-201-4Pを搭載すると高周波の反射成分
が除去され、結果Eyeが広がり、波形品質が良くなる結果となりま
す。
4LVDS向けコモンモードフィルタTCM-Lシリーズの特長と効果
図8 TCM-Lシリーズ使用による波形整形効果事例
コモンモードフィルタなし
LVDS信号波形 CLOCK=75MHz(送信側)
波形のリンギングが大きく表れている 波形のリンギングはまだ残っている 波形のリンギングが解消されている
TCM2010-201-4P使用時 TCM2010L-201-4P使用時
コモンモードフィルタなし TCM2010-201-4P使用時 TCM2010L-201-4P使用時
LVDS信号波形 CLOCK=75MHz(受信側)
LVDSラインのコネクタ部、ケーブル部においてインピーダンス整合できていない場合に、LVDSの信号波形は大きく乱れます。この時、一般的なコモンモードフィルタでは乱れた波形をそのまま通過させますが、TCM-Lシリーズによって乱れた信号を整形することが可能です。インピーダンス不整合による波形歪み抑えられるため、結果的にノイズ抑制効果にも表れます。