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糖尿病網膜症は初期だけでなく進行した段階でも自覚症状を欠くことが多く,黄斑浮腫や硝子体出血,牽引性網膜剝離などが起こったときにはじめて視力障害を自覚する場合がある.このため,糖尿病の診断が確定あるいは糖尿病が疑われる時点で眼科を受診し,糖尿病網膜症の有無と病期を評価することが重要である 1, 2).
日本人 2 型糖尿病患者を対象とした多施設コホート研究である JDCS においては,網膜症の発症頻度は 38.3/1,000 人・年である.また,すでに網膜症を有している患者における進展頻度は 21.1/1,000 人・年と報告されている 5).
これまで眼科受診の頻度に関する介入試験は行われていない.しかし,多くの観察研究において 1 年に 1 回の頻度で眼科受診が行われている 3, 6).UKPDS を含め,2〜3 年ごとに眼科受診が行われている大規模臨床研究もある 7, 8).眼科受診の頻度と網膜症の発症・進展に関しての検討では 3, 4),1 型糖尿病,2 型糖尿病いずれにおいても 1 年ごとの受診において最もリスクが低いが,網膜症がなく血糖コントロールが良好な場合は 2 年ごとに延長しても網膜症の発症・進展が増加することはない 9).ただし,血糖コントロールが良好の症例に関しても,1 年に少なくとも一度は眼科で眼底検査を継続的に受けるのが,日本でのコンセンサスである.一方,網膜症がすでに発症している場合や血糖コントロールが不良であること,罹病期間が 10 年以上であると網膜症の進展リスクが上昇するためリスクの高い例ではより短い間隔での眼科受診が推奨される 4).
無散瞳眼底カメラによる網膜症のスクリーニングは,標準的な眼底写真と比べた場合,感度 61〜90%,特異度 85〜97%,眼科医による眼底検査と比べると感度 38〜100%,特異度 75〜100%であり 10),眼科医による網膜症管理には及ばないものの,簡便でコストが安く,眼科の受診が困難な患者での有用性が期待できる.
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糖尿病網膜症
糖尿病診療ガイドライン 2016 8
CQ8-1 定期的な眼科受診によって糖尿病網膜症の発症・進展を阻止できるか?
【ステートメント】� 定期的な眼科受診は糖尿病網膜症の発症・進展を阻止するうえで有用である 1〜4).
【推奨グレードA】(合意率 100%)
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血糖コントロールは,1 型糖尿病,2 型糖尿病患者における糖尿病網膜症の発症・進展を抑制するうえで有用である 11〜13).糖化ヘモグロビンを指標とした高血糖は,糖尿病網膜症の発症・進展の独立したリスクファクターであることが示されている 14, a).日本人 2 型糖尿病患者を対象とした多施設コホート研究の JDCS においても,HbA1c は糖尿病網膜症の発症(HbA1c
が 1%上昇で 1.36 倍)および進展(HbA1c が 1%上昇で 1.66 倍)の有意なリスクファクターであることが報告されている 5).
1 型糖尿病患者を対象として,強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールが,糖尿病網膜症を含む細小血管症の発症および進展を抑制するかどうかを検討した歴史的な介入試験が DCCT である.この試験は 1 型糖尿病患者を 1 日 3 回以上のインスリン注射または持続皮下インスリン注入法による強化インスリン療法群と 1 日 1〜2 回のインスリン注射による通常インスリン療法群に無作為に割り付け,平均 6.5 年追跡し合併症に対する効果を検討したものである.その結果,1 型糖尿病において,強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールにより糖尿病網膜症の発症・進展を抑制できることが明らかとなった 11).また,DCCT
終了後に通常インスリン療法群にも強化インスリン療法を実施して,以後の経過を観察したEDIC では,2 群間の HbA1c の差がなくなったにもかかわらず,6.5 年の強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールにより,以後の 10 年間における糖尿病網膜症の進展を有意に抑制できることが明らかとなった 15).さらには眼科手術のリスクに関しても,強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールにより有意に抑制できることが明らかとなった.この結果は,糖尿病発症早期からの血糖コントロールの重要性を示している 16).
2 型糖尿病を対象として,DCCT 同様に強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールが,糖尿病網膜症を含む細小血管症の発症および進展を抑制するかどうかを検討した日本人での介入試験が Kumamoto Study である.結果として,日本人 2 型糖尿病患者において,強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールにより糖尿病網膜症の発症・進展を抑制できることが明らかとなった.さらにこの試験では,HbA1c 6.9%未満,空腹時血糖110 mg/dL 未満,食後 2 時間血糖値 180 mg/dL 未満が,網膜症の発症・進展が認められない血糖コントロールの閾値として示された 17).一方,海外での新規 2 型糖尿病患者を対象とした UKPDS においても,インスリンまたはスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬による厳格な血糖コントロールにより網膜光凝固術を必要とするリスクを抑制できることが示されたが 12),Kumamoto Study のような明らかな血糖コントロールの閾値は認められなかった.同様に心血管リスクの高い 2 型糖尿病患者を対象とした ACCORD eye においても,厳格な血糖コントロールにより糖尿病網膜症の進展を抑制できることを示している 5).
重症低血糖と糖尿病網膜症との関連については,1 型糖尿病を対象とした DCCT の再解析では,重症低血糖の頻度と網膜症との関連は認められなかった 18).一方,2 型糖尿病を対象とした ADVANCE の再解析においては,重症低血糖が網膜症・腎症の発症および進展リスクを有意に上昇させることが報告されている 19).しかしながら,これらの関連は低血糖そのもの
CQ8-2 糖尿病網膜症に血糖コントロールは有効か?
【ステートメント】� 血糖コントロールは,1 型糖尿病,2 型糖尿病患者における糖尿病網膜症の発症・進展を抑
止するうえで有用である 11〜13). 【推奨グレードA】(合意率 100%)
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の直接作用というより,高齢や長期罹病期間などといった低血糖と網膜症・腎症の共通なリスクファクターで説明されうるかもしれない.また,強化インスリン療法による急激な血糖コントロールが,治療開始初期の糖尿病網膜症の悪化につながる可能性を DCCT は示唆しており 20),特に血糖コントロールが不良な症例では留意する必要がある.
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血圧は糖尿病網膜症の発症・進展における有意なリスクファクターであり 23, 24),日本人 2 型糖尿病患者を対象とした多施設コホート研究の JDCS でも確認されている 5).
2 型糖尿病を対象とした UKPDS においては収縮期血圧目標を 150 mmHg 未満とした降圧療法は 180 mmHg 未満とした降圧療法と比べ網膜症に進展を抑制した 21, 22).しかし,UKPDS
においては投与された降圧薬の薬剤間に(アンジオテンシン変換酵素[angiotensin-converting
enzyme:ACE]阻害薬ないしは β 拮抗薬)網膜症の抑制効果の差は認めなかった 22).より厳格な血圧コントロールが網膜症の発症・進展を抑制するかについて検討した ABCD おいては,拡張期血圧 90 mmHg 以上の 470 例のサブ解析においてカルシウム拮抗薬と ACE 阻害薬を比較してクレアチニンクリアランスの進展度が検討され,二次エンドポイントとして網膜症の進展について検討がなされている 25).血圧は強化降圧群では 132/78 mmHg,緩徐降圧群では138/86 mmHg に管理されていたが網膜症の進展度には群間の差も薬剤間の差も認めなかった.罹病期間の長い患者を対象に厳格な血糖・血圧コントロールを行った ACCORD でも,心血管疾患リスクを有する 2 型糖尿病患者に対して収縮期血圧を 120 mmHg 未満と140 mmHg 未満を目標に血圧コントロールされたが,網膜症の進展を抑制する効果は認めなかった 13).ADVANCE ではペリンドプリルとインダパミド合剤による血圧コントロール群とプラセボ群との間で,網膜症の進展に有意差を認めなかったが,黄斑浮腫や毛細血管瘤は有意に減少したことが報告されている 26).血圧コントロール群では試験開始前 142/79 mmHg から試験中 6.2/2.1 mmHg 低下している.収縮期血圧 140 mmHg 未満を降圧目標として治療することで糖尿病網膜症の発症・進展を抑制することが期待される.
血圧が正常である 1 型糖尿病患者に対して,レニン・アンジオテンシン系阻害薬であるリシノプリル 27),カンデサルタン 28)を投与することによって糖尿病網膜症の発症を抑制する可能性が示されている 27).網膜症の進展抑止に関しては,血圧が正常である 1 型糖尿病に対し,エナプリル 20 mg,ロサルタン 100 mg あるいはプラセボが投与された RASS では,いずれの薬剤もプラセボと比べ有意な網膜症の進展抑制効果を認め 29),HbA1c が 7.5%以上の患者において有用であることが示された 30).一方,正常な血圧あるいは治療中の高血圧を伴う軽度〜中等度網膜症を有する 2 型糖尿病では,カンデサルタン 16 mg による網膜症の進展抑制は認められなかった 31).しかし,二次エンドポイントである網膜症の改善という点では有意な改善が確認された.以上のことから,良好な血圧コントロール下でもレニン・アンジオテンシン系阻害薬が網膜症の発症進展を抑制することが期待されるが,日本で使用可能な用量でのエビデンスは限定的であることに留意する必要がある.
CQ8-3 糖尿病網膜症に血圧コントロールは有効か?
【ステートメント】� 血圧コントロールは 2 型糖尿病患者における糖尿病網膜症の発症・進展を抑止するうえで
有用である 21, 22). 【推奨グレードA】(合意率 100%)
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血清脂質値と糖尿病網膜症の発症・進展との関連は明らかでない.1 型糖尿病患者を対象とした観察研究では,血清コレステロールや HDL(high-density lipoprotein)と増殖網膜症や黄斑浮腫の発症との関連を認めていない 33).同様に日本人 2 型糖尿病患者を対象とした多施設コホート研究の JDCS においても,糖尿病網膜症の発症についての有意なリスクファクターは糖尿病罹病期間,BMI(body mass index),HbA1c,収縮期血圧であり,進展についての有意なリスクファクターは HbA1c であると報告されており,血清 HDL,LDL(low-density
lipoprotein),中性脂肪は網膜症の発症・進展についての有意なリスクファクターではないことが確認されている 5).
その一方で,脂質異常症治療薬のひとつであるフェノフィブラートが糖尿病網膜症の進展を阻止する可能性が示唆されている.2 型糖尿病患者を対象にフェノフィブラート投与の効果を検討したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)である FIELD では,プラセボ群に比しフェノフィブラート群で網膜光凝固治療の導入を 31%低下させ,さらにサブ解析では黄斑症については 31%,増殖網膜症については 30%,それぞれ発症リスクが低下した 32).しかしながら,この効果は血清の脂質値とは関連がなく,その機序も十分に解明されていない.またシンバスタチン単独投与に比し,これにフェノフィブラートの追加投与の効果を検討した RCT である ACCORD eye においても,シンバスタチンとフェノフィブラートの併用投与群は,シンバスタチン単独投与群に比し,糖尿病網膜症の進展を 40%抑制することが確認されている 13).スタチン系薬剤が糖尿病網膜症の発症や進展抑制に有効であるかどうかは確認されていない.
CQ8-4 糖尿病網膜症に脂質コントロールは有効か?
【ステートメント】� 脂質異常症に合併した 2 型糖尿病におけるフェノフィブラートは糖尿病網膜症の進展抑制
に有効である可能性がある 13, 32). 【推奨グレードB】(合意率 100%)
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糖尿病網膜症は,発症初期に毛細血管における微小血栓形成から始まり進行とともに細小血管閉塞へと進展することから,抗血小板薬が網膜症の発症・進展を阻止できる可能性が検討されている.
DAMAD は,ヨーロッパにおいて早期糖尿病網膜症患者に高用量アスピリン 990 mg/日単独もしくはジピリダモール 225 mg/日との併用をプラセボと比較し糖尿病網膜症の発症・進展に及ぼす影響を検討したものである.3 年間の追跡期間中の毛細血管瘤の増加数は,アスピリン単独群で 0.69 ± 5.1,アスピリンとジピリダモールの併用群で 0.34 ± 3.0,プラセボ群で1.44 ± 4.5 であり,薬剤投与群では毛細血管瘤の数の増加が抑制されたが,臨床的な重要性は高くないと考えられた 34).一方,ETDRS では,軽度〜重度の非増殖網膜症,早期増殖網膜症を有する糖尿病患者 3,711 人に無作為割り付けにてアスピリン(650 mg/日)またはプラセボが投与された研究であったが,アスピリンは増殖網膜症への進展抑制を認めなかった 35).ETDRS
では DAMAD より進行した網膜症患者が対象であり,進行した網膜症には臨床的な有効性は認めないことを示している.
これらの報告からは,糖尿病網膜症が存在しても心血管合併症に対してアスピリンの投与を行うことによって網膜症は進展しないことを示唆するが,低用量のアスピリンによる試験結果ではないことに注意が必要である.また,ヨーロッパの糖尿病患者のコホート研究 36)においては,網膜症を発症した群で非発症群に比べ有意にアスピリン投与が多かった(60.1 vs.
50.8%)との報告があるが,他の糖尿病コホート研究と比べて全体のアスピリン投与率(50.8%)が著しく高く,アスピリンが網膜症に対して悪影響を及ぼすと結論づけることはできない.
チクロピジンによる網膜症の進展抑制効果を検討した TIMAD では,プラセボに比し非増殖性糖尿病網膜症の進展を有意に抑制し,特にインスリン治療群では新生血管発生率を抑制する傾向を認めた(p=0.056)37).一方,BTRS ではチクロピジン群で網膜症の進展を抑制する傾向はあったが症例数が少なく有意差は認めなかった 38).その他の薬剤ではジピリダモールの単独投与の有効性は報告されていないが,高用量アスピリンの併用では進展抑制の傾向を認めた 34).クロピドグレルについて糖尿病網膜症の発症や進展抑制を評価した RCT はいまだ報告されていない.
Q8-5 抗血小板薬によって網膜症の発症・進展を阻止できるか?
【ステートメント】� 抗血小板薬によって糖尿病網膜症の発症・進展を抑制することの臨床的な有用性は確認され
ていない.
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進行した非増殖網膜症または増殖網膜症の初期の段階で網膜光凝固術を行うことは網膜症の進展抑止に有用である.1,758 人の重症非増殖網膜症または増殖網膜症を対象とした Dia-
betic Retinopathy Study によると,網膜光凝固術の施行により視力悪化のリスクが 50%以上低下したと報告されており 39),さらに網膜光凝固術による網膜症の進展抑制効果はメタアナリシスでも確認されている 40).
硝子体手術は,硝子体出血や牽引性網膜剝離など視力障害の原因となっている病変を除去することを目的に行われており,進行した増殖網膜症に対する視力維持という点での有用性が RCT で確認されている 41, 42).
糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の軽症段階でも発症することがあり,糖尿病患者における視力低下の主原因のひとつである.糖尿病黄斑浮腫の治療としては,局所光凝固術が視力低下を抑制するために有用である 43).近年,糖尿病黄斑浮腫の原因として血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の関与が示唆されており,抗 VEGF 薬の眼内投与が新たな治療法として注目されている.特にラニビズマブの有用性については,RESOLVE 44)や RESTORE 45)などの第Ⅱ/Ⅲ相 RCT で明らかにされている.RESTORE においては,ラニビズマブは網膜光凝固術より視力改善効果が強く,さらにラニビズマブに網膜光凝固術を併用してもラニビズマブ単独の効果と同等であることから,網膜光凝固術に対するラニビズマブの有効性が確認されている 45).同様の結果がメタアナリシスでも示されている 46).またアフリベルセプトについても,網膜光凝固術より最高矯正視力が有意に改善し 47),視力悪化群においてはラニビズマブより視力改善効果が強いことが報告されている 48).一方,副腎皮質ステロイドのトリアムシノロンの糖尿病黄斑浮腫に対する長期の有用性については十分には確立されていない 49).
CQ8-6 眼科治療によって網膜症の進展を阻止できるか?
【ステートメント】� 網膜光凝固術などの眼科治療は網膜症の進展を抑制するうえで有用である 39, 40).
【推奨グレードA】(合意率 100%)
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妊娠を計画している糖尿病患者には,妊娠前に眼科を受診させ,網膜症の有無を評価し,妊娠中に網膜症が発症・進展する可能性があることを説明する.妊娠により網膜症の発症が10%にみられ,網膜症の重症度により進展リスクは増加する 50, 51).妊娠中は妊娠初期から出産1 年後まで発症・進展リスクに応じて眼科受診を行い 52),妊娠初期に網膜症のない患者は妊娠後期に再度検査を行うが,網膜症のある患者では 2〜4 週ごとに眼科を受診させる.
DCCT において妊娠患者は,非妊娠患者と比べて 1.60〜2.48 倍の有意な網膜症進展リスクを認めている 52).妊娠中の網膜症の進展に関連する因子として妊娠時の進行した網膜症とHbA1c 高値,妊娠初期の急激な血糖低下,妊娠中の高血圧がある 50, 53).増殖網膜症は進行しやすいことから,妊娠中でも早期治療が必要であり,レーザー治療や硝子体手術は適応があれば非妊娠時と同様に行うことができる.妊娠中に黄斑浮腫もきたしやすいが妊娠中の抗 VEGF
薬の安全性は確立していない 54).1 型糖尿病患者においては,妊娠中の網膜症の早期病変や黄斑浮腫は出産後に改善し,妊
娠は長期的には糖尿病網膜症の進展リスクとはならないと考えられている 52).
Q8-7 糖尿病合併妊娠は糖尿病網膜症の発症・進展のリスクとなるか?
【ステートメント】� 糖尿病合併妊娠は糖尿病網膜症の発症・進展を促進する 50〜52).
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8 糖尿病網膜症
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1 型糖尿病においては,糖尿病網膜症の存在が糖尿病腎症のリスクファクターであることが報告されている 55, 60).2 型糖尿病においても同様であることが示されているが,1 型糖尿病に比し糖尿病網膜症と糖尿病腎症との関連は弱いとされている 60, 61).2 型糖尿病においては,アルブミン尿は認めないが糸球体濾過率(glomerular filtration rate:GFR)が低下している症例の割合が 1 型糖尿病に比し高値であることが報告されている 61, 62).糖尿病網膜症はアルブミン尿出現のリスクファクターであるが,GFR 低下との関連が弱いということが,2 型糖尿病における糖尿病網膜症と糖尿病腎症との関連の弱さに影響を与えていると考えられる.
糖尿病網膜症は,大血管症のリスクファクターとしても確立されてきている.アメリカの前向きコホート研究である ARIC によると,2 型糖尿病患者において糖尿病網膜症の存在により平均 7.8 年間で冠動脈疾患の発症リスクが 2.07 倍上昇し,虚血性脳卒中の発症リスクが 2.34倍上昇することが示された 56, 57).また ACCORD での解析でも,糖尿病網膜症の重症度が心血管疾患発症リスクの上昇と関連していることが報告されている 58).さらに日本人 2 型糖尿病患者を対象とした JDCS では,軽度の糖尿病網膜症のみを有する場合でも,冠動脈疾患および脳卒中の発症リスクを有意に上昇させることを明らかにしている 59).
Q8-8 糖尿病網膜症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
【ステートメント】� 糖尿病網膜症は,糖尿病腎症や大血管症のリスクファクターである 55〜59).
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文 献
糖尿病GL2016組版ss.qxp_糖尿病GL2016 2016/04/28 17:08 ページ 184
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8 糖尿病網膜症
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8 糖尿病網膜症
1)Klein R et al, 1989コホート研究[レベル 2]
2)Klein R et al, 1989コホート研究[レベル 2]
3)Younis N, 2003コホート研究[レベル 2]
4)Misra A et al, 2009コホート研究[レベル 2]
5)Kawasaki R et al (JDCS), 2011
コホート研究[レベル 2]
6)Thomas RL et al, 2012コホート研究[レベル 3]
7)Olafsdóttir E et al, 2007コホート研究[レベル 2]
8)Kohner EM Y et al(UKPDS52), 2001
RCT サブ解析[レベル 3]
アメリカ.30歳以下で糖尿病と診断された人(インスリン治療)
(996人).
アメリカ.30歳以上で糖尿病と診断されたインスリン使用者
(824人),インスリン非使用者(956人).
イギリス,眼科定期通院のない2型糖尿病患者(3,743人)[年齢記載なし].
イギリス.2型糖尿病(20,788人)[年齢記載なし].
日本.40〜70歳の2型糖尿病患者(1,221人)[日本人].
イギリス.30歳以上で糖尿病と診 断 さ れ た2型 糖 尿 病 患 者
(57,199人).
アイスランド.網膜症のない2型糖尿病患者(296人)[女性19〜90歳,男性16〜87歳].
イギリス.2型糖尿病(3,709人)[年齢記載なし,UKPDSは25〜65歳].
4年間のフォローアップ.
4年間のフォローアップ.
5年間のフォローアップ,年1回の眼底検査.
網膜症の程度と眼底検査の頻度およびリスクファクターとの関連を解析.
日本人における糖尿病網膜症の発症および進展の頻度,関連する因子を解析.
4年間のフォローアップ,年1回の眼底検査.
10年間のフォローアップ,2年に1回の眼底検査.
糖尿病網膜症の重症度と光凝固を行った患者との関連を解析,3年ごとに眼底写真.
160/271(59%)で新たに網膜症が発症.75/713(11%)で非増殖型から増殖型に進展.全体では41%で悪化,7%で改善.
イ ン ス リ ン 使 用 者 73/154(47%)で新たに網膜症が発症.31/418(7%)で非増殖型から増殖型に進展.全体では34%で悪化.
5年で3.9%に増殖網膜症が発症.1年目に増殖網膜症が発症した患者は開始前が単純網膜症は5%,前増殖網膜症では15%であった.眼底検査の頻度は網膜症がない場合は3年,単純網膜症は1年,前増殖型以降は4ヵ月に1回の眼底検査が推奨.
眼底検査間隔が24ヵ月以上は治療の必要な網膜症が有意に増えた(OR 1.56).
糖尿病網膜症の発症頻度は38.3/1,000人・年,進展頻度は21.1/1,000人・年であった.関連する因子はHbA1c,罹病期間,血圧,BMIであった.
糖尿病網膜症の発症頻度は360.27/1,000人・年,眼科受診 を 要 す る 網 膜 症 は66.59/1,000人・年であり10年以上の罹病期間のあるインスリン使用者は1年目から4年目に9.61から30.99/1,000人・年に増加した.
10年間で172人は網膜症なし,96人非増殖網膜症,6人が黄斑症,23人が前増殖網膜症,4人が増殖網膜症を発症した.黄斑症および増殖網膜症は非増殖網膜症を経て年1回検査となり治療の遅延はなかった.
3年で0.2%,6年で1.1%,9年で2.6%で光凝固が行われた.網膜症のない2型糖尿病患者で光凝固が必要となる患者はわずかであったが網膜症のある患者ではより頻回に検査が必要であった.
論文コード 対 象 方 法 結 果
アブストラクトテーブル
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9)Looker HC et al, 2013コホート研究[レベル 3]
10)Williams GA, 2004システマティックレビュー
[レベル 2]
11)DCCT Research Group(DCCT), 1993
RCT[レベル 1+]
12)UKPDS 33, 1998RCT
[レベル 1+]
13)Chew EY et al (ACCORDeye study), 2010
RCT[レベル 1+]
14)Klein R et al, 1994コホート研究[レベル 2]
15)White NH et al (DCCT), 2008
RCT[レベル 1]
16)DCCT/EDIC ResearchGroup (DCCT/EDIC), 2015
RCT[レベル 1]
17)Ohkubo Y et al, 1995RCT
[レベル 1]
イギリス,12歳以上の糖尿病(155,114人).
1968〜2003年の32論文.
アメリカ.1型糖尿病(1,441人).
イギリス.2型糖尿病(3,867人).
アメリカ,カナダ.糖尿病網膜症を発症していない,2型糖尿病患者(2,856人).
アメリカ.若年発症糖尿病患者(682人)と高齢発症糖尿病患者(834人).
アメリカ.DCCT後の観察研究であるEDICに参加した1型糖尿病患者(1,211人).
アメリカ.DCCT後の観察研究であるEDICに参加した1型糖尿病患者(1,375人).
日本.2型糖尿病(110人)[日本人].
眼底検査を年1回から2年に1回とできる患者群の抽出.
無散瞳眼底カメラの糖尿病網膜症のスクリーニング検査としての有用性を解析.一次研究は前向きコホートが主.
強化インスリン療法と通常インスリン療法に無作為に分類[6.5年間調査].
SU薬またはインスリンによる強化療法群と食事療法による通常療法群に無作為に分類[10年間観察].
厳格な血糖コントロールあるいは通常の血糖コントロール,フェノフィブラートあるいはプラセボ,厳格な血圧コントロールあるいは通常の血圧コントロール.
糖化ヘモグロビンと糖尿病網膜症の発症・進展との関連についての解析.
DCCT終了10年後における強化インスリン療法の網膜症発症・進展に与える影響を観察.
強化インスリン療法の糖尿病関連眼科手術リスクに与える影響を評価.
インスリン頻回注射群(MIT)と中間型インスリン治療群(CIT)に無作為に分類[6年間追跡調査].
2年連続して網膜症を認めない患者が2年後網膜症の進展を認めたのは1型で<0.3%,2型で<0.2%であった.
標準的な眼底写真と比べ,感度61〜90%,特異度85〜97%,眼科医による眼底検査と比べ感度 38〜 100%,特 異 度 75〜100%であった.
新たな網膜症発症は強化療法群で 11.5%,通 常 療 法 群 で54.1%(リスク軽減:-76%).網膜症の進展は強化療法群で17.1%,通常療法群で49.2%
(リスク軽減:-54%).
強化療法で細小血管症のリスクは25%減少し,光凝固術を必要とするリスクは28%減少した.一方,大血管症のリスクは変わらなかった.
厳格な血糖コントロールにより網膜症の進展を有意に抑制した.フェノフィブラートはプラセボより有意に網膜症の進展を抑制した.厳格な血圧コントロールでの網膜症進展抑制は有意差がなかった.
調査開始時の糖化ヘモグロビン高値は,長期的な糖尿病網膜症の発症・進展の有意なリスクファクターであった.
DCCT終了10年後で強化インスリン療法群と通常インスリン療法群でHbA1c値に差を認めなかったが,通常インスリン療法群に比し,強化インスリン療法群で糖尿病網膜症の発症・進展が有意に抑制された.
中央値23年の追跡で,眼科手術は強化インスリン療法群8.9%,通常インスリン療法群13.4%で発生し,強化インスリン療法は眼科手術リスクの大幅な低下に関連した.
新 た な 網 膜 症 発 症 はMITで7.7%,CITで32%.網膜症の進展 は MIT で 19.2%,CIT で44%.血糖コントロール閾値は空腹時110mg/dL以下,食後血糖 180mg/dL 以 下 ,HbA1c6.9%以下.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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18)Kilpatrick ES et al(DCCT), 2012
RCT サブ解析[レベル 3]
19)Zoungas S et al(ADVANCE), 2010
RCT サブ解析[レベル 3]
20)DCCT Research Group,1998
RCT サブ解析[レベル 3]
21)UKPD Group (UKPDS38), 1998
RCT[レベル 1+]
22)Matthews DR et al(UKPDS 69), 2004
RCT[レベル 1+]
23)Klein R et al, 1989コホート研究[レベル 2]
24)Klein R et al,1989コホート研究[レベル 2]
25)Estacio RO et al (ABCD), 2000
RCT[レベル 1]
26)Beulerns JW et al(ADVANCE), 2009
RCT[レベル 1+]
アメリカ.1型糖尿病(1,441人).
全世界.55歳以上の2型糖尿病(11,140人)[東アジア人を含む].
アメリカ.IDDM(1,441人).
イギリス.平均56歳の高血圧を伴う2型糖尿病(1,148人).
イギリス.平均56歳の高血圧合併の2型糖尿病(1,148人).
アメリカ.30歳以下で糖尿病と診断された人(インスリン治療)
(996人).
アメリカ.若年発症糖尿病患者(891人)と高齢発症糖尿病患者(987人).
アメリカ.40〜74歳で拡張期血圧≧90mmHgの2型糖尿病
(470人).
全世界,平均66歳の2型糖尿病(1,602人)[東アジア人を含む].
重症低血糖の頻度が糖尿病網膜症および腎症の発症・進展に影響を及ぼすかを解析.
重症低血糖と大血管症,細小血管症および死亡との関連を解析.
糖尿病網膜症の早期悪化の頻度,重要性,リスクファクターを解析.
カプトプリル,アテノロールで目標血圧150/85mmHgの群と,ACE阻害薬,β阻害薬以外で目標血圧180/105mmHgの群に無作為に分類.
ACE阻害薬またはβ遮断薬で厳格に血圧コントロールを行った758人 と 通 常 治 療390人
[7.5年間観察].
網膜症の合併頻度を罹病期間に応じて観察.
血圧と糖尿病網膜症の発症・進展との関連についての解析,4年間のフォローアップ.
カルシウム拮抗薬ニソルジピンまたはACE阻害薬エナラプリルで目標DBP 75mmHgの群とDBP 80〜89mmHgの群に無作為に分類.
厳格な血圧コントール(インダパミドとペリンドプリルによる)と網膜症の発症・進展との関連を解析.
強化インスリン療法群,通常インスリン療法群,さらには全体においても,重症低血糖の頻度が糖尿病網膜症および腎症の発症・進展のリスクファクターではなかった.
重症低血糖は大血管症(HR2.88),細小血管症(1.81),心血 管 死(2.68),す べ て の 死
(2.69)において,有意なリスクファクターであった.
強化インスリン療法群は通常インスリン療法群に比し,早期悪化は高頻度であったが,長期的には強化インスリン療法群のほうが良好であった.
9年後には厳格な血圧コントロール群で網膜症が悪化するリスクが34%減少し,視力が悪化するリスクが47%減少した.ACE阻害薬とβ遮断薬では効果に差がなかった.
厳格な血圧コントロールは網膜症の進展(0.75),光凝固術の必要性(0.65),失明(0.76)のリスクを軽減する(RR).ACE阻害薬またはβ遮断薬で効果に差がない.
網膜症合併頻度は罹病期間5年以下では17%,15年以上では97.5%.増殖網膜症は罹病期間10年以下では1.2%,35年以上では67%.網膜症の重症度は罹病期間,HbA1c高値,蛋白尿,拡張期高血圧と関係する.
若年者では調査開始時の拡張血圧高値は,長期的な糖尿病網膜症の発症・進展の有意なリスクファクターであったが高齢者では有意なリスクファクターではなかった.
平 均 血 圧 は 目 標 DBP 75mmHg 群 で 132/78mmHg,DBP 80〜 89mmHg 群 で138/86mmHgであった.網膜症の進展に両群で差はなく,カルシウム拮抗薬とACE阻害薬間でも効果に差はなかった.
降圧治療と網膜症の発症・進展に有意差を認めなかったが黄斑浮腫や毛細血管瘤は有意に減少した.
論文コード 対 象 方 法 結 果
8 糖尿病網膜症
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27)Chaturvedi N et al(EUCLID), 1998
RCT サブ解析[レベル 3]
28)Chaturvedi N et al(DIRECT-Prevent 1, Protect1), 2008
RCT[レベル 1+]
29)Mauer M et al (RASS), 2009
RCT[レベル 1+]
30)Harindhanavudh T et al(RASS), 2011
RCT サブ解析[レベル 3]
31)Sjølie AK et al (DIRECT-Protect 2), 2008
RCT[レベル 1+]
32)Keech AC et al (FIELDstudy), 2007
RCT[レベル 1+]
33)Klein BE et al (WESDR), 2015
コホート研究[レベル 2]
34)The DMAD Study Group, 1989
RCT[レベル 1+]
35)ETDRS study group(ETDRS 8), 1991
RCT[レベル 1+]
36)Salinero-Fort MA et al(MADIABETES), 2013
コホート研究[レベル 2]
37)The TIMAD Study Group(TIMAD), 1990
RCT[レベル 1]
ヨーロッパ,20〜59歳,正常血圧で微量アルブミン尿以下の1型糖尿病(409人).
全世界,正常血圧,正常アルブミン尿,18〜50歳の1型糖尿病網膜症なし(1,421人):DIRECT-Prevent 1),18〜55歳の1型糖尿病網膜症あり(1,905人):DIRECT-Protect 1).
アメリカ,正常血圧,正常アルブミン尿,18歳以上の1型糖尿病
(285人).
アメリカ,正常血圧,正常アルブミン尿,18歳以上の1型糖尿病
(223人).
全世界,正常血圧または軽度高血圧を有する37〜75歳の2型糖尿病患者(1,905人).
ヨーロッパ.2型糖尿病(9,795人).
アメリカ.若年発症1型糖尿病患者(903人).
ヨーロッパ,17〜67歳の早期網 膜 症 合 併2型 糖 尿 病 患 者
(475人).
アメリカ.軽度〜重症の非増殖網膜症,早期の増殖網膜症を認める患者(3,711人)[年齢記載なし].
スペイン,30歳以上の2型糖尿病患者(3,443人).
フランス.18〜68歳の非増殖網 膜 症 合 併2型 糖 尿 病 患 者
(435人).
リシノプリル10〜20mg/日あるいはプラセボ[2年間観察].RCTの二次研究.
カンデサルタン 16〜32mg/日あるいはプラセボ[4.7〜4.8年観察].
ロサルタン100mg, エナラプリル20mgあるいはプラセボ[5年間観察].
ロサルタン100mg, エナラプリル20mgあるいはプラセボ,血糖コントロールと網膜症進展の検討[5年間観察].
カンデサルタンあるいはプラセボ.
フェノフィブラート200mg/日を投与する群とプラセボ群に分けて観察[平均5年間].
血清脂質と増殖糖尿病網膜症ならびに黄斑浮腫の発症との関連を解析.
アスピリン990mg/日±ジピリダモール225mg/日併用とプラセボによる網膜症の進展抑制[3年観察].
直ちに黄斑凝固を施行した群の視力の変化について,あとから黄斑凝固を施行した群と比較.
糖尿病網膜症の発症に関連する因子を解析[4年観察].
チクロピジンあるいはプラセボによる網膜症の進展抑制[3年観察].
網膜症の進展はリシノプリル群13.2%でプラセボ群の23.4%と比べ有意に少なかった(OR0.50,p=0.02).網膜症の発症抑制に有意差は認めなかった.
DIRECT-Prevent 1:網膜症の発症抑制に有意差を認めなかったが3段階以上の悪化はカンデサ ル タ ン で 有 意 な 低 下 .DIRECT-Protect 1:網膜症の進展は両群で同等.
網膜症の進展はエナラプリル群で65%,ロサルタン群で70%有意に減少したが血圧による差は認めなかった.
HbA1c≦7.5%では実薬群の網膜症進展効果は認めなかったが >7.5%で は 実 薬 群 27%
( 30/112)で 対 照 群 46%(26/56)と比べ有意に抑制された.
既存の網膜症の進展は抑制できなかったものの,早期網膜症では網膜症の改善を34%増加させた.
フェノフィブラートによる治療は網膜症に対する光凝固の必要性を抑制.
血清コレステロールやHDLと増殖網膜症や黄斑浮腫の発症との関連を認めなかった.
プラセボでは治療群に比べて有意に毛細血管瘤の増加を認めた.ジピリダモール併用により毛細血管瘤は少なかったが統計的有意差はなかった.
視力が悪化した割合は直ちに黄斑凝固した群のほうが少なかった.
糖尿病網膜症の発症は8.07%に認め頻度は2.03/1,000人・月であった.関連する因子はHbA1c,罹病期間,微量アルブミン,アスピリン投与(HR=1.65)であった.
プラセボでは毛細血管瘤の増加が有意に高く,インスリン治療患者ではチクロピジン群で新生血管発生率が低い傾向であった
(p=0.0.56).
論文コード 対 象 方 法 結 果
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191
38)Belgian TiclopidineRetinopathy Study Group(BTRS), 1992
RCT[レベル 1]
39)Diabetic RetinopathyStudy Research Group, 1978
RCT[レベル 1]
40)Evans JR et al, 2014メタアナリシス
[レベル 1]
41)DRVS research group, 1988
RCT[レベル 1]
42)DRVS Research Group, 1990
RCT[レベル 1]
43)ETDRS study group(ETDRS 1), 1985
RCT[レベル 1]
44)Massin P et al(RESOLVE Study), 2010
RCT[レベル 1]
45)Mitchell P et al(RESTORE study), 2011
RCT[レベル 1]
46)Wang H et al, 2012メタアナリシス
[レベル 1]
47)Korobelnik JF et al(RESTORE study), 2014
RCT[レベル 1]
48)The Diabetic Retinopa-thy Clinical Research Net-work, 2015
RCT[レベル 1]
ベルギー.18〜65歳の糖尿病網膜症合併インスリン治療中の糖尿病患者(100人).
アメリカ.重症の非増殖網膜症または増殖網膜症を有する糖尿病(1,758人).
糖尿病網膜症を有する症例を対象とした5件のRCT.
アメリカ.進行した活動性の増殖網膜症(370眼).
アメリカ.硝子体出血による視力低下をきたした616眼.
アメリカ.中等症または重症の非 増 殖 網 膜 症 を 有 し ,視 力20/200(約0.1)以上の糖尿病黄斑浮腫患者(計2,244眼).
ヨーロッパ.中心窩網膜厚が300μm 以 上 で ETDRS 視 力78文字から39文字の視力を有する糖尿病黄斑浮腫患者(151人).
アメリカ.ETDRS視力78文字から39文字の視力を有する糖尿病黄斑浮腫患者(345人).
糖尿病黄斑浮腫を有する症例に対するラニビズマブ硝子体注射の治療効果を検証した4件のRCT.
アメリカ,ヨーロッパ,日本など.糖尿病黄斑浮腫を有する1型糖尿病および2型糖尿病患者
(872人).
アメリカ.糖尿病黄斑浮腫を有する患者(660人).
チクロピジンあるいはプラセボによる網膜症の進展抑制[3年観察].
片眼に光凝固術を施行し,対側は経過観察のみ.
網膜光凝固施行群と無治療群(または治療延期群)で比較.
硝子体手術を行う群と通常治療群に無作為に分類.
早期に硝子体手術を行う群と1年以降に待機的に手術する群に無作為に分類.
直ちに黄斑凝固を施行した群の視力の変化について,あとから黄斑凝固を施行した群と比較.
偽治療群,0.3mgラニビズマブ硝子体注射群および0.5mgラニビズマブ硝子体注射群に無作為に分類[12ヵ月間調査].
黄斑凝固群,ラニビズマブ硝子体注射および黄斑凝固群,ラニビズマブ硝子体注射群に分けて12ヵ月間観察.
無治療群とラニビズマブ硝子体注射群での比較および黄斑凝固群とラニビズマブ硝子体注射+黄斑凝固群で比較[1年間および2年間の調査].
黄斑凝固群とアフリベルセプト硝子体注射群に分けて52週間観察.
アフリベルセプト硝子体注射群とベバシズマブ硝子体注射群とラニビズマブ硝子体注射群での比較[1年間の調査].
チクロピジンによる網膜症の進展抑制は認めなかった.
3年間で5/200以下の視力まで悪化した率は治療群で10.5%,非治療群で26.4%であり,光凝固術により視力が悪化するリスクが60%減少した.
網膜光凝固施行群で12ヵ月後の視力悪化のリスクが54%,網膜症の進展リスクが51%抑制された.
4年 後 に は 硝 子 体 手 術 群 の44%,通常治療群の28%で良好な視力を維持できた.新生血管が著明な症例では硝子体手術がより効果的であった.
重症増殖網膜症の硝子体出血では早期に硝子体手術を行うことで良好な視力を維持できる可能性がある.
視力が悪化した割合は直ちに黄斑凝固した群のほうが少なかった.
偽治療群に比し,ラニビズマブ硝子体注射群で有意な視力改善効果と中心窩網膜厚の減少を認めた.
ラニビズマブ硝子体注射群と黄斑凝固併用群とでは有意差がなく,黄斑凝固単独群よりも治療効果が高い.
無治療群に比しラニビズマブ硝子体注射群で有意な視力改善効果と中心窩網膜厚の減少を認め,黄斑凝固群に比しラニビズマブ硝子体注射+黄斑凝固群で有意な視力改善効果と中心窩網膜厚の減少を認めた.
黄斑凝固群に比し,アフリベルセプト硝子体注射群で有意な視力改善効果と中心窩網膜厚の減少を認めた.
硝子体注射前の視力低下が軽度な症例では,3群間で視力改善効果に差を認めないが,視力低下が重度な症例では,アフリベルセプト硝子体注射群において,他の2群に比し有意な視力改善効果を認めた.
論文コード 対 象 方 法 結 果
8 糖尿病網膜症
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49)Beck RW et al(DRCR.net), 2009
RCT[レベル 1]
50)Chew EY, 1995コホート研究[レベル 2]
51)Soubrane G, 1985コホート研究[レベル 2]
52)DCCT Research Group, 2000
RCT サブ解析[レベル 3]
53)Vestgaard M et al, 2010コホート研究[レベル 2]
54)Petrou P et al, 2010症例集積
[レベル 4]
55)Rossing P et al, 2002コホート研究[レベル 2]
56)Cheung N et al (ARIC), 2007
コホート研究[レベル 2]
57)Cheung N et al (ARIC), 2007
コホート研究[レベル 2]
58)Gerstein HC et al(ACCORD), 2013
RCT サブ解析[レベル 3]
ア メ リ カ .視 力 20/40〜20/320の視力を有する黄斑浮腫患者(306眼).
アメリカ.糖尿病女性(155人)[年齢記載なし].
フランス.20〜35歳の2型糖尿病(22人).
アメリカ.13〜39歳の1型糖尿病女性(680人).
デンマーク.妊娠14週以前の1型糖尿病女性(102人).
ギリシャ,29歳1型糖尿病女性と25歳女性.
デンマーク.アルブミン尿を認めない18歳以上の1型糖尿病患者537人.
アメリカ.冠動脈疾患を有さない2型糖尿病患者(1,524人).
アメリカ.冠動脈疾患および脳卒中の既往のない2型糖尿病患者(1,617人).
アメリカ,カナダ.2型糖尿病患者(3,433人).
黄斑凝固群,1mgトリアムシノロン注射群および4mgトリアムシノロン注射群に無作為に分類
[3年間調査].
妊娠初期から出産1ヵ月後まで妊娠中の網膜症の進展と代謝コントロールの検討.
軽度の網膜症を有する妊娠女性の網膜症の進展を評価.
試験期間中に妊娠した女性と非妊娠女性の網膜症の発症・進展度を比較[6.5年間調査].
網膜症の進展と妊娠中の血糖・血圧コントロール状態との関連性を解析.
症例報告.
アルブミン尿,蛋白尿への進展を観察[8年間観察].
糖尿病網膜症と冠動脈疾患の発症との関連を検討[7.8年間観察].
糖尿病網膜症と虚血性脳卒中の発症との関連を検討[7.8年間観察].
糖尿病網膜症の重症度と心血管イベントの発症との関連を検討
[4年間調査].
平均視力変化は黄斑凝固群で5文字改善したのに対し,1mgおよび4mgトリアムシノロン注射群では0文字であり,黄斑凝固に対するトリアムシノロン注射の治療有用性は否定的であった.
妊娠初期の網膜症の重症度が高いほど進展リスクは高かった.初回のHbA1cの高値,14週までの急激な血糖の改善が網膜症進展リスクと有意な関連性を認めた.
妊娠経過とともに毛細血管瘤は増加し出産後は減少したが妊娠前よりも増加したままであった.
非妊娠女性と比較し,妊娠女性の網膜症の発症・進展は強化療法群で1.63倍,通常療法群で2.48倍.妊娠中期に最大(OR4.26)となり出産後1年後まで有意なリスク上昇を認めたが試験終了時には非妊娠女性と同程度の網膜症となっていた.
網膜症の進行は妊娠初期の黄斑症の存在,視力障害の存在,高血圧と関連性を認めたがHbA1cや低血糖の頻度とは認めなかった.
bavacizumab眼内投与後に妊娠判明したが投与後7日後および10日後に流産を確認.
有意なリスクファクターとして,アルブミン尿排泄率(RR2.63),HbA1c(1.13),糖尿病網膜症(1.90),喫煙(1.61)が示された.
糖尿病網膜症の存在により,冠動脈疾患の発症リスクが2.07倍上昇した.
糖尿病網膜症の存在により,虚血性脳卒中の発症リスクが2.34倍上昇した.
糖尿病網膜症を認めない患者に対し,軽度の糖尿病網膜症の存在により,心血管イベントの発症リスクが有意に上昇(HR1.49)し,また重度の糖尿病網膜症の存在により,心血管イベントの発症リスクがさらに上昇
(HR 2.35)した.
論文コード 対 象 方 法 結 果
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193
59)Kawasaki R et al (JDCS), 2013
コホート研究[レベル 2]
60)El-Asrar AM et al, 2001横断研究
[レベル 4]
61)Retnakaran R et al(UKPDS 74), 2006
RCT サブ解析[レベル 3]
62)Molitch ME et al(DCCT/EDIC), 2010
コホート研究[レベル 2]
日本.2型糖尿病患者(2,033人)[日本人].
サウジアラビア.1型糖尿病210人,2型糖尿病438人.
イギリス.アルブミン尿を認めない2型糖尿病患者4031人およびScrが正常な2型糖尿病患者5,032人.
アメリカ.1型糖尿病(1,439人).
日本人2型糖尿病における糖尿病網膜症の有無と冠動脈疾患および脳卒中の発症リスクとの関連を解析[8年間観察].
糖尿病網膜症と糖尿病腎症との関連を検討.
2型糖尿病患者における腎機能障害のリスクファクターを検討
[15年間調査].
アルブミン尿の有無別に腎機能の推移を観察[19年間観察].
糖尿病網膜症を認めない患者に対し,軽度から中程度の非増殖性糖尿病網膜症の存在により,心血管イベントの発症リスク
(HR 1.69)および脳卒中の発症リスク(HR 2.69)が有意に上昇した.
糖尿病網膜症と糖尿病腎症との相関は2型糖尿病患者より1型糖尿病患者で強い.
4,031人中1,544人(38%)がアルブミン尿を認め,5,032人中1,449人(29%)が腎機能障害を認めた.両者共通のリスクファクターは収縮期血圧高値,アルブミン尿高値,Scr高値,人種差であった.
1,439人中89人がeGFR 60mL/min/1.73m2未満に低下した.eGFR 60mL/min/1.73m2
未満のなかで正常アルブミン尿であった割合は24%であった.
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8 糖尿病網膜症
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