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ジオトリフ 適正使用ガイドブック Vol. 2 日本標準商品分類番号:874291 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 肺腫瘍内科 主任部長 平島 智徳 先生 クリニカルパス運用による 安全な治療計画 ~実地医療の経験から~ はじめに ジオトリフのクリニカルパスの運用 当院におけるパス パスの運用状況 パスの評価 今後の課題 長期投与で予想される課題と対策 ジオトリフのクリニカルパスの作成 クリニカルパス導入の経緯と作成の流れ パスの作成、薬剤の適切な使用のための課題の抽出 下痢対策チャートの作成 雛形の作成-医師 下痢の評価スケール-看護師を含めた検討 ロペラミドの使用-多職種での検討 皮膚障害対策 パスにおける薬剤師の検討 おわりに CONTENTS 2 3 11 16 17 012622-B 2016 年 3 月作成

Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

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Page 1: Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

ジオトリフ適正使用ガイドブック

000000-A 2014年0月作成

Vol.2

日本標準商品分類番号 : 874291

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 肺腫瘍内科 主任部長平島 智徳 先生

クリニカルパス運用による安全な治療計画~実地医療の経験から~

はじめに ジオトリフのクリニカルパスの運用 当院におけるパス

 パスの運用状況

 パスの評価

今後の課題 長期投与で予想される課題と対策

ジオトリフのクリニカルパスの作成 クリニカルパス導入の経緯と作成の流れ

 パスの作成、薬剤の適切な使用のための課題の抽出

 下痢対策チャートの作成  雛形の作成-医師  下痢の評価スケール-看護師を含めた検討  ロペラミドの使用-多職種での検討

 皮膚障害対策

 パスにおける薬剤師の検討おわりに

CONTENTS

2

3

11

16

17

012622-B 2016 年 3 月作成

Page 2: Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

はじめに大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 肺腫瘍内科 主任部長 平島 智徳 先生

現在のがん薬物療法は、殺細胞性抗がん剤とがん細胞の増殖・転移に必須となる分子を標的とした分子標的治療薬が主な治療法となっている。上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対してはゲフィチニブ、エルロチニブなどの第一世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)が標準的治療となっている。

2014年1月に本邦で新たに承認された第二世代のEGFR-TKIであるジオトリフは、化学療法未治療のEGFR遺伝子変異陽性・非小細胞肺癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験であるLUX-Lung 3とLUX-Lung 6の統合解析において、ジオトリフが化学療法に対し全生存期間を延長したことが2014年米国臨床腫瘍学会で報告された。しかし、下痢、ざ瘡様皮膚炎、爪囲炎などの副作用の発現頻度やGradeが高いため、従来のように医師を中心とした副作用への対応では不十分であることが予測された。そこで医師、薬剤師、看護師など多職種がチームとして連携を保ちながら患者さんをもチームに組み入れた形でケアしていくことが、ジオトリフの効果を最大化すると考えた。

本冊子では、大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターにおけるジオトリフクリニカルパス(以下、パス)導入の経緯、運用状況、今後の課題について紹介する。この内容が実地臨床下でジオトリフを投与する際の一助となれば幸いである。

後列左より:山東真寿美(薬剤師)、鈴木秀和(医師)、平島智徳(医師)、田宮基裕(医師)前列左より:岩田香(看護師)、疋田亜美(看護師)、良田紀子(看護師)      (敬称略)

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ジオトリフのクリニカルパスの作成

クリニカルパス導入の経緯と作成の流れ パスの作成、薬剤の適切な使用のための課題の抽出

 化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験(LUX-Lung 3)が実施されてジオトリフの有用性が認められた。発現頻度が高い副作用として下痢(95.2%)、発疹/ざ瘡(89.1%)、口内炎(72.1%)、爪の異常(61.1%)などが報告され、特に下痢、発疹/ざ瘡は、Grade 3以上の発現頻度が高くなる可能性が考えられた。 EGFR-TKIはEGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌治療において重要な薬剤であり、新たな作用機序を有するジオトリフへの期待は大きい。患者さんへより上手に使用していくためには、治療中の副作用をどのようにマネジメントするかが当院においても課題であると考えた。そこで、薬剤の発売と同時に、各医療者が同一の目線で患者さんをケアできる仕組みが運用できるようにパスの作成を検討した。 パスの作成においては、医師だけでなくケアの中心となる看護師、及び導入から外来まで長期にわたり関与する薬剤師を含めてジオトリフによる治療をマネジメントするためのチームを結成し、以下のような検討やチームでの議論を経てパスを完成させた(表1)。

 当院では、以前より抗がん剤治療においてクリニカルパスを運用してきた実績がある。そのため、ジオトリフ導入のパスにおいても各医療者が違和感なく速やかに運用できる内容であることが重要と考えた。パスの作成にあたっては、①現在あるEGFR-TKIパスをベースにジオトリフに必要な内容を追加すること、②パスの詳細については運用の中心となる看護師が使用しやすいものとすること、の2点を条件とし、これらをクリアするための課題(表2)の抽出に取り組んだ。 当院ではジオトリフの使用経験がなく、副作用の発現について実感がなかったことから、まずは短期的な副作用対策を重視した。既存のEGFR-TKIでの間質性肺炎(ILD)の発現時間を考慮して、これまでのパスと同様、2週間の導入入院としたことから、その期間のパスを作成することとした。 また、ジオトリフの投与開始後2週間以内に発現する副作用は、ざ瘡様皮膚炎及び下痢が中心であり、Grade 3以上の発現頻度が高いと予測された。そこで、看護師がパスの詳細を決定するにあたっての詳細な要望を伝える要望書を作成した。しかし、実際には下痢対策は抽象的なことが多く、毎日のジオトリフ服用の判断に関係するため、医師の立場で下痢の対策チャートを作成することとなった。

ジオトリフのチームを作ろうと考えた当時を振り返って(医師:鈴木秀和) ジオトリフは副作用がひどいらしいから普通にしていては使用できない。どうすればよいのだろうかと悩んでいるときに、まさに「患者-医療者間でパスの運用をすればいいのかな?」とひらめいたわけです。当院のスタッフは優秀なので問題を相談したら、良い答えを返してくれるのではないかと思い、まずは実際運用する側である看護師に検討してもらうことにしました。今思えば悪いことをしたなとも思いますが、スタッフを信頼すればこそできることだと感謝しています。

■2013年10月~12月(鈴木Dr.、岩田Ns.、良田Ns.、山東Ph.) ・パス作成にあたり条件の設定 ・条件を満たすための課題の抽出及び対策の検討(医師)

■2014年1月~3月(田宮Dr.、岩田Ns.、良田Ns.、山東Ph.) ・課題と対策の盛り込み(看護師) ・薬剤指導に必要な情報の検討(薬剤師) 同年2~3月

パス作成の流れ及び分担表1

1. パスの運用期間についてはジオトリフ導入期間中の2週間とする。

2. 短期的な副作用管理についてざ瘡様皮膚炎、下痢対策に重点をおく。

→看護師の要望書の作成

・ざ瘡様皮膚炎対策:既存のパスにある保湿剤に加えミノサイクリンを予防投与として セット処方に組み込むこと。

・下痢対策:下痢症状を有した際に、患者さんが簡便にジオトリフを服薬できるツールを作成すること。

→下痢の対策チャートの作成

パス作成の課題表2

43

「警告・禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DI頁をご参照ください。

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ジオトリフのクリニカルパスの作成

下痢対策チャートの作成

 下痢対策チャートの作成にあたってはASCOガイドラインを引用したツールの作成を試みたが、日本の現状とかけ離れている点も多く独自の基準を構築する必要があると考えた。そこで、イリノテカンや今までのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の経験を基に検討し、患者さん及びそのご家族、医療者が容易に理解できる内容であることが最重要と考えて雛形を作成し、下痢が発現した際の対処方法も混乱が生じないように注意を払った(表3)。

雛形の作成-医師  医師から提示のあったチャートの雛形だけではうまくいかないと思い、下痢対策を再検討した。まず、患者さんと下痢について話す中で問題となるのは、どれが下痢でどれが正常な便であるかを的確に医療者間及び患者さんと共有できない点であると考えた。そこで、客観的に判断できる方法が必要であると考え、今回はブリストル便性状スケール(図1)を使用することとした。このスケールを用いれば患者さんとの会話で「今日の便は5番と7番でした」といった具体的な情報を容易に得ることができる。また、患者さんも容易に自分の便について状態を把握することができるので、不要な心配を回避した上でセルフマネジメントも可能となる。

下痢の評価スケール-看護師を含めた検討

 服薬量の過誤を回避するため、容易に理解できるように「服薬時は2個(2mg)」とした。これは、ASCOガイドラインなどで推奨されている初回4mg、次回以降2mgという表記ではロペラミドの初回投与がいつなのかあいまいになることがあるためである。 また、ロペラミドの服薬タイミングはASCOガイドラインでは4時間おきとなっているが、前回の服薬による薬効が未発現なのか、投与量が不足しているのかの判別が困難であることと、下痢は重篤化すると生命の危機に直面することから、より厳しい基準として2時間ごとの服薬とした。これは2個(2mg)と2時間おきと数字をそろえることで、用法・用量の間違いを未然に防ぐための基準でもある。

*ロペラミドの国内での用法・用量は、「ロペラミド塩酸塩として、通常、成人に1日1~2mgを1~2回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。」です。

・ジオトリフの下痢対策にはロペラミドのみを使用する・ロペラミドの最大投与量は20mg/日とする・ロペラミドの服薬状況はmgではなく「個(数)」で計測する※

・服薬時の個数は2個(2mg)とする※

・服薬タイミングは2時間ごととする※、※※

※ 多職種での再検討も行った。※※ 再検討により4時間ごととなった。

コロコロ便

硬い便

やや硬い便

普通便

やや軟らかい便

泥状便

水様便

1

2

3

4

5

6

7

非常に遅い(約100時間)

非常に早い(約10時間)

*6、7を下痢としています

硬くてコロコロの兎糞状の便

ソーセージ状であるが硬い便

境界がほぐれて、ふにゃふにゃの不定形の小片便泥状の便

水様で、固形物を含まない液体状の便

はっきりとしたしわのある柔らかい半分固形の便

表面にひび割れのあるソーセージ状の便

表面がなめらかで柔らかいソーセージ状、あるいは蛇のようなとぐろを巻く便

消化管の通過時間

Lewis SJ. et al.:Scand J Gastroenterol 32(9), 920, 1997

医師談: 余談ではあるが、パスの雛形はすぐにできると考えていたがそこが落とし穴だった。下痢の対策はいろいろな状況が想定され、かつ外来でも続く。そのため判断がしにくい場合が発生しパスの作成をあきらめかけたこともあった。よって、この後の検討過程において最大の障壁となることは容易に想像できたわけである。

雛形作成時に決めた内容表3ブリストル便性状スケール図1

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皮膚障害対策 下痢の対処として医師から要請されたロペラミドの使用について、ロペラミドの服薬状況の表記は本当に「mg」でなく「個」でよいか、服薬タイミングは2時間おきでよいか、効果発現は服薬後いつからなのか、といった点について、医師、薬剤師、看護師で何度となく検討を重ね、下記のとおりフローチャートを決定した(図2)。

ロペラミドの使用-多職種での検討

 従来は、EGFR-TKI投与開始時に保湿剤をセット処方していた。当院ではセツキシマブ等のEGFR抗体薬の使用経験もあったことから、医師より要請のあったミノサイクリンのセット処方をパスに導入することは容易であった。ミノサイクリン使用時の用量については確固たるデータがないが、抗炎症効果が期待できる投与量で、服薬期間の長期化も想定されたことから100mg/日(夕方)とした。

《下痢が出たとき》 下痢以外にも下記の症状に注意してください・激しい腹痛、しぶり腹 ・発熱、おう吐、口渇・血便、黒色便、白色便 ・飲食不能・めまい、倦怠感いずれかの症状があれば病院へ相談してください※ただしロペラミド内服後、4時間までの間に下痢をすれば、

 前回のロペラミド内服から1時間以上たっていたら ロペラミドを内服してください

下痢が出る

次回受診時に主治医へ報告してください

下痢が止まる

下痢が止まるまで4時間おきにロペラミドを2錠ずつ飲む

ロペラミドを内服しても下痢が8回以上あれば病院へ連絡してください

ロペラミド内服開始後12時間下痢を認めなければ、12時間目(4回目)からロペラミド内服は中止

《ジオトリフ内服について》

いいえ

現在から24時間以内に下痢がありましたか?

ジオトリフを飲んでください

4回まで

ジオトリフを飲んでください

5~7回

今日は薬はお休みです

8回以上

病院に連絡してください

はい

何回下痢がありましたか?

ジオトリフのクリニカルパスの作成

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 提供

 ロペラミドの数え方は、mgではなく、患者さんも容易に数えられる「個」とした。また、ジオトリフの服薬の可否については、NCI-CTCAEに準じて下痢の回数で表記した。 下痢が出たときの対処として、ロペラミドの服薬量は、患者さんの理解力を向上し、過剰な服薬を避けるため常に2個ずつとした。また、服薬間隔はASCOガイドラインに準じ、4時間おきとした。また、ロペラミド服薬後1時間以上経過しても下痢が継続している場合は重症化を防ぐため、再度ロペラミドを服薬することとしている。この科学的根拠は乏しいため、データを集積して今後検討することにしている。看護師はパスの運用においても上記のチャートを使用している。

薬剤師談: 副作用の強い薬剤ほど観察・副作用対策が重要で対応の標準化が必要であり、ジオトリフについてもパス・運用の重要性を密かに感じておりました。ですので、パスの作成に加わってほしいと依頼を受けたときは、看護師と協力して頑張ろうと思いました。それから、パスの作成・運用にあたり薬剤師の役割とは何かを考えていきました。

看護師談: 「ジオトリフを使用するために副作用対策をなんとかしてよ。クリニカルパスでもできないかな?」と話が飛んできたときには正直「え?」でしたね。「ジオトリフって何?」みたいな。よくよく話を聞いているとどうやら肺癌の新しい薬剤が出るらしいとのこと。効果も期待できるが副作用が大変だとわかりました。看護師としてなんとかしてパスの運用までこぎつけ、患者さん・ご家族が安心して治療を受けることができるように頑張りたいと思いましたが、しばらくして後悔したのは秘密です。EGFR-TKIの既存のパスもあり、すぐに完成する予定でした。それがクリニカルパス委員会の締切に間に合うか否かの状態になろうとは想像もしていませんでした。

下痢対策のフローチャート図2

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ジオトリフのクリニカルパスの作成

パスにおける薬剤師の検討

 パスにおける薬剤師の役割としては、クリニカルパスに組み込む薬剤の科学的根拠の提示、適正使用、薬剤管理指導の実施がある。特にジオトリフについては、副作用対策が治療の継続のポイントと考え、患者さんとご家族にジオトリフの副作用・副作用対策・セルフケアに重点をおいた薬剤管理指導を行うこととした。 そこで、薬剤師の役割として、①ジオトリフ服用開始前に必ず服薬指導を行う、②ジオトリフと同時に開始となる薬剤、ロペラミド、保湿剤、ミノサイクリンの処方の確認及び説明、セルフケアの指導を行う、の2点をクリニカルパスに盛り込んだ。 ブリストル便性状スケール(図1)、《下痢が出たとき》のチャート(図2)のほかに、ベーリンガーインゲルハイム社の作成資材(患者向け小冊子「ジオトリフを服用される方へ」、パッケージ封入指導箋「ジオトリフを服用される方へのお知らせ」)(図3)を実際に使用しているほか、保湿剤の塗布部位についての皮膚科医からの指示書も使用している(図4)。

1日2回 朝・夕ヘパリン類似物質ローション

※爪の周囲や指の間なども 忘れずに塗ってください。

 薬剤師からの服薬指導では、副作用、その対応策、予防策などについて説明します。随時、副作用の発現の有無を確認しています。医師や看護師に任せるのではなく、保湿剤の塗り方や塗布部位、日常生活の送り方、健康食品の摂取の注意点などについても指導しています。 特に注意してほしい副作用、下痢については、ジオトリフの服用開始初期から起こる可能性があるということと、下痢の悪化が脱水や腎不全など、重篤な合併症を引き起こす可能性があるということを理解してもらいます。また、どのタイミングでロペラミド内服を開始するのかを確認し、看護師がすぐ動けるという体制にしています。便の評価スケールや管理チャートの利用においては、薬剤師も必ずチェックを入れて忘れないようにしています。 またロペラミドの内服時間や便の回数などもチェックし、7日目に自己管理可能かどうかというアセスメントを必ずするような項目をクリニカルパスに取り入れて利用しています。

ベーリンガーインゲルハイム社の作成資材図3

保湿剤の塗布部位図4

●ジオトリフを服用される方へ ●ジオトリフを服用される方へのお知らせ

このような症状に注意しましょう!

●次のような症状がみられたら、受診時に担当医にお知らせください。

施設名

下痢 ・激しい下痢がある・頻回の下痢を認める

爪の(まわりの)異常

・爪のまわりの皮膚が赤く腫れる・痛みがある

眼の異常 ・眼の痛み、腫れ、発赤・ジオトリフ服用中のかすみ目や視覚の変化

口内炎

・口のなかの痛み、出血、熱いものや冷たいものがしみる・口の乾燥、口のなかが赤くなったり腫れたりする・口が動かしにくい・ものが飲みこみにくい・味が変わる

間質性肺疾患・階段をのぼったり、少し無理をしたりすると息切れがする、

息苦しくなる・空咳(からせき)がでる・発熱がある

肝障害・倦怠感・尿の色が濃くなる・皮膚や白目が黄色くなる

皮膚症状・高熱(38℃以上)・皮膚の広い範囲が赤くなる・目の充血、めやに(眼分泌物)、まぶたの腫れ、目が開けづらい

●次のような症状がみられたら、すぐに担当医に連絡しましょう!

心障害・呼吸困難や動悸があらわれる ・疲れを感じる ・足のむくみがあらわれる

消化管潰瘍、消化管出血

・胃がもたれ、胸やけ、吐き気、食欲不振がある ・胃の痛み、空腹時あるいは食後にみぞおちに痛みがある ・吐血や便が黒くなる

013121-A 2015年12月作成

       服用される方へのお知らせジオトリフを

注意すべき症状は裏面参照

●薬剤保管上の注意本剤は湿気と光に不安定なため、服用直前に開封し、開封後には湿気と光を避けて保存してください。

ジオトリフは1日1回、毎日同じ時間の空腹時に服用

3時間前 1時間後

食事は避けてください

ジオトリフの服用時間

担当医や薬剤師と相談の上、記入しましょう

●ジオトリフは、1日1回、毎日同じ時間の空腹時(食前 の1時間以内、食後の3時間以内を避けて)に、コップ 1杯の水やぬるま湯で服用してください。

●飲み忘れた場合など前回の服用時間を覚えていないなど、わからないことがある場合には、すぐに担当医、看護師、もしくは薬剤師に連絡してください。間違って飲んだとき、多く飲みすぎてしまったかもしれないときにも連絡してください。

!

①服用時間に近い場合(8時間以内)は、服用せずに、次の決められた時間に定められた用量を服用してください。

②次の服用時間まで8時間以上ある場合、空腹時の条件(前の食事から3時間以上経過し、次の食事まで1時間以上時間があること)を満たすことができれば、服用することができます。

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タスクについて

タ ス ク

  入院時/

  内服 1 日目~内服 7 日目/   ~   /

  内服 8 日目~内服 14 日目/   ~   /

  内服 15 日目~内服 21 日目/   ~   /

  退院時/

治療処置 □ 下剤は全て中止

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

薬剤□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方□○ ビーソフテンローション

処方又は保湿剤(市販)□○ 屯用 ロペラミド 処方

□○ ジオトリフ用必要時指示入力、出力屯用:必要時指示参照

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ 退院処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

屯用:必要時指示参照

☆下痢(ブリストル便性状スケール参照)のときは、4 時間毎ロペラミドを 2 錠ずつ内服。12 時間下痢を認めなければ、12 時間目から の内服は中止。ただし、ロペラミド内服後 4 時間までの間に下痢をした場合、前回ロペラミド内服から 1 時間以上経過していれば、 ロペラミド 2 錠内服とする

検査 □○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

研究採血

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照□○ 胸部 CT(単/造)□○ CT 造影剤同意書

□○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

清潔 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭

排泄 トイレ    トイレ    トイレ   

食事 □○ 常食□○ 治療食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

安静度 フリー フリー フリー

教育・説明 □○ 服薬指導□○ 治療同意書 ○ 病棟オリエンテーション ○ 転倒転落アセスメントシート

コンサルテーション □○ 服薬指導依頼□○ 入院療養計画書

□○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 退院療養計画書□○ 外来予約

その他 □○ 退院処方

持参薬 日時 追加指示医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン

□ 続行中止

【     】

肺腫瘍内科  ジオトリフパス  ID:          患者名:          主治医:          指示受け看護師:

大阪府立呼吸器アレルギー医療センター

タスクについて

タ ス ク

  入院時/

  内服 1 日目~内服 7 日目/   ~   /

  内服 8 日目~内服 14 日目/   ~   /

  内服 15 日目~内服 21 日目/   ~   /

  退院時/

治療処置 □ 下剤は全て中止

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

薬剤□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方□○ ビーソフテンローション

処方又は保湿剤(市販)□○ 屯用 ロペラミド 処方

□○ ジオトリフ用必要時指示入力、出力屯用:必要時指示参照

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ 退院処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

屯用:必要時指示参照

☆下痢(ブリストル便性状スケール参照)のときは、4 時間毎ロペラミドを 2 錠ずつ内服。12 時間下痢を認めなければ、12 時間目から の内服は中止。ただし、ロペラミド内服後 4 時間までの間に下痢をした場合、前回ロペラミド内服から 1 時間以上経過していれば、 ロペラミド 2 錠内服とする

検査 □○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

研究採血

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照□○ 胸部 CT(単/造)□○ CT 造影剤同意書

□○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

清潔 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭

排泄 トイレ    トイレ    トイレ   

食事 □○ 常食□○ 治療食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

安静度 フリー フリー フリー

教育・説明 □○ 服薬指導□○ 治療同意書 ○ 病棟オリエンテーション ○ 転倒転落アセスメントシート

コンサルテーション □○ 服薬指導依頼□○ 入院療養計画書

□○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 退院療養計画書□○ 外来予約

その他 □○ 退院処方

持参薬 日時 追加指示医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン

□ 続行中止

【     】

肺腫瘍内科  ジオトリフパス  ID:          患者名:          主治医:          指示受け看護師:

大阪府立呼吸器アレルギー医療センター

週めくりパスについてジオトリフ内服のクリニカルパス No.2

ID:                    患者氏名                       主治医                       受け持ち看護師クリティカルインディケーター:・ジオトリフの副作用、投与方法を理解している。・ジオトリフの内服に同意している。・ジオトリフの中止基準を満たさない

Day 1 Day 2 Day 3 Day 4 Day 5 Day 6 Day 7報告基準 BP     P     T 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日

発熱:T:37.5℃以上 250 140 40

200 120 39

150 100 38

100 80 37

50 60 36

0 40 35

20 34

脈拍:HR150以上HR50以下

血圧:収縮期160以上80以下

SPO2:90以下

下痢・皮疹 grade2以上

体重測定 体重A:検査 照治療

薬剤

介入項目

B:観察  項目

症状がありの場合またはグレード1以上は共有記録に

記録必要

指示

11時ジオトリフ内服11時 体温11時 SpO2持参薬の確認軟膏処置

数字 酸素吸入(ℓ)Spo2(%)

あり・なし記入

ラ音咳痰呼吸困難

グレードで記入

下痢爪囲炎口内炎皮疹

皮疹部位

自由記載・麻薬など

観察項目 屯用薬屯用記入・投与時刻記入

ロペラミド内服時間食事量1日便回数

便回数(各勤務)便性状(ブリストル便性状スケール)

腹鳴C:機能D:言動 苦痛・要望・不満・質問 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無E:説明  教育  指導

ジオトリフ自己管理説明入院時オリエンテーション服薬指導

F:知識G:合併症H:他科受診I:その他J:システム パス番号入力

看護師サインクリティカルインディケーター   達成できた  ・  できていない

Dr. サイン

大阪府立呼吸器アレルギー医療センター

当院におけるパス

 当院では、①入院診療計画書、②タスク/指示書(図5)、③日めくり/週めくりクリニカルパス(図5)、④副作用のグレード表などを作成し、運用している。それぞれのポイントを以下に示す(表4)。

ジオトリフのクリニカルパスの運用

■入院診療計画書入院中の生活、薬剤の服用時間をはじめ、副作用への対処法から退院後までが、患者さんにも一目でわかりやすいものになっている。

■タスク/指示書(図5)特に口頭連絡では指示出しや指示受け、対応のミス等が起こる可能性があるので、医師を含めすべての医療関係者がこの指示書に目を通して対応する。薬剤の受け忘れも一目で確認できる。具体的な指示や依頼事項を記入しておくことで患者を適切に管理できる。指示・依頼事項の例: ・看護師→医師:下痢をする可能性が高い薬剤であるので、下剤を中止してください ・薬剤師→看護師:ジオトリフ、ミノサイクリン、保湿剤の受け忘れの確認連絡 ・看護師→医師:下痢が出た場合のロペラミドの内服タイミングを具体的に指示してください

■日めくりパス/週めくりパス(図5)副作用のグレード表を見ながら記載でき、便の回数やロペラミドの服薬タイミングが一目でわかるようにしてあり、自己管理可能かどうかのアセスメントに活用できるようにしてある。特に、統一した副作用グレード表を使うことにより、副作用のレベルを主観的ではなく客観的に判断でき、抗がん剤治療への慣れによらず、一貫性のある判断が可能になっていると考える。患者の症状について報告基準も作成しており、その基準に則り医師に報告することになっている。

 看護師にとって何よりも大事なのは、入院中は、日々患者さんが、①ジオトリフを正しく服用して、②下痢に対する対応ができて、③皮膚障害に対する対応ができているという状態になるように指導していくことです。毎日毎日、ただチェックをするだけではなくて、それに対して指導を入れていきながら患者さん自身がセルフマネジメントできるようにもっていくというのが重要な役割なのではないかなと思います。副作用に対するわるい噂が流れたりしましたので、スタッフ自身が自信をもって指導できるようにジオトリフ導入前に各病棟のスタッフに対して必ず勉強会をしたりするなど、対応の均一化をしていくことも重要です。連携が上手くいくように「こういう形で必ずチェック項目を入れていますので見てください」とか、「便スケールはこういう形です」というのをきちんとスタッフに説明して、「ちゃんと紙に残してね」という風に可視化も図り、スタッフがこれを見たら自信を持って患者さんのケアと指導を行えるように工夫もしています。

パスの詳細表4

タスク及び週めくりパス図5

皮膚障害のコントロールに必要な薬剤の受け忘れも一目で確認できます。また下痢のときにロペラミドをどのように服用するのかの基準も記載されています。

患者の症状について報告基準も作成しており、その基準に則り医師に報告することになっています。また、副作用のグレード表を見ながら記載でき、便の回数やロペラミド服薬タイミングが一目でわかるようにしてあり、自己管理可能かどうかのアセスメントに活用できるようにしてあります。週めくりパスについて

ジオトリフ内服のクリニカルパス No.2ID:                    患者氏名                       主治医                       受け持ち看護師クリティカルインディケーター:・ジオトリフの副作用、投与方法を理解している。・ジオトリフの内服に同意している。・ジオトリフの中止基準を満たさない

Day 1 Day 2 Day 3 Day 4 Day 5 Day 6 Day 7報告基準 BP     P     T 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日

発熱:T:37.5℃以上 250 140 40

200 120 39

150 100 38

100 80 37

50 60 36

0 40 35

20 34

脈拍:HR150以上HR50以下

血圧:収縮期160以上80以下

SPO2:90以下

下痢・皮疹 grade2以上

体重測定 体重A:検査 照治療

薬剤

介入項目

B:観察  項目

症状がありの場合またはグレード1以上は共有記録に

記録必要

指示

11時ジオトリフ内服11時 体温11時 SpO2持参薬の確認軟膏処置

数字 酸素吸入(ℓ)Spo2(%)

あり・なし記入

ラ音咳痰呼吸困難

グレードで記入

下痢爪囲炎口内炎皮疹

皮疹部位

自由記載・麻薬など

観察項目 屯用薬屯用記入・投与時刻記入

ロペラミド内服時間食事量1日便回数

便回数(各勤務)便性状(ブリストル便性状スケール)

腹鳴C:機能D:言動 苦痛・要望・不満・質問 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無E:説明  教育  指導

ジオトリフ自己管理説明入院時オリエンテーション服薬指導

F:知識G:合併症H:他科受診I:その他J:システム パス番号入力

看護師サインクリティカルインディケーター   達成できた  ・  できていない

Dr. サイン

大阪府立呼吸器アレルギー医療センター

週めくりパスについてジオトリフ内服のクリニカルパス No.2

ID:                    患者氏名                       主治医                       受け持ち看護師クリティカルインディケーター:・ジオトリフの副作用、投与方法を理解している。・ジオトリフの内服に同意している。・ジオトリフの中止基準を満たさない

Day 1 Day 2 Day 3 Day 4 Day 5 Day 6 Day 7報告基準 BP     P     T 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日 月   日

発熱:T:37.5℃以上 250 140 40

200 120 39

150 100 38

100 80 37

50 60 36

0 40 35

20 34

脈拍:HR150以上HR50以下

血圧:収縮期160以上80以下

SPO2:90以下

下痢・皮疹 grade2以上

体重測定 体重A:検査 照治療

薬剤

介入項目

B:観察  項目

症状がありの場合またはグレード1以上は共有記録に

記録必要

指示

11時ジオトリフ内服11時 体温11時 SpO2持参薬の確認軟膏処置

数字 酸素吸入(ℓ)Spo2(%)

あり・なし記入

ラ音咳痰呼吸困難

グレードで記入

下痢爪囲炎口内炎皮疹

皮疹部位

自由記載・麻薬など

観察項目 屯用薬屯用記入・投与時刻記入

ロペラミド内服時間食事量1日便回数

便回数(各勤務)便性状(ブリストル便性状スケール)

腹鳴C:機能D:言動 苦痛・要望・不満・質問 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無E:説明  教育  指導

ジオトリフ自己管理説明入院時オリエンテーション服薬指導

F:知識G:合併症H:他科受診I:その他J:システム パス番号入力

看護師サインクリティカルインディケーター   達成できた  ・  できていない

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タスクについて

タ ス ク

  入院時/

  内服 1 日目~内服 7 日目/   ~   /

  内服 8 日目~内服 14 日目/   ~   /

  内服 15 日目~内服 21 日目/   ~   /

  退院時/

治療処置 □ 下剤は全て中止

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

  ジオトリフ 内服 ○ 保湿剤塗布(2 回/日)

薬剤□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方□○ ビーソフテンローション

処方又は保湿剤(市販)□○ 屯用 ロペラミド 処方

□○ ジオトリフ用必要時指示入力、出力屯用:必要時指示参照

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ ジオトリフ 処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

□○ 退院処方□○ ミノサイクリン 100mg 夕1錠

処方

屯用:必要時指示参照

☆下痢(ブリストル便性状スケール参照)のときは、4 時間毎ロペラミドを 2 錠ずつ内服。12 時間下痢を認めなければ、12 時間目から の内服は中止。ただし、ロペラミド内服後 4 時間までの間に下痢をした場合、前回ロペラミド内服から 1 時間以上経過していれば、 ロペラミド 2 錠内服とする

検査 □○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

研究採血

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照

□○ 定期胸部レントゲン PC 参照□○ 定期採血 PC 参照□○ 胸部 CT(単/造)□○ CT 造影剤同意書

□○ 胸部レントゲン□○ 採血(血清、検血)

清潔 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭 入浴 or 清拭

排泄 トイレ    トイレ    トイレ   

食事 □○ 常食□○ 治療食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

ジオトリフ内服前約 3 時間と内服後 1 時間は絶食

安静度 フリー フリー フリー

教育・説明 □○ 服薬指導□○ 治療同意書 ○ 病棟オリエンテーション ○ 転倒転落アセスメントシート

コンサルテーション □○ 服薬指導依頼□○ 入院療養計画書

□○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 皮膚科依頼 □○ 退院療養計画書□○ 外来予約

その他 □○ 退院処方

持参薬 日時 追加指示医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン 日時 追加指示

医 師サイン

看護師サイン

□ 続行中止

【     】

肺腫瘍内科  ジオトリフパス  ID:          患者名:          主治医:          指示受け看護師:

大阪府立呼吸器アレルギー医療センター

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Page 8: Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

①多職種が関わり、それぞれの職種が決められた役割を果たすことによって、薬剤に対する関心を高めることができた。

②多職種が共通の認識を持つことにより、副作用への対応を一律化することができ、その結果として、副作用発現時に早期に介入していくことができた。

③患者に対する教育・指導を導入前から入院中に実施することにより、患者さん自身の副作用への意識が高まった。意識の高まりにより、副作用などを速やかに医療従事者へ報告してくれるようになり、医療従事者と患者さんが一体となる治療が実施できた。

ジオトリフのクリニカルパスの運用

パスの運用状況 パスの評価

 ジオトリフ発売後に、パスに基づいて治療と副作用管理を実施した。投与開始から28日間の副作用の発現状況を示す(表5)。

 ジオトリフの導入にあたっては、患者さんが副作用による早期中止を経験することや、副作用により内服したくないという気持ちを可能な限り持たせないことが重要である。 パスの運用によって上手くいったポイント(表6)、並びに今後の課題や改善ポイント(表7)を示す。

 主な副作用として下痢、ざ瘡様皮膚炎が発現したが、全14例のうち、副作用が原因で28日以内に減量を行ったのは症例⑨(下痢)のみであり、副作用による早期中止例はなかった。特に下痢は当初の予想どおり早期に出現していたが、積極的なロペラミド投与により、ほとんどの症例でGrade 2以下であり、症例⑨以外は1~2日で改善していた。 ざ瘡様皮膚炎に関しても、ミノサイクリンの定期内服により、重篤なものは発生しておらず、投与中の増悪は確認されなかった。爪囲炎に関しては、観察期間が28日までと短いが、患者さんの忍容性を損なうような症状は発現しなかった。 口内炎は軽度であるが、50%に発現していた。口内炎は、軽微なものでも患者さんのQOLに影響を及ぼすため注意を要する副作用である。今回のパスの中では口内炎への取り決めがなされていなかったため、今後の検討課題と考える。

症例 性別 年齢 EGFR遺伝子変異 PS 治療

ライン開始用量(mg)

下痢 ざ瘡様皮膚炎 爪囲炎 口内炎

Grade(発現日) Grade① 女性 60歳代 Exon19 1 2nd 40 1(5) 2 0 1② 女性 60歳代 Exon21 1 2nd 40 2(8) 2 1 2③ 男性 60歳代 Exon21 1 3rd 40 0(−) 1 1 1④ 女性 60歳代 Exon21 1 1st 40 1(7) 2 1 1⑤ 女性 40歳代 Exon19 1 2nd 40 1(5) 1 1 0⑥ 女性 60歳代 Exon19 2 1st 40 1(7) 1 0 0⑦ 女性 70歳代 Exon21 2 2nd 30 0(−) 0 1 0⑧ 女性 80歳代 Exon18 2 2nd 30 1(5) 1 0 1

⑨ 女性 80歳代Exon19Exon20

3 3rd 30 3(7) 1 1 1

⑩ 男性 70歳代 Exon19 1 2nd 40 1(8) 1 1 0⑪ 女性 70歳代 Exon19 2 3rd 40 2(10) 0 0 0⑫ 男性 60歳代 Exon21 1 7th 40 1(14) 1 0 0⑬ 女性 60歳代 Exon19 1 2nd 40 1(13) 0 1 2⑭ 男性 70歳代 Exon19 1 1st 40 1(1) 1 0 0

ジオトリフ投与開始から28日間の副作用の発現状況(2014年10月7日時点)表5パスの運用で上手くいったポイント表6

①口内炎への積極的な介入は、さらに副作用の軽減及び患者さんのQOL向上につながると考え、現在は、アズレンスルホン酸の含嗽液を治療開始時から導入している。

②ロペラミドの連続内服により、内服後に便秘気味になる症例も経験したため、導入後に便秘等を経験する症例は、少しずつ症例にあった方法に変更する場合があることも念頭においておく必要がある。

③皮膚症状など、長期間の服用に伴って発現する副作用に関しては、外来での対応になるため、外来診察時に注意深く観察する必要がある。

パスの課題及び改善すべきポイント表7

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Page 9: Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

長期投与で予想される課題と対策

 本冊子では、ジオトリフ導入期の2週間を中心に、主に入院中の対応についてまとめた。しかし、ジオトリフによる治療を長期に管理していくのは外来が中心となってくるため、検討すべき課題は導入期と異なってくるものと思われる。長期投与で予想される課題と、円滑な治療に貢献すると考えられる対策を示す(表8)。

長期投与で予想される課題・主たる副作用の変化

導入期と異なり、爪囲炎、皮膚乾燥、時に便秘などが主たる副作用となる。・在宅での薬剤管理と副作用の管理

導入期と異なり、薬剤の自己管理と副作用の自己評価が重要になる。副作用発現時に、患者さんがどのように対応すべきか決めておく必要がある。

長期投与での課題を解決するための対策・医師の外来時における副作用のアセスメント

ジオトリフの長期投与における副作用のパターン変化を踏まえて、医師が外来で症状をアセスメントする必要がある。

・医師と薬剤師との連携医師が患者の症状のアセスメントを行った後に薬剤師外来に移行し、薬剤師の副作用対策の提言を参考に、医師が薬剤の処方を行う。同時に薬剤師の立場から患者への薬剤の使用についての指導を行う。

・医師と看護師との連携看護師は在宅での服薬状況の確認や副作用に対する理解度の確認を行い、その対処法について入院時の指導が活かされているか、患者のセルフケア状況を確認する。また、退院後に困ったことや、分からなかったことなどを具体的に知り、より在宅での生活にそった方法を患者・家族とともに考えていく。患者のアドヒアランス向上にむけた支援を医師・薬剤師等と連携していけるよう調整を行う。可能であれば、看護師専門外来を立ち上げ薬剤師外来と連携しつつ医師の外来を補完する。

・患者さんのチームへの参加可能であれば、患者さんも治療チームの一員として自分の症状を把握し、患者日誌等に記載して、医師外来、薬剤師外来に積極的に参加する。

・地域の診療所との連携可能であれば、地域の診療所と副作用対策のため連携する。

今後の課題

長期投与で予想される課題と主な対策表8

副作用情報のより正確な把握のために 我々が運用しているパスに加えて、患者さんが日誌のような形で副作用の情報をつけておいてくれることにより、次回の通院までの間にどのようなことが起きていたのかなどを医療者が把握でき、患者さんからの訴えを拾いやすくなる。 患者さん自身が可能な範囲で習慣的な記録を実施してもらうためには、入院時から日々の状況を書きとめ、それを継続していただくように促すことが重要と考えられる。以下に、実際の患者さんが日々の状況を書きとめていた例を示す(図6)。

*M.Y.様の掲載許可取得済

Patient’s Voice現在、治療を開始してから5ヵ月程度が経過しました。治療開始当初は口内炎がひどく、食事をするときにも非常に大変であり、爪囲炎があったり手のひらや足の裏などの皮がめくれたりすることなどによって、体力が失われている時期もありました。副作用のための塗り薬を出してもらったり、お薬を休んだり、少し減らすなどして、今は手指の皮膚は元どおりになり、口内炎も軽いものが残っている程度にまで回復しています。しかし、足の裏は十分に回復しておらず、長く歩くことや、踏ん張り切ることができずにいて困っています。

患者さんによる記録の例図6

What’s more

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Page 10: Vol.2 クリニカルパス運用による 安全な治療計画...化学療法未治療、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対するジオトリフ群と化学療法群を比

おわりに

肺癌の薬物療法は、分子標的治療を中心として急激な進歩を遂げてきている。分子標的治療薬は標的とする分子の違いによって出現する副作用が大きく異なってくるので、医師のみで副作用に対応するのが困難になってきている。このような中、高い専門性を持つ薬剤師、看護師などの医療従事者が協力してチーム医療を推進していくことが重要になってきている。

2010年4月30日付けで発出された厚生労働省医政局長通知0430第1号「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の基本的な考え方、すなわち「多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提とし、目的と情報を共有し、業務を分担するとともに互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供するチーム医療」は、この流れを後押しする大変時宜にかなったものであった。今回、我々の作成したジオトリフ・パスは局長通知の基本的な考え方に合致するチーム医療の実践である。

ジオトリフは優れた抗腫瘍効果が期待できる半面、十分なケアが必要な副作用を有するEGFR-TKIであるため、多職種が協働して副作用を可及的にコントロールし、ジオトリフの抗腫瘍効果を引き出すことが重要である。当センターにおけるジオトリフ・パスの運用は、今後のがん薬物療法におけるチーム医療の在り方のモデルとなるものではないかと考えられる。

Drug Information

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