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the music of daily life
wood / water journal
日常の音楽と題した、「wood/water journal」はレコードレーベル wood/water records が不定期で発行するグッドレビュージャーナルです。
例えば、Henning Schmiedt のアルバム『Klavierraum』が、当時妊娠中だったヘニングの奥さんが心地よく暑い夏を過ごせるように作られた楽曲であるように、
音楽というのは常に日常とともにあって、日常のなかから生まれてくるものだと思っています。今回は、福岡近郊、若しくは福岡に縁の深い、親愛なるミュー
ジックラヴァーの皆さんに「日常の音楽」をテーマに様々な音楽を紹介して頂きました。レビューの内容に興味をもって聴いてみたり、アルバムジャケットが
気になって聴いてみたり、タイトルは横文字ばかりですが、構えずに、身近な友人から勧められた感覚で楽しんで頂ければと思います。
lambchop / is a women
毎日。家に帰るとまずこのアルバムに針を落とし、
コーヒー飲みながらトロトロに溶ける。だんだん凛
とした空気や切ない音の配置に背筋は伸び、耳は大
きく心はいっぱいになり今日もありがとう。という
心持ちになれるのだ。ちょうどよい塩梅のピアノフ
レーズには、季節を問わず琴線に触れる魔法があ
る。・・・のかもしれない。
原茂樹 ( 日田シネマテーク・リベルテ )
peter broderick / http:///www.itstartshear.com
タイトル通り「音楽を聴くという事」
に対しリスナーにインスパイアさせ
る意欲作。ダウンロードに対し、アー
トワークにリスナーがほとんどアク
セスしないことを危惧し、全体像を
理解する為に私の心は、音楽だけで
なくすべてのライナーとアートワー
クが必要。と語る彼の想いが詰まっ
てる。・・・ことを知らなかったと
しても、ピアノとギター、唄が絶妙
に絡み合う美傑作の誕生。
原茂樹 ( 日田シネマテーク・リベルテ )
Carlos Aguirre / Orillania
空間の奥行きと浮遊感がある音楽にのめり込
むきっかけとなった現代アルゼンチン音楽の
最重要アーティスト、カルロス・アギーレ 4
年振りの新作となるアルバム。(2月19日発売 )
カルロスの音楽は静かな叙情の中に叙景感が
あふれ、彼が暮らすパラナ河のほとりへ旅さ
せてくれる。「非日常」を「日常」にとけ込ま
せることが欠かせない都市生活者必携となり
そうな作品。2 年振りの来日公演が予定され
ている 5 月が待ち遠しい。
河崎政芳 (publik:)
Reviews of The Good Fellows “music lover”
Ryan Francesconi / Parables
静かな叙情の中に叙景感があふれる作品。米国西海岸を中
心に活躍するハープ奏者 ジョアンナ・ニューサムのサポー
トメンバーとしても知られる ライアン・フランチェスコー
ニの初ソロアルバム。ブルガリア民族音楽をベースにア
コースティック・ギター 1 本で奏でられる音楽はとても詩
的で一音一音が雨粒のように響く。雨後のオレゴンの森を
抜けるとパーフェクトな波が割れているという情景を夢見
てしまう。 河崎政芳 (publik:)
Mono Fontana/Cribas
「彼の作る音楽は未来だ」カルロス・アギーレを
はじめ名だたる南米のマエストロが賛辞を惜し
まぬ現代の秘宝、アルゼンチン音響派の中心的
存在として様々なシーンを越境するモノ・フォ
ンタナ。シャッター音をはじめとする多様な生
活の具現音がピアノのゆらぎの中に交差・拡散
し、遠い日々の記憶に手繰り寄せられるように
様々なイメージが溢れ出していく。楽曲という
概念そのものがゆるやかに溶解していくような
その世界観は、未だ見ぬ未来の音のようでもあ
りながら、胎内から流れていたこの世界の音そ
のもののようでもある。これはもはや音楽です
らなく、医術のように機能する音術と呼ぶにふ
さわしいものなのかもしれない。
河野洋志 (bar buenos aires)
Cecilia Zabara/Aguaribay
アルゼンチン次世代 SSW を代表するセシリア・
サバラ。柔らかな母性を感じさせる声と、キケ・
シネシの門下生でもある卓越したギター。オリジ
ナル作品に加え、アタウアルパ・ユパンキの古典
も含むアルゼンチン・フォルクローレの伝統に根
差した楽曲には、甘さだけに流されることのない
郷愁が滲む。ジョニ・ミッチェルやジュディ・シル、
トレイシー・ソーンらと共通する気高さ、生きて
いくことの苦悩―そこへセシリアの声が響けば、
それは清冽な朝に差し込む一筋の陽光のように私
たちを包み、そっと寄り添う。
河野洋志 (bar buenos aires)
PLUSH / More You Becomes You
シカゴを拠点としてスローペースに活動する
リアム・ヘイズのソロユニット PLUSH による
1998 年のデビュー作。その後のアルバムで
はポップでソウルフルなバンドサウンドに変
化しますが、こちらはボーカルとピアノのみ
のシンプルな弾き語り作品。音数を絞ったセ
ンシティヴなピアノと、今にも消え入りそう
なほどに切なく、抑制された哀愁のうたごえ。
それはまさに、耳を研ぎ澄まさずとも聴こえ
てくる静寂の音楽。
河津継人(Afterglow)
laura arkana met peter broderick / lentemuziek
ローラ(オランダ人なので読み方違うかも)
とピーター。パリで出会って意気投合して
一緒にレコーディングしたそうです。意気
投合したいっすねー。ライブもレコーディ
ングもあまりしたことないローラの弾き語
りに、ピーターが任せとけと(言ったかは
知らんですけど)録音だけでなくいろんな
楽器でシンプルながら素敵なアンサンブル
を奏でナイスなフォークアルバムに仕上
がってます。ローラ…見たことないけど美
人だとふんでます。(そろそろ出るピーター
の新譜も楽しみ)
坂本裕紀 (tristessa)
MIA DOI TODD / COSMIC OCEAN SHIP
ジャケットがかなり危険なのでまず手に取ってもらえそう
にないのですが、PV をミシェルゴンドリーが撮っていた
りホセゴンザレスと共演( 'Red Hot + Rio 2' に入ってい
てこれも素敵!)してたり実は随分ナウいです。これはも
う9作目になるようなんですけど最近のはナウ人脈との共
作具合があまりグッとこなかったんですが、今作は往年の
名 S.S.W を彷彿させるようなシンプルな美しさがあって
沁みます。ミアさん日系の方らしんですが、けっこう美人
です(このジャケやっぱり損してる…)。
坂本裕紀 (tristessa)
Dale Berning / The Horse and Camel Stories
南アフリカ出身の女性サウンドアーティスト、
デイル・バーニングによるアルバム。現代美
術作家さわひらきの映像作品『Going Place
Sitting Down』のサウンドトラックでもある
この作品は、さわひらきが撮影に使った田舎
の家と、その庭で聴こえてくる音のみで構成
されています。バスルームの水の音、石に滴
る雨水のしずく、グラスに注がれた炭酸水、
風鈴、時計などなど。。。日常に溢れる音の繊
細な響きやテクスチャーの豊かさを再提示し
たこの作品は、デイル自身のいう「静けさに
身をゆだねること、そして耳を傾けること」
の大切さに気づかせてくれます。
フクゾノ ヤスヒコ (flau)
Charlie Haden , Hank Jones / STEAL AWAY Keith Jarrett / The Melody At Night, With You
この二枚のアルバムを、まだ聴いたことのない人が、ちょっぴりうらやましい。なぜなら、僕にはもう二度と味
わえない、初めてこれらの調べに触れたときの、得も言われぬ感動を、ひょっとしたら体感することができるの
だから。優しく、やわらかく、そして温かい。愛する誰かへ届けたくなる音楽。
<ペトロールブルー>とともに、どうかあなたの日常となりますよう。
こいでしんじ (petro blue / 通称ペトブル )
Pisano & Ruff / Under the Blanket
ジョン・パイザノとウィリー・ラフの二人の
ユニットによる唯一の作品にして名盤。ハー
ブ・アルバートのプロデュースです。とろけ
るようなフレンチホルンやスキャット、ガッ
トギター、フルートなど全ての音がまろやか。
タイトル通り、陽あたりのよい部屋で毛布に
包まれているような心地良さです。ロジャー・
ニコルズ作 “The Drifter” などのカバー曲も
最高。日曜の午後に。
河津かおり(Afterglow)
Vashti Bunyan / Lookaftering
1970 年 に ア ル バ ム「Just Another Diamond
Day」を発表したっきり音楽シーンから遠ざかっ
ていた Vashti Bunyan の実に 35 年ぶりとなるア
ルバム。その長い年月の間に母となり、子を育て、
積み重ねてきた普遍的な日常と言う一つのとても
優しい物語が綴られているようで、聴いていて穏
やかな気持ちになります。音楽活動の再開が、ギ
ターを息子からプレゼントされたからだとか、ア
ルバムジャケットの絵は画家である娘によるもの
だというエピソードも微笑ましいです。
石井 勇 (wood/water records)
Judee Sill / Judee Sill
一曲に一年を費やすこともあるほど完璧に
生み出された優しい旋律には十字架の心が
宿る。それは神仏に合掌する時のように、
見えない世界とつないでくれる。楽曲から
は想像できないジュディーの人生を知ると、
さらに彼女が見ていたものは何だったのか、
と想像してみたくなる。
酒井咲帆 (albus)