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国際電磁界(EMF)プロジェクト1-1
生活環境で電磁界ばく露を受ける機会が増加し、またばく露の多様化も進んでいるなかで、全世界的に、その健康影響について公衆衛生上の関心の高まりを受け、1996年5月に世界保健機関
(WHO)は、電界および磁界へのばく露の健康および環境への影響を評価する国際的プロジェクトとして、国際電磁界プロジェクトを発足させました。
国際電磁界プロジェクトは、0~300ギガヘルツの周波数範囲の静的および時間変化する電界および磁界へのばく露の健康リスク評価に関する科学的に適切な勧告を行うために、主要な国際および各国の当局と研究組織が有する現時点での知識と入手可能な資源を集め、結びつけます。 国際電磁界プロジェクトは、全世界的に受け入れられる電磁界の人体ばく露制限に関する基準、各種機器から発生する電磁界の計測とコンプライアンスに関する基準の作成を促進し、また、電磁界ばく露によるリスクの可能性に関して、公衆および労働者への情報伝達を最も適切に行う方法について、理解を深めることを促進しています。
• 電磁界ばく露の生物学的影響に関する科学文献のレビュー • 健康リスク評価を改善するために研究が求められている知識の欠落部分の同定 • 質の高い電磁界研究の重点課題の推進 • 必要とされた研究が完了した後に、電磁界ばく露の健康リスクの正式な評価 • 国際的に許容されえる、統一した基準の推進 • リスク認知、リスクコミュニケーション、リスク管理に関する情報の提供 • 各国の行動計画や非政府組織への助言
国際電磁界プロジェクトは、6つの国際組織、1つの非政府組織(NGO)、4つの協力機関および53の各国政府機関のメンバーにより構成された3つの委員会から成り立っています。 国際組織としては、▶ 国際がん研究機関(IARC:International
Agency for Research on Cancer)▶ 国連環境計画(UNEP:United Nations
Environment Programme)
目的
活動内容
組織
■国際電磁界プロジェクト組織構成
電磁界プロジェクト事務局
国際諮問委員会
研究調整委員会
基準調和委員会
国際組織 協力機関 政府機関
129
+13.5mm
Ⅵ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅶ
国際機関とその活動―国際電磁界(EMF)プロジェクト
1-1/国際電磁界(EMF)プロジェクト
▶国際労働機関(ILO:International Labour Organization)▶国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)▶欧州委員会(EC:European Community)▶国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)が、NGOとしては、▶ 国 際 非 電 離 放 射 線 防 護 委 員 会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing
Radiation Protection)が、協力機関としては、▶ オーストラリア放射線防護・核安全庁(ARPANSA:Australian Radiation Protection and
Nuclear Safety Agency)▶ 英国公衆衛生(PHE:Public Health England)▶ドイツ放射線防護局(BfS:Bundesamt, für Strahlenschutz)▶ フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES:Agence nationale de sécurité sanitaire de
l’alimentation, de l’environnement et du travil)がそれぞれ国際電磁界プロジェクトを支援しています。 プ ロ ジ ェ ク ト の 最 高 議 決 機 関 で あ る 国 際 諮 問 委 員 会(IAC:International Advisory Committee)は、以下の役割を担っています。 • 電磁界問題への国際的協調を図るとともに、一般環境、職業環境の電磁界の健康影響に関
する科学的知見を含むプロジェクトの成果を評価 • プロジェクトを指導、監督
2006年に静電磁界の健康リスク評価(環境保健クライテリア№232)を、2007年には超低周波電磁界の健康リスク評価(環境保健クライテリア№238)を発行しました。これを受け、ICNIRPは2009年4月には静電磁界、2010年12月には低周波電磁界の新しいガイドラインをそれぞれ公表しました。 したがって残された課題は、高周波電磁界の健康リスク評価となりました。そのような状況のなか、国際がん研究機関(IARC)が推進した13カ国共同のインターフォン研究(携帯電話使用と頭部、頸部のがんとの関連についての症例・対照研 究 ) の 総 括 論 文 が 2010 年 に 公 表 さ れ、IARCはこのインターフォン研究結果等にもとづき2011年5月に高周波電磁界の発がん性分類を「2B:発がん性があるかもしれない」と判定しました。この発がん性評価を受けて、WHOは高周波電磁界の健康リスク評価に向けて、現在、作業を進めています。
これまでの成果と現在の課題