1. 2004 年銅の国際価格と世界の需給動向(1)銅の LME価格と LME在庫の推移銅の国際価格は、2003 年秋以降、中国需要の
急拡大や米国のドル安・低金利政策、さらに世
界第 2 位の Grasberg 銅鉱山(インドネシア)
でのピット崩落事故による供給不足の懸念等か
ら一気に上昇し、2004 年 3 月には、1995 年 12
月以来の 3,000 ドル/t台へ突入した。その後は、
銅大手の Phelps Dodge、Asarco 社等の減産解
除発表が相次ぎ、沈静化した。
9 月に入り、原油高=ドル安が加速する中、
ファンド資金の流入が加速し、相場が再び上昇
し始めた。10 月に、中国の需要減や利上げ報道
等中国の経済減速懸念に相場が大きく影響さ
れ、一時は 2,800 ドル台まで下落した局面もあ
ったが、11 月以降、ドル安の進行や El Abra
鉱山(チリ)のスト材料等で、高水準で推移し、
年末には 2004 年最高値をうかがう 3,279.5 ドル
で越年した。
一方、金属取引所の在庫は減少傾向が続き、
特に LME在庫は 6月には 100 千 t を割り込み、
12 月には 1990 年以来の 50 千 t 割れと歴史的な
低水準にある。これにより、2004 年の LME在
庫は年初の約 14 %まで激減したことになる
(図 1)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 7(7)
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
金属資源開発調査企画グループ
銅
1,200
1,400
1,600
1,800
2,000
2,200
2,400
2,600
2,800
3,000
3,200
3,400
1995/3/31
1995/6/30
1995/9/30
1995/12/31
1996/3/31
1996/6/30
1996/9/30
1996/12/31
1997/3/31
1997/6/30
1997/9/30
1997/12/31
1998/3/31
1998/6/30
1998/9/30
1998/12/31
1999/3/31
1999/6/30
1999/9/30
1999/12/31
2000/3/31
2000/6/30
2000/9/30
2000/12/31
2001/3/31
2001/6/30
2001/9/30
2001/12/31
2002/3/31
2002/6/30
2002/9/30
2002/12/31
2003/3/31
2003/6/30
2003/9/30
2003/12/31
2004/3/31
2004/6/30
2004/9/30
2004/12/31
2005/3/31
USドル/t
40,000
140,000
240,000
340,000
440,000
540,000
640,000
740,000
840,000
940,000t
〈在庫〉 〈LMEセツルメント〉
銅LME価格 銅LME在庫
図 1 銅の国際価格と LME在庫の推移
(2)銅埋蔵量とR/P の推移USGS のMineral Commodities Summary に
よると、銅埋蔵量(Reserves)は 3 億 t 台で推
移していたが、2002 年に大幅な見直しがあり、
チリ、ペルー、ポーランド等で約 1.5 億トン増
え、現在は 4.7 億 t に達している。一方、銅の
可採年数(R/P : Reserves/Production)は 30
年前後で推移しており、2004 年は 32 年となっ
ている(図 2)(表 1)。
(3)世界の銅鉱山生産動向図 3 に過去 10 年間の地域別鉱山生産量の推
移を示す。世界の銅鉱山生産量は、この 10 年
間で、チリの大規模鉱山の開発が続き、約
45 %拡大した。2004 年の世界の鉱山生産量は
前年同期比 6.1%増の 14,513 千 t となった。 前
半はグラスベルグ鉱山の休止の影響で振るわな
かったが、2004 年後半としては銅価格高騰によ
りチリの大鉱山が軒並み増産したこと、ペルー
のAntamina 鉱山の大幅増産でペルーが世界第
3 位の鉱山生産国に躍進したことが要因である
(図 4、表 2)。企業別(表 3)及び鉱山別(表 4)
で見ると、世界最大の銅生産者である CODEL-
CO 社が Chuquicamata 鉱山や El Teniente 鉱
山等の増産により前年比 6.2 %増となった他、
世界第 2位の BHP Billiton 社は、Escondida の
2 割以上の増産で、前年比 16 %増の大幅増産と
なった。一方、Rio Tinto 社と Freeport
McMoRan 社は Grasberg 鉱山事故による影響
で、大きく減産となった。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート8(8)
1990年 2004年
順位:国名 Reserves 順位:国名 Reserves
(千t)
1.チリ 2.米国 3.ソ連 4.ザイール 5.豪州 5か国計 世界計
85,000 57,000 37,000 26,000 17,000 222,000 336,000
140,000 35,000 35,000 30,000 30,000 270,000 470,000
出典:Mineral Commodity Summaries
1.チリ 2.米国 3.インドネシア 4.ペルー 5.ポーランド 5か国計 世界計
表1国別埋蔵量の変化
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
20001995 1996 1997 1998 1999 2001 2002 2003 2004
千t
オセアニア 中南米 北米 アジア アフリカ ヨーロッパ
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
10月 11月 12月
千t %
鉱山生産量 鉱山稼働率
100.0
95.0
90.0
85.0
80.0
75.0
70.0
1,400
1,300
1,200
1,100
1,000
900
800
国 名 鉱山生産量(千t) 対前年比(%) 世界シェア(%) 順位
1 2 3 4 5
チリ 米国 ペルー 豪州 インドネシア
5,412.5 1,160.0 1,035.5 856.4 843.2 9,307.6 14,513.0
10.4 2.6 22.9 3.2
-16.0 6.9 6.1
37.3 8.0 7.1 5.9 5.8 64.1 100.0
上位5か国計 世 界 計
出典:国際銅研究会
図 3 地域別鉱山生産量の推移
図 4 2004 年の月別鉱山生産量
表 2 2004 年国別鉱山生産量のトップ 5
0
100,000
200,000
300,000
400,000
500,000
600,000
千t
0
5
10
15
20
25
30
35
40年
ReservesR/P
1990 1991 1992 1993 1994 19951996 1997 19981999 2000 2002 2003 20042001
図 2 銅埋蔵量とR/P の推移
(4)世界の銅地金生産動向世界の銅地金生産は、ここ 10 年間でチリや
中国等の生産拡大で堅調に推移しているが、2001 年をピークに減少傾向にあった。しかしながら、2004 年の世界の地金生産量は、世界消費が大きく拡大するなか、前年比 3.6%増の 15,781千 t と 3 年ぶりに増加した(図5)。その要因
は中国が 10.8%と大幅に増産(特に、貴渓、銅陵製錬所がそれぞれ、20 %増、10 %増)したことによる。一方、日本は Grasberg 鉱山の供給障害やTC/RC が低水準なことから 3.4%減となった。また、CODELCOも若干の減産となった(表 5)(表 6)(表 7)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 9(9)
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
企業名 本社所在地 生産量(千t) 対前年比(%) CODELCO BHP Billiton Phelps Dodge Grupo Mexico Rio Tinto Anglo American KGHM Noranda Freeport McMoran Antofagasta
チリ 豪州/英国 米国 メキシコ 豪州/英国 英国 ポーランド カナダ 米国 英国
1,776.8 1,060.3 1,034.7 879.9 738.2 698.0 550.0 491.2 468.4 460.2 8,157.7 14,500.0
6.2 15.9 3.7 5.1 -6.3 4.1 3.8 14.1 -22.8 5.6 3.5 5.8
出典:Raw Materials Data:速報値
10社合計 世 界 計
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
鉱山名 国 名 生産量(千t) 対前年比(%) Escondida Chuquicamata Grasberg El Teniente Collahuasi Morenci Antamina Los Pelambres Batu Hijau Radomiro Tomic
チリ チリ インドネシア チリ チリ 米国 ペルー チリ インドネシア チリ
1,207.6 640.0 516.4 410.0 408.0 381.3 362.1 350.6 325.2 310.0 4,911.2 14,500.0
21.6 6.5
-27.9 22.4 27.6 -0.2 43.5 7.3 13.1 1.3 8.7 5.8
10鉱山合計 世 界 計
出典:Raw Materials Data:速報値
表 3 2004 年鉱山生産企業トップ 10 表 4 2004 年鉱山生産トップ 10
千t
オセアニア 中南米 北米 アジア アフリカ ヨーロッパ
20001995 1996 1997 1998 1999 2001 2002 2003 2004
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
図 5 地域別銅地金生産量の推移
国 名 鉱山生産量(千t) 対前年比(%) 世界シェア(%) 順位
1 2 3 4 5
チリ 中国 日本 米国 ロシア
2,895 2,035 1,382 1,310 919
8,541.3 15,785.0
-2.3 10.8 -3.4 0.3 9.1 2.7 3.6
18.3 12.9 8.8 8.3 5.8 54.1 100.0
出典:国際銅研究会
上位5か国計 世 界 計
表 5 2004 年国別地金生産量トップ 5
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
企業名 本社所在地 生産量(千t) 対前年比(%) CODELCO Phelps Dodge Grupo Mexico Nippon Mining KGHM Noranda Norddeutsche Mitsubishi Materials Norilsk Nickel Umicore
チリ 米国 メキシコ 日本 ポーランド カナダ ドイツ 日本 ロシア ベルギー
1,496.8 937.0 772.8 659.0 550.0 527.3 520.0 459.5 445.0 430.9 6,798.3 15,800.0
-1.2 3.2 3.6 -3.3 3.8 7.2 3.4 -3.2 -1.3 6.6 4.4 3.3
10社合計 世 界 計
出典:Raw Materials Data:速報値
表 6 2004 年地金生産企業トップ 10
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
精錬所 国 生産量(千t) 対前年比(%) Chuquicamata Onsan Glogow Guixi, Jiangxi Morenci (SX-EW) Tongling Hamburger Norilsk Olen Pyshma
チリ 韓国 ポーランド 中国 米国 中国 ドイツ ロシア ベルギー ロシア
1,670.0 492.0 430.0 415.1 381.3 371.1 370.0 355.0 343.2 342.2 4,169.9 15,300.0
-1.5 -2.8 2.4 21.0 -0.2 10.0 4.5 2.9 5.6 14.1 4.4 3.3
10社合計 世 界 計
出典:Raw Materials Data:速報値
表 7 2004 年精錬所トップ 10
(6)日本の需給動向日本国内の地金生産(図 8)は 2001 年以降、
伸び悩んでいる。地金原料は、スクラップから
の 2 次生産が拡大している一方、海外からの輸
入地金は大きく減少している。
銅の国内需要(図 9)は 1997 年以降減少傾向
が続いており、特に電線部門が低迷している。
一方、地金輸出は中国や東南アジア向けに拡大
傾向にある。
(5)世界の銅消費動向図 6 は過去 10 年間の世界の銅消費量の推移
を地域別にあらわしたものである。世界の銅市場はこの 10 年間で、着実に成長した。アジア、特に中国市場が約 3 倍拡大し、世界の銅消費をけん引した。一方で、米国、日本、欧州等の先進国は頭打ちの状態となっている。2004 年の世界の銅消費量は 5.5 %増の 16,486 千 t と大きく
拡大した。日本、米国が景気回復により IT 需要や住宅着工件数の増加で大幅増(日本 6.3 %増、米国 5.4 %増)したことが貢献した。中国は 3.6 %増に留まったが、中国では、報告されていない在庫が消費されている可能性があり、実際の消費は数字以上の可能性があると指摘されている(図 7)(表 8)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート10(10)
国 名 消費量(千t) 対前年比(%) 世界シェア(%) 順位
1 2 3 4 5
中国 米国 日本 ドイツ 韓国
3,207.3 2,420.3 1,382.0 1,108.3 913.4 9,031.3 16,486.0
3.6 5.4 6.3 9.5 0.8 6.1 5.5
19.5 14.7 8.4 6.7 5.5 54.8 100.0
出典:国際銅研究会
上位5か国計 世 界 計
表 8 2004 年国別消費量トップ 5
2000199919981997199619951994 2001 2002 2003
t
輸入 スクラップ他出 海外鉱出 国内鉱出
1,800,000
1,600,000
1,400,000
1,200,000
1,00,000
800,000
600,000
400,000
200,000
0
図 8 日本の地金原料別生産実績
0
200,000
400,000
600,000
800,000
1,000,000
1,200,000
1,400,000
1,600,000
1,800,000
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
t
輸出 その他 伸銅品 電線
図 9 日本の地金需要実績
千t
オセアニア 中南米 北米 アジア アフリカ ヨーロッパ
20001995 1996 1997 1998 1999 2001 2002 2003 2004
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
図 6 地域別消費量の推移千t
米国 中国 日本
3,500.0
3,000.0
2,500.0
2,000.0
1,500.0
1,000.0
500.0
0.01995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
図 7 世界 3大消費国(米国、中国、日本)の推移
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 11(11)
-800
-600
-400
-200
0
200
400
600
800
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
千t
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
USドル/t
需給バランス 銅年平均価格
図 10 銅需給バランスの推移
-200
-150
-100
-5 0
0
50
100
150
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 千t
図 11 2004 年の需給バランスの推移
-200
-100
0
100
200
300
400
500
600
700
800
19901991199219931994199519961997199819992000
2001 20
0220032004
千t
0
5
10
15
20
25
30
35
40
¢/lb(Combined)
精鉱需給バランス
TC/RC(翌年分)
図 12 精鉱需給バランスと TC/RCの関係
10000
10500
11000
11500
12000
12500
13000
2003 2004 2005(予測)
千t
精鉱生産 一 次精錬
図 13 精鉱需給ギャップの変化
(7)需給バランスの推移図 10 は、過去 10 年間の銅の需給バランス
(地金生産量-消費量)の推移を示したもので
ある。この 10 年間で供給不足となった年は 4
回あり、いずれも相対的に銅価格が上昇してお
り、概ね、需給バランスと銅価格と相関性が認
められる。2004 年の需給バランスは、前年の約
2 倍の約 70 万 t の供給不足となり、これは
1950 年以降最大の不足量である。但し、足下の
需給は地金生産の加速と消費の伸び鈍化により
供給不足は減少傾向にある(図 11)。
(8)TC/RCの推移
スメルター側の製錬マージン(TC/RC)は
精鉱需給に大きく影響するが、1999 年以降、
TC/RC は低迷し、2004 年の買鉱条件はそれ
までの価格低迷で鉱石供給が抑制されていた
ことに加え、中国やインドの国内補助政策で
精鉱を高値買いしたことの影響で過去最低の
水準となった(図 12)。しかしながら、2005
年積みの TC/RC は、2004 年のほぼ倍額の
TC : 85 ドル/t、RC : 8.5¢/lbに急上昇し
た。加工賃が上昇したのは 5 年ぶりである。
その要因は、銅価格高騰によって 2004 年の鉱
石生産が 7.8 %と大きく増加(一次地金生産量
は 2.6 %増)したため精鉱市場が供給過剰に変
化(精鉱の売り手市場から買い手市場に変化)
したこと(図 13)、また、昨今の精鉱市場の供
給過剰感から中国スメルター向け TC/RC ス
ポット価格が急上昇(2004 年初頭の 6 倍以上
の TC/RC が 135 ドル/t/13.5¢/lbに)、等
が考えられる。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート12(12)
2. 今後の銅需給・価格見通し(1)2005 年及び 2006 年の銅需給見通し国際銅研究会は、2005 年の世界の鉱山生産
は 8.0%増の 15,678 千 t と拡大を持続するとの見通しを示している。内訳は中南米で新規に 315 千 t、米国とインドネシアの生産回復の見通しである。また、地金生産は 8.5%増の 17,111 千 t と
2004 年の 3.6%増から大幅に拡大すると予想している。要因はアジアの地金生産能力増(中国:18%、インド:29%)。日本も 2.2%の増加と予想
している。一方、地金消費は 5.3%増の 17,370 千 t と若干
鈍化するが、依然好調に推移するとの見込みである。中国が 16.9 %増の大幅増、米国も 4.3 %増と堅調、日本は 1.2 %減と見る。従って、2005 年の需給バランスは、生産不足が 259 千 tに大きく縮小すると予測している。2006 年については、鉱山生産が 1%増の伸び
に留まり、地金生産は 5.6 %増、消費は 4.6 %増となり、需給バランスは、供給不足量が、さらに 93千 t まで縮小すると予想している(表 9)。
(2)2005 年の銅価格の見通し2005 年の銅価格は、前半は堅調だが、供給増
加及び地金消費鈍化により、価格は軟化するとの見方が有力である。年初のMetal Bulletin 誌の 2005 年価格予想は 2,535 ~ 2,900 ドル/t(2004 年の平均価格: 2,866 ドル/t)。但し、足下の需給が予想以上に堅調で価格も上昇していることから上方修正の動きもある。一方、TC/RC については、鉱山生産、地金
生産とも 8 %台増と特に地金生産が加工賃上昇を受け本格的に回復し、精鉱需給はバランスする方向にあるため、大きな変化はないとの見通しであるが、2006 年以降、鉱山生産にブレーキがかかるため、2007 年以降の買鉱条件は反発する可能性がある。
3. 2008 年までの供給能力の見通し国際銅研究会によると、銅鉱山能力は、今後
4 年間で 323 万 t(年率 4.8%増)増加し、2008年は 18,913 千 t と予測(銅精鉱: 14,635 千 t、SX-EW: 4,278 千 t)している。特に SX-EW鉱山が急増(年率 9.5%)していく見込みである(図 14)。一方、地金生産能力は、4年間で約 281万 t増加し 22,092 千 tと予測している(図 15)。今後の主な銅鉱山開発プロジェクトとして
は、南米(チリ、ペルー、ブラジル)を中心に銅鉱山開発が活発化しており、その他にモンゴルやザンビア等でも大型鉱山開発プロジェクトが進展中である(表 10)。
また、今後の主な精錬所拡張プロジェクトとしては、将来の市場を睨み、アジア(中国、インド、日本等)を中心に製錬所拡張の動きが活発化している。特に中国及びインドは
鉱山生産量 地金生産量 消費量 需給バランス
13,678 15,234 15,620 -386
14,522 15,776 16,496 -719
15,840 18,073 18,167 -93
6.2 3.6 5.6 -
8.0(7.4) 8.5(7.3) 5.3(4.1) -
1.0 5.6 4.6 -
15,678 (15,626) 17,111 (16,926) 17,370 (17,146) -259 (-220)
’05/06 増加率(%)
’04/05 増加率(%)
’03/04 増加率(%)
2006 (予測)
2005 (予測) 20042003
単位:千t
出典:国際銅研究会 17 March 2005
表 9 2005 年及び 2006 年の世界の銅需給見通し
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
2004 2005 2006 2007 2008
千t
SX-EW精鉱(銅純分)
図 14 鉱山生産能力の見通し
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
2004 2005 2006 2007 2008
千t
EW生産 電解精錬
図 15 地金生産能力の見通し
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 13(13)
Spence Gaby Sur Escondida(SW-EW) Cerro VerdeⅡ Alemao Salobo Kansanshi Lumwana
チリ チリ チリ ペルー ブラジル ブラジル ザンビア ザンビア
BHP Billiton Codelco BHP , Rio Tinto,Japan Phelps Dodge+Sumitomo CVRD CVRD First Quantum Equinox Resources
2007 2006 2006 2007 2007 2007 2005 2007
SX-EW SX-EW SX-EW Concentrates Concentrates SX-EW Conc+SX-EW Concentrates
200 150
150→240 200 155 100 110 125
プロジェクト名 国 名 オペレーター 開始年 年間能力(千t) ソース
出典:国際銅研究会
表 10 2008 年までに開山予定の主な銅鉱山開発プロジェクト(年産 10万 t 以上)
Daye(大治) Guixi(貴渓) Jinchang(金昌) Jinchuan(金川) Jinlong(金隆) Yunnan(雲南) Gresik Birla Sterlite Refunery Toyo Rayong Sar Chesmeh Pyshma Chuquicamata Ilo
中国 中国 中国 中国 中国 中国 インドネシア インド インド 日本 タイ イラン ロシア チリ ペルー
Daye Non-Ferrous Metals(大治有色金属公司) Jiangxi Copper (江西銅業集団公司) Tongling Non-Ferrous Metals(銅陵有色金属公司) Jinchuan Non Ferrous(金川集団有限公司) Tongling(銅陵有色金属公司), Sumitomo Yunnan Copper Industry(雲南銅業有限公司) Mitsubishi, Freeport Birla Group Vedanta Sumitomo Thai Asset Management NICICO Urals Mining Codelco SPCC
2005 2005 2006 2006 2005 2005 2005 2006 2005 2008 2005 2004 2005 2006 2005
150 → 200 400 → 500 100 → 150 100 → 230 150 → 210 230 → 300 220 → 245 200 → 500 180 → 300 300 → 450(段階的) 40 → 165 200 → 250 330 → 380 700 → 870 290 → 360
精錬所 国 名 オペレーター 拡張年 精錬能力(千t)
出典:国際銅研究会
表 11 2008 年までに拡張が計画されている主な精錬所(年産 10万 t 以上、EW除く)
順位 1 2 3 4 5
企業名 総探鉱予算(百万USドル) 銅探鉱予算(百万USドル) Ivanhoe Rio Tinto Codelco BHP Billiton Phelps Dodge
100.0 109.7 35.7 97.0 29.3
98.0 49.0 35.7 31.0 29.3
出典:Mineral Commodity Summaries
表 12 2004 年銅探鉱予算トップ 5
200019991998199719961995 2001 2002 2003 2004
USドル/lb
銅予算
銅価格
800.0
700.0
600.0
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
0.0
百万USドル
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
図 16 銅探鉱予算の推移
2008 年までに約 50 万 t の精錬所拡張を計画している(表 11)。一方、昨今の銅探鉱予算の推移を見ると
(図 16)、銅の探鉱予算は 1997 年以降減少傾向を続けたが、2003 年以降、銅価格の高騰で本格的に回復し、2004 年は前年の約 7 割と大幅に増加している。企業別では(表 12)、2004年 はモンゴルで精力的に活動しているIvanhoe 社(カナダ)が銅予算トップに躍進した。2005 年の探鉱予算は、各社とも 2004 年に記録的な高収益を上げていることや金属価格の高水準化を受けて、さらに増加の見込みであり、当面、各社とも、新規鉱床発見や銅相場の高値による開発プロジェクトの再開や
拡張に勢いがつくものと予想される。
4. まとめ当面の注目点としては、以下があげられる。
①鉱山生産の増産傾向はいつまで続くのか。また、既発見未開発鉱山や新規鉱山開発の動向を注視。
②地金生産がどこまで本格回復するか注視(日本やチリ製錬所の稼働率向上、中国、インド等拡張計画の進展等)。
③消費は、中国は持続的成長も。米国、日本に陰りがあるとの観測。
④金属価格は、引き続き、中国ファクター、ドル相場、ファンド筋の動きに大きく影響されるものと見られる。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート14(14)
1. 2004 年亜鉛の国際価格と世界の需給動向
(1)亜鉛の LME価格と LME在庫の推移
亜鉛の国際価格は、2001 年から 2003 年にか
けて 700 ~ 800US ドル/t台という価格低迷期
に入り、この間は探鉱費も大幅に削減されるこ
ととなり、探鉱活動が停滞することとなった。
2003 年秋以降は、中国需要の急拡大による需給
の逼迫や米国のドル安・低金利政策による投機
資金の金属市場への流入から他の金属と同様に
LME価格が上昇を続け、2004 年 3 月には LME
現物で 1,155 ドル/tの 4年ぶりの高値を付けた。
その後、9月にかけて 943 ドル/tまで低落した
が、9 月末以降、再び亜鉛地金価格が上昇に向
かい、12 月末には 1,270 ドル/tの 2004 年最高
値となり、これは 1997 年 10 月以来 7 年ぶりの
価格水準である(図 1)。
一方、亜鉛の LME 在庫量は、2003 年 10 月
以降、700 千t台で安定していたが、2004 年 11
月末には 669 千tと 700 千tを割り込んだ。12
月末には 628 千tまで 3 か月連続して減少して
いる。LME 亜鉛在庫量は銅・鉛・ニッケルと
比較すると依然として高い水準にはあるが、今
後急激に減少する可能性がある(図 1)。
亜鉛1995.3
1995.6
1995.9
1995.12
1996.3
1996.6
1996.9
1996.12
1997.3
1997.6
1997.9
1997.12
1998.3
1998.6
1998.9
1998.12
1999.3
1999.6
1999.9
1999.12
2000.3
2000.6
2000.9
2000.12
2001.3
2001.6
2001.9
2001.12
2002.3
2002.6
2002.9
2002.12
2003.3
2003.6
2003.9
2003.12
2004.3
2004.6
2004.9
2004.12
2005.3
100,000
200,000
300,000
400,000
500,000
600,000
700,000
800,000
900,000
1,000,000
1,100,000
価格 在庫
700
800
900
1,000
1,100
1,200
1,300
1,400
1,500
1,600
1,700
tUSドル/t
図 1 亜鉛 LME価格及び LME在庫量の推移
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 15(15)
(2)亜鉛埋蔵量とR/P の推移2004 年に米国 USGS の発表による世界の亜
鉛埋蔵量は 220 百万 t であり、中国、豪州、米
国、カザフスタンの 4 か国で世界の 57%を占め
る。1998 年以降、R/P は 20 年分以上をキープ
しており、2004 年の R/P は 22.8 年であった。
この数字は、銅、ニッケル等他の鉱種と比べて
低いものとなっている(表 1)(図 2)。
(3)世界の亜鉛鉱石生産動向州別亜鉛鉱石生産量の推移を図 3 に示す。
2003 年の世界の亜鉛鉱石生産量は、前年比
7.6%増の 9,577 千 t であった。第 1 位は中国の
2,029 千 t(24.9%増)、第 2 位は豪州で 1,447 千
t (0.2 %増)、第 3 位がペルーで 1,369 千 t
(12.3 %増)であった。2004 年の亜鉛鉱山生産
(速報値)は 9,649 千tであり、対前年比 0.8%
の微増となった。第 1 位は中国の 2,264 千 t
(11.6%増)、第 2位は豪州で 1,298 千 t (10.3 %
減)、第 3 位がペルーで 1,227
千 t(10.4 %減)であった。
豪州は Pillara 鉱山の休止に
より、ペルーは Antamina 鉱
山における亜鉛鉱石品位の低
下によりそれぞれ減産となっ
た。増産は、中国及びナミビ
ア(Anglo American 社の
Skorpion 鉱山でほぼフル生産)
で大幅な増産があり、カナダ、
インド、アイルランド、スウ
ェーデンでも増産が見られた。結果として増産
分が豪州とペルーの減少分を若干上回ることと
なった。
ここ 5 年間では、主要鉱石生産国の状況をみ
ると、中国、ペルー、メキシコ、アイルランド、
カザフスタン、インドで生産が増加しており、
カナダ、米国、豪州では減産することとなった
(図 4)。
1990年 2004年
国 名 埋蔵量(千t) 国 名 埋蔵量(千t) カナダ 米国 豪州 ペルー メキシコ その他の西側世界 東側世界 計
24,000 20,000 19,000 7,000 6,000 48,000 23,000
147,000
中国 豪州 米国 カザフスタン ペルー カナダ メキシコ その他 計
33,000 33,000 30,000 30,000 16,000 11,000 8,000 59,000 220,000
出典:Mineral Commodity Summaries
表1亜鉛国別埋蔵量
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 20040
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000 千t
0
5
10
15
20
25
30 R/P
Reserves R/P
図 2 亜鉛埋蔵量とR/P の推移
図 3 州別亜鉛鉱石生産量の推移
図 4 国別亜鉛鉱石生産内訳(2004 年)
図 5 州別亜鉛地金生産量の推移 図 6 国別亜鉛地金生産内訳(2004 年)
2003 年における世界の亜鉛鉱山生産量トップ
10 鉱山を表 2に示す(Raw Materials 社調べ)。
世界最大の亜鉛鉱山は、米国アラスカ州の Red
Dog で、年間生産量(亜鉛純分)は 55 ~ 57 万
t である。第 2 位の Century(豪州)も年間生
産量 50 ~ 51 万 t をほこる。2003 年のトップ
20 のうち、豪州が 6鉱山を占めている。ペルー
に 4 鉱山、カナダも 3 鉱山あり、豪州、南米及
び北米において亜鉛生産規模の大きい鉱山が多
いことがわかる。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート16(16)
順位 鉱 山 名 国 名 開 山 年 権 益 比 率 2003年 鉱石生産量 (千t)
2004年 鉱石生産量 速報値 (千t)
2004/2003 増加率 (%)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Red Dog
Century
Antamina
Brunswick (Bathurst)
Rampura-Agucha
Tara
Zyryanovsk
McArthur River
Mount Isa
Lisheen
上位10鉱山計
世界計
米国
豪州
ペルー
カナダ
インド
アイルランド
カザフスタン
豪州
豪州
アイルランド
Teck Cominco(100)
Zinifex(100)
Noranda(100)
Vedanta(65), State of India(29.5)
Boliden(100)
Xstrata(100)
Anglo American(100)
1990
1999
2001
1964
1991
1977
1996
1995
1924
1999
579.3
502.9
362.7
286.5
250.0
188.4
175.0
173.3
169.4
169.3
2,856.8
9,500.0
-4.3
2.3
-47.6
-6.4
-
19.4
2.9
-7.7
-2.0
-7.7
554.2
514.4
190.1
268.1
不明
225.0
180.0
160.0
166.0
156.3
9,700.0
BHP Billiton Gr(33.8), Noranda(33.8), Teck Cominco(22.5), 三菱商事(10)
Glencore(72), Government of Kazakhstan(28) Xstrata(75), 日鉱金属(12.5), 三井物産(6.25), 丸紅(6.25)
出典:Raw Materials Data(2005)、Metals Economics Group(2005)
表 2 世界の亜鉛鉱山生産量トップ 10
(4)世界の亜鉛地金生産動向州別亜鉛地金生産量の推移を図 5 に示す。
2003 年の世界の亜鉛地金生産量は、前年比
1.7%増の 9,869 千tであった。第 1 位は中国の
2,319 千t(7.6%増)、第 2 位はカナダで 761 千
t(4.0%減)、第 3 位が日本で 651 千t(1.7%
増)であった。
2004 年の亜鉛地金生産量(速報値)は前年比
3.2%増加し 10,181 千 t で、初めて1千万 t を突
破した。地金生産の増加は、中国の 200 千t増、
ナミビアの 71 千t増が主要因である。カナダ、
カザフスタン、韓国も増加している。主な減少
は豪州の 80 千 t 減で、Cockle Creek プラント
閉鎖(2003 年 9 月)の影響が大きい。日本は
16 千 t の減産となり、24 千 t 増産の韓国に追い
抜かれ、2004 年の地金生産は韓国が第 3位とな
り、日本は世界第 4位に後退した。
ここ 5 年間では、中国、韓国、スペイン、メ
キシコ、カザフスタンといった国々が大きく増
産している(図 6)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 17(17)
2004 年における主要亜鉛地金生産企業 10 社
を表 3に示す(Raw Materials 社調べ)。世界第
1位は、Onsan(韓)、Townsvi l le(豪)、
Sukpo(韓)等を保有する韓国のYoung Poong
社であり、世界の亜鉛地金の 9.1%を生産する。
上位 7 社で世界の亜鉛地金生産の約 40%を占め
ている。
ランク 企 業 名 国 名 主 要 製 錬 所
2003年 亜鉛地金 生産量 (千t)
2004年 亜鉛地金 生産量 (千t)
2004/2003 増加率 (%)
2004年 世界生産量に 対するシェア (%)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Young Poong
Xstrata
Umicore
Zinifex (Pasminco)
Noranda
Votorantim
株洲製錬集団有限公司
Teck Cominco
Glencore International
895.8
641.3
613.7
679.7
409.5
362.0
257.5
285.0
412.1
342.4
9,870.0
928.0
650.0
632.0
622.4
425.0
398.8
392.7
301.8
296.0
271.6
10,200.0
3.6
1.4
3.0
-8.4
3.8
10.2
52.5
5.9
-28.2
-20.7
3.3
9.10
6.37
6.20
6.10
4.17
3.91
3.85
2.96
2.90
2.66Porto Vesme(伊,100%)、 Ust-Kamenogorsk(カザフスタン,69%)
韓 国
スイス
ベルギー
豪 州
カナダ
ブラジル
中国
カナダ
スイス
Boliden (Outokumpu)
スウェーデン (フィンランド)
Onsan(韓,100%)、Townsville (豪,100%)、Sukpo(韓,100%) Aviles(スペイン,100%)、 Nordenham(独,100%) Balen(ベルギー,100%)、 Auby(仏,100%)、Tak(タイ,100%) Risdon(豪,100%)、Budel(オランダ,100%)、 Clarksville(米,100%) Kokkola(フィンランド,100%)、 Odda(ノルウェー,100%) Valleyfield(加,100%)、 Kidd Creek(加,100%) Tres Marias(ブラジル,100%)、 Cajamarquilla(ペルー,100%) 株洲(中,100%)
Trail(加,100%)
世界地金生産量
出典:Raw Materials Data、 2005、中国有色金属工業協会
表 3 世界の主要亜鉛地金生産企業(2004 年)
(5)亜鉛の輸出入①日本2004 年には、日本は海外から鉱石を 563 千 t
(精鉱中の亜鉛純分量)輸入している。図 7 に日本の亜鉛鉱石輸入推移を示す。1999 年以降、500 千 t 台が続いており、安定している。輸入先は豪州が 1 位であり、2004 年の輸入量は 193千 t、2 位がペルーで同 105 千 t であり、両国で亜鉛鉱石輸入の 53%を占める。近年は豪州からの輸入が減り、ペルーからの輸入が増える傾向にある。2004 年は米国及びボリビアからの輸入が増加した。
②中国中国は、世界最大の亜鉛鉱石生産国であると
同時に、亜鉛の最大消費国である。2001 年までは鉱石生産が消費を上回っていたが、2002 年からは消費量が鉱石生産量を上回ることとなった。2003 年には、鉱石輸入が 373 千 t、地金輸入が 136 千 t となり、この合計量が地金輸出の451 千 t を上回り、初めて亜鉛の輸入国となった。2004 年は、鉱石輸入が 306 千 t、地金輸入は 239 千 t と 76%増加したのに対し、地金輸出は 224 千 t と半減し、中国は亜鉛地金の純輸入国となった。このことは世界の亜鉛需給バランスに大きな影響を与えている。中国の亜鉛消費量は 2003 年に前年比 23 %
増、2004 年にも同 10 %増という驚異的な伸びを見せており、輸入超過の傾向はますます強まるものと思われる。
(6)世界の亜鉛消費動向州別亜鉛地金消費量の推移を図 8 に示す。
2003 年の世界の亜鉛地金消費量は、前年比図 7 日本の亜鉛精鉱輸入推移
4.7%増の 9,834 千 t であった。第 1 位は中国の2,155 千 t(23.1%増)、第 2位は米国の 1,154 千 t(5.6%減)、第 3 位が日本で 619 千 t(2.7%増)であった。2004 年の世界の亜鉛消費量(速報値)は、前年比 5.6%増の 10,387 千tであり、初めて1千万 tを突破した。中国で 225 千t(10.4%)、米国でも 110 千t(9.5%)増加している。ここ 5年間(1999 年と 2004 年の比較)では中
国の消費が 2倍となっていることが注目される。韓国、イタリア、インド、台湾でも消費が伸びている。逆に米国、日本、ドイツでは 5 年前との比較で消費が減少する結果となった(図 9)。
(7)日本の亜鉛消費日本の亜鉛地金消費量は、2004 年に 623 千 t
であり、前年と比べて 0.6%の微増にとどまった。これは世界第 3 位であり、世界全体の消費の6.0%を占める。2004 年における日本の亜鉛地金消費内訳(見込み)を表 4 に示す。日本の消費の特徴は、めっき用が多いことで、消費の約 6割を占める。国際鉛亜鉛研究会が発表した 2001年の西側世界の亜鉛消費内訳をみると、めっき用は 47.2%となっており、日本のめっき用消費が突出していることがわかる。日本では、特に亜鉛めっき鋼板向けが多く、消費全体の 4 割弱を占めている。
(8)2004 年の世界需給バランス2004 年の世界の亜鉛鉱石生産量は、前年比
0.8%増の 9,649 千 t、亜鉛地金生産量は、同3.2%増の 10,181 千 t であった。それに対し、消費量は 5.6%増と大幅に伸び、10,387 千 t となった。米国備蓄放出を考慮すると、2004 年の世界全体の亜鉛需給バランスは、172 千 t の供給不足となった。これは、2004 年 10 月の国際鉛亜鉛研究会による予測(169 千 t の供給不足)とほぼ一致している。亜鉛が供給不足となるのは、1999 年以来 5 年振りのことである。2001 年から 2004 年までの 3 年間でみると、鉱石生産量が年率 2.6%の伸び、地金生産量が年率 3.4%の伸びであるのに対し、消費量は年率 5.2%の伸びを記録しており、このことが供給不足の原因となっている(図 10)(図 11)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート18(18)
図 8 州別亜鉛地金消費量の推移
図 9 国別亜鉛地金消費内訳(2004 年)
項 目 主な用途 消費量(t)
亜鉛めっき鋼板
その他のめっき
亜鉛ダイカスト
伸銅品
無機薬品
亜鉛板
その他
合 計
228,982
142,026
92,053
66,095
57,485
3,454
33,328
623,423
自動車用部品材、建材・ 構造物、電気機器
自動車用部品、電気機械、 一般機械
黄銅板管棒、銅合金製品
ゴム(タイヤ)、電子部品、塗料
建築材、道路、電力・通信、鋼管
日本鉱業協会調べ
表 4 日本の亜鉛地金消費内訳(2004 年)
図 10 亜鉛生産量(鉱石・地金)、消費量の推移
図 11 亜鉛需給バランスの推移
2. 2005 年の需給・価格見通し(1)亜鉛鉱石生産見通し2005 年の亜鉛鉱石生産は 6.4%増加し 10,270
千 t となると予測される。2005 年は、中国雲南省にある Lanping 鉱山が生産開始する等多くの中小鉱山の増産で中国の生産が 2,340 千 t まで増加、豪州、インド、アイルランド、メキシコ、ナミビア、ペルー、スウェーデン、米国でも増産が予測されている。
(2)亜鉛地金生産見通し2005 年の亜鉛地金生産量は 4.4 %増加し
10,631 千 t となることが予想される。2005 年は、中国とカザフスタンで更に増加し、カザフスタンでは新規の Balkhash プラントがフル生産に近づくと予測される。豪州、インド、韓国、ナミビア、ノルウェー、米国でも増加が予測されている。
(3)亜鉛消費見通し2005 年には更に 3.8 %上昇し、10,784 千 t と
なると予想する。この上昇は主に中国における
亜鉛めっき鋼板の消費量が引き続き増加することによるもので、道路、鉄道及び変電所の建設といったインフラ整備や住宅、自動車及び大型家電製品部門での需要急増も見込まれている。このため、中国の消費は 2005 年には 11.3%(27千 t)の増加が見込まれている。インドでも6.9%(24 千 t)の増加が予測される。
(4)2005 年の世界需給バランス研究会では同時期に 2005 年の需給予測を出
しており、このときは 118 千 t の供給不足を予想した。業界誌等によれば、2005 年も中国の需要は伸び続け、亜鉛供給不足量は 280 千 t 程度まで拡大するとの見方もある。今後の需要見通しとしては、特に経済発展
が著しい中国の動向が重要である。中国では、他の国と比べて消費全体に占める亜鉛めっき向けの比率が 2001 年で 26.3 %と低く、今後、この分野での需要の伸びが見込まれている。特に中国で自動車や家電製品に使われる亜鉛めっき鋼板の需要動向が世界の亜鉛需要を左右すると言っても過言ではない(表 5)。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 19(19)
亜 鉛 1999 2000 2001 2002 20032004
(速報値) 2005 (予測)
2003/2004 増加率(%)
2004/2005 増加率(%)
鉱石生産量
地金生産量
地金消費量
米国備蓄放出
地金需給バランス
年平均価格
8,068
8,368
8,490
22
-100
1,077.32
8,839
8,981
9,008
39
12
1,128.11
8,934
9,221
8,920
23
324
886.27
9,577
9,869
9,834
7
42
828.39
9,649
10,181
10,387
34
-172
1,047.83
10,270
10,631
10,784
35
-118
0.8
3.2
5.6
26.5
6.4
4.4
3.8
8,900
9,703
9,391
3
315
778.56
単位:千t 表 5 世界の亜鉛需給バランス
(5)2005 年の亜鉛価格見通しMetal Bulletin 誌が今年 1月に発表した2005年
の価格予想によれば、金融投資会社 8 社による予測として、亜鉛地金 1t 当り 1,000 ドル台が 1社、1,100 ドル台が 3 社、1,200 ドル台が 1 社、1,300 ドル台が 3社となった。2004 年の LME亜鉛平均価格が 1,047.83 ドルであったので、概ね2004 年の平均価格は上回るとの予測となっている。
3. 今後の鉱山開発プロジェクトMetals Economics Group が ま と め た
Corporate Exploration Strategies 2004 によれば、2004 年の世界の亜鉛・鉛探鉱予算は 101 百万USドルであり、4年振りの増加となった。しかしながら、1996 年から 2000 年までは 200 百万 US ドルを上回っており、まだ十分に回復しているとは言えない。ベースメタル(銅、鉛・亜鉛、ニッケル)合計探鉱予算に対するシェアは、2003 年の 12.8%から 2004 年は 10.8%に低下している。2004 年の銅のシェアは 61.5%、ニッケルは 27.7%であり、ベースメタルの中でも鉛・亜鉛は探鉱予算面では重要視されていない。2004 年の鉛・亜鉛探鉱予算を企業別にみる
と、第 1 位は Anglo America 社の 10.8 百万ドルである。これは、主として Lisheen(アイルランド)、Hudson Bay(カナダ)、BlackMountain(南ア)、Skorpion(ナミビア)等の鉱山周辺の探鉱に充てられている。第 2 位はBoliden 社の 9.5 百万ドルであり、主にスウェーデン、Tara(アイルランド)等の鉱山周辺探鉱を行っている。第 3 位は BHP Billiton 社の 4.4百万ドルであり、豪州のクイーンズランド州、西オーストラリア州で探鉱を行っている(図 12)(表 6)(表 7)。
2005 年~ 2006 年に生産開始が予定されている主な亜鉛鉱山としては、Lanping 鉱山(中国・雲南省)、Mount Isa の Black Star オープンピット(豪州)、北部ウラルの Chibachyisk(ロシア)、Pallca(ペルー)がある。Mount Isa を所有する Xstrata 社は、豪州
Mount Isa における新ピットとなる Black Starオープンピット(亜鉛-鉛-銀を採掘)の開発を公表した。このピットは鉱量 24.5 百万 t、平均
品位は亜鉛 5.1%, 鉛 2.7%, 銀 54g/t であり、開発資金は 18.8 百万 US ドルとなる。このうち、初期開発として鉱量 8.4 百万 t(亜鉛 5.2%, 鉛3.5%, 銀 60g/t )の開発が決定済みであり、剥土比 4 : 1 で、ピットの深度は 200m を予定。このピットの生産開始は 2005 年の早い時期が予定されており、年間出鉱量は 150 万 t、マインライフは 5年以上を予定している。Chibachyisk 鉱山(ロシア)では、2004 年 6
月末から鉱山建設を開始しており、2006 年に完成を予定している。当初年産 15 万t、その後55 万t/年まで増産を予定している。三井金属は、ペルーの Pallca 鉱山で 2006 年
1 月に操業を開始する予定である。鉱量は 14 百万 t(亜鉛 11.8%、鉛 0.7%、銀 43 g/t )と見積もられている。
4. まとめ国際鉛亜鉛研究会によれば、2004 年 10 月の
発表で、世界の亜鉛地金供給について、2005 年は 2004 年に引き続き 118 千 t 不足すると予測した。需要面では、中国の消費が亜鉛で年 10~ 11%増加が予測されていることが主要因である。中国で自動車や家電製品に使われる亜鉛めっき鋼板等の消費動向によっては、今後供給不足量が拡大していく可能性がある。供給面では、2004 年の亜鉛鉱石生産について、
研究会の昨年 10 月時点での予測では 9,773 千 tであったものが、2004 年通年の速報値では9,649 千 t にとどまっており、2001 年から 2003年にかけての価格低迷時に亜鉛探鉱が十分になされていなかった結果、需要の増加に対応できていないのが実情である。2001 年以降、亜鉛価格低迷から亜鉛探鉱予算が急減しており、鉱石増産が本格化するのは 2007 年以降になるとの見方もある。また、亜鉛地金生産については、最大生産国
である中国の電力供給不足から生産ラインの一時休止やUmicore 社(ベルギー)の亜鉛地金減産の方針発表等の不安定要因がある。LME 亜鉛在庫量は銅・鉛・ニッケルと比較
すると依然として高い水準にはあるが、2004 年10 月から 2005 年 2 月まで 5 か月連続して減少しており、今後もさらに減少していくことも予想され、亜鉛価格がさらに上昇していく可能性がある。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート20(20)
図 12 世界の亜鉛・鉛探鉱予算の変遷
Anglo American Boliden BHP Billiton Teck Cominco Grupo Mexico
40.0 13.9 97.0 26.3 22.3
10.8 9.5 4.4 4.1 4.1
企業名 総探鉱予算 (百万ドル)
亜鉛・鉛探鉱予算 (百万ドル)
表6 企業別亜鉛・鉛探鉱予算トップ5(2004年)
銅 鉛・亜鉛 ニッケル 計
557.0 101.1 259.4 937.5
61.5 10.8 27.7 100.0
鉱 種 総探鉱予算 (百万ドル)
シェア(%)
表7 ベースメタル探鉱予算(2004年)
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 21(21)
1. 2004 年ニッケルの国際価格と世界の需給動向(1)ニッケルの LME価格と在庫の推移ニッケル国際価格は、構造的な需給タイト化見
通しを背景に 2003 年後半から高値が続き、2004
年1月に 17,770 ドル/t と 1989 年 3月以来の高値
をつけた。その後、ファルコンブリッジ社のスト
収拾の影響などから下落したが、需給が依然とし
てタイトであることから 13,000 ドル/t 前後で推
移。4月から 5月にかけては、非鉄金属相場全般
が調整局面を辿る中、新規材料不足も相まって
10,530ドル/tまで下落したが、その後反発基調を
辿り、9月末からドル安を背景に非鉄金属市場全
面高となるなか、10 月には 1月以来の 16,000 ド
ル/t 乗せへと急伸。その後、他の非鉄金属相場
同様、投機筋の清算売りを浴びて 14,000 ドル/t
前後で推移。12 月はじめ、ドル安に歯止めがか
かり投機資金流出が加速したため急落し 13,000
ドル/t を割り込んだが、その後は非鉄金属市場
が再び全面高となるなか、上昇基調に転じ 12月
末時点で 15,205 ドル/t となり、2004 年の平均価
格は 13,830 ドル/tとなった。 LMEニッケル在
庫は、6月末に 8,394t まで落ち込んだが、その後
回復し 12月末時点で 20,898t。これには、ロシア
のノリルスク社による、英国リバプール倉庫への
大量ニッケル持込があった(図1)。
ニッケル
図 1 LME価格と在庫の推移
(2)ニッケル埋蔵量とR/P の推移U S G S の M i n e r a l
Commodities Summary による
と、ニッケル埋蔵量(Reserves)
は 2004 年現在およそ 62 百万 t
で、近年、豪州、ロシア、ブラ
ジルでの埋蔵量が増加している。
埋蔵量上位5か国で全体の 7 割
以上を占めており、ニッケルは
寡占率の高い金属であるといえ
る。一方、ニッケルの可採年数図 2 ニッケル埋蔵量とR/P の推移
(R/P : Reserves/Production)は 40 ~ 50 年
程度で推移しており、2004 年は 48 年となって
いる(図 2)(表 1)(表 2)。
表 1 1990 年ニッケル埋蔵量(t)
(3)世界のニッケル鉱石生産動向表 3 に 2000 年から 2004 年までの国別ニッケ
ル鉱石生産第 10 位までの推移を示す。2004 年
のニッケル鉱石生産は、前年比 0.5%増加となっ
ており、カナダ、ニューカレドニアで増産、豪
州では大幅な減産となっている。
表 2 2004 年ニッケル埋蔵量(t)
表 3 2000 年~ 2004 年の世界のニッケル鉱石生産推移
(4)世界のニッケル地金生産動向表4に 2000 年から 2004 年までの国別ニッケ
ル地金生産第 10 位までの推移を示す。日本は
ロシアに次いで第 2 位のニッケル地金生産国で
ある。2004 年のニッケル地金生産は、前年比
3.9%増加で、カナダ、中国で増産、ニューカレ
ドニアでは減産となっている。
表 4 2000 年~ 2004 年の世界のニッケル地金生産推移
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート22(22)
出典:Mineral Commodities Summary 出典:Mineral Commodities Summary
出典:国際ニッケル研究会
出典:国際ニッケル研究会
順位 国 名 埋蔵量 シェア
1
2
3
4
5
キューバ
カナダ
U.S.S.R.
ニューカレドニア
インドネシア
20,000,000
8,963,000
7,300,000
5,000,000
3,528,000
44,791,000
53,643,000
37.3%
16.7%
13.6%
9.3%
6.6%
83.5% 5か国計
世界計
順位 国 名 埋蔵量 シェア
1
2
3
4
5
豪州
ロシア
キューバ
カナダ
ブラジル
22,000,000
6,600,000
5,600,000
5,200,000
4,500,000
43,900,000
62,000,000
35.5%
10.6%
9.0%
8.4%
7.3%
70.8% 5か国計
世界計
順 位 国 名 2000 2001 2002 2003 20042003/2004 増加率(%)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
ロシア
カナダ
インドネシア
豪州
ニューカレドニア
キューバ
コロンビア
中国
南アフリカ
ドミニカ
235.0
190.7
98.2
166.4
117.6
71.4
58.9
51.0
36.6
27.8
1,173.5
235.0
194.1
102.1
205.1
117.6
76.5
53.0
51.5
36.4
22.3
1,224.4
235.0
188.1
121.6
208.0
100.0
75.2
58.2
54.6
39.2
23.5
1,247.4
240.0
163.8
143.9
179.5
111.9
78.0
70.8
60.8
42.7
27.4
1,264.3
240.0
189.2
148.7
143.1
119.1
78.0
75.0
64.7
42.0
37.0
1,270.8
0.0
15.5
3.3
―20.3
6.4
0.0
5.9
6.3
―1.6
35.1
0.5世界計
順 位 国 名 2000 2001 2002 2003 20042003/2004 増加率(%)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
ロシア
日本
カナダ
豪州
中国
ノルウェー
フィンランド
コロンビア
ニューカレドニア
南アフリカ
221.0
160.7
134.2
110.5
50.9
58.7
54.3
27.7
43.9
36.6
1,082.5
252.2
153.7
140.6
128.1
49.5
68.2
54.6
38.4
45.9
33.4
1,160.1
239.3
157.9
144.5
132.0
53.5
68.5
55.3
44.0
48.7
38.5
1,181.9
260.0
165.1
124.4
127.9
64.7
77.2
52.5
47.9
50.7
40.8
1,201.2
258.3
168.1
151.3
119.9
74.2
71.4
49.2
48.8
43.0
41.1
1,248.0
-0.7
1.8
21.6
-6.3
14.7
-7.5
-6.3
1.9
-15.1
0.6
3.9世界計
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 23(23)
表 5 2000 年~ 2004 年の世界のニッケル地金消費推移
(5)世界のニッケル地金消費動向表5に 2000 年から 2004 年までの国別ニッケ
ル地金消費第 10 位までの推移を示す。日本は世界第1位のニッケル消費国である。近年、中
国、韓国での消費量が急増している。2004 年のニッケル地金消費は、前年比 1.3%増加となっており、中国、韓国で増加している。
順 位 国 名 2000 2001 2002 2003 20042003/2004 増加率(%)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
日本
中国
米国
韓国
ドイツ
台湾
イタリア
フィンランド
スペイン
南アフリカ
200.1
62.0
150.0
78.0
103.5
90.0
52.6
43.3
37.8
31.0
1,122.6
161.5
83.0
129.1
75.4
110.2
81.0
57.0
38.6
43.8
30.0
1,103.8
191.2
93.6
121.0
83.2
106.6
91.0
66.0
40.6
47.0
34.7
1,177.4
192.8
125.0
120.0
95.0
99.7
97.0
70.0
55.0
47.0
44.0
1,232.9
191.9
141.0
121.9
102.0
101.9
93.6
65.2
60.0
45.0
42.6
1,248.7
-0.5
12.8
1.6
7.4
2.2
-3.5
-6.9
9.1
-4.3
-3.2
1.3
出典:国際ニッケル研究会
世界計
(6)2004 年世界のニッケル需給バランス表 6 及び図3に、国際ニッケル研究会による
1999 年から 2004 年までのニッケル需給バランスの推移を示す。ニッケル需給バランスは、2003 年に急激な需要増大により 4万 t ほどの供給不足となった。2004 年年初は、供給不足が深刻化するとの懸念もあったが、結果としてはほぼバランスし、微量(700t)の供給不足となっ
た。その主な要因は、ニッケル価格高騰による低ニッケル含有ステンレスなどへのシフト(いわゆるニッケル離れ)、世界的なスクラップ使用の増大、ノリルスク社による LME 倉庫への大量持込などが挙げられる。
表 6 ニッケル需給バランスの推移
ニッケル 1999 2000 2001 2002 20032004
(速報値)
鉱山生産量
一次地金生産量
備蓄放出
消費量
需給バランス
年平均価格(USドル/t)
(千t)
1,058.1
1,023.5
1.6
1,081.6
-56.5
6,015
1,173.5
1,082.5
0
1,122.6
-40.1
8,641
1,224.4
1,160.1
0
1,103.8
56.3
5,948
1,247.8
1,180.2
2.9
1,174.8
8.3
6,772
1,266.5
1,192.3
0.0
1,232.4
-40.1
9,640
1,270.9
1,248.0
0.0
1,248.7
-0.7
13,830
出典:国際ニッケル研究会 図 3 ニッケル需給バランスの推移
(7)国内のニッケルフロー図4に国内におけるニッケルの原料から最
終製品までのフローを示す。ニッケル資源は国内にはほとんど存在せず、原料は全量輸入に頼っている。また、ニッケルの供給源は偏在しており、対日輸出上位5か国(インドネシア、豪州、ニューカレドニア、フィリピン、ロシア)で、全体の 80%以上を占めている。ニッケルの輸入は、鉱石、地金のほか、マッ
ト、フェロニッケルといった中間製品の形態でも行われている。輸入鉱石は全量フェロニッケル生産に使用され、フェロニッケルのほとんどが、ステンレス鋼をはじめとする特殊鋼に使用される。マットからは地金及び酸化ニッケルを生産しており、これらはメッキ、触媒、非鉄合金、電池などに使用される。国内ニッケル需要の 9 割以上がステンレス鋼をはじめとする特殊鋼である。
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート24(24)
図 4 国内ニッケルフロー
2. 2005 年の需給と価格の見通し(1)2005 年世界のニッケル需給の見通し国際ニッケル研究会の 2005 年ニッケル需給
予測では、豪州、ニューカレドニアでの増産が
見込まれるため、ニッケル市場はほぼバランス
するとしている(表 7)。しかし、インコ社、ノ
リルスク社など、多くの生産者が 2005 年の生
産計画を下方修正している。また、中国でのス
テンレス生産増加による需要回復などの動きも
あり、供給不足量が拡大するという見方もある。
参考までに、ファルコンブリッジ社による
2005 年以降の中長期的見通しによると、2005
年から 2015 年まで、消費は中国ステンレス需
要増大のために年率 4.4%増加し、2011 年まで
は供給拡大が見込まれるため、需給はほぼバラ
ンスで推移すると予想している。
(2)2005 年ニッケル価格見通しニッケル国際価格は、2005 年1月はじめに
14,105 ドルへと急落したが、2月には在庫減少
を背景に上昇傾向に転じ、2月中旬より 16,000
台となり、2月末時点で 16,375 ドルと高値を付
けている。2005 年ニッケル平均価格を Metal
Bulletin 誌では 14,250 ドルと予想している。ま
た、表8に金融投資会社9社の 2005 年ニッケ
ル平均価格予想を示す。各社の予想価格は、
11,685 ~ 15,034 ドル/t の範囲となっているが、
2005 年に入りニッケル価格が高値で推移してい
ることから、予想価格をより高値に修正してい
る企業も見られる。
ニッケル 20032004/2005 増加率(%)
2004 (速報値)
2005 (予測)
鉱山生産量
一次地金生産量
備蓄放出
消費量
需給バランス
年平均価格(US$/t)
(千t)
1,266.5
1,192.3
0.0
1,232.4
-40.1
9,640
1,270.9
1,248.0
0.0
1,248.7
-0.7
13,830
1,365.6
1,319.8
0.0
1,318.4
1.4
7.5
5.8
-
5.6
-
出典:国際ニッケル研究会
表 7 ニッケル需給バランスの推移及び予測
企 業 名 2005年
ニッケル平均価格予想(ドル/t)
Man Financial
BMO Nesbitt Burns
Bear Stearns
Prudential-Bank
Societe Generale
Barclays Capital
Standard Bank
Sucden
Macquarie
14,000
13,731
15,034
12,000
11,685
13,000
13,000
12,000
13,531
出典:Metal Bulletin誌
表 8 金融投資会社 8社の 2005 年ニッケル平均価格予想
出典:鉄鋼統計年鑑、資源統計年報 他
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート 25(25)
3. 今後のニッケル開発プロジェクト(1)ニッケル鉱床タイプ別資源分布図5にニッケル鉱床タイプ別分布を示す。ニ
ッケル鉱床には、硫化鉱と酸化鉱(主にラテライト鉱)が存在し、その分布は地域ごとに明確に分かれている。大まかには、赤道付近に酸化鉱(ラテライト鉱)が存在するが、豪州にのみ両タイプが存在している。資源量の割合としては硫化鉱:酸化鉱= 2 : 8、埋蔵量の割合は4 : 6 であり、未開発資源のほとんどは酸化鉱
(ラテライト鉱)である(図6参照)。図7はCRU によるニッケル鉱石生産の見通しと内訳であるが、2004 年と 2009 年を比較してみると、硫化鉱の生産量が約 20%伸びるのに対し、ラテライト鉱は約 40%伸びる見通しとなっている。ラテライト鉱は品位が低く、従来、その製錬は技術的に困難とされてきた。しかし近年、低品位酸化鉱を低コストで処理するHPAL(高圧硫酸浸出)法の開発が進み、今後はラテライト鉱の開発が進展する可能性がある。
図 5 ニッケル鉱床タイプ別分布
図 6 鉱床タイプ別資源量(2001 年) 図 7 ニッケル鉱石生産見通し
(2)今後の主なニッケル開発プロジェクト今後数年のうちに生産開始が予定されてい
る、主なニッケル開発プロジェクト(ニッケル年産5万 t以上)は以下のとおりである。
・Voisey's Bay プロジェクト(インコ社、カナダ)硫化鉱2006 年前半生産開始、Ni 55 千 t/年、Co2.5 千 t/年
出典:Brook Hunt
出典: CRU出典:2002 Australia's Commonwealth Scientific and IndustrialResearch Organization
特 集
2004年の世界のベースメタル需給動向と2005年の見通し
2005.5 金属資源レポート26(26)
・ Goro プロジェクト(インコ社、ニューカ
レドニア)ラテライト鉱
2007 年 9 月生産開始、Ni 60 千 t/年、Co
4.5 千 t/年、HPAL 法による生産、日本企
業(住友金属鉱山 11%、三井物産 10%)が
資本参加
・Halmahera プロジェクト(Weda Bay、イ
ンドネシア)ラテライト鉱
2008年生産開始見込み、Ni 55千 t/年
・ Koniambo プロジェクト(ファルコンブリ
ッジ社、ニューカレドニア)ラテライト鉱
2009 年生産開始見込み、フェロニッケル
60 千 t/年(Ni 純分)
・ Gag Island プロジェクト(BHP-ビリトン
社、Aneka Tambang、インドネシア)ラ
テライト鉱
2010年生産開始見込み、ニッケル54千 t/年
このように、今後開発が進むと期待されるプ
ロジェクトについても、ラテライト鉱を対象と
したものが数多く見られる。
(3)ニッケル探鉱予算図8にMetals Economic Group によるニッケ
ルの探鉱予算推移を示す。ニッケル探鉱予算は、
ニッケル価格高騰を背景に、ここ数年上昇傾向
にある。また、2004 年のニッケル探鉱予算はお
よそ 2 億 5 千万ドルで、過去最高額を記録して
いる。
表9に 2004 年のニッケル探鉱予算上位5社
を示す。インコ社、ファルコンブリッジ社、
WMC社など、ニッケルに特化した企業が上位
を占めているが、CVRD、BHP ビリトン社とい
った多角事業化に乗り出している企業において
も、ニッケル探鉱予算が近年増加している。こ
のことからも、ニッケル探鉱が活発化している
ことが分かる。
4. まとめ 2005 年の注目点として、以下が挙げられる。
①国際ニッケル研究会では、鉱石生産 7.5 %増
と予測している。一方、大規模鉱山開発や増
産計画の本格化には 1 ~ 2 年かかるという見
方もあり、鉱山開発動向を注視。
② 2004 年はニッケル価格高騰により、特に中
国で「ニッケル離れ」の現象が見られた。し
かし 2005 年は、中国でのステンレス向け需
要に回復の兆しが見られ、非ニッケル含有ス
テンレス(Mn 系)の流通動向も含め、中国
でのステンレス需要について注視。
③中国ファクター、米国ドル相場、在庫増減な
どのニッケル国際価格への影響を注視。
(2005.4.20)
図 8 ニッケル探鉱予算の推移
順位 総探鉱費 企 業 名 ニッケル 探鉱予算
1
2
3
4
5
(百万ドル)
35.0
27.0
31.1
85.8
97.0
Inco
Falconbridge
WMC
CVRD
BHP Billiton
35.0
25.5
23.4
17.4
11.6
表 9 2004 年ニッケル探鉱予算トップ 5
出典:Metals Economics Group
出典:Metals Economics Group
銅1. 2004 年銅の国際価格と世界の需給動向2. 今後の銅需給・価格見通し3. 2008 年までの供給能力の見通し4. まとめ
亜鉛1. 2004 年亜鉛の国際価格と世界の需給動向2. 2005 年の需給・価格見通し3. 今後の鉱山開発プロジェクト4. まとめ
ニッケル1. 2004 年ニッケルの国際価格と世界の需給動向2. 2005 年の需給と価格の見通し3. 今後のニッケル開発プロジェクト4. まとめ