第5回 線積分とグリーンの定理
1. 曲線 -1-
平面上の曲線とは t の 閉区間 [a, b] で定義された連続函数C : x = φ(t), y = ψ(t)
のことである。以下 φ(t), ψ(t) は有限個の点を除いて微分可能とする。
例) t ∈ [0, 2π] とする -2-
C1 : x = cos t, y = sin t
C2 : x = cos t, y = − sin t
はどちらも単位円を表すが、方向が逆になる
2. 線積分 -3-
一変数の積分は ∫ b
a
f (t)dt
であった。また、二変数の積分は∫∫D
f (x, y) dxdy
であった。平面の上の曲線に沿った線積分を考えることにする
t の 閉区間 [a, b] で定義された曲線 -4-
C : x = φ(t), y = ψ(t)
を考える。
C に沿った線積分 を∫C
f(x, y)dx+g(x, y)dy =
∫ b
a
f(φ(t), ψ(t))φ′(t)dt+
∫ b
a
g(φ(t), ψ(t))ψ′(t)dt
で定める
注)線積分は曲線と向きで決まり、パラメタの取り方によらない
例) C : x = t, y = t2 (0 ≦ t ≦ a) とする。 -5-∫C
(x + y)dx =
∫ a
0
(t + t2)dt =
[t2
2+t3
3
]a0
=a2
2+
a3
3∫C
(x + y)dy =
∫ a
0
(t + t2) · 2t dt =[2t2
3+t4
2
]a0
=2a3
3+
a4
2
3. 境界の向き -6-
平面の中の領域 がなめらかな曲線で囲まれているとする。境界は領域の内部が進行方向の左手になるようにとる
4. グリーンの定理 -7-
D:有界な閉領域、P (x, y), Q(x, y): C1-級函数 のとき∫∂D
P (x, y)dx+Q(x, y)dy =
∫∫D
(∂Q(x, y)
∂x− ∂P (x, y)
∂y
)dxdy
証明)P だけに依存する部分∫∂D
P (x, y)dx = −∫∫
D
∂P (x, y)
∂ydxdy
を示す。Q のほうも同様である。
D が x について単純な領域 -8-
D = {(x, y) | a ≦ x ≦ b, φ1(x) ≦ y ≦ φ2(x)}
になっているとすると、次のように分割できる:∫∂D
P (x, y)dx =
∫C1
+
∫C2
+
∫C3
+
∫C4
C1 は x = b, y = t ( φ1(b) ≦ t ≦ φ2(b)) とかけるので、 -9-dx
dt= 0 だから∫
C1
P (x, y)dx =
∫ φ2(b)
φ1(b)
P (b, t)dx
dtdt = 0
同様に、∫C3
P (x, y)dx = 0 となる。C2: x = t, y = φ2(t) (t : b→ a),
C4: x = t, y = φ1(t) (t : a→ b)
に注意すると
-10-
∫∂D
P (x, y)dx =
∫C2
P (x, y)dx +
∫C4
P (x, y)dx
=
∫ a
b
P (t, φ2(t))dt +
∫ b
a
P (t, φ1(t))dt
=
∫ a
b
P (x, φ2(x))dx +
∫ b
a
P (x, φ1(x))dx
= −∫ b
a
(P (x, φ2(x))− P (x, φ1(x))) dx
= −∫ b
a
dx
∫ φ2(x)
φ1(x)
∂P
∂y(x, y)dy
= −∫∫
D
∂P
∂y(x, y)dxdy
-11-
一般の領域に対しては、D を単純な領域のいくつかにわけて考える。分割された小領域の境界で D の内部にあるものは、隣接する 2つの小領域の境界として 2回現れてて、向きが逆なので打ち消し合う。よって、一般の領域でもグリーンの定理は成立する。
Qの場合は、y について単純な領域に分割すればよい。
例)C: x2 + y2 = a2 として、反時計回りに向き付けする。 -12-
D を C で囲まれた内部とすると∫C
ydx− xdy =
∫∫D
−2dxdy = −2πa2
例)Py = Qx が成り立てば∫∂C
P (x, y)dx +Q(x, y)dy =
∫∫D
(Qx(x, y)− Py(x, y)) dxdy = 0
よく間違える例) -13-
P,Qは Dの境界、内部ともに C1-級である。そうでない場合、グリーンの定理は成り立たないC を単位円に反時計回りに向き付けしたものとする
I =
∫C
−yx2 + y2
dx+x
x2 + y2dy
を求める。∂
∂y
(−y
x2 + y2
)=
∂
∂x
(x
x2 + y2
)=
−x2 + y2
(x2 + y2)2
なので、形式的にグリーンの定理を用いると I = 0.
しかし、被積分函数は原点で連続ではない。まじめに計算すると x = cos t, y = sin t とおいて
I =
∫ 2π
0
− sin t
cos2 t+ sin2 t(− sin t)dt+
∫ 2π
0
cos t
cos2 t+ sin2 t(cos t)dt
=
∫ 2π
0
dt = 2π
4. 重積分の変換公式の証明 -14-
I =
∫∫D
f (x, y)dxdy =
∫∫E
f (x(u, v), y(u, v))
∣∣∣∣∂(x, y)∂(u, v)
∣∣∣∣ dudv以下の仮定をおく。実用上、たいていの函数で成り立つ。仮定 Fx(x, y) = f (x, y) となる C1-級函数F (x, y)が存在する
f (x, y) = Fx(x, y) とすると、グリーンの定理∫∂D
Q(x, y)dy =
∫∫D
∂Q(x, y)
∂xdxdy
により ∫∫D
f (x, y)dxdy =
∫∫D
∂F (x, y)
∂xdxdy
=
∫∂D
F (x, y)dy
ここで、 変換 x = x(u, v), y = y(u, v) を考えると -15-
dy =∂y
∂udu +
∂y
∂vdv
を代入してI = ±
∫∂E
F (x(u, v), y(u, v))
{∂y
∂udu +
∂y
∂vdv
}= ±
∫∂E
F (x(u, v), y(u, v))yudu + F (x(u, v), y(u, v))yvdv
ここで、もう一度グリーンの定理を使って E の積分に戻すとI = ±
∫∫E
{∂
∂u(F (x, y)yv)−
∂
∂v(F (x, y)yu)
}dudv
= ±∫∫
E
Fx(x(u, v), y(u, v))(xuyv − xvyu)dudv
= ±∫∫
E
f (x(u, v), y(u, v))∂(x, y)
∂(u, v)dudv
-16-
符号 ± はヤコビアンが正なら ∂D と ∂E の向きが同じなので正、ヤコビアンが負なら ∂D と ∂E の向きが逆なので負。よって、ヤコビアンに絶対値を付ければ ± はいらない。よって証明された