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立命館大学情報理工学部 准教授 ビブリオバトル普及委員会 代表 谷口忠大

コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

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Page 1: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

立命館大学情報理工学部 准教授

ビブリオバトル普及委員会 代表

谷口忠大

Page 2: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

What’s Bibliobattle!?

動画はこちらからも御覧ください→ 公式サイト http://www.bibliobattle.jp/

Page 3: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

谷口忠大,川上浩司,片井修 「ビブリオバトル:書評により媒介される社会的相互作用場の設計」 ヒューマンインタフェース学会誌, Vol.12 (4), pp.93-104 .(2010)

Page 4: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

Page 5: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

Page 6: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

知識社会と付加価値 企業の生む価値

農業社会->工業社会->情報化社会

知識社会

多様な情報に接しながら僕たちは主体的に自分たちなりの「知識」「情報」を得ていく必要がある.

企業の中で如何に知識を共有し,生み出していくかが

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「情報共有」のメディアをつくる

情報化社会・知識社会の進展に伴い,コミュニティにおける「情報共有」のニーズは高まっている.

情報技術を援用した「情報共有」支援の仕組みが議論・構築されてきている.

サーバにデータを置いて共有する事を核とした,ナレッジマネジメントの仕組みだけでは,組織における「情報共有」は

上手く行かないことが指摘されてきた.

Page 8: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

「情報」概念を見つめ直す モノとしての情報共有 という認識の限界

「蓄積」可能なモノとしての情報=機械情報[04 西垣]

人間にとって意味あるコトとしての情報と機械情報の乖

コトとしての情報共有へ

人間にとって有効性のある情報共有の枠組みを構築することが重要である.

パースの記号論によると記号(情報)の意味は解釈者による創造的な産出過程となる[パース,椹木’04]

[参考文献] 西垣通 「基礎情報学」 / 谷口忠大 「コミュニケーションするロボットは創れるか」

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コミュニケーションするロボット ロボットがつけるテレビと人間が押すリモコンでつくテレビ

コミュニケーションってなんですか?

谷口忠大 「コミュニケーションする ロボットは創れるか」より

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バーロ・モデル (二項関係的なコミュニケーション図式)

記号過程(semiosis)とコミュニケーション

sign object

interpretant

Peirceの記号三項関係

慣習・規範・経験

状況

コード表の共有を前提(不変・一義) 情報はSignalそのもの 頭の中はのぞけないのでコード表の

調整は誰にも出来ない.

解釈者の自律性と適応性を仮定 情報は解釈者が生成するもの(可変・多義)

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context context

機械情報を貯め込むサーバアプリの設計から 情報共有の「場」の設計へ

設計対象の変化

情報をモノとして「蓄積」する情報共有から,活動全体を捉えた情報共有の系を設計する必要がある.

組織における知識の有効活用の為の方策は情報共有の「場」を如何に設計するかという環境設計の方向へと向かうことになる.

・・

相互信念/ 相互理解

source 探索

生成

コミュニティ

解釈

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「書評」と「ゲーム」による語りのメディア =>ビブリオバトル

コミュニケーションの場にゲーム性を持たせることで,ある種の「型」をもたらし,参加者の参画を得,そのルールが無い場合よりも意義のあるコミュニケーションをもたらすデザインであるともいえる.

本という知識の媒介物に対する,語りとしての書評をゲームとして行う事により,より効果的に人と人,人と知識が媒介される場づくりを行なう.

source 探索

context context

コミュニティ

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メディアづくりの社会化,大衆化 メディアの性質は,そこで生じる制約によって規定され,その制約を通じて人間の行動や言語活動が変化する. 2ちゃんねる

匿名性 => 暴言や炎上が日常茶飯事に テキストしか受け付けない => アスキーアートや顔文字の隆盛

mixi 知り合いしか紹介できない => 実世界のコンテクストを導入可能に

マイミク管理の権限を各参加者が持つ.

twitter 140文字しばり => つぶやきのみを用いる. TLが流れ去る,昔のデータをあまり残す保障がない. => 炎上が起こりにくい

リツイート => followerを通じたニュースのフィルタリング

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情報技術とはどうあるべきか? 人間の「情報」にまつわる活動をサポートする技術としての「情報」技術.

コンピュータ,インターネットを使えば情報技術なのか?

人間にとって有用な情報支援や知識創造支援に貢献して初めて「情報」技術であるという視点.

情報技術におけるローカルとグローバル

インターネットを介してグローバルなコラボレーションは可能になった.(ex. マスコラボレーション)

ローカルなコミュニケーションを如何にして改善するか.

グローバルとローカルをどう融合させるか.

Page 15: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

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ビブリオバトルのルール 1. 面白い本を見つけて読んで来て集まる!

2. 順番に一人5分で紹介(+2~3分のディスカッション)する!(カウントダウンしながら.)

3. 「どの本を一番読みたくなったか?」で投票を行い チャンプ本 を決める!

たったこれだけのルールで,遊べば読書がスポーツに変わる!本を読むのが楽しくなる!いろんな本に巡り会えて,どんどん世界が広がる!

(参考)ビブリオバトル公式ルール http://www.bibliobattle.jp/

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ビブリオバトルとは? 知的書評合戦 ビブリオバトル

ビブリオバトルは参加者がひとところに集まり書籍を紹介しあうというゲームにより,情報共有を行い,またそれを配信する枠組みである.ここで含む情報とは,(1) 書籍の内容についての情報のみならず(2) 参加者の興味や知識,人間性といったメタな情報を含む.

ターゲット: 書籍

谷口忠大,川上浩司,片井修 ビブリオバトル:書評により媒介される社会的相互作用場の設計 ヒューマンインタフェース学会誌, Vol.12 (4), pp.93-104 .(2010)

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ビブリオバトルの進め方(1) 参加者にはプレゼンター(発表参加者)とオブザー(聴講参加者)がいる.

プレゼンターは自らが適当であると考える書籍を一冊以上読んでくる.本人が好きな,または紹介したいと思う書籍を持参する.

本を読んできて発表する人 プレゼンター

ただ参加して聴くだけの人 オブザーバ

これを自らが選ぶことによって,その書籍自体が紹介者の個性や興味を表象するものとして作用するようになる.

Page 19: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

ビブリオバトルの進め方(2)

プレゼンター(4~6名程度が望ましい)が,順番を決めそれぞれ5 分で読んできた書籍についてプレゼンテーションを行う. この時,事前に配布レジュメやスライドは原則準備しない.

各プレゼンテーションはデジタルカメラで動画録画し,保存する.

その後に,2~3 分間程度でオブザーバを含め全員でざっくばらんに議論を行う.

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ビブリオバトルの進め方(3)

全員の発表が終わった後に無記名投票による多数決で「どの本が一番読んでみたくなったか?」という投票を行い,今週のチャンプ本を決定する.

会の終了後には動画を動画共有サイトにアップロードする. (従来の情報共有)(option)

検索結果「ビブリオバトル」 youtube 約400件のヒット

Google 約40,000件のヒット

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ビブリオバトルの設計指針 ビブリオバトルの設計指針(機能)

1. 書籍紹介機能

2. コミュニケーション能力開発支援機能

3. 良書検索機能

4. コンテンツ生成機能

5. コミュニティ生成機能

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1.書籍紹介機能

ビブリオバトルの基本的な機能であり,書籍を紹介する事で,局所的・広域的に書籍情報を共有する機能を持つ.

1. ビブリオバトルの局所的場における情報共有

2. インターネットを通じた動画配信による共有

1. 2.

Page 23: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2.コミュニケーション能力開発支援機能

相互評価により実時間的に評価される,時間を区切った即興的なプレゼンテーションの機会を与える事でコミュニケーション能力開発を支援する機能を持つ.

短時間プレゼンテーション

相互評価 reward feedback

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3.良書探索機能

世の中の膨大な書籍群からコミュニティにとっての良書を「探索」する機能も持つ.

ゲームとしてのチャンプ争いが,コミュニティで評価される良書を探してくる報酬として機能する.

参加者が興味を持ってくれる良い本を紹介する方向に行動のバイアスがかかる.

ビブリオバトルというインフォーマルコミュニティ自体が良書を探索する機能を持つと言える.

reward

feedback

大量の書籍群

探索

Page 25: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

4.コンテンツ生成機能

書評動画を配信するという系において 自然な書評動画の生成を支援する.

一カ所に集まり語りの場を提供する事で,逆に開放的なコミュニケーションの状況を生み出し,自然に書評というコンテンツを「生成」する事を可能にする.

書評動画共有

書評動画共有

① 従来

② ビブリオバトル

Page 26: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

5.コミュニティ生成機能 自らが興味のある書籍の開示

本人の趣味や興味を表象する記号として働き,メンバーの隠れた興味を顕在化させる.

主張開示の機会提供 自分の考えや意見を主張する機会を得ることで,参加者間の相互理解が深まる.

キャラクターの顕在化と共有 プレゼンテーションのスタイルが構築されることで,各参加者の個性(キャラクター)が顕在化しコミュニティで共有される事になり,組織内のコミュニケーションの円滑化に寄与する場合が多い.

Page 27: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Additional notes 「人を通じて本を知る,本を通じて人を知る」

not ディベート,自己アピール, but 暗黙的な自己紹介

顔を知った人を経由して本を知る,ローカルな信頼.

みんなで決める「チャンプ本」の意味 まじめに本を探してくる.

チャンプ本の栄誉という非金銭的インセンティブ

真摯に語る 評価者を参加者全てにすることで,「語り」が参加者全員に向けられる.

コミュニケーションの目的を権威に置かず,その「場」におく.

チャンプで無く,チャンプ本 リスペクトの気持ちをもつ.自己の存在否定のリスク回避.

テーマを決めるか コンテクストが無いと「探す」こと「語る」ことが難しい

コンテクスト共有のない新規コミュニティ・イベントではワンワードのテーマを設定することが効果的.

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実験: コンテンツ生成機能についての検証

2つの書評動画生成スキームを感性評価実験で比較

A) 一人で書評を行いそれを録画する事で配信する書評動画コンテンツ

B) ビブリオバトルにより生成される動画コンテンツ

エンターテインメント性のあるローカルなコミュニケーション

閲覧者

インフォーマル・コミュニティ

日常活動

(B) ビブリオバトルのアプローチ

IPネットワークを用いた情報共有

閲覧者

(A) 従来の動画共有のアプローチ

Page 29: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

実験条件

ビブリオバトルの開催

通常の条件で開催

参加者(プレゼンター4名 P1~P4, オブザーバ1名)

紹介された本 B1~B4

標本の取得

「一人プレゼンテーション条件」alone-in-a-room condition

別室にて一人でプレゼンテーションを行い,ビデオに録画を行う.

「ビブリオバトル条件」bibliobattle condition

通常のビブリオバトルの条件でプレゼンテーションを行い,ビデオに録画を行う.

Page 30: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

実験条件の違いの概観 一人プレゼンテーション条件

alone-in-a-room condition

ビブリオバトル条件 bibliobattle condition

Page 31: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

実験の流れ 当日の収録とアンケート評価

「ビブリオバトル条件」「一人プレゼン条件」にて動画収録を行った. 一人プレゼンは順序効果を考慮し,二名は会より前に,二名は会後に収録した.

アンケート評価を行ってもらった. Evaluation by proximal viewers

後日の被験者実験 経験が無くプレゼンターを知らない学生4名に集まって貰い,収録した動画を見て貰い,同様のアンケート評価を行ってもらった. Evaluation by distant viewers

順序効果の考慮 (2b → 1a → 3b→ 4a → 1b → 2a → 4b → 3a) a: alone-in-a-room, b: bibliobattle

P1

P1

Bibliobattle P1~P4

P2

P2

Evaluation by proximal viewers

P1~P4

一人プレゼン条件 で収録

Evaluation by distant viewers

P1~P4 a&b

ビブリオバトル当日

後日 異なるコミュニティ

時間

Page 32: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

アンケート評価 質問はSD 法と単純なプレゼンテーションの得点評価によって構成した.

SD 法 以下の7 項目に対して-3~3 の7 段階評価

1. 「抽象的-具体的」 2. 「わかりやすい-わかりにくい」 3. 「格調がある-格調がない」 4. 「つまらない-楽しい」 5. 「人工的な-自然な」 6. 「閉鎖的な感じ-開放的な感じ」 7. 「説明が丁寧だ-説明が粗い

プレゼンテーション評価 評価点は5 点満点とし,主観的な基準に基づいて記述してもらった.

Page 33: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

主成分分析 SD法によるアンケート評価の結果を各軸毎に平均化した後に主成分分析により分析した.

累積寄与率 第二主成分までで85.1%あり,第二主成分までの寄与が大きい.

ビブリオバトル条件が殆ど第一主成分正の領域に集中している.(PC1は0.5%有意で二条件で異なる.t検定)

第一主成分正=ビブリオバトル条件は,フランクで楽しいが,説明は粗い,しかし分かりやすいという印象を与えていた.

P C 1

PC

2

1pa

1pb

1da

1db

2pa

2pb

2da

2db

3pa

3pb

3da 3db

4pa4pb

4da

4db

-0 .4 -0 .2 0 .0 0 .2 0 .4-0

.4-0

.20

.00

.20

.4

-2 0 2 4

-20

24

具 体 的

わ か り に くい

格 調 が な い

楽 し い

自 然 な

開 放 的 な 感 じ

説 明 が 粗 い

a: alone-in-a-room, b: bibliobattle d: distant viewer, p: proximal viewer 数字: プレゼンターの番号

Page 34: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

主成分分析結果の検討

第二主成分正にB2,3が集まり,負の領域にB1,4が集まっている.故に第二主成分は書籍の室とプレゼンテーションの質を表わしていると考えられる. (1,4は共に相互投票の評価が高かった,1がチャンプ本)

負の方向が「わかりやすさ,具体性,楽しさ」を表わしている.

P C 1

PC

2

1pa

1pb

1da

1db

2pa

2pb

2da

2db

3pa

3pb

3da 3db

4pa4pb

4da

4db

-0 .4 -0 .2 0 .0 0 .2 0 .4

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

-2 0 2 4

-20

24

具 体 的

わ か り に くい

格 調 が な い

楽 し い

自 然 な

開 放 的 な 感 じ

説 明 が 粗 い

・ビブリオバトル条件のほうが自然で分かりやすい書評動画を生成する. ・生成された動画への印象は書籍とプレゼンターよりも生成時の場の条件が効く

Page 35: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

プレゼンテーションの評価 プレゼンテーション評価について,(1)プレゼンテーション生成条件(2)被験者と発表者の関係 により平均化し,調べた.

有意に影響を与えていたのは,プレゼンテーションの場に居たかどうかだった.(5%有意)

局所的なコミュニティの中でプレゼンテーションに関わるか,広域的な配信を受けて外部からの視聴者としてプレゼンを眺めるかという違いがコンテンツに対する満足度の評価に大きな差を生み出している.

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

proximalalone

proximalbibliobattle

distantalone

distantbibliobattle

Score of Presentation

*

* 5% significance level

一人プレゼンを終えたプレゼンターからは「めっちゃ緊張した」「すごい脇に汗をかいた」など,一人でカメラに向ってプレゼンする事が非常に困難だったとの意見を得た.

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実験結果の考察

ビブリオバトルにおいて紹介する書籍の選択に始まる書評の生成過程そのものが参加者の背景知識等を前提にしており,その局所性が遠隔視聴者(distant viewer) と同席者(proximal viewer) との間にギャップを生んでいる可能性がある.

視聴者を特定できない一人プレゼンテーション条件での発話は生成過程の負荷を増す.

コンテンツ生成機能においてビブリオバトルは 自然で分かり易く楽しい書評動画を低負荷で生成可能にする.

Page 37: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

Page 38: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

History 07-08年度

京都大学情報学研究科片井研究室で基本的なフレームワークが構築され,始まる.20回程度の開催.

Youtubeへのアップロード開始,ブログを通して発信.

08年度 フィールドワーク研究会@京都大学にて採用

09年度 サイエンスルー@大阪大学 ビブリオバトル活動開始.生協や図書館との連携

10年度 ビブリオバトル普及委員会発足

http://www.bibliobattle.jp/

一年間でいろいろ普及・・・!

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ビブリオバトルの始まり

「輪読会」という場の問題解決として いい本を見つけられないと始められない.

=>本を探してくるプロセス自体を仕組みの中に取り込む.

開催者にとっては既に読んだ本を輪読会しても面白くない.

=>誰にとっても新しい本をみんなが持ってくる.

発表者以外が読んでこない,寝る,つまらない.

=>全員が発表者になる.

レジュメやパワーポイントを準備しての発表は,だらだらして,また,予定調和でつまらない.

=>発表に時間制限を設けてライトニングトーク

=>レジュメやパワーポイントをむしろ禁止し,即興性を大切に.

Page 40: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

様々な開催 (2010年夏時点) ビブリオバトルは提案者らのグループが開催する段階から,全国で多極的,自律的に開催されるフェーズに入ってきている.=>社会化のフェーズ

開催場所やスタイルについても,研究室内だけではなく,イベントスペースやカフェでの開催と,可能性を探索してきた.

開催場所:大阪,京都,滋賀,名古屋,東京……

ビブリオバトル@淀屋橋odona with 大阪市

カフェでの開催

Page 41: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

日本初ビブリオバトル専門サークル

読書集団READ誕生@名古屋 ネットニュースから飛び火し,名古屋市立大学の横山さん(当時大学三回生)が日本初ビブリオバトル専門サークルを創立

Page 42: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程
Page 43: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程
Page 44: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2010/7 @大阪 紀伊国屋書店本町店 ジョイント開催 ビブリオバトルフェア

初の書店開催

読売新聞 夕刊一面

2011年からは紀伊国屋書店新宿南店で連続開催

Page 45: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2010/11 @東京 東京都主催「すてきな言葉と出会う祭典」内

ビブリオバトル首都決戦

ビブリオバトル普及委員会はアドバイザリで協力

Page 46: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

首都決戦の反響

10/11/12 NHK首都圏「ゆうどきネットワーク」 ビブリオバトル特集 8分程度

紀伊国屋書店 新宿南店 ビブリオバトルフェア

首都決戦の優勝者が 読売新聞の顔欄に

猪瀬直樹 著 「言葉の力」にて 未来型読書論の章の中で とりあげられる.

Page 47: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

学術活動の中での展開 研究室間の壁をビブリオバトル の力で乗り越えよう!

京大情報学研究科GCOE ビブリオバトルプロジェクト

学会に参加する研究者に 新たな交流のキッカケを

ビブリオバトル@ インタラクション2011

Page 48: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2011年 図書館へ 京都大学中央図書館での開催

奈良県図書情報館での開催

2011/3/14 産経ニュースに掲載

Page 49: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2011/6/7 産経新聞 朝刊・文化欄

Page 50: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

6時代の「ニュースゆう+」にて10分ほど特集

大阪大学Scienthrough, 立命館大学創発システム研究室. 奈良図書情報館での取り組みを中心に 紹介いただいた.

現役アナが0票で敗れる笑いのシーンも

2011/6/29 ニュースゆう+ 朝日放送

Page 51: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

2011/10/30

ビブリオバトル首都決戦2011 今年はビブリオバトル首都決戦が単独のイベントとしてベルサール秋葉原にて開催.

当日集客(座席400満席,延参加者数1600人)

ポスターは わたせせいぞう さん

Page 52: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

ビブリオバトル首都決戦2011 東京都,ビブリオバトル普及委員会,等主催

全国32箇所(大学,書店,図書館など)で予選会を開催. 予選開催団体を公募

北は北海道から南は鹿児島まで,計34名のファイナリストが秋葉原に集まる「お祭り」.

大学生,大学院生が対象

富山県立大学でも予選開催(by 本吉先生ら)

来年度以降も開催予定,ビブリオバトルの「甲子園」に!

予選会開催地MAP

Page 53: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

メディア掲載,反響など 産経,東京,読売新聞にて掲載

(11/10/31)

MX TOKYO 「東京からはじめよ

う」内にて決勝戦の様子を放送(11/11/5)

(11/12/04)MX TOKYO「TOKYO BOY」内で紹介,NHKラジオ「渋マガZ」内にて紹介

Page 54: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

地域的な拡大と事例の収集 日本の全都道府県への開催事例の拡大 草の根への浸透

老若男女問わずのビブリオバトル 年齢的,コミュニティ的な依存性の検証と可能性の探索

学校では読書感想文の代替手法に

言語・文化的差異への挑戦 異文化コミュニケーション,語学教育との融合(英語deビブリオバトル)

海外展開

可能性の探求 〇〇×ビブリオバトル !?

これからの展開 みんなが知識共有を遊べる世界を作るために.

まずは日本全国!

Page 55: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

Page 56: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

コミュニケーションの場づくり コミュニケーションの場づくり

情報機器の導入

フォーマル・・・社内情報システム,ナレッジマネジメント

インフォーマル・・・社内SNS, サイバー囲炉裏[松原], HuNeAS[松田]

ファシリテーション

ツール・・・KJ法,マインドマップ,SWOT分析,etc.etc.

オープンスペーステクノロジー,ソフトシステムズ方法論

• 導入コストが高い.

• 実際の効果は「どう使われるか」「どう使われるか」に強く依存する.

• 人的コストが高い.

• ツールはファシリテータに依存する・

• 効果はファシリテータの育成問題に転嫁される.

コミュニケーションのメカニズムデザイン

Page 57: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

コミュニケーションのメカニズムデザイン メカニズムデザイン

経済学の用語で制度設計を意味する.

具体的には株式市場や知的財産の市場,オークションなどのルールを設計すること.

自律的な主体が自らの利益最大化の為に行動すればその結果として,全体として望ましい結果が得られるようにする.

局所的な制約条件や評価関数を設計することで,個々の学習・適応活動の結果として,全体的な最適を創発的に得ようとするもの.

コミュニケーションのメカニズムデザイン

メカニズムデザインの考え方を広義に捉えてコミュニケーションの場に援用し,コミュニケーションの場作りを行うアプローチ

一例 ->

Page 58: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

コミュニケーションのメカニズムデザイン のアプローチ 情報の場の設計対象変更

ハードウェアや情報システムを設計対象としない.

参加者が従う系のルールを設計対象とし,創発的にコミュニケーションの成果を得る.

ルールの設計 インセンティブの設計

所有権,発言権の設定

制約の設計

ルールを形容する言葉の設計

Etc.etc…

事例2 発話権取引

Page 59: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

発話権取引 導入目的・効果

発話権取引なし 発話権取引あり

発話権取引

例)先生の話が長い, 学生が発言しにくい・できない,

いつも長引く,声の大きい人の意見が通る 等々...

権利の侵害・略奪が行われている!

場のメカニズムをデザインする

‣権力の排除 ‣自由な発話タイミング

Page 60: コミュニケーションのメカニズムデザイン ビブリオバトルによる人と書籍の記号過程

発話権取引のメカニズム 1. 全ての参加者に一定数の発話権を与える.

2. この発話権はセッション中いつでも他の参加者に贈与可能である.

3. 参加者は発話権を一回使用する毎に,使用した発話権に相当する時間制限付きの発話を行える.

4. 上記を繰り返す.

古賀 裕之,谷口 忠大 発話権取引:意思決定の場におけるコミュニケーション支援のためのメカニズムデザイン 2011年度人工知能学会全国大会(第25回)JSAI2011, 3A1-OS11a-7 .(2011)

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発話権取引 コースの定理

コースの定理

排出権取引

公害など,市場の

外部不経済の是正手段として用いられる。

当時者間の交渉に費用がかからないという前提で当事者間の権利の設定だけ行う.

自発的な交渉が行われる結果として、パレート効率的な資源配分が実現する.

所有権の設定の仕方は所得配分の変更のみで実現する資源配分には影響を与えない.

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実験 実験条件

実験条件

[’74 Sacks]Harvey Sacks,Emanuel A,Schegloff and Gail Jefferson

“A simplest systematics for the organization of turn-taking for conversation”

Language,50(4)(1974)696-735

順番交替の仕組みのタイプの分類[’74 Sacks]に基づく

フリーディスカッション

順番に話す

発話権取引

‣被験者:四人一組三条件2セットを二組(異なるコミュニティから選出)

‣ ディスカッションの場

‣条件X:制限時間8分間で自由にディスカッション

‣条件Y:一人30秒×4回の発話権,順番固定

‣条件Z:一人30秒×4回の発話権,発話権の使用は任意のタイミング

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年次の差と発話権の搾取

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図3.条件Zでの各カテゴリー割合 図2.条件Xでの各カテゴリー割合

実験結果:ディスコース分析 フリーディスカッション 発話権取引

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考察:ディスコース分析

被験者A:sh:: そやなおれ::も(0.5) 被験者A:ちゃ(0.4)あかっ(0.3)あかっ(0.7) 被験者A:んまあ個人的には持論なんやけど:(0.4) 被験者A:これも:: まっそ(0.4) 被験者A:組織で: 一番うまくいく方法:

被験者A:おれの中でね(1.0) 被験者A:うまくいく方法は(1.2)

条件X,発話に時間制限がない →一回の発話が長くなる傾向(特に年次上)

→(比較的時間を要する)経験を語るための時間を確保可能

「経験」の増加の理由

発話権導入により

‣自身の意思を反映させるために効率的な発話が増える傾向にある

「意思表示」,「理由」の増加の理由

条件Y,Z,発話に時間制限がある →自身の意思を効率的に反映させるため

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Contents 1. はじめに

2. ビブリオバトル

3. ビブリオバトル実践状況

4. コミュニケーションのメカニズムデザイン

5. まとめ

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まとめ

ビブリオバトル

書籍を媒介とし,ゲーム性を含むことで,インフォーマルな知識共有をすすめるビブリオバトルの仕組み,メディアについて紹介した.

情報共有には,下記のような事が実際には必要であるが、ビブリオバトルではこれらを向上させる仕組みが内包されている.

コミュニティにとって有益な話題自体を見つけて来る過程

仲間の解釈の仕方や話題の枠の共有

プレゼンテーション(発話)能力自体の向上

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まとめ コミュニケーションのメカニズムデザイン

経済学におけるメカニズムデザインの議論とは異なり,未だ十分なモデル化や記述が得られている訳ではない.

人間と情報の記号過程を豊かなものにする様々なコミュニケーションのメカニズムの設計・提案が必要

コミュニケーションメカニズムの分析を行う枠組みの確立が求められる.

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