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Copyright (C) 2012 Kazunori Ishii All Rights Reserved 2012/02/26 石井重成(イシイカズノリ) 石井重成(イシイカズノリ) 石井重成(イシイカズノリ) 石井重成(イシイカズノリ) 己で決めるということ ~なぜ政治は“遠い”のか?~ 1

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2012/02/26

石井重成(イシイカズノリ)石井重成(イシイカズノリ)石井重成(イシイカズノリ)石井重成(イシイカズノリ)

己で決めるということ

~なぜ政治は“遠い”のか?~

1

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Opening

2

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はじめに

3

まずみんなに聞いてみたい。

「日本は“民主主義の国”だと思いますか?」「日本は“民主主義の国”だと思いますか?」「日本は“民主主義の国”だと思いますか?」「日本は“民主主義の国”だと思いますか?」

「その理由を教えてください。」「その理由を教えてください。」「その理由を教えてください。」「その理由を教えてください。」

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Goal

4

本プレゼンの目的は、2つの問いを考える本プレゼンの目的は、2つの問いを考える本プレゼンの目的は、2つの問いを考える本プレゼンの目的は、2つの問いを考えるキッカケキッカケキッカケキッカケを提供することを提供することを提供することを提供すること

①①①①政治とは何か?政治とは何か?政治とは何か?政治とは何か?

②②②②政治を担うのは誰か?政治を担うのは誰か?政治を担うのは誰か?政治を担うのは誰か?

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Agenda

5

1 日本の政治文化の特徴

1.1 世論調査を見てみると・・・

1.2 日本人の政治的態度は「あなたまかせ」?

1.3 「政治的な主体性」ってなんだ?

1.4 日本の民主主義は「借り物」?

2 新しい世の中をつくるため

2.1 政治は科学ではない

2.2 国家はフィクション

2.3 政治と無関係に生きることはできない

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日本の政治文化の特徴

6

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国民に意思は政府に伝わらない?

7

約8割の国民が政策に民意が反映されていないと感じている (2010年)

国の政策への民意の反映程度国の政策への民意の反映程度国の政策への民意の反映程度国の政策への民意の反映程度 (内閣府HPより作成)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

70歳以上

60-69歳

50-59歳

40-49歳

30-39歳

20-29歳

平均

かなり反映されている

ある程度反映されている

わからない

あまり反映されていない

ほとんど反映されていない

1.2 17.3 2.8 58.1 20.5

参照:http://www8.cao.go.jp/survey/h22/h22-shakai/zh/z27.html

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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政府や政治家は国民の声を聞いてくれない?

8

4割以上の国民が、国や政治家はもっと国民の声を聞くべきだと感じている(2010年)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

70歳以上

60~69歳

50~59歳

40~49歳

30~39歳

20~29歳

平均政治家が国民の声をよく聞く

政府が世論をよく聞く

国民が国の政策に関心を持つ

国民が選挙の時に自覚して投票する

国民が参加できる場をひろげる

マスコミが国民の意見をよく伝える

その他

わからない

国の政策への民意の反映方法国の政策への民意の反映方法国の政策への民意の反映方法国の政策への民意の反映方法 (内閣府HPより作成)

27.5 14.1 20.2 15.3 15.3 5.1

参照:http://www8.cao.go.jp/survey/h22/h22-shakai/zh/z29.html

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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日本人の「お上依存」は世界トップクラス?

9

7割以上の日本人が社会に責任を持つのは個人ではなく国であると回答している

参照:『日経ビジネス(2008年5月12日号)』

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

国民が安心して暮らせるように責任を持つのは個人では国民が安心して暮らせるように責任を持つのは個人では国民が安心して暮らせるように責任を持つのは個人では国民が安心して暮らせるように責任を持つのは個人ではなく国と答えた人の割合なく国と答えた人の割合なく国と答えた人の割合なく国と答えた人の割合

71.4%71.4%71.4%71.4%

0 20 40 60 80

スウェーデン

イギリス

アメリカ

フランス

ドイツ

日本

ロシア

(「世界価値観調査(電通・2005)」より作成)

33.1%33.1%33.1%33.1%

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日本の高校生は社会に悲観的?

10

日本の高校生は自分の政治参加によって、国や社会を変えられるという感覚に乏しい

個人の力では政府の決定に影響を与えられないと思うか個人の力では政府の決定に影響を与えられないと思うか個人の力では政府の決定に影響を与えられないと思うか個人の力では政府の決定に影響を与えられないと思うか (ベネッセHPより作成)

40.1

14.6

19.1

13.4

40.6

28.3

24.7

41.8

11.9

26.6

34.1

33.6

5.5

26.3

21.5

10.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

日本

アメリカ

中国

韓国

全くそう思う

まあそう思う

あまりそう思わない

全くそう思わない

無回答

0.9

0.6

4.2

1.9

参照:http://benesse.jp/berd/aboutus/katsudou/research_column/pt_02/23.html

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

⇒次章では、このような日本人の政治的態度(=政治文化)の特徴を考えていく

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参照:『現代日本の政治文化』、中村菊男著

アーモンド・ヴァーバによる政治文化の3分類

11

政治文化には「偏狭型」、「臣民型」、「参加型」が存在する

アメリカの政治学者であるガブリエル・アーモンドとシドニー・ヴァーバは、5カ国の比較研究

により、政治文化を「政治的対象に対する心理的指向」「政治的対象に対する心理的指向」「政治的対象に対する心理的指向」「政治的対象に対する心理的指向」と定義した。

①政治システム

②インプット(政治機構に対する利益の表明や投票による影響力の行使など)

③アウトプット(政府の決定した政策内容やその施行方法など)

④政治システムの中の自分

分類分類分類分類

偏狭型

臣民型

参加型

①①①① ②②②② ③③③③ ④④④④ 該当該当該当該当する国する国する国する国

メキシコ

ドイツ、イタリア

アメリカ、イギリス

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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政治的有効性感覚とは?

12

政治学者である中村菊男は、日本の政治文化を臣民型に近いと主張した

参照:『現代日本の政治文化』、中村菊男著

自分の自分の自分の自分の一票一票一票一票で社会をで社会をで社会をで社会をどどどどれだれだれだれだけけけけ変えることができるかという政治意変えることができるかという政治意変えることができるかという政治意変えることができるかという政治意識識識識をををを

政治的政治的政治的政治的有効有効有効有効性感覚という性感覚という性感覚という性感覚という。 この政治的有効性感覚は2種類あり、市市市市民民民民

的的的的有効有効有効有効性感覚(性感覚(性感覚(性感覚(citizen competence))))と臣民的臣民的臣民的臣民的有効有効有効有効性感覚性感覚性感覚性感覚(subject

competence)に分けられる。

政治的有効性感覚 市民的有効性感覚(citizen competence)

臣民的有効性感覚(subject competence)

⇒政治体系の入力面に対する有効感であり、政治参加や影響力行

使といった能動的、積極的な有効感

⇒政治体系の出力面に対する有効感であり、被治者(すなわち臣民)として

の役割の自覚や、統治者への評価・期待といった受動的な有効感

⇒世論調査を見ると納得?

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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尭舜の治

13

「国は国民が何の憂いもなく幸せに暮らせるように責任を持つべき」という発想がある

「舜帝の切手」

中国の伝説に尭と舜という天子が登場する。

尭の治世によって国は栄え、人々は幸せに暮らしていた。

ある日、尭は自分の政治によって天下が本当に治まっているか、

民が暮らしに満足しているか不安になり、変装して町に出る。

老百姓が愉快に歌っているのを見て、尭は世の中の安寧を悟った。

日出

而作

日入

而息

鑿井

而飲

耕田

而食

帝力

何有

於我

「老百姓の歌」

日の出と共に働きに出て、

日の入と共に休みに帰る。

水を飲みたければ井戸を掘って飲み、

飯を食いたければ田畑を耕して食う。

帝の力がどうして私に関わりがあるというのだろうか。

参照:『指導者の条件』、松下幸之助著

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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日本人の政治的態度は「あなたまかせ」?

14

政治不信の構造を研究した村山皓は、日本人の政治意識を「あなたまかせ」と称した

「日本人の政治不信は「あなたまかせ」「あなたまかせ」「あなたまかせ」「あなたまかせ」の不信である。日本人の政治

への不満は、民主政治に原因と結果があるのなら、原因を無視し結

果の善し悪しで左右される。政治への国民の影響力が民主政治の原

因とすれば、その影響力がないことへの不満は比較的重要ではない。

むしろ結果結果結果結果としての国の政策やとしての国の政策やとしての国の政策やとしての国の政策や行為行為行為行為へのへのへのへの不満不満不満不満ののののほほほほうが重うが重うが重うが重要要要要であるであるであるである」

参照:『日本の民主政の文化的特徴』、村山皓著

村山皓

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

Q.1:日本人の政治意識は「あなたまかせ」だと思いますか?(Yes/No)

Q.2:その理由を教えてください

⇒次章では、そもそも「政治を担う」とはどういうことなのかを考えていく

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近代における政治的主体の誕生

15

マキャベリは『君主論』の中で、君主が主体として国家をつくることを論じた

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

ニッコロ・マキャベリ

マキャベリは君主が備えるべき徳(ヴィルトゥ)とはなにかを『君主論』

で論じた。強大な国家をつくって維持することがすべてに優先する。

すべてが“宗教の侍女”であった昨日までの世界とは逆に、すべてが

政治的な目的の侍女になる。キリスト教でさえ君主が国家を維持する

ための道具でしかない。

参照:『現代における政治と人間』、高畠通敏著

・・・ちなみに、マキャベリの発想の根底には2つの前提があった

①国家をつくる基本は暴力の集中である

②民衆は阿呆である

国家は国家は国家は国家は神神神神とともに人とともに人とともに人とともに人間間間間にににに君臨君臨君臨君臨する存在としてではなく、人する存在としてではなく、人する存在としてではなく、人する存在としてではなく、人間間間間がつくるべがつくるべがつくるべがつくるべ

きききき被造被造被造被造物として物として物として物として捉捉捉捉えられた。えられた。えられた。えられた。「人間が主体であり国家が客体である」と

いうこれまでの神中心の世界観が逆転した。

マキャベリの思想において、 「国家は自らの「国家は自らの「国家は自らの「国家は自らの手手手手でつくりあでつくりあでつくりあでつくりあげげげげるもの」るもの」るもの」るもの」と

いう近代的な意味における、政治的主体性が誕生した 。

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「市民」の誕生

16

社会契約論と革命によって、近代国家的な市民が誕生した

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

ルソーは、人々が単に恐怖から君主の権力に従うのではなく、進んで

従うべき権力や政府というものを考えるとき、そこに契約という原初的

な合意があったと仮定する以外にないと考えた。

絶対君主を革命によって打倒して人々たちは、古代ギリシャのポリス

におけるデモクラシーよりもはるかに規模の大きい、多数多数多数多数主体が主体が主体が主体が運営運営運営運営

する国家する国家する国家する国家という課題に向き合う必要があった。

人々はまず法や制度を整え、立憲政治を創設する。市民国家の憲法

は、人権の宣言と政府の組織の二つの部分からなり、その枠を超えて

権力は行動できないとしている。ジャン・ジャック・ルソー

参照:『現代における政治と人間』、高畠通敏著

近代国家の最大の問題は、人人人人々々々々のののの相互相互相互相互の対の対の対の対立立立立ををををどどどどのように調のように調のように調のように調整整整整

し、し、し、し、少数派少数派少数派少数派もももも納得納得納得納得してしてしてして従従従従う決定を生みう決定を生みう決定を生みう決定を生み出出出出すことができるかすことができるかすことができるかすことができるかというこ

とであり、それが議会政治の焦点となっていく。

「理性的」なコミュニケーションによって国益を討議する、議会民主

主義の担い手としての市市市市民民民民が誕生する。

フランスのシテ島

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市民の崩壊と大衆の登場

17

マルクスは「市民」というイデオロギーを暴露し、選挙権拡大によって「大衆」が登場する

参照:『現代における政治と人間』、高畠通敏著

カール・マルクス

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

マルクスは市市市市民国家はブル民国家はブル民国家はブル民国家はブルジジジジョアョアョアョア支配支配支配支配にすにすにすにすぎぎぎぎないないないないと批判する。「理性的」

な討議デモクラシーを、市民(=ブルジョワ)による支配の正当化と捉え、

市民国家という概念そのものがイデオロギーであると主張する。

当時の「市民」とは財産と教養を持つ人々であり、無産階級の絶対多数の

人々は含まれなかった。かれらは財産と教養を独占することによって支配

階級に居座ることができ、それを「理性的」と称していたに過ぎないと。

男性 女性

フランス 1848年 1944年

アメリカ 1870年 1920年

イギリス 1918年 1928年

日本 1925年 1945年

「「「「普普普普通通通通選挙実施選挙実施選挙実施選挙実施年」年」年」年」

「市民」という概念が揺らいでいく一方で、普通選挙(選

挙の際に年齢・性別以外の制限をつけない形式)の実

施を求める運動が各国で拡がっていった。

ここにおいて政治的主体としての大衆大衆大衆大衆が誕生する。マス

メディアが非常に大きな影響を持つようになり、大衆大衆大衆大衆はははは

概念概念概念概念的には政治的主体であるのにもかかわらず、的には政治的主体であるのにもかかわらず、的には政治的主体であるのにもかかわらず、的には政治的主体であるのにもかかわらず、実際実際実際実際

には「には「には「には「受動受動受動受動的な存在」になっていく的な存在」になっていく的な存在」になっていく的な存在」になっていく。

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政治的主体政治的主体政治的主体政治的主体

近代政治の発展は政治的主体数の拡張

18

政治的主体数が増えれば増えるほど、国家に対する影響力は小さくなる

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

主体主体主体主体数数数数

君主

市民

大衆

一人

小数

多数

国家に対する影響力国家に対する影響力国家に対する影響力国家に対する影響力

とても大きい

大きい

小さい

⇒現代人が「自分が何かしても国は変わらない」「自分が何かしても国は変わらない」「自分が何かしても国は変わらない」「自分が何かしても国は変わらない」と感じる大きな原因に政治的主体数の増加がある。

しかし、国や地域によってその政治的態度に違いが見られるのは何故だろうか?

次章では、日本人の政治的態度の構造や起因を考えていく。

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明治維新と敗戦

19

日本の近代化(民主化)は外圧によって急ピッチで成し遂げられた

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

列強諸国からの外圧によって、明治維新を成し遂げ

た日本は、富国強兵を推進し、急激な近代化を成し

遂げた。憲法を策定し帝国議会を設立した日本は市

民革命を経験したかのようにも見える。

しかし、「「「「和魂洋才和魂洋才和魂洋才和魂洋才」」」」という言葉が示すように、システ

ムを取り入れても、依然として“日本的”な思考・慣

習がそこにあることが分かる。明治維新が当時「御

一新」と呼ばれたことも示唆深い。

太平洋戦争に敗れた日本は、GHQの指導の下、様々な民主化政

策を受け入れる。新しい憲法には「国民主権」「平和主義」「基本的

人権」が謳われ、議院内閣制が明文化され、女性参政権も認めら

れた。

しかし、これらの成果は日本人自身が勝ち取ったものではない(と

言われる)。そこに戦後民主主義最大の特徴がある。

⇒日本は西欧のシステムを輸入することによって近代化や民主化を達成したが、

制度の土台となる文化や慣習には、きわめて“日本的”な要素が多く残っている。

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日本の根底にある「ムラ」カルチュア

20

「ムラ」カルチュアとは「全「全「全「全員員員員一一一一致致致致の意思決定」の意思決定」の意思決定」の意思決定」や「対「対「対「対立立立立自体が自体が自体が自体が悪悪悪悪」」」」などの習俗を指す

参照:『近代日本の精神構造』、神島二郎著

西欧的な政治制度

日本的な「ムラ」カルチュア

イメージ図

政治学者の神島二郎は「ムラの文化は近代日本の社会あるいは

集団内での根源的な政治原理として機能してきた。明治以明治以明治以明治以降降降降の日の日の日の日

本社会とは、本社会とは、本社会とは、本社会とは、旧来旧来旧来旧来の伝の伝の伝の伝統統統統的なムラ文化の上に、的なムラ文化の上に、的なムラ文化の上に、的なムラ文化の上に、欧米欧米欧米欧米からからからから輸輸輸輸入入入入ささささ

れたれたれたれたデデデデモクラシー(モクラシー(モクラシー(モクラシー(近代近代近代近代的な法体的な法体的な法体的な法体系系系系・・・・制制制制度な度な度な度などどどど)が重なった)が重なった)が重なった)が重なった二二二二重構重構重構重構

造造造造から成っている」と述べる。

全全全全員員員員一一一一致致致致の意思決定の意思決定の意思決定の意思決定 対対対対立立立立自体が自体が自体が自体が悪悪悪悪というというというという概念概念概念概念

内部にしこりを残さないために「多数決による

意思決定」を退ける

⇒一見、みんなの意見を大切にする方法に見

えるが、少数者や反対者が意見を述べること

自体が不可能となる

e.f.) 稟議制における「逆さ印」の話

対立自体を悪とし、「本来なら人々は分

かり合える」という同質性の前提に立つ

⇒100人いれば100通りの考え方がある

という「お互いに異なる立場からの主張」

が困難になる

⇒「弁論の勝利(お互いの立場から議論を交わし、議論によって決着をつける)」という

カルチュアが成立しにくい

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

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高度経済成長とPublic(公)

21

戦後日本は経済成長を第一に掲げて、PublicとPrivateの領域を区別してきた

世論調査

あなたまかせ

政治的主体

借り物民主主義

英語圏でpublicとは「みんなのもの」であるのに対して、日本

語で公とは「お上」や「官」を指すことが多い。

公(おおやけ)という字はもともと「大家(天皇家)」からきてい

る。publicという語に「公」の字があてられたこと自体が日本

人の政治意識を表している。

戦後日本では、戦前の国家主義の反動で「お上」である「公」

よりも「私」のことがらが重要であるという風潮がつくられ、

「「「「公公公公」は政治家と」は政治家と」は政治家と」は政治家と官僚官僚官僚官僚に任せておに任せておに任せておに任せておけばけばけばけばよく、「よく、「よく、「よく、「普普普普通の人」は通の人」は通の人」は通の人」は基基基基

本的に「本的に「本的に「本的に「私私私私」の世界に生きていれ」の世界に生きていれ」の世界に生きていれ」の世界に生きていればばばばよいことになったよいことになったよいことになったよいことになった。

経済成長を至高命題とする日本の政治は、戦争の総括や天皇制の

あり方を国民を巻き込んで議論してこなかった。

物質的な豊かさを求めるには「頑頑頑頑張張張張ってってってって働けば働けば働けば働けばよいよいよいよい」ということにな

り、自分たちの政治参加によって社会をよくしようという気運が高ま

ることは少なかった。

自民党の一党独裁を存続させた大きな原動力がここにある。

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新しい世の中をつくるために

22

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政治は科学ではない

23

政治的決定はあらゆる関係者に対してトレードオフの関係にあり、「「「「正正正正解解解解」はない」はない」はない」はない

政治は「科学」ではない政治は「科学」ではない政治は「科学」ではない政治は「科学」ではない。政府がなんらかの政策決定を行うとき、そこに

は倫理的な判断が必要とされる。どれだけ「よい」目標を掲げても、その

「よい」目標同士が衝突してしまうこともあるし、利用できる資源が限られ

ていることもある。

たとえば経済的平等を実現しようとすれば、経済的な刺激が損なわれて

しまう可能性がある。高齢者の税の負担を軽減しようとすれば、若年層

の負担を重くすることになりうる。それそれそれそれぞぞぞぞれの目れの目れの目れの目標標標標がトレードがトレードがトレードがトレードオオオオフの関係フの関係フの関係フの関係

にあるにあるにあるにある場場場場合、政府の政策合、政府の政策合、政府の政策合、政府の政策判判判判断断断断を「科学的」にを「科学的」にを「科学的」にを「科学的」に下下下下すことはできないすことはできないすことはできないすことはできない。 ロバート・ダール

参照:『デモクラシーとは何か』、ロバート・ダール著

定性的・感情的な判断が必要となる以上、政治的政治的政治的政治的

決定に「決定に「決定に「決定に「正正正正解解解解((((≒≒≒≒中中中中立立立立)」はない)」はない)」はない)」はない。

人々の生き様や政治的決定の結集である歴史もま

た「正解」を持たない。政治には「政治には「政治には「政治には「終終終終わり」もないわり」もないわり」もないわり」もない。

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国家はフィクション

24

国家や政府とは人間がつくりだした創造創造創造創造物物物物にすぎない

国家や政府というのは最初からどこかにあるものではなく、人

が作ったものに過ぎない。よって、人間の作為的行為として捉

えるべきである。

そして人為的行為である以上、誰がやっても「「「「間違間違間違間違える」える」える」える」とい

うことを前提に政治にかかわる姿勢が必要である。

政治家とは特政治家とは特政治家とは特政治家とは特別別別別ではない、「ではない、「ではない、「ではない、「普普普普通の人通の人通の人通の人間間間間」である。」である。」である。」である。

満員電車に揺られて、長時間労働に疲弊する人がいる一

方で、職がない人たちがたくさんいる。

「こんな世の中に誰がした?」という不満を言う人は多い。

しかし、「こんな世の中にしているのは「こんな世の中にしているのは「こんな世の中にしているのは「こんな世の中にしているのは私私私私たたたたちちちち自自自自身身身身」」」」と答え

ざるを得ないし、その意識こそがデモクラシーを本物にする。

嫌嫌嫌嫌ならならならなら嫌嫌嫌嫌とととと言言言言ええええばばばばいいし、変えたいのなら変えれいいし、変えたいのなら変えれいいし、変えたいのなら変えれいいし、変えたいのなら変えればばばばいい。いい。いい。いい。

それは自分たそれは自分たそれは自分たそれは自分たちちちちでつくったものなのだから。でつくったものなのだから。でつくったものなのだから。でつくったものなのだから。

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政治と無関係に生きることはできない

25

政治とはよりよりよりより多多多多く人く人く人く人々々々々がががが納得納得納得納得できる意思決定できる意思決定できる意思決定できる意思決定をする行為である

人は、自分に関る意思決定がされる自分に関る意思決定がされる自分に関る意思決定がされる自分に関る意思決定がされる時時時時に、自分がそのプに、自分がそのプに、自分がそのプに、自分がそのプロロロロセスにセスにセスにセスにコミコミコミコミットしているかットしているかットしているかットしているかどどどどうかでうかでうかでうかで納納納納

得得得得感が変わってくる。感が変わってくる。感が変わってくる。感が変わってくる。さらに、自分に不利な意思決定であればあるほど、その度合いは高まる。

日本の政治にとって、「「「「納得納得納得納得性の問性の問性の問性の問題題題題」」」」はこれからどんどん重要になってくる。人口減少・少子

高齢化、債務超過や経済規模縮小といった大きな課題に向き合わなければならないからであ

る。政府の政府の政府の政府の役役役役割が「割が「割が「割が「富富富富の分の分の分の分配配配配」から「」から「」から「」から「負負負負担の分担の分担の分担の分配配配配」にシフトしている」にシフトしている」にシフトしている」にシフトしていることを理解する必要がある。

ソーシャルに繋がり、会社が全てという価値観を棄て、経

済大国の看板をどうでもよいと思えるから世代だからこそ

できることがある。

「政治」という「政治」という「政治」という「政治」という言言言言葉葉葉葉をををを小小小小さくさくさくさく捉捉捉捉えないでえないでえないでえないで欲欲欲欲しい。しい。しい。しい。霞ヶ霞ヶ霞ヶ霞ヶ関や関や関や関や永永永永

田町田町田町田町でででで起起起起きていることだきていることだきていることだきていることだけけけけが政治ではない。が政治ではない。が政治ではない。が政治ではない。

自分の生き方を自分で決める。これこそが政治の自分の生き方を自分で決める。これこそが政治の自分の生き方を自分で決める。これこそが政治の自分の生き方を自分で決める。これこそが政治のゴゴゴゴールールールール

であり、であり、であり、であり、デデデデモクラシーのモクラシーのモクラシーのモクラシーの根根根根本本本本原原原原理に理に理に理に違違違違いない。いない。いない。いない。

しかし、ネガティブになることはない。

今今今今こそ「新しい世」をみんなでつくることができるこそ「新しい世」をみんなでつくることができるこそ「新しい世」をみんなでつくることができるこそ「新しい世」をみんなでつくることができる時代時代時代時代だと思うから。

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「刺さる」文献

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今日の講義で政治文化論に興味を持った方にオススメしたい本たち

「「現実」主義の陥穽」、丸山真男著

⇒何気なく使っている「現実主義」という言葉に潜む罠とは?

『「空気」の研究』、山本七平著

⇒太平洋戦争開戦はその場の空気によって決まった?

『人間を幸福にしない日本というシステム』、カレルヴァン・ヴォルフレン著

⇒「仕方がない」という発想が自分たちを不幸にする?

『現代における政治と人間』、高畠通敏著

⇒政治とは何か?そんな根源的な問いを考えるのにピッタリ