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病気に強い作物を作るために

病気に強い作物をつくるために

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Page 1: 病気に強い作物をつくるために

病気に強い作物を作るために

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目次1.病気にかかりにくくするために

2.作物の健康は土壌環境から3.肥料の効率的な効かせ方

4.微生物の活動

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病気にかかりにくくするために

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作物が病気にかかりにくくするためには〇病気の原因となるカビや細菌が作物の周りに少なければ良い〇作物が病原菌に負けない様に健康になればいい

人の健康管理でも同じです。

理想的な栽培環境を作れば、農薬の使用量は減る

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作物が病気にかかりにくくするためには

しかし、理想的な環境なんて作れたら苦労はしない

小さなことをコツコツやって、理想的な環境に近づけていくしかない。

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作物が病気にかかりにくくするためには

〇理想的な環境にするために

・病原性のカビや細菌のことを知って、病原菌 にとって苦手な環境にする

・作物にとって少ないストレスで多くの肥料 成分を吸収できる環境にする

作物が強くなって、病原菌を弱くすることで、少しずつ病気の要因を減らしていきましょう

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作物の健康は土壌環境から

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土壌の発達1

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土壌の発達2-1

土のはじめは川底の様な砂地(鉱物)から始まり、様々な植物が根付くことによって土壌へと変化する。

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土壌の発達2-2

石灰石:苦土石灰の中に入っている炭酸石灰のこと(鞍馬川上流で撮影)

写真:http://ja.wikipedia.org/wiki/炭酸カルシウムより引用

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土壌の発達2-3

黒雲母:バーミキューライトの原料で、土壌中でマグネシウム   とカリウムの供給源となる

写真:http://ja.wikipedia.org/wiki/黒雲母より引用

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土壌の発達3

植物の死骸が腐植に変わって、砂地(鉱物)と混ざることで、より大きな植物が生育できる土壌へと変化する。

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土壌の発達4

砂(鉱物)と腐植がちょうどいいバランスで混ざると栽培にとって良い土だと言われる。

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土壌の発達5

〇鉱物の役割植物の根から酸が分泌されているのですが、鉱物はその酸に触れることで徐々に小さくなりながら、ミネラルを放出する。

他に保肥力(CEC)を高めます。※粘土(モンモリロナイトも含む)は鉱物として扱われます※粘土は砂よりも小さな鉱物

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土壌の発達6

〇鉱物の欠点土壌で鉱物が多いと、土が締まって根が伸長しにくくなる。

根が伸長しにくいことで、水や養分の吸収が弱まり、全体的に株が弱る。

強い肥料を与えると壊れる。壊れるとCEC、排水性と保水性が下がる。

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土壌の発達7

〇腐植の役割根が柔らかくなり、伸長しやすくなり、肥料の効率が上がる。他に排水性や保水性が高まり作業効率も高まる。

米ぬかや糖蜜と併用することで、植物に有益な微生物の増殖のための住処となる。※バーク堆肥が腐植に当たる

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土壌の発達8

〇腐植の欠点しっかりと発酵していない状態で土と混ぜると、未熟な有機物内で植物に害を与える微生物が繁殖する。(窒素飢餓)

未熟な腐植を入れた方葉色が落ちた。

何も入れてない

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土壌の発達9

〇腐植の欠点腐植を入れすぎると、微量要素の欠乏が発生することがある。※腐植入れすぎという状況になることはなかなかない※炭素循環型農法を行う時は注意です

微生物の活動によって小さくなる。活発な土壌であればある程、小さくなるスピードが速くなる

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土壌の発達補足

栽培にとって良い土になると、土に空気が入りやすくなる他に、微生物の活動により地温が上がり、酸素+地温で根の成長が促進され、大きな株になれる可能性を秘める。

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土壌の発達補足

植物の根の養分吸収の規則として、窒素分は根元付近(左)で、ミネラルは根の先端(右)で効率的に吸収される。

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土壌の発達補足

根量が増える≒根の先端の数が増える事なので、根量が増えることで、窒素分に対するミネラルの吸収量が増え、吸水(カリ由来)、光合成(苦土由来)、丈夫さ(石灰由来)や病気に対する抵抗性(鉄由来)等が増す。

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肥料の効率的な効かせ方

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カリウム(K)

〇浸透圧の調整各所、特に根に多く蓄積し、根からの吸水に関わる

根の浸透圧を高めることで、土から根への水の流れを発生させて吸水する

※他に細胞内の酵素の働きに関与 するが省略

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カリウム(K)

〇浸透圧(補足)

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カリウム(K)

根の中が土よりも濃度が高ければ、土から水を吸水できる

根から水が吸えなければ、養分も吸えなくなるので、土壌のイオン濃度(EC値)

も吸水時に重要になる

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カリウム(K)

〇カリウム欠乏

水を吸うことに関わる要素のため、カリウムが欠乏すると葉が萎れて、葉色も薄くなる。特に下の葉から症状が現れ始める。※葉色が薄く→黄色っぽくなる

吸水力の低下と養分吸収が下がる

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カルシウム(Ca)

〇細胞壁の強化

株の硬さを得るためにカルシウムは使われる。植物繊維のセルロースの間にカルシウムが入り込んで、繊維が硬くなり、茎や葉も頑丈になる

エックボックス説

セルロース

セルロース

他にカルシウムが十分にあると老化が遅くなる

茎が硬くなり、株全体で安定する

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カルシウム(Ca)

〇カルシウム欠乏

新しく出てくる葉(上の方の葉)が不調になり、ひどい時は枯死する

新しく出てくる葉に問題ありで、古い葉(下の方の葉)には深刻な症状はなし

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マグネシウム(Mg)

〇葉緑素の中心にある要素

光合成を行う葉緑素はマグネシウムを中心にすることで働く様になるマグネシウムが入ることで葉が緑色になる

左のヘムという構造の中心がマグネシウム以外の分子が入ると別の働きになる

http://ja.wikipedia.org/wiki/クロロフィル

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マグネシウム(Mg)

〇マグネシウム欠乏

下の葉が黄化する。葉の外側から黄化し、葉脈は最後

マグネシウム欠乏が軽微の場合は上の葉は正常に展開する

下の葉が黄化する。葉の外側から黄化し、葉脈は最後

光合成に支障が出る

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植物の根から吸水

光合成をしっかりと行う為、葉が根から水を吸い上げる圧力を高める

根の浸透圧を高めることで土からの吸水力が高まる

肥料成分は根から吸い上げるため、吸水力を高める要素はしっかりと施用する

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マグネシウムの吸収時の注意点

財団法人職業訓練教材研究会 植物学概論 72ページ

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マグネシウムの吸収時の注意点土壌中にカルシウムが多いとマグネシウムとカリウムの吸収力が下がる

マグネシウムとカリウムを施肥しても、肥効が期待通りにならない現象がある

カルシウム系の肥料の過剰施用で作物は不健康になる※カルシウム過多で作物の吸水力が落ち、カルシウムも 吸えなくなるという現象も発生する

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マグネシウムの吸収時の注意点カルシウムはいつ施用する?

・栽培を開始する前にpH調整の為の石灰

カルシウムの用途は多岐にわたるためついつい過剰施用になってしまう

・追肥や葉面散布で水溶性のカルシウム等

・酸素供給剤にも入っていたりする

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マグネシウムの吸収時の注意点実は鶏糞の中にもカルシウムが大量に含まれている

http://www.kyodo-shiryo.co.jp/product/product_01.html

鶏は卵の殻を硬くするために、給餌の中に大量にカルシウムを入れ、ほとんど消化せずに鶏糞の成分となる

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マグネシウムの吸収時の注意点

炭酸カルシウム

熟成鶏糞

飼料由来の炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの他、卵の殻(これも炭カル)も鶏糞に含まれる

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マグネシウムの吸収時の注意点pH調整の為に石灰を使い、養分補給で鶏糞は作物にとって最悪の組み合わせ

病気を減らすためにpH調整で石灰を使うなら、鶏糞は使わない鶏糞を使いたければ、石灰でpH調整は行わない

※鶏糞の中にある炭酸カルシウムは苦土石灰の成分で 若干ではあるが鶏糞にもpHを調整できる

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マグネシウムの吸収時の注意点pHは石灰でなくても調整することができる

・水マグ く溶性の苦土(マグネシウム)

 苦土石灰の中にある炭酸石灰と 同じ働きをしつつpH調整後に残 るのがカルシウムではなく、 マグネシウム

・炭酸カリ 水溶性のカリウム 水に溶けた瞬間にpHを調整する

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マグネシウムの吸収時の注意点カルシウム過多になったら、カリウムやマグネシウムを追肥で補充すれば良いという発想は危険。

カルシウムとマグネシウムが同時に過多になると、微量要素成分が吸収できなくなる。(詳細は割愛)

土壌中のカルシウム量を減らすという意識が大事

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マグネシウムの吸収時の注意点

土壌中のカルシウム量を減らすという意識が大事

カルシウムを除去する方法もあるが、その方法は今回は割愛する

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微生物の活動

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菌:カビやキノコ

写真とイラスト:http://ja.wikipedia.org/wiki/コウジカビより引用

菌はカビやキノコといった多細胞生物が大半を占める

作物の病気はカビ由来が多い作物にとって有益な物質や毒素を出せるものがいる

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菌:カビやキノコ

キノコはこう見えて、カビの仲間(担子菌や子嚢菌)

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細菌:乳酸菌、大腸菌や軟腐病菌

By Credit: Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH [Public domain], via Wikimedia Commons

細菌の大半は単細胞生物作物にとって有益な物質や毒素を出せるものがいる

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ウィルス:ネギ萎縮ウィルス等

By Los Alamos National Laboratory [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons

ウィルスは生物?自己増殖することができないので非生物として扱われることもある

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細菌とウィルスの違い

細菌は細胞分裂で増えることができる

By Credit: Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH [Public domain], via Wikimedia Commons

細菌:

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細菌とウィルスの違い

※ウィルスは細菌だけでなく、人や植物の細胞にも感染する

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細菌とウィルスの違い

写真:http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/d/d4/Virus_growth_curve.pngを引用

細菌は2倍ずつ増えるが、ウィルスは突然爆発的に増加する

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微生物が有機物を分解するまで

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微生物が有機物を分解するまで

小さい微生物程、分解できる物質が少ない。

周りに分解できる物質が少なくなると、一部の優秀な個体のみ休眠を行い、他は死んで様々な微生物が利用できる有機物となる

土壌の場合は団粒構造の成分となる

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コロニー

住環境や餌の条件が整うことで、特定の菌が爆発的に増えることコロニーができたら他の菌は入れない

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コロニー例

稲わらと良質な大豆たんぱくがあることで納豆菌が優勢種になる※納豆菌は細菌

http://www.kyotogakuen.ac.jp/~microbio/news/2012/12/000187.html

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日和見菌(細菌)

日和見菌群有益菌群

有害菌群

(作物にとって)有益でも有害でもない大多数の菌群有益、有害のどちらかの菌群が活発になると、それを加担する様に動き出す菌群のことを指す

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根こぶ病菌(カビ?)で考えてみる先に無害、もしくは有益な菌がたくさんいるとわかっている堆肥が根の周りにあれば、根こぶ病で深刻な事態になることは避けられる

そんな良い堆肥なんてあるのか?そもそも有益な菌はどこにいるのか?

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有益な微生物一例枯草菌の仲間で植物の根の発根に良い影響を与える細菌がいる枯草菌の仲間で窒素固定を行う細菌がいる

根こぶ病菌を抑えつつ、上記の細菌の協力を得たい

読んで字のごとく枯れた草で発見された細菌で、植物性の有機物でできた熟成堆肥を入れると病気を抑えられる

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有益な微生物一例落ち葉や夏草の堆肥が理想だが、量が確保できない

無害な菌による発酵が終了している資材として廃菌床がある

安価なものでバークもある

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まとめ・畑に腐植を入れて、より大きく育てる環境を目指す

・カルシウムの過剰施肥を避けることで、全ての肥料要素の 吸収効率を高め、作物を健康的にする

・特定の菌だけが増殖できる環境を避ける

病気の発症率を下げることで、農薬の散布量は減らせる