不確かさ評価について - 計量標準総合センター...

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不確かさ評価について

(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門

物性統計科 応用統計研究室

田中秀幸

不確かさとは何か?不確かさとは何か?

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

制作:(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門物性統計科 応用統計研究室

田中秀幸

なぜ今 不確かさ評価なのか?なぜ今、不確かさ評価なのか?

測定結果 測定値は通じる測定結果

ヤード、ポンド、尺、貫など

測定値は通じる、

では値はどのくらい信用できるのか?など 信用できるのか?

SI単位SI単位導入

測定結果に一貫性

世界中のどこでも通じる結果の質についての指標

「不確かさ世界中のど でも通じる

「不確かさ」

結果の質の表現方法統一による利点結果の質の表現方法統一による利点

・製品の検査測定結果の・国際比較比較の容易さ

・校正証明書測定結果の・トレーサビリティ制度・ワンストップテスティング

測定結果の

信頼性の証明

測定の信頼性の確保測定の信頼性の確保

製品の性能を保証するためには製品の性能を保証するためには

検査の検査の測定の信頼性確保測定の信頼性確保が必要が必要検査の検査の測定の信頼性確保測定の信頼性確保が必要が必要

測定の信頼性確保のためには

計測における精度管理が重要計測における精度管理が重要

計測における精度管理の指標の一として用いられるのが不確かさつとして用いられるのが不確かさ.

測定の信頼性の確保測定の信頼性の確保

製造装置測定装置

フィードバック制御

製造装置

測定製品を製作

測定

測定にばらつきが存在すると,製品にもばらつきが表れる製品にもばらつきが表れる.

トレーサビリティトレーサビリティ

質量では日本国キログラム原器

質量では

比較(校正)比較(校正)

どれくらいうまく比較社内標準等の分銅

どれくらいうまく比較できているのか?標準供給

比較(校正)

普段測定で用いているはかり

トレーサビリティトレーサビリティ

トレーサビリティとはトレ サビリティとは

不確かさがすべて表記された、切れ目のない比較の連鎖を通じ 通常は国家計量標準又は国際計量標準 あるを通じて、通常は国家計量標準又は国際計量標準である決められた標準に関連づけられ得る測定結果又は標準の値の性質値の性質

トレーサビリティを確保するためには不確かさが必要!

不確かさの歴史不確かさの歴史国際度量衡委員会 国際的な計量に関する8機関

CIPM計測の信頼性の

承認(1981年)

OIML

IUPAP国際法定計量機関

国際純粋応用物理連合

計測の信頼性の共通的尺度が必要(1977年)

OIML

BIPM

国際法定計量機関再確認(1986年)

BIPM際度量衡

勧告INC-1作成( 980年)

ISO

BIPM

TAG4国際度量衡局 (1980年)

ISO

IEC

TAG4国際電気標準会議

GUM 1993 1995

IFCC 国際臨床化学連合

標準会議

VIM1993, 1995

1993

IUPAC 国際純粋応用化学連合ILAC国際試験所認定協力機構

GUMGUM

Guide to the Expression of pUncertainty in Measurement

計測における不確かさの表現のガイド日本規格協会日本規格協会

GUMのメンテナンスGUMのメンテナンス• GUMはしばらく改訂しないことが決定.GU はしばらく改訂しない とが決定

• ただし,GUMを補足するための文書を作成.

化• GUMのISO Guide化

• ISO Guide98シリーズISO Guide98シリ ズ

• 98-1 イントロダクション

• 98-2 GUMの統計的根拠について

• 98-3 GUM本体+補足文書3つ98 3 GUM本体+補足文書3つ

• 98-4 適合性評価について

• 98-5 最小二乗法について

VIMVIMInternational Vocabulary of Basic and General Terms in Metrologygy

“JIS Z 8103 2000” 計測用語 はVIMに“JIS Z 8103-2000” 計測用語 はVIMに

矛盾しない形で整合

“計測における不確かさの表現のガイド”内の

付録Ⅱに和訳が収録付録Ⅱに和訳が収録

VIMのメンテナンスVIMのメンテナンス

• VIM・・・現在用いられているVIM第2版の改訂作業が終了.2007年末に第3版が発行.

主な変更点誤差評価を元にしたEA(エラー・アプローチ)から不確かさ評価を元にした ( サ ト プ ) 転換不確かさ評価を元にしたUA(アンサートンティ・アプローチ)への転換

日本の対応・・・VIM第3版をJIS化するための作業を開始.作業を開始

不確かさとは不確かさとは

不確かさ・・・合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメ タ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ.これは測定結果に付記される.

簡単に言うと簡単に言うと

確 さ ば きを特徴づ パ タ不確かさ・・・ばらつきを特徴づけるパラメータ

不確かさは,測定のばらつきを表す!

ばらつきとはばらつきとは

同じ測定を繰り返した場合であっても 必同じ測定を繰り返した場合であっても、必ずしも同じ測定結果が得られ続けるとは限らな限らない

砂時計の時間

9.86min 9 99min

砂時計の時間

9 94min 9.98min

9.99min

10 04min9.94min 9.98min

10 02min 9.78min

10.04min

10.02min 9.78min

ばらつきとはばらつきとは

体温計で体温を測ったら,

と表示された.

これは,体温が37.15℃から37.25℃の間にあることを示しているの間にあることを示している.

よって,37.15℃から37.25℃の間で体温よって,37.15℃から37.25℃の間で体温がばらついている,と考える.

不確かさの求め方不確かさの求め方

ば• 測定のばらつきの要因を特定する

• 特定した個々のばらつきの要因によってどの特定した個々のばらつきの要因によってどのくらい測定値がばらつくのかを求める.

求められた個々 ばら きを合成し 全体的• 求められた個々のばらつきを合成して全体的なばらつきを求める.

この測定値の全体的なばらつきが不確かさとなる.

不確かさ評価の概要不確かさ評価の概要

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

制作:(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門物性統計科 応用統計研究室

田中秀幸

誤差と不確かさの違い(1)誤差と不確かさの違い(1)誤差・・・真の値は分かるんだ,という前提誤差 真の値は分かるんだ,という前提

不確かさ・・・私たちが知ることができる知識には限界がある,という前提

母平均母平均

試料平均真の値

試料平均真の値

誤差と不確かさの違い(2)誤差と不確かさの違い(2)

私たちが知ることができる値は真の値ではなく,真の値に最も近いであろうと思われる値の推定値である.最も近 あ う 思われる値 推定値 ある

さらにその推定した値の周りに測定値はばらついている.

ばらつきの要因は? ばらつきの大きさは?

個々のばらつきの大きさを調べ,そのばらつきが全部合わさった時のばらつきを求める全部合わさった時のばらつきを求める.

不確かさ評価の流れ不確かさ評価の流れ

実験 成績書

不確かさ要因

実験 成績書

個々のばらつき(1)・・・・・・・・・・・・・・・・(2)・・・・・・・・・・・・・・・・

個々のばらつきを求める

(3)・・・・・・・・・・・・・・・・(4)・・・・・・・・・・・・・・・・(5)・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・

個々のばらつきを合成し全体的なばらつきを求める.

etc.

本セミナーの目標本セミナーの目標バジェットシート

記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

拡張不確か 正規分布U 拡張不確かさ

正規分布(k=2)

本セミナーの目標・・・このバジェットシートの意味を理解し,値を代入し,バジェットシート上で計算を行って,最終的な不確かさを算出する!!

不確かさ要因不確かさ要因測定器 測定 測定対象 測定環境測定器 測定 測定対象 測定環境

不確かさ

主なもの

不確かさ

すべてについて評価する

・測定器とその校正方法・標準器

主なもの

最終結果に与える影響が

必要はない!

・測定のための装置・測定方法、手順、

最終結果 影響大きなものを

ピックアップすることが重要!・データ処理方法・測定対象の安定性・再現性

「必要なところに必要な精度で」時間・手間・コストを

・測定環境 最小にするよう努力!

不確かさ要因不確かさ要因

記号 不確かさ要 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布確かさ

U 拡張不確かさ

正規分布(k=2)

ここに記入

( )

不確かさ評価の分類不確かさ評価の分類不確かさ評価とは・・・個々の要因によって起こるばらつきを求め,それを合成することで全体のばらつきを求める.

Aタイプの評価 実験からデ タを得 ばら きを求めるAタイプの評価・・・実験からデータを得てばらつきを求める.Bタイプの評価・・・実験以外の方法でばらつきを推定する.

注意 Aタイプ Bタイプはあくまでも実験デ タからばらつき注意:Aタイプ,Bタイプはあくまでも実験データからばらつきを求めるか否かということを表す.ある要因がAタイプかBタイプか重要ではないプか重要ではない.

Aタイプの不確かさ評価Aタイプの不確かさ評価

Aタイプの評価・・・実験からデータを得て ばらつきを求めるAタイプの評価 実験からデ タを得て,ばらつきを求める.

“統計的手法”を用いてばらつきを算出する方法.

つまりつまり,

測定値10 0210.0210.1010.21 統計的手法 ばらつき

Aタイプとして評価された10.21

10.11・

統計的手法 ばらつき 評価された不確かさ

・・ となる.

Bタイプの不確かさ評価(1)Bタイプの不確かさ評価(1)なぜBタイプの不確かさ評価が必要なのか

・標準器の校正の不確かさ・・・使っている標準器の校正の不確かさ評価まで行わなくてはいけない?校正の不確かさ評価まで行わなくてはいけない?

・再現することが難しい不確かさ要因・・・実験室の温度が変化する とによ ばら きが るとするなら度が変化することによってばらつきがでるとするならば,1年間実験室の温度を測りつづけなければいけない?ない?

・そもそも測定できない不確かさ・・・使っている温度計は±0 5℃でしか温度が分からないのだけど そ計は±0.5℃でしか温度が分からないのだけど,その計れなかった±0.5℃の間の温度のばらつきの評価は?価は?

Bタイプの不確かさ評価(2)Bタイプの不確かさ評価(2)

確率分布を仮定するには合理的な判断材料が必要.

実際に実験を行わないので コスト 時間 人手

合 な判断材料 必要

実際に実験を行わないので,コスト,時間,人手の節約に大きく貢献する.

ばらつきの大きさの算出ばらつきの大きさの算出

記号 不確かさ要 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

u ( ) 合成標準不 正規分布uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

U 拡張不確か 正規分布さ (k=2)

Aタイプ,Bタイプの評価法で算出された値等をここに記入,計算

不確かさの合成不確かさの合成

個 確 が プ個々の不確かさの大きさがAタイプの評価,Bタイプの評価によって求められる.

求められた個々のばらつきを合成する.

その測定の全体的なばら きが算出できるその測定の全体的なばらつきが算出できる.

最終的な不確かさの算出最終的な不確かさの算出記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単因 + (測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布確かさ

U 拡張不確かさ

正規分布(k=2)

ここの欄を用いて最終的に報告する不確かさを算出する

例例

ビ• ある居酒屋で出される生ビール大ジョッキにはここまで入れるというラインが付いている.そのラインま

量を ダ 定 均値をでの量をメスシリンダーで10回測定しその平均値をその居酒屋で出される大ジョッキの体積とする.

• また,測定時の温度は5℃で行う.

この例を用いて,不確かさの算出について考える.

不確かさ要因不確かさ要因

記号 不確かさ要 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

測定のuR測定の

繰返し性

u 標準器の校正

確us の不確かさ

uT温度による

効果

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

拡張不確か 正規分布U 拡張不確かさ

正規分布(k=2)

Aタイプの不確かさ評価Aタイプの不確かさ評価

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

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田中秀幸

目的目的記号 不確かさ要 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ

(測定量 単因 + (測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布確かさ

U 拡張不確かさ

正規分布(k=2)

Aタイプによる評価法でこの欄に入れる値

さ (k 2)

Aタイプによる評価法でこの欄に入れる値の算出法を学習する.

Aタイプの不確かさ評価とはAタイプの不確かさ評価とは

実験によ て測定デ タを得て そのデ タから実験によって測定データを得て,そのデータからばらつきを求める.

不確かさ評価では,ばらつきは「実験標準偏差」

実験標準偏差とは・・・平均値に対してどのくらいばら

によって表される.

実験標準偏差とは・・・平均値に対してどのくらいばらついているかを表す指標.正確な言い方ではないがばらつきの平均を表していると考えておけばよいばらつきの平均を表していると考えておけばよい.

ここで実験標準偏差を算出しただけではAタイプここで実験標準偏差を算出しただけではAタイプの不確かさを算出したことにはならない.

標準偏差の算出法標準偏差の算出法関数電卓の機能,表計算ソフトの機能を使えばよい.関数電卓の機能,表計算ソフトの機能を使えばよい.

注意:標準偏差には意味合いの違う2種のものがある.

対象:母集団 対象:標本対象:母集団 対象:標本

関数電卓1 σx sxx x関数電卓2 σn σn-1n n 1

表計算ソフト stdevp() stdev()

不確かさ評価では右側の対象:標本のものを用いること!

標準偏差と実験標準偏差の計算式標準偏差と実験標準偏差の計算式

標準偏差 (高校で学ぶ)

( )21 n

ix x−∑σ= ( )1in =∑

実験標準偏差実験標準偏差

( )21( )n

s x x x= −∑ ( )1

( )1 i

i

s x x xn =− ∑

2つの違い2つの違い例:小学6年生の身長測定

A小学校6年A組全員の身長

母集団 標本全員の身長

A小学校6年A組の平均の 日本の小学6年生の平均のA小学校6年A組の平均の身長と標準偏差を知りたい

すべてのデ タを知 て

日本の小学6年生の平均の身長と標準偏差を知りたい

本全 学 年生 身すべてのデータを知っていて,そこから平均と標準偏差を算出

日本全国の小学6年生の身長は測れない.A小学校6年A組

デ 全 身偏差を算出 のデータから日本全国の身長の平均と標準偏差を推定.

左 「対象 集 を る 右 「対象 標本 を る左の「対象:母集団」を用いる 右の「対象:標本」を用いる

これを実験標準偏差という

分散・標準偏差について分散 標準偏差に いて

例:ある製品の質量測定(g)x1 x2 x3 x4 x5

87.5 86.2 90.1 88.4 87.0

平均: 87.5 86.2 90.1 88.4 87.0 87.845

x + + + += =

平均値からの距離

(g) 平方根単位:g平均値 距離

(偏差)単位:g87.5-87.84=-0.3486 2 8 84 1 64

(平均値からの距離)2

単位 2

1.494

86.2-87.84=-1.6490.1-87.84=2.2688.4-87.84=0.56

単位:g2

0.11562 6896

偏差の二乗和単位:g2

データの個数-187.0-87.84=-0.84 2.6896

5.10760.31360 7056

8.9320デ タの個数(自由度)で割る単位:g2

0.7056 2.233

実験標準偏差の算出における注意点実験標準偏差の算出における注意点

分散を算出する式は一般的な書き方をすると分散を算出する式は 般的な書き方をすると,

2( )n

ix x−∑2 1

1is

n==

∑となる.

しかし一般的に計算の時に使うのは 上式を変形したしかし一般的に計算の時に使うのは,上式を変形した,

2( )n

∑ 2

2 1

2 1

( )ini

ii

xx

n=−∑

∑2 1

1i ns

n==

行われるときが多で行われるときが多い.

実験標準偏差の算出における注意点実験標準偏差の算出における注意点

• コンピュータで扱える桁数について• コンピュータで扱える桁数について

Excelで用いることができる数字は,有効数字15桁までである 不確かさ評価で標準偏差字15桁までである.不確かさ評価で標準偏差を算出するときに2乗を行うことを考えると,不確かさ評価では有効数字7桁までしか用い不確かさ評価では有効数字7桁までしか用いることができない.

2

2 1( )

n

ini

i

xx =−

∑∑ この式を用いるときの注意.

(積 残 )2 1

1

ii ns

n==

∑(積み残し)

実験標準偏差の算出における注意点実験標準偏差の算出における注意点

• コンピュータで引き算を行うときの注意コンピュ タで引き算を行うときの注意コンピュータは大きさが似ている大きな数の引き算が苦手である よって 大きさが似ている2つの数を引き算するとおかある.よって,大きさが似ている2つの数を引き算するとおかしな答えが出ることがある.

2n

∑ 2

2 1

( )

1

ii

x xs

n=

−=∑ この式を用いるときの注意

(桁落ち)

上記の問題点の例

E lを用いて

1n −

Excelを用いて,(123456789.1-123456789)を計算してみると? 計算計算

分散 算出にお は 積み残し ほうが起 る可能性が高分散の算出においては,積み残しのほうが起こる可能性が高い.桁落ちはデータ数が多いときに注意.

標準偏差から不確かさへ標準偏差から不確かさへ

実験標準偏差=測定値のばらつき

報告する値=平均値

測定値平均値

報告する値=平均値

測定値平均値

ばらつき必要なのは測定値のばらつきではなく 平均値のばらつき!ばらつき ではなく,平均値のばらつき!

平均値の実験標準偏差を求める必要がある平均値の実験標準偏差を求める必要がある.

平均値の実験標準偏差

サイコロを振って 出た目の平均値を求めるサイコロを振って,出た目の平均値を求める.

3回振 た平均値

1回目

2回目

1回目

3回振った平均値 3回目

4回目回目

2回目

3回目 10回振った平均値

5回目

6回目3回目

平均

0回振った平均値

7回目

8回目8回目

9回目

10回目10回目

平均計算計算

平均値の実験標準偏差の求め方平均値の実験標準偏差の求め方

平均値の実験標準偏差と 最初に算出した実験標平均値の実験標準偏差と,最初に算出した実験標準偏差の間には以下の関係がある.

( )( ) s xs xn

=n

ここで は平均値の実験標準偏差 s(x)はデー( )s xここで, は平均値の実験標準偏差,s(x)はデタの実験標準偏差,nは測定回数である.

( )

ここで求められた平均値の実験標準偏差がここで求められた平均値の実験標準偏差がAタイプの評価で求められた不確かさとなる.

有効数字について有効数字について

校正証明書に記載する最終的な不確かさは校正証明書に記載する最終的な不確かさは

原則原則22桁である.桁である.

よって,個々に算出された不確かさはこの後に合成する必要があるため,4桁以上まで計算しておく.

バジェットシートへの挿入バジェットシートへの挿入記号 不確かさ要因 値

+確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ

(測定量の単+ (測定量の単位)

1.641 -------- 1

Aタイプ評価でれ 欄 標準偏差を求 もは,この欄に算

出された平均値

これら欄は標準偏差を求めるためのものであるので,すでに標準偏差を算出

る タイプ評価 は「確率分布の実験標準偏差を書き込む

しているAタイプ評価では「確率分布」欄は空欄,「除数」欄はすべて1となる.

例:Aタイプの不確かさ評価例:Aタイプの不確かさ評価

• メスシリンダーでビールジョッキに入れられた液体の• メスシリンダーでビールジョッキに入れられた液体の体積を繰返し測定を行い次のデータを得た.

1 2 3 4 5632 629 639 635 627

6 7 8 9 10回目

636 633 637 634 633636 633 637 634 633(単位:mL)

平均値:633.5 mL実験標準偏差:3.598 mL実験標準偏差:3.598 mL平均値の実験標準偏差:1.138 mL

バジェットシートバジェットシート

記号 不確かさ要因 値 確率分布 除数 標準不確か 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要因 値+

確率分布 除数 標準不確かさ

感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

測定uR測定の

繰返し性

1.138mL

-------- 1

標準器の校正us標準器の校正

の不確かさ

uT温度による

効果uT 効果

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)

確率分布について確率分布について

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

制作:(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門物性統計科 応用統計研究室

田中秀幸

確率分布とは確率分布とは

例えば サイコロの確率分布を考える例えば,サイコロの確率分布を考える.

サイコロは1-6の目を持っている.

これはそれぞれ同じ確率で出る.

それならば 各目とも1/6の確率の確率分布をそれならば,各目とも1/6の確率の確率分布を

持つということになる.

確率

1/6

サイコロの目の確率分布

1/6

1 2 3 4 5 6サイコロの目

Bタイプの評価で用いられる確率分布(1)

最もよく使われる分布最もよく使われる分布限界値のときなどに適用.

解説a a

3aμ

矩形分布(一様分布)

3

Bタイプの評価で用いられる確率分布(2)

中心が多く,端にいくほど少なくなる分布に適用.

aa

正規分布のときはこの分布を適用す

a

aaμ ることが多い.

三角分布6

解説

Bタイプの評価で用いられる確率分布(3)

正規分布の性質正規分布 正規分布の性質

よく管理されている測定の測定値はほとんど

正規分布校正証明書などで不確かさが分かっている時 定の測定値はほとんど

の場合正規分布する.かさが分かっている時に適用.

μ μ+σ μ+2σμ−σμ−2σ μ+3σμ−3σ μ μ μμμ μμ

68.3%95 5%95.5%99.7%

μ±1σ:68.3%μ±1σ:68.3%μ±2σ:95.5%μ±3σ:99.7%

の値が含まれる.

その他の分布と標準偏差その他の分布と標準偏差

b0 1b≤ ≤

a a ba ba-a a

μ

2a 2 2(1 )

6a b+

μ中は じ確率だが

周期的に変化する要因に対して適用

中は同じ確率だが端に行けば徐々に減る要因に適用

U字分布 台形分布

要因に対して適用.減る要因に適用.

除数について除数について

矩形分布・・・分布の半幅を√3で割る.三角分布・・・分布の半幅を√6で割る.

この値のことを除数という

校正証明書から引用する場合,分布は正規分布とし,この時除数を2とすること 理由は後で解説するこの時除数を2とすること.理由は後で解説する.

例:Bタイプの不確かさ例:Bタイプの不確かさ

標準器の校正の不確かさに相当する メスシリン• 標準器の校正の不確かさに相当する,メスシリンダーの校正の不確かさは,校正証明書より,3.0mL.また 校正証明書を用いる場合 確率分布は正規また,校正証明書を用いる場合,確率分布は正規分布である.

• 温度による効果は 温度を測定している温度計が• 温度による効果は,温度を測定している温度計が最小目盛り1℃のデジタル温度計を用いているため,±0.5℃で温度が分からない.±0.5℃で温度が分からない.

±0 5℃の範囲内では どこでも同じ確率で現れるので±0.5℃の範囲内では,どこでも同じ確率で現れるので,矩形分布を仮定

例:Bタイプの不確かさ例:Bタイプの不確かさ

• 標準器の校正の不確かさは校正証明書から値を得るため 正規分布である またその時の除数は2でるため,正規分布である.またその時の除数は2である.

• 温度による効果は,矩形分布を仮定しているので、除数は√3除数は√3.

バジェットシートバジェットシート

記号 不確かさ要因 値 確率分布 除数 標準不確か 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要因 値+

確率分布 除数 標準不確かさ

感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

測定uR測定の

繰返し性

1.138mL

-------- 1

標準器の校正 3.0規分布us

標準器の校正

の不確かさ

3.0mL

正規分布 2

uT温度による

効果

0.5℃

矩形分布 √3uT 効果 ℃矩形分布 √3

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)

用語について用語について

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

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田中秀幸

不確かさに関する用語不確かさに関する用語

JIS Z 8103-2000:計測用語より引用

• 標準不確かさ・・・標準偏差で表される,測定

JIS Z 8103 2000:計測用語より引用

表結果の不確かさ

• 合成標準不確かさ・・・いくつかの他の量の値から求められる測定の結果の標準不確かさ.各量の変化に応じて測定結果がどれだけ変各量の変化に応じて測定結果がどれだけ変わるかによって重み付けした,分散又は他の量との共分散の和の平方根に等しい量との共分散の和の平方根に等しい.

不確かさに関する用語不確かさに関する用語

JIS Z 8103-2000:計測用語より引用

拡張不確かさ 合理的に測定量に結びつ

JIS Z 8103 2000:計測用語より引用

• 拡張不確かさ・・・合理的に測定量に結びつけられ得る値の分布の大部分を含むと期待される区間を定める量.

不確かさの表現不確かさの表現

確 さ れら ばら きを不確かさ要因 これらのばらつきを標準偏差で表す.不確かさ要因

不確かさ要因不確かさ要因

不確かさ要因不確かさ要因

合成

一般的に校正証明書には拡張不確かさ 拡張不確かさを記載する.拡張不確かさ

例:標準不確かさ例:標準不確かさ

• 標準不確かさは,標準偏差で表されている.

• このバジェットシートでは,「値」を「除数」で割ることによって,標準偏差を求めることが出来る.

バジェットシートバジェットシート

確率分布 除数 標準不確か 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要因

値+

確率分布 除数 標準不確かさ

感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

測定uR測定の

繰返し性

1.138mL

-------- 1 1.138 mL

標準器の校正 3.0規分布us

標準器の校正

の不確かさ

3.0mL

正規分布 2 1.5 mL

uT温度による

効果

0.5℃

矩形分布 √3 0.2887 ℃uT 効果 ℃矩形分布 √3 0.2887 ℃

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)

不確かさの合成と拡張不確かさの合成と拡張

計測標準フォーラム計測標準フォ ラム

計量標準等トレーサビリティ導入に関する調査研究WG2関する調査研究WG2

制作:(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門物性統計科 応用統計研究室

田中秀幸

目的目的記号 不確かさ要因 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ

(測定量 単+ (測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布かさ

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)(k 2)

A,Bタイプの評価法を用いて算出した値から拡張不確かさを求める

不確かさ要因の単位不確かさ要因の単位不確かさの要因には,実際に行っている測定と同じ単位で表されるものと,異なる単位で表されているものがある.

例:金属棒の長さ測定

同じ単位で評価された要因 異なる単位で評価された要因

測定の繰り返し測定の繰り返しマイクロメータの校正の不確かさ

温度変化による影響

単位 mm 単位 ℃不確かさ 単位:mm 単位:℃

異なる単位で表されているものはその測定量の単位に変換しなければならない!

温度による金属棒の長さの不確かさ(mm)

これが感度係数!

温度による金属棒の長さの不確かさ(mm)=熱膨張係数(℃-1)×金属棒の長さ(mm)×温度の影響(℃)

感度係数感度係数記号 不確か

さ要因値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)さ要因 +

2 131 ℃1.46 2.131×1.46

2.131 ℃mm/℃ =3.111 mm

求めた感度係数を書きれる 値が 標準不確かさと感度係数を掛け入れる.元々の値が測

定量と同じ次元の場合は を書き入れる

標準不確かさと感度係数を掛け合わせた値を入れる.これによって 測定量の次元に変換さは1を書き入れる. よって,測定量の次元に変換された標準不確かさが求められる.

例:感度係数例:感度係数

• 繰返し性と標準の不確かさは測定量の単位と同じである

この計測における 温度を体積に変換する感度係数は

繰返し性と標準の不確かさは測定量の単位と同じであるから感度係数は1.

• この計測における,温度を体積に変換する感度係数は,

体膨張率・・・ある物質が,1℃温度が変化するとどのくらい膨張するかを割合で表した値.

液体の体積・・・体膨張率はどのくらい膨張するかを表した割液体の体積・・・体膨張率はどのくらい膨張するかを表した割合である.この測定で用いられている液体は,633.5 mLであったので その液体の体積を体膨張率にかけることにであったので,その液体の体積を体膨張率にかけることによって,633.5 mLの液体の膨張量が算出される.

例:感度係数例:感度係数

• この液体の体膨張率・・・5.23×10-3 ℃-1

• この液体の体積・・・633.5 mL

感度係数 5 235 23××1010 33 ℃℃ 11 ××633 5 L633 5 L感度係数・・・5.235.23××1010--3 3 ℃℃--11 ××633.5 mL633.5 mL==3.313 mL/3.313 mL/℃℃

バジェットシートバジェットシート

除数 標準不確か 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要因

値+

確率分布除数 標準不確か

さ感度係数 標準不確かさ

(測定量の単位)

測定uR測定の

繰返し性

1.138mL

-------- 11.138mL

11.138mL

標準器の校正 3.0規分布

1.5 1.5us標準器の校正

の不確かさ

3.0mL

正規分布 2.5

mL1

.5mL

uT温度による

効果

0.5℃

矩形分布 √30.2887℃

3.313℃

0.9564uT 効果 ℃矩形分布 √3

℃ mL/℃ mLuc( ) 合成標準不確か

さ正規分布

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)

不確かさの合成不確かさの合成

標準不確かさはすべて標準偏差で表されている標準不確かさはすべて標準偏差で表されている.

標準偏差を合成するときには二乗和の平方根を用いる.

各標準不確かさを合成し合成標準不確かさ各標準不確かさを合成し合成標準不確かさを求めるには標準不確かさを二乗し,足しあわせ 平方根を取るわせ,平方根を取る.

2n

∑ 2

1ic x

iu u

=

= ∑

不確かさの合成不確かさの合成

記号 不確かさ要 値 確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ記号 不確かさ要

値+

確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ(測定量の単位)

1 2341.2342.1261 3971.397

0.4610uc( ) 合成標準不 正規分布 2 865c( )

確かさ 2.865

U 拡張不確かさ

正規分布(k 2)さ (k=2)

もし,このような標準不確かさが得られているとするならば,ここに,もし,このような標準不確かさが得られているとするならば,ここに,測定量の単位に変換した標準不確かさの二乗和の平方根を書き入れる.これが合成標準不確かさとなる.

中心極限定理中心極限定理

標準不確かさを合成した合成標準不確かさの分布は正規分布に近づく.

+

+ これを中心極限定理と呼ぶ

+

実際に見てみよう

標準偏差が合成標準不確かさとなる 測定結果の分布は標準偏差が合成標準不確かさとなる,測定結果の分布は,中心極限定理によって正規分布していると見なせる.

拡張不確かさ拡張不確かさ合成標準不確かさは、標準 許容差などでは ほぼこの中にすべ合成標準不確かさは、標準偏差として表されている.

許容差などでは,ほぼこの中にすべての値が入る、と言う範囲で示す.

ばらつきの平均値で 合成標準不確かさで示された範囲にばらつきの平均値で表されている.

合成標準不確かさで示された範囲には約68%のものしか含まれない.

この数を包含係数と言

合成標準 確 さ 中心 合成標準不確かさを2倍すれば

この数を包含係数と言い,kで表す.(k=2)

合成標準不確かさは,中心極限定理により正規分布し

ると見做 る

合成標準不確かさを2倍すれば約95%が含まれ,

今までと同じような値になるていると見做せる. 今までと同じような値になる.

正規分布正規分布

μ μ+σ μ+2σμ−σμ−2σ μ+3σμ−3σ μ μ μμμ μμ

68.3%95 4%95.4%99.7%

μ±1σ:68.3%μ±1σ:68.3%μ±2σ:95.4%μ±3σ:99.7%

の値が含まれる.

確率分布の例確率分布の例

-a a矩形分布( 様分布)

a-a角分布

-a a字分布

−σ σ正規分布矩形分布(一様分布) 三角分布 U字分布 正規分布

最もよく使われる分布限界値のときなどに適用

中心が多く,端にいくほど少なくなる分布に適用

周期的に変化する要因に対して適用.

校正証明書などで不確かさが分かっている時に適用適用. 分布に適用.

正規分布のときはこの分布を適用することが多い

ている時に適用.

することが多い.

a a a U3 6 2 2

拡張不確かさ拡張不確かさ記号 不確かさ要因 値

+確率分布 除数 標準不確かさ 感度係数 標準不確かさ

(測定量の単+ (測定量の単位)

uc( ) 合成標準不確 正規分布かさ 2.865

U 拡張不確かさ 正規分布 2×2 858(k=2) 2×2.858≒5.7

も 合成標準 確かさが と う値 あ たならばもし,合成標準不確かさが2.865という値であったならば,合成標準不確かさを包含係数倍したもの,すなわち,2倍

たも を 書き む れ 最終的 報告さしたものをここに書き込む.これによって,最終的に報告される拡張不確かさを算出することができた.

最終結果最終結果

記号 不確かさ要因値 確率分布 除数 標準不確か

さ感度係数 標準不確かさ

(測定量の単記号 不確かさ要因+

確率分布 除数 さ (測定量の単位)

uR測定の

繰返し性

1.138L

-------- 11.138

L1

1.138LR 繰返し性 mL mL mL

us標準器の校正

の不確かさ

3.0mL

正規分布 21.5mL

11.5mL

uT温度による

効果

0.5℃

矩形分布 √30.2887℃

3.313mL/℃

0.9564mL

( ) 合成標準不確か 正規分布uc( ) 合成標準不確かさ

正規分布 2.112mL

U 拡張不確かさ 正規分布 4 2

ビ ルジョッキの体積

U 拡張不確かさ 正規分布(k=2)

4.2mL

ビールジョッキの体積

633.5 mL±4.2 mL, k=2

様々なバジェットシート様々なバジェットシート

JCG204S21-02 不確かさの見積もりに関するガイド(力/一軸試験機)より引用.JCSSホームページ

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