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令和元年度 茨城県高等学校教育研究会生徒指導部 情報安全教育専門委員会

発表者 松本欽也 (水戸工業高等学校)

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令和元年度 高教研生徒指導部

情報安全教育専門委員会

指導助言者(副部長)川上 弘 (竜ヶ崎南高校教頭)

委員長 辻岡 敦 (清真学園高校)

副委員長 岡田 裕之(竹園高校)

副委員長 鎌田 圭二(土浦工業高校)

書記 一色 貴子(三和高校)

委員 石浜 陵司(第一学院高校)

委員 松本 欽也(水戸工業高校)

委員 柏村 巌 (緑岡高校)

委員 本田 歩 (牛久高校)

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1 はじめに

令和元年度現在において茨城県内の高校では,スマートフォン(以降スマホとする。)の使用・制限についての指導方針は統一されておらず,各高校に任されているのが現状である。

情報安全教育専門委員会では,学校におけるスマホ使用の対応の違いが,生徒に対し,どのような影響を与えているかについて調べることとした。また近年,スマホ等の利用を通じて犯罪被害に遭う少年が増加している(少年非行白書:H30年度茨城県警察発行)中,高校生が日頃どのような対策を講じているか,危機管理意識をもってスマホを利用しているかを調べるために,各高校にご協力頂きアンケート調査を実施した。

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2 取組の経過

第1回 情報安全教育分科会 5月16日(木) 石岡第一高等学校・役員選出・研究テーマ及び内容の決定・事業計画

第2回 情報安全教育分科会 6月19日(水) 土浦工業高等学校・研究テーマ及び内容の再確認,決定・アンケートの項目の検討, 送信・集計方法・役割分担・事業計画

第3回 情報安全教育分科会 9月5日(木) 石岡第一高等学校・アンケートの最終確認・実施校選定・アンケート集約校決定

第4回 情報安全教育分科会 10月24日(木) 土浦工業高等学校・アンケートの集計結果と考察

第5回 情報安全教育分科会 12月3日(火) 土浦工業高等学校・アンケートの考察とまとめ

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3 調査・研究方法と内容

①調査対象

・各地区からそれぞれ4校抽出 計20校 約2800名

10校・・・・スマホの校内使用不可

10校・・・・スマホの校内使用可(条件付き有り)

②調査方法

・本委員会で作成したアンケートを各校に送信し,

各学年で1クラスずつ実施後,全体集計と考察を行った。

③調査期間

・令和元年9月~10月中旬に実施

④調査内容

・生徒のネットワーク端末等における実態及び危機意識調査

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・99%以上の生徒が何らかのネットワーク機器を持っている。

Q1 あなたは,自分専用のネットワーク端末をもっていますか

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・1時間未満が最も多いが,3時間以上使用している生徒が4割以上を占める。

Q2 1日にどれくらいネットワーク端末を使用していますか

7

Q2 1日にどれくらいネットワーク端末を使用していますか

8

3

・「利用していない」と「1時間未満」で約8割。

・ICT活用の時代であるが,生徒にとって,学習に活用するツールという認識は薄いように感じる。

Q3 1日にどれくらいネットワーク端末を利用して学習していますか

57.9

17.3

1.90.7

1.021.3

総人数(2813人)に対する割合 [%]1時間未満

2時間未満

3時間未満

4時間未満

4時間以上

利用していない

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Q3 1日にどれくらいネットワーク端末を利用して学習していますか

・スマホ使用可・不可とも「1時間未満」が多く,「利用していない」も多い。割合的には同じ利用率と捉えられる。

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Q5 ネットワーク端末に依存していると思いますか

・スマホ使用不可の生徒の約6割が,依存していないと感じている。対照的な結果が得られた。

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・スマホ使用可の生徒の方が,ネット端末が妨げになると感じている。使用不可であれば,校内での学習の妨げになると感じる生徒は少ない。家庭における学習の妨げと捉えた方が自然である。

Q6 ネットワーク端末が学習(家庭・校内を含む)の妨げになっていますか

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・LINE離れが広がる中,未だに「LINE」が一番多く使われている。他には「動画再生」「音楽再生」が続く。

・学年別に見ても大きな差は見られない。

Q7 ネットワーク端末を主に何を使っていますか

55.738.7

68.640.0

60.261.7

33.418.717.8

8.738.6

53.945.7

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

通話やメール

Twitter

LINE

インスタグラム

動画再生

音楽再生

学習用アプリ・調べ

ショッピング

スケジュール管理

電子マネー

カメラ・写真加工

検索・情報収集

ゲーム

総人数(2813人)に対するそれぞれの割合 [%]複数回答可

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・フィルタリングが設定されていない生徒は,自分が危険と知っている分だけ危機意識はある。

・「わからない」と答えた生徒は最も危険である。

Q8 自分のネットワーク端末にはフィルタリングがされていますか

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・スマホ使用不可の生徒の方が,危機管理意識が薄いように感じられる。

Q8 自分のネットワーク端末にはフィルタリングがされていますか

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Q9 友人や知人の写真や動画を無断で

インターネット上にアップしたことが

ありますか

Q10 友人や知人に写真や動画を無断で

インターネット上にアップされたことが

ありますか

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5

・ネットに無断でアップした事がある生徒は12%であるが,されたことがある生徒は,その倍以上いる。

・気づかずにアップしている可能性もありそうである。

Q9とQ10を同時に比較

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・この8%という数字は一見少なく感じられるが,総数が2800人であることから,調査した生徒の中で少なくとも200人以上の生徒が,何らかのトラブルになったということが分かる。

Q11 インターネット上で友人や知人とトラブルになった経験がある

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・これも4%と少なく感じるが,総数に対して100人以上が被害に遭っている。今回の調査では20校が対象なので,単純平均で,1校当たり5人以上が被害に遭っている事になる。

Q12 インターネット上で自分のIDやパスワードを

他人に勝手に使用されたことがある

4%

96%

総人数(2813人)に対する割合 [%]

はい

いいえ

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・14%という数字から,400人近い生徒,つまり,1校当たり約20人(1クラス40人で考えるとクラスで約6人)の生徒は許してしまう。危機管理意識に問題ありといえる。

Q13 インターネット上にアップされると拡散やトラブルにつながる      可能性があることは理解しているが友人に求められれば

   自分や他人の写真などの個人情報を提供してよい

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・スマホ使用可の生徒の方が,危機管理意識が低いと読み取れるが,使用不可の方も決して少なくない。・1クラス40人で計算すると

使用可 7.2人 使用不可 4人

Q13 インターネット上にアップされると拡散やトラブルにつながる

可能性があることは理解しているが友人に求められれば

自分や他人の写真などの個人情報を提供してよい

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・想像以上に多い数字である。

35%(985人)

Q14 知らない人とインターネット上でつながっていますか

22

・スマホ使用可の生徒は,危機管理意識が低いと感じられる。・学年間での差は見られなかった。

Q14 知らない人とインターネット上でつながっていますか

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・生徒は,それぞれのアプリを使い分けている。

・LINEよりもゲームの方が多い。

Q15 Q14で「はい」と答えた人に質問しますどんなアプリでつながっていますか

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Q15 その他

◎ボイスチャットアプリ

・discord(ゲーマー向けの無料チャット)・Team Speak(ゲーマー向け)・Mumble(ゲーマー向け)・skype・カカオトーク・Messenger・ハングアウト・Nintendo Switch Online(任天堂スイッチ)

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Q15 その他

◎ライブ配信アプリ(リアルタイムSNS)<お金が稼げることもある>

・Mirrativ(ミラティブ)・MixChannel(ミクチャ)・ツイキャス・17Live(イチナナ)・Pococha(ポコチャ)・Live・Me(ライブミー)・SHOWROOM(ショールーム) など

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・4%という数字は,先にも述べたとおり,小さい数字ではない。100人を超える人数である。

・1校当たり5人の生徒がトラブルになったことになる。

Q16 インターネット上で知らない人とトラブルになった経験がありますか

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・信じ難いが,これだけ多くの生徒が,ネットで知り合った友人・知人に簡単に接触している。

・ニュースにも度々出てくるが,犯罪は,実際に会う事で危険性が急激に高くなる。

Q17 インターネット上での友人・知人に実際にあったことがある

28

8

・スマホ使用可の方の数字では,1クラス40人ならば,クラスで5~6人の生徒がそのような行動を取っていることになる。

Q17 インターネット上での友人・知人に実際にあったことがある

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・1年生と3年生を比較すると,倍近い数字となっている。・学年が上がるにつれて,数字は大きくなっている。・スマホ使用不可の方では,学年間の差異なし。

スマホ使用可の学年別割合

Q17 インターネット上での友人・知人に実際にあったことがある

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・1万円以上課金した生徒は8.2%となる。1クラス40人で考えると,1クラス当たり3~4人の生徒が1万円以上を課金していることになる。

・5万円以上課金した生徒は,62人いた。

Q18 過去1年以内にゲーム・アプリで課金した総額はいくらですか

69.0

8.0

9.9

4.9

5.6

2.6

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

ない

1000円未満

5000円未満

10000円未満

50000円未満

50000円以上

回答者総数に対する割合 [%]

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・5千円以上の課金は,スマホ使用可の方が多い。・中でも5万円以上課金した生徒は,3年生が21人という結果で,1/3を占めた。

Q18 過去1年以内にゲーム・アプリで課金した総額はいくらですか

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・とても残念な数字である。スマホ使用可・不可どちらも同じような結果であった。

・一方では,8割近い生徒が役立っていると感じており,成果はあったとも言える。

Q19 学校の講演会等はトラブル防止や危険防止に役立っている

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・日頃SNSトラブルが多い中,少ない数字である。

・スマホ使用可・不可どちらも同じ程度の数値であった。

Q21 ネットワーク端末は,人間関係に悪影響を及ぼしている

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・スマホ使用不可の生徒の7割が,制限を解除して欲しいと感じている。・スマホ使用可の中にも1割以上,制限を希望している生徒がいる。

Q22 ネットワーク端末は,学校内では使用を制限すべきである

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まとめ近年,スマートフォン使用に関して,茨城県高等学校

教育研究会生徒指導部において,専門委員会等でテーマや質問事項として,取り上げてきました。

特に,平成29年の薬物乱用防止教育研究専門委員会の報告の中で,「インターネットで薬物のサイトにアクセスしたことがありますか?」の問いに,「ある」の回答が6名(718名中)ありました。また,少年非行白書(H30年度茨城県警察発行)でも,「SNS等の利用に起因する福祉犯被害」について取り上げられております。

このことから,生徒がスマートフォンによって事件事故に巻き込まれる危険性を,感じていたところでした。

そこで,学校におけるスマートフォン使用の対応の違い(学校内使用可・不可)が,生徒に対してどのような影響を与えているのかを調査しました。

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第1に,ネットワーク端末利用状況について,どのような影響があるか。

ネットワーク端末が,学習へ利用される時間は,学校内使用可・不可ともにほぼ同じ結果で,あまり利用されていないことが分かりました。したがって,ネットワーク端末の学習への利用は,使用の対応の違いによる影響はないと考えられます。

その一方で,ネットワーク端末へ「依存していない」と思っている生徒の割合は,学校内使用不可の学校が,学校内使用可の学校より明らかに高くなっています。さらに,「学習への妨げになっている」と感じている割合は,学校内使用可の方が,明らかに高くなっています。これらのことにより,学校での利用制限は,ネットワーク端末への依存防止や学習活動に,効果があると考えられます。

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第2に,スマートフォン利用の危機管理について,どのような影響があるか。

全体では,「フィルタリングが設定されていない」又は「わからない」と答えた生徒は,約6割を占めています。学校内使用可と不可で比較すると,使用不可の学校の方が「設定されていない」又は「わからない」の割合が高く,生徒の危機管理意識が薄いように感じられます。これは,学校で制限しているため,保護者は安心していて,危機管理意識が低くなってしまったのではないかと思われます。

また,「ネットに無断で写真等の個人情報を,アップした事がある」という生徒数に対し,「ネットに無断で写真等の個人情報を,アップされたことがある」という生徒数が,2倍以上になっています。これは,自分では罪悪感のないままに無意識にアップしているのではないかと考えられます。

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さらに,学校内使用可と不可の違いに関しては,使用可の方が「友人に求められれば自分や他人の写真などの個人情報を提供してよい」と回答した割合が高くなっており,さらに,「インターネット上での友人・知人に実際に会ったことがある」と回答した割合も高く(1クラス40人とすると,5~6名の割合),校内使用可の方が,より事件・事故に巻き込まれる可能性が高いと考えられます。

特に,「インターネット上での友人・知人に実際に会ったことがある」の割合を,学校内使用可・不可それぞれ学年間で比較すると,学校内使用可の方では,学年が上がるにつれて増加し,3年生では1年生の約2倍となっています。その一方で,使用不可の場合は,学年間の差異が見られません。使用可の学校では,学年が進むにつれて,ネット上で知り合った人と実際に会うことへのハードルが,低くなることに危機感を持ちました。

ちなみに,スマートフォンの使用制限に関しては,使用不可の学校では,7割の生徒が「制限をすべきでない」と答えています。その一方で,3割の生徒は「制限すべき」と答えています。

また,スマートフォン使用可の学校では,約1割の生徒が「制限すべき」と答えています。「制限すべき」と考えている生徒が,少なからずいることが意外でした。

以上のことから,制限の有無にかかわらず,危機管理意識を持って自己管理し,自己指導力の向上を図ることが必要であると考えられます。さらに,学校内使用可の学校では,ネット上の知り合いに会いに行くことの危険性について,指導をしていく必要があると考えられます。

最後に,アンケート調査にご協力いただいた各学校の先生方に感謝申し上げます。

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