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関節リウマチRheumatoid arthritis
臨床薬物情報研究室
4年 東 夏宵
患者背景
【患者】 Mrs PJ 67歳【現病歴】 関節リウマチ
【処方内容】
・sulfasalazine・diclofenac
関節リウマチ
関節炎(滑膜炎)を主症状とする、
全身性自己免疫疾患である。
有病率
0.5~1.0%
(約70万人)男女比
男:女=1:2~3
発症年齢ピーク
30~55歳
早期治療の重要性
関節リウマチによる機能障害は、炎症によって関節が破壊されておこる。
関節の破壊は発症後早期に急速に進行するため、関節リウマチの治療はできるだけ早く始めて、関節の破壊の進行を止めることが大切。
症状
発病初期
朝起きたときに両手の指が腫れたりむくんだりする、こわばって動きが悪い。
膝や手首の関節が腫れる、痛む。
全身の倦怠感、微熱、食欲不振が続く。
関節の変形だけでなく、筋肉、神経、皮膚、心、肺、腎、眼において様々な症状が見られる。
診断
1. 朝のこわばり
2. 3か所以上の関節炎
3. 手の関節炎
4. 対称性関節炎
5. リウマトイド結節
6. 血清リウマトイド因子
7. X線異常米国リウマチ学会関節リウマチ分類基準(1987年改訂)
7項目のうち少なくとも
4項目が該当している場合、
関節リウマチと分類する。
臨床検査
急性期炎症反応赤沈値の亢進↑、血清CRP値↑
血液・生化学検査血清鉄↓、鉄結合能↓、血清フェリチン値↑
血清学的検査70~80%でリウマトイド因子が陽性
X線学的検査進展すると、
関節傍骨粗鬆症、骨びらん(骨融解性変化)、破壊、強直、変形など
治療
関節リウマチの治療では、
局所の関節だけでなく全身的な治療が必要。
(1)基礎療法(2)薬物治療(3)リハビリテーション療法(4)手術治療
治療目標
関節症状の緩和・寛解、身体機能の保持、関節破壊・変形の予防、QOLの維持
基礎療法
体重による負荷や過度の運動を避ける
安静を保ち、休養と栄養をとる
関節局所を保温する
可動範囲の維持と血行改善や筋肉萎縮防止のため、適度な関節の屈伸運動を行う
薬物治療
関節破壊に直接関わる物質(炎症性サイトカインなど)や細胞の活性を抑える。
生物学的製剤
抗リウマチ薬の効果が得られなかった場合や,効果があらわれるまで待てない病状に対して,投与が検討される。
ステロイド薬
炎症の原因となる免疫異常に働きかける。免疫調節薬は免疫異常を改善し,免疫抑制薬は免疫力そのものを低下させる。効果があらわれるまでに時間がかかる。Ex)メトトレキサート(MTX)
抗リウマチ薬(DMARDs)
即効性があり,炎症と痛みがすぐに和らぐ。関節リウマチの発病初期から関節の変形が進んだ後期まで,どの段階でも処方される。
非ステロイド性抗炎症薬
(NSAIDs)
特徴分類
diclofenac
sulfasalazine
米国リウマチ学会による関節リウマチ治療ガイドライン(2002)
リハビリテーション療法
日常生活の指導
生活パターン・生活環境の改善や関節を保護する動作などの指導。
訓練の指導
障害となっている関節の運動性を改善し、日常生活動作を高める。
手術療法
手の指の腱が切断してしまったときに行う。関節リウマチでは、伸筋腱という腱が切断されて指が伸びなくなることがある。切断された場合には健康な指の腱を移行し断裂した肩につなげて、指を再度伸びるようにする。
腱移行術
壊れてしまった関節の機能を再建するための手術。膝や股関節の手術が多く行われる。手術後、すぐに正常な関節に戻るわけではなく、しっかりとリハビリテーションを行うことが必要。人工関節の寿命は約20年。
人工関節置換術
壊れた関節を一つの骨にしてしまうときに行う。指や手首、足首など固まって動かなくても支障が比較的少ない関節に対して行う。動かなくなるため、痛みが全くなくなり安定感もあるが、不便さは免れない。
関節固定術
薬物による保存療法が無効で、長期間にわたって痛みが持続している場合に行う。滑膜を取り除けば、痛みや腫れも治まり、自立した日常生活を過ごせるようになる場合もあるが、膝や股など体重のかかる部位の関節に関しては再発することもある。
滑膜切除術
特徴分類
Problem list
#1 関節リウマチ
#1 関節リウマチ
S:
O:【処方】
・sulfasalazine・diclofenac
A:今回の処方は初めてなので、注意事項を説明し、理解してもらうことが必要。
Plan
症状や製剤によって飲む量や飲み方が違うため、指示どおりに正しく飲むこと。
噛んだり砕いたりせず、そのまま多めの水で飲むこと。
徐々に効果がでてくるため、根気よく続けること。リウマチでは、治療効果がでるまでに2カ月くらいかかることがある。
定期的に検査を受けなければならない。とくに飲み始めの3ヵ月月間は、2週間ごとに検査が必要。
まれに、発疹が全身に広がり、重い皮膚症状へ進展することがある。発疹や発赤など皮膚に異常がみられたら、ただちに中止し医師に連絡すること。
Plan
皮膚や爪、尿や汗がオレンジ色に着色することがある。これは、薬の成分の色なので、心配ない。
薬の影響でソフトコンタクトレンズが着色することがある。ソフトレンズの装着は避けた方がよい。
人によっては皮膚が日光に敏感になり、日焼けしやすくなる。強い直射日光は、できるだけ避ける。
喫煙者の場合は、喫煙がリスクファクターであることを伝え、禁煙を促す。
Q1b リスクファクター
1:遺伝的要因家族内発生(対照の約4倍)、一卵性双生児の両児の発症(15~30%、二卵性双生児の約4倍)
2:内分泌の異常女性に多く、妊娠すると症状が軽減、出産後憎悪
3:微生物感染マイコプラズマ、レトロウイルス、EBウイルス、ヘルペスウイルスなど
4:喫煙
Q2b sulfasalazineの活性型有効成分のサラゾスルファピリジンは、抗炎症薬のサリチル酸と抗菌薬のスルファピリジンが結合した構造。
サルファピリジンとアミノサリチル酸に分解され、キラー細胞の抑制(サルファピリジン)や白血球の遊走を抑制(アミノサリチル酸)する。
Q2c sulfapyridineと5-aminosalicylic acidはどのように結合しているか
サルファ剤 sulfapyridine+
サリチル酸誘導体 5-aminosalicylic acidアゾ結合
Q2d 分解酵素と場所
大部分は大腸へ移行し、腸内細菌で
5-aminosalicylic acid と sulfapyridineに分解・吸収される。
5-aminosalicylic acidは粘膜下の結合組織に対して特異的な親和力を示し、抗炎症作用により効果を現す。
Q2e sulfasalazineの副作用
消火器症状
皮疹
肝障害
白血球減少*赤字は特に注意する
他にも
・再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒症候群、
・皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症
・間質性肺炎
・急性腎不全、ネフローゼ症候群
・脳症 など
Q2f サルファ剤とは?sulfasalazineの副作用プロフィールへの
サルファ剤の影響は?
サルファ剤とは?
スルホンアミド部位を持つ合成抗菌剤・化学療法薬の総称。
サルファ剤の影響
・再生不良性貧血
・皮膚粘膜眼症候群
(Steven-Johnson症候群)・中毒性表皮壊死病
(Lyell症候群)
3a.b 現在使用できるsulfasalazine
アザスルファン腸溶錠500mg アザルフィジンEN錠250mg/アザルフィジンEN錠500mg サフィルジンEN錠500 ソアレジン錠250mg
サラゾスルファピリジン錠500mg「タイヨー」サラゾピリン坐剤500mg サラゾピリン錠500mg スラマ錠500mg ラノフェン錠500mg
*関節リウマチの適応が承認されている
Q3c sulfasalazineの他の適応症
潰瘍性大腸炎
限局性腸炎
非特異性大腸炎
参考文献
治療薬マニュアル2010医学書院(2010)
薬と疾病 Ⅱ.薬物治療(1)東京化学同人(2008)
薬学生のための新臨床医学
廣川書店(2009)関節リウマチ ヒュミラ®情報ネットhttp://pra.e-humira.jp/pt_index.html
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