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3 はじめに
1 なぜ今、連携なのか?
2 企業連携の種類
3 連携するきっかけ 4 成功する企業連携の流れ
5 戦略企画フェーズ
6 連携先調査・打診フェーズ
7 連携計画策定フェーズ
8 契約フェーズ
9 実施・モニタリングフェーズ
10 解消フェーズ
11 企業連携成功の勘所
12 国の支援策
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企業連携といっても、同時並列に複数社がお互い連携の必要性を感じて動き出すことはありえません。
はじめの一社が連携の必要性を感じ、連携体を構築するという流れが一般的だと考えられます。
事実、新連携(中小企業新事業活動促進法における連携支援)の認定要件のひとつに、「コア企業」が存在すること、という内容があります。
新連携(中小企業新事業活動促進法)のイメージ図
コア企業の存在
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つまり、コアとなる企業(はじめの一社)が、新事業創出、新ビジネス企画、ビジネスモデル革新、業務プロセス革新、新商品開発、既存商品イノベーション、販売拡大などをしようとしたときに、連携先を探すのです。
この章では、コア企業にどのような悩み(=きっかけ)があって、どのような連携先を探したのかを、業種別の事例を10個ほど紹介していきます。
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サービス業A社の例です。
サービス業 マッサージ、整体、リフレクソロジー
商圏に同業が増えてき数年前から、A社は差別化のために企業向けの出張サービスを始めた。最近は更なる差別化が必要になり、更なるサービス強化の必要性を感じていた。
サービス業 メンタルヘルスサービス
ストレスマネジメントには心身双方からの対策が必要と考えたA社は、メンタル面でのサービスを手掛ける連携先を探し、共同で企業向けのサービスを開発した。
・事業ドメイン戦略での連携・・・新規顧客開拓/既存市場深堀 ・商品の連携・・・商品の組み合わせ
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サービス業B社の例です。
不動産業 不動産賃貸業務
マンション内覧の同行要員が尐ない時は、お客様の希望に応えられず顧客を逃がしていた。繁忙期にあわせて従業員を増やしたところ、今度は人件費増加が経営を圧迫するようになった。
情報処理業 FeliCa技術システム開発
取り扱い不動産の玄関に「電子キー」取り付け、顧客の携帯に電子キーを送付することで、内覧に同行が不要になった。FeliCa技術の普及と認知を目的としていた連携先も実績を増やし、販売促進につながった。
・バリューチェーンでの連携・・・機会損失、付加価値を生まないプロセスを改善 ・商品開発面での連携・・・商品開発、マーケティングそれぞれが機会を提供
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教育・学習支援業C社の例です。
教育・学習支援業 美術、デザイン専門学校
教育カリキュラムが時代の変化に後れをとっているのではと、生徒から意見がでるようになった。生徒の満足度の低下は学生離れに繋がり、経営不振に陥る可能性があった。
ソフトウェア業 デジタルコンテンツ製作会社
C社は、連携先から講師を招き、実務に直結する講座を組み込むこととした。 実際の仕事の一部に携わる等別授業や、卒業後の従業員候補確保など、連携先にもメリットが見込めた。
・商品開発面での連携・・・連携により時間をかけずに講座を開設できた ・獲得したい経営資源での連携・・・教師となる人材の獲得
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おなじく教育・学習支援業D社の例です。
教育・学習支援業 自動車教習所
尐子化の影響をうけ、特に自動二輪の免許を取得する人数を年々減尐させている。D社は新たなターゲットを開拓する必要性を感じていた。
小売業 バイクディーラー
D社は、連携先と共に試乗会を開催しつつ、教官の技術指導を行うこととした。さらに、卒業生は5%OFFでバイクが購入できる、免許取得前にバイクを購入すれば、教習料金が割引になるなど、相互に、顧客紹介/割引制度を導入した。
・商品での連携・・・お互いの商品を活用した販売促進活動イベントの開催 ・獲得したい経営資源での連携・・・顧客の相互紹介による2社間での囲い込み
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建設業E社の例です。
建設業 造園・土木工事業
E社はこれまで公共工事を中心に事業を行ってきたが、近年受注量の低下により、事業ドメインの変化を余儀なくされていた。とは言えども新ドメインへの転換はリスクが大きく、これまでのノウハウをベースにした変換を考えていた。
林業+大学 育林サービス業+大学農学/工学部
県は杉の産地で、これまでも付き合いのあった同一県内で事業を展開する企業とは、環境問題についての同じ意識を持っていた。そこで廃材のリサイクルによって新商品を、同じく同一県内の大学との連携で開発することとした。
・事業ドメイン戦略での連携・・・施工に加え自社のオリジナル製品を開発・販売 ・技術面の連携・・・同一県内の産学連携により共同研究を実施
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小売業F社の例です。
小売業 ネット専門自転車販売
F社は輸入高級自転車や電動アシスト自転車をネットで行っていた。堅調に売り上げを伸ばしていたが、販売後のメンテナンスやサポートができないため、リピート客がつかないなど、次第に顧客離れの予兆が見え始めた。
サービス業 自転車修理サービス
F社は主な販売先である都心での、自転車修理を委託できる連携先を探した。高級自転車の部品取り扱い、電動アシスト部位の知識など連携先の選定には時間がかかったが、いくつかの店舗とメンテナンス委託契約を結ぶことができた。
・ビジネスモデル戦略での連携・・・ネット販売のデメリットを連携によって克服 ・バリューチェーンでの連携・・・顧客価値を高めるメンテナンス部分を他社に依頼
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製造業G社の例です。
製造業 畳製造業
住宅の和室の減尐が進み、畳需要が先細りになっている。この流れが進む一方で畳の優れた特性を求めるニーズは尐なくない。和室でなくても使える畳はないかとの顧客の声がちらほら聞かれた。
農業+サービス業 いぐさ栽培農家+デザイン事務所
G社の発案で連携先との勉強会が立ち上げられた。その中でこれまで焼却処分されていた短い草を活用して、タイル状の畳を開発するにいたった。デザインはデザイン事務所が請負い、新商品として売り出す事に成功した。
・商品の連携・・・これまで捨てられていた材料の有効活用 ・獲得したい経営資源での連携・・・和の世界にデザイン会社の新発想を取り込んだ。
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宿泊業H社の例です。
宿泊業 ペット専用ホテル
H社はこれまで高級住宅街や駅に近いロケーションでのペットホテルを運営していた。さらに顧客ニーズにこたえるための立地を探していたところ、空港での出店にニーズが高い事が見えてきた。
サービス業 旅行代理業
異業種交流会から発展した連携先との付き合いから、新たな店舗展開のヒントが見えてきた。空港でのペット預かりのニーズが高い事がわかり、双方で顧客ニーズを取り込んだサービス展開を行うこととなった。
・事業ドメイン戦略の連携・・・ドメイン「どうやって売る」に新たな立地を加えた。 ・獲得したい経営資源での連携・・・旅行代理店は「ペットを預けられる」をキャッチコピーとすることができた。
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農業I社の例です。
農業 果実農家
独自の徹底した方法で、果物栽培を営む農家Iは、製品の味・品質には自信を持っていた。しかしながらそのことが消費者になかなか伝わらずに、商品価格が市場に受け入れられなかった。
サービス業 写真家
農家Iは販売強化のために、様々なパートナーとの連携を考えたが、最終的には写真家との連携を図った。地元産業である果物の素晴らしさを伝えたいとの写真家の思いにより、栽培工程や従業員の作業風景の写真をHPで公開した。
・獲得したい経営資源での連携・・・販売強化策としてプロの写真で伝えると言う手法を選択した。写真家も地元応援者としての宣伝も可能となった。