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川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

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Page 1: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

第十六回

青森県近代文学館

川柳大会入選句集

青森県近代文学館

Page 2: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

第十六回

青森県近代文学館川柳大会

○日時

平成三十年三月四日(日)十一時半~十六時半

○会場

青森県立図書館

四階集会室

○宿題と選者(各題二句詠・共選)

「線」

福田文音・小野五郎

「サバイバル」

とし子・阿部治幸

「いそいそ」

佐藤寿見子・田沢恒坊

「住む」

内村ゆめ・野口一滴

○席題一題(二句詠・共選)

「関野凖一郎『古事記絵巻』」

閑女・三浦敬光

盛岡に墓碑がある川柳作家・鶴彬(つる・あきら、

○講演「鶴彬を語る」講師

佐藤岳俊氏(「川柳人」主宰)

一九〇九~三八)の生涯と文学について御講演くだ

さいました。陸羯南(鶴の師の井上剣花坊は一時日

○主催

青森県近代文学館○

本新聞社員)や同年生まれの太宰治など、本県出身

の文学者との関係性にも言及してくださいました。 佐藤岳俊氏の講演「鶴彬を語る」

Page 3: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

嬉々とした魔物が画布に憑いている

千島鉄男

ばれんからおおすめらぎの炎えあがる

【特選

【佳作

情念の焔ドラマの幕が開く

たぎるものまだある背表紙のゆがみ

落城へおんなはなおも紅を塗る

炎え尽きた灰から同じ火が生まれ

フクシマも古事記にもある地獄絵図

モノクロの叫びに誰も気付かない

絵の中に凖一郎の血がにじむ

戦争も平和も刻む彫刻刀

地獄絵巻のあっ母さんだあっわたしだ

天皇の修羅垣間見る古事記絵図

生きて行く処々で火を浴びて

ほとぼりと殺意ほのかに牛車つく

憎しみは炎のなかに古えも

ふんわりと残り香がある多色刷り

柳田健二

寺田無垢

阿部治幸

国訛ふっと兜の緒が緩む

地獄図に描き入れておくビヤホール

千巖

村田けん一

三浦敬光

守田啓子

瀧尻善英

雄岳

菊池

小野五郎

三浦清雪

悠 とし子

葉 閑女選

成田我楽

俵谷酔光

春の穴覗いた先に地獄絵図

凖一郎の絵巻から翔ぶ白い鳩

この赤は吾が身削った血の色だ

つくづくと戦火の絶えぬ星である

吉田吹喜

佐藤岳俊

八木田幸子

小野五郎

工藤青夏

福田文音

内山孤遊

綿谷夕雨子

尾形せいじ

客引きがとても上手な地獄図絵

折り本の落款に津軽訛りがある

古事記絵巻ネブタばやしが背で鳴る

炎立つ絵巻のロマン版に込め

席題「関野凖一郎『古事記絵巻

』」

家系図の線は炎でできている

菊池

北山まみどり

まきこ

豊巻つくし

徳田ひろ子

井上健蔵

木村美映

燃えて燃えて黒い妖怪人になる

赤赤とわたしのなかの地獄絵図

第三楽章火の鳥解き放つ

絵巻物炎の意味を突きつける

古事記伝和紙の継目にある祈り

地獄図のむこうゲルニカが見える

野心らんらん燃え尽きますか飛びますか

まるめろの隣りで地獄のドアが開く

【秀句

古事記絵巻森が深くて出られない

絵巻閉じれば千年桜に薪能

仮の世に風の頁と火の頁

古事記絵巻のまん中辺にある宇宙

熊谷冬鼓

徳田ひろ子

むさし

守田啓子

野口一滴

むさし

まきこ

Page 4: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

凖一郎の小窓明るい顔をする

燃えてしまった金子兜太という鯨

【佳作

席題「関野凖一郎『古事記絵巻

』」

遠吠えが続き狼煙がまたあがる

国訛ふっと兜の緒が緩む

わたくしをけずりどうわになってゆく

仮の世に風の頁と火の頁

妖怪がくれた幸せ・不幸せ

みちのくへ志功・関野の縄電車

菊池

徳田ひろ子

春の穴覗いた先に地獄絵図

出雲の地湧き立つ雲に鱗見る

地獄図のむこうゲルニカが見える

小野五郎

心してアメノウズメをディスコへ誘う

【秀句

相馬そよ

北山まみどり

三浦蒼鬼

ヒロシマを悼み八月夕焼ける

情念の焔ドラマの幕が開く

小野五郎

渡辺敏子

成田我楽

大黒谷サチエ

慌てずに救急ですか火事ですか

忘却を許さぬ美しい戦

ゆっくりとあなたと話出来ますか

シナベニア赤い吹雪きを巻き起こす

地獄絵巻のあっかあさんだあっわたしだ

地獄図に描き入れておくビヤホール

天皇退位絵巻は次代へ延びてゆく

葬列の後ろ天女が舞い狂う

両面の鏡にヴィナスと師を潜め

ゲラ刷りのまんま生きてる誤字脱字

家系図の線は炎でできている

骨壺に極楽入れておいたのに

渡邊こあき

千葉風樹

たぎるものまだある背表紙のゆがみ

落城へおんなはなおも紅を塗る

第三楽章火の鳥解き放つ

ュプールの切れたあたりが羽化の刻

地獄にも極楽にもある曲線美

墨色にまぎれて木造船が着く

むさし

守田啓子

大黒谷サチエ

野心らんらん燃え尽きますか飛びますか

背骨燃ゆ祈る形で彫る昭和

阿部治幸

佐藤寿見子

千葉かほる

須藤しんのすけ

濱山哲也

守田啓子

わたくしを待

っててくれてありがとう

戦争も平和も刻む彫刻刀

短命県で男ひとりが燃えている

多色摺りされて女が波になる

【特選

少年よ版画の黴を嗅ぎなさい

稲見則彦

綿谷夕雨子

吉田吹喜

稲見則彦

香田龍馬

三浦敬光選

夏草ふぶき

香田龍馬

鈴木みさを

瀧尻善英

野沢省悟

夏草ふぶき

千島鉄男

佐藤雅秀

俵谷酔光

栗橋くにお

栗橋くにお

雄岳

滋野さち

Page 5: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

そだねーの線をストーンが滑り出す

宿題「線

【佳作

人間だもの線引きされりゃ燃えてくる

人人人―

G線上のアリア

手の届く位置に寄り添う平行線

淡雪に似た撫で肩の母でした

三浦清雪

野呂尚史

雄岳

井上健蔵

わたくしは引いていません境界線

手話の指ひかりの糸を紡ぎ合う

この恋の最前線はこぬか雨

船水

守田啓子

俵谷酔光

柴田重虎

佐藤寿見子

コードレス身軽さ武器に広まって

マタニティーラインとわかる春が来た

桃が咲く金子兜太の顎の線

一心不乱やっぱり曲がる僕の畝

点と線つないで星座語り出す

主婦の顔はずしローカル線の旅

わたくしの人生に似る山手線

コンパスで直線を引く財務省

ストローで吸い込む春の地平線

白線と黄色い帽子春ですネ

電線をたどってゆけば仮想通貨

五線譜で和音になっていく夫婦

幾何学を蜘蛛に教えたのは誰だ

三月の感情線の乱高下

速くても駅まで遠い新幹線

日付変更線クジラ明日の潮を吹く

【秀句

ダリの髭人生なんてこんなもの

消しゴムで消せない線が紛争に

【特選

田沢恒坊

閑女

対馬閑子

俵谷酔光

靴箱で線にならない地図ばかり

千葉風樹

田沢恒坊

工藤青夏

井上健蔵

藤村俊雄

今泉敏雄

吉田吹喜

尾形せいじ

ハッピーな生命線があらっ伸びた

涙線が崩壊正気ではいれぬ

古稀近し感情線が弾んでる

物言わぬ視線に育てられている

三日月の眉を描いて羽化します

ゆり起こす財運線も福耳も

曲線が淫靡でマティスの足の裏

粛粛と平行線で共白髪

ゴールまで生きる道程あみだくじ

胸のなか寒冷前線停帯中

回線を手放すAI

の情死

ほうれい線消すとの

っぺらぼうになる

福田文音選

野口一滴

三浦清雪

沢田百合子

徳田ひろ子

北山まみどり

内村ゆめ

夏草ふぶき

奥崎倭子

里村みつこ

佐藤雅秀

悠 とし子

里村みつこ

須藤しんのすけ

千島鉄男

野沢省悟

濱山哲也

相馬そよ

瀧尻善英

Page 6: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

目に見えぬ線が火種を抱いている

わたくしは引いていません境界線

補助線二本足して人間らしくなる

回線を手放すAI

の情死

点々と人生歩けば線になる

直線の匂い辿ってきた夕陽

線条痕背負った父の日なたぼこ

桃が咲く金子兜太の顎の線

人人人―

G線の上のアリア

ふらり来て北斎の浪おいてゆく

フリーハンドで描いた満月本気です

絵コンテの輪郭線が温かい

十八歳線を引かねばなりません

吉田吹喜

八木田幸子

白川

佐藤古拙

沢田百合子

柳田健二

俵谷酔光

藤村俊雄

野沢省悟

辻口風来坊

千島鉄男

佐藤

まきこ

木村美映

ラインから外れ私を取り戻す 宿

題「線

【佳作

一心不乱やっぱり曲がる僕の畝

俵谷酔光

一本の線を辿れば母がいる

暗転の舞台きりとり線の月

なだらかな稜線泣いたのはきのう

自慢したボディラインの影もない

ネグリジ

ェにする女と妻の境界で

直線でいるのも少し疲れます

回帰線越えてナイフは砂の中

まっすぐにと思えばたいていまがるもの

稜線を越えれば見えてくる明日

三日月の眉を描いて羽化します

淡雪に似た撫で肩の母でした

ストローで吸い込む春の地平線

まきこ

コンパスで直線を引く財務省

試着室鏡が少し歪んでる

裸婦の絵に乱れたままの心電図

ほうれい線消すとのっぺらぼうになる

地下鉄で青森駅へ辿り着く

白川

稲見則彦

千葉かほる

田沢恒坊

佐藤岳俊

死生観だけは定規で描けません

小野五郎選

幾何学を蜘蛛に教えたのは誰だ

この恋の最前線はこぬか雨

【秀句

君の影吃水線を越えてくる

取り消し線が折り重なっている背中

涙線をこわして逢いに行くのです

【特選

手話の指ひかりの糸を紡ぎ合う

三浦蒼鬼

工藤青夏

北山まみどり

むさし

石澤はる子

須藤しんのすけ

井上健蔵

熊谷冬鼓

三浦蒼鬼

石澤はる子

佐藤岳俊

熊谷冬鼓

成田我楽

守田啓子

徳田ひろ子

井上健蔵

佐藤寿見子

千島鉄男

Page 7: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

田沢恒坊

火葬場が見えたら終わる罰ゲーム

生き残ってみたら一人きりなんて

対馬閑子

辻口風来坊

豊巻つくし

松山芳生

勝者にはドナーカードを差し上げる

【佳作

弱点をさらし主導権を握る

綿谷夕雨子

野口一滴

玉子ポン核シ

ェルターの住みごこち

恋猫の婚活命がけである

裏方の貌して実はボスである

アナログはひょうたん島で生き延びる

フクシマの桜が越える千の闇

サバイバル核兵器など持ちたいね

変り身の速い男のサバイバル

光る海ウミガメの子は旅に出る

叱られた犬が尻尾を振っている

薄氷を幾度も割って生きてきた

大地這う亡父の原画の農を継ぐ

サバイバルのルールブックは捨てなさい

人類にレッドカードが貼られる日

天国と地獄の交差点にいる

生き残るためにわが身を雪囲い

雑草は死んだ振りして生き延びる

非正規ですたんぽぽすみれ食べつくす

IAの岸辺に打ち上げられている

椅子取りのゲームに続く肩叩き

雄叫びを上げてジョーカー握り締め

熊谷冬鼓

沢田百合子

稲見則彦

井上健蔵

佐藤岳俊

まきこ

熊谷冬鼓

鈴木みさを

鈴木みさを

宿題「サバイバル

」神

千巖

対馬閑子

北山まみどり

佐藤

渡邊こあき

千島鉄男

千島鉄男

吉田吹喜

三浦蒼鬼

瀧尻善英

雄岳

守田啓子

引きこもり2階に浮かぶ無人島

蹴り落すガリバーの靴はいて行く

生き残るための影武者募集中

僕だけが生存者です四コマ目

サバイバルナイフが刺したのは夕陽

シナモンを振りかけて墓じまいする

濱山哲也

渡辺敏子

佐藤寿見子

悠 とし子選

サバイバル終えて湯たんぽ抱いている

一億の精子とサバイバルゲーム中

徳田ひろ子

運命の出逢いだったわ裏起毛

バンパイアになるかゾンビかサバイバル

生き残るために毛穴は閉じておく

吉田吹喜

阿部治幸

まきこ

【秀句

ビーカーに僕の精子が生き残る

納豆菌ハマヤマテツヤピロリ菌

ゲーム機の中に柩が積んである

【特選

サバイバル敵と同舟心療科

村田けん一

井上健蔵

三浦敬光

阿部治幸

Page 8: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

納豆菌ハマヤマテツヤピロリ菌

【佳作

津波くる婆ばお教えたてんでんご

仙人かやまんばになる選択肢

頂点で勝者食べてる握り飯

宿題「サバイバル

」石澤はる子

尾形せいじ

信長が必ず遊びに来いと言う

叱られた犬が尻尾を振っている

笑顔の裏秘かに爪を研いでいる

悲喜劇を織り混ぜサバイバーの町

三浦清雪

引きこもり2階に浮かぶ無人島

光る海ウミガメの子は旅に出る

勝ち組の視野に群れてる獣偏

虹を描くためにカルテの裏がある

九条の危機です僕は死ねません

ビーナスの緩んだ脇腹に沈む

生きている全ての人がエリートだ

非正規ですたんぽぽすみれ食べつくす

害虫も害獣も皆命懸け

七人の敵を倒して帰宅する

白旗を上げて静かなサバイバル

蟻地獄妻から細い命綱

喪の和服誂えているサバイバル

一生を終えれば皆が金メダル

三浦蒼鬼

ミニスカに見惚れて殿は自損事故

吉見恵子

奥崎倭子

稲見則彦

天国と地獄の交差点にいる

小野五郎

勝治

千葉風樹

井上健蔵

香田龍馬

高橋りょう

大黒谷サチエ

野沢省悟

濱山哲也

原口健二

綿谷夕雨子

相馬そよ

田沢恒坊

寺田無垢

【秀句

ゲーム機の中に柩が積んである

原液のような目をして生き残る

癌二つ越えてシクシク股関節

逃亡の泥水を汲むドロップ缶

火葬場が見えたら終わる罰ゲーム

僕だけが生存者です四コマ目

阿部治幸選

有事にもマタギがさばく熊を食う

生き残るために毛穴は閉じておく

裏方の貌して実はボスである

地球の最後にはウィルスになるつもり

【特選

電車でもいいよと産まれた女の子

一億の精子とサバイバルゲーム中

生き残ってみたら一人きりなんて

動物や樹木と会話できますの

それからの白雪姫は救急医

勝治

須藤しんのすけ

小野五郎

北山まみどり

沢田百合子

むさし

千葉風樹

千島鉄男

三浦敬光

渡辺敏子

佐藤雅秀

まきこ

三橋

徳田ひろ子

吉田吹喜

辻口風来坊

野沢省悟

瀧尻善英

Page 9: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

爺ちゃんが今日もいそいそメイドカフ

里帰り母の顔見てまた来ます

小山洋子

吉見恵子

気が置けぬ友と会う日の足の裏

桃ですか桜ですかと風に乗る

いそいそと春の陽春の時刻表

柴田重虎

三浦清雪

宿題「いそいそ

【佳作

くちびるにそっと止まった名残り雪

指切りのかたちで雪の像になる

さあおいでプロポーズならイエスです

尾形せいじ

過去現在未来もボクは蟻だろう

いそいそと没句覚悟で出る句会

波長合い心の奥に同居する

歯磨いてユニクロ着たらまた磨き

八木田幸子

佐々木かもめ

濱山哲也

野口一滴

小山田英子

まきこ

辻口風来坊

三月の空がいそいそし始める

いそいそと開く火宅の庭の花

タイム・イズ・マネーに尻を叩かれる

いそいそと帰って邪魔にされている

いそいそと前に出て行く自己顕示

大黒谷サチエ

吹雪でもいそいそと行く忘年会

宴会と聞けば浮き立つ僕の足

ハンカチもいそいそきょうはアルマーニ

またひとつ殻脱ぎすてて蝶が舞う

佐藤

八木田幸子

むさし

綿谷夕雨子

渡辺敏子

藤村俊雄

徳田ひろ子

吉田吹喜

逢いにゆく新選組に斬られても

改札の向こうで待っているリボン

廃駅に立ってる金のたまごたち

靴下の柄がちぐはぐ初デート

面会にいそいそしてる老父を見た

リボンかけておくれよ僕のこの気持ち

何食わぬ顔で掘ってる落とし穴

いつになく愛とか小椋佳を聴く

家事テキパキ句会女子会ディナー

ョー

逢いに行く心はすでに毬になる

君だけに見せる笑顔で逢いにゆく

まだ恋の仮想通貨が少しある

駄菓子屋へ握る小銭が汗をかく

リハビリ棟イケメンくんが待

っている

化粧してから仏壇を購いに行く

【特選

結婚も離婚もいそいそ届け出る

豊巻つくし

成田我楽

石澤はる子

【秀句

いい女と春で朧で駆け落ちだ

イムジンの泥舟に乗るチンドン屋

沢田百合子

吉田吹喜

千島鉄男

栗橋くにお

木村美映

徳田ひろ子

野口一滴

北山まみどり

佐藤寿見子選

千葉風樹

井上健蔵

佐藤古拙

井上健蔵

雄岳

俵谷酔光

対馬閑子

Page 10: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

春は曙いそいそ靴の紐むすぶ

渡辺敏子

佐藤古拙

村田けん一

靴下の柄がちぐはぐ初デート

重心を少し浮かせて春の靴

いそいそと出かけて行ってそれっきり

改札の向こうで待っているリボン

君だけに見せる笑顔で逢いにゆく

春色のタオルと旅をしています

逢引きの三面鏡のいそがしさ

設計図パズルの如く間取り組む

宿題「いそいそ

【佳作

工藤たか子

福田文音

弥生三月肩に翼が生えてきた

途中下車蕎麦屋昼酒花吹雪

トランプが金正恩に会いに行く

爺ちゃんが今日もいそいそメイドカフ

西瓜はある魔法使いを待っている

福寿草見つけた春の絵を描こう

松山芳生

沢田百合子

三浦敬光

三浦清雪

千葉かほる

趣味の会出かける靴がよく弾む

寺田無垢

小野五郎

佐藤雅秀

佐藤

俵谷酔光

木村美映

閑女

歯磨いてユニクロ着たらまた磨き

本降りになった熱燗つけようか

佐藤古拙

熊谷冬鼓

北山まみどり

石澤はる子

ためらいつつもいそいそ入るラブホテル

廃駅に立ってる金のたまごたち

終活は済んだし体重測ったし

化粧してから仏壇を購いに行く

猫の耳中年の恋知っている

徘徊の父が目指した秘密基地

小憎らし急ぐ素振りを見せぬ猫

ああ老化あっという間に欠ける月

ッドタイミング仕立ておろしで逢いに行く

守田啓子

指切りのかたちで雪の像になる

告知した時計の針が速すぎる

工藤青夏

渡邊寂隆

野沢省悟

綿谷夕雨子

福田文音

千葉風樹

三浦蒼鬼

田沢恒坊選

楢山へこころ急くまま旅仕度

いそいそと出掛けた先にケアハウス

【特選

いそいそと帰り仕度をする男

【秀句

靴を買

ったら旅行カバンがついてきた

年金を呑み込んでゆくパチンコ屋

逢いにゆく新選組に斬られても

八木田幸子

雄岳

太田

鈴木貴子

三浦蒼鬼

千島鉄男

小野五郎

千巖

井上健蔵

駄菓子屋へ握る小銭が汗をかく

いそいそと角巻纏う冬の月

三浦敬光

一年に一度は揺れる天の川

速足で歌えば爆ぜるポップコーン

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三浦敬光

渡邊寂隆

佐藤

相馬そよ

渡辺敏子

成田我楽

沢田百合子

渡邊こあき

訳有りも住めば都と負け惜しみ

部屋さがし日当りよりもウォシ

ュレット

傷んでる心を癒す割れガラス

曖昧という名の住所持たされる

少年のポケットに住む好奇心

本に埋もれて君の隣りで眠ります

リモコンが無かった頃の自在鉤

非表示の番地に届くわらび餅

人情も塩分も濃い県に住む

代々の秘密ごにょごにょ眠る墓

縄文の暮らしを想う土器の数

ワ道産子津軽の土とケヤグです

背伸びせず住めと教える蟹の穴

耳に住む無口な父のひとりごと

薪焚いて古老釜めし食っている

吉田吹喜

佐藤雅秀

綿谷夕雨子

来世から空き家のチラシ降りてくる

色褪せた日差しが落ちる空の部屋

尾形せいじ

内山孤遊

野口一滴

寺田無垢

【秀句

右足は泥に左は水に住む

まだ妻が敵か味方か分からない

豊巻つくし

松山芳生

夏草ふぶき

里村みつこ

【特選

築百年インスタ映えの小屋に住む

井伏鱒二の山椒魚と侘び住い

美熟女を捜して月へ転居する

ホスピスの窓で埴輪になっている

ゴム長に住みついている白鳥座

暗闇に住むと影絵が欲しくなる

若者はシ

ェアハウス老人はグルー

プホー

ふるさとに戻れぬ人事りんご買う

表札に「するめのみみ

」と書いておく

勇気ある嫁が進んで同居する

嫉妬という字には女が同居する

家系図のトーナメントで米を研ぐ

遺産相続竹久夢二的逢瀬

パソコンと椅子があるのは「

瓦礫の間

佐々木かもめ

綿谷夕雨子

阿部治幸

渡邊こあき

三浦敬光

内村ゆめ選

てのひらの豆腐のような家に住む

三世代住んだ廃墟を照らす月

宿題「住む

勝治

【佳作

達磨さんも泣いて転んで現在地

皮肉屋の小鬼一匹住まわせる

井上健蔵

小野五郎

むさし

瀧尻善英

原口健二

佐藤岳俊

フクシマに点してほしい家族の灯

須藤しんのすけ

千島鉄男

むさし

寺田無垢

思い出をきれいに刻む解体屋

濱山哲也

栗橋くにお

悠 とし子

木村美映

Page 12: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

味噌汁のお椀のなかの小宇宙

少年のポケットに住む好奇心

極寒も住めば都のパラダイス

カマクラに住んでいますと言っている

靴下の穴がふたりの現住所

嫉妬という字には女が同居する

ブラッドムーン血で血を洗う星に住む

桃缶が住処遊びにいらっしゃい

鳩尾に溶けない雪を住まわせる

まだ妻が敵か味方か分からない

モナリザの瞳の主は魔女かもね

結び目から転居したいという絆

縄文の暮らしを想う土器の数

弥陀の手にはらはら落ちる現住所

三畳の屋根裏部屋がユートピア

夕暮れのヤドカリですが元気です

居候の貧乏神はよく笑う

銀河系地球に住んで津軽弁

【佳作

ホスピスの窓で埴輪になっている

暗闇に住むと影絵が欲しくなる

パソコンと椅子があるのは「瓦礫の間

野沢省悟

濱山哲也

豊巻つくし

千葉風樹

成田我楽

徳田ひろ子

三浦蒼鬼

稲見則彦

むさし

閑女

守田啓子

千島鉄男

阿部治幸

八木田幸子

佐藤

瀧尻善英

対馬閑子

悠 とし子

豊巻つくし

濱山哲也

宿題「住む

鈴木みさを

千代紙の鶴と寝ている母である

さいころを投げてみたくて隠居する

住み慣れたこの地を離れたくないが

【秀句

羅刹住む家の芝生も青かった

【特選

大雪原住み着いたのは蝉時雨

来世から空き家のチラシ降りてくる

築百年インスタ映えの小屋に住む

何もない町に住んでる「

そだねー

」パワー

達磨さんも泣いて転んで現在地

表札に「するめのみみ

」と書いておく

てのひらの豆腐のような家に住む

風と住む港の見える丘の上

井伏鱒二の山椒魚と侘び住い

二世帯は付度あっての穏やかさ

綿谷夕雨子

吉田吹喜

思い出をきれいに刻む解体屋

野口一滴選

三世代住んだ廃墟を照らす月

代々の秘密ごにょごにょ眠る墓

千島鉄男

八木田幸子

成田我楽

むさし

今泉敏雄

渡辺敏子

佐藤雅秀

三浦敬光

徳田ひろ子

尾形せいじ

高橋りょう

木村美映

栗橋くにお

大黒谷サチエ

船水

松山芳生

曖昧という名の住所持たされる

Page 13: 川柳 第十六回...第十六回 青森県近代文学館 川柳 大 会入選句集 青森県近代文学館 第 十 六 回 青 森 県 近 代 文 学 館 川 柳 大 会 日

参加者(受付順)

閑女

工藤たか子

奥崎倭子

小山田英子

佐々木博子

栗橋くにお

佐藤岳俊

佐藤ヨシミ

三浦清雪

岩崎眞里子

阿部治幸

高橋りょう

野呂尚史

佐藤

野口一滴

徳田ひろ子

豊卷つくし

佐藤古拙

小野五郎

吉田吹喜

八木田幸子

渡邊寂隆

とし子

鈴木みさを

白川

今泉敏雄

福田文音

夏草ふぶき

勝治

対馬閑子

野沢省悟

藤村俊雄

佐々木かもめ

守田啓子

佐藤寿見子

千葉かほる

太田

木村美映

滋野さち

寺田無垢

むさし

千巖

松山芳生

佐藤

瀧尻善英

村田けん一

雄岳

相馬そよ

工藤まさひろ

村上あつこ

菊池

沢田百合子

まきこ

井上健蔵

内村ゆめ

船水

原口健二

香田龍馬

第十六回

青森県近代文学館

濱山哲也

内山孤遊

小山洋子

村井規子

川柳大会入選句集

鈴木貴子

工藤青夏

俵谷酔光

成田我楽

里村みつこ

稲見則彦

柳田健二

佐藤雅秀

発行日

平成三十年三月二十三日

渡辺敏子

辻口風来坊

千葉風樹

青森県立図書館

綿谷夕雨子

青山英次

三浦蒼鬼

青森県近代文学館

村上秋善

千島鉄男

大黒谷サチエ

〒〇三〇ー〇一八四

石澤はる子

柴田重虎

岩崎雪洲

青森市荒川字藤戸一一九の七

三橋

尾形せいじ

北山まみどり

TEL

〇一七(七三九)二五七五

三浦敬光

熊谷冬鼓

須藤しんのすけ

田沢恒坊

渡邊こあき

吉見恵子

禁無断転載

編集・

発行