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1章 植物としての特徴 11 10 Boehmeria nivea 11 12 15 20 10 60 便Broussonetia kazinoki Broussonetia papyrifera Broussonetia kaempferi kazinoki 株からの萌芽 卵形の葉が互生するコウゾ 本文.indd 10-11 2018/05/07 14:48

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1章 植物としての特徴

11 10

の周囲に生えるカラムシ(ク

サマオ、チョマ、Boehm

eria

nivea

)も、コウゾの葉に似て

いることがあるが、カラムシ

は葉の裏に白銀色の細毛が密

生しており、コウゾよりもか

なり白さが強いことから容易

に判別できる。

コウゾの葉は11月から12月

にかけて落葉し、3〜4月に

萌芽する。葉や枝などの傷か

ら出てくる白い液体は、皮膚に付着すると痒みを生じることが

ある。

コウゾとカジノキは雌雄異株であるが、カジノキはコウゾよ

りも葉が大きく、葉の裏や葉柄に短毛が密生しているほか、葉

柄が2〜15㎝と長いことがその違いである。ヒメコウゾは雌雄

同株であり、コウゾよりも葉が小さく、葉柄も1〜2㎝と短い。

1〜1・5㎝の球形の集合果は6月頃に赤く熟し、甘みはあ

るものの、ややざらつきがあり美味ではない。種子も形成され

るが、コウゾは通常、毎年枝を収穫するため、採種することは

稀である。

コウゾやヒメコウゾについては、樹高が約2〜5m、幹の直

径は最大で20㎝ほどになることもあり、カジノキについては直

立し、樹高は10m、幹の直径は60㎝ほどにまで大きくなること

がある。

●分類

コウゾ、ヒメコウゾ、カジノキ、ツルコウゾのいずれも、ク

ワ科コウゾ属に属する。コウゾについては、カナメやタオリ、

アカソ、アオソ、シロソ、メダカ、マソ、クロカジ、タカカジ、

若山コウゾ、大だ

子ご(那な

須す

)コウゾなどさまざまな品種に分かれて

いる。これらの品種は、葉の形や枝の伸び方、樹皮の色などに

それぞれ特徴があるものの、生育の状況や樹齢などによってそ

の特徴が明確に現われないことがあり、ここでは便宜上、品種

としているが、分類が困難であることも多い。

いくつかの品種の大まかな特徴を挙げると、カナメは葉柄が

長く、葉は卵形もしくは2、3の浅い切れ込みがあり、樹皮は

ややゴツゴツとした橙と

褐かっ

色しょく

で脇芽は少なく、枝が真っ直ぐ伸

び、太さは2〜8㎝と太めであることが多い。

タオリはカナメに似るが、やや切れ込みの深い葉が多いほか、

地面を這うように枝を出すことがある。

アカソは葉の切れ込みが深く、樹皮は薄く光沢を帯びた赤茶

色であり、脇芽が多く、枝はカクカクと細かい曲がりがあり、

太さは1〜4㎝程度と細めである。

コウゾ(楮)

●学名

コウゾに関連する研究の多くは、洋紙の流入に伴い、和紙や

工芸作物としてのコウゾの重要度が低下し始める1950年代

以前に行なわれたものが多い。コウゾに関する研究および分類

に関する主要な研究は、倉田益二郎氏や中條幸氏などが最後で

ある。

とくに倉田氏は、既存の研究でのコウゾの分類をまとめるな

かで、その混乱と今後の研究の必要性を訴えている。その後は、

渡邊高志氏らなどによる分類の試みがあるものの、コウゾの分

類について結論が出されているわけではない。

これまでの研究では、ヒメコウゾ(Broussonetia kazinoki

)を

コウゾとして分類することがあるほか、ヒメコウゾとカジノキ

(Broussonetia papyrifera

)の交雑種とする説もある。このほか、

コウゾの名前が付くものに、ツルコウゾ(Broussonetia

kaempferi

)がある。ヒメコウゾの種小名がkazinoki

となってい

るのは、命名者であるシーボルトがヒメコウゾとカジノキを混

同したためである。

コウゾを1つの種とするか、交雑種とするかの混乱について

も、形態的な判別によって分類されてきたことが原因である。

コウゾは後述するように、樹齢や生育の状況、品種によって葉

型などが大きく変わるため、形態を重視した分類が難しいとい

う側面がある。

また地域によって、コウゾの呼び方はさまざまであり、カジ、

カズ、カゾ、カゴ、カウズ、カジクサ、カミクサ、ソ、カミソ

などがある。このほか、地域によってはウーカジ(沖縄)、オッ

カズ(群馬)、カミギ(三重)、キガミ(福井・岐阜)、カンソー(静

岡)などの呼び名もある。

●形状

葉は互生で、卵形のものや麻葉状に深い切れ込みが入ったも

のなど、品種によって形状が異なる。樹齢が上がるにしたがっ

て小型で切れ込みが浅い葉が多くなり、時に卵形となる。葉は

薄緑色であり、

形状はクワなど

に似ているが、

クワほど葉に光

沢がないほか、

葉の裏に短毛が

多いという特徴

がある。コウゾ

株からの萌芽

卵形の葉が互生するコウゾ

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2章 和紙─植物繊維利用の歴史

手で紙を漉いてみる

⑨左は叩解前のコウゾ繊維。右は叩解後のもの

⑥ ちり取り。節や汚れなどを丁寧に取り除く⑦ 叩解。繊維を1cmほどにちぎってから叩きほぐす

⑧ サッと水に散るくらいになれば完成

●ちり取り・叩解

コウゾの靭皮繊維を手で漉いて紙にす

るまでの、基本的な作業の流れを写真

で紹介します。

(構成・解説:冨樫朗/写真・小倉隆人)

① 川晒し。原料の黒皮を水に1日晒し、水を吸わせる

② 黒皮取り。黒皮と甘皮の一部をこそげ取り、白皮にする

③ 煮熟。鍋に水とソーダ灰を入れて白皮を3時間煮る

④ 手でちぎれるようになったら火を止め、そのまま冷ます

⑤ 水晒し。一晩水に晒してソーダ灰を洗い流す

●皮を剥いでから晒しまで

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