20
1 6 6 B M 8 0 4 0 G ◎南方 保文 1) 、竹崎 陽子 1) 、福田 1) 株式会社エスアールエル 関西ラボラトリー 1) 【はじめに】当施設では長年生化学の分析装置として日立 7700 DDPP 型(株式会社日立ハイテクフィールディング) を使用していたが、老朽化に伴い、 BM8040G(日本電子株 式会社)に測定機器の変更を行った。生化学の分析装置を 切り替えた経験がなく測定機器変更に非常に苦労したので その内容を報告する。 【変更に向けて】2017 2 月変更に向け、2016 11 月か らシステム開発を開始した。まず、システム開発及び運用 を決めるにあたって何をすべきかを考えた。①自動再検を 実施するか否か。②血清情報(乳び、溶血、ビリルビン) の取得方法。 BM8040G はまず始めに電解質の初再検値の 結果が検査システムに反映され、後に生化学の結果値およ び血清情報の結果が反映される仕様であった。日立 7700 は大きく仕様が違うためひと工夫が必要であった。③その 他機器の違いによるシステム・運用面の違いを中心にシス テム担当者と話し合いを重ねた。 【変更後】日立 7700 は、 D モジュールでの試薬ロスが非 常に大きかったが、解消されコスト面が改善されることと なった。日立 7700 稼働時と同様に自動再検を採用するこ ととしたが、自動再検による検体の待ち時間は殆ど感じら れず、検体の処理能力は向上し、報告の遅延が減少した。 また、日々のルーチンでは、カルシウムのデータが安定し ない事例に遭遇したが、カルシウムの試薬が反応セルに付 着することを初めて体験した。データの傾向から試薬のプ ールを実施しない項目を決めた。当施設の 1 日の検体数か ら電極のライン洗浄は週 2 回、撹拌棒の浸け置き洗浄を月 1 回実施しなければならなくなり、メンテナンスの回数が 増えることとなった。 【まとめ】 BM8040G に切り替えたことにより、長年懸念事 項であったコスト面が改善され、処理能力も向上し報告の 遅延が減少した。まだ使用し始めて間もないためトラブル 対応、異常検体の遭遇などこれから色々なことを経験し、 より精度と経験を深めていきたい。

1 6 6 - c-linkage.co.jp · や、不規則抗体による反応も疑い、 37 ℃加温や、再検試薬 と同社の不規則抗体用試薬での反応を確認したが、すべて

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166 当施設における BM8040G を用いた運用

◎南方 保文 1 )、 竹崎 陽子 1 )、 福 田 純 1 )

株 式 会 社 エ ス ア ー ル エ ル 関 西 ラ ボ ラ ト リ ー 1 )

【はじめに】当施設では長年生化学の分析装置として 日立

77 00 D D PP 型(株式会社日立ハイテクフィールディング )

を使用していたが、老朽化に伴い、B M8 04 0 G(日本電子株

式会社)に測定機器の変更を行った。生化学の分析装置を

切り替えた経験がなく測定機器変更に非常に苦労したので

その内容を報告する。

【変更に向けて 】2 0 1 7 年 2 月変更に向け、2 0 1 6 年 11 月か

らシステム開発 を開始した。まず、システム開発 及び運用

を決めるにあたって何をすべきかを考えた。 ①自動再検を

実施するか否か。②血清情報 (乳び、溶血、ビリルビン)

の取得方法 。 B M 80 40 G はまず始めに 電解質の初再検値の

結果が検査システムに反映され 、後に生化学の結果値およ

び血清情報の結果が反映される仕様であった。日立 7 700 と

は大きく仕様が違うためひと工夫が必要であった 。③その

他機器の違いによる システム・運用面の違いを中心にシス

テム担当者と話し合いを重ねた。

【変更後】日立 7 70 0 は、 D モジュールでの試薬ロスが非

常に大きかったが、 解消されコスト面が 改善されることと

なった。日立 7 7 00 稼働時と同様に自動再検を採用するこ

ととしたが、自動再検による検体の待ち時間は 殆ど感じら

れず、検体の処理能力は向上し、報告の遅延が減少した 。

また、日々のルーチンでは、 カルシウムのデータが安定し

ない事例に遭遇したが、カルシウムの試薬が反応セルに付

着することを初めて体験した 。データの傾向から試薬のプ

ールを実施しない項目を決めた。当施設の 1 日の検体数 か

ら電極のライン洗浄は週 2 回、撹拌棒の浸け置き洗浄を月

1 回実施しなければならなくなり、メンテナンス の回数が

増えることとなった 。

【まとめ】B M 8 04 0 G に切り替えたことにより、長年懸念事

項であったコスト面が改善され、処理能力も向上し報告の

遅延が減少した。まだ使用し始めて間もないためトラブル

対応、異常検体の遭遇などこれから色々なことを経験し、

より精度と経験を深めていきたい。

167 AST/ALT 比の異常高値および低値事例について

◎平井和美 1 )、 姫 野美保 1 )、 有川正和 1 )、 藤本一満 1 ) ファルコバイオシステムズ 総合研究所 1 ) 日常検査において、A LT が基準範囲であるにも関わらず

A ST / A LT 比 が 極 端 に 高 値 あ る い は 低 値 を 示 す 検 体 に 遭 遇

する場合がある。今回、A ST / A LT 比( S / L 比)が 1 2 . 4 およ

び 0 . 1 を示した検体の A ST 値の真偽を確認した 。

【対象および方法】S / L 比高値検体(検体 A)は A ST 14 9U / L、

A LT 1 2U / L、S / L 比 12 . 4、S / L 比低値検体(検体 B)は A ST

1U /L、 A LT 13 U /L、 S / L 比 0 . 1 であった。尚、両検体とも

溶血、乳びはなかった。A S T 測定試薬は シカリキット A S T、

A LT はシカリキット A LT、分析装置 は LB O SPE C T0 0 8 と

し、希釈測定、ドライケミストリーによる測定、 還元剤処

理後測定などを行った。

【結果および考察】1.検体 A について:生食で 2、 4、 8

倍希釈測定したところ、 1 48、 1 4 8、 1 5 2 U/ L となり原倍値

と一致した。蛋白分画にて異常蛋白の有無をみたところ、

M 蛋白等の異常バンドはみられなかった。分析装置の反応

過程をみたところ、正常反応であった。ドライケミストリ

ーで測定したところ 3 4U / L と低値となった。A S T アイソザ

イム検査ではアノマリーバンドが見られた。 スプータゾル

還元剤で検体を前処理(検体 1 0:スプータゾル 1 の割合で

混合)後の測定値に変化はなかった。以上から検体 A の A ST

14 9U / L は、A ST に免疫グロブリンが結合し A S T 代謝が緩

慢となり高値を示したものと思われ る。

2.検体 B について:蛋白電気泳動では、γ位に M 蛋白を

認め、同定したところ I g M -κ型と I g M -λ型の 2 種の M 蛋

白であった。反応過程では、第 1 試薬分注直後から吸光度

の異常増加がみられた。スプータゾル還元剤による検体処

理後の値は 1 U / L から 1 4 U / L に上昇した。以上から 検体

B の 1 U / L は、測定試薬と M 蛋白が混ざることで濁りを発

生し、A S T 本来の減少反応が抑制され低値になったものと

思われる。【結語】 S / L 比が 1 0 を超えるような場合あるい

は 0 . 2 を下回るような場合は、A S T が M 蛋白の存在で正し

く測定できていない場合、免疫グロブリン結合型によって

代謝が緩慢となり血中に停滞し、病態を反映しないような

高値となる場合がある。

168 血液型検査試薬の非特異反応による異常反応症例

◎植西 泰子 1 )、 竹内 千恵子 1 )、 野口 隆志 1 )、 福 田 純 1 )

株式会社 エスアールエル 関西ラボラトリー 1 )

[はじめに ]

本年 4 月より、弊社では ABO 式血液型スクリーニング試

験を試験管法から、マイクロプレート法による自動化法に

変更した。検査は、 自動化法によるスクリーニングを実施

し再検査となった検体は従来の試薬を使用し、試験管法に

よる再検査を実施する運用を行っている。今回、スクリー

ニングの結果と再検査の結果に反応態度の乖離が認められ

た検体があり、判定に悩む事例があったので紹介する。

[原因究明 ]スクリーニングの結果は、表試験が 正常な A 型

の反応態度、裏試験の A1 血球に対する反応が( 0)、 B 血

球に対する反応が( 2+)であった。 A 型であったが、裏試

験の反応が弱かったことから再検対象となり、試験管法に

よる再検査を実施した。再検査の結果、A1 血球( 4+)B 血

球( 4+)O 血球( 4+)となり、スクリーニングの結果とは

異なる反応態度となった。乖離の原因として寒冷凝集反応

や、不規則抗体による反応も疑い、 37℃加温や、再検試薬

と同社の不規則抗体用試薬での反応を確認したが、すべて

の 試 薬 に 対 し て ( 4+) の 強 い 反 応 が 認 め ら れ た 。 そ こ で 、

スクリーニングで使用しているメーカーの裏試薬にて再検

査を行ったところ、 A1 血球( 0) B 血球( 3+)となり、初

検の反応態度が再現されたことから、再検用試薬に原因が

あるのではないかと推測した。

[原因考察 ]再検用試薬のメーカーに確 認をおこなったとこ

ろ、まれに、試薬溶液に使用している、抗菌薬(防腐剤)

などに対する抗体を持つ血液が、溶液と反応して、異常反

応を起こすケースがあるとのことであった。メーカーのア

ドバイスにより、血球試薬を生理食塩水にて数回洗浄後、

試験管法にて反応させたところ、A1 血球( 0)B 血球( 4+)

O 血球( 0)となり、通常の A 型の反応態度が確認された。

[結論 ]今回の検体は、ユーザー様で も同様の反応となり、

判定に悩まれ出検されたとのことで、結果報告後でのお問

い合わせ時に経緯をご説明することにより納得いただけた。

血清反応は、患者由来のさまざまな要因によって、非特異

反応がでる場合があることを改めて認識した事例であった。

169 自 動 輸 血 検 査 装 置 ID-GelStat i on と IH-500 の 不 規 則 抗 体 検 査 の 比 較 検 討

◎ 文 谷 美 之 1 )、 鈴 木 慎 也 1 )、 木 村 眞 明 1 )

㈱ 日 本 医 学 臨 床 検 査 研 究 所 地 域 検 査 部 ブ ラ ン チ ラ ボ 課 八 尾 ラ ボ 1 )

【 は じ め に 】 弊 社 八 尾 ラ ボ で は 、 不 規 則 抗 体 検 査 を は じ め

と す る 輸 血 関 連 検 査 を 2004 年 か ら 自 動 輸 血 検 査 装 置 オリン

パス社 製 ID -Ge lS ta t i o n( 以 下 ID -GS) で 実 施 し て き た 。

昨 年 、 バイオ・ ラッドラボラトリー株 式 会 社 製 IH -500( 以 下

IH -500 ) に 更 新 す る 事 と な り 、 両 機 種 の 不 規 則 抗 体 検

査 の 比 較 検 討 を 実 施 し た の で 報 告 す る 。

【 検 討 内 容 】 両 機 種 の 不 規 則 抗 体 検 査 の 陽 性 率 の 比 較

【 検 査 法 】 LISS-間 接 抗 グ ロ ブ リ ン 試 験 、 パ パ イ ン 2 段 法

【 調 査 期 間 】 ID -GS は 2015 年 9~ 12 月 、 IH -500 は 2016

年 9~ 12 月 の 期 間 の 測 定 結 果 を 比 較 し た 。

【 結 果 】 期 間 中 の 不 規 則 抗 体 検 査 総 数 は 、 ID -GS は 1441

件 、 IH -500 は 1385 件 中 、 陽 性 率 は ID -GS は 4% ( 特

異 性 あ り 1% ) IH -500 は 11% ( 特 異 性 あ り 3% ) で あ

っ た 。

【 考 察 】 ID -GS か ら IH -500 へ の 更 新 に よ り 、 操 作 性 、 処

理 能 力 は 大 幅 に 向 上 し た 。IH -500 で は 不 規 則 抗 体 ス ク リ

ー ニ ン グ の 陽 性 率 が 高 く 、 臨 床 的 意 義 の あ る 抗 体 の 検 出

率 も 2% 増 加 し た 。

一 方 で パ パ イ ン 2 段 法 の み の 陽 性 率 も 6% 上 昇 し , 同 定

試 験 を 実 施 す る 件 数 が 増 加 、 そ の 同 定 結 果 の 大 部 分 が 特

異 性 を 認 め な い 結 果 で あ っ た 。

パ パ イ ン 2 段 法 の み 陽 性 で 特 異 性 を 認 め な い 症 例 は 、臨

床 的 意 義 の 低 い 冷 式 抗 体 の 可 能 性 が 高 く 、 輸 血 に 際 し て

は 間 接 抗 グ ロ ブ リ ン 試 験 に よ る 交 差 適 合 試 験 を 実 施 し て

適 合 血 を 選 択 す る 事 と な る 。

【 結 語 】IH -500 は 操 作 性 、処 理 能 力 、感 度 に 優 れ た 分 析 機

で あ り 、 輸 血 検 査 に 有 用 な 分 析 機 で あ る 。 但 し 、 パ パ イ

ン 2 段 法 の 結 果 に つ い て は 、 今 後 、 メ ー カ ー に よ る 陽 性

率 改 善 を 期 待 し た い 。

連 絡 先 TEL:072 -928 -2128( 直 通 )

170 日数経過による血液像の細胞変性

◎古閑 天 1 )、 立 石 ユミ 1 )、 細田 陽子 1 )、 岡田 千里 1 )、 定 健次 1 )

株 式 会 社 L S I メ デ ィ エ ン ス 関 西 ラ ボ ラ ト リ ー 1 )

本文:【はじめに】当施設では、尼崎市内での委託検査を実

施しており 1 日で血液像約 500 検体の処理をしている。 通

常では、採血後すぐに測定するのだが、 委託業務という性

質上、すぐに検査を行うことが困難であり、時間経過した

検体を測定することも少なく ありません 。検査側は全ての

検体採血日を把握できていないのが現状である。そこで、

一定条件のもと、検体の保存日数をのばし、機械値 (Sysmex

社 XE5000)と鏡検値を比較し、データの乖離がどれくらい

あるのかを検討した。

【対象】再検対象検体 70 件、正常データの検体 30 件

【方法】血液像の依頼のあった検体より、施設の定めた基

準値内のもの、基準値外で好中球優位のもの、リンパ球優

位のもので、大きく 3 パターンに分けて検討を行った 。そ

れぞれの検体を 採血日より 1 日、 2 日、 3 日、 5 日、 7 日、

10 日に分け、機械で測定したデータと手引きした標本を作

成した。メイギムザ染色し、血液像熟練者と初心者で鏡検

を行いデータを比較することに した。

【結果】日数経過と共に機械値 (好中球↓リンパ球↑単球↓

好酸球↑ )鏡検値 (好中球優位 )(好中球↓リンパ球↑単球↓

好酸球↓ )鏡検値 (リンパ球優位 )(好中球やや↓リンパ球 →

単球↓好酸球↓ )となった。機械と鏡検 (成熟者、初心者 )と

もに変動の仕方に大きな差は見られなかったが、数値上で

は機械値の変動の方が顕著であった。このこと より、機械

では時間経過と共に好中球をリンパ球または好酸球として

とらえているのでは ないかと考えられる。

【まとめ】鏡検では細胞変性が進んだ状態のものでも細胞

変性による形態変化を慎重に観察しながら分類を行うこと

ができるが、機械では出来ないために鏡検と機械でのデー

タの乖離が見られた。日数経過した検体でも読めないこと

はないが、データのばらつき等が発生するの で出来る限 り、

採血後すぐの検査が望ましく、それが難しいようであれば

冷蔵での検体保管が望ましい。 また、新鮮血標本における

細胞の特徴を理解しておくことの重要性を再確認した。

《連絡先 06(6426)6360》

171 XN-Ser ies における血液像目視増加の原因究明

◎西端 修司 1) 小 川 和宏 1) 久川 聡 2)、 3) 田村 周二 4) 株式会社保健科学西日本 臨床支援部 1 ) 株式会社保健科学西日本 2 ) 株式会社保健科学研究所 3 ) 神戸市立医療センター西市民病院 4 )

【 は じ め に 】多 項 目 自 動 血 球 分 析 装 置・ X N - S e r i e s( シ ス メ ッ ク ス

社 ) で は 測 定 結 果 の 異 常 と し て 、 I P メ ッ セ ー ジ が 表 示 さ れ る 。 当

施 設 で は 、 I P メ ッ セ ー ジ が 発 生 し た 検 体 は 全 て 血 液 像 目 視 を 行 っ

て い る 。昨 年 末 に X E - 2 1 0 0 か ら X N - S e r i e s に 機 種 変 更 し 、血 液 像

の 目 視 率 が 5% 増 加 し た 。そ こ で 発 生 し た I P メ ッ セ ー ジ を 集 計 し 、

目 視 増 加 の 原 因 を 調 べ た 。【 測 定 機 器 及 び 対 象 】 測 定 機 器 は 、 X N -

3 0 0 0 と X N - 1 0 0 0 で 測 定 部 タ イ プ は X N - 1 0。対 象 は I P メ ッ セ ー ジ

が 発 生 し た 検 体 で 、 メ ッ セ ー ジ が 単 独 発 生 、 又 は 重 複 発 生 し た 件

数 を 集 計 し た 。 期 間 は 2 0 1 7 / 3 / 1~ 3 / 3 1 ( N= 1 0 0 6 )。

【 集 計 結 果 】 I P メ ッ セ ー ジ で 最 も 多 か っ た の は

「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」で あ り 、単 独 発 生 率 は 1 6 . 8% で あ っ た 。

こ の 結 果 か ら 、「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」 に つ い て 検 討 し た 。

【 検 討 ① 】「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」 が 単 独 発 生 し た 検 体 に つ い て

目 視 法 と 機 械 法 で 白 血 球 分 類 の 相 関 を 集 計 し た 。 相 関 は 概 ね 良 好

で あ っ た 。【検 討 ② 】両 機 に お け る「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」の 単 独

発 生 率 を 比 較 し た 。結 果 、 X N - 1 0 0 0 が 発 生 率 1 6 . 8% の 内 、約 8 割

を 占 め て い る 事 が 分 か っ た 。 測 定 機 器 に よ り 発 生 率 が 大 き く 異 な

る こ と か ら 機 器 の 異 常 を 推 定 し 、 メ ー カ ー に 確 認 を 依 頼 し た 。 そ

の 結 果 、X N - 1 0 0 0 試 薬( ラ イ ザ セ ル W D F)に 原 因 が あ る こ と が 判

明 し た 。問 題 の 試 薬 L o T を 変 更 後 、再 度「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」

の 発 生 率 を 集 計 し た 。 変 更 後 、 両 機 の 差 は 消 失 し 、 単 独 発 生 率 が

1 6 . 8% か ら 4% に 減 少 し た 。 最 終 的 に 血 液 像 目 視 率 は 以 前 の X E -

2 1 0 0 と ほ ぼ 同 等 の 結 果 と な っ た 。

【 考 察 】 X N - S e r i e s で は 白 血 球 分 類 で 使 用 す る 試 薬 ( ラ イ ザ セ ル

W D F) 中 の 界 面 活 性 剤 が 細 胞 形 態 を 変 化 さ せ る 。 さ ら に 蛍 光 色 素

が 細 胞 内 に 浸 透 し 、 核 酸 及 び 細 胞 小 器 官 を 染 色 し て い る 。 問 題 の

試 薬 L o T で は 界 面 活 性 剤 の 調 整 不 良 の 為 、 蛍 光 色 素 が 細 胞 内 に 浸

透 し や す く な り 側 方 蛍 光 が 高 く な っ た 。 そ の 結 果

「 B l a s t s / A b n _ Ly m p h o ?」 の 発 生 率 が 上 昇 し た と 考 え る 。

【 結 語 】 試 薬 L o T 変 更 後 、 当 施 設 で の X E - 2 1 0 0 と X N - S e r i e s の

目 視 率 は ほ ぼ 一 致 し た 。 機 器 導 入 か ら 日 が 浅 く 、 機 械 的 な 要 因 を

考 え た が 、 実 際 は 試 薬 に よ る 影 響 で あ る こ と が 分 か っ た 。 目 視 増

加 に 疑 問 を 感 じ 、 現 状 把 握 す る こ と で 原 因 を 究 明 す る こ と が で き

た 。 今 後 も 探 究 心 を 失 う こ と な く 業 務 に 取 り 組 ん で い き た い。

172 線 溶 系 検 査 デ ー タ の 偽 高 値 に お け る 対 応 ─ 検 体 採 取 時 の ア ー チ フ ァ ク ト が 原 因 と 思 わ れ る 測 定 結 果 に つ い て ─

◎ 藤 好 美 輝 1 )、 岡 本 美 咲 1 ) 、新 山 義 和 1 ) 、田 中 茂 1 ) 、田 辺 祐 也 1 ) 、鳩 宿 敏 彦 1 ) 、芦 田 千 恵 子 1 )

フ ァ ル コ バ イ オ シ ス テ ム ズ 総 合 研 究 所 1 )

[は じ め に ]線 溶 系 検 査 の 血 中 P -F D P や D ダ イ マ ー は 、播 種

性 血 管 内 凝 固 症 候 群 ( D IC )や 深 部 静 脈 血 栓 症 ( DV T )の 診 断

に 有 用 な 検 査 で あ る 。し か し 、検 査 デ ー タ の 中 に は 凝 固 検 体

や 採 血 手 技 が 原 因 の 偽 高 値 と 思 わ れ る 測 定 結 果 が あ る 。特

に 、検 査 セ ン タ ー で は 採 血 時 の 状 況 や 患 者 の 臨 床 状 態 が 判

ら な い 環 境 下 で 検 査 す る た め 異 常 高 値 に 困 惑 す る 事 が あ る 。

今 回 、我 々 は そ の 対 応 と し て 分 離 剤 入 り 採 血 管 ( 以 下 : A -1管 )に て 検 討 を 実 施 し た の で 報 告 す る 。 [使 用 機 器 及 び 試 薬 ]使 用 機 器 は C S 51 00 ( S ys m e x )、使 用 試 薬

は リ ア ス オ ー ト ・D ダ イ マ ー ネ オ ( S y s m e x ) 、リ ア ス オ ー ト

P - F DP ( S ys m e x )を 用 い た 。 [対 象 検 体 ]健 常 人 ボ ラ ン テ ィ ア 血 漿 及 び 血 清 、匿 名 化 し た

患 者 血 漿 及 び 血 清 5 0 検 体 用 い た 。 血 漿 用 採 血 管 は ク エ ン 酸 Na 加 採 血 管 (以 下 : C 管 )・E DTA -2 K 加 採 血 管 (以 下 : B 管 )・フ ッ 化 N a 加 採 血 管 (以 下 : F 管 )。血 清 用 採 血 管 は A - 1 管 ・分 離 剤 無 し 採 血 管 (以 下 : A - 2 管 )を用 い た 。 [検 討 内 容 ]① A - 1 管 ・A -2 管 ・B 管 ・C 管 ・F 管 で 採 血 し た P -FDP 値 、D ダ イ マ ー 値 の 比 較 ② 患 者 5 0 検 体 を 用 い て C 管

血 漿 と A -1 管 血 清 の P - F DP 値 、D ダ イ マ ー 値 の デ ー タ 比 較

③ C 管 血 漿 と A - 1 管 血 清 の P -F D P 値 、D ダ イ マ ー 値 の デ ー

タ 乖 離 要 因 の 検 証 [結 果 ]① 正 常 検 体 の 場 合 、各 採 血 管 で の

血 漿 お よ び A -1 管 で の 血 清 は P -F DP 値 、D ダ イ マ ー 値 と も

正 常 基 準 値 内 で ほ ぼ 同 等 の 結 果 で あ っ た 。A -2 管 の 血 清 で

は 、測 定 時 間 ま で の 時 間 経 過 と と も に P - F DP 値 、D ダ イ マ

ー 値 共 に 高 値 を 認 め た 。B ・C・F 管 で は ト ロ ン ビ ン を 添 加 し

凝 固 検 体 を 作 製 し 、血 清 を 測 定 し た 場 合 、B 管 の D ダ イ マ ー

値 以 外 は 時 間 経 過 に よ る 高 値 を 認 め た 。② C 管 と A - 1 管 の

デ ー タ 比 較 は 、P -F D P で は 19 / 50 検 体 の 約 4 割 で 同 等 の 結

果 を 認 め 、D ダ イ マ ー で は 2 9 / 5 0 検 体 の 約 6 割 で 同 等 の 結

果 を 認 め た 。③ A - 1 管 で は 採 血 か ら 遠 心 分 離 ま で の 時 間 が

長 く な る に つ れ P - F DP 値 の 高 値 を 認 め た が 、遠 心 分 離 後 で

は P - F DP 値 、D ダ イ マ ー 値 共 に 時 間 経 過 に よ る デ ー タ 変 動

は 認 め な か っ た 。 [考 察 ]凝 固 作 用 は 、ト ロ ン ビ ン に よ り フ ィ

ブ リ ノ ゲ ン か ら フ ィ ブ リ ン モ ノ マ ー ( 以 下 :F M) の 形 成 、さ

ら に F M が 重 合 し 不 安 定 フ ィ ブ リ ン が 形 成 さ れ 、Ⅹ Ⅲ 因 子

に て 安 定 化 フ ィ ブ リ ン が 形 成 さ れ る 。一 方 、線 溶 作 用 は フ ィ

ブ リ ン ク ロ ッ ト 上 で プ ラ ス ミ ン 活 性 に よ り フ ィ ブ リ ン 分 解

が 進 む 。分 離 剤 入 り A - 1 管 で 採 血 後 か ら 遠 心 分 離 ま で の 時

間 経 過 に お い て P - F DP 値 が 上 昇 す る の は 、フ ィ ブ リ ン ク ロ

ッ ト 上 で の フ ィ ブ リ ン 分 解 作 用 が 進 み 、分 解 産 物 と 残 存 す

る F M を 測 り 込 ん だ も の と 考 え ら れ る 。 遠 心 分 離 後 に P -FDP 値 の デ ー タ 変 動 を 認 め な い の は 、血 清 と 血 餅 が 分 離 剤

に よ り 接 し な い た め に フ ィ ブ リ ン 分 解 が 進 ま な い と 考 え ら

れ る 。D ダ イ マ ー 値 は 安 定 化 フ ィ ブ リ ン の 分 解 が 微 量 な た

め 、上 昇 し な か っ た と 考 え ら れ る 。 [ま と め ]採 血 手 技 等 の ア

ー チ フ ァ ク ト の 影 響 が 疑 わ れ る 線 溶 系 異 常 高 値 検 体 に 遭 遇

し た 場 合 、分 離 剤 入 り A - 1 管 の 測 定 は デ ー タ を 判 断 す る 上

で 参 考 に な り 、患 者 情 報 の 少 な い 検 査 セ ン タ ー で は 有 用 で

あ り 顧 客 サ ー ビ ス に 繋 が る と 考 え る 。

173 後天性および先天性血友病Aの異常値報告から気付かされた事例

◎久保隆弘 1 ) 、高園聡 1 )、谷口卓 1 )、川口崇 2 )

京都府立医科大学付属北部医療センター B M L 検 査 室 1 ) 京都府立医科大学付属北部医療センター臨床検査科 2 )

【 は じ め に 】 血 友 病 は 、 先 天 的 に 血 液 凝 固 因 子 が 欠 乏 、 ま た は 機 能 低 下

し て い る 疾 患 で 、血 友 病 A は 第 Ⅷ 因 子 、血 友 病 B は 第 Ⅸ 因 子 に 異 常 が 認

め ら れ る 。 一 方 、 後 天 性 血 友 病 A は 、 血 液 凝 固 因 子 は 正 常 で あ る が 、 後

天 的 に 第 Ⅷ 因 子 に 対 す る 自 己 抗 体 が 産 生 さ れ 血 液 凝 固 が 機 能 し な く な

る 疾 患 で あ る 。血 友 病 は X 染 色 体 を 介 す る 伴 性 劣 性 遺 伝 の 遺 伝 性 疾 患 で

あ り 、 ほ と ん ど が 男 性 に 発 症 し 、 女 性 は 稀 で あ る 。 先 天 性 血 友 病 A は 、

男 性 1 万 人 に 0 .8 ~ 1 人 の 割 合 で 発 症 す る と 言 わ れ て い る 。後 天 性 血

友 病 A の 原 因 は 不 明 で 、発 症 は 1 0 0 万 人 に 1 人 程 度 と 報 告 さ れ て い る 。

当 施 設 で 数 ヶ 月 の 間 に 、先 天 性 血 友 病 A お よ び 後 天 性 血 友 病 A の 2 症 例

を 経 験 し た の で 報 告 す る 。 【 症 例 1】 7 8 歳 男 性 。 左 臀 部 に 皮 下 血 腫

が あ り 、 痛 く て 動 け な い 。 既 往 歴 は : 高 血 圧 、 十 二 指 腸 潰 瘍 ( 5 0

年 以 上 前 )。入 院 時 検 査 デ ー タ : P T 1 2 秒 、A P T T 7 0 .8 秒 、

出 血 時 間 : 4 分 で あ っ た 。 精 査 の た め 検 査 が 追 加 さ れ 、 そ の 内 、 凝

固 に 関 す る 検 査 項 目 と し て 、 A P T T ク ロ ス ミ キ シ ン グ 試 験 凸 型 、

第 Ⅷ 因 子 活 性 低 下 、 F 8 N H 定 量 高 値 で あ っ た 。 検 査 結 果 お よ び 臨

床 所 見 か ら 後 天 性 血 友 病 A と 診 断 さ れ た 。 【 症 例 2 】 生 後 6 ヶ 月 男

性 、 最 近 、 寝 返 り や ハ イ ハ イ を し た 時 に 出 血 班 が で き る 。 既 往 歴 :

な し 。 入 院 時 検 査 デ ー タ : P T 1 1 . 2 秒 、 A P T T > 2 0 0 . 0

秒 で あ っ た 。 精 査 の た め 検 査 が 追 加 さ れ 、 そ の 内 、 凝 固 に 関 す る 検

査 項 目 と し て 、 A P T T ク ロ ス ミ キ シ ン グ 試 験 凹 型 、 第 Ⅷ 因 子 活 性

1 . 0 未 満 で あ っ た 。 検 査 結 果 お よ び 臨 床 所 見 か ら 先 天 性 血 友 病 A

と 診 断 さ れ た 。 【 検 査 対 応 と 症 例 経 過 】 こ の 2 症 例 は 、 と も に P T

正 常 、A P T T 延 長 で あ っ た 。症 例 1 の 経 験 か ら 、A P T T 測 定( C

A - 1 5 0 0 : ㈱ シ ス メ ッ ク ス ) 時 の 測 定 ア ラ ー ト と 凝 固 反 応 曲 線

を 検 証 し た と こ ろ 、 第 Ⅷ 因 子 が 機 能 し な い 状 態 ( 欠 損 ) で は 、 反 応

曲 線 の 立 ち 上 が り が 鈍 く 緩 や か な 凝 固 反 応 は し て る が 、 正 常 な 凝 固

反 応 速 度 で な い こ と が 推 察 さ れ た 。 そ の 後 、 症 例 2 で は 、 A P T T

測 定 時 す ぐ に 凝 固 反 応 曲 線 を 検 証 し 、症 例 1 に 似 た 反 応 形 態 を 認 め 、

血 友 病 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た の で 、 臨 床 医 へ 速 や か に 報 告 し た 。 こ

の 報 告 に よ り 、 速 や か に 検 査 ( A P T T ク ロ ス ミ キ シ ン グ 試 験 、 第

Ⅷ 因 子 活 性 や そ の 関 連 項 目 ) が 追 加 さ れ 、 そ の 結 果 、 早 期 診 断 ・ 早

期 治 療 へ と 繋 げ ら れ た 。 【 お わ り に 】 異 常 値 や 検 査 デ ー タ バ ラ ン ス

等 の 確 認 を す る こ と は 重 要 で あ る が 、 測 定 ア ラ ー ト の 内 容 や 反 応 曲

線 等 、 検 査 を 直 接 し て い る か ら こ そ 分 か る 情 報 も 鑑 み て 報 告 す る こ

と が 重 要 で あ り 、 こ の 検 査 情 報 を 臨 床 へ 伝 え る こ と に よ り 、 早 期 診

断 ・ 早 期 治 療 に 貢 献 で き る こ と を 学 ん だ 。

174 血液培養の採取本数と検出状況について

◎東 益美 1 ) 、内村 義行 1 )、 上本 裕 1 )、 福 田 純 1 )

株式会社 エスアールエル 関西ラボラトリー 1 )

【はじめに】平成 2 6 年度診療報酬改定で 2 セット採取が

算定可能となり、一時期 2 ヵ所以上の部位から採血した複

数セットの依頼が多くなった。しかし 、ここ数年新たに複

数セット採血される施設は少なく 3 9%弱に留まっている。

複数採取を導入している施設が少ない理由の一つとして、

血液培養の重要性が十分理解されていないために、臨床の

場においても積極的に実施されていないと考えられる。そ

こで、今回 1 セット採血(好気・嫌気ボトルそれぞれ 1 本

ずつ採血されたもの)で陽性となった場合と、 2 セット採

血(採取時間・部位が異なり好気・嫌気ボトル 2 本ずつ採

血されたもの)で陽性になった場合の培養陽性状況を調査

し、2 セット採血の有用性について検証したので報告する。

【対象と方法】

調査期間: 2 01 6 / 7 月~ 1 2 月( 6 カ月間)

1) 1 セット採血陽性ボトルの本数をA~Bの 2 通りのパ

ターンに分け調査した。

A : 1 セット 2 本陽性

B : 1 セット好気、嫌気どちらか 1本陽性

2) 2 セット採血陽性ボトルの本数を A~ E の 5 通りのパ

ターンに分け調査した。

A : 2 セット 4 本陽性

B : 2 セット 3 本陽性

C : 2 セット 2 本陽性

D : 1 セット 2 本陽性

E : 1 セット 1 本陽性

3)検出菌は以下の 8 菌群について調査した。

腸内細菌、ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌(非醗酵菌)、黄

色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌( C N S)、連鎖

球菌、グラム陽性桿菌カンジダ、その他(嫌気性菌など)

【結果】

1)採取本数が多いほど起炎菌の検出率が向上し、偽陰性

を防げる。

2)採取本数が多いほど採血時の汚染率 を上げる結果とな

るが、ボトルの陽性本数が起因菌か汚染菌かの判断の手助

けとなると考えられる。

175 過去 10 年間における Salmonel la enter i ca 血清型の動向

◎松本 京佳 1 ) 、吉田弘之 1 )、 表口真穂 1 )、 松 永典子 1 )、 松本朋子 1 )、 橘 美希 1 )、 森 川友里加 1 )、 島田一彦 1 )

(株)兵庫県臨床検査研究所 1 )

【はじめに】S a lm o ne l l a sp p .は人獣共通感染症の原因菌の

ひとつで、ヒトや家畜及び食品に広く分布しており、ヒト

の感染症では感染型腸炎が最も多く認められる。 今回、私

たちは過去 1 0 年間で弊社が分離した S al mo ne l l a s p p .の O

抗原群による血清型を比較検討したので報告する。

【対象】弊社細菌検査室に臨床材料として提出され分離さ

れた S a l mo ne l l a sp p .を前期( 2 0 05~ 2 0 07 年度)3 2 1 株と、

後期( 2 0 1 4~ 20 1 6 年度)6 1 6 株を対象とし、比較検討した。

【方法】生化学性状検査で S . e n te r i c a s ubs p . e n te r i c a と

同定された株をサルモネラ抗血清(デンカ生研)を用いて

菌体抗原( O 抗原)の確認を行い、血清型別に分類した。

【結果】前期に分離された S a l m on e l l a sp p .3 2 1 株の血清

型の内訳は O 4 群 4 7 株( 1 5%) , O 7 群 7 6 株( 24 %) , O 8 群

4 7 株( 15%), O 9 群 1 4 2 株( 4 4%), その他 9 株( 2 . 8%)

となった。後期に分離された 6 1 6 株の内訳は、 O 4 群 2 2 1

株( 3 6%) , O 7 群 1 4 3 株( 2 3 %) , O 8 群 1 7 1 株( 2 8%) , O 9

群 6 1 株( 9 . 9%) , その他 2 0 株( 3 . 2%)となった。

【考察】結果より、前期に検出された S al mo ne l l a s p p .の血

清型は O 9 群が最も多く、次いで O 7 群、O 4 群・O 8 群、そ

の他の順となった。中でも O 9 群はこの三年間に分離され

た S a l m o ne l l a s p p .の血清型別のうち 4 4%を占めており他

の血清型に比べ検出頻度が多く、流行株であったことが示

唆された。他の O 4 群、 O 7 群、 O 8 群については、これら

の割合に大きな差はみられなかった。これに対して、後期

では O 4 群が最も多く、次いで O 8 群、O 7 群、O 9 群、その

他の順となった。このうち、O 4 群、O 7 群、O 8 群の割合は

前後期で大きな差はみられなかった。しかし、O 9 群に関し

ては大幅に検出率の変動があり、 1 0%以下という結果とな

った。

以上の結果より、過去 1 0 年間で S a lm o ne l l a sp p .の血清

型のうち O 9 群が大幅に減少していることが分かった。 O

9群は S E 汚染の鶏卵由来のサルモネラ食中毒である頻度

が高く、近年「鶏卵のサルモネラ総合対策指針」( 2 0 0 5 年)

をはじめとする様々な対策・措置が講じられてきたことに

より減少したのではないかと考える。

当日は、抗菌薬耐性状況も加えての発表を予定している。

176 島根県で確認された東洋眼虫の二症例

◎三井 祐宏 1 ) 、 山 口 孝 1 ) 、 加藤 竜美 1 )

㈱日本医学臨床検査研究所 本社検査部 臨床血液課 1 )

【はじめに】

東洋眼虫は犬、狸などの動物の眼部に寄生する線虫である。

しかし、本種は人にも寄生する事があり、メマトイ類の媒

介による人畜共通寄生虫として知られている。

今回、我々は島根県の眼科医院にて確認された東洋眼虫が、

人に寄生した症例を経験したので報告する。

【症例 1】島根県江津市在住、男性、 7 6 才。

主訴 :左眼に異物感あり。

病歴 :緑内障の症状あり。

生活歴 :ペット飼育歴無し。動物との接触機会は無し。

診察時所見 :異物感のある内眼角付近から蠢く虫体発見。

発見年月 : 2 0 1 2 年 1 0 月、摘出虫体数 :4 隻。

【症例 2】島根県東出雲市在住、男性、 7 6 才。

主訴 :稲刈り時、眼にもみ殻が混入し痛みを感じた。

病歴 :特に無し。

生活歴 :ペット飼育歴無し。住家周囲に野良猫は多いが、

動物との接触機会については不明。

診察時所見 :眼に混入したもみ殻を除去後、内眼角付近から

蠢く虫体発見。

発見年月 : 2 01 5 年 9 月、摘出虫体数 :2 隻。

【結果】

下表に示すように本虫と体形が類似 したアニサキスと特徴

比較した結果により 眼科依頼と頭部の大きな口腔が決め手

で、東洋眼虫と鑑別した。

本虫(症例 1、 2) アニサキス

頭部 大きな口腔 穿歯

体部 虫卵あり 虫卵なし

尾部 突起なし、幼虫あり 突起あり、幼虫なし

診療科 眼科から依頼 消化器内科から依頼多い

【結語】

様々な診療科から依頼される検査センターでは、どの診 療

科であるかの確認及び担当医との情報交換は正確な結果を

報告する上で重要である事を再認識した。

連絡先 T E L: 0 7 5 -6 3 1 - 6 18 5 (内線 6 22 )

177 採便容器の性能確認による OC -PLEDIA の評価

◎小林江里 1 ) 、 川 端佑輝 1 ) 、 出口真弓 1 ) 、 竹内 秀史 1 )

日 本 医 学 株 式 会 社 1 )

【 は じ め に 】便 潜 血 検 査 は 出 血 性 消 化 器 疾 患 の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 と し

て 重 要 で あ り 、免 疫 学 的 測 定 法 の 向 上 に 伴 い 早 期 の 大 腸 が ん の 発 見 が 可

能 と な り 健 診 で の 測 定 が 増 加 し て い る 。検 査 結 果 に お い て は 測 定 に 使 用

す る 採 便 容 器 の サ ン プ リ ン グ や 保 存 状 況 に よ り デ ー タ に 影 響 が あ る こ

と は よ く 知 ら れ て い る 。今 回 我 々 は 容 器 の 性 能 を 調 べ る た め に 、採 取 量

と 保 存 状 況 に 変 化 を 与 え デ ー タ の 変 動 を 検 討 し た の で 報 告 す る 。【 使 用

機 器 ・ 試 料 】 機 器 : O C セ ン サ ー P L E D I A (栄 研 化 学 )、 試 料 : 疑 似 便 低

濃 度 1 8 5 n g / m l・ 高 濃 度 4 9 8 n g / m l (栄 研 化 学 よ り 提 供 )

【 方 法 】 各 2 濃 度 の 疑 似 便 を 緩 衝 液 ( 2 m l )に 対 し て 最 適 量 ( 1 0 m g )と 少 量

( 5 m g )、多 量 ( 2 0 m g )の 3 試 料 を カ ッ プ で 作 成 し 保 存 温 度 ( 6℃ 、2 4℃ 、3 7℃ )

に よ る 経 時 変 化 ( 7 日 間 )を 調 査 し た 。

【 結 果 】

少 量 最 適 量 多 量

低 濃 度 7 3 n g / m l 1 8 9 n g / m l 3 7 2 n g / m l

高 濃 度 2 6 0 n g / m l 4 9 1 n g / m l 9 3 5 n g / m l

上 記 6 濃 度 の デ ー タ を も と に し て 経 時 変 化 の 結 果 は 各 濃 度 に お い て 6℃

及 び 2 4℃ で は デ ー タ の 変 動 は 認 め な か っ た 。 但 し 3 7℃ で の 保 存 で は 高

値 検 体 で 2 日 目 よ り 低 下 を 認 め 7 日 目 に お い て 7 3 n g / m l は 約 5% 、

2 0 0 n g / m l 付 近 で 約 2 0% 、 3 7 0 n g / m l 以 上 で は 4 0% 近 く 低 下 を 認 め た 。

H b 量 が 低 い 結 果 に つ い て は 保 存 の 影 響 が 少 な い の で 生 便 で 検 討 を 試 み

た 。【 追 加 検 討 】 カ ッ ト オ フ ( 1 0 0 n g / m l )付 近 の 検 体 を 用 い て 2 4℃ 、 3 7℃

で の 保 存 条 件 で 変 動 を 調 べ た 結 果 、 2 4℃ で は ほ と ん ど 低 下 を 認 め ず 、

3 7℃ は 7 日 目 で 平 均 低 下 率 は 1 2% と な っ た 。【 考 察 】 検 討 結 果 か ら 最 適

量 に 対 し 採 取 量 を 変 え る こ と に よ り H b 量 も ほ ぼ 同 率 の 値 を 示 し た 。 経

時 変 化 は 冷 蔵 、室 温 で は 変 動 が ほ と ん ど 認 め ら れ ず 、高 温 で は 低 下 傾 向

を 示 し た 。低 下 の 比 率 は 高 値 検 体 で は 大 き く な り 低 値 検 体 は 小 さ く 緩 衝

液 の 保 存 安 定 成 分 の 効 果 を 認 め た 。更 に カ ッ ト オ フ 付 近 の 便 検 体 を 材 料

と し て 調 べ た 結 果 、温 度 負 荷 の 影 響 は 最 小 限 に 抑 え ら れ 同 採 便 容 器 を 用

い る こ と に よ り 採 取 量 を 適 量 と る こ と で 個 体 差 は あ る が 偽 陰 性 を 抑 え

ら れ る 性 能 の 高 い 検 査 法 で あ る と い え る 。【ま と め 】便 測 定 に お け る 容 器

の 保 存 条 件 の 影 響 は 当 然 あ る と の 認 識 が 強 い 。但 し 、今 回 の 結 果 か ら H b

量 に 対 す る 緩 衝 液 で の 安 定 効 果 は 特 に カ ッ ト オ フ (メ ー カ ー 参 考 基 準 範

囲 )付 近 で 良 好 な 結 果 を 示 し 、容 器 性 能 は 非 常 に 高 く 評 価 で き る と 考

え ら れ る 。

178 当社における学校尿検診の尿蛋白陽性率について

◎ 吉 田 喬 1 ) 、 榎 亮 1 ) 、 鷹 谷 唯 1 ) 、 新 居 詩 織 1 ) 、 山 本 光 史 1 ) 、 中 島 崇 裕 1 ) 、 島 田 一 彦 1 )

( 株 ) 兵 庫 県 臨 床 検 査 研 究 所 1 )

【 は じ め に 】

学 校 検 診 と は 、 慢 性 腎 不 全 移 行 す る 可 能 性 の あ る 腎 炎 の 子 供 を

抽 出 し 、 確 定 診 断 に つ な げ る こ と を 目 的 と し て い る 。 ま た 、 暫 定

診 断 を 決 定 し 、 経 過 観 察 の 方 針 を 決 定 す る の に 使 用 さ れ て い る 。

さ ら に 、 腎 炎 以 外 の 腎 不 全 に 移 行 す る 可 能 性 の あ る 慢 性 腎 臓 病 患

者 を 発 見 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 当 社 で は 、 今 年 度 分 の 学 校

検 診 を 行 う に あ た り 、 今 ま で 使 用 し て い た U S - 3 1 0 0( 栄 研 化 学 株

式 会 社 以 下 栄 研 ) か ら U S - 3 1 0 0 R( 栄 研 ) に 変 更 を 行 っ た 。 学 校 検

診 を 行 っ て い る 際 に 、 陽 性 率 が 例 年 で は 5~ 1 0% の と こ ろ が 1 9%

程 度 ま で 上 昇 す る と い う 結 果 に な っ た た め 、 調 査 と 対 策 を 行 っ た

の で 報 告 す る 。

【 方 法 】 2 0 1 7 年 度 の 学 校 検 診 の 検 体 1 3 2 3 1 検 体 の デ ー タ と 2 0 1 6

年 度 の 学 校 検 診 の 検 体 8 9 7 3 検 体 デ ー タ の 尿 蛋 白 の 陽 性 率 を 算 出

し 、 そ れ ぞ れ の 検 体 測 定 環 境 の 差 と 、 測 定 機 器 に よ る 調 整 後 の 尿

蛋 白 の 陽 性 率 を 比 較 検 討 し た 。

【 結 果 】 2 0 1 6 年 度 の 変 更 前 の 陽 性 率( 2 0 1 6 / 4 / 2 6~ 5 / 2 7)は 1 9 . 9 %

で 例 年 よ り 1 0 %も 高 値 を 示 し て い た が 、 機 器 を 変 更 し た こ と に よ

る 感 度 の 差 や 、機 器 間 に よ る デ ー タ の 有 意 の 差 は 得 ら れ な か っ た 。

環 境 の 変 化 に つ い て は 、 例 年 は 検 体 の 採 取 時 期 は 4 月 か ら 多 か っ

た が 、 検 診 の 時 期 が 昨 年 度 よ り ず れ 込 み 、 5 月 が 中 心 と な っ て い

た 。平 均 気 温 も 1 5 . 2℃ か ら 1 9 . 2℃ に 上 昇 し て お り 、検 体 採 取 条 件

に よ る 影 響 を 受 け た こ と が 推 測 さ れ た た め 、 昨 年 度 の デ ー タ を も

と に 測 定 機 器 の 反 射 率 を 変 更 し た と こ ろ 、 陽 性 率 は 1 1 %

( 2 0 1 7 / 0 5 / 0 9~ 5 / 1 9) と 昨 年 度 の 1 0 %前 後 の 陽 性 率 と な り 、 従 来

通 り の 感 度 に す る 事 が 出 来 た 。

【 考 察 】 学 校 検 診 に お け る 尿 蛋 白 陽 性 率 は 、 気 温 、 湿 度 、 運 動

に よ り 影 響 を 受 け る こ と が わ か っ て い る 。 気 温 、 湿 度 が 高 い と 多

量 の 発 汗 を 認 め る た め 、 尿 が 濃 縮 さ れ 、 尿 蛋 白 が 上 昇 す る こ と が

分 か っ て い る 。 4 月 中 は 気 温 が 低 い た め 、陽 性 率 は 低 い が 、 5 月 に

な り 、 気 温 の 上 昇 に 伴 い 陽 性 率 の 上 昇 が 認 め ら れ る 。 運 動 会 の 練

習 等 で 、 運 動 す る 機 会 が 増 え 、 尿 が 濃 縮 さ れ て い る こ と や 、 学 校

検 診 で は 異 常 を 検 出 す る こ と を 目 的 と し て い る が 、 環 境 の 変 化 で

従 来 で あ れ ば 正 常 の と こ ろ を 異 常 と な る ケ ー ス が 増 加 し て お り 、

反 射 率 を 調 整 す る こ と に よ り 従 来 の 感 度 に 合 わ せ る こ と が で き た 。

今 後 は 機 器 だ け で な く 、 測 定 ま で の 環 境 も 視 野 に い れ て 報 告 し 、

顧 客 の 要 望 に 応 え て い き た い 。 ( 連 絡 先 0 7 9 - 2 6 7 - 1 2 5 1)

179 BNP の測定方法間・臨床乖離を生じた一症例の解析

◎辻澤 里依 1)、 駒 田 尚代 1)、 福 光 弘明 1)、 久川 聡 2) 3)、 山本 賢次 4)、 池西 一海 5)、 舛 田 譲二 6)

株式会社 保健科学西日本 検査本部 1)、 株式会社 保健科学西日本 2)、 株 式会社 保健科学研究所 3)、

恩賜財団 済生会御所病院 中央検査科 4)、 恩 賜財団 済生会御所病院 外科 5)、 恩 賜財団 済生会御所病院 内科 6)

【 は じ め に 】 B N P 測 定 を 委 託 検 査 か ら 院 内 測 定 へ 変 更 す る に あ た

っ て 、 機 種 間 差 の 比 較 検 討 中 、 富 士 レ ビ オ ル ミ パ ル ス G 1 2 0 0

( C L E I A 法 ) で は 4 8 1 8 . 9 p g / m L。 シ ー メ ン ス C e n t a u r X P ( C L I A

法 ) で は 2 0 0 0 . 6 p g / m L と 測 定 方 法 間 差 で 2 倍 以 上 の 乖 離 が 認 め

ら れ 、臨 床 症 状 と も 乖 離 が 認 め ら れ た 症 例 に つ い て 報 告 す る 。【検

討 方 法 】富 士 レ ビ オ ル ミ パ ル ス G 1 2 0 0( C L E I A 法 )、シ ー メ ン ス

C e n t a u r X P( C L I A 法 )、 ア ボ ッ ト ジ ャ パ ン ア ー キ テ ク ト 1 0 0 0 i

( C L I A 法 )、 東 ソ - A I A 9 0 0、 A I A 3 6 0( E I A( I E M A) 法 ) を 用 い

て 、 測 定 方 法 と 希 釈 回 収 率 の 比 較 検 討 を 行 っ た 。 次 に 、 非 特 異 反

応 の 検 証 の た め C e n t a u r X P を 用 い て H B T ( H e t e r o p h y l i c

B l o c k e r Tu b e)並 び に P o l y M A K 3 3 を 用 い て 吸 収 試 験 を 実 施 し た 。

【 結 果 】 1 . 測 定 方 法 と 希 釈 回 収 率 の 比 較

2 .非 特 異 反 応 の 検 証

H B T、P o l y M A K 3 3 共 に 吸 収 を 認 め ず 非 特 異 的 反 応 に よ る 影 響 は

な い と 考 え ら れ た 。

【 マ ク ロ B N P の 検 討 】

B N P に 関 す る 測 定 系 の 妨 害 物 質 に 関 し て J a n s s e n ら が マ ク ロ

B N P の 可 能 性 を 報 告 し て い る 。 本 症 例 に お け る マ ク ロ B N P の 可

能 性 を 検 証 す る た め C e n t a u r X P に て 、 P E G 処 理 試 験 と P r o t e i n G

処 理 試 験 を 追 加 し た 。

【 考 察 】5 種 類 の 測 定 機 種 に お い て 各 々 異 な る 測 定 結 果 と な っ た 。

吸 収 試 験 に お い て H B T・ P o l y M A K 3 3 共 に 吸 収 は 認 め ら れ な か っ

た こ と か ら 、 非 特 異 反 応 な ど の 妨 害 物 質 の 影 響 を 受 け て い る 可 能

性 は 極 め て 低 い と 考 察 さ れ た 。ま た 、P E G 処 理 、P r o t e i n G 処 理 共

に 著 し い 低 回 収 率 が 認 め ら れ た こ と か ら 、 分 子 量 の 大 き な 、 特 に

I g G 関 連 物 質 の 影 響 を 強 く 受 け て い る と 考 え ら れ た 。 尚 、 マ ク ロ

B N P の 可 能 性 に 関 し て は 、今 後 の 検 討 報 告 を 待 ち 追 加 検 証 を 行 い

た い 。

180 h -ANP測定を社内化に出来た支所検査の取り組み

◎米谷智代 1 ) 、 平 松聖史 1 ) 、 中里健一 1 ) 、 出口恵 1 ) 、 阿部孝充 1 ) 、 島田一彦 1 )

(株)兵庫県臨床検査研究所 神戸東支所 1 )

【はじめに】

h-ANP検査は透析患者のドライウェイトを指標としての依頼が

殆どである。h-ANP検査は蛋白分解酵素の作用により分解される

ため、室温での安定性が悪い為、院内で遠心分離が出来ない施設では

採血後の回収時間を考慮する必要がある。さらに支所管轄の施設で

は分離後本社までの搬送時間も考慮しなければならない。支所管轄

の透析施設で、h-ANP検査を出件毎に回収して支所検査室で分離

凍結し外注検査に提出していたが、今回、社内で測定できる環境が出

来、測定時間の短縮により従来法の測定値との乖離は見られたが、過

去からの支所集荷対応、及び検討した結果の妥当性の説明から社内

検査への変更に満足していただいた事例を報告する。

【使用機器・試薬】

従来法(外注)

・使用機器:MI02(株式会社エイアンドティー) ・使用試薬:MI02 シオノギ ANP 試薬

・測定方法:化学発光酵素免疫測定法(CLEIA 法)

変更後社内検査

・使用機器:HISCL-5000(Sysmex 社)

・使用試薬:HISCL ANP 試薬

・測定方法:化学発光酵素免疫測定法(CLEIA 法)

【検討方法】

1)従来の外注法と変更後の社内測定方法との相関を検討する。

2)医院より回収された検体に対して運び込まれた時間を0とし、保

存方法による経時的データの変動を確認した。また、支所では本

社への最終搬送後の回収分については翌日搬送となるので、凍

結での長時間保存の検証をおこなった。

【結果】

1)y=1.178x+1.935 社内測定方法の方が高い傾向であった。

2)表:保存状態による経時的データの変動

(pg/mL) 【考察】

外注検査から内検に変更を実施して検体回収に関して回収後、測

定までの時間が短縮された為、必ず凍結しないといけないという事

がなくなった。凍結していても測定までの時間が短い方が真値に近

いデータとなった。また、凍結検体に関して搬送中に融解するリスク

があったが、もし搬送中に融解があっても測定にすぐ移れる為、凍

結・融解を繰り返す可能性が無くなった。

【まとめ】

透析患者のドライウェイトの指標として測定されるh -ANPに

ついて、迅速報告による臨床貢献度を検証すると共に、検体の保存方

法による安定性データを取得し、経時変化によるデータの変化を理

解し、内検化された事によるメリットが確認できた。以前より早く測

定できることで、データの安定性が向上したと考えられる 。内検化

により測定方法が変わったが、それを了承して頂けたのは、今までに

築いた信頼関係によるものも大きいと感じることができた。

誠実に顧客要望に答えていくことが信頼に繋がると感じられる出来

事となった。今後は、他の経時変化のある項目についてもデータを

理解したうえで搬送時を考慮した対策を行い顧客にデータを返す必

要があると思われる。

(連絡先:078-252-7315)

0 分 1 2 時間 2 4 時間 4 8 時間 - 2 0℃

12 7 . 1 12 6 . 3 12 2 . 8 111 . 8

冷蔵 12 2 . 3 11 7 . 5 11 0 . 1 室温 11 2 . 5 92 . 0 80 . 3

181 HCV 核酸定量検査の推移について

◎木崎 理 1 )、 坂 口 亜侑美 1 )、 小松 聖実 1 )、 梅林 浩顕 1 )

㈱日本医学臨床検査研究所 本社検査部 臨床化学課 1 )

【はじめに】近年、 C 型肝炎の治療は従来のインターフェ

ロン治療から、 直接作用型抗ウイルス薬を用いた治療に移

行し、著効率が飛躍的に上昇したと報告されている。

そこで弊社の H C V の R NA 検出状況にも変化がみられる

のかを検証する為、 HC V 核酸定量検査の受託状況と H C V

の R NA 検出状況を集計し、まとめたので報告する。

【方法】 C 型肝炎治療がインターフェロン薬を中心として

い た 2 0 1 3 年 と 直 接 作 用 型 抗 ウ イ ル ス 薬 が 中 心 と な っ た

20 1 6 年に受託した HC V 核酸定量検査の件数及び測定結果

の比較を行った。

【結果】 H C V 核酸定量検査の弊社 受託件数は、 2 0 1 3 年以

降、増加していた。H C V 核酸定量検査における H C V の R N A

検出状況は、 2 0 1 3 年 8 月で約 4 3%であったが、 2 01 6 年 8

月は約 2 6%と減少していた。更に依頼のあった 患者検体の

過 去 値 か ら 、 デ ー タ の 推 移 を 調 査 し た と こ ろ 、 明 ら か に

HC V 核酸定量値が過去値と比較して低値となった検体が、

20 1 3 年度では 3 . 1%に対して、 2 0 1 6 年度では 1 5 . 6%に増

加していた。

【考察】調査結果から、 H C V 核酸定量検査の受託件数が

増加する一方、 H C V の R N A 検出率は減少していることが

分かった。

しかし、今後は H C V の R N A 検出率減少に伴って、

HC V 核酸定量検査 受託数は減少する事も考えられるの

で、今後も集計を継続していき、傾向に注視していくつも

りである。

182 全自動遺伝子検査装置 PANTHER( TMA 法)を用いたクラミジアトラコマチスおよび淋菌の基礎的検討

◎鈴木明仁 1 ) 、 桝 田悟志 1 ) 、 坂本小巻 1 ) 、 旭洋次郎 1 ) 、 山本博昭 1 ) 、 荒 木年夫 1 )

(株 )大阪血清微生物研究所 検査部 1 )

(目的)性器クラミジア感染症および淋菌感染症は厚労省

の感染症発生動向の定点調査において 2 00 2 年をピークに

減少傾向にあり、2 0 0 9 年以降は横ばいの傾向を示している。

しかし、若年層で増加傾向にあり、問題となっている。

今回われわれは、全自動遺伝子検査装置 PA NT HE R を用い

た TM A 法の検討を行ったので報告する。

(方法)検査材料は、子宮頸管擦過物および尿検体を 使用

した。測定機器は PA NTH E R( H OL O G I C 社)、使用試薬は

専用試薬のアプティマ T M C o m bo 2 クラミジア /ゴノレアを

使用した。

比較対照として B D プローブテック E T(日本ベクトン社)

の S D A 法を使用した。

(結果)①再現性:同時再現性は、子宮頸管擦過物の陽性、

陰性検体を用い 1 0 回測定した結果はクラミジアトラコマ

チス( C T)、淋菌( GC)ともに陽性・陰性検体においてそ

れぞれ 1 0 0%であった。また添付のコントロールを用い 1 0

日間連続した日差再現性は C T、G C ともに 10 0%であった。

②相関性(一致率):子宮頸管擦過物( 1 3 8 例)、尿検体( C T

10 0 例、 G C 7 5 例)を用いて TM A 法と S DA 法で比較検討

した。子宮頸管擦過物においては、 C T は 98 . 6 %、 GC は

97 . 8 %、尿検体においては、 C T は 9 9 %、 GC は 10 0 %であ

った。

(まとめ)基礎的検討の結果はそれぞれ良好な結果であっ

た。 PA NT HE R は、全自動装置でサンプリングはピアッシ

ング方式であるため採取容器のキャップを開ける必要がな

くコンタミネーションのリスクを軽減できる。また、ラン

ダムアクセス方式のため測定を待つことなく連続的に検体

の投入が可能であるため緊急対応が 期待できる。

183 当社における改善活動の報告

◎瀧本秀樹 1 ) 、 田 中淑公 1 ) 、 日極裕介 1 ) 、 石橋達也 1 )

株 式 会 社 近 畿 予 防 医 学 研 究 所 1 )

【はじめに】私たちは日々、業務の中で“インシデント”

という多種多様なリスクと向き合っている。検体受領から

検査結果報告に至るまでの各工程に工程特有の“インシデ

ント”が潜んでいる。私たちは各工程毎に実際の“インシ

デント”をキャッチし、それを検証し、“ KAIZE(改善)活

動”につなげている。

これにより、経験した“インシデント”に対して改善策を

考え、水平展開することで同様のミスを防ぐ予防策になっ

ている。

【取り組み】私たちが行ってきた改善活動を今一度振り返

り、分析を実施した中で更なる“ KAIZEN(改善)活動”の

強化を図る為、各部門内に“ KAIZEN チ-ムを作り改善活動

を推進”することにした。

KAIZEN チ-ムの目的として、①コミュニケ-ションの円滑

化。⇒自分の意見を話す、仲間の意見を聞く、そして相互

理解を深める努力を行う。②問題点の共有化。⇒チ-ム全

員で問題点を認識し、話し合いの場を持つよう にする。③

チ-ムの結束力の強化。⇒共通の問題点を解決する為、皆

で知恵を出し合って助け合う。更に、チ-ムのミ-ティン

グ開催日を具体的に立て、職場全員で行う。アルバイト、

社員、色々な立場で意見を出し合う大切さ。ミ-ティング

内容は議事録にまとめ必ず回覧し周知させる。前回繰り越

した問題点の意見交換を続ける事を実施する。

【まとめ】今までの“インシデント報告活動”“ KAIZEN 活

動”に加え、各部門内に“ KAIZEN チ-ム”を作る事で更な

る強化への足がかりにしていきたいと考える。問題点の改

善から業務効率、検査品質、サ- ビス、職場環境の向上を

めざし“ KAIZEN チ-ム活動”を行うことで検査室の安定稼

動に繋げていきたい。

184 検査室の「 5S」の取り組み

◎小倉 亜希子 1 )、 杉野 哲也 1 )、 横田 綾子 1 )

株 式 会 社 近 畿 予 防 医 学 研 究 所 1 ) 【 は じ め に 】「 5S 」 と は 製 造 業 や サ ー ビ ス 業 な ど の 職 場 環 境 の 向

上 、 維 持 改 善 を 目 的 と し て 用 い ら れ る ス ロ ー ガ ン で 、 職 場 に お い

て 徹 底 さ れ る べ き 事 項 、“ 整 理 ・ 整 頓 ・ 清 掃 ・ 清 潔 ・ 躾 ”の ロ ー マ

字 の 頭 文 字 を と っ た も の で す 。 こ れ は 職 場 の 環 境 を 整 え る 美 化 活

動 で は な く 、職 場 の 抱 え る 課 題 を 解 決 す る た め の 活 動 で あ り 、我 々

が 働 く 医 療 の 現 場 に お い て も 積 極 的 に 取 り 組 む 必 要 の あ る 活 動 で

す 。【 目 的 】 弊 社 で は 業 務 改 革 の 基 本 の 1 つ と し て 、「 全 員 参 加 の

5S 活 動 」に 取 り 組 ん で き ま し た 。で す が 時 間 の 経 過 と 共 に「 5S 」

を 維 持 出 来 な く な っ て お り 、 必 要 な 書 類 が す ぐ に 見 つ か ら な い こ

と や 使 い た い 時 に 使 い た い 物 が 無 い な ど 効 率 よ く 働 け て い な い の

で は な い か と 感 じ る 事 が あ り ま す 。 こ れ で は 仕 事 に バ ラ ツ キ が 発

生 し ス ム ー ズ に 仕 事 を す る こ と が 出 来 ず 、 ミ ス や ト ラ ブ ル の 原 因

に な る と 思 い ま す 。そ こ で 今 回 、職 場 の ス タ ッ フ 全 員 が 正 し く「 5

S 」を 理 解 出 来 て い る の か 再 確 認 す る 意 味 で も「 5S 活 動 」で は な

く「 5S 改 善 」を 目 指 す こ と に し ま し た 。【取 り 組 み 】ま ず 検 査 室 内

の あ ら ゆ る 場 所 の 写 真 を 撮 り ま し た 。 画 像 化 す る こ と で ど こ を 改

善 す る べ き か 明 確 に す る た め で す 。 画 像 化 さ れ た 職 場 を 見 る と

様 々 な こ と に 気 付 き ま す 。 付 箋 が あ ち こ ち に 貼 っ て あ っ た り 、 不

要 な も の が 意 外 に 多 い こ と な ど 現 状 か ら 改 善 す べ き 点 は 思 っ た 以

上 に 多 い こ と が わ か り ま し た 。 そ し て 5S 活 動 で 最 初 に や る べ き

で あ り 最 も 大 切 な 「 整 理 」 の 作 業 か ら 行 う こ と に し ま し た 。 必 要

な 物 だ け を 残 し 、 不 要 な 物 は 思 い 切 っ て 捨 て ま し た 。 い つ か 使 う

だ ろ う・・・と 残 さ れ た 段 ボ ー ル や 空 き 箱 、こ れ を 捨 て る だ け で も

か な り の ス ペ ー ス が 生 ま れ ま し た 。次 に「 整 頓 」で す 。必 要 な も の

が す ぐ に 取 り 出 せ る よ う に 場 所 や 置 き 方 を 決 め ま し た 。 必 要 な 物

を 使 い た い 時 に 直 ぐ に 取 り 出 す こ と が 可 能 と な り 、 作 業 も ス ム ー

ズ に 進 む よ う に な り ま し た 。次 に「 清 掃 」で す 。常 に 身 の 回 り や 職

場 の 掃 除 を し て き れ い な 状 態 を 保 つ こ と を 心 が け ま し た 。 き れ い

に 掃 除 を す る こ と で 机 や 作 業 台 の 上 が ス ッ キ リ 片 付 き 、 作 業 効 率

も 上 が り 思 わ ぬ ミ ス や 事 故 の 防 止 に も 繋 が り ま す 。そ し て「 清 潔 」

で す 。「整 理 」「整 頓 」「清 掃 」を 維 持 し 、き れ い な 状 態 を 保 ち ま す 。

維 持 さ れ た 状 態 が 保 て な く な っ た 時 に 違 和 感 を 感 じ る 事 が 出 来 る

よ う に 、全 員 で 声 掛 け を し て い く よ う に し ま し た 。最 後 に「 躾 」で

す 。 決 め ら れ た こ と を 正 し く 守 る 習 慣 を 身 に 付 け ら れ る よ う な 取

り 組 み を 行 い ま し た 。【ま と め 】「 5S 」へ の 取 り 組 み に つ い て た だ

の 「 片 付 け 」 に 終 わ る こ と な く 全 員 が 様 々 な 知 恵 と 工 夫 を 出 し 合

い 共 有 す る こ と で 、 今 ま で 出 来 て い な か っ た こ と も 出 来 る よ う に

な り ま し た 。

185 クォンティフェロン 1 本採血に伴う温度管理と搬送容器の検討

◎中村 卓1 ) 、阿蘇豊1 ) 、藤田宜子1 ) 、島田一彦1 ) 、猪尾龍伍1 ) 、吉田弘之1 )

(株 )兵庫県臨床検査研究所1 )

【はじめに】

クォンティフェロン 3G の 1 本採血検体の搬送にて市販のクーラ

ーBOX と保冷剤では温度管理が困難であったことから、搬送時の温

度管理と搬送容器の検討を行ったので報告する。

【方法および結果】

発砲スチロール製の BOX(COOL BOX:内寸 222×137×143mm)

にて、2~8℃を保つ為の方法として、保冷剤の位置・置き方、検体

保管容器、BOX 内での検体保管部の温度変化について検討した。BOX

内での温度管理は検体の置き場所によって冷え方が異なるため、3

か所の温度測定箇所を設定し、経過的に温度測定を実施した。

保冷剤は一般で市販されている S サイズ 170×100×10mm、M サ

イズ 210×115×17mm((株)アイスジャパン)の 2 種類を使用し

た。

検討1:保冷剤の中身をプラスチック容器に移し替え、この容器

を保冷剤とする。その中に別のプラスチック容器を入れ、検体

を立てたが、保冷効果が強すぎた。結果として、検体保管の適

正温度(2~8℃)に達するまで 5 時間を要した。

検討2:発泡スチロール製の BOX にて検体保管容器下に、保冷剤

を1枚、両端2枚置いて実験するが 2℃に 5 分で到達したもの

の1時間後には 8℃を超えてしまった。

検討3:保冷効果は全体を均一かつ強い冷却力持続を目標に、保

冷剤を検体保管容器の横1辺に1枚ずつ、周りを囲むように計

4枚で冷却。検体保管容器はメラミンスポンジを採用し測定を

行ったところ、中心においては BOX 作成後 15 分で 2℃に到達

し、5 時間 2~8℃を保つことができた。保冷剤横は BOX 作成後

マイナス 4℃まで到達するが 1 時間半で 2℃となり、5 時間温度

を保ち続けていた。検体保管容器角は BOX 作成後マイナス 10℃

まで到達し 2 時間半後に 2℃に到達、6 時間 2~8℃を保ってい

た。【まとめ】軽量で使いやすく安全かつ確実な温度で運べる

容器として検討を行ったが、MCI スクリーニング検査や APOE 検

査など同様に 2℃~8℃の規程温度がある項目が今後も増えるこ

とが予想される。破損した場合にも近くのホームセンターで物

品を調達できるため、手軽な BOX として使用可能と判断した。

(連絡先: 079-267-1251)