糖尿病内分泌内科

永井 聡

第19７回健康セミナー

2016年8月13日

糖尿病と認知症、骨折との“密”な関係

65歳以上比率 達成年

高齢社会

高齢化社会 7%以上 1970年

14%以上 1994年

超高齢社会 21%以上 2007年

3277万人 26.0% 2015年

日本は超高齢社会

3

年齢と糖尿病の割合の図

高齢者で糖尿病患者が増えている

高齢者の3人に1人が糖尿病，もしくは糖尿病を否定できない

糖尿病治療の目標

健康な人と変わらない日常生活の質（QOL）の維持，健康な人と変わらない寿命の確保

糖尿病細小血管合併症（網膜症，腎症，神経障害）および動脈硬化性疾患（虚血性心疾患，脳血管障害，末梢動脈疾患）の

発症，進展の阻止

血糖，体重，血圧，血清脂質の良好なコントロール状態の維持

日本糖尿病学会編: 糖尿病治療ガイド2014-2015, 文光堂, 2014. P24.

と言われていますが…

「血管を健康に」

「元気な人生を」

ライフステージと糖尿病合併症

神経障害網膜症腎症

骨粗鬆症・骨折

認知症高血糖 がん

若年者 高齢者

心筋梗塞脳卒中

末梢動脈病変歯周病うつ病

非アルコール性脂肪肝炎過活動膀胱

新たな合併症！

要介護(≒寝たきり)となる原因

Chart1

脳血管障害

認知症

高齢による衰弱

骨折・転倒

関節疾患

その他

売上高

高齢による衰弱

24.1

20.5

13.1

9.3

7.4

25.6

Sheet1

売上高

脳血管障害 ノウケッカンショウガイ24.1

認知症 ニンチショウ20.5

高齢による衰弱 コウレイスイジャク13.1

骨折・転倒 コッセツテントウ9.3

関節疾患 カンセツシッカン7.4

その他 タ25.6

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認知症の原因疾患

Chart1

アルツハイマー病

血管性

レビ−小体型

その他

基礎疾患

66.2

19.6

6.2

9

Sheet1

基礎疾患 キソシッカン

アルツハイマー病 ビョウ66.2

血管性 ケッカンセイセイ19.6

レビ−小体型 レビーショウタイガタ6.2

その他 タ9

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年齢別認知症有病率%

1.5% 3.6%7.1%

14.6%

27.3%

Chart1

65-69

70-74

75-79

80-84

85-

有病率

1.5

3.6

7.1

14.6

27.3

Sheet1

有病率 ユウビョウリツ

65-691.5

70-743.6

75-797.1

80-8414.6

85-27.3

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耐糖能 人年 発症未調整危険度

p 多因子調整危険度

p

アルツハイマー病

正常 6658 51 1 (基準) 1 (基準)空腹時高血糖 854 5 0.77 0.58 0.61 0.29食後高血糖 2611 29 1.53 0.07 1.60 0.05

糖尿病 1544 20 1.81 0.03 2.05 0.01

脳血管性認知症

正常 6658 27 1 (基準) 1 (基準)空腹時高血糖 854 6 1.76 0.21 1.01 0.98食後高血糖 2611 20 1.95 0.02 1.39 0.29

糖尿病 1544 12 2.00 0.04 1.82 0.09

糖尿病患者の認知症リスク

Ohara T, Neurology 77, 1126,2011

血糖値と認知症リスク

Crene PK, N Engl J Med 369, 540,2013

5年間平均血糖5年間平均血糖

非糖尿病患者 糖尿病患者

アルツハイマー病における血中および髄液中インスリン濃度

正常 軽症 中等度重度

正常 軽症 中等度重度

正常 軽症 中等度重度

HbA1c

認知機能と低血糖

Bruce DG, Diabetologia, 2009

Chart1

非重症非重症非重症

重症重症重症

認知症

6.9

33.3

Sheet1

認知症 ニンチショウ

非重症 ヒジュウショウ6.9

重症 ジュウショウ33.3

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iPro2™による低血糖解析SU薬 or インスリン投与中のHbA1c

iPro2™による低血糖解析

夜間低血糖

日中低血糖

低血糖なし65歳未満

夜間低血糖

日中低血糖

低血糖なし65歳以上

N=14 N=10

SU薬 or インスリン投与中のHbA1c

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標

患者の特徴・健康状態

重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤，SU薬，グリニド薬など）の使用

なし 7.0%未満 7.0%未満 8.0%未満

8.0%未満(下限7.0%)

8.5%未満(下限7.5%)

あり

7.5%未満(下限6.5%)

8.0%未満(下限7.0%)

75歳以上65歳以上75歳未満

①中等度以上の認知症

②基本的ADL低下

③多くの併存疾患や機能障害

②手段的ADL低下，基本的ADL自立

①軽度認知障害〜軽度認知症

カテゴリｰⅢカテゴリｰⅡ

①認知機能正常

②ADL自立かつ

カテゴリｰⅠ

または

または

または

骨折の原因となる骨粗鬆症とは・・・

正常な骨 骨粗しょう症患者さんの骨

骨の量が減少して骨の中がスカスカになり， もろくなる病気です。

須田立雄ほか 編著：新 骨の科学 p225（医歯薬出版）200717

背 骨 足のつけ根

腕のつけ根 手 首

18

骨粗しょう症が原因で骨折しやすい部位

（財）骨粗鬆症財団 骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル p44（ライフサイエンス出版）2010より改変

最も骨折しやすいのは背骨で、次に足のつけ根、腕のつけ根、手首です。背骨の骨折は自覚症状がないことが少なくないので注意を要します。

19

骨粗しょう症は、寝たきりの原因になります

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版 p15（ライフサイエンス出版）

寝たきり

脊柱変形・姿勢異常

大腿骨近位部（足のつけ根）骨折

椎体（背骨）骨折骨折

QOL・ADLの低下死亡リスクの上昇

骨粗しょう症

骨量減少、骨質劣化

合併症消化器疾患（逆流性食道炎）

心肺機能低下など

20

0.5

0

1.0

1.5

2.0

死亡率

（人/100人・年）

0 個 1 個 2 個 3 個以上

0.40.5

1.0

1.6

圧迫骨折数

背骨の骨折と死亡率

Ensrud KE et al. J Am Geriatr Soc 48：241，2000

腰椎 頸部 腰椎 頸部

健常 DM 健常 DM 健常 DM 健常 DM

女性 男性

＊

＊

＊

＊

BMD(g/cm3)

2型糖尿病と骨折

Yamaguchi T, J Bone Miner Res 24:702, 2009Yamamoto M, Endocr J 62:299, 2015

骨密度

女性 男性

非DM T2DM 非DM T2DM

椎体骨折

Chart1

lumberlumber0.1430.179

femoral neckfemoral neck0.1020.12

健常

2型DM

0.755

0.858

0.602

0.641

Sheet1

健常 ケンジョウジン2型DM ガタ0.1430.179

lumber0.7550.8580.1020.12

femoral neck0.6020.641

Chart1

lumberlumber0.1620.202

femoral neckfemoral neck0.1030.119

健常

2型DM

0.898

1.025

0.692

0.748

Sheet1

健常 ケンジョウジン2型DM ガタ0.1620.202

lumber0.8981.0250.1030.119

femoral neck0.6920.748

2型糖尿病患者における椎体骨折・骨粗鬆症

23.9

%＜男性＞

36%

%＜女性＞

31%

%13.5 %

重症椎体骨折

重症椎体骨折：SQ grade 3または複数の椎体骨折

重症椎体骨折

骨粗鬆症

65/152名

43%

Chart1

3664

骨折あり

骨折なし

Sheet1

骨折あり コッsツ骨折なし コッセツ

3664

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Chart1

31.368.7

骨折あり

骨折なし

Sheet1

骨折あり コッsツ骨折なし コッセツ

31.368.7

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Chart1

項目 1

系列 1

43

Sheet1

系列 1

項目 143

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骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症治療薬の服用

食 事

月1回の治療もあります

運 動

Fraser LA, BMC Musculoskelet Disord. 2014; 15: 201.

全対象者(50歳以上)

インスリン依存 インスリン非依存

糖尿病患者は標準骨粗鬆薬が処方されていない

0.0

ビスホスホネ｜ト処方率

30.0

20.0

10.0

Lee P, J Clin Endocrinol Metab 2016;101:1945-1953

標準骨粗鬆薬使用者は重症疾患で助かりやすい

生存

率

認知症患者の股関節骨折

Buzkova P, J Clin Endocrinol Metab 99:4116, 2014

大腿骨近

位部骨折（−）

0 2 4 6 8 10 12

0.70

0.

75

0

.80

0.8

5

0

.90

0.9

5

1

.00

認知症

MCI

正常

認知症があると骨粗鬆症治療が行われない

Knopp-Sihota JA, Geriatr Gerontol Int 14:121-129, 2014（改)

因子 骨粗鬆症治療が行われる割合

認知症診断 0.59倍

年齢 65-69 基準

70-74 1.09倍

75-79 1.06倍

80-84 0.90倍

85-89 0.76倍

≧90 0.50倍

男性 0.14倍

骨折あり 1.58倍

合併症 1-3疾患 1.80倍

4-13疾患 3.36倍

認知症

転倒リスク 骨粗鬆症

大腿骨近位部骨折

ビタミンD, K不足骨質低下

フレイル

外的要因への適応力の低下

認知症と骨折の関連性

骨粗鬆症患者の認知症リスク

Tsai CH, Medicine 93:e188, 2014

認知

症発

症率

経過年数(年)

骨折なし骨折あり

Log-rank test P-value

Tsai CH, Medicine 93:e188, 2014

診断年齢 数 診断/1000人年 HR(95%CI)*

骨折なし 3516 15.7 1.00 (ref)

椎体骨折 51 24.4 1.47 (1.12-1.94)

上肢骨折 345 19.7 1.29 (1.15-1.44)

股関節骨折 334 34.6 1.60 (1.43-1.79)

下肢骨折 227 20.3 1.35 (1.18-1.55)

複数部位骨折 1426 21.3 1.34 (1.26-1.53)

骨折数 0 1002 21.0 1.00 (ref)

1 892 22.5 1.04 (0.95-1.14)

≧2 489 24.5 1.11 (1.00-1.25)

骨折部位と認知症リスク

Rolland Y, Alzheimers’ Res Ther 5:52, 2013

認知症患者の歩行能力低下

ステップワイズ HR (95%CI)

年齢 1.05 (1.02-1.08)

認知症罹病期間 1.16 (1.01-1.33)

有痛性関節症 1.84 (1.19-2.85)

下肢骨折による入院歴 6.35 (3.02-13.37)

ADLスコア 0.49 (0.43-0.56)

ACE阻害薬投与 0.52 (0.28-0.96)

当科外来の25OHD充足率(糖尿病)

充足9%

不十分33%不足

51%

欠乏7%

充足 30〜 不十分 20〜29不足 10〜19 欠乏 〜9

0

10

20

30

40

50

60

25-OH ﾋﾞﾀﾐﾝD

下位 7-15

中位 16-21

上位 22-49

n=43

n=41

n=40

永井聡，日本糖尿病学会北海道地方会, 札幌， 2013

ビタミンD欠乏と認知機能低下

Toffanelo ED, Neurology 84:2292-2298, 2014

≧30 ng/mL 充足20〜30 ng/mL不充分＜20 ng/mL 不足

日光浴の時間

Miyauchi M, J Nutr Sci Vitaminol 59:257-263, 2013

晴れの日に1日分のビタミンD（ 5.5 µg)が必要な時間

7月 12月9時 12時 15時 9時 12時 15時

札幌 7.4分 4.6分 13.3分 497分 76分 2741分つくば 5.9分 3.5分 10.1分 106分 22分 271分那覇 8.8分 2.9分 5.3分 78分 7.5分 17分

北海道を食べよう

13.0 µg

19.0 µg

25.6 µg

1.0 µg

5.5 µg

Chart1

項目 1

項目 2

項目 3

項目 4

ビタミンD

1

13

19

25.6

Sheet1

ビタミンD

項目 11

項目 213

項目 319

項目 425.6

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スライド-1スライド番号 1スライド番号 2スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5スライド番号 6スライド番号 7スライド番号 8スライド番号 9スライド番号 10スライド番号 11スライド番号 12認知機能と低血糖スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16骨折の原因となる骨粗鬆症とは・・・スライド番号 18スライド番号 19スライド番号 20

スライド-22型糖尿病と骨折2型糖尿病患者における�椎体骨折・骨粗鬆症スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5スライド番号 6スライド番号 7スライド番号 8スライド番号 9スライド番号 10スライド番号 11当科外来の25OHD充足率(糖尿病)スライド番号 13スライド番号 14北海道を食べよう