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経済産業省委託調査 経済産業省委託調査 経済産業省委託調査 経済産業省委託調査 平成 平成 平成 平成 28 28 28 28 年度産業経済研究委託 年度産業経済研究委託 年度産業経済研究委託 年度産業経済研究委託事業 事業 事業 事業 (起業家精神に関する調査 (起業家精神に関する調査 (起業家精神に関する調査 (起業家精神に関する調査事業 事業 事業 事業) 報 告 書 平成 平成 平成 平成 29 29 29 29 年 3 月 みずほ情報総研株式会社 みずほ情報総研株式会社 みずほ情報総研株式会社 みずほ情報総研株式会社

平成28228828年度産業経済研究委託年度産業経済 …...経済産業省委託調査 平成28228828年度産業経済研究委託年度産業経済研究委託事業 (起業家精神に関する調査事業))))

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経済産業省委託調査経済産業省委託調査経済産業省委託調査経済産業省委託調査

平成平成平成平成 28282828 年度産業経済研究委託年度産業経済研究委託年度産業経済研究委託年度産業経済研究委託事業事業事業事業

(起業家精神に関する調査(起業家精神に関する調査(起業家精神に関する調査(起業家精神に関する調査事業事業事業事業))))

報報報報 告告告告 書書書書

平成平成平成平成 29292929 年年年年 3333 月月月月

みずほ情報総研株式会社みずほ情報総研株式会社みずほ情報総研株式会社みずほ情報総研株式会社

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まえがきまえがきまえがきまえがき

企業に寿命がある以上、新しい企業が生まれなければ、経済活動の担い手である企業数

は減少する。また、産業にも栄枯盛衰があり、成長分野の一定割合が新規企業によって担

われるとするならば、創業が少ないことは成長分野の担い手が不足することにつながる。

このような場合、仮に豊富な事業機会があっても、その実現が危ぶまれるのである。

しかし、わが国の起業活動は、世界各国と比較して高水準にあるとはいえず、起業家精神の

高揚が重要な課題となっている。

本調査である、グローバル・アントルプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship

Monitor:以下、GEM)は、起業活動が国家経済に及ぼす影響について、各国家のデータを

用いて実証研究を行い、各国の政策担当者に重要な政策方針を提供している。GEM調査は、

1999年に日本を含めた10カ国からスタートし、2016年には66カ国(日本含む)の国際比較研

究へと拡大した。

GEM の主要な研究目的は、ベンチャー企業の成長プロセスを解明し、起業活動を活発にする

要因を理解し、その上で国家の経済成長や競争力、雇用などへの影響を定量的に測定すること

にある。最終的には、国家経済の活性化につなげるための政策提言を目的としている。具体的

には、起業活動の水準は、国家間でどのくらい違うのか。どのような政策や方針が、国家の起

業活動の水準を高めるのか。起業活動と経済成長にはどのような関係があるのか。等を研究課

題としている。

このような課題を明らかにするために、GEM は、①一般成人調査 (Adult Population Survey:

APS)と、②専門家調査(National Expert Survey: NES)の2種類の調査を実施しているが、本

報告書は APS によって得られた結果を中心にまとめた。

2016 年調査においては、昨年と比べてわが国の起業活動の水準(TEA)は、4.8 から 5.3 へと

上昇し、この水準は過去 18 回の中で 2008 年の 5.4 に次ぐ水準である。リーマンショック以前

の水準まで回復したともいえるだろう。

しかしながら、本年度は、定例の報告の他に、リーマンショック前後を比較したうえでのわ

が国の起業活動の特徴に触れているが、そこから明らかになったことは、リーマンショック後、

わが国の起業活動の特徴がさらに強調されるようになったということである。つまり、起業態

度を有する割合が相対的にさらに減少し、起業態度を有するグループからの起業割合がさらに

相対的に上昇した。

また、本年度も昨年度に引き続きパネルデータを使った WEB 調査および携帯電話の所有者

に対する調査を実施した。一昨年度までは、固定電話を所有している世帯のみを調査対象の母

集団としていたが、本年度は全体の約 4 分の 3 に相当する 1,500 件程度を WEB 調査と携帯電

話調査を通して集めた。昨年度は、WEB 調査と携帯電話調査の割合は全体の約半分であったの

で、本年度も新しい方法による調査件数を増やしたことになる。

なお、本報告書の作成にあたっては、調査票の翻訳・作成段階から GEM 日本チーム代表で

ある武蔵大学の高橋徳行教授の指導及び助言を受けている。また、一般にグローバルレポート

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と 呼 ば れ て い る 2016 年 調 査 全 体 の 結 果 に つ い て は 、 GEM の ホ ー ム ペ ー ジ

(http://www.gemconsortium.org/)からダウンロードできるので、こちらも参考にしてほしい

i。

最後になったが、本調査の電話アンケート回答協力者の皆様にお礼を申し上げたい。本調査

は、数多くの匿名の協力者なしには実現し得ないものである。

平成 29 年 3 月

みずほ情報総研株式会社

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目 次

Ⅰ はじめに .................................................... 1

1. 分析のフレームワーク ....................................... 1

2. GEM データの概要 ............................................ 3

3. 総合起業活動指数とは ....................................... 4

Ⅱ 起業活動の状況(Activity;行動) ........................ 6

1. 総合起業活動指数(TEA)と国家の経済力 ...................... 6

2. 事業機会型起業家と生計確立型起業家 .......................... 10

3. 男女別の起業活動の状況 ...................................... 11

4. 将来の起業計画 .............................................. 13

5. 休業・廃業 .................................................. 15

Ⅲ 起業活動を取り巻く環境(Attitude;態度) ................. 17

1. 起業活動の社会への浸透 ...................................... 17

2. 失敗に対する怖れ ............................................ 19

3. 事業機会の認知 .............................................. 21

4. 知識・能力・経験 ............................................ 22

5. 起業活動に対する評価 ........................................ 24

6. ビジネスエンジェル(個人投資家) .............................. 28

Ⅳ リーマンショック後に生じた日本の起業活動の変化

.................................................................. 30

Ⅴ まとめ ................................................... 35

付属資料(Ⅰ) 一般調査のデータ ............................... Ⅰ-1

付属資料(Ⅱ) 2016 年度一般調査の質問票(日本語版) ........... Ⅱ-1

付属資料(Ⅲ) 日本における GEM 調査の集計表 ................... Ⅲ-1

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1

ⅠⅠⅠⅠ はじめにはじめにはじめにはじめに

1.1.1.1.分析のフレームワーク分析のフレームワーク分析のフレームワーク分析のフレームワーク

GEM の調査目的は起業活動と国家の経済成長との関係をとらえ、起業活動を活発にする

ような有効な政策を打ち出すためのフレームワークを作ることである。図表図表図表図表 1.11.11.11.1 は GEM の

理論モデルを視覚化したものである。

これまで国家経済や産業の成長を説明するフレームワークとして、産業組織論の市場構

造→企業活動→経済成果という因果関係モデルが用いられてきた。このフレームワークに

よると、国家を取り巻く一般的な環境(制度や規則、金融市場の効率性、労働市場の流動

性、国内市場の開放度など)が、企業や業界の活動(研究開発や広告宣伝の程度など)に

影響し、その結果として国家の経済成長(国内総生産や雇用など)の水準が決定される。

しかし、このフレームワークの重大な欠点は、分析が静的なものに限定されることにある。

既存の企業のどのような活動が、経済成果にどの程度影響するのかを理解することはでき

る。しかし経済の成長は、時間の経過や活動のプロセスを無視した現象面だけでは説明で

きない。経済や事業を取り巻く環境の変化に反応し、既存の企業が新しい事業に取り組み、

なおかつ起業家が新しい機会を求めて新企業を設立し、ときには環境変化に取り残された

企業が消えてゆくプロセスやダイナミズムも国家の経済成長に大きく影響する。

特に GEM が注目するのはモデル中の「起業活動」の部分である。この起業活動は、われ

われが3つの A と呼ぶ、「態度(Attitude)」「行動(Activity)」「意欲(Aspiration)」によっ

て構成される。「態度」とは、新しい事業機会が訪れると思っているかどうかや起業家に

対する評価のことをいう。それ以外には、起業リスクの感じ方とか、起業家としての知識・

能力・経験に関連するものがある。「行動」とは、起業プロセスのダイナミズムに注目す

るものである。GEM では起業計画、起業準備、実際の起業、事業継続、休業・廃業など、

企業のライフサイクルごとの状況の把握に努めている。そして最後の「意欲」とは、起業

活動の目標や野心である。成長、海外展開、新製品の開発、社会的価値の創出などさまざ

まなものが考えられる。そしてこのような起業活動が、国家の経済成長やイノベーション

に影響する。図表図表図表図表 1.11.11.11.1 の左端の歴史的・文化的・社会的背景についても、起業分野の専門家

に対するアンケートを通じて調査している。

本報告書では 3 つの A のうち、その起業段階での問題に焦点を当てるため、「態度」と

「行動」を中心に分析した。

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2

図表図表図表図表 1.1.1.1.1 1 1 1 GEMGEMGEMGEM の概念モデルの概念モデルの概念モデルの概念モデル

社会的、社会的、社会的、社会的、文化的、文化的、文化的、文化的、

政治的背景政治的背景政治的背景政治的背景

基本的要件基本的要件基本的要件基本的要件

- 制度

- 社会的経済基盤

- マクロ経済の安定

- 健康・初等教育 既存の企業既存の企業既存の企業既存の企業

社会経済的な社会経済的な社会経済的な社会経済的な発展発展発展発展

(雇用、革新、

社会的価値)

効率向上要因効率向上要因効率向上要因効率向上要因- 高等教育・訓練

- 財市場の効率性

- 労働市場の効率性

- 金融市場の洗練性

- 技術受容度

- 市場規模

革新と起業活動革新と起業活動革新と起業活動革新と起業活動- 起業資金の調達

- 政府方針

- 政府の支援プログラム

- 起業家教育

- 研究開発成果の移転

- 国内市場の開放度

- 起業活動に関する物理的

な基盤

- 起業活動に関するビジネ

ス・法律の基盤

- 文化的・社会的規範

態度(態度(態度(態度(Attitude))))

事業機会認識、知識・能力・経験、

失敗の怖れ、起業活動の地位

意欲意欲意欲意欲((((Aspiration))))

成長、革新、海外展開の志向、

社会的価値の創出

活動(活動(活動(活動(Activity))))

創業・存続・撤退

起業活動起業活動起業活動起業活動

従業員の従業員の従業員の従業員の

起業活動起業活動起業活動起業活動

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3

2.2.2.2.GEMGEMGEMGEM データの概要データの概要データの概要データの概要

GEM では、18 歳から 64 歳までの「成人」を対象とした「一般調査」(Adult Population

Survey: APS)を実施している(調査票は付属資料Ⅱを参照)。この調査は、起業活動の程度、

事業機会の認識、起業に必要な知識・能力・経験の有無に加えて、起業家に対する社会的

評価など、起業活動に対する平均的な国民の意識も理解できるように設計されている。ま

た、回答者の性別、年齢、所得、教育歴などの属性も尋ねている。

2016 年の GEM 調査に参加したのは、日本を含めて 66 カ国である(各国の調査対象者

数は付属資料Ⅰを参照)。ただし、日本は、今年度に限っては、WEB で公開されているグ

ローバルレポートには掲載されていない。これは、APS 調査の実施時期が例年に比べて遅

れたためである。

日本におけるデータ収集は 2016 年 12 月~2017 年 2 月にかけて行った。調査は 2,020 人

に対して実施、その内訳は男性 1102 人(54.6%)、女性 918 人(45.4%)である。また年齢階級

については、18~24 歳 237 人(12.0%)、25~34 歳 358 人(18.1%)、35~44 歳 447 人(22.7%)、

45~54 歳 490 人(24.8%)、55~64 才 441 人(22.4%)である。

昨年調査と比べた時の大きな変化は、18-24 歳のサンプルを数多く取得できたことである。

また、図表 1.3 に示したように、国全体の年齢階級別分布にかなり近づいたことも大きな前

進の一つである。

図表図表図表図表 1.21.21.21.2 年齢階級別サンプル数の比較年齢階級別サンプル数の比較年齢階級別サンプル数の比較年齢階級別サンプル数の比較

年齢階級 2016 年調査サンプル数 2015 年調査サンプル数 2014 年調査サンプル数

18-24 237 164 130

25-34 358 760 221

35-44 447 330 475

45-54 490 390 549

55-64 441 358 629

注)各年齢層の合計が総データ数に足りないのは、年齢の回答を拒否した回答者がいるためである。

図表図表図表図表 1.31.31.31.3 調査サンプルと国全体の年齢階級別分布調査サンプルと国全体の年齢階級別分布調査サンプルと国全体の年齢階級別分布調査サンプルと国全体の年齢階級別分布

年齢階級 2016 年調査サンプル 国全体

18-24 12.0% 15.7%

25-34 18.1% 18.0%

35-44 22.7% 23.7%

45-54 24.8% 21.8%

55-64 22.4% 20.9%

注)国全体の分布は、総務省統計局「国勢調査結果」「人口推計」によるものであり、平成 27 年時点の数

字である。なお、国全体の年齢階級では、18-24 歳の階級のみ 15-24 歳と異なっているが、その他の年

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4

齢階級については同じである。

3.3.3.3.総合起業活動指数とは総合起業活動指数とは総合起業活動指数とは総合起業活動指数とは

GEMの重要な目的の一つは、各国の起業活動の水準を比較するための信頼できる指標を

作成することである。そこで、各国の起業活動の活発さをあらわす指標として「総合起業

活動指数(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity: TEA)」という尺度を開発した。こ

の尺度は、「現在、1 人または複数で、何らかの自営業、物品の販売業、サービス業等を

含む新しいビジネスをはじめようとしていますか」、「現在、1 人または複数で、雇用主

のために通常の仕事の一環として、新しいビジネスや新しいベンチャーをはじめようとし

ていますか」、そして「現在、自営業、物品の販売業、サービス業等の会社のオーナーま

たは共同経営者の1 人として経営に関与していますか」などの質問に基づき作成されてい

る。

GEMでは、下記のように定義する「誕生期」と「乳幼児期」の合計を各国の起業活動者

としており、これらの起業家が成人人口に占める割合(%)がTEAである(図表図表図表図表1.1.1.1.4444)。「誕

生期」は、独立・社内を問わず、新しいビジネスを始めるための準備を行っており、かつ

まだ給与を受け取っていないまたは受け取っている場合その期間が3カ月未満である人、

「乳幼児期」はすでに会社を所有している経営者で、当該事業からの報酬を受け取ってい

る期間が3カ月以上3.5年未満の人と定義されている。

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5

図表図表図表図表 1.41.41.41.4 起業活動の指標起業活動の指標起業活動の指標起業活動の指標

潜在的な起業家:事業機会、知識・能力・経験

誕生期:事業の開設準備

段階を含む

乳幼児期:(3.5年まで)

既存企業の経営者(3.5年以上)

計画段階 起業 継続

起業活動者

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6

ⅡⅡⅡⅡ 起業活動の状況(起業活動の状況(起業活動の状況(起業活動の状況(ActivityActivityActivityActivity;行動);行動);行動);行動)

1.1.1.1.総合起業活動指数(総合起業活動指数(総合起業活動指数(総合起業活動指数(TEATEATEATEA)と国家の経済力)と国家の経済力)と国家の経済力)と国家の経済力

GEM の研究によると、経済発展の段階が低い経済では企業への就職機会が少ないために

起業する傾向が強いが(生計確立型起業)、経済発展に伴い起業活動が低下する。これは、

開発が進むにつれて企業による雇用創出が増える結果と考えられる。そしてさらに経済が

発展すると生活のためというよりも事業機会を活かすために起業する傾向が強くなる(事

業機会型起業)。経済の発展段階によって起業活動の質は異なる。

そこで、分析に当たっては、経済の発展段階を勘案するために、要素主導型経済

(Factor-Driven Economies:6 カ国)、効率主導型経済(Efficiency-Driven Economies:

32 カ国)、イノベーション主導型経済(Innovation-Driven Economies:28 カ国・地域)

の 3 つの経済圏に分類した1(図表(図表(図表(図表 2.12.12.12.1))))。

図表図表図表図表 2.22.22.22.2 は調査対象国の総合起業活動指数(以下、TEA)をみたものである。日本の TEA

は 5.3%となっており、昨年の 4.8%に比べて上昇した。61 カ国中で、日本よりも低い国は、

イタリア(4.4%)、ドイツ(4.6%)を含む 5 か国である。

図表図表図表図表 2.32.32.32.3 は経済圏ごとに TEA をプロットし直したものである。経済圏ごとの TEA の平

均値は、要素主導型経済 16.8%(2015 年 21.4%、2014 年 23.3%、2013 年 21.1%、2012

年 23.7%)、効率主導型経済 14.2%(2015 年 14.7%、2014 年 13.0%、2013 年 14.4%、2012

年 13.1%)、イノベーション主導型経済 8.9%(2015 年 8.3%、2014 年 8.5%、2013 年 7.9%、

2012 年 7.1%)であり、経済発展の段階が低い方が起業活動の水準は高いという傾向は今年

度調査でも維持されている。また、調査対象国が同一ではないことに留意すべきだが、要

素型主導経済では 2015 年に比べて大幅に停会し、効率主導型経済では 2015 年と同程度の

水準となり、イノベーション主導型経済では 2015 年に比べてやや上昇した。

また、イノベーション主導型経済のなかでは、2015 年と同様にカナダが 16.7%と最も高

く、米国は、今回は 12.6%と上から4番目の高さであった。

図表図表図表図表 2.42.42.42.4 は横軸に各国の 1 人あたり GDP(経済発展の段階を示す)を、縦軸に TEA を

プロットして描いたものである。近似曲線からは、先に指摘のとおり、TEA は経済発展の

低い段階では高いが、経済が発展するに伴い低下することが読み取れる。また、日本はこ

の近似曲線のかなり下にある。これは日本の TEA は1人あたり GDP の割には低いことを

意味する。経済発展段階以外の要因が日本の TEA を引き下げている可能性が示唆される。

図表図表図表図表 2.52.52.52.5 は米国、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、中国の7カ国(以下「主

要7カ国」)について 2001 年から時系列で比較したものである(ドイツは 2007 年、イタリ

アは 2011 年、中国は 2001 年、2004 年、2008 年、フランスは 2014 年の調査に参加して

いない)。今回も、米国、イギリス、そして中国という TEA の高い 3 か国と日本、フラン

1 この分類は、Schwab, Klaus, ed. (2013) The World Competitiveness Report 2013-2014, Geneva, World Economic

Forumによる。なお、同レポートにおいて要素主導型から効率主導型、効率主導型からイノベーション主

導型への移行段階にあるとされている国々については、GEMの Global Entrepreneurship Monitor 2015 Global Reportと同様、それぞれ要素主導型、効率主導型に分類している。

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7

ス、イタリア、ドイツという TEA が低い4か国の2つのグループに分かれている。

図表図表図表図表 2.12.12.12.1 調査参加国調査参加国調査参加国調査参加国

要素主導型経済(要素主導型経済(要素主導型経済(要素主導型経済(6666 か国)か国)か国)か国) 効率主導型経済効率主導型経済効率主導型経済効率主導型経済(32(32(32(32 かかかか

国)国)国)国)

イノベーション主導型イノベーション主導型イノベーション主導型イノベーション主導型

経済(経済(経済(経済(28282828 か国)か国)か国)か国)

中南米・カリブ中南米・カリブ中南米・カリブ中南米・カリブ(12(12(12(12 か国)か国)か国)か国) アルゼンチン、チリ、コ

ロンビア、エクアドル、

グアテマラ、メキシコ、

ペルー、ウルグアイ、ジ

ャマイカ

パナマ、ブラジル、ベリ

ーズ、エルサルバドル

プエルトリコ

中近東・アフリカ中近東・アフリカ中近東・アフリカ中近東・アフリカ

((((11111111 か国)か国)か国)か国)

ブルキナファソ、カメル

ーン、イラン

エジプト、南アフリカ、

モロッコ、レバノン、ヨ

ルダン、サウジアラビア

イスラエル、アラブ首長

国連邦、カタール

アジア・オセアニアアジア・オセアニアアジア・オセアニアアジア・オセアニア

((((12121212 か国)か国)か国)か国)

インド、カザフスタン 中国、インドネシア、マ

レーシア、タイ

オーストラリア、日本、

台湾、韓国、香港

EU(EU(EU(EU(22222222 か国)か国)か国)か国) クロアチア、ハンガリ

ー、ポーランド、ブリガ

リア、ラトビア、マケド

ニア、スロバキア

エストニア、フィンラン

ド、ドイツ、ギリシャ、

アイルランド、イタリ

ア、ルクセンブルク、オ

ランダ、ポルトガル、ス

ロヴェニア、スペイン、

スウェーデン、イギリ

ス、フランス、オースト

リア

非EU(非EU(非EU(非EU(2222 か国)か国)か国)か国) ロシア トルコ、ジョージア(クル

ジア)

キプロス、スイス

北米(北米(北米(北米(2222 か国)か国)か国)か国) カナダ、米国

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8

図表図表図表図表 2222----2222 各国の各国の各国の各国の TEATEATEATEA

図表図表図表図表 2222----3333 経済圏別各国の経済圏別各国の経済圏別各国の経済圏別各国の TEATEATEATEA

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

イタリア

ドイツ

マレーシア

ブルガリア

スペイン

日本

フランス

モロッコ

アラブ首長国連邦

ギリシア

ロシア

マケドニア

韓国

フィンランド

南アフリカ

スウ

ェーデン

カタール

ハンガリー

スロベニア

ポルトガル

ヨルダン

スイス

台湾

クロアチア

ジョージア

(クルジア)

英国

ルクセンブルグ

香港

スロバキア

オーストリア

メキシコ

ジャマイカ

カザフスタン

中国

プエルトリコ

インド

ポーランド

アイルランド

オランダ

イスラエル

サウジアラビア

キプロス

米国

イラン

パナマ

インドネシア

ウルグアイ

ラトヴィア

エルサルバドル

エジプト

アルゼンチン

オーストラリア

トルコ

エストニア

カナダ

タイ

ブラジル

グァテマラ

レバノン

チリ

ペルー

コロンビア

カメルーン

ベリーズ

エクアドル

ブルキナファソ

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

ロシア

カザフスタン

インド

イラン

カメルーン

ブルキナファソ

マレーシア

ブルガリア

モロッコ

マケドニア

南アフリカ

ハンガリー

ヨルダン

クロアチア

ジョージア

(クルジア)

スロバキア

メキシコ

ジャマイカ

中国

ポーランド

サウジアラビア

パナマ

インドネシア

ウルグアイ

ラトヴィア

エルサルバドル

エジプト

アルゼンチン

トルコ

タイ

ブラジル

グァテマラ

レバノン

チリ

ペルー

コロンビア

ベリーズ

エクアドル

イタリア

ドイツ

スペイン

日本

フランス

アラブ首長国連邦

ギリシア

韓国

フィンランド

スウ

ェーデン

カタール

スロベニア

ポルトガル

スイス

台湾

英国

ルクセンブルグ

香港

オーストリア

プエルトリコ

アイルランド

オランダ

イスラエル

キプロス

米国

オーストラリア

エストニア

カナダ

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 5.3

日本 5.3

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9

図表図表図表図表 2222----4444 TEATEATEATEA とととと 1111 人あたり人あたり人あたり人あたり GDPGDPGDPGDP の関係の関係の関係の関係

注)縦軸は TEA,横軸は一人当たりの GDP(205 年)を千 US ドル単位で示している。

図表図表図表図表 2222----5555 主要7か国の主要7か国の主要7か国の主要7か国の TEATEATEATEA の推移の推移の推移の推移

y = -0.1088x + 14.582

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

0.0 50.0 100.0 150.0

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 11.0710.51 11.9411.3312.4410.03 9.61 10.76 7.96 7.59 12.3412.8412.7313.8111.8812.63

フランス 5.72 3.20 1.63 6.03 5.35 4.39 3.17 5.64 4.35 5.83 5.73 5.17 4.57 5.34 5.32

イタリア 9.11 5.90 3.19 4.32 4.94 3.47 5.01 4.62 3.72 2.35 4.32 3.43 4.42 4.87 4.42

イギリス 6.49 5.37 6.36 6.25 6.22 5.77 5.53 5.91 5.74 6.42 7.29 8.98 7.14 10.66 6.93 8.80

ドイツ 6.28 5.16 5.21 4.47 5.39 4.21 3.77 4.10 4.17 5.62 5.34 4.98 5.27 4.70 4.56

日本 3.10 1.81 2.76 1.48 2.20 2.90 4.34 5.42 3.26 3.30 5.22 3.99 3.72 3.83 4.80 5.30

中国 12.30 11.60 13.7015.7016.40 18.80 14.4024.0112.8314.0215.5312.8410.29

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

30.00

日本

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10

2.事業機会型起業家と生計確立型起業家2.事業機会型起業家と生計確立型起業家2.事業機会型起業家と生計確立型起業家2.事業機会型起業家と生計確立型起業家

起業活動の動機は多様だが、GEM では事業機会を追求するために起業するタイプ(事業

機会型起業家)と起業以外に選択肢がなく、必要に迫られて起業するタイプ(生計確立型

起業家)に区分している2。調査回答者総数に占める事業機会型起業家、生計確立型起業家

の割合をそれぞれ事業機会型起業活動率、生計確立型起業活動率とし、生計確立型起業活

動率に対する事業機会型起業活動率の比率を図表図表図表図表 2.62.62.62.6 に経済圏別に表した。この数値が高い

(低い)ほど、事業機会型起業家(生計確立型起業家)が相対的に多く、この値が1であ

れば事業機会型起業家と生計確立型起業家が同数ということになる。

経済圏別の平均をみると、要素主導型経済では 2.1 倍(2015 年 2.5 倍、2014 年 2.6 倍、

2013 年 2.9 倍、2012 年 1.9 倍)、効率主導型経済では 3.6 倍(2015 年 2.8 倍、2014 年 3.3

倍、2013 年 3.0 倍、2012 年 3.2 倍)であり、イノベーション主導型経済の 5.6 倍(2015

年 4.9 倍、2014 年 5.9 倍、2013 年 5.9 倍、2012 年 5.5 倍)を下回る。要素主導型や効率主

導型経済では、イノベーション主導型経済と比べて相対的に生計確立型起業家が多いとい

う傾向は今年度調査でも観察された。図表図表図表図表 2.72.72.72.7 は主要7カ国の推移を示したものである。日

本については、主要7カ国の間では、中国、ドイツに次いで低く、相対的に生計確立型起

業家が多いことを示している。ただ、2015 年度の比べると大幅に上昇している。

図表図表図表図表 2222----6666 事業機会型事業機会型事業機会型事業機会型 TEA/TEA/TEA/TEA/生計確立型生計確立型生計確立型生計確立型 TEATEATEATEA(倍率)(倍率)(倍率)(倍率)

2 「このビジネスの立ち上げに関わっているのは、ビジネスチャンスを生かすためですか。それとも仕事

に関してこれより良い選択肢がないからですか。」という質問に対して「ビジネスチャンスを生かすため」

と回答したものを事業機会型起業家、「仕事に関してこれより良い選択肢がない」と回答したものを生計

確立型起業家とした。

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

インド

カメルーン

イラン

ロシア

ブルキナファソ

カザフスタン

ジョージア

(クルジア)

ジャマイカ

ブラジル

スロバキア

マケドニア

レバノン

グァテマラ

エルサルバドル

エジプト

アルゼンチン

クロアチア

ブルガリア

エクアドル

ウルグアイ

ヨルダン

中国

モロッコ

ポーランド

南アフリカ

チリ

ハンガリー

タイ

トルコ

メキシコ

マレーシア

パナマ

インドネシア

ラトヴィア

ペルー

コロンビア

ベリーズ

サウジアラビア

ギリシア

アラブ首長国連邦

プエルトリコ

スペイン

キプロス

韓国

台湾

ドイツ

スロベニア

オランダ

ポルトガル

エストニア

香港

オーストラリア

オーストリア

日本

イスラエル

アイルランド

カナダ

スイス

英国

ルクセンブルグ

米国

フランス

イタリア

カタール

フィンランド

スウ

ェーデン

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 5.2

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11

図表図表図表図表 2222----7777 事業機会型事業機会型事業機会型事業機会型 TEA/TEA/TEA/TEA/生計確立型生計確立型生計確立型生計確立型 TETETETEAAAA(倍率)の推移(倍率)の推移(倍率)の推移(倍率)の推移

3.3.3.3.男女別の起業活動の状況男女別の起業活動の状況男女別の起業活動の状況男女別の起業活動の状況

図表図表図表図表 2.82.82.82.8 は女性の TEA に対する男性の TEA の比率(男性 TEA 比率)を表したものであ

る。この比率が 1 のときは男性と女性の起業家数が同じであることを、1 より小さいときは

女性の起業家が男性のそれを上回ることを示す。

昨年と同様、2015 年もほとんどの国の男性 TEA 比率は1を上回る。男性 TEA 比率が1

を下回っている国は、インドネシア(0.8 倍)、メキシコ(0.9 倍)の2か国にとどまった。

経済圏別にみると、要素主導型経済、効率主導型経済、そしてイノベーション主導型経

済なるにつれて、男性の起業活動のウエートが増えている。この傾向は最近維持されてい

る。

図表図表図表図表 2.92.92.92.9 では、横軸に男性 TEA 比率、縦軸に国全体の(男女合計の)TEA をとり、両者

の関係をみている。この図表からは、男性 TEA 比率が低いほど、国・地域全体の TEA も

高い傾向がやや読み取れるが、それほど強いものではない。

図表図表図表図表 2.102.102.102.10 は先進国における男女別の TEA の推移を示したものである。ほぼすべての年

において女性の TEA は男性と比べて低く、その差が縮小するという傾向はみられない。こ

の点は他の先進国でも同様である。

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

米国 7.2 6.3 5.1 6.9 3.0 2.4 3.5 3.5 3.4 6.0 5.7 7.7

フランス 1.3 1.6 2.8 8.3 5.7 2.8 5.7 4.4 5.1 5.1 7.7

イタリア 5.0 3.4 5.0 5.5 5.5 6.5 4.6 4.0 5.8 4.0 7.8

イギリス 6.7 5.3 6.9 5.7 4.7 7.6 4.6 4.3 5.0 6.5 3.1 6.2

ドイツ 2.4 1.6 2.7 2.0 2.6 4.0 3.5 4.1 3.3 4.7 3.5

日本 4.2 5.5 1.9 3.2 2.3 1.7 3.0 3.6 2.8 4.1 2.7 5.2

中国 1.2 1.0 1.6 1.0 1.4 1.4 1.7 1.9 2.0 1.9 2.6

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

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12

図表図表図表図表 2222----8888 男性の男性の男性の男性の TEA/TEA/TEA/TEA/女性の女性の女性の女性の TEATEATEATEA

図表図表図表図表 2222----9999 国全体の国全体の国全体の国全体の TEATEATEATEA と男性と男性と男性と男性 TEATEATEATEA 比率の関係比率の関係比率の関係比率の関係

注)縦軸が男女合計の国全体の TEA であり、横軸が男性 TEA 比率を取っている。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

カメルーン

カザフスタン

ロシア

ブルキナファソ

インド

イラン

インドネシア

メキシコ

ブラジル

ペルー

エルサルバドル

マレーシア

エクアドル

ベリーズ

パナマ

タイ

アルゼンチン

コロンビア

ジャマイカ

ブルガリア

サウジアラビア

南アフリカ

中国

チリ

スロバキア

グァテマラ

モロッコ

レバノン

ポーランド

ジョージア

(クルジア)

ウルグアイ

ラトヴィア

クロアチア

ハンガリー

トルコ

マケドニア

エジプト

ヨルダン

カタール

スペイン

ギリシア

オーストリア

フィンランド

スウ

ェーデン

米国

イスラエル

韓国

カナダ

オーストラリア

オランダ

イタリア

ポルトガル

プエルトリコ

エストニア

アラブ首長国連邦

ルクセンブルグ

ドイツ

アイルランド

香港

スイス

フランス

スロベニア

英国

日本

台湾

キプロス

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 2.2

y = -4.168x + 18.934

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

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13

図表図表図表図表 2222----10101010 性別性別性別性別 TEATEATEATEA の推移の推移の推移の推移

注)おおむね数字が高いのが男性 TEA、低いものが女性 TEA である。

4.4.4.4.将来の起業計画将来の起業計画将来の起業計画将来の起業計画

GEMでは、現在の起業活動だけでなく、将来の計画についても尋ねている。図表図表図表図表2.112.112.112.11に

は「今後3年以内に、1 人または複数で、自営業・個人事業を含む、新しいビジネスを計画

している」成人人口の割合(起業計画率)が示されている。経済圏別にみると要素主導型

経済が平均35.2%(2015年43.3%、2014年43.2%、2013年46.5% 、2012年48.9%)、効率主

導型経済が29.8%(2015年28.7%、2014年25.2%、2013年 28.3%、2012年年29.0%)、イノ

ベーション主導型経済が18.1%(2015年13.9%、2014年14.8%、2013年14.4%、2012年12.7%)

となっており、TEAと同様、経済発展の段階の低い方が高い。

図表図表図表図表2.122.122.122.12は、将来の起業計画についての主要7カ国の推移である。日本の起業計画率は、

2014年に5%台に落ち込んだが、2015年はやや回復して6%台に戻り、2016年はさらに上昇

し、6.8%まで回復した。最近2年間の動きはTEAの動きと連動している。ドイツは、2016

年調査では、TEAは日本よりも下回ったものの、起業計画率では、日本を大幅に上回って

いる。

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

18.00

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

年2011

年2012

年2013

年2014

2015

2016

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

米国 フランス イギリス ドイツ 日本

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14

図表図表図表図表 2222----11111111 将来の起業計画将来の起業計画将来の起業計画将来の起業計画

図表図表図表図表 2222----12121212 将来の起業計画の推移将来の起業計画の推移将来の起業計画の推移将来の起業計画の推移

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

ロシア

インド

カザフスタン

カメルーン

イラン

ブルキナファソ

マレーシア

ブルガリア

南アフリカ

スロバキア

パナマ

ジョージア

(クルジア)

メキシコ

ハンガリー

ヨルダン

ラトヴィア

クロアチア

タイ

ポーランド

サウジアラビア

中国

マケドニア

ブラジル

アルゼンチン

ウルグアイ

インドネシア

エルサルバドル

トルコ

モロッコ

グァテマラ

ジャマイカ

エクアドル

レバノン

チリ

ペルー

ベリーズ

コロンビア

エジプト

スペイン

日本

ドイツ

ギリシア

スウ

ェーデン

オランダ

スイス

英国

イタリア

フィンランド

オーストリア

スロベニア

オーストラリア

ポルトガル

米国

アイルランド

フランス

ルクセンブルグ

香港

キプロス

カナダ

エストニア

プエルトリコ

イスラエル

韓国

台湾

カタール

アラブ首長国連邦

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 15.27 15.49 13.68 16.37 13.49 14.35 12.39 10.68 10.36 15.77 16.54 16.64 16.23 17.14 16.41

フランス 4.20 6.27 14.38 12.98 14.84 16.54 15.17 17.95 15.97 19.76 18.92 13.73 16.00 17.22

イタリア 11.93 8.14 11.62 11.07 10.18 12.86 9.16 5.50 4.75 11.82 11.26 13.19 9.58 11.64

イギリス 6.30 7.77 9.53 9.00 7.82 7.44 7.07 6.09 6.88 10.37 11.46 7.60 8.92 9.42 11.28

ドイツ 7.39 8.79 6.76 7.34 6.70 6.23 7.18 7.83 7.60 8.89 8.90 8.28 9.16 8.14

日本 1.57 3.57 1.09 1.56 2.36 5.51 7.95 5.45 4.93 7.14 5.36 7.05 5.29 6.41 6.84

中国 34.30 34.70 28.50 31.80 37.20 26.40 30.10 43.36 21.71 16.62 20.24 23.84 26.37

0.005.00

10.0015.0020.0025.0030.0035.0040.0045.0050.00

日本 6.8

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15

5.5.5.5.休業・廃業休業・廃業休業・廃業休業・廃業

GEMでは、事業の休業・廃業についても調査している。図表図表図表図表2.132.132.132.13には「過去12カ月以内

に、所有、経営していた何らかの自営業、物品の販売業、サービス業を休業または廃業し

ましたか」という質問を基に、休業または廃業したという成人人口の割合(休・廃業率)

を経済圏別に示した。

各経済圏の平均値は、要素主導型経済が4.0%と、効率主導型経済(3.7%)、イノベーシ

ョン主導型経済(2.0%)を上回る。TEAと休・廃業率は正の相関を示しており、要素主導

型経済ではTEAが高く参入が活発な分、休業・廃業も多いといえる。また、経済が発展し

ているほど、休・廃業率のばらつきが小さいという傾向も観察できる。

図表図表図表図表2.142.142.142.14の主要7カ国の推移をみると、中国の休・廃業率が2003年以降低下傾向にあった

が、2015年調査に続いて2016年もやや上昇した。TEAと同様に、主要7カ国については、

休業・廃業の水準の差も縮小する傾向にある。日本は引き続き低い水準であるが、日本以

外にもフランス、イタリア、イギリス、そしてドイツが1%台となった。

図表図表図表図表 2222----13131313 休業・廃業休業・廃業休業・廃業休業・廃業

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

ロシア

インド

カザフスタン

イラン

ブルキナファソ

カメルーン

ブルガリア

ハンガリー

マレーシア

マケドニア

インドネシア

パナマ

メキシコ

中国

グァテマラ

ラトヴィア

スロバキア

モロッコ

ポーランド

ジョージア

(クルジア)

タイ

クロアチア

サウジアラビア

トルコ

ブラジル

ヨルダン

ジャマイカ

アルゼンチン

南アフリカ

レバノン

ウルグアイ

ペルー

チリ

エルサルバドル

コロンビア

エクアドル

エジプト

ベリーズ

イタリア

韓国

ドイツ

スペイン

ポルトガル

フィンランド

スイス

日本

アラブ首長国連邦

スロベニア

フランス

英国

アイルランド

台湾

オーストリア

米国

スウ

ェーデン

オランダ

プエルトリコ

ルクセンブルグ

香港

オーストラリア

エストニア

キプロス

カタール

イスラエル

カナダ

ギリシア

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 1.3

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16

表表表表 2222----14141414 休業・廃業の推移休業・廃業の推移休業・廃業の推移休業・廃業の推移

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 3.35 3.84 2.25 3.63 2.63 2.99 2.67 2.34 2.71 2.92 2.85 2.47 2.48 2.20 2.02

フランス 0.68 1.00 4.23 3.76 3.03 2.01 1.69 1.29 1.30 1.58 1.20 1.27 0.87 1.53

イタリア 2.08 1.33 2.22 1.63 1.32 1.22 1.15 0.74 1.07 1.62 1.41 1.60 1.39 0.80

イギリス 1.74 2.09 2.04 1.76 2.02 1.24 1.30 1.63 1.34 1.49 1.17 1.38 1.49 1.50 1.60

ドイツ 2.17 1.85 2.06 1.27 1.88 1.02 1.29 0.93 1.30 1.15 1.00 0.95 1.28 1.11

日本 0.89 0.91 0.78 0.46 1.16 2.00 0.58 1.03 1.07 0.59 0.61 1.15 0.62 0.92 1.27

中国 4.90 8.00 5.20 6.90 6.10 0.00 4.30 3.40 3.66 2.43 1.98 0.98 1.85 2.46

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

8.00

9.00

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17

ⅢⅢⅢⅢ 起業活動を取り巻く環境(起業活動を取り巻く環境(起業活動を取り巻く環境(起業活動を取り巻く環境(AttitudeAttitudeAttitudeAttitude;態度);態度);態度);態度)

1.1.1.1.起業活動の社会への浸透起業活動の社会への浸透起業活動の社会への浸透起業活動の社会への浸透

起業活動が活発な国・地域か、そうでないかを探るための指標の一つとして、起業家や

起業家精神の社会への浸透度が考えられる。社会学の制度理論によると、起業家が社会的

に認知され、起業家というキャリアの選択や起業活動それ自体が正当化されていれば、そ

れらの存在が当然のことだと思われるようになり、結果として、起業活動が活発化する。

加えて、本質問項目は起業家ネットワークの存在についても参考になる。多くの研究が

指摘するように、起業のプロセスにおいて起業家を取り巻くネットワークが重要な役割を

果たす。GEM では起業家の社会への浸透やネットワークの存在、さらにロールモデルとし

ての存在を知るために「過去 2 年間に、新しく事業を始めた人を個人的に知っていますか」

という質問をした。図表図表図表図表 3.13.13.13.1 は、新しく事業を始めた人を個人的に知っているとする成人人

口の割合(起業活動浸透(ロールモデル)指数)である。

経済圏別に起業活動浸透(ロールモデル)指数をみると、要素主導型経済の平均は 51.3%

(2015 年 55.4%、2014 年 49.6%、2013 年 56.6%、2012 年 56.4%)、効率主導型経済が 40.9%

(2015 年 39.6%、2014 年 39.8%、2013 年 38.9%、2012 年 36.5%)、イノベーション主

導型経済が 34.5%(2015 年 32.6%、2014 年 31.6%、2013 年 29.7%、2012 年 30.9%)

となっており、経済発展が進んでいない経済圏の方が高い。

イノベーション主導型経済のなかで最も高いのはアラブ首長国連邦(61.7%)、イスラエ

ル(50.5%)であり、次にフィンランド(44.0%)、スロベニア(41.8%)が続く。日本は

18.7%とイノベーション主導型経済の中では最も低い。この設問には、「個人的に知ってい

るか」という条件が付いており、メディアを通して知っているだけではイエスという回答

にならないことに留意したい。

ちなみに、TEA と起業活動浸透(ロールモデル)指数との相関係数(国レベルのデータ

によるもの。個票ベースではない)は、2015 年調査(今回調査)では 0.40 であり、統計的

にも 1%水準で有意であった。これは、身近に起業家がいるという人の割合が高い国・地域

ほど起業活動が活発であるという結果であり、上記の制度理論と整合的といえる。

図表図表図表図表 3.23.23.23.2 をみると、日本の起業活動浸透(ロールモデル)指数は、2005 年以降ほぼ一貫

して低下した後、2013 年にはやや上昇、2014 年にはやや低下、2015 年調査では再び微増

し、2016 年はその傾向を維持した。いずれにしても、日本がこの指数においても先進国の

中で低い状態であることに変化はなかった。また、この指数において、TEA の水準に比べ

て一貫して高い水準を保っていたフランスは、2016 年調査でも再び高い水準となった。

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18

図表図表図表図表 3333----1111 起業活動の浸透(ロールモデル指数)起業活動の浸透(ロールモデル指数)起業活動の浸透(ロールモデル指数)起業活動の浸透(ロールモデル指数)

図表図表図表図表 3333----2222 起業活動の浸透(ロールモデル指数)の推移起業活動の浸透(ロールモデル指数)の推移起業活動の浸透(ロールモデル指数)の推移起業活動の浸透(ロールモデル指数)の推移

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

インド

ロシア

イラン

カメルーン

カザフスタン

ブルキナファソ

エジプト

トルコ

ジョージア

(クルジア)

ハンガリー

ヨルダン

クロアチア

南アフリカ

ウルグアイ

アルゼンチン

タイ

スロバキア

グァテマラ

ラトヴィア

マレーシア

マケドニア

エクアドル

ブルガリア

チリ

エルサルバドル

ブラジル

モロッコ

ジャマイカ

ポーランド

コロンビア

ペルー

中国

メキシコ

パナマ

ベリーズ

インドネシア

レバノン

サウジアラビア

日本

プエルトリコ

ドイツ

ギリシア

ポルトガル

イタリア

カタール

米国

スイス

アイルランド

キプロス

フランス

英国

オランダ

オーストラリア

スペイン

カナダ

台湾

ルクセンブルグ

スウ

ェーデン

エストニア

韓国

香港

オーストリア

スロベニア

フィンランド

イスラエル

アラブ首長国連邦

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 18.7

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 43.5137.44 38.5535.8041.4034.2232.5037.2032.45 28.7727.0428.9527.2128.8129.8430.60

フランス 22.2029.13 26.3440.9745.2546.6248.6532.9436.42 47.8343.3933.8333.2135.93 33.16

イタリア 33.5739.24 32.3534.9430.8036.8838.0632.0029.86 30.36 20.1216.8324.2228.2027.93

イギリス 30.1423.10 24.5927.6329.2127.1525.6525.9523.56 34.2431.9730.0729.2530.9529.7433.17

ドイツ 36.2539.30 36.7737.8838.5433.99 31.1231.12 29.9925.4724.3325.0123.9723.6222.43

日本 16.1712.88 21.4429.6729.3327.9822.6623.2421.13 17.4414.9113.9716.7215.5918.6018.67

中国 58.80 53.40 47.0051.6064.50 57.30 59.7067.7552.4248.3556.0050.3550.54

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

80.00

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19

2.2.2.2.失敗に対する恐れ失敗に対する恐れ失敗に対する恐れ失敗に対する恐れ

図表図表図表図表 3.33.33.33.3 は、「失敗することに対する怖れがあり、起業を躊躇している」という成人人口

の割合(失敗脅威指数)をみたものである。経済圏別の平均は、要素主導型経済では 33.2%

(2015 年 33.1%、2014 年 32.3%、2013 年 30.9%、2012 年 27.8%)、効率主導型経済では

38.6%(2015 年 38.1%、2014 年 35.5%、2013 年 38.4% 、2012 年 36.6%)、イノベーショ

ン主導型経済では 43.5%(2015 年 43.2%、2014 年 42.1%、2013 年 43.2% 、2012 年 44.5%)

と、昨年と同様、経済の発展段階が高い国ほど、失敗に対する怖れによって起業を躊躇し

ている成人人口の割合が高い。他の経済圏よりも雇用機会が豊富であることがその要因の

一つとして挙げられるであろう。

イノベーション主導型経済についてみると、最近は、ギリシャが 70.2%(2015 年 64.2%、

2014 年 70.6%、2013 年 69.1%)と、最も高い。このほか、イタリアも依然高く、今年も

53.3%(2015 年 61.9%、2014 年 57.1%、2013 年 56.2%)である。これらの国では、経済

危機に襲われた時期からこの数値が一段と高くなった。

図表図表図表図表 3.43.43.43.4 からは、失敗脅威指数が高いほど TEA は低い傾向が読み取れる。

失敗脅威指数の推移を示した図表図表図表図表 3.53.53.53.5 によると、上昇傾向が続いていたイタリアは依然と

して水準は高いものの、上昇傾向はひと段落した。主要国全体でみると長期的に上昇傾向

がみられる。

図図図図表表表表 3333----3333 失敗に対する恐れ(失敗脅威指数)失敗に対する恐れ(失敗脅威指数)失敗に対する恐れ(失敗脅威指数)失敗に対する恐れ(失敗脅威指数)

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

ブルキナファソ

カメルーン

カザフスタン

インド

ロシア

イラン

コロンビア

パナマ

ジャマイカ

ベリーズ

メキシコ

チリ

ペルー

エクアドル

エジプト

アルゼンチン

マレーシア

グァテマラ

南アフリカ

ジョージア

(クルジア)

トルコ

エルサルバドル

ウルグアイ

レバノン

モロッコ

ヨルダン

中国

サウジアラビア

マケドニア

ブラジル

ラトヴィア

ブルガリア

クロアチア

インドネシア

スロバキア

ハンガリー

タイ

ポーランド

プエルトリコ

カタール

韓国

米国

オランダ

スロベニア

スイス

英国

アイルランド

香港

フランス

フィンランド

台湾

オーストラリア

日本

カナダ

ドイツ

スペイン

スウ

ェーデン

ポルトガル

オーストリア

エストニア

アラブ首長国連邦

ルクセンブルグ

イタリア

イスラエル

キプロス

ギリシア

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 43.6

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20

図表3図表3図表3図表3----4444 TEATEATEATEA と失敗脅威指数との関係と失敗脅威指数との関係と失敗脅威指数との関係と失敗脅威指数との関係

注)縦軸が TEA、横軸が失敗脅威指数である。

図表図表図表図表 3333----5555 失敗脅威指数の推移失敗脅威指数の推移失敗脅威指数の推移失敗脅威指数の推移

y = -0.3421x + 25.938

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 20.5421.29 22.7121.2122.8820.9623.0628.2232.47 32.2237.1437.8335.0232.8131.5534.90

フランス 33.2636.17 45.3949.9951.5449.6548.6250.3750.88 42.9643.8046.7345.3142.84 40.38

イタリア 34.8029.88 40.4040.1924.7038.8242.0649.4149.62 44.50 56.6156.2057.0761.9453.31

イギリス 34.2033.54 33.5932.9235.7935.7935.7136.4436.37 38.9145.7540.9439.8437.6737.1636.18

ドイツ 52.9048.74 49.2947.7151.2746.46 48.6545.54 44.4149.9249.0448.1546.3746.7544.34

日本 22.5919.18 22.4922.6418.5625.9636.6140.6234.62 35.0646.9746.9247.3744.4043.9043.59

中国 26.20 29.10 23.7023.8029.50 32.20 32.7034.9436.0135.8932.2437.5341.00

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

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21

3.3.3.3.事業機会の認識事業機会の認識事業機会の認識事業機会の認識

起業活動とは、有望な事業機会を認識し、そのような事業機会を実現するために人材や

資金などの経営資源を結集し、その結果として新しいビジネスの誕生に導くプロセスであ

る。そこで、GEMでは「事業機会の認識」に関して、「今後6ヶ月以内に、自分が住む地

域に起業に有利なチャンスが訪れると思いますか」を尋ねている。ここでは、このような

チャンスが訪れるとする成人人口の割合(事業機会認識指数)をみていく。

図表図表図表図表3.63.63.63.6で経済圏別に事業機会認識指数をみると、要素主導型経済では平均44.4%(2015

年53.8%、2014年54.6%、2013年60.8%、2012年63.3%)、効率主導型経済では42.4%(2015

年41.1%、2014年42.4%、2013年41.7%、2012年41.5%)、イノベーション主導型経済では

40.1%(2015年38.4%、2014年38.8%、2013年33.4%、2012年32.1%)となっており、経済

の発展段階が低い方が高い。TEAとの相関係数(国レベルのデータによるもの。個票ベー

スではない)は、2016年調査(今回調査)では0.529であり、統計的にも1%水準で有意で

ある。

イノベーション主導型経済では、スウェーデン(78.5%)、カナダ(59.0%)、そして米

国(57.3%)などで高い。逆に、日本(7.5%)やギリシャ(13.0%)の水準は低く、これら

の国々に関する結果は最近3年間、変わっていない。

図表図表図表図表3.73.73.73.7によると、日本の事業機会認識指数は2006年にひと桁に低下し、それ以降、ふた

桁になることなく、他の主要7カ国と比べて低い水準が続いている。イタリアでは、2014

年に低下傾向にやや歯止めがかかり、今年もその傾向を維持した。

図表図表図表図表 3333----6666 事業機会の認識事業機会の認識事業機会の認識事業機会の認識

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

ロシア

イラン

カザフスタン

インド

ブルキナファソ

カメルーン

ブルガリア

スロバキア

クロアチア

マレーシア

ウルグアイ

ジョージア

(クルジア)

ハンガリー

ヨルダン

ラトヴィア

南アフリカ

中国

タイ

マケドニア

エルサルバドル

メキシコ

ポーランド

ブラジル

パナマ

インドネシア

アルゼンチン

モロッコ

エクアドル

グァテマラ

トルコ

チリ

コロンビア

エジプト

ペルー

レバノン

ジャマイカ

ベリーズ

サウジアラビア

日本

ギリシア

プエルトリコ

スロベニア

スペイン

アラブ首長国連邦

台湾

フランス

イタリア

ポルトガル

韓国

キプロス

ドイツ

スイス

オーストリア

英国

アイルランド

カタール

フィンランド

オーストラリア

ルクセンブルグ

エストニア

イスラエル

オランダ

香港

米国

カナダ

スウ

ェーデン

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 7.5

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22

図表図表図表図表 3333----7777 事業機会認識指数の推移事業機会認識指数の推移事業機会認識指数の推移事業機会認識指数の推移

4.4.4.4.知識・能力・経験知識・能力・経験知識・能力・経験知識・能力・経験

事業機会を実際のビジネスとして成立させるためには経営資源を調達し、事業のシステ

ムを構築し、リーダーシップを発揮して組織を運営管理することが必要になる。したがっ

て、起業に当たっては、事業機会を認識するだけではなく、それを実現するための知識・

能力・経験が欠かせない。

GEMでは、知識・能力・経験の指標を作成するために「新しいビジネスを始めるために

必要な知識、能力、経験を持っていますか」という質問を行っている。図表図表図表図表3.83.83.83.8はこれらを

持っているとする成人人口の割合(知識・能力・経験指数)をみたものである。

各経済圏の平均は、要素主導型経済では55.7%(2015年65.8%(2014年64.7%、2013年

68.7%、2012年70.5%)、効率主導型経済では54.5%(2015年53.0%、2014年54.9%、2013

年51.8%、2012年52.4%)、イノベーション主導型経済では42.6%(2015年40.7%、2014

年42.0%、2013年40.6%、2012年38.3%)である。TEAとの相関係数(国レベルのデータに

よるもの。個票ベースではない)は、2016年調査(今回調査)では0.706と非常に強く、統

計的にも1%水準で有意である。

図表図表図表図表3.93.93.93.9からは、日本の知識・能力・経験指数は2001年以降一貫して他国を大きく下回る

こと、そして上昇傾向がみられないことが読み取れる。2016年調査で、TEAの水準が日本

と同程度であったドイツと比較しても、30ポイント以上の開きがある。

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 34.8936.67 30.7233.6132.3224.3025.1836.5728.35 34.7936.2543.4947.1650.8546.6360.94

フランス 6.89 10.26 9.33 21.1321.6520.7923.2621.5924.12 33.8734.9237.5222.8728.26 30.56

イタリア 47.8540.47 34.1025.3614.8823.2039.5029.6624.73 24.68 19.8017.3426.5725.6632.14

イギリス 23.0027.09 35.2235.9238.7536.7639.0030.1824.04 29.2433.3032.8235.5440.9941.5547.34

ドイツ 23.6520.46 13.5313.4517.4820.03 23.9122.18 28.4835.1736.1631.3037.5938.2741.86

日本 6.95 5.25 7.47 13.9916.55 9.15 8.87 7.64 8.00 5.92 6.35 6.37 7.65 7.27 7.62 7.49

中国 28.10 39.20 25.5034.6039.20 25.30 36.2048.8432.2433.0731.8831.7138.29

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

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23

図表図表図表図表 3333----8888 知識・能力・経験知識・能力・経験知識・能力・経験知識・能力・経験

図図図図表表表表 3333----9999 知識・能力・経験指数の推移知識・能力・経験指数の推移知識・能力・経験指数の推移知識・能力・経験指数の推移

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

ロシア

インド

カザフスタン

イラン

カメルーン

ブルキナファソ

マレーシア

中国

南アフリカ

ハンガリー

ブルガリア

メキシコ

ジョージア

(クルジア)

タイ

スロバキア

エジプト

パナマ

ヨルダン

ラトヴィア

クロアチア

ブラジル

トルコ

マケドニア

インドネシア

ウルグアイ

モロッコ

ポーランド

アルゼンチン

チリ

グァテマラ

コロンビア

レバノン

ペルー

エルサルバドル

サウジアラビア

エクアドル

ジャマイカ

ベリーズ

日本

台湾

イタリア

香港

スウ

ェーデン

フィンランド

フランス

ドイツ

ルクセンブルグ

イスラエル

オランダ

ギリシア

ポルトガル

スイス

エストニア

アイルランド

韓国

スペイン

プエルトリコ

英国

オーストリア

カタール

スロベニア

オーストラリア

キプロス

カナダ

米国

アラブ首長国連邦

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 11.0

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 60.5956.94 53.9054.2852.1350.2148.3055.6656.16 59.5255.6955.8855.7453.3455.7162.40

フランス 20.0126.27 24.9133.0835.9833.3233.4724.6627.11 37.2738.4335.6633.1535.44 43.37

イタリア 33.3639.00 35.1832.6332.1044.4950.5140.0541.19 42.42 29.9729.1131.3130.5438.88

イギリス 45.9645.45 48.3851.6850.9749.6248.7149.9147.02 51.8242.4747.1343.8546.4443.5756.96

ドイツ 30.1135.20 38.2136.1940.9739.00 35.1439.74 41.6337.1437.0937.7236.4036.1943.79

日本 10.9810.62 11.8413.5213.3815.7115.1612.5413.78 13.7113.73 9.00 12.8612.2312.4811.01

中国 35.60 38.70 32.7035.2038.90 35.20 42.3043.9037.6036.2932.9727.4234.71

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

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24

5.5.5.5.起業活動に対する評価起業活動に対する評価起業活動に対する評価起業活動に対する評価

前述の制度理論を踏まえると、起業家や起業活動に対する社会からの評価が高いほど、

起業活動が活発になると考えられる。そこで、GEMでは「起業家という職業に対する評価」

「起業家の社会的な地位」「メディアによる起業家への注目」といった起業家や起業活動

に対する社会的な評価について調査を行っている3。

図表図表図表図表3.103.103.103.10は、起業家という職業の選択に関する結果であり、「あなたの国の多くの人たち

は、新しいビジネスを始めることが望ましい職業の選択であると考えている」という記述

に賛成する成人人口の割合を示している。経済圏別の平均は、効率主導型経済(62.1%)、

要素主導型経済(66.9%)、イノベーション主導型経済(56.4%)となっており、起業活動

浸透(ロールモデル)指数、失敗脅威指数、事業機会認識指数、そして知識・能力・経験

指数でみられたような経済発展段階による明確な序列は見られない。

TEAとの相関係数(国レベルのデータによるもの。個票ベースではない)は、2016年調

査(今回調査)では0.275と、正の相関がみられ、統計的にも1%水準で有意である。

イノベーション主導型経済のなかでこの割合が最も高いのはとオランダ(77.9%)であり、

オランダは傾向的に、その水準が高い。

日本(23.9%)は、一昨年、昨年と同様にプエルトリコ(21.5%)に次いで低く、この傾

向は最近続いている。20%台であるのはプエルトリコと日本だけであり、次に低いスイスで

も40%ちかい38.9%が起業家という職業を肯定的に見ている。

図表図表図表図表3.113.113.113.11は主要7カ国の推移を示したものである。2003年にこの質問が設けられて以来、

日本の水準は一貫して他国を大きく下回っており、2016年調査でも同じ結果となっている。

次に、起業家の社会的な地位に対する評価について、「あなたの国では、新しくビジネ

スを始めて成功した人は高い地位と尊敬をもつようになる」という記述に賛成する成人人

口の割合をみていく。

図表図表図表図表3.123.123.123.12によると、この割合は要素主導型経済では72.4%となっており、2015年と同様、

イノベーション主導型経済(69.0%)、効率主導型経済(66.9%)を上回る。ただし、TEA

との相関係数(国レベルのデータによるもの。個票ベースではない)は、2016年調査(今

回調査)では0.166と、それほど強くはなく、統計的にも有意ではない。

イノベーション主導型経済では、イスラエル、アラブ首長国連邦、フィンランド、アイ

ルランド、そしてカタールが80%を超えている。日本は54.0%と最下位ではないが、イノベ

ーション主導型経済の平均(69.0%)を15.0ポイント下回る。

時系列で主要7カ国の推移をみた図表図表図表図表3.133.133.133.13によると、2008年以降、日本とそれ以外の国と

の差が開いたままで定着している。日本の半数程度の成人は、新しくビジネスを始めて成

功しても高い地位や尊敬が得られないと感じている。

最後に、図表図表図表図表3.143.143.143.14には、「あなたの国で、あなたは新しいビジネスの成功物語について公

3 2011 年以降、米国は「起業活動に対する評価」についての調査に参加していなかった。2014 年調査に

久しぶりに参加したものの、2015 年調査では再び不参加であった。

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25

共放送でしばしば目にする」という記述に賛成するという成人人口の割合を示している。

経済圏別の平均は、今年度は要素主導型経済が58.2%と最も低く、効率主導型経済が

61.1%、イノベーション主導型経済が62.0%と続く。TEAとの相関係数(国レベルのデータ

によるもの。個票ベースではない)は、2015年調査(今回調査)では0.127と正の相関があ

るが、統計的には有意ではない。

イノベーション主導型経済のなかでこの割合が高いのは台湾(83.9%)、アラブ首長国連

邦(83.8%)、プエルトリコ(77.5%)、オーストラリア(74.3%)、カナダ(72.6%)な

どであり、低いのはギリシァ(38.5%)、キプロス(42.4%)、フランス(45.2%)などで

ある。日本は55.2%となっており、イノベーション主導型経済の平均値(62.0%)を下回っ

ている。

図表図表図表図表3.153.153.153.15で時系列の推移をみると、日本ではおおむね50~60%の間で推移しており、他

の指標と比較すると、主要7か国のなかでは決して低くはない。

図表図表図表図表 3333----10101010 職業選択に対する評価職業選択に対する評価職業選択に対する評価職業選択に対する評価

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

インド

イラン

カメルーン

ロシア

カザフスタン

ブルキナファソ

マレーシア

メキシコ

スロバキア

ハンガリー

ブルガリア

ラトヴィア

ウルグアイ

エクアドル

アルゼンチン

ポーランド

クロアチア

パナマ

マケドニア

ベリーズ

チリ

コロンビア

ペルー

インドネシア

中国

ジョージア

(クルジア)

エルサルバドル

南アフリカ

ヨルダン

タイ

モロッコ

トルコ

サウジアラビア

エジプト

ジャマイカ

グァテマラ

プエルトリコ

日本

スイス

フィンランド

ルクセンブルグ

韓国

ドイツ

エストニア

スウ

ェーデン

スペイン

オーストラリア

香港

アイルランド

スロベニア

フランス

英国

イタリア

ギリシア

米国

イスラエル

カナダ

ポルトガル

カタール

キプロス

台湾

アラブ首長国連邦

オランダ

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 23.9

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26

図表図表図表図表 3333----11111111 職業選択に対する評価の推移職業選択に対する評価の推移職業選択に対する評価の推移職業選択に対する評価の推移

図表図表図表図表 3333----12121212 起業家の社会的な地位に対する評価起業家の社会的な地位に対する評価起業家の社会的な地位に対する評価起業家の社会的な地位に対する評価

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 63.21 57.82 59.49 51.31 49.57 62.80 65.92 65.44 64.73 63.66

フランス 45.68 59.94 60.60 64.41 64.75 63.08 65.14 65.19 65.76 64.54 55.30 59.05 57.05

イタリア 78.57 76.61 46.79 72.67 72.83 67.54 71.65 69.12 66.68 65.55 65.05 60.92 63.27

イギリス 51.05 54.29 54.41 53.93 54.82 52.20 47.52 50.98 51.94 49.79 54.06 60.30 57.85 58.77

ドイツ 54.91 53.68 55.63 56.21 55.84 53.63 53.07 55.02 48.92 49.40 51.66 50.77 51.83

日本 33.52 28.08 31.94 25.35 29.49 25.55 28.11 28.39 26.03 29.67 31.30 30.98 26.76 23.93

中国 76.70 74.80 68.80 68.60 66.10 70.00 73.12 71.67 69.61 65.68 65.94 70.29

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

80.00

90.00

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

インド

ロシア

カメルーン

イラン

カザフスタン

ブルキナファソ

クロアチア

メキシコ

マレーシア

アルゼンチン

エルサルバドル

ウルグアイ

ポーランド

ラトヴィア

マケドニア

モロッコ

パナマ

スロバキア

エクアドル

チリ

ブルガリア

ペルー

ハンガリー

ベリーズ

トルコ

タイ

コロンビア

中国

南アフリカ

グァテマラ

サウジアラビア

インドネシア

ジョージア

(クルジア)

ヨルダン

ジャマイカ

エジプト

プエルトリコ

スペイン

日本

韓国

オランダ

台湾

香港

ポルトガル

エストニア

キプロス

ギリシア

スイス

スロベニア

フランス

ルクセンブルグ

イタリア

スウ

ェーデン

オーストラリア

カナダ

米国

英国

ドイツ

カタール

アラブ首長国連邦

フィンランド

アイルランド

イスラエル

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 54.0

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27

図表図表図表図表 3333----13131313 起業家の社会的な地位に対する評価の推移起業家の社会的な地位に対する評価の推移起業家の社会的な地位に対する評価の推移起業家の社会的な地位に対する評価の推移

図表図表図表図表 3333----14141414 メディアからの注目メディアからの注目メディアからの注目メディアからの注目

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 63.54 62.86 60.68 49.70 50.24 74.42 75.35 75.85 76.87 74.43

フランス 47.07 70.02 64.35 67.78 69.74 69.62 69.51 67.87 67.95 76.82 70.03 70.43 69.00

イタリア 68.44 65.97 49.79 69.41 68.50 63.57 69.17 69.27 69.74 72.43 72.09 68.99 69.69

イギリス 71.31 71.25 73.42 72.61 73.57 73.77 73.47 76.71 81.00 76.69 79.33 74.99 79.24 77.18

ドイツ 72.19 72.18 75.42 75.11 79.55 74.80 77.12 78.35 76.40 75.23 79.10 75.70 78.86

日本 47.27 55.55 51.56 45.14 47.71 55.61 49.59 52.00 54.74 54.79 52.76 55.81 52.14 53.95

中国 66.80 66.40 70.80 70.60 77.50 76.90 73.41 76.13 73.53 72.91 77.62 77.78

40.00

45.00

50.00

55.00

60.00

65.00

70.00

75.00

80.00

85.00

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

インド

ロシア

イラン

カメルーン

ブルキナファソ

カザフスタン

ハンガリー

ブルガリア

メキシコ

パナマ

クロアチア

エルサルバドル

ベリーズ

コロンビア

トルコ

ラトヴィア

マレーシア

ジョージア

(クルジア)

ポーランド

アルゼンチン

ウルグアイ

チリ

マケドニア

モロッコ

スロバキア

エジプト

グァテマラ

エクアドル

南アフリカ

ヨルダン

ペルー

サウジアラビア

インドネシア

タイ

中国

ジャマイカ

ギリシア

キプロス

フランス

ルクセンブルグ

スペイン

ドイツ

イタリア

エストニア

イスラエル

日本

オランダ

スイス

英国

スウ

ェーデン

スロベニア

カタール

韓国

ポルトガル

香港

フィンランド

アイルランド

米国

カナダ

オーストラリア

プエルトリコ

アラブ首長国連邦

台湾

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 55.2

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28

図表図表図表図表 3333----15151515 メディアからの注目の推移メディアからの注目の推移メディアからの注目の推移メディアからの注目の推移

6.6.6.6.ビジネスエンジェル(個人投資家)ビジネスエンジェル(個人投資家)ビジネスエンジェル(個人投資家)ビジネスエンジェル(個人投資家)

起業活動は多くの個人投資家によって支えられている。したがって、個人投資家による

資金供給を促進する税制や風土を生み出すことは、起業活動の活発化につながる可能性が

ある。

図表図表図表図表3.163.163.163.16は、「過去3年間に、他の人がはじめた新しいビジネスに個人的に資金提供をし

た」成人人口の割合を示している。経済圏別にこの割合の平均をみると、要素主導型経済

が9.2%と最も高く、効率主導型経済(5.9%)、イノベーション主導型経済(4.9%)と続く。

ここでも厳密な分析が必要だが、要素主導型経済では金融市場が整備されていないため、

起業に必要な資金を個人投資家に依存するところが大きいと考えることもできる。ちなみ

に、TEAとの相関係数は0.513(2016年)と正の関係があり、起業活動が活発な国・地域で

は個人投資家の活動も活発であるといえる。統計的にも1%水準で有意である。

次に、個人投資家の割合を時系列でみた図表図表図表図表 3.173.173.173.17 によると、日本では 2000 年代前半に

は 0.5%前後だったが、2000 年代後半以降おおむね 1~2%の間で推移し、昨年(2014 年)

調査では再び 1%を割り込んだ。しかし、2015 年には初めて 2%台の水準となり、2016 年

も 2%台を維持した。

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 64.06 59.12 63.20 54.40 49.97 72.89 66.68 67.84 75.83 72.37

フランス 39.04 36.42 36.78 37.51 42.97 48.36 49.57 44.71 46.92 41.08 41.38 38.98 45.19

イタリア 46.70 54.99 26.02 45.80 43.93 40.11 44.32 37.74 51.33 48.08 48.28 48.51 52.28

イギリス 55.23 55.35 55.03 54.62 56.78 54.26 44.46 52.19 47.30 46.98 49.64 58.36 61.09 61.13

ドイツ 52.97 54.25 42.10 46.14 49.80 49.68 49.03 49.74 49.01 49.91 51.41 49.82 50.48

日本 60.99 51.40 52.52 53.80 61.06 59.18 61.23 58.54 56.95 52.87 57.62 58.70 57.80 55.18

中国 77.90 77.50 74.40 84.40 78.50 77.00 75.89 79.82 71.34 69.28 77.23 79.32

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

80.00

90.00

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29

図表図表図表図表 3.163.163.163.16 個人投資家の活動個人投資家の活動個人投資家の活動個人投資家の活動

図表図表図表図表 3.173.173.173.17 個人投資家の活動の推移個人投資家の活動の推移個人投資家の活動の推移個人投資家の活動の推移

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

ロシア

インド

カザフスタン

イラン

ブルキナファソ

カメルーン

ブラジル

モロッコ

マレーシア

南アフリカ

タイ

インドネシア

ブルガリア

ポーランド

ジョージア

(クルジア)

クロアチア

グァテマラ

エクアドル

ハンガリー

レバノン

ペルー

パナマ

アルゼンチン

エルサルバドル

トルコ

スロバキア

ウルグアイ

ヨルダン

ジャマイカ

メキシコ

ラトヴィア

エジプト

マケドニア

コロンビア

サウジアラビア

ベリーズ

中国

チリ

日本

ポルトガル

プエルトリコ

イタリア

韓国

英国

スペイン

フィンランド

ギリシア

アイルランド

キプロス

ドイツ

フランス

オランダ

スロベニア

オーストラリア

アラブ首長国連邦

イスラエル

米国

香港

台湾

スイス

スウ

ェーデン

エストニア

カタール

ルクセンブルグ

オーストリア

カナダ

要素主導型経済 効率主導型経済 イノベーション主導型経済

日本 2.0

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

米国 5.70 4.93 4.92 4.34 3.98 5.96 4.94 5.16 4.05 5.99 4.78 5.44 4.63 6.21 6.03 6.06

フランス 1.79 1.23 0.69 4.93 3.62 4.69 5.59 3.82 3.82 3.19 4.63 2.99 3.29 3.36 3.89

イタリア 2.78 1.43 1.54 2.99 2.27 1.63 2.96 2.11 1.79 2.99 2.41 1.69 2.79 1.92 3.15

イギリス 2.58 1.69 1.63 1.37 1.65 1.58 1.38 1.66 1.13 3.22 2.47 3.08 2.09 2.11 2.21 3.20

ドイツ 3.24 3.36 2.73 2.69 2.12 1.70 1.82 1.54 3.60 3.19 3.00 3.43 3.84 3.89 3.86

日本 1.46 0.63 0.44 0.32 0.81 0.58 1.78 1.74 1.65 0.89 1.25 1.37 1.30 0.85 2.66 2.00

中国 5.00 7.10 6.30 8.10 9.60 6.60 5.50 9.16 5.42 3.65 4.45 12.9713.67

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

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ⅣⅣⅣⅣ リーマンショック後に生じた日本の起業活動の変化リーマンショック後に生じた日本の起業活動の変化リーマンショック後に生じた日本の起業活動の変化リーマンショック後に生じた日本の起業活動の変化4444

ここでは、2001 年から 2014 年までの個票データを使い、2008 年のリーマンショックの

前と後で、わが国の起業活動にどのような変化が生じたのかを検証する。

2015 年、2016 年とわが国の起業活動自体は、低水準とはいえ、活発化する傾向がある中

で、この 2 年間のデータを使わないことには問題があるという指摘もあるであろう。ただ、

GEM では、自国以外の個票を使用するには一定の時間的経過が必要であり、そのため、今

回は 2014 年までのデータを用いる。2015 年と 2016 年のデータを加えた分析はデータが利

用可能になった段階で再度試みる。

使用するデータセットは、2001 年から 2014 年にかけてイノベーション主導型経済圏の

国として調査に参加したものをプールした。個票ベースの国別データ数は次のとおりであ

る(図表 4.1)。

図表 4.1 国別サンプル数(2001 年~2014 年)

米国 62,153 ドイツ 82,984 スロヴェニア 32,175

ギリシャ 24,008 オーストラリア 20,813 チェコ 9,015

オランダ 45,470 ニュージーランド 8,905 スロバキア 6,007

ベルギー 36,087 シンガポール 25,891 プエルトリコ 3,998

フランス 29,978 日本 27,402 トリニダード・トバゴ 10,062

スペイン 273,721 韓国 16,025 香港 8,089

イタリア 29,975 カナダ 22,199 台湾 10,265

スイス 24,066 ポルトガル 15,045 アラブ首長国連邦 9,266

オーストリア 13,368 ルクセンブルグ 4,079 イスラエル 17,981

イギリス 221,009 アイルランド 25,969 合計 1,284,605

デンマーク 34,280 アイスランド 18,026

スウェーデン 51,894 フィンランド 28,111

ノルウェー 29,924 エストニア 6,365

次に、調査年別に、日本と日本以外のイノベーション主導型経済圏の国々の TEA の推移

を見たものが図表 4.2 と図表 4.3 である。この2つの図表を見ると、2008 年にリーマンシ

ョックが起こるまでは、わが国とイノベーション主導型経済圏の起業活動の差は縮小傾向

にあったものの、2009 年以降は再び拡大していることがわかる。

4 第 4 章の内容は、企業家研究フォーラム全国大会で、高橋徳行が発表した内容を掲載したも

のである。

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図表 4.2 イノベーション主導型経済圏の TEA と日本の TEA の推移

図表 4.3 「イノベーション主導型経済圏の TEA マイナス日本の TEA」の推移

ここでは、起業活動の水準が次のように決定されるとして、リーマンショック前後の変

化の要因を考える。基本的な考え方は、Reynolds and White (1997)に拠っている(図表(図表(図表(図表 4.44.44.44.4))))。

すなわち、一般成人は二通りに分かれ、起業態度を有するものと起業態度を有しないも

ののいずれかになる。そして、起業態度を有するものは、さらに起業活動を始めるものと

始めないものに分かれる。同様に、起業態度を有しないものも、起業活動を始めるものと

始めないものに分かれる。

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

イノベーション主導型TEA 日本TEA

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

4.5%

2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年

2008年9月15日にリーマンショックが発生

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図表図表図表図表 4.44.44.44.4 起業プロセスの捉え方起業プロセスの捉え方起業プロセスの捉え方起業プロセスの捉え方

資料:Reynolds and White (1997)をもとに筆者が作成

つまり、1国の一般成人のうち、起業態度を有する割合 a、起業態度を有するものからの

起業化率を b、起業態度を有しないものからの起業化率を c とすると、1国の起業活動水準

f (a,b,c)は次の式で示される。

起業活動水準の決定モデル f (a,b,c)=(a*b)+(1-a)*c

このモデルでは、国の起業活動の水準は3つの変数で決まることになり、本報告は、こ

のモデルにしたがって、わが国の起業活動がリーマンショック後にどのように変化したの

かを分析する。

なお、起業化率を示す指数としては TEA を使う。また、起業態度を表す指数としては知

識・能力・経験指数(Suskil)を使う。知識・能力・経験指数を選んだ理由は、起業活動と

の関連性が一番強く表れる指数であるというのが主な理由であるが、起業態度をどのよう

な指数で表すのが一番良いのかについては今後の研究課題であるii。

まず、変数 a、すなわち起業態度を有する割合を、イノベーション主導型経済圏と日本で

比較する(図表(図表(図表(図表 4.54.54.54.5))))。

変数 a については、日本およびイノベーション主導型経済圏ともに、リーマンショック

前とリーマンショック後を比べると、リーマンショック後に上昇している。すなわち、日

本は 7.4%から 11.8%に上昇し、イノベーション主導型経済圏では 26.9%から 38.9%に変

化している。日本の特徴として、起業態度を有する割合が低いことは、高橋徳行(2013)

などで指摘していることであるが、今回は、リーマンショック前後の変化に着目すると、

起業態度を有するグループの大きさは、日本およびイノベーション主導型経済圏全体とも

に、ショック後の方がショック前に比べて上昇している。

ただし上昇幅には違いがあり、日本の上昇幅は 4.4%ポイントである一方、イノベーショ

ン主導型経済圏では 12.0%ポイントである。その結果、起業態度を有する割合の両者の開

きは 19.6%から 27.2%に拡大した。

次に、変数 b、すなわち起業態度を有するグループの起業化率を見ると、変数 a とは異な

一般成人 起業「態度」の有無

起業「活動」有無

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った動きをしている。起業態度を有するグループの起業化率は、日本が 12.9%から 20.0%

に大幅上昇したものの、イノベーション主導型経済圏全体では 10.0%から 12.1%へと小幅

の上昇にとどまった。その結果、変数 b については、もともと日本が 3.0%高かったものが

7.9%に拡大した。

最後に、変数 c、すなわち起業態度を有しないグループの起業化率は、日本では 1.8%か

ら 1.7%とほとんど変化がなく、イノベーション主導型経済圏では 3.7%から 2.3%に減少し

た。この変化は、日本とイノベーション主導型経済圏の起業活動の水準の差を縮小する方

向に作用する。

図表図表図表図表 4.54.54.54.5 リーマンショック前後の変数リーマンショック前後の変数リーマンショック前後の変数リーマンショック前後の変数 a,b,ca,b,ca,b,ca,b,c の変化(日本との変化(日本との変化(日本との変化(日本とイノベーション主導型経済圏

の比較)の比較)の比較)の比較)

起業態度を有する割合(変数 a) 日本 イノベーショ

ン主導型経済

イノベーション

主導型経済圏‐

日本

リーマンショック前(2001‐2008 年) 7.4% 26.9% 19.6%

リーマンショック後(2008‐2014 年) 11.8% 38.9% 27.2%

起業態度を有するグループからの起業割合(変数 b) 日本 イノベーショ

ン主導型経済

イノベーション

主導型経済圏‐

日本

リーマンショック前(2001‐2008 年) 12.9% 10.0% -3.0%

リーマンショック後(2008‐2014 年) 20.0% 12.1% -7.9%

起業態度を有しないグループからの起業割合(変数 c) 日本 イノベーショ

ン主導型経済

イノベーション

主導型経済圏‐

日本

リーマンショック前(2001‐2008 年) 1.8% 3.7% 1.9%

リーマンショック後(2008‐2014 年) 1.7% 2.3% 0.6%

このように、リーマンショック後にわが国の起業活動において発生したことは、①起業

態度を有する割合が相対的に縮小し、②起業態度を有するグループからの起業化率が相対

的に上昇していると言うことができる。

つまり、従来から有していた日本の特徴が、リーマンショック後にさらに強調されたと推

測できるのである。

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ⅤⅤⅤⅤ まとめまとめまとめまとめ

起業活動の状況については、まず、日本の TEA は 5.3%となり、昨年と比べて 0.5%上昇

した(2015 年 4.8%)。本報告書の分析対象 66 カ国中では、イタリア、ドイツ、マレーシ

ア、ブルガリア、そしてスペインに次いで下から 6 番目の水準である。

「事業機会型 TEA÷生計確立型 TEA」については、日本については 2015 年に大幅に落

ち込んだものの、2016 年は久しぶりに 5 倍台になった。

男性 TEA が女性 TEA の何倍であるかの指標である男性 TEA 比率については 2.20 とイ

ノベーション主導型経済の平均である 1.7 をかなり上回る水準となった。

日本の起業計画率は、前回の 6.4%から 6.8%へと回復した。ただし、イノベーション主導

型経済では、スペインに次いで低い水準である。

休業・廃業比率については引き続き低い水準で安定しており、今回は 1.3%と、イノベー

ション主導型経済の平均値を大幅に下回っている。

起業を取り巻く環境(態度と起業活動への評価)については、日本の起業活動浸透(ロ

ールモデル)指数は 18.7%であり、66 か国の中でも 2 割に満たない国は、日本を除けばエ

ジプトのみである。

事業機会認識指数も 7.5%であり、1 割に満たない国は、66 か国中、今回も日本だけであ

る。

知識・能力・経験指数は 2001 年以降一貫して他国を大きく下回ること、上昇傾向がみら

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れないことが読み取れる。今回の日本の知識・能力・経験指数は 11.0%であり、日本と TEA

の水準がほぼ同じ水準のドイツでも 37.4%であることと考えると、日本の水準は非常に低

く、これも 66 か国の中で 2 割に満たない国は日本だけである。

個人投資家の活動は、昨年度調査以来はじめて2%台になり、2016年も2%台を維持した。

しかし、それでもイノベーション主導型経済の平均である 4.9 には及ばない。

2016 年は起業活動に関する指標には改善の傾向が見られたものの、起業態度に関する指

標には変化がほとんど見られなかった。そのことに関連して、第 4 章で分析を試みたが、

ここで得られた結論は、起業態度を有するグループからの起業化率が上昇する中で、起業

態度を有するグループにはそれほどの変化が見られないということである。最終的には起

業態度を有するグループの広がりがなければ、起業活動の広がりは期待できないので、そ

のあたりの懸念材料が残った。これについては、2015 年と 2016 年の個票ベースの分析を

行った後に、結論を導きたい。

i ただし、ホームページからダウンロードできる 2016 年度のグローバルレポートの APS 調査データを使っ

た分析には日本が含まれていない。その理由は諸事情によって、グローバルレポートの作成までに APS デ

ータを提出できなかったからである。

ii ただし、起業態度をロールモデル指数(Knowent)、事業機会認識指数(Opport)にしたり、3 つの指数

のうち複数を使ったりしても結論自体には大きな違いは生まれない。