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平成 29 年度新エネルギー等の 導入促進のための基礎調査 (総合エネルギーサービス等分散型エネルギーリソース を活用した新たなエネルギー供給サービス形態 に関する調査) 調査報告書 平成 30 年 2 月 経済産業省 資源エネルギー庁 (委託先)みずほ情報総研株式会社

平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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Page 1: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

平成 29 年度新エネルギー等の

導入促進のための基礎調査

(総合エネルギーサービス等分散型エネルギーリソース

を活用した新たなエネルギー供給サービス形態

に関する調査)

調査報告書

平成 30 年 2 月

経済産業省 資源エネルギー庁

(委託先)みずほ情報総研株式会社

Page 2: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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目次

目次 ................................................................................................................................................ 2

1 本調査の目的 ........................................................................................................................... 3

2 国内エネルギーサービス事業者に関する調査 ......................................................................... 4

2.1 調査対象 ........................................................................................................................... 4

2.2 調査結果 ........................................................................................................................... 4

2.2.1 電力会社 .................................................................................................................... 6

2.2.2 ガス会社 .................................................................................................................. 18

2.2.3 新電力 ..................................................................................................................... 36

2.2.4 太陽光発電関連会社 ................................................................................................ 50

3 海外エネルギーサービス事業者に関する調査 ....................................................................... 55

3.1 調査対象 ......................................................................................................................... 55

3.2 調査結果 ......................................................................................................................... 56

3.2.1 欧州 ......................................................................................................................... 56

3.2.2 米国 ......................................................................................................................... 66

3.3 エネルギーサービスの取り組み動向 .............................................................................. 72

4 エネルギーサービスの類型化と評価 ..................................................................................... 74

4.1 エネルギーサービスの類型化 ......................................................................................... 74

4.2 類型化毎のビジネスモデルと需要家のメリット、導入プロセス ................................... 76

4.2.1 総合エネルギーサービス ......................................................................................... 76

4.2.2 省エネ機器導入サービス ......................................................................................... 77

4.2.3 分散型電源提供サービス ......................................................................................... 78

4.3 エネルギーサービスの比較と評価 .................................................................................. 80

5 総合エネルギーサービスの普及展開に向けた検討 ................................................................ 84

5.1 総合エネルギーサービスの展開可能性 .......................................................................... 84

5.2 総合エネルギーサービスの普及展開に関する課題と対応策 .......................................... 84

5.2.1 対象需要家の拡大に関する課題と対応策 ................................................................ 84

5.2.2 再生可能エネルギーの導入に関する課題 ................................................................ 86

5.3 総合エネルギーサービスの普及展開に向けた施策案 ..................................................... 87

6 <引用文献> ......................................................................................................................... 90

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1 本調査の目的

平成 28 年 4 月からの電力小売全面自由化、そして平成 29 年 4 月からのガス小売全面自由化

などの一連のエネルギーシステム改革を機に、電気、熱、ガスの垣根を越えたビジネスの展開が

期待されている。その一つに、「エネルギーサービス(ES)」が挙げられる。

ES には、例えば、分散型エネルギー機器(コージェネレーションシステム、太陽光発電設備、

蓄電池等)を、サービス提供事業者が需要家側に設置し、需要家の負荷パターンや外部から調達

するエネルギーの価格(電気料金、ガス料金など)などに応じて、分散型エネルギー機器で作り

出すエネルギー(電気・熱)と外部から調達するエネルギー(電気・ガス・熱)を 適に合わせて

需要家に供給する「総合 ES」や、機器の保守・メンテナンスのみ実施するものなど、様々な類型

が存在する。

中でも、「総合 ES」は、需要家はコージェネレーションシステムなどの高効率なエネルギー機

器の使用料金を月々のサービス料金という形で支払う形となるため、高額な初期投資費用が不要

である上、機器の管理・運営に係るノウハウを有する総合 ES 事業者が 適制御することによる

省エネ効果が期待できるため、エネルギー消費原単位の改善にも資するものであると考えられる。

また、太陽光発電設備や蓄電池の低価格化に伴い、これらを組み合わせて需要家に再生可能エネ

ルギーを供給するサービス形態も現れてきており、エネルギー消費原単位の改善に寄与するもの

と考えられる。

本調査では、国内外の ES 事業の現状や類型の整理、需要家が ES を採用するに当たっての判

断基準(コスト、BCP(事業継続計画)、企業ポリシー等)などについて調査・分析を行い、ES

事業の更なる展開に向けた課題と対応策等を検討することを目的とする。

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2 国内エネルギーサービス事業者に関する調査

2.1 調査対象

本調査では、エネルギーサービスを展開し得る事業者として、電力会社(旧一般電気事業者)、

ガス会社、新電力(旧一般電気事業者以外の小売電気事業者)の切り口から、それぞれ電力・ガ

ス供給量の多い主要な会社を選択し、それぞれが現在、どのようなエネルギーサービスを実施し

ているかを調査した。

また、再生可能エネルギーを使用したエネルギーサービスの展開について参考にするため、特

に日本で導入量が多く、分散型電源として期待されている太陽光発電に関して、サービスを展開

している企業も対象にした。

表 2-1 対象企業

切り口 考え方 企業名

電力会社 主要電力会社 東京電力エナジーパートナー(株)、(株)関電エネ

ルギーソリューション、中部電力(株)

ガス会社 主要都市ガス会社 東京ガス(株)、大阪ガス(株)、北海道ガス(株)

新電力 分類ごとの電力供

給量の多い主な新

電力

メーカー系 パナソニック(株)、(株)Looop、(株)V-Power

建設系 大和ハウス工業(株)、(株)洸陽電機

商社系 丸紅新電力(株)、サミットエナジー(株)、

伊藤忠エネクス(株)

合弁系 (株)エネット

石油元売系 JXTG エネルギー(株)、昭和シェル石油(株)、

(株)新出光、出光グリーンパワー(株)

エンジ系 新日鉄住金エンジニアリング(株)

通信 KDDI(株)、SB パワー(株)

新規電力系 (株)F-Power、(株)エナリス・パワー・マーケ

ティング、中央電力エナジー(株)

その他 オリックス(株)

太陽光発電

関連会社

分散型電源(太陽光発電)をサー

ビス展開している会社

(株)アイ・グリッド・ソリューションズ、

ファブスコ(株)、(株)アイアンドシー・クルーズ

2.2 調査結果

本項では、2.1 項で挙げた調査対象企業のホームページから、各企業が提供しているエネルギー

サービスについて調査を行った。調査結果は各企業が提供しているエネルギーサービス毎に、①

提供するエネルギー・設備、② 対象需要家(導入事例)、③ ビジネスモデル、④ 導入コスト・効

果、⑤ 導入プロセスについて整理した。

本項で記載するエネルギーサービスとは、需要家サイトでの機器の設置と運用による省エネを

行うサービス、または需要家サイトでの低炭素エネルギー源の供給を行うサービスとし、分散型

電源としての機能を持たないエネルギー供給のみを行うサービス(一般的な電力小売、ガス小売

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等)は対象外としている。(ただし、「ESCO 事業」や「見える化サービス」のようなサービスで、

調査対象企業の提供する一部のものについては、総合エネルギーサービスとの違いを明確化する

過程で、調査したもののみ、本項に記載している。)本項で取り上げる各企業のサービスについて

表 2-2 に示す。

表 2-2 本項で取り上げる企業とサービス※

切り口 企業名 サービス

電力会社

東京電力エナジーパー

トナー(株)

コンビナート ESP、ハイブリット ESP、スマー

トレジリエンス ESP、オンサイトコジェネ

ESP、ボイラ ESP

(株)関西電力エネル

ギーソリューション ユーティリティサービス

中部電力(株) オンサイトエネルギーサービス

ガス会社

東京ガス(株)

エネルギーマネジメントサービス、受託サービ

ス、グリーンレンタル、TG グリーンカルテ、TG

グリーンモニター、グリーン・ヘルプ・プロ

大阪ガス(株) EcoWave、オペレーション&メンテナンスサービ

北海道ガス(株) ESP サービス、受託サービス

新電力(メーカー) パナソニック(株) 工場省エネ支援サービス

新電力(建設) (株)洸陽電機 熱回収サービス

新電力(合弁) (株)エネット Ennet eye、EnneSmart エネスマート

新電力(エンジ) 新日鉄住金エンジニア

リング(株) オンサイトエネルギー供給サービス

新電力(新規電力) (株)エナリス・パワ

ー・マーケティング エネルギーエージェントサービス

新電力(その他) オリックス(株) ESCO サービス、蓄電池システムレンタルサービ

太陽光発電関連会社

(株)アイアンドシ

ー・クルーズ

シェアでんき

(株式会社シェアリングエネルギー)

ファブスコ(株) ソーラーPPA

(株)アイ・グリッ

ド・ソリューションズ

オフグリッド電力供給サービス

(株式会社 VPP Japan)

※新電力(メーカー):(株)Looop、(株)V-Power、新電力(建設):大和ハウス工業(株)、新電力(商社):丸紅新電力(株)、

サミットエナジー(株)、伊藤忠エネクス(株)、新電力(石油元売):JXTG エネルギー(株)、昭和シェル石油(株)、(株)

新出光、出光グリーンパワー(株)、新電力(通信):SB パワー(株)、KDDI(株)、新電力(新規電力):(株)F-Power、中

央電力エナジー(株)は、主にエネルギー供給契約のみのサービスを提供しており、本報告書には掲載していない。

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2.2.1 電力会社

(1) 東京電力エナジーパートナー株式会社

東京電力エナジーパートナーは ESCO 事業を中心に省エネルギーの事業展開を行っていたが、

省エネルギー効果保証の有無にかかわらず、エネルギーの設備や供給に関する設計、調達、運用

の、一括したアウトソーシングを求める顧客の増加を理由に、エネルギーサービスを新たにエネ

ルギーサービスプロバイダー(Energy Service Provider、ESP)事業として展開していくことを、

平成 28年 7月に発表している。東京電力グループに分散していたESP事業の機能と経営資源は、

同グループの日本ファシリティ・ソリューション株式会社に集約されている。

(1-1) コンビナート ESP

① 提供するエネルギー・設備

コンビナート ESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

メイド型のエネルギーサービスを提案する。

② 対象需要家

対象需要家は化学メーカーや鉄鋼メーカーなどの製造業を想定している。

<導入事例 1>

導入先:三井化学株式会社市原工場

導入設備:ガスタービンコージェネレーション設備:3 万 kW 級×2 系列

燃料:天然ガス(LNG)

蒸気供給量:約 100t/h

③ ビジネスモデル

製造業の顧客による、電気・ガス・蒸気・温冷水などの大規模なエネルギー需要に対し、供給

計画から建設・保守メンテナンスまでを一貫して提供する。あわせて、近隣の工場と連係した、

エネルギーや副産物の融通による地域単位でのエネルギーバランスの 適化を検討する。

図 2-1 コンビナート ESP の概要1)

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④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていないが、先に

挙げた事例について、以下の削減期待効果が公開されている。

<導入事例 1>

導入先:三井化学株式会社市原工場

省エネルギー効果:約 2 万 kL/年(原油換算)

CO2 削減効果:約 9 万 t/年削減

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-2) ボイラ ESP

① 提供するエネルギー・設備

ボイラ ESP は東京電力グループが需要家へボイラの提供を行い、安定した蒸気供給を行う。

② 対象需要家

対象需要家は製造業を想定している。

<導入事例 1>

導入先:日本製紙クレシア株式会社(東京・開成・京都工場)

導入設備:ボイラ

・ 開成工場:2t/h × 8 台

・ 東京工場:7t/h × 8 台

・ 京都工場:5t/h × 4 台

特徴:蒸気製造・ボイラのメンテナンスをアウトソーシングすることを目的に利用している。

③ ビジネスモデル

東京電力グループがボイラの提供について、設備の設計から保守メンテナンスまでを一貫して

行う。設備の所有は東京電力グループとなり、24 時間で設備の監視を行う。需要家は機器の操作

やトラブル発生時の一次対応と、蒸気製造にかかる用役(電気・水)の調達が求められる。

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図 2-2 蒸気供給サービスの概要 1)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-3) オンサイトコジェネ ESP

① 提供するエネルギー・設備

顧客の施設構内にコージェネレーションシステムを設置し、電力と熱の供給を行う。

② 対象需要家

対象需要家は工場などを使用する製造業を想定している。

③ ビジネスモデル

需要家に対して、施設内に設置したコージェネレーションシステムを用いた電力と熱供給を行

う。あわせて、設備の設置・保守メンテナンスまでを一貫して提供する。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(1-4) ハイブリット ESP

① 提供するエネルギー・設備

東京電力グループが提案する高効率エネルギーシステムの導入とエネルギー管理を基本として、

需要家のニーズに合わせたオーダーメイド型のエネルギーサービスを提供する。

② 対象需要家

対象需要家は業務用の法人を想定している。ハイブリット ESP の利用事例と明記はないが、日

本ファシリティソリューション株式会社の企業ページでは、オーダーメイド型のエネルギー供給

サービスとして、下記の事例を紹介している。

<導入事例 1>

導入先:東海大学伊勢原キャンパス

導入設備

・ ターボ冷凍機:800RT×4 台

・ ブラインターボ冷凍機:550RT×2 台

・ 氷蓄熱槽:10,000USRT

・ 炉筒煙管ボイラ:10t/h×2 台

特徴

・ BEMS(Building Energy Management System)のメニューも含まれる。

・ 電力・冷熱・温熱等の供給設備を一括して資産上外部化している。

・ 大震災などの特別な場合を除き、上記の供給はエネルギーセンターより供給が保障さ

れる。

<導入事例 2>

導入先:土浦協同病院

導入設備

・ 水蓄熱システム

・ 高効率ターボ冷凍機

・ ガス・A 重油切替型燃焼器

特徴

・ 非常災害時を含めたエネルギーの安定供給

・ 全インフラ途絶時にピーク負荷 72 時間分のエネルギー供給が可能

③ ビジネスモデル

需要家はセントラル空調や給湯設備のエネルギー管理・保守メンテナンスを基本サービスとし、

オプションとしてエネルギー供給や、他の省エネ設備の提供を受けることができる。東京電力エ

ナジーパートナーは、設備の全面改修、一部改修の形態によらず、省エネ機器の 善な設置計画

の提案から、保守メンテナンスまでワンストップで行う。初期投資や緊急時の費用は、月々のエ

ネルギーサービス料金として平準化され、初期投資については、補助金獲得等の支援を行ってい

る。

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図 2-3 ワンストップ・エネルギー供給の概要 1)

土浦協同病院について、日本ファシリティソリューション株式会社は非常時のエネルギー安定

供給を行う、運営スキームを紹介している。これによれば、協同病院のエネルギー供給は、施設

内のエネルギーセンター棟に常駐する作業員に 365 日 24 時間管理され、設備の 適な運転と保

守が行われる。エネルギー設備が多重に提供されており、エネルギーインフラ途絶時でも柔軟な

エネルギー供給が可能となっている。

図 2-4 土浦協同病院エネルギーセンターのシステム構成 1)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は東海大学伊勢原キャンパス

の事例について下記の情報が公開されている。

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<導入事例 1>

導入先:東海大学伊勢原キャンパス

省エネルギー効果:通常のガス焚吸収式冷温水機+油焚吸収式冷温水機と比べ 40%削減

CO2 削減効果:通常のガス焚吸収式冷温水機+油焚吸収式冷温水機と比べ 45%削減

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-5) スマートレジリエンス ESP

① 提供するエネルギー・設備

電気と熱のネットワーク化、再生可能・未利用エネルギーの有効活用、エネルギーマネジメン

ト等のサービスをパッケージとして導入する。提供する設備は蓄電池やガスコジェネなど多岐に

わたる。

② 対象需要家

対象需要家は地域単位となる。

導入事例として、現在東京電力は横浜市、株式会社東芝とともに横浜スマートシティプロジェ

クトにおける「スマートレジリエンス・バーチャルパワープラント(VPP)構築事業」を平成 28

年 7 月から平成 30 年 3 月にかけて実施している。

③ ビジネスモデル

スマートレジリエンスは低コストで環境性が高く、災害に強い設備や街づくりを構築する取り

組みである。電気と熱のネットワーク化、再生可能・未利用エネルギーの有効活用、エネルギー

マネジメント等のサービスをパッケージとして導入する。

図 2-5 スマートレジリエンス ESP の概念図 1)

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東京電力エナジーパートナーが横浜市、東芝とともに実施しているスマートレジリエンス・バ

ーチャルパワープラント(VPP)構築事業では平成 28 年度に、地域防災拠点に指定されている、

市内小中学校 18 校に蓄電池を設置している。通常時は東京電力エナジーパートナーが蓄電池を

制御し、ディマンドレスポンス(DR)に活用する。非常時は横浜市が防災用電力として利用する。

図 2-6 横浜市でのプロジェクトにおける各組織の役割2)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(2) 株式会社関電エネルギーソリューション

関電エネルギーソリューション(Kenes:ケネス)は、電気事業で培った技術力、ノウハウとと

もに、関電グループの総合力を活かし、需要家にワンストップで 適なソリューションを提供し

ている。ユーティリティサービス(ESP サービスを含む)を軸に、顧客の「省エネ・省コスト・

省 CO2」の実現を強力にサポートしている。

図 2-7 総合エネルギーサービスのイメージ図3)

(2-1) ユーティリティサービス

① 提供するエネルギー・設備

工場やビルの構築のために必要となる電気・熱・冷水などを供給するためのユーティリティ設

備について、設計・調達・建設を行い、運転・保守に至るまでの、全部または一部の業務を一括し

て実施するサービスを提供する。設備は乾田エネルギーソリューションが保有し、受変電設備、

停電・瞬停対策設備、コージェネレーションシステム、冷熱・温熱供給設備、再生可能エネルギ

ー設備、その他設備(水処理、照明等)が提供可能である。

② 対象需要家

対象需要家として、ビル・工場・商業施設、医療施設の例が示されている。

<導入事例1>

導入先:山田食品産業株式会社

導入設備:空調設備・冷凍冷蔵設備・蓄熱冷水設備・蒸気設備

特徴:

・エネルギー関連設備の経年劣化による故障リスクの増大や効率低下の懸念があり、設備

更新が急務となっていたため、設備機器の単純な入れ替えではなく、省エネ提案などの

コンサルティングを含むトータルサポートを依頼した。

・2017 年 4 月より、サービスを開始している。

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③ ビジネスモデル

エネルギーの調達から管理、運用までを一括してアウトソーシングすることで、顧客は経営資

源を本業に集中させることができる。料金は月々のエネルギーサービス料金として平準化される

ため、需要家は初期投資の調達、故障時の突発的な費用の発生を避けることができる。

図 2-8 総合エネルギーサービス料金のイメージ 3)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(3) 中部電力株式会社

中部電力は同グループ内の総合エネルギーサービス企業である、株式会社シーエナジーを通し

てエネルギーサービスの提供を行っている。

(3-1) オンサイトエネルギーサービス

① 提供するエネルギー・設備

需要家の施設内にエネルギー供給設備を設置し、電力や冷水、温水、蒸気を供給する。設備や

供給エネルギーの組み合わせは需要家の需要に合わせて決定する。同サービスは ESCO 事業とし

ても提供されている。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。

<導入事例 1>

導入先:日本赤十字社 伊勢赤十字病院

導入設備:エネルギーセンター建屋、発電設備、蒸気、冷温水供給設備、受変電設備

特徴:

・ 本業である診療とは直接関係のない業務のアウトソーシングを目的に採用している。

・ 開院時点で、立替前と比べて 42MJ/m3 年のエネルギー消費原単位の改善に成功した。

・ 各設備の 適運用・ロスの低減に取り組み、4 年間でさらに 5%(161 MJ/m3 年)の省

エネを達成した。

<導入事例 2>

導入先:シャープ株式会社 亀山工場

導入設備:受変電設備、発電設備、蒸気、冷温水供給設備、瞬低対策装置

特徴:

・ CO2 の削減をはじめとした環境負荷の低減の実現、設備のアウトソーシングを目的に

採用している。

・ METI の新エネルギー事業者支援対策事業(H14-16、H17-18)、NEDO のエネルギー

使用合理化事業者支援事業(H19)の補助金事業に採択されている。

③ ビジネスモデル

シーエナジーが需要家の施設構内に、発電機、LNG サテライト設備、空調熱源機、ボイラー、

コンプレッサーなどのユーティリティ設備を設置し、電気や熱エネルギーを提供する。システム

の選定・資金調達・設置・運転監視・メンテナンスを、シーエナジーが一貫してワンストップで

対応するサービスである。

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図 2-9 オンサイトエネルギーサービスの概要4)

シーエナジーは本サービスについて 4 つのメリットを述べている。

i) ワンストップサービス

中部電力グループとして蓄積された、オペレーティング・メンテナンスノウハウを駆使し、

定期メンテナンス、突発故障対応、届出申請等をワンストップで提供する。

ii) 初期投資の回避・維持費の固定化

初期投資の資金調達はシーエナジーが行い、維持費とあわせた毎月の固定価格をエネルギ

ーサービス料金として需要家が支払う。

iii) 省エネルギー・省コスト

長年のノウハウを活かし、先進的な省エネルギー設備の導入とシステムの構築、 適な運

用により省エネルギー・省コストを実現できる。

iv) サポート体制

通信回線を利用した遠隔監視により、24 時間のサポート体制を確立している。蓄積された

ノウハウに加え、決め細やかに運転管理を行い、エネルギーデータの分析、検証から故障原

因の早期特定、 適運用のチューニングまでを設備導入後も随時行っていく。

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図 2-10 継続的なサポートのイメージ 4)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。

⑤ 導入プロセス

オンサイトエネルギーサービスの導入の流れは、まず簡易エネルギー診断を行い、事業性と需

要家の概算メリットを計算したのちに、提供プランをシーエナジーが提案する。その後、設備の

調達が行われ、需要家の施設内への据付が行われる。

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2.2.2 ガス会社

(1) 東京ガス株式会社

東京ガスは、省エネ設備の導入 適化分析・リースを行うサービスから、設備利用の可視化に

よる省エネ効率を推進するサービスまで、複数のエネルギーマネジメントサービスを提供してい

る。顧客のニーズに合わせてオーダーメイドでサービスを選択でき、設計から運用までをワンス

トップで行える点を強みとしている。

(1-1) エネルギーマネジメントサービス(基本ソリューションメニュー)

① 提供するエネルギー・設備

提供するエネルギーはガスが主であり、ガスコージェネレーションシステムを利用して、顧客

は電気と熱を使用することが出来る。オプションとして東京ガス、株式会社 NTT ファシリティー

ズ、大阪ガス株式会社が共同で 2000 年に設立した電力会社、株式会社 Ennet の電力供給サービ

スも提供している。省エネルギー設備はガスと電気のみでなく、節水設備の取り扱いも行ってい

る。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。東京ガスの公開するデジタルカタログでは、病院

施設での導入実績が公開されている。

③ ビジネスモデル

東京ガスはエネルギーサービスの基本ソリューションメニューとして(i)「 適システム設計」、

(ii)「補助金活用&イニシャルレス」、(iii)「フルメンテナンス」、(iv)「 適運用支援」、(v)「ワン

ストップ・エネルギー供給」の 5 つを提供している。

需要家のニーズに応じて、オーダーメイドでサービスを契約でき、エネルギー供給を東京ガス

に委託するものと、設備のみを導入する委託受託サービスに分かれる。初期投資やメンテナンス・

修理費用などの突発的な負担は、月々のエネルギーサービス料として平準化される。(図 2-11)。

図 2-11 エネルギーマネジメントサービスコストのイメージ5)

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i) 適設備設計

ガスコージェネレーションシステムや熱源設備だけでなく、高効率照明などの省エネ機器や節

水設備に加え、停電・節電時の対応が可能なシステムの導入など、顧客の要望に合わせた提案を

行っている。設備が多岐にわたる場合においても、東京ガスの実績を活かした、ワンストップで

の導入が可能である。

ii) 補助金活用&イニシャルレス

補助金の活用と、実績に基づく調達力を活かし、設備投資コストの圧縮を行う。また、補助金

の申請書作成業務から確定検査、成果報告の対応を一括で請け負う。

iii) フルメンテナンス

平準化された月々のサービス料金の支払いにより、サービス設備の定期的なメンテナンス、突

発的な故障時の修理を、追加料金をかけず依頼することが可能である。また、遠隔監視装置を通

して運転状態を常時開始し、不具合の発生時に迅速な改善対応を行う。

iv) 適運用支援

監視センターにて設備のエネルギーデータを収集する。これらのデータを可視化するとともに、

時刻別・月別のエネルギー消費の実績データを、省エネやエネルギー単価などの観点から、総合

的な分析を定期的に行うことで、顧客のエネルギー管理を支援する。

v) ワンストップ・エネルギー供給

設備の稼動に必要なガス・電力を全て東京ガスグループが提供する。電力についてはサービス設

備として提供されるガスコージェネレーションシステムに加え、株式会社 Ennet より一部供給さ

れる(図 2-12)。

図 2-12 ワンストップ・エネルギー供給の概要 5)

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④ 導入コスト・効果

東京ガスの公開するデジタルカタログでは、済生会宇都宮病院での導入事例が紹介されている。

具体的な導入費用や、導入によって得られた省エネ効果、CO2 削減効果は不明だが、ガスコージ

ェネレーションシステムの導入と高効率照明設備、空調搬送動力の低減、節水器具の導入を行い、

東日本大震災後の 22 時間にわたる大規模停電、5 回の計画停電においても、安定した病院運営を

可能としている。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(参考) 導入事例 清原工業団地スマエネ事業

① 概要

本事業はカルビー株式会社(3 事業所)とキャノン株式会社(3 事業所)、久光製薬株式会社(1

事業所)の計 3 社 7 事業所が隣接する清原工業団地内(栃木県宇都宮市)において、エネルギー

マネジメントシステムを提供するというものである。

東京ガスは 100%出資子会社である東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社と省

エネ、CO2 削減および BCP(停電時などの事業継続計画)の強化を目的とした、電力と熱(蒸気

や温水)の供給を行う予定である。

内陸型工業団地において、異業種複数事業所向けにエネルギー供給をあわせて行う取り組みは

国内初であり、本事業には工場の省エネルギー化を支援する、経済産業省の「エネルギー使用合

理化等事業者支援補助金」に採択されている。本事業に向けて東京ガスは 2012 年より、工場間一

体省エネルギー事業の構想検討を行っていた。

省エネ効果はエネルギー量で年間約 11,400kL(原油換算)の削減、20%の省エネ率となり、CO2

削減量では年間約 23,000t、20%の削減率が見込まれている。

図 2-13 清原工業団地エネルギーセンター(仮称)の外観イメージ図6)

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図 2-14 清原工業団地スマエネ事業のエネルギー供給概念図7)

表 2-3 清原工業団地スマエネ事業の概要8)

供給先 工業団地内 7 事業所

電力需要 188,000 MWh/年

蒸気需要 96,000 t/年

温水需要 88,000 GJ/年

導入エネルギー供給設備 ガスコージェネレーションシステム(3 万 kW 級)

蒸気ボイラ(45t/h 級)

道路横断配管 合計 約 300m

道路横断電線 合計 約 200m

省エネ量 約 10,000 kL/年削減

省 CO2 量 約 20,000 t-CO2/年削減

予定工期 2016 年 10 月~2019 年 1 月

② 実証事業としての意義

経済産業省の公開資料によれば、「工場間一体省エネルギー事業」の推進する意義として、業種

間での、エネルギー需要の多様性の平準化が可能なことが挙げられる。具体的には下記の例にお

いて、事業所が単独でコジェネを導入する場合、それぞれ異なった課題に直面する。

i) 電力需要が多く、熱需要が少ない事業所

熱需要や電力需要のどちらにコージェネの出力を合わせたとしても、発電所からの調達や、

オンサイトでの廃熱が発生してしまう。

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ii) 熱需要が多く、電力需要が少ない企業

電力需要に合わせてコージェネを設置するが、廃熱の発生量が多く、使い切ることができ

ない。

iii) 総じてエネルギー需要が少ない企業

需要が少ないため、スケールメリットの小さい小規模のコジェネしか導入することが出来

ない。

これらの課題を抱える企業を包括し、工場一体として大型コージェネを導入し、エネルギー

供給を行うことで、エネルギー供給バランスを相互に補完することができる。そのため、今回

のスマエネ事業では事業所単体での省エネ効果を上回る効果が期待されている。

(1-2) 受託サービス

① 提供するエネルギー・設備

提供するサービスは 2.2.2(1-1)エネルギーマネジメントサービス(基本ソリューションメニュ

ー)とおおよそ同様であるが、本サービスはエネルギー提供を行わず省エネ機器の導入や保守を

対象としている。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。東京ガスの公開するデジタルカタログでは、スポ

ーツクラブ NAS(稲毛海岸店)、一般財団法人 天誠会 介護老人保健施設 小金井あんず、上野ビ

ルでの導入事例が紹介されている。

③ ビジネスモデル

2.2.2(1-1)エネルギーマネジメントサービス(基本ソリューションメニュー)で述べた、(i)「

適システム設計」、(ii)「補助金活用&イニシャルレス」、(iii)「フルメンテナンス」、(iv)「 適運用

支援」までを、需要家のニーズに応じてオーダーメイドでサービス提供する。初期投資やメンテ

ナンス・修理費用などの突発的な負担は月々のサービス料として平準化され、ガス・電気の契約

は需要家が別途行う必要がある。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。以下に

東京ガスの公開するデジタルカタログにて導入経緯や効果が紹介されているものを示す。

・ スポーツクラブ NAS(稲毛海岸店)

設備の老朽化や CO2 削減計画の実現課題の解決のために導入を行っている。ガスボイラと

ガス空調の導入により、年間約 160t の CO2 が削減される見込みである。

・ 一般財団法人 天誠会 介護老人保健施設 小金井あんず

設備老朽化や容量増加、エネルギーセキュリティの改善のために導入を行っている。ボイラ

と合わせて、停電時対応ジェネライトを採用している。

・ 上野ビル

東京都による「中小規模事業所省エネ促進・クレジット創出プロジェクト」助成金(CO2 排

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出削減量をクレジット化する権利を東京都に無償譲渡することを条件に、設備導入費用の一

部について助成金が受けられるというもの)を活用している。空調設備は高効率の GHP(ガ

スヒートポンプエアコン)を採用し、平成 22 年度比で 865t-CO2/年の CO2 排出削減が見込

まれている。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-3) グリーンレンタル

① 提供するエネルギー・設備

東京ガスはグリーン機種のナチュラルチラー(都市ガスによるガス吸収冷温水機)のレンタル

サービスを行っている。グリーン機種とは東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの 3 社で選定する高い

環境性能、確かな信頼性をもつ省エネルギー機器をさす。

図 2-15 ナチュラルチラーの概念図 5)

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。レンタルサービスによる利用については明記がな

いが、ナチュラルチラーは渋谷マークシティ、汐留芝離宮ビルディングなどのオフィスビルから

大井競馬場などの公共施設、東京ドームなどの商業施設で導入されている。

③ ビジネスモデル

グリーン機種のナチュラルチラーを初期投資不要でレンタルを行う。リースと異なり、完全な

オフバランスで、与信が不要であることを強みとしている。メンテナンス、修理費は毎月一定の

レンタル費用に含まれ、契約は 1 年毎に更新で 長 10 年まで延長可能である。

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表 2-4 グリーンレンタルとその他スキームとの比較 5)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-4) TG グリーンカルテ

① 提供するエネルギー・設備

TG グリーンカルテは、省エネルギー法や各自治体の条例に必要となるエネルギー管理、報告業

務をサポートするサービスである。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。

③ ビジネスモデル

省エネ法、各自治体の条例によって規制対象となる、事務所や法人に求められる法定書類(定

期報告書、中長期計画書、管理標準)の作成を支援する。省エネ計画の作成については、施設全

体の省エネ診断を行い、反映するとしている。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや、導入後の効果に関する情報は公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-5) TG グリーンモニター

① 提供するエネルギー・設備

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エネルギー使用状況(ガス・電気・水道など)や設備の運転状況を「見える化」する。需要家は

各施設単位から法人単位までのエネルギー使用状況を、常時確認することができる。

② 対象需要家

主に、事務所ビル・病院・ホテル・商業店舗等の業務用ビルを対象にしたサービスである。

③ ビジネスモデル

需要家の施設でのエネルギー使用状況を、ガスや電気のメーター等に独自の計測機器を設置し、

無線によって自動収集するか、入力することによってエネルギー使用傾向の分析を行う。当日の

電力使用量の予測、予測値と実績の差分の報告、契約電力を超過する可能性がある場合は通知を

行うことで、需要家へ効果的な機器の運用を促す。また、Web 伝言板等のコミュニケーションツ

ールも提供され、施設利用者間での節電意識の共有化などにも活用できる。

④ 導入コスト・効果

本サービスの基本料金は年間 10 万円からとなっている。サービス料金には、遠隔計測システム

レンタル料、設置調整費、通信費、センター使用料、メンテナンス費が含まれる。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

図 2-16 TG グリーンモニターの概要 5)

(1-6) グリーン・ヘルプ・プロ

① 提供するエネルギー・設備

インターネットを介して業務用空調機(ガスヒートポンプ)の運転状況の可視化を行う。また

遠隔での自動制御によって空調機利用の無駄を省き、需要家に代わり省エネをするサービスであ

る。

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② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。事務所ビル、店舗・商業施設、学校、病院など様々

な分野で採用されている。

③ ビジネスモデル

グリーン・ヘルプ・プロは主に 5 つのサービスを提供し、需要家の省エネに貢献する。(図 2-17)

図 2-17 グリーン・ヘルプ・プロのサービス概要 5)

④ 導入コスト・効果

ガスヒートポンプ室外機 1 台あたり、サービス料金は年額 21,000 円(税込)(加入後 1 年間は

無料サービス期間)である。導入効果として東京ガスの実証試験ではガスヒートポンプの運転効

率化により年間ガス消費量の約 20%が削減されたとしている。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(2) 大阪ガス株式会社

大阪ガスは、 適なユーティリティ設備の導入から、エネルギーの 適調達、設備のオペレー

ション&メンテナンス、導入後の省エネ運用アドバイスまでを、総合的に提供している。グループ

会社、株式会社 OGCTS とユーティリティ・エージェントに取り組んでいる。

図 2-18 大阪ガスの総合エネルギーサービス概要9)

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(2-1) オペレーション&メンテナンスサービス

① 提供するエネルギー・設備

システム検討からエネルギー供給、エネルギーマネジメントに至るまで、ワンストップサービ

スで提供する。新規導入機器が必要となる場合は株式会社 OGCTS(大阪ガス株式会社出資比率

100%)が提供する。

株式会社 OGCTS は、コージェネレーション・空調・太陽光・バイオ発電システム・水処理、

ボイラ・バーナ・工業炉・受変電設備・遠隔監視システム等のユーティリティ設備機器の販売を

行っている。

② 対象需要家

対象需要家は業務用施設に加え、電機・機械・化学・金属・ガラス・窯業・繊維・食品・塗装・

メッキ等、多くの業種に及ぶ。

<導入事例1>

導入先:立命館大学

導入設備:再生可能エネルギー(太陽熱、太陽光発電)と常用非常用兼用コージェネ

特徴:

・ 設備導入時の初期投資を抑えた学校法人での面的利用の取り組みである。

・ 初期投資ゼロで、エネルギーサービス事業者が常駐管理することで高効率に設備を運

用し、防災性や電源セキュリティを向上している。

・ 補助金を利用することで設備投資料金を下げ、サービス料金をその分安価にしている。

図 2-19 導入システムの概要 10)

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③ ビジネスモデル

コンサルティング・エンジニアリング・ファイナンスなどのノウハウを 大限に活用し、シス

テム検討からエネルギー供給、エネルギーマネジメントに至るまでワンストップサービスで利用

者をサポートしている。

図 2-20 業務用施設向けのサービス例 9)

図 2-21 産業用施設向けのサービス例 9)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。

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⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(2-2) EcoWave(エネルギーサービス)

① 提供するエネルギー・設備

提供するエネルギーは電気・熱であり、ガスコージェネレーションシステム、ガス空調、バイ

オマス発電等を利用者の敷地内に設置。利用者は初期投資無しで、エネルギー加工量に応じたエ

ネルギーサービス料金を支払い、省エネと省コストの両方を実現できる。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。2003 年からサービスを提供しており、既に 1,012

件の導入実績がある。

図 2-22 EcoWave の導入実績 9)

下記事例を見ると、既存設備の老朽化に伴う更新のタイミングで導入を進める事例が多い。

<導入事例 1>

導入先:本州化学工業株式会社

導入設備:ガスタービンコージェネシステム(設置後 50 年経過の水管ボイラの置き換え)

特徴:

・ オンサイト設備により、防災性・電源セキュリティ性が向上。非常時にも工場内全負荷

へ電力供給が可能である。

・ ガスタービン吸気冷却用の蒸気吸収冷凍機やコンバインドを活用している。

・ 副生油(主成分:トルエン)、副生ガス(主成分:水素)の活用も行う。

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図 2-23 本州化学工業株式会社の導入システム概要10)

<導入事例 2>

導入先:株式会社淀川製鋼所

導入設備:ガスエンジン(設置後 24 年経過のガスエンジンをリプレース)

特徴:

・ 老朽化設備の更新費用が多額のため、15 年間の運用を前提にエネルギーサービスを採

用している。

・ 構内の熱需要と電力バランスを考慮し、高効率コージェネを導入している。

・ 設備更新とともに、ボイラ給水予熱に温水を活用している。

・ 発電容量の増加により、夏期の節電に貢献している。

図 2-24 株式会社淀川製鋼所の導入システム概要11)

<導入事例 3>

導入先:牛乳石鹸共進社株式会社

導入設備:ガスエンジン(既存のコージェネシステムのガスエンジンをリプレース)

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特徴:

・ エネルギーサービス事業を活用した省エネ・設備導入を行っている。

・ 既存ガスエンジンは買い取り(設置後 14 年経過時点のガスエンジン)。

図 2-25 牛乳石鹸共進社株式会社のビジネスモデル概要12)

③ ビジネスモデル

サービス利用者から一次エネルギー(ガス等)を支給し、二次エネルギー(電気・熱等)に加工

して提供するエネルギーサービスを同社独自のスキーム(EcoWave)として提供している。

図 2-26 EcoWave のスキーム図 9)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかる初期コストは不要である。エネルギーサービスに対する支払額は、

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毎月のエネルギー加工量に連動して決定する。

利用企業が省エネ設備を自前で導入した場合は、固定費が増えることになるが、同サービスを

利用することにより、変動費部分で省エネに取り組むことが可能となる。

図 2-27 EcoWave での支払イメージ 9)

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(3) 北海道ガス株式会社

北海道ガスは同社の 100%出資会社である、株式会社エナジーソリューションを通して北海道

ガスが供給している天然ガスを使用したエネルギーサービスを提供している。エナジーソリュー

ションはここで取り上げる「受託サービス」・「ESP サービス」の他にも熱供給プラントから地域

単位へ熱供給を行う「地域エネルギーサービス」や ESCO 事業を扱っている。

(3-1) 受託サービス

① 提供するエネルギー・設備

需要家の施設内にエネルギー供給設備を設置し、電力や冷水、温水、蒸気を供給する。ただし、

一次エネルギーは需要家が自ら調達する必要がある。同サービスは ESCO 事業としても提供され

ている。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。北海道ガス HP では受託サービスの事例紹介とし

て下記をあげている。

<導入事例1>

導入先:マルカワ食品株式会社

導入設備:

・ 天然ガス高効率蒸気ボイラ:2.5t/h×4 台

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・ 廃油ボイラ:0.5t/h×1 台

・ 天然ガス温水ボイラ:349kW×2 台

・ 油揚フライヤーバーナー設備

特徴:

・ 蒸気、温水、加熱の全てを天然ガスから供給している。

・ CO2 の削減効果は 1,100t-CO2/年としている。

③ ビジネスモデル

受託サービスは需要家が購入する燃料を使って、株式会社エナジーソリューションが提供する

エネルギー設備で電気や熱といったエネルギーを供給する。設備の保有者は株式会社エナジーソ

リューションとなる。本サービスのメリットとして下記があげられている。

・ 設備所有者は株式会社エナジーソリューションとなるため。資産管理や経営処理が簡

潔になる。

・ 需要家は、多額の初期投資を負担する必要がなく、本業への資金投入が可能である。

・ 定期点検費用、突発的な故障修理費用は月額のサービス料金で平準化されるため、予算

計画が立てやすくなる。

・ 保険契約などの事務手続きの軽減を図ることができる。

また、本サービスでは設備設置後の運転管理、保守点検なども株式会社エナジーソリューショ

ンが行い、導入による効果測定やデータ分析による設備改修効果を検証、さらなる省エネルギー

化へ向けた検討を行う。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。各事例での導入効果については②を参

照のこと。

⑤ 導入プロセス

本サービス導入までのプロセスは ESP サービスと同様に、下記の要領で行われる。

i) エネルギーデータ(使用量、料金)の収集

ii) 設備運用実態の把握

iii) 設備改修内容の計画(機器選定、コスト算出)

iv) 事業プランニング(収支計画、ESP 料金・受託サービス料金の設定

v) 提案・契約

vi) 設計・施工

vii) 運転管理・保守点検

viii) 効果測定・検証

ix) さらなる改善

(3-2) ESP サービス

① 提供するエネルギー・設備

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需要家の施設内にエネルギー供給設備を設置し、電力や冷水、温水、蒸気を供給する。設備や

供給エネルギーの組み合わせは需要家の需要に合わせて決定する。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。北海道ガスの企業ホームページでは、ESP サービ

スの事例紹介として下記をあげている。

<導入事例1>

導入先:ホテル日航千歳

導入設備:

・ ガスコージェネレーション:320kW×1 台

・ ガス蒸気ボイラ:2t/h ×3 台

・ 蒸気吸収冷凍機:120RT ×1 台

特徴:

・ 電力・冷熱・温熱をホテルに供給している。

・ 北海道ガスグループが設備の計画・設置・遠隔監視による運転管理を行う。

・ CO2 の削減効果は 660t-CO2/年としている。

③ ビジネスモデル

ESPサービスのビジネスモデルは前項の受託サービスと同様である。受託サービスとの違いは、

エネルギー設備の原料となる天然ガスの供給契約を需要家が行うか、株式会社エナジーソリュー

ションへ委託するかで異なる。

図 2-28 受託サービス(左)、ESP サービス(右)の概要13)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。各事例での導入効果については②を参

照のこと。

⑤ 導入プロセス

本サービス導入までのプロセスは前項の受託サービスと同様である。2.2.2(3-1)⑤を参照のこと。

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2.2.3 新電力

(1) オリックス株式会社

オリックスは 1995 年の風力発電事業への出資に始まり、環境エネルギー分野における事業を

国内外に展開している。ESCO 事業は 2000 年に開始し、2007 年には電力事業へ参入、近年では

日本電気株式会社(NEC)と共同で ONE エネルギー株式会社を設立し、家庭向けではあるが、

太陽光発電システムと小型蓄電システムのリース&レンタルサービスを開始している。

(1-1) ESCO サービス

① 提供するエネルギー・設備

本サービスはエネルギー供給は行わず、省エネ設備の提供のみ行う。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。工場をはじめとして、倉庫や商業店舗など、物件

の用途に応じた ESCO メニューを提供する。

③ ビジネスモデル

対象施設への省エネ設備の更新・設置にかかる費用や保守メンテナンス費用、ESCO の効果検

証に関わる費用は定額化され、需要家のエネルギーコスト削減分から賄う。需要家のエネルギー

使用状況を分析し、省エネルギー手法の提案から実施までを一貫して提供する。特定のメーカー

に偏らない 適な機器を選定し、運用コンサルティングまで継続的にサポートを行う。同サービ

スはリース料金体系での取り扱いも存在する。

図 2-29 ESCO サービスのモデルスキーム14)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストや効果に関する事例は公表されていないが、2017 年 3 月末時

点での導入実績は約 700 件としており、全体で 67,000t の CO2削減効果があるとしている。この

値は 2017 年 3 月末における ESCO 契約事業者を対象に、削減期間を 5 年間として算出されたも

のである。

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⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(1-2) 蓄電池システムレンタルサービス(ONE エネルギー株式会社)

① 提供するエネルギー・設備

本サービスではエネルギーの直接供給を行っていないが、提供設備として蓄電システムのレン

タルにより需要家の住宅でディマンドレスポンスの 適化が行われる。

② 対象需要家

対象需要家は一般家庭を想定している。

③ ビジネスモデル

一般家庭向けに蓄電池のレンタルを行い、設置工事費などの初期費用は月々のレンタル料金で

平準化される。契約期間は 10 年間であり、中途解約は不可であるが、その間は設備のメンテナン

ス・性能保証が付く。蓄電システムは遠隔で 24 時間 365 日管理され、異常の監視や、システムの

適化が行われる。需要家はピークカット運転や、売電、災害対策での効果が期待できる。太陽

光パネルとの併用で、更なる効果が期待できるとしている。

図 2-30 ESCO サービスのシステム概要 14)

④ 導入コスト・効果

蓄電容量 5.53kWh の蓄電池を、月 8,700 円のレンタルコストで導入することができる。

⑤ 導入プロセス

設備の導入は下記の手順で行われる。補助金は ONE エネルギーが受給者となり、サービス料

金に反映されることとなる。

i) 契約

ii) ONE エネルギーによる審査(契約成立)

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iii) 補助金申請

iv) 施工会社による設置場所現地調査

v) 設置・稼動確認

(2) 株式会社洸陽電機

洸陽電機は、「エネルギークリエーション領域」、「エネルギートレード領域」、「エネルギーセー

ビング領域」を事業領域として定め、発電事業、電力小売事業、省エネ事業に取り組んでいる。

特に省エネ事業では、熱回収機器の顧客先への導入により、省エネ化を進めるサービスを提供し

ている。

(2-1) 熱回収サービス

① 提供するエネルギー・設備

熱回収ヒートポンプチラーの導入により、温熱負荷専用で用いられるボイラーに替わり、冷却

工程の排熱を回収し、温熱負荷側に利用することで大幅な省エネを行う。

② 対象需要家

同社のホームページで紹介されている対象需要家は食品工場とホテルである。

<導入事例>

導入先:食品工場

導入設備:熱回収ヒートポンプチラー

図 2-31 導入システムの概要15)

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③ ビジネスモデル

ビジネスモデルに関する記載はないが、エネルギーの見える化から、設備改修を提案し、省エ

ネとコスト削減に繋がる熱回収機器を導入していると考えられる。

④ 導入コスト・効果

本設備の導入にかかるコストは、補助金なしで 7,500 万円程度であり、投資回収年数は 5.8 年

とされているが、補助金を活用することにより、費用を低減することが可能である。

図 2-32 燃料削減量、並びに初期投資及び投資回収年数 15)

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(3) パナソニック株式会社

パナソニックでは、主にエネルギーマネジメント機器・システムを用いた省エネサービスを提

供している。

(3-1) 工場まるごと省エネ SE-Link(セーブエナジーリンク)

① 提供するエネルギー・設備

生産設備と原動設備を連携制御する EMS(SE-LINK)を工場に導入し、工場の一括省エネを

実現している。

② 対象需要家

同社のホームページでは、グループ企業(パナソニック エコシステムズ株式会社 春日井工場)

への導入実績が示されている。

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図 2-33 導入システムの概要16)

③ ビジネスモデル

省エネ改善提案から始まり、エネルギーの見える化、省エネ活動サポート、工場まるごと省エ

ネ、順を追って顧客をサポートするサービスイメージを掲げている。

図 2-34 工場省エネサービスの全体像 16)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(4) 株式会社エナリス・パワー・マーケティング

エナリスでは、需要家ごとに異なる、電力の課題解決に向けたサポートサービスを実施してい

る。省エネに向けた契約の見直しや電力制御など、それぞれのニーズに合わせた提案を行うとと

もに、契約切り替えに伴う手続きや、煩雑な事務作業などの全面的なサポートもあわせて提供し

ている。

(4-1) エネルギーエージェントサービス

① 提供するエネルギー・設備

本サービスでは需要家に応じた 適な電力供給を検討し、提供する。提供する設備として、エ

ナリスのエネルギーマネジメントツール「ENERES FALCON SYSTEM」および蓄電池の提供があ

る。

② 対象需要家

対象需要家は主に高圧需要家向けであるが、自治体も対象としている。沖縄を除く全てのエリ

アで提供可能であり、様々な業種・業態で導入されている。既に 7,000 拠点以上の導入実績があ

る。

表 2-5 エネルギーエージェントサービスによる電気料金削減事例17)

導入先 ディスカウント

ストア

工場 オフィス

ビル

ホテル ホーム

センター

商業ビル

契約電力 607kW 480kW 670kW 500kW 130kW 1,000kW

使用電力量 213.9 万 kWh 15.6 万 kWh 195 万 kWh 180 万 kWh 23.5 万 kWh 500 万 kWh

年間

電気料金 5,840 万円 3,500 万円 3,570 万円 3,000 万円 540 万円 7,500 万円

年間

削減金額 1,722.8 万円 280 万円 342.7 万円 390 万円 79.4 万円 450 万円

削減率 29.5% 8.0% 9.6% 13% 14.7% 6.0%

③ ビジネスモデル

電気料金の削減、煩雑な手続き事務、といった電力に関するさまざまな課題解決に向けて、供

給契約の見直しや、使用電力の制御など適したアプローチ方法の提案を行う。小売供給契約の主

体は新電力と需要家となり、需要家に代わって、新電力との料金交渉や料金請求等をとりまとめ

て行う。

平成 28 年 4 月より開始されたこのサービスにおいて、エナリスのエネルギーマジメントツー

ル「ENERES FALCON SYSTEM」を通じた、エネルギーマネジメントによるピークカットや使用

量のコントロールによる省エネを実現可能とする提案も行っており、あわせて蓄電池の選定・導

入、導入後の効率的な蓄電池運用のサポートなども行っている。電気料金削減に寄与する、主な

アプローチ方法は以下の 3 つである。

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・ 供給契約のコーディネート

・ ピークカット

・ エネルギーマネジメント

図 2-35 エネルギーエージェントサービスの概要18)

図 2-36 エネルギーエージェントサービスにおけるビジネスモデル19)

④ 導入コスト・効果

供給契約のコーディネートについては、初期コストはかからないが、エネルギーマネジメント

ツールを用いたピークカット、エネルギーマネジメント等を導入する場合には、設備規模や環境

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等に応じた費用が発生する。

供給契約の見直しなど顧客に合った電気料金削減方法により、 大 30%の電気料金削減実績が

ある。事例実績については表 2-5 を参照のこと。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

(5) 株式会社エネット

株式会社エネットは、株式会社 NTT ファシリティーズ、東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社

の 3 社により設立された新電力会社である。IT とエネルギー技術の組み合わせによるサービスを

強みとし、2001 年に関東、関西で電力供給を開始し、2013 年に日本全国での事業展開を完了し

ている。2016 年度の新電力におけるシェアは 302 社中、トップである。

(5-1) Ennet eye

① 提供するエネルギー・設備

本サービスでは 30 分毎の電気使用量・気象情報・料金情報といったデータを収集し、AI が解

析することで、電力料金変動原因の分析から対策案の提示を行う。サービス自体にエネルギー供

給は含まれていないが、本サービスはエネットと電力供給契約のある法人に対して、有料で提供

される。

② 対象需要家

対象需要家は、高圧電力以上で契約を結んでいる法人となる。

③ ビジネスモデル

「投資をせずに運用で電気料金を削減したい」、「省エネの取り組みが定着したか確認したい」、

「どの支店や現場に指示をすれば良いかわからない」というようなニーズに応えるサービスとし

て、オーストラリアでリモート省エネルギーサービスを提供している、COzero Holdings と共同

で提供されることが、2016 年の 11 月に発表されている。

本サービスは 30 分毎の電気使用量・気象情報・料金情報・建物情報といった、膨大な情報を AI

が処理し、需要家の省エネを行う。

エネットは Ennet eye が従来の省エネサービスと差別化できる点として、下記の 4 点を挙げて

いる。

i) 即時性

スタッフが個別にビルに伺う必要がなく、全てのビルを遠隔で即時分析できる。また本サー

ビスでは、電力供給契約時に設置するスマートメーターを利用するため、新たな初期投資は不

要であり、手間をかけずに即時利用可能である。

ii) 継続性

24 時間 365 日継続的に全てのビルの状況をチェックし、需要家の把握しづらい早朝、深

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夜、休日の時間帯での問題点を、AI による 30 分毎の解析で即座に検出できる。対策提言後の

対応状況もモニタリングし、一度解消した問題点の再発を防止する。

iii) 経済性

各プロセスを自動化することでコストを 小化できる。運用面の改善など、初期費用をかけ

ない省エネを優先的に提案する

iv) 展開性

保有する全てのビルを一元的に管理・省エネを推進する。

図 2-37 Ennet eye のサービス内容20)

表 2-6 COzero Holdings の企業概要(2016 年 11 月発表時点)21)

会社名 COzero Holdings Ltd

事業内容 電力小売、モニタリングとマネージメント、

環境対応をインテグレートしたサービスを提供

設立 2007 年

所在地 オーストラリア シドニー

展開エリア オーストラリア 650 社 6 万設備にサービス提供中

売上 450 億円

提供サービス EnergyLink:エネルギー分析/モニタリングサービス

MarketLink:電力卸売市場仲介プラットフォーム

CreditPortal:省エネクレジット発行/売買プラットフォーム

具体的に Ennet eye が提供するサービスは下記となる。

i) データ統合/見える化

需要家の電力データを施設近傍の気象情報と結びつけ、データベースへ格納する。電気使用

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状況はレポートやアドバイスと合わせて、常時スマートフォンなどで確認できる。

ii) モデリング/比較分析

取得した気象情報と電力データに基づき、需要家の施設の解析を行う。過去の運用や、同一

用途施設との比較、外気温や湿度などとの相関分析から施設毎の課題を抽出する。

iii) 定期報告/省エネアドバイス

抽出した課題について、発生時刻と状況説明、対策及び電気料金への影響を需要家へ通知す

る。需要家の疑問点については Ennet eye の担当者が対応する。

iv) 対応状況の確認/効果測定・運用状況の管理

省エネの進捗状況を日々・毎週の定期レポートで確認できる。 問題が再発した場合は再度

AI より通知される。また、曜日毎の設備運用状況や日々の設備起動/停止状況、外気温に対す

る電気使用状況などを確認できるインタフェースを提供している。

図 2-38 Ennet eye の対応状況の確認/効果測定・運用状況の管理イメージ 20)

④ 導入コスト・効果

電力供給契約時に設置したスマートメーターを使用するため、サービス導入に伴う初期コスト

は発生しないが、サービス料金(値段は不明)が発生するとしている。導入効果として、運用面

の施策により 大で 5-10%の省エネが期待される。

⑤ 導入プロセス

既存スマートメーターを利用するため新たに図面提出をすることなく、即座にサービスを利用

できる。

(5-2) Ennet Smart エネスマート

① 提供するエネルギー・設備

本サービスは、エネットから需要家に向けた、節電リクエストに対して対価が支払われるディ

マンドレスポンスサービスである。サービス自体にエネルギー供給は含まれていないが、本サー

ビスはエネットと電力供給契約のある法人に対して提供される。

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② 対象需要家

対象需要家は高圧電力以上で契約を結んでいる法人となる。現在は関東、関西エリアで実施し

ている。

③ ビジネスモデル

電力ピーク時にエネットが需要家に向けて節電リクエストを送り、それに需要家が応じること

で電気料金が割引になる。節電要請時の対応可能性に応じて、2 つのメニューが存在し、要請時の

全てにおいて、積極的かつ確実に節電に協力できる需要家と、確実に節電をすることが難しい需

要家との差別化を行っている。

図 2-39 Ennet Smart サービスイメージ 20)

また、本事業についてエネットは 2012 年から 2016 年にかけて、大阪ガスとともに「コージェ

ネレーションを活用したディマンドレスポンス Smart Saving Power」のサービス提供を行って

いる。このサービスでは節電要請時に、需要家がガスコージェネの出力を増加させることで応え

るというものである。このサービスは平成 24 年度の省エネ大賞、省エネルギーセンター会長賞を

受賞している。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。先に述べた大阪ガスとの「コージェネ

レーションを活用したディマンドレスポンス Smart Saving Power」サービスでは、開始から 4

ヶ月間で 115MWh の節電を実現している。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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(6) 新日鉄住金エンジニアリング株式会社

新日鉄住金エンジニアリングは、数々のエネルギープラント建設、および操業実績を通じて蓄

積したノウハウを基に、多様なニーズに対応したエネルギー供給を国内外で行っている。エネル

ギー供給設備の設計、調達、建設はもとより、自社でその設備を操業することにより、電気・蒸

気・純水などを需要家に供給している。

また、同社は、工場、病院、オフィスビル、店舗・商業施設など特高・高圧の需要家を対象とし

た新電力会社である。火力発電、オンサイト・コージェネレーション、廃棄物発電、地熱発電な

ど自社の保有する設備や、多様な電源ソースを活用し、高度な需給管理システムを駆使して安価

かつ安定的な電気供給を実現している。

図 2-40 電力小売事業のビジネスモデル22)

(6-1) オンサイトエネルギーサービス

① 提供するエネルギー・設備

敷地内に 適なコージェネレーション発電設備、バイオマスボイラ、空調設備等のエネルギー

システムを設計・建設し、電力、熱供給を行う。

② 対象需要家

対象需要家は特定の法人に限られていない。

<導入事例 1>

導入先:タイ国 Yokohama Tire Manufacturering

導入設備:ガスタービンと独自の高効率廃熱回収ボイラ

・ 発電出力:7,000kW

・ 蒸気供給能力:25t/h

・ 総合エネルギー効率:90%

特徴:

・ 2017 年 5 月 4 日から工場内にてエネルギー供給を開始している。

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・ 総合エネルギー効率は 90%で、15 年間にわたり電気と熱(蒸気)を供給する。系統事

故時における安定運転も可能である。

・ 大阪ガスと共同出資のタイ国現地法人 NS-OG Energy Solutions がコージェネレーシ

ョンシステムの建設からオペレーション、ガスの調達までを行う。

・ 現地での性能試験結果に基づく試算では、一次エネルギー削減率 24%、CO2 削減量

18,000t-CO2/年の効果がある。

<導入事例 2>

導入先:富士フィルム九州株式会社

導入設備:ガスコージェネレーションシステム 7,000kW 級×4 台

特徴:

・ 富士フィルム九州株式会社の敷地内に建設したエネルギーセンターにて、各種国家資

格を保有する技術者が、ガスタービンコージェネレーションシステム、受変電設備、水

処理設備等、各種設備の 適な運転操業を 24 時間 365 日操業を行う。

・ 2016 年 4 月の熊本地震で、エネルギー供給設備の復旧を迅速に行い、早期に操業再開

を実現している。

・ ガスタービンに追焚きシステムを追加した、業界トップクラス(年間総合効率実績:

83.3%)の 7MW 級コージェネシステムとして、2015 年コージェネ大賞優秀賞を獲得

している。

・ 隣接する天然温泉施設へ、熱供給を行っている。

③ ビジネスモデル

100%出資子会社の新日鉄住金エネルギーサービス株式会社と、お客様の事業敷地内に 適なコ

ージェネレーション発電設備、バイオマスボイラ、空調設備等のエネルギーシステムを設計・建

設し、資金調達および設備の操業・メンテナンスまで含めたワンストップサービスを提供し、電

力、熱供給を行う。

図 2-41 オンサイトエネルギーサービス概要23)

新日鉄住金エンジニアリングは本サービスについて 3 つのメリットを述べている。

i) 需要家の立場にあったエンジニアリング

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需要家にとって 適なシステム、燃料、電力を提案する。

ii) 設備の操業アウトソーシング化

需要家にとって煩雑な設備管理をなくし、コスト削減、エネルギーの安定供給を行う。

iii) キャッシュフローの改善

需要家の資金を使わず 新の設備を導入する。

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは公開されていない。各事例での導入効果については②を参

照のこと。

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスに関する情報は公開されていない。

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2.2.4 太陽光発電関連会社

(1) 株式会社シェアリングエネルギー

株式会社シェアリングエネルギーは、株式会社アイアンドシー・クルーズと株式会社環境エネ

ルギー投資が共同出資し設立した、太陽光発電第三者所有モデルを進める事業者である。

なお、アイアンドシー・クルーズは住宅用太陽光発電システムの比較サイトを運営しており、

太陽光発電システムの販売施工会社に各種関連商材の販売をしている。

(1-1) シェアでんき

① 提供するエネルギー・設備

太陽光パネルを無償提供し、需要家サイトでの太陽光発電を行う。発電した一部の電力を需要

家は無償で利用することができる。

② 対象需要家

対象需要家は、蓄電設備または発電設備を備え付けていない、一般家庭を想定している。

③ ビジネスモデル

太陽光パネルはシェアリングエネルギーが保有し、需要家は自宅に初期費用を負担することな

く、太陽光発電を導入することができる。昼間は太陽光発電の総発電量を 30%まで無料で利用す

ることができ、残りの 70%は売電され、シェアリングエネルギーの収入となる。ただし、需要家

の自家消費量が太陽光発電の総発電量の 30%を超える場合、需要家はシェアリングエネルギーに

対し、その超過分に FIT 単価を乗じた金額を支払う必要がある。夜間の電力は従来の電力小売事

業者から購入する。

図 2-42 シェアでんき概要24)

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④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは、昼間の電気使用量が、太陽光発電量の 30%を超えない限

り、初期投資と月額共に無料である。

導入効果として、電力購入量の削減とそれによる再エネ賦課金の負担軽減を期待することがで

き、シェアリングエネルギーは年間 46,000 円、20 年間で 90 万円の節約が可能であるとしてい

る。

図 2-43 シェアでんき導入によるコストメリット 24)

※毎月の電力使用量を 400kWh と想定、電気料金単価は東京電力(従量電灯 B)に準ずる

⑤ 導入プロセス

本サービスの導入までのプロセスは図 2-44 のとおりである。

図 2-44 シェアでんき導入のプロセス 24)

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(2) ファブスコ株式会社

ファブスコ株式会社は、オムロン株式会社(京都府京都市)と株式会社 NTT スマイルエナジー

(大阪府大阪市)と連携し、商業施設向けに同社が開発したカーポート型の太陽光発電を活用し

た第三者所有太陽光発電電力販売事業(ソーラーPPA)を 2017 年(平成 29 年)11 月より開始し

ている。

なおファブスコ株式会社は、太陽光発電システム事業の他に、電気自動車用充電器の販売事業

やサービス事業も展開している。

(2-1) ソーラー PPA

① 提供するエネルギー・設備

カーポートに太陽光発電を搭載したソーラーカーポート(Smileport(スマイルポート))を初

期費用なしで需要家に導入している。

② 対象需要家

実質無償で太陽光発電の導入と BCP 環境を構築することが可能であり、現在は防災拠点や避

難所指定された施設などを保有する自治体を中心にサービスの展開を実施している。

③ ビジネスモデル

PPA 事業者が第三者から資金を調達し、需要家の敷地に太陽光発電システム(ソーラーカーポ

ート)を設置する。需要家は太陽光発電システムが発電した電力のうち、使用した分だけを従来

の電力会社が販売する電力料金とほぼ同等の価格で、PPA 事業者から買い取る。

なお、災害時には PPA 事業者と自治体との防災協定により、太陽光発電システムの電力の無償

提供がされる。これにより、自治体は実質無償で避難所の整備や非常用電源の確保をすることが

可能となる。

図 2-45 ソーラーPPA サービスの流れ25)

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PPA 事業者の収入源は 2 つある。1 つは、太陽光発電システムの発電量のうち、需要家が消費

する分(自家消費電力)からの収入であり、これは需要家から従来電気料金と同程度の電力料金

を請求する。もう 1 つは需要家が消費しない分(余剰電力)からの収入であり、これは FIT を

通じて電力会社に販売する。

図 2-46 ソーラーPPA における電力の使い方 25)

④ 導入コスト・効果

本サービスの導入にかかるコストは、初期投資と月額共に無料である。 電気料金は従来の電

力会社と同等としており、実質無償で太陽光発電を利用でき、BCP にも活用できるメリットが

ある。

⑤ 導入プロセス

従来の太陽光発電システムの導入と同様、図面、現地調査などを得て、契約する。

(3) 株式会社 VPP Japan

株式会社 VPP Japan は、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズと、株式会社環境エネル

ギー投資が共同出資し設立した太陽光発電第三者所有モデルを進める事業者である。スーパーマ

ーケット等の建物屋根の遊休スペースに太陽光発電所を建設し、そこで発電したクリーン電力を

送電網に介さずに建物側に直接供給する、「オフグリッド電力供給サービス」を開始している。

なお、アイ・グリッド・ソリューションズは、流通業、小売業、アミューズメント業等にエネル

ギーマネジメント事業を展開している。

(3-1) オフグリッド電力供給サービス

① 提供するエネルギー・設備

店舗の建物屋根の遊休スペースに、太陽光発電システムを導入する。導入した太陽光発電は

100%需要地内で地産地消する。

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② 対象需要家

スーパーマーケット等の顧客に対して導入している。アイ・グリッド・ソリューションズのノ

ウハウより、 適な太陽光発電設備容量を提案することで、100%自家消費可能な需要家を対象

としている。

③ ビジネスモデル

株式会社 VPP Japan が費用を負担して太陽光発電を建物屋根に設置し、需要家は、その太陽

光発電の供給量分の電気料金を同社に支払う。このモデルによって、需要家は太陽光発電設備を

購入せずに太陽光発電の電力を利用が可能となる。なお、太陽光発電の電力は需要家において

100%自家消費するため余剰電力は出ない前提であり FIT は活用していない。

図 2-47 オフグリッド電力供給サービス26)

④ 導入コスト・効果

電力料金については、電力会社より安価な電力供給で、燃料高騰の影響や、再エネ賦課金の負

担がないとしている。

⑤ 導入プロセス

従来の太陽光発電システムの導入と同様に、図面、現地調査などを実施することが想定される

ほか、太陽光発電の発電電力の 100%自家消費可能性を評価するため、建物内での電力使用量の

分析が必要としている。

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3 海外エネルギーサービス事業者に関する調査

3.1 調査対象

海外のエネルギーサービス事業者については、欧州では、温室効果ガス排出削減に積極的な事

業者を抽出するため、SBT(Science Based Targets)イニシアティブ1に温室効果ガス排出削減目

標が認証された企業のうち、エネルギー供給事業を実施しているエネルギー企業を抽出した(5

社)。

米国は、分散型エネルギーリソースの導入が進んでいる事業者を抽出するため、太陽光発電導

入量が多いカリフォルニア州(導入量 1 位)、を対象とし、同州において電力販売量が多い大手エ

ネルギー会社 5 社を抽出した。以下に対象企業を示す。またドイツでは、太陽光発電の導入とと

もに蓄電池導入も進んでおり先進事例として Sonnen を含めた。

表 3-1 対象企業

分類 企業名

欧州 SBT イニシアチブに目標が認証さ

れた欧州の大手エネルギー企業

Ørsted(デンマーク)

Verbund AG(オーストリア)

Enel(イタリア)

Eneco(オランダ)

EDP(ポルトガル)

蓄電池関連事業者 Sonnen(ドイツ)

米国 米国カリフォルニア州で電力販売

量が多い大手エネルギー企業

Southern California Edison Co

Pacific Gas & Electric Co

Los Angeles Department of Water & Power

San Diego Gas & Electric Co

Sacramento Municipal Util Dist

1 SBT イニシアティブは、WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブ。

企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、 大でも 2 度未満に抑えるという目標に向けて、

科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進。349 社が参加しており、うち 91 社が温室効果ガス排出削減目標を認証

されている。

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3.2 調査結果

本項では、3.1 項で挙げた調査対象企業のホームページから、各企業が提供しているエネルギー

サービスについて調査を行った。

各企業では、様々なエネルギーサービスが展開されているが、国内事例では実施されていない

サービスを補完する観点で主なサービスを抽出し調査した。

上記を踏まえ、本項で取り上げる各企業のサービスについて表 3-2 に示す。

表 3-2 本項で取り上げる企業とサービス

企業名 調査した主なエネルギーサービス

欧州 Ørsted 総合グリーンエネルギー供給事業、バイオマスを利

用した地域熱供給事業、バイオガス供給事業

Verbund AG Verbund Power Pool、

VERBUND GETEC Energy contracting※

Enel スマート農業

Eneco ヒートコールドストレージ、CrowdNett、BioWarmte

Installation(BWI)

EDP SMEs(中小企業)向けエネルギーマネジメントサー

ビス、家庭向けエネルギーマネジメントサービス

(EDP SmartHome)

Sonnen Sonnen Community

米国 Southern California Edison Co マイクログリッド&ストレージ

Pacific Gas & Electric Co エネルギーコスト節約サービス

Los Angeles Department of Water

& Power

Commercial Direct Install Program

San Diego Gas & Electric Co ECO Share、エネルギー管理ツール

Sacramento Municipal Util Dist グリーン電力プログラム、ソーラーシェアプログラ

ム、省エネ・節電プログラム

※VERBUND GETEC Energy contracting は Verbund と GETEC の共同出資で設立した、企業名である。エネルギーサービス事

業を行っているが、明確なサービス名がない。

3.2.1 欧州

(1) Ørsted

(1-1) 企業概要

Ørsted(エルステッド)はデンマークの国営電力会社である。同社は過去十数年、再生可能エ

ネルギーの分野に大幅に投資しており、クリーンエネルギーへの転換を図るため、既存の石油・

天然ガス事業の売却を実施してきた。2017 年 9 月には 後まで残っていた石油・天然ガス採掘事

業子会社「DONG E&P A/S」の売却をもって、全ての石油・天然ガス事業の売却を完了している。

それに合わせ、2017 年 10 月に DONG Energy から社名を変更している。

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図 3-1 Ørsted の事業分野 27)

同社はかつては欧州有数の石炭火力発電事業者であったが、現在は洋上風力発電事業を主力と

して進めている。洋上風力発電のリーディングカンパニーとして 2017 年時点で 21 のオフショア

ウィンドファームが稼働中であり、現在 7 ヵ所の計画案件がある。

2020 年までに、デンマーク、ドイツ、英国、オランダ沖を中心に洋上風力の発電容量を 7.45GW

に拡大する予定である。

図 3-2 Ørsted の風力発電の実施状況および計画27)

(1-2) 特徴的なエネルギーサービス

① 総合グリーンエネルギー供給事業

Ørsted は風力、木質バイオマス、廃棄物などの様々な再生可能エネルギー由来の電気・熱・ガ

ス供給を目指している。これらのエネルギーの安定供給のために、蓄電池を利用したグリッドシ

ステムや、熱供給インフラ事業などのエネルギーマネジメント関連事業にも注力している。コペ

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ンハーゲンのノルドハン地区の EnergyLab Nordhavn Project では、リチウムイオンベースのバ

ッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)により、市内の電力マネジメント事業を実施している。

② バイオマスを利用した地域熱供給事業

同社は、洋上風力発電に並ぶ再生可能エネルギー発電事業として、バイオマス発電事業にも注

力している。2023 年までに石炭火力を全廃し、バイオマスへの燃料転換を計画しており、これら

バイオマス発電の廃熱を利用した地域熱供給事業も実施されている。例えば、同社はMetropolitan

Copenhagen Heating Transmission company(CTR)と提携し、Avedøre 発電所の設備を回収

し、廃熱でコペンハーゲン市内の地域熱供給を実施している。

③ バイオガス供給事業

Renescience システムと呼ばれる酵素処理と組み合わせた独自のバイオガス化技術により、都

市ごみ由来のバイオガスを製造し、都市ガス管にこれらのバイオガスを注入するガス供給事業に

参入している。バイオガス製造として既に英国 Northwich で商用化プラントが稼働している。

図 3-3 英国 Northwich における都市ごみバイオガス化プラントの概要28)

(2) Verbund AG

(2-1) 企業概要

Verbund は 1947 年に設立したオーストリアの電力会社で、ヨーロッパの中でも 大規模の水

力発電設備を保有している。発行株式の 51%はオーストリア共和国が保有しており、発電設備と

電力グリッドへの投資を行っている。主に電力供給事業を行っているが、設立から 70 年が経過し

た現在では、蓄積されたノウハウを利用した、プラント建設や顧客の持つ既存設備の運用コンサ

ルティングなどの事業を手がけている。

また、Verbund はドイツの GETEC heat & power と共同のジョイントベンチャーVERBUND

GETEC Energiecontracting GmbH を 2015 年に設立している。GETEC heat & power はエネル

ギー消費の大きい産業分野を対象にした、エネルギー供給計画の改善事業のノウハウに長けてお

り、100 件以上のプラントでの実績を持っている。GETEC との共同設立は将来のエネルギーサ

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ービス市場の変化を見据えたものと発表している。

(2-2) 特徴的なエネルギーサービス

① Verbund Power Pool

Verbund Power Pool は、オーストリアで 初の産業規模 VPP システムであり、2014 年に稼動

を開始している。Verbund との電力供給契約を結んでいる産業、商業顧客、グリーン電力プロバ

イダが利用することができ、発電量が不安定な再生可能エネルギーによる電力調整を、Verbund

が変わって運用するというものである。これにより、需要家は運用リスクを 小限に抑えつつ、

再生可能エネルギー設備の導入と利用、余剰電力の販売を行うことができる。

図 3-4 Verbund Power Pool の概要29)

② VERBUND GETEC Energy contracting

Verbund と GETEC heat & power のジョイントベンチャーである VERBUND GETEC

Energiecontracting GmbH は Energy contracting、すなわち建築物のエネルギー効率の改善をサ

ポートするサービスの提供を行っている。

同社はエネルギー設備の設置計画から運用までを行い、長期的に需要家のエネルギーコスト削

減を実現するとしている。具体的なサービス内容を表 3-3 に示した。

表 3-3 VERBUND GETEC Energy contracting のサービス内容30)

フェーズ サービス

計画 需要家のニーズを明確にしたシステム設計

需要家の既存プラント技術に 適な改築の計画

分析 サービス適用によるプラントの利便性を分析

ファイナンス 需要家の要望に合わせた柔軟な資金繰り

補助金の獲得を全面的に支援

建設

規制当局の許可獲得の代行

高の技術基準に需要家の施設を建設

既存システムの 適化と、ランニングコストの削減

運用 プラントの安定的かつ効率的にエネルギーを供給

計画通りにシステムを保守管理

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フェーズ サービス

24 時間プラントを監視

書類手続きを代行

正確でわかりやすい課金システムを提供

また、VERBUND GETEC の国内サービス契約事例として表 3-4 がホームページで紹介され

ている。

表 3-4 VERBUND GETEC の国内サービス契約事例 30)

事例①「Pflegeheim Dornbirn」 事例②「Gewerbepark Schöller 2Welten」

Pflegeheim の介護老人福祉施設

バイオマス、天然ガスによるプラント新設

バイオマスボイラー 300kW(熱量)

ガスボイラー 350kW(熱量)

年間 720,000kWh(熱量)の熱供給

(90%がバイオマス)

Bregenz のビジネスパーク

天然ガス、電気によるプラント新設

天然ガスボイラー 895kW(熱量)×2 台

チラー160kW(熱量)×2 台

年間 1,300,000kWh(熱量)の熱供給

年間 65,000kWh(熱量)の冷熱供給

(3) ENEL

(3-1) 企業概要

ENEL 社はイタリアの大手総合電気・ガス事業者である。世界 37 カ国に拠点を置き、84GW の

発電容量を保有、6,400 万人の需要家に電気とガスを供給している。

ENEL 社の関連会社である ENELX は、エネルギー関連サービスのプラットフォームを提供す

る企業で、以下の企業と連携し、Energy As a Service を推進している。

表 3-5 ENEL の Energy As a Service における連携企業

企業名 内容

Demand Energy(DEN) エネルギー貯蔵および分散型発電技術の運用、財務パフォーマンス

を 適化するよう設計されたターンキーソリューションの提供

EnerNOC 商業および産業向けのエネルギー管理サービスとソリューション

(ディマンドレスポンスサービスを含む)の提供

EMotorWerks 電気自動車の充電システムの米国大手プロバイダー。充電インフ

ラ、配電システム管理のための IoT プラットフォームの提供

(3-2) 特徴的なエネルギーサービス

① スマート農業

ENEL 社は様々なエネルギーサービスを実施しているが、中でも先進的な事例がイタリアの大

手農場 Bonifiche Ferraresi(5,500ha)に提供しているスマート農業をコンセプトとしたエネル

ギーサービスである。

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本サービスでは太陽光発電システムおよび蓄電池の導入による自家消費を進めながら、メタン

ガスを利用した電力供給を実施している。またディマンドレスポンス市場を踏まえたサービスを

前提としており、電気自動車の蓄電池の充放電に対応した V2G(Vehicle to Grid)技術を保有す

る、充電インフラストラクチャー電気自動車 20 台と電気バイク 5 台の長期レンタルサービスの

提供も行っている。

(4) ENECO

(4-1) 企業概要

ENECO は、オランダの天然ガス、電気および熱の 大の生産者および供給業者の一つである。

200 万人以上の顧客にサービスを提供している。

特に「持続可能(Sustainable)」な熱供給の観点で先進的な取り組みを実施している企業で、

同社は「持続可能(Sustainable)」な熱供給を独自で想定したレベルで表現している。レベルは 0

から 3 で構成されており、レベルが高いほど持続可能性に向け進んだ取り組みとしている(図

3-5)。

レベル 0 は化石ガス用のボイラーを提供するレベル(Inefficient fossil)で、現時点のユトレイヒ

トの熱供給の大部分はこれにあたるとしている。レベル 1(Efficient fossil)の地域冷暖房は一歩進

んだ取り組みであり、ユトレイヒトの熱供給の約 20%がこの方法によって実施されている。

現 在 ENECO が 取 り 組 ん で い る の が レ ベ ル 2(Sustainable) で あ り 、 BioWarmte

Installation(BWI)(バイオマスからの熱供給)、バイオガス、下水処理および産業資源からの熱を

利用して化石燃料使用を低減するとしている。さらに進んだレベル 3(Sustainable without

burning)として、地熱利用、グリーン電力からの熱供給も想定されている。次項に示すヒートコ

ールドストレージ(WKO)の導入事例では、太陽光発電からの電力を活用したヒートポンプによ

る熱供給を行っている。

レベル 3

(Sustainable

without

burning)

地熱利用、グリーン電力からの熱供給

レベル 2

(Sustainable)

BioWarmte Installation(BWI)、バイオ

ガス、下水処理および産業資源からの熱

を利用して化石燃料使用を低減

レベル 1

(Efficient

fossil)

地域冷暖房 高効率ボイラーと比較し

て CO2 排出量を 30~50%削減

レベル 0

(In efficient

fossil)

化石ガス用のボイラーを提供

図 3-5 ENECO の想定している「持続可能(Sustainable)」な熱供給のレベル31)

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(4-2) 特徴的なエネルギーサービス

一般的な電力とガスの供給の他に以下のサービスを例に展開している。

① ヒートコールドストレージ(WKO)

地中熱を活用する他、建物内に設置するヒートポンプと屋上に設置する太陽光発電の組み合わ

せと壁面に設置する太陽熱パネルにより、熱供給をグリーン化することで、化石燃料の使用を

小限に抑制する。アムステルダムのオフィスビル(40,000m2)の Edge で採用されており、CO2 排

出量を 大 50%削減した。

図 3-6 ENECO のヒートコールドストレージ32) 2

② CrowdNett

需要家が導入した蓄電池の一部の容量を CrowdNett を通じて ENECO が借り、系統安定への

寄与に活用する。年間 500 ユーロ(5 年間)の報酬が需要家に支払われる。

③ BioWarmte Installation(BWI)

Lage Weide 工業団地にバイオマス(木材残渣)から熱のみを生成する BioWarmte Installation

(BWI)を 2018 年までに建設、2019 年に運転開始予定である。これにより年間 41,000 トンの

CO2 削減に寄与するとしている。

なお、過去に電力と熱を両方発生させる BioEnergie Centrale(BEC)の計画があったが大型

のためバイオマスが大量に必要となり、地域供給源では賄えなかったため、BWI の計画に変更し

た経緯がある。

2 英語訳は上から Cold meter, Heat meter, Power plant, Electricity meter, Heat network, WKO

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(5) EDP

(5-1) 企業概要

EDP はポルトガル 大の大手総合電気・ガス事業者である。世界 12 カ国に拠点を置き、発電

部門では 25GW の発電容量を保有、980 万人以上の需要家に電気を供給している。また、ガス部

門ではポルトガル、スペインの顧客を対象に 150 万人を供給している。

同社はポルトガルで 大の発電事業者であるだけでなく、スペインでも 4 番目、ブラジルで 5

番目の規模となっている。再生可能エネルギーにも注力しており、特に風力エネルギー市場では、

EDP Renewables は世界有数の主要企業となっている。これらの風力発電を含む再生可能エネル

ギーによる発電比率は 2016 年末時点で 65%に達し、今後も容量の拡大を予定している。

図 3-7 EDP の事業33)

(5-2) 特徴的なエネルギーサービス

① SMEs(中小企業)向けエネルギーマネジメントサービス

EDP では中小企業向けに、「Integrated SME Solutions」と称する複数のエネルギーサービス

をパッケージ化して提供するビジネスを展開している。具体的には独自の IT システムを用いたエ

ネルギー消費の見える化サービス、ならびに照明マネジメントサービス、太陽光発電導入サービ

スが挙げられる。このうち、エネルギー消費の見える化サービスについては、総合ユーティリテ

ィ企業の強みを生かし、電気(省エネ含む)だけでなく、天然ガス調達までを含めた包括的なエ

ネルギー 適化サービスを提供している。

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表 3-6 EDP の Integrated SME Solutions パッケージにおけるサービス概要 33)

サービス 概要

エネルギー消費の見える化/

コスト 適化サービス

「Integra」と呼ばれる独自のシステムにより、事業所

内の電気設備の不具合を迅速かつ効果的に解決

照明マネジメントサービス

照明に関する電力消費量を分析・ 適化。既存のラン

プや照明器具を LED ソリューションで置き換えるこ

とでコストを削減

太陽光発電導入サービス 事業所に太陽光発電を導入しコスト削減および電力消

費量を分析・ 適化

②家庭向けエネルギーマネジメントサービス(EDP SmartHome)

EDP は上述の法人だけでなく、一般家庭に対しても「EDP SmartHome」と呼ばれるエネルギ

ーマネジメントサービスを提供している。本サービスは、ユーザー家庭向けに太陽光発電、電気

自動車、蓄電池の導入によるエネルギー利用の 適化を行うとともに、「edp re:dy」と称するスマ

ートフォンを利用した電気の見える化サービスを提供している。

(6) Sonnen

(6-1) 企業概要

Sonnen はドイツの蓄電池関連企業。同社の企業目的は、クリーンな分散型エネルギー源で全て

の人のエネルギーニーズを満たし、全ての人が必要なエネルギーをシェアするためにつなげるこ

とにある。需要家に導入している太陽光発電と蓄電池を活用した Sonnen Community というサ

ービスを展開している。

(6-2) 特徴的なエネルギーサービス

Sonnen Community は、参加するメンバーの太陽光発電等の再生可能エネルギーの余剰電力を

融通しあうサービスである。参加メンバーには住宅用の太陽光発電のみならず、他の分散型発電

所(風力、バイオガス、メガソーラー)の運営者も含まれている。

このサービスでは SonnenStrom Plus と SonnenFlat の 2 つのプランから選択が可能となる。

SonnenStrom Plus では 19.99 ユーロ/月の会員費を支払えば、23 セント/kWh からの電気料金で

コミュニティーの一員となり、電力会社から 100%独立が可能となる。SonnenFlat では、19.99

ユーロ/月の会員費を支払えば、一定上限まで電気料金が無料になる。ただし、蓄電池には Sonnen

がアクセスし、系統を安定化するためのアンシラリーサービスに活用される。

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図 3-8 Sonnen の Sonnen Community34)

以下に SonnenFlat の場合の会費と収益試算を示す。年間 4,250kWh の発電量相当を見込む(太

陽光発電 5.5kW、蓄電池容量 6kWh)SonnenFlat4250 の場合、サービス利用者には年間で 1,506

ユーロの便益がでると試算している。

図 3-9 Sonnen Community の SonnenFlat の会費と収益試算35)

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3.2.2 米国

(1) Southern California Edison

(1-1) 企業概要

SCE(Southern California Edison)は米国カリフォルニア州の大手電力供給事業者である。

1,500 万人に電力を供給している。

同社は2016年4月にエネルギーコンサルティング、ソリューションを提供する関連会社Edison

Energy を設立した。この設立には米国のエネルギー業界において Energy as a Service というビ

ジネスモデルが台頭してきていることが関係している。

同社は、この Energy as a Service が台頭している背景として以下の点を指摘している。

・ 規制下のエネルギー業界では、電力を販売するのみであったが、現在では気候変動や持続可

能性の目標、新技術、規制の拡大とコストの懸念が、エネルギー利用者とエネルギー供給者

との関係を再定義する新たな機会を作り出している。

・ エネルギーインフラストラクチャーの構築方法と管理方法を、企業に 適な方法で提供す

るための Energy as a Service が出現している。

図 3-10 Southern Califorinia Edison(Edison Energy)の Energy as a Service36)

(1-2) 特徴的なエネルギーサービス

① マイクログリッド&ストレージ

顧客の既存のオンサイト・ジェネレーション、デマンドレスポンス、蓄電池を統合的にリンク

し制御するサービスである。顧客におけるピーク電力を低減し、余剰電力については電力会社に

売却してエネルギーコストを削減する。

同社では、同サービスを検討するにあたってのコンサルティング、フィジビリティサービスか

ら、プロジェクトの設計、設置、運用、ファイナンスに至るまで幅広いサービスを提供している。

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図 3-11 Edison Energy のマイクログリッド&ストレージ37)

(2) Pacific Gas & Electric Co

(2-1) 企業概要

Pacific Gas and Electric Company は、1905 年にカリフォルニアで操業を開始した、米国でも

大規模の天然ガス・電力供給事業者である。供給エリアは、カリフォルニア州北部・中部であ

り、540 万件の電力供給、430 万件の天然ガス供給を行っている。

(2-2) 特徴的なエネルギーサービス

同社はさまざまなエネルギー供給サービスを展開しているが、主なものは以下のとおり。

・ 適なエネルギー節約サービスのオンラインでの提供

・ スマートメーターの設置

・ 太陽光発電・太陽熱利用設備導入サービス

・ 再エネ電力提供サービス

・ ビルオーナー等向けのエネルギー性能ベンチマークのサービス

(サンフランシスコやバークレーなどの都市は、ビルにおけるエネルギー利用状況の開示

が必要となるため、その対応のためのサービス)

・ エネルギーコスト節約サービス

(ツールでコストと利用状況を分析し、コスト節約についてアセスメントを実施するとと

もに、設備の導入による割引も存在)

エネルギーコスト節約サービスでは、省エネ設備の導入による割引が受けられる。その分野と

内容の例を以下に示す。

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表 3-7 Pacific Gas & Electric CO のエネルギーコスト節約サービス

分野例 割引の内容

重工業向け LED 照明への変更や LED 反射板の設置、配管やタンクの断熱、集中天

然ガス炉の設置、等

オフィスビル向け データセンター向けエネルギー 適化サービス、LED 照明の導入、

高効率温水器の導入、配管やタンクの断熱、等

学校・教育機関向け LED 照明の導入、高効率温水器の導入、配管やタンクの断熱、

高効率食器洗い機・冷蔵庫・冷凍庫の導入、集中天然ガス炉の設置、等

(3) Los Angeles Department of Water & Power

(3-1) 企業概要

米国カリフォルニア州の電力、水の供給会社である。2016 年に 29%の RPS(Renewable

Portfolio Standard)を達成した。

(3-2) 特徴的なエネルギーサービス

① Commercial Direct Install Program

このプログラムは、月平均電力需要量が 250kW 以下の企業に対して、電力と水を節約するた

めの無償評価を提供するもので、以下の措置が含まれている。

・ エネルギー効率の良い照明システムおよびランプへのアップグレード

・ LED 出口標識

・ プレリンススプレーバルブ

・ 低流量シャワーヘッド

・ 蛇口曝気装置

・ 低流量トイレ

(4) San Diego Gas and Electric Co

(4-1) 企業概要

米国カリフォルニア州の大手エネルギー供給会社で、従業員 4,000 人である。サンディエゴと

南オレンジ郡の合計 360 万人に電気、天然ガスの供給をしている。

(4-2) 特徴的なエネルギーサービス

① ECO Share

ECO Share は、地域の再生可能エネルギーを需要家に供給する仕組みである。ECO Share を

通じて、需要家は第三者の再生可能エネルギー開発者と協力し、その再生可能エネルギーからの

エネルギーの一部の権利を購入が可能となる。

需要家は、再生可能エネルギー開発事業者から購入した再生可能エネルギー量を差し引いた請

求書と、再生可能エネルギー開発事業者から調達した再生可能エネルギー分の請求書を同社から

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受け取る。このプログラムを使用することで、需要家は太陽光発電を家庭や企業で設置すること

なく、初期費用なしで再生可能エネルギーを購入することが可能となる。

図 3-12 San Diego Gas and Electric Co の ECO Share38)

② エネルギー管理ツール

同社は、中堅企業顧客のエネルギー分析ツールとして SDGE business energy advisor を提供

している。また、これは米国政府の取り組みであるが、Green Button という、エネルギーデータ

をダウンロード可能にし、サードパーティーに提供可能な仕組みを整備している。このボタンを

押すことで、エネルギーデータがサードパーティーのアプリに送信でき、需要家は様々なエネル

ギー分析が可能となり、サードパーティーにとっては省エネ機器導入等を含めたビジネスチャン

スにつなげることが可能となる。

図 3-13 San Diego Gas and Electric Co のエネルギー管理ツール

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(左:SDGE business energy advisor39)、右:Green Button40))

(5) Sacrament Municipal Unit Dist

(5-1) 企業概要

サクラメント電力公社(SMUD)は、カリフォルニアの州都サクラメントを中心とする地域に

電力を供給している公営電気事業者である。サクラメント市および隣接する郡(カウンティ)の

900 平方マイル(約 2,330 ㎢)にわたる約 60 万の事業所・世帯、約 130 万人に対し電力を供給し

ている。

全米の自然エネルギー導入を先導するカリフォルニア州の中でも、更に一歩進んだ取組みを進

めている。2013 年の時点で年間電気供給量の 29%を再生可能エネルギーで賄っており、これに

大規模水力発電の発電量を加えれば、50%に達する。再エネ導入率だけでなく、施策自体も州政

府より一歩先に取組を進めている。

(5-2) 特徴的なエネルギーサービス

① グリーン電力プログラム

同社は、電力消費者が自然エネルギーを率先して普及するための制度を用意している。その一

つが、「グリーナジー(Greenergy)」という名称のプログラムである。その開始は 1997 年で、SMUD

の再生可能エネルギー促進施策で も古いものである。

これは、いわゆるグリーン電力プログラムであり、消費者が望む場合には通常の電気料金に割

増料金を払うことで、より再生可能エネルギーの割合の高い電力の供給を得られるという仕組み

である。既に SMUD の電力供給に占める再生可能エネルギー(大規模水力を除く)の割合が

29%に達しており、それ自体、グリーンな電力であるが、月に定額で 3 ドルを払うことで再生可

能エネルギー割合 50%の電力が、6 ドル払うことで 100%再生可能エネルギー電力が供給され

る。

実際は供給される電力を区別することはできないため、契約消費者に割り振る際に必要な再生

可能エネルギー電力の量を、通常の供給とは別枠で確保することにより、それぞれ 50%分、

100%分が再生可能エネルギーで供給されていることになる。SMUD の顧客数は約 60 万である

が、その 10%がこのプログラムに参加している。

② ソーラーシェアプログラム

SMUD は、区域内の需要家に対して積極的に太陽光発電を自らの住宅などに設置することを推

奨しており、そのための必要なモデル計算など様々なアドバイスを提供している。中でも特徴的

なものとして、貸家や集合住宅に住んでいて自分では太陽光発電を設置できない人のための「ソ

ーラーシェア」というプログラムがある。

これは SMUD が所有する、メガソーラーの一部分( 低 0.5kW から)を固定料金を支払って

一定期間、シェアするプログラムである。契約期間中はシェアしている発電容量から発電された

量が、自分の電気消費量から削減されることになる。直接太陽光発電を自宅に設置していなくて

も、設置しているように、月々の発電量に応じた削減を得られるという仕組みである。

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③ 省エネ・節電プログラム

同社の省エネ・節電プログラムは、ダウン・サイズ・マネジメント(DSM)と呼ばれる「投

資を行って需要を減らす、あるいは制御する」という考え方の一環として行われている。具体的

には、節電講習会を開いたり、樹木の植え付けにより木陰を増やすことで、夏場の電力消費量を

を抑制したり、照明器具、冷蔵庫などの電化製品の取り替え、建物の断熱化に補助金を出した

り、太陽光パネル設置住宅の電気料金を割り引いたり、スマートメーター・スマートグリッドを

導入したり、ハイブリッド車や電気自動車の利用を促進するなどの施策を行っている。こうした

取り組みにより、この 10 年間で 15%の節電を実現、新規に発電所を建設分のコスト削減効果を

達成したとしている。

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3.3 エネルギーサービスの取り組み動向

ここでは、海外企業のエネルギーサービスに関する取り組みのうち、特に先進的なサービスに

ついてその実施背景や企業の戦略、需要家のメリット等の調査をした。欧州における先進的なエ

ネルギーサービスでは環境負荷削減を含む「持続可能性(Sustainability)3」がキーワードとなっ

ている。この背景にはサービス事業者自体が企業戦略として持続可能性を掲げており、それの戦

略に合うエネルギーサービスを展開することが重要になっていることと、需要家自体が持続可能

性を価値として認識していることが大きい。なお、需要家に持続可能性の価値を認識させるため

に建物等の環境性能を評価する制度が役に立っている。その中でエネルギー効率の向上や再生可

能エネルギー利用の低コスト化などを訴求し、経済性の観点からみても需要家にメリットのある

サービスを提示している。

例えば、Eneco の例では、BREEAM(イギリス建築研究所建築物性能評価制度)で高得点を取

るために地中熱及び太陽光発電システムと連携するヒートポンプ技術を採用し、熱供給をグリー

ン化することで化石燃料の使用を 小限にした。

持続可能性を高めるための技術・製品として、エネルギーサービスにおいて太陽光発電と蓄電

池の積極的な導入による自家消費の促進、熱の観点からは地中熱や太陽光発電からヒートポンプ

を通じたグリーンな熱供給などが実施されている。

例えば、Enel では、スマート農業をコンセプトとして、太陽光発電と蓄電池による自家消費を

積極的に導入し、顧客のエネルギー効率の改善による競争力の強化及び持続可能性に訴求してい

る。Sonnen でも従来の電力会社に頼らないコミュニティー作りとして需要家同士の太陽光発電

と蓄電池を活用した融通ビジネスを通じて、再生可能エネルギー電力利用の低コスト化及び顧客

の持続可能性(従来の電力会社を利用しなくてもコミュニティで自給自足が可能という意味も含

め)に訴求している。

また、太陽光発電導入の進んでいる米国カリフォルニア州の先進的な大手エネルギー会社では

太陽光発電を需要家とシェアし、電気料金の削減につなげるコミュニティーソーラーの導入が進

んでいる。例えば、Sacramento Municipal Utility District では、ソーラーシェアプログラムと

いうコミュニティーソーラーの取り組みをしており、需要家にとっては、同社からのエネルギー

供給を 20 年という長期契約をする必要があるものの、太陽光発電の環境便益と同時に電気料金

削減の便益が得られ、今後導入する需要家のさらなる増加が見込まれている。

3 Sustainability の国際的な標準となっている GRI スタンダードでは、Sustainability は、社会、環境、経済の観点からの持

続可能性を定義している。環境の観点では、原材料、エネルギー、水、生物多様性、大気への排出、排水および廃棄物、環境

コンプライアンス、サプライヤーの環境評価の 8 項目が挙げられている。

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表 3-8 欧米のエネルギー事業者におけるエネルギーサービスの取り組みと需要家のメリット

企業名 対象エネルギー

サービス 内容 需要家のメリット

欧州

Enel スマート農業

(Bonifiche

Ferraresi)

スマート農業をコンセプトと

して、太陽光発電システム及

び蓄電池導入による自家消費

を進めながら、メタンガスを

利用した電力供給を実施。

・エネルギー効率の改善

による農業における競争

力向上

Eneco ヒートコールド

ストレージ

(WKO)

地中熱を活用する他、建物内

に設置するヒートポンプと屋

上に設置する太陽光発電の組

み合わせにより熱供給をグリ

ーン化することで、化石燃料

の使用を 小限にするモデ

ル。

・ビルの先進的な環境負

荷低減技術と年間コスト

・BREEAM(イギリス

建築研究所建築物性能評

価制度)で高得点を獲得

(特にヒートポンプ技術

によるもの)

Sonnen Sonnen

Community

参加するメンバーの太陽光発

電及び蓄電池を活用して、再

生可能エネルギーの余剰電力

を融通しあうサービス。蓄電

池への同社のアクセスを許可

し、系統安定化のアンシラリ

ーサービスに活用するモデル

もある。

・再生可能エネルギーの

低コスト利用と持続可能

な利用((従来の電力会

社を利用しなくてもコミ

ュニティで自給自足が可

能)

米国

Sacramento

Municipal

Utility

District

ソーラーシェア

プログラム

同社が所有するメガソーラー

の一部(0.5kW から)を需要

家が固定料金を支払ってシェ

アするサービス。契約期間中

はシェアした太陽光発電の発

電量分が自分の電気消費量か

ら削減される。

・太陽光発電の環境便益

と電気料金削減の便益

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4 エネルギーサービスの類型化と評価

4.1 エネルギーサービスの類型化

本項では、前項で調査したエネルギーサービスの事例を元にエネルギーサービスを類型化した。

類型化にあたっては様々な切り口があるが、エネルギーサービスは、多くの場合省エネや CO2 削

減を目的としており、CO2 削減手段による類型化を検討した。

需要家における CO2 削減手段としては「需要家における省エネ」と、需要家に供給するエネル

ギー源を低炭素化する「低炭素エネルギー源の提供」がある。

このうち、「需要家における省エネ」については、大きく「機器導入による省エネ」と「運用に

よる省エネ」に分けられる。「機器導入による省エネ」は需要家の電力または熱需要に合わせて、

省電力機器や、高効率熱源の導入や入れ替えが行われる。また、「運用における省エネ」について

は、需要家単体へ EMS を導入しピークシフトにつなげたり、エリア全体の電力融通や熱融通を

通じてエリア全体で省エネにつなげる取り組みがある。

また、「低炭素エネルギー源の提供」については、大きく「需要家サイトのエネルギー源の低炭

素化」と「エネルギー供給事業者のエネルギー源の低炭素化」に分けられる。「需要家サイトのエ

ネルギー源の低炭素化」は特に分散型エネルギーが今後普及する中で重要な取り組みであり、例

えば普及が進んでいる太陽光発電の自家消費を進めるサービスや、さらには熱需要に対応するた

めの地中熱や下水熱の活用などがある。また「エネルギー供給事業者のエネルギー源の低炭素化」

は小売電気事業者が電力の一部に再生可能エネルギーを含めるなど小売事業の中で取り組みが進

められている。熱需要については、コージェネレーションやバイオマス燃焼等を通じて熱を供給

する地域冷暖房事業が進められている。

これらの類型化を実施する中で、本調査では、以下の 3 つの主なサービスを比較することとし

た。

・総合エネルギーサービス

総合エネルギーサービスは、省エネ機器の導入のみならず、エネルギー設備の運用や維持管理

まで全て包括的に提供するサービスである。その中で 近では太陽光発電の導入等、需要家サイ

トのエネルギー源自体の低炭素化事例も見られるようになっている。具体的にはエネルギーサー

ビスプロバイダーのサービスが該当する。

・省エネ機器導入サービス

省エネ機器導入サービスは、省エネ機器の導入により需要家の省エネを促進するサービスであ

る。機器の省エネパフォーマンスを向上させるためにメンテナンスも実施するが、機器全体の運

用による省エネの観点はあまり含まれていない。具体的には ESCO のサービスが該当する。

・分散型電源供給サービス

分散型電源供給サービスは、需要家サイトのエネルギー源の低炭素化を目的に再生可能エネル

ギーを導入するサービスである。具体的には太陽光発電第三者所有モデルのサービスが該当する。

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図 4-1 エネルギーサービスの類型化

なお、海外の先進事例について上記図に記した内容を補足する。

エリア全体の電力需要の運用における省エネとして、米国 Southern California Edison の子会

社 Edison Energy によって顧客の既存のオンサイト・ジェネレーション、デマンドレスポンス、

蓄電池を統合的にリンクして、エネルギーコストを下げるマイクログリッド&ストレージが実施

されている。また、需要家サイトのエネルギー源の低炭素化手段として、大規模太陽光発電の一

部を需要家が所有して太陽光発電電力を利用する米国 Sacrament Municipal Unit Dist のソーラ

ーシェアプログラムや、San Diego Gas and Electric の ECO Share 等のソーラーシェアリング

事業が進められている。またドイツの Sonnen では一般需要家の太陽光発電と蓄電池をコミュニ

ティー内で融通することで、需要家サイトのエネルギー源の低炭素化に寄与している。

欧州の環境配慮に積極的なエネルギー企業においては、熱供給の観点でも低炭素化が進められ

ている。例えば、オランダの ENECO では、太陽光発電とヒートポンプの活用により熱を生み出

す先進的な技術をアムステルダムのオフィスビルに導入した。また地域の熱供給にバイオマスか

らの熱を利用するデンマークの Ørsted の地域熱供給事業や、オランダの ENECO の

EnecoBioWarmte Installation の取り組みがある。

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4.2 類型化毎のビジネスモデルと需要家のメリット、導入プロセス

4.2.1 総合エネルギーサービス

(1) ビジネスモデル

総合エネルギーサービスの代表的な例としてエネルギーサービスプロバイダーモデルのビジネ

スモデルを以下に示す。コージェネ、熱源設備、空調設備など需要家の要望に合わせて 適なエ

ネルギー設備を需要家先に設置し、それらの機器の 適な運転管理からメンテナンス、さらには

エネルギーの供給までエネルギーに関連するサービスを全て包括的に提供するモデル。

需要家は初期費用を支払ずに、ランニングコストのみでこのサービスを受けることができる。

例えば、需要家は毎月基本料金として設備費相当、運転管理、メンテナンス費を、従量料金とし

て使用した熱・電力量に応じて支払をする。

契約期間は 15 年程度と非常に長期になることから、電力・ガス自由化を皮切りに大手電力会社

やガス会社を中心に、顧客との長期的な関係づくりをメリットとして展開が進められている。

なお、受託モデルという、エネルギー供給のみは別のエネルギー供給事業者が行うモデルもあ

る。

図 4-2 総合エネルギーサービスのビジネスモデル

(2) 需要家のメリット

総合エネルギーサービスを利用することによる需要家のメリットは、概ね下記である。

エネルギー関連設備の導入から運転管理、メンテナンスまで関連する全ての業務をアウトソ

ーシングすることで、本業への専念をすることができる。

省エネのノウハウのあるエネルギーサービス事業者に省エネを任せることで効率的に省エネ

を進めることができる。

初期費用が必要でないため、設備故障などで余裕資金がない場合でも省エネ設備への入れ替

えが可能となる。

メンテナンスや故障時の修理費用もランニングコストとして平準化されることで、故障など

による突発的な支出をなくすことで支出計画が立てやすくなる。

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導入設備にもよるが、オンサイトのエネルギー供給により施設へ BCP 機能を持たせること

ができる。

(3) 導入プロセス

エネルギーサービスプロバイダーモデルでは、需要家の状況に合わせて 適な設備機器を提案、

導入し、効果的な省エネにつなげている。この設備機器は必ずしも省エネ機器のみならず、受配

電設備やエネルギーセンター建屋の建設等も含まる場合もある。どのような設備導入が需要家の

省エネにとって 適かを検討するために、コンサルティング提案フェーズが非常に重要なプロセ

スとなる。このコンサルティングフェーズでは、エネルギーデータの収集から設備運用実態の把

握をして、需要家へ提案をしていく。このフェーズは長期間に亘り人的なコストも相当にかかる

ことから、費用は需要家が負担することが多い。またエネルギーデータを保有していない需要家

についてはさらに費用がかかることになる。

図 4-3 総合エネルギーサービスの導入プロセス

4.2.2 省エネ機器導入サービス

(1) ビジネスモデル

省エネ機器導入サービスの代表的な例として ESCO のビジネスモデルを以下に示す。ESCO で

は、需要家先に初期費用なしで主に省エネ機器を導入することで需要家の光熱費の削減分から、

設備費や ESCO 経費を回収するモデルである。ビジネスの成立には光熱費の削減が必須であるこ

とから需要家に確実な省エネの保証を実施している点が特徴となる。

なお、ESCO には 2 つのモデルが存在する。シェアードセイビングスモデルでは ES 事業者が

金融機関から設備資金を調達し設備保有するが、ギャランティードセイビングスモデルでは需要

家が金融機関から設備資金を調達し設備保有する。

(2) 需要家のメリット

ESCO を利用することによる需要家のメリットは、概ね下記である。

省エネのノウハウのあるエネルギーサービス事業者に省エネを任せることで効率的に省エネ

を進めることが出来る。また、省エネ保証があるため、当初計画した省エネをほぼ確実に達

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成できる。

初期費用が必要でないため、設備故障などで余裕資金がない場合でも省エネ設備への入れ替

えが可能となる。

図 4-4 省エネ機器導入サービスのビジネスモデル

(3) 導入プロセス

ESCO は、需要家に省エネ機器の導入によって省エネが可能かどうかを判断するため簡易エネ

ルギー診断の実施を含む予備的提案から始まる。この費用負担は協議の上実施するが、結果的に

ES 事業者が負担することが多い。この結果を踏まえて顧客と合意された場合、詳細エネルギー診

断やベースラインの設定を含む事業プランニングを実施する。

図 4-5 省エネ機器導入サービスの導入プロセス

4.2.3 分散型電源提供サービス

(1) ビジネスモデル

分散型電源提供サービスの代表的な例として太陽光発電第三者所有のビジネスモデルを以下に

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示す。太陽光発電第三者所有モデルでは、需要家先に初期費用なしで太陽光発電を導入し、設置

した太陽光発電からの電力及び不足する場合には不足分の電力を供給する。太陽光発電からの電

力のうち需要家が使用した分については電気料金として回収し、需要家が使用しきれなかった余

剰電力については FIT 活用または卸電力市場等に販売して回収するモデルである。

太陽光発電の自家消費が少なく余剰電力が多い需要家を対象とする場合は、収益性は FIT 価格

に大きく依存する。

なお、総合エネルギーサービスモデルと同様に、不足する電力供給は他の小売電気事業者が実

施するモデルもある。

図 4-6 分散型電源提供サービスのビジネスモデル

(2) 需要家のメリット

太陽光発電第三者所有モデルを利用することによる需要家のメリットは、概ね下記である。

初期費用が必要でないため、余裕資金がない場合でも従来の電力料金と同等またはそれ以下

のコストで CO2 排出量削減に寄与する太陽光発電による電力を利用できる。

契約内容にもよるが、緊急時に太陽光発電を BCP 機能として活用可能となる。

(3) 導入プロセス

太陽光発電システムの導入と同様のプロセスを経て導入される。総合エネルギーサービスに必

要なエネルギーデータの収集、分析は基本的には必要ない。ただし、事業者によっては事業リス

クを FIT 価格に依存させないよう需要家での自家消費率が高くなるよう太陽光発電システムの設

備容量を決定する場合があり、その場合には需要家の需要データが必要になる場合も想定される。

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図 4-7 分散型電源提供サービスの導入プロセス

4.3 エネルギーサービスの比較と評価

(1) ビジネスモデルの比較

上記 3 つのエネルギーサービスについて、ビジネスモデルから整理したものを以下に示す。エ

ネルギーサービスを導入するにあたって、全て需要家側にとって初期費用がないことが特徴とな

る。また基本的には ES 事業者が導入する設備等の資産を保有することになる。

総合エネルギーサービスと省エネ機器サービスの違いは、省エネ保証と導入機器、設備運用、

エネルギー供給の観点にある。総合エネルギーサービスは省エネ保証はしないことが特徴で、省

エネ機器以外の受変電設備やエネルギーセンター等も導入する場合があり、さらに設備運用まで

ES 事業者が一括で管理することが特徴となる。またエネルギー供給まで一括で提供するスキーム

もある。一方、省エネ機器導入サービスは、省エネ保証があるが、省エネ機器の導入が主で、機

器のメンテナンス等は実施するものの設備の運用までは ES 事業者は関与しないことが特徴とな

る。また、ES 事業者はエネルギー供給も実施しない。分散型電源提供サービスは、分散型電源の

導入とエネルギー供給を合わせて実施するところが特徴となる。

表 4-1 ビジネスモデルの比較

エネルギ

供給

導入機器 初期

費用

設備資産

保有者

省エネ

診断

省エネ

保証 設備運用

保守・

メンテ

ナンス

総 合 エ ネ

ル ギ ー サ

ービス

あり

省エネ設備、分

散型電源、エネ

ルギー関連設備

なし ES 事業者が資

産保有※1 あり なし

ES 事業者

が運用 あり

省 エ ネ 機

器 導 入 サ

ービス

なし 省エネ設備 なし モデルにより異

なる※2 あり あり

需要家が

運用 あり

分 散 型 電

源 提 供 サ

ービス

あり 分散型電源 なし ES 事業者が資

産保有※1 なし ―

ES 事業者

が運用 なし

※1 リース活用の場合はリース事業者が資産保有

※2 ESCO ギャランティードセイビングスモデルの場合は、需要家が資産保有、シェアードセイビングスモデルの場合は、ES事業者が資産保有

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(2) 需要家のメリットの比較

それぞれのエネルギーサービスの需要家のメリットを比較し、以下に示す。それぞれ経済面、

CO2 排出削減の観点でメリットをもたらすが、総合エネルギーサービスはエネルギー管理のアウ

トソーシングが可能という点が他の 2 つに追加して重要なメリットとなる。

経済面のメリットとして、3 つのサービス全て共通であるが、初期費用が必要ないため、余裕資

金がない場合でも省エネ設備や太陽光発電を導入することが可能である。

コスト低減の観点では、以下図にも示すように、総合エネルギーサービスと省エネ機器導入サ

ービスではコスト低減の方法が異なる。総合エネルギーサービスでは、電気料金、ガス料金の光

熱費とメンテナンス費、運転管理費、設備費全て含めたコストを契約期間に亘って低減すること

になるが、省エネ機器導入サービスでは、光熱費の低減がされることになる。さらに総合エネル

ギーサービスでは、メンテナンス(修理費)もランニングコストとして平準化されるため、故障

などによる突発的な支出回避が可能となる。

CO2 排出量削減については、いずれも削減が可能となるが、特に省エネ機器導入サービスでは

省エネ保証による確実な削減が期待される。

表 4-2 需要家のメリットの比較

エネルギー管

理のアウトソ

ーシング

経済面

CO2 排出量削減 初期費用

必要なし コスト低減 コスト平準化

総合エネ

ルギーサ

ービス

設備運用管理

まで含めて ES

事業者が実施

し、需要家は本

業専念が可能

初期費用が必要

ないため余裕資

金がない場合で

も省エネ設備へ

の更新、導入が可

光熱費とメンテナンス、

運転管理、設備費全て含

めてコストを低減

メンテナンス(修理

費)もランニングコ

ストとして平準化さ

れ、故障などによる

突発的な支出回避が

可能

省エネ診断に基づい

た効率的な省エネ、

CO2排出量削減が可

省エネ機

器導入サ

ービス

― 光熱費を低減 ―

省エネ診断及び省エ

ネ保証による確実で

効率的な省エネ、

CO2排出量削減が可

分散型電

源提供サ

ービス

初期費用が必要

ないため余裕資

金がない場合で

も太陽光発電の

導入が可能

従来の電力料金と同等

かそれ以下のコストで

太陽光発電が利用可能

太陽光発電の電力活

用による CO2 排出

量削減が可能

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図 4-8 総合エネルギーサービスと省エネ機器導入サービスのコスト低減方法の比較

(3) 導入プロセスの比較

総合エネルギーサービス及び、省エネ機器導入サービスについては省エネ手段の検討のためエ

ネルギーデータの収集等のコンサルティング提案フェーズが存在する。特に、総合エネルギーサ

ービスについては、検討する省エネ機器も多く場合によってエネルギー関連設備やエネルギーセ

ンターの導入なども視野に含まれており、コンサルティング提案フェーズが長期かつ複雑となっ

ている。さらにこのフェーズにおけるコスト負担も需要家の場合が多い。

一方分散型電源提供サービスは、総合エネルギーサービスに必要なエネルギーデータの収集、

分析は基本的には必要ない。

表 4-3 導入プロセスの比較

コンサルティング

提案フェース

コンサルティング提案フェーズに

おけるエネルギーデータの収集

コンサルティング提案フェーズ

費用の負担

総合エネルギーサー

ビス あり

エネルギーデータがない場合は追

加費用で計測が必要 需要家負担の場合が多い

省エネ機器導入サー

ビス あり(簡易)

エネルギーデータがない場合は追

加費用で計測が必要 ES 事業者負担の場合が多い

分散型電源提供サー

ビス 特になし 必要なし ―

(4) 対象需要家の比較と将来市場

各サービスの需要家のメリットを踏まえ、対象需要家の比較と将来市場の考察について以下に

示す。

総合エネルギーサービスの対象となる需要家は、省エネ目標を策定していて、エネルギー管理

に関してアウトソーシングに関心のある企業である。現在は、主に省エネ法の対象需要家(大口

需要家))の一部で実施がされている。一方で ESCO に代表されるような省エネルギー機器導入

サービスは、省エネの達成によって収益を得るビジネスモデルである以上、省エネの余地が相当

以上見込まれる需要家でないと展開が難しく対象は限定的となる。太陽光発電を利用した分散型

電源提供サービスについては、現状では需要家の電力料金削減メリットは大きくは見込まれず環

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境に配慮する一般需要家や、BCP を中心にニーズがある自治体が主となっている。また、ビルの

ような電力需要に対してオンサイトで設置面積が限られるため供給電力が少ない需要家は当該サ

ービス導入のメリットが少ない。なお、このような需要家に対しては、米国の事例でみたような

大規模分散型電源の一部を需要家が出資してシェアして利用するエネルギーシェアリングの取り

組みも参考になる。

将来市場について、総合エネルギーサービスでは、エネルギー管理のアウトソーシングニーズ

のある需要家へも展開が可能であり、今後も成長が期待できる。特に、国内では今後は高齢化等

で各社の人員の確保が困難になることから、本業専念のため省エネ機器の調達から省エネ運用ま

でエネルギー管理業務に対するアウトソーシングへのニーズの増加も予想される。

一方省エネルギー機器導入サービスについては、省エネ成果保証型のビジネスモデルであるが

故に省エネが進むにつれて将来的に対象となる需要家は限られてくることが想定される。分散型

電源サービスについては、今後再生可能エネルギーの開発が進み、導入コストが下がることで事

業性がさらに確保されれば、今後さらなる事業者が参入し、広く普及する可能性がある。

本調査では、対象需要家の対象範囲が広く、将来の市場も期待できる総合エネルギーサービス

に対して、普及促進を目指し施策を考案するものとする。

分散型電源提供サービスについては、太陽光発電のコスト低減の課題はあるが、総合エネルギ

ーサービスと組み合わせた導入も可能であることから、このような視点も取り入れた上で、総合

エネルギーサービスの普及促進に向けた施策を検討するものとする。

表 4-4 対象需要家の比較と将来市場

需要家のメリット

対象需要家 将来市場 エネルギー管理の

アウトソーシング 経済面 CO2 排出量削減

総 合 エ

ネ ル ギ

ー サ ー

ビス

アウトソーシング

により本業に専念

・初期費用が不要

・エネルギー関連費用

全体におけるコスト

低減

・光熱費や修理メンテ

ナンス費用の平準化

省 エ ネ に よ る

CO2 削減

・省エネ、エネルギー

管理アウトソーシン

グに関心のある需要

家(現在は主に省エ

ネ法対象の企業の一

部)

特に今後エネルギ

ー管理のアウトソ

ーシングに対する

ニーズが高まる可

能性あり

省 エ ネ

機 器 導

入 サ ー

ビス

アウトソーシング

機能はない

・初期費用が不要

・省エネによるコスト

低減

省エネ保証によ

る確実な CO2 削

・省エネ余地が大きい

需要家

・既設施設の入れ替え

のみが対象

省エネが進むた

め、対象需要家は

減少する可能性あ

分 散 型

電 源 提

供 サ ー

ビス

アウトソーシング

機能はない

・初期費用が不要

・光熱費(電気料金)は

基本的に変わらない

(例外有)

発電原単位の改

善による CO2 削

・環境配慮やBCPに関

心をもつ需要家

・高層ビルなどの表面

積に対する消費電力

量が大きい建物には

効果が小さい

太陽光発電コスト

の低下により、今

後事業が普及する

可能性があり

Page 84: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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5 総合エネルギーサービスの普及展開に向けた検討

5.1 総合エネルギーサービスの展開可能性

対象需要家の対象範囲が広く、将来の市場も期待できる総合エネルギーサービスの展開が期待

される一方、現時点では総合エネルギーサービスの導入プロセス等を含めた経済性が担保できる

条件は容易ではなく、現状の対象需要家は限定的となっている。

今後、総合エネルギーサービスを広く展開させ、更なる省エネルギーを達成するためには、大

規模需要家へのさらなる普及推進、さらには中小需要家への導入を推進することが不可欠であり、

その実現には克服すべき課題がある。

他方、総合エネルギーサービスにおいて、電源・熱源として再生可能エネルギーを組み入れる

ことで、省エネに加えて更なる低炭素化を推進する事例も出てきている。ただし、太陽光発電、

地中熱等の再生可能エネルギー設備は、他のエネルギー設備に比べコストや安定性の面で劣って

おり、太陽光発電では FIT による買取価格の下降も相俟って、総合エネルギーサービスに広く導

入するためには課題も多い。しかしながら、世界的に低炭素が叫ばれる中、再生可能エネルギー

の普及拡大は今後も進むと予想され、総合エネルギーサービスに導入する手法を準備することは、

総合エネルギーサービスを普及展開する上で重要である。

以上から、本項目では、総合エネルギーサービスの普及展開の方向性として、対象需要家の拡

大、及び再生可能エネルギーの導入に着目し課題の整理を行い、国として取り組むべき施策を検

討する。

5.2 総合エネルギーサービスの普及展開に関する課題と対応策

本項目では、総合エネルギーサービス事業者の取り組み事例、及び総合エネルギーサービス事

業者へのヒアリングに基づいて、総合エネルギーサービスの普及に向けた課題の整理と対応策の

検討をした。

5.2.1 対象需要家の拡大に関する課題と対応策

総合エネルギーサービスが自発的に普及するためには、需要家とサービス事業者の両者にとっ

て便益があることが不可欠である。対象需要家を拡大する際の需要家にとっての課題、サービス

事業者にとっての課題を表 5-1 に整理する。

総合エネルギーサービスは、サービスの提供開始以前の段階で、エネルギーデータの把握や省

エネ診断が必要となるが、上記のようにエネルギーデータを精緻に把握できていない場合、サ-

ビスの提案が困難になってしまう。現在、年間のエネルギー使用量が 1,500kl(原油換算)以上で

ある企業(本調査では、「大規模需要家」と称する)を対象にエネルギーの管理、すなわちエネル

ギーデータの測定が、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」において義務付

けられておりエネルギー計測器の既設が予想される。しかし、1,500kl 未満の企業(本調査では、

「中小規模需要家」と称する)にはこのような規制が無いため、総合エネルギーサービスの提案

段階で、エネルギー計測器の設置を行う必要がある。これがコスト増の要因となってしまい、サ

ービス導入の障壁となっている。また、大規模需要家についても、省エネ法の定期報告に求めら

れる解像度と、エネルギーサービスでの分析に用いる解像度が一致せず、計測器を新たに設置す

ることが求められる場合もある。

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サービス事業者にとっては、総合エネルギーサービスの提案には人的コストが相当掛かるため、

費用対効果が小さく倒産リスクの高い中小需要家への展開は積極的ではない。特にこれらのプロ

セスは、需要家の規模に拠らず、同等の工数を必要とするため、費用対効果の期待できる大規模

需要家へサービスが提案されやすい。中小規模需要家に対しては、十分な売り上げを獲得するた

めに、多数の企業と接触し提案を行う必要があるが、現在の総合エネルギーサービス事業では人

員が不足しているという課題も挙げられている。また、そもそも総合エネルギーサービス事業を

推進できるノウハウは一部の限られた大手エネルギー事業者にしかなく、業界全体からみた場合、

ノウハウや人材が育成されていない点も課題となっている。

その他にも、需要家にとって総合エネルギーサービスを利用するインセンティブが十分でない

こと(高効率機器へのリプレースで十分だと感じてしまうこと)などが総合エネルギーサービス

の普及に向けた課題として考えられる。

表 5-1 対象需要家を拡大する際の課題

課題

大規模

需要家

需要家自身が施設管理の人員を雇用しており、総合エネルギーサービスの導入

に踏み切れない。

総合エネルギーサービスは長期契約を結ぶ必要があり、長期の需要が読めない

等の要因により導入に踏み切れない。

電源や熱源等のユーティリティをアウトソーシングすることでブラックボックス化す

ることに抵抗がある。

省エネ法で定められた 1 日単位でのエネルギー使用状況の最適化には既に取り

組んでおり、これ以上の省エネは計測機器のリプレース等の追加費用が必要。

省エネ機器の導入を考えているが、減価償却期間が当分先であり、現時点でリ

プレースすると償却しきれない。

中小規模

需要家

エネルギーデータの把握が精緻ではなく、総合エネルギーサービスの導入効果

が把握できず、把握しようとすれば計測機器の設置費用が必要。

省エネ法の規制対象ではないため、総合エネルギーサービスの導入インセンティ

ブがない。

サービス事業者 新築物件には省エネ補助金が使えないため、提案が難しい。

十分な計測機器が設置されておらず、精緻なエネルギーデータが把握できない

が、事業者が負担してまで追加設置する可能性は低い。

特に中小需要家では、エネルギー使用量が多くないため、費用対効果が良くな

く、かつ契約期間中の倒産リスクがある。

営業体力が掛かり中小需要家まで手が回らない。

過去から取り組んできている一部の大手エネルギー事業者を除き、総合エネル

ギーサービスに対するノウハウや人材が揃っていない。

前に示した課題のうち、特に政府等からの支援を通じた対応策が考えられるものについて、以

下に示す。特に下線を引いた対応策については省エネ等の対策の分野でこれまで同様の施策がさ

れていなく、実現性も高い取り組みと考えられ、これらを踏まえ次項目の施策案の提案につなげ

た。

Page 86: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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表 5-2 対象需要家を拡大する際の対応策

課題 対応策

大規模

需要家

省エネ法で定められた 1 日単位での

エネルギー使用状況の最適化には既

に取り組んでおり、これ以上の省エネ

は計測機器のリプレース等の追加費

用が必要。

総合エネルギーサービスの導入を前

提とした計測器設置への助成

省エネ機器の導入を考えているが、減

価償却期間が当分先であり、現時点

でリプレースすると償却しきれない。

設備減価償却期間の短縮化に繋がる

税制優遇

中小規模

需要家

エネルギーデータの把握が精緻では

なく、総合エネルギーサービスの導入

効果が把握できず、把握しようとすれ

ば計測機器の設置費用が必要。

総合エネルギーサービスの導入を前

提とした計測器設置への助成

省エネ法の規制対象ではないため、

総合エネルギーサービスの導入イン

センティブがない。

総合エネルギーサービスのみを対象

とした助成

サービス事業者 新築物件には省エネ補助金が使えな

いため、提案が難しい。

新築物件を対象とした総合エネルギ

ーサービスに対する補助金

特に中小需要家では、エネルギー使

用量が多くないため、費用対効果が

良くなく、かつ契約期間中の倒産リス

クがある。

中小需要家を取りまとめた総合エネ

ルギーサービスへの助成

倒産リスクの保障

営業体力が掛かり中小需要家まで手

が回らない。

中小需要家向けのサービス提案にお

ける人的コストの緩和支援措置

過去から取り組んできている一部の

大手エネルギー事業者を除き、総合

エネルギーサービスに対するノウハウ

や人材が揃っていない。

実証事業などを通じた、総合エネルギ

ーサービス事業者のノウハウの共有

5.2.2 再生可能エネルギーの導入に関する課題

太陽光パネルの第三者所有モデル等の再生可能エネルギーが総合エネルギーサービスと組み合

わせで提供される場合、現状では、FIT や補助金無しには経済性が担保されない。また、コージ

ェネレーションシステム等の省エネ機器と比較した場合、コストや安定性の面で劣ってしまう。

例外としては、食品工場や下水処理場等でのバイオガス発電の活用等では経済性が保てる状況で

ある。これらの調査結果を踏まえ、再生可能エネルギーを導入する際の課題を

表 5-3 に整理する。再生可能エネルギーの導入については、需要家とサービス事業者どちらに

ついても、不安定な発電機の導入による採算の不透明さや、機器導入に伴うコスト、サービス料

金の増加が懸念されている。

表 5-3 再生可能エネルギーを導入する際の課題

課題

需要家 再エネ機器導入により、サービス料金が上がってしまう。

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CO2 削減量に対する保証がない。

サービス事業者

CO2 削減量に対する保証がない。

再エネ機器導入により、サービス料金が上がり、顧客の了承を得られない。

太陽光などの不安定な再エネを導入する場合、顧客の要望に即した省エネがで

きない可能性がある。

前に示した課題のうち、特に政府等からの支援を通じた対応策が考えられるものについて、以

下に示す。特に下線を引いた対応策については省エネ等の分野でこれまで同様の施策がされてい

なく、実現性も高い取り組みと考えられ、これらを踏まえ次項目の施策案の提案につなげた。

表 5-4 再生可能エネルギーを導入する際の対応策

課題 対応策

需要家

再エネ機器導入により、サービス料金

が上がってしまう。

再生可能エネルギーを取り入れた

総合エネルギーサービス事業への

助成

CO2 削減量に対する保証がない。 使用エネルギーの再エネ率等に関

する政府目標の設定

5.3 総合エネルギーサービスの普及展開に向けた施策案

前項目で整理した対応策(特に表の下線部の対応策)を踏まえ、総合エネルギーサービスを今

後更に高度化し普及させていくために国が取り組むべき方策として、省エネと経済性の両立が困

難な総合エネルギーサービスに対する補助金制度の設立、並びに中小需要家向け総合エネルギー

サービスの実証事業を提案する。

①補助金制度

補助金制度では、主に以下 3 つの視点で取り組まれる事業を対象として、補助を行うことを想

定する。

新築物件に対して総合エネルギーサービスを適用することで省エネと経済性の両立を実現

する事業

中小規模需要家を取りまとめ、一括で総合エネルギーサービスを実施することで省エネと

経済性の両立を実現する事業

総合エネルギーサービスのエネルギー源として再生可能エネルギーを取り入れることで省

エネと更なる低炭素化の両立を実現する事業

②中小規模需要家向け総合エネルギーサービスの実証事業

2 点目の中小規模需要家向けの総合エネルギーサービスは、中小需要家のエネルギー使用状況

の把握や提案にコストが掛かる、単独の中小需要家では大きな省エネ量は見込めない、中小規模

需要家を取りまとめて総合エネルギーサービスを行うにしても取りまとめる役割を誰が担うか等、

多くの課題が存在している。

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これらの課題に対して実証事業を行うことで、国として1つのロールモデルを示すことも、総

合エネルギーサービスの普及拡大に寄与すると考えられる。

特に、本調査では、中小規模需要家向けのサービス提案における人的コストの緩和や、総合エ

ネルギーサービスのノウハウを保有している一部エネルギーサービス事業者のノウハウの共有化

も大きな課題であることがわかった。そこで、以下にこれら課題を解決するための中小需要家向

け総合エネルギーサービスの実証事業のスキーム案を示す。

このスキームでは、地域エネルギー関連事業者が中小規模需要家の取りまとめを、大手エネル

ギー事業者は地域エネルギー関連事業者が実施する総合エネルギーサービスのサポートを担う。

エネルギーデータからの診断及び総合エネルギーサービス実施に関するノウハウを大手エネル

ギー事業者と地域エネルギー関連事業者間で効率的に共有し、双方の人的リソースをうまく活用

して総合エネルギーサービスを中小需要家に提供していく仕組みの構築を目指す。なお中小規模

需要家からエネルギーデータを取得するため、これら中小規模需要家へのセンサー等の設置など

他の補助金と組み合わせて展開することが考えられる。

図 5-1 中小規模需要家向け総合エネルギーサービスの実証事業のスキーム案

図 5-1 のスキームでは地域エネルギー関連事業者と大手エネルギー事業者で例えば以下のよ

うな分担が考えられる。

表 5-5 地域エネルギー関連事業者と大手エネルギー事業者の役割分担イメージ

地域エネルギー関連事業者 大手エネルギー事業者

Page 89: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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提案

段階

複数中小規模需要家の取りまとめとして機

◇総合エネルギーサービス提供先中小需

要家の開拓

◇中小規模需要家のエネルギーデータの

収集

◇総合エネルギーサービスに関する提案の

実施

地域エネルギー関連事業者のサポーターとし

て機能

◇中小規模需要家のエネルギーデータ診断の

支援

◇総合エネルギーサービスの構成に関するア

ドバイス

サー

ビス

提供

段階

複数中小規模需要家への総合エネルギー

サービス提供先として機能

◇総合エネルギーサービスのマネジメント、

エネルギー機器、エネルギー供給

◇オペレーション&メンテンナンスの実施

地域エネルギー関連事業者へのサービス提供

者として機能

◇エネルギー機器、エネルギーの供給

◇メンテナンスの支援

Page 90: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

6 <引用文献>

1)東京電力エナジーパートナー 2)横浜市「横浜スマートシティプロジェクトの取り組みと今後の展開について」

http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/smacom/data/smacom2017_04yokohama.pdf 3)関電エネルギーサービスソリューション ホームページ

http://www.kenes.jp/service/index.html 4)シーエナジーホームページ

http://www.cenergy.co.jp/energyservice/newenergyservice/index.html 5)東京ガス TOKYOGAS 電子カタログ

http://eee.tokyo-gas.co.jp/service/energyservice.html 6)東京ガスプレスリリース

http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20160825-01.html 7)東京ガスプレスリリース

http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20160825-01.html 8)経済産業省「工場間一体省エネルギー事業について」

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/pdf/019_01_02.pdf 9)大阪ガス Web サイト

http://ene.osakagas.co.jp/product/synthetic_energy/index.html 10)コージェネ大賞 2015 年

https://www.ace.or.jp/web/introductory/images/20160225124446_2.pdf 11)コージェネ大賞 2014 年

https://www.ace.or.jp/web/gp/pdf/h26-09_Yodoko.pdf 12)コージェネ大賞 2013 年

https://www.ace.or.jp/web/gp/pdf/h25_Cogene_GP_detail_s.pdf 13)北海道ガスホームページ

http://www.hokkaido-gas.co.jp/business/energy_service.html 14)オリックス環境エネルギーサービスガイド

https://www.orix.co.jp/grp/pdf/business/eco/eesg2017_web.pdf 15)洸陽電機ホームページ

http://www.koyoelec.com/business_es/ 16)パナソニックホームページ

http://www2.panasonic.biz/es/air/eng/energy/eco_friendly/004_se_link.html 17)エナリスホームページ サービス紹介

https://www.eneres.co.jp/service/agent 18)エナリス、2017 年 12 月期第 2 四半期決算説明資料

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=39222&code=6079 19)エナリス:2017 年 12 月期第 3 四半期決算説明資料

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/ View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=42356&code=6079 20)株式会社エネットホームページ

https://www.ennet.co.jp/about/enneteye.html 21)株式会社エネットニュースリリース(2016 年 11 月 7 日)

https://www.ennet.co.jp/news_/newsrelease/201611/newsrelease_ems.pdf 22)新日鉄住金エンジニアリングホームページ 事業紹介 電力小売事業

https://www.eng.nssmc.com/business/energy_solutions/electric/electric/ 23)新日鉄住金エンジニアリング技報 2015 vol.6

https://www.eng.nssmc.com/company/r_and_d/reports/pdf/vol06_15.pdf 24)シェアでんきホームページ

https://share-denki.com/ 25)ファブスコ株式会社ホームページ

Page 91: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

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http://fabsco.co.jp/index_day.html 26) 株式会社 アイ・グリッド・ソリューションズ ニュースリリース http://www.igrid.co.jp/company/news/170821.html 27)DONG Energy 公開資料 http://jwpa.jp/pdf/6_DONG.pdf 28) All-Energy Conference 資料 https://www.all-energy.co.uk/RXUK/RXUK_All-Energy/2016/Presentations%202016%20Day%202/Energy%20from%20Waste/Ulrik%20Falkenberg%20Lending%20FOR%20WEB.pdf?v=635996062711693461 29)Verbund ホームページ Verbund Power Pool

https://www.verbund.com/de-at/geschaeftskunden/industrie/energiedienstleistungen/power-pool 30)Verbund ホームページ About VERBUND GETEC https://www.verbund.com/de-at/geschaeftskunden/industrie/energiedienstleistungen/contracting 31) ENECO ホームページ Niveaus verduurzaming https://www.eneco.nl/over-ons/projecten/biowarmte-installatie-lage-weide/waarom-een-bwi/#routekaart 32)ENECO ホームページ WKO voor een duurzaam bedrijfspand https://www.eneco.nl/zakelijk/product-advies/investeren-duurzaam/warmte-koude/warmte-koude-opslag/ 33)EDP リーフレット

https://www.edp.com/sites/default/files/portal.com/documents/edp_international.pdf 34)Sonnen ホームページ What is the sonnenCommunity? https://www.sonnenbatterie.de/en/sonnenCommunity 35)Sonnen ホームーページ Nie wieder Stromkosten – mit der sonnenFlat https://www.sonnenbatterie.de/de/sonnenstrom/stromtarife/sonnenflat-home 36)Edison Energy ホームページ Defining Energy-as-a-Service http://www.edisonenergy.com/blog/defining-energy-as-a-service/ 37)Edison Energy ホームページ Microgrids & Storage http://www.edisonenergy.com/offering/microgrids-storage/ 38)San Diego Gas & Electric ホームページ EcoShare https://www.sdge.com/environment/connected-to-the-sun/ecoshare 39)San Diego Gas & Electric ホームページ Business Energy Advisor Tool https://www.sdge.com/business/BusinessEnergyAdvisor 40)San Diego Gas & Electric ホームページ GreenButton https://www.sdge.com/green-button

Page 92: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

頁 図表番号6 図 2‑1 コンビナートESPの概要8 図 2‑2 蒸気供給サービスの概要10 図 2‑3 ワンストップ・エネルギー供給の概要10 図 2‑4 土浦協同病院エネルギーセンターのシステム構成11 図 2‑5 スマートレジリエンスESPの概念図12 図 2‑6 横浜市でのプロジェクトにおける各組織の役割13 図 2‑7 総合エネルギーサービスのイメージ図14 図 2‑8 総合エネルギーサービス料金のイメージ16 図 2‑9 オンサイトエネルギーサービスの概要17 図 2‑10 継続的なサポートのイメージ18 図 2‑1119 図 2‑12 ワンストップ・エネルギー供給の概要20 図 2‑1321 図 2‑1421 表 2‑3 清原工業団地スマエネ事業の概要23 図 2‑15 ナチュラルチラーの概念図24 表 2‑4 グリーンレンタルとその他スキームとの比較25 図 2‑16 TGグリーンモニターの概要26 図 2‑17 グリーン・ヘルプ・プロのサービス概要27 図 2‑18 大阪ガスの総合エネルギーサービス概要28 図 2‑19 導入システムの概要29 図 2‑20 業務用施設向けのサービス例29 図 2‑21 産業用施設向けのサービス例30 図 2‑22 EcoWaveの導入実績31 図 2‑23 本州化学工業株式会社の導入システム概要31 図 2‑24 株式会社淀川製鋼所の導入システム概要32 図 2‑25 牛乳石鹸共進社株式会社のビジネスモデル概要32 図 2‑26 EcoWaveのスキーム図33 図 2‑27 EcoWaveでの支払イメージ35 図 2‑28 受託サービス(左)、ESPサービス(右)の概要36 図 2‑29 ESCOサービスのモデルスキーム37 図 2‑30 ESCOサービスのシステム概要38 図 2‑31 導入システムの概要39 図 2‑32 燃料削減量、並びに初期投資及び投資回収年数40 図 2‑33 導入システムの概要40 図 2‑34 工場省エネサービスの全体像41 表 2‑542 図 2‑35 エネルギーエージェントサービスの概要

エネルギーエージェントサービスによる電気料金削減事例

エネルギーマネジメントサービスコストのイメージ

タイトル

二次利用未承諾リスト

平成29年度新エネルギーなどの導入促進のための基礎調査事業

総合エネルギーサービス等分散型エネルギーリソースを活用した新たなエネルギー供給サービス形態に関する調査報告書

みずほ情報総研株式会社

清原工業団地エネルギーセンター(仮称)の外観イメージ図

清原工業団地スマエネ事業のエネルギー供給概念図

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Page 93: 平成29年度新エネルギー等の 導入促進のための基 …コンビナートESP では電気とガスの供給を想定している。需要家のニーズに合わせたオーダー

頁 図表番号42 図 2‑3644 図 2‑37 Enneteyeのサービス内容44 表 2‑645 図 2‑38 Enneteyeの対応状況の確認/効果測定・運用状況の管理イメージ

46 図 2‑39 EnnetSmartサービスイメージ47 図 2‑40 電力小売事業のビジネスモデル48 図 2‑41 オンサイトエネルギーサービス概要50 図 2‑42 シェアでんき概要51 図 2‑43 シェアでんき導入によるコストメリット51 図 2‑44 シェアでんき導入のプロセス52 図 2‑45 ソーラーPPAサービスの流れ53 図 2‑46 ソーラーPPAにおける電力の使い方54 図 2‑47 オフグリッド電力供給サービス57 図 3‑1 Ørstedの事業分野57 図 3‑2 Ørstedの風力発電の実施状況および計画58 図 3‑3 英国Northwichにおける都市ごみバイオガス化プラントの概要

59 図 3‑4 VerbundPowerPoolの概要59 表 3‑3 VERBUNDGETECEnergycontractingのサービス内容60 表 3‑4 VERBUNDGETECの国内サービス契約事例60 表 3‑5 ENELのEnergyAsaServiceにおける連携企業61 図 3‑5 ENECOの想定している「持続可能(Sustainable)」な熱供給のレベル

62 図 3‑6 ENECOのヒートコールドストレージ63 図 3‑7 EDPの事業64 表 3‑6 EDPのIntegratedSMESolutionsパッケージにおけるサービス概要

65 図 3‑8 SonnenのSonnenCommunity65 図 3‑9 SonnenCommunityのSonnenFlatの会費と収益試算66 図 3‑10 SouthernCaliforiniaEdison(EdisonEnergy)のEnergyasaService

67 図 3‑11 EdisonEnergyのマイクログリッド&ストレージ68 表 3‑7 PacificGas&ElectricCOのエネルギーコスト節約サービス

69 図 3‑12 SanDiegoGasandElectricCoのECOShare69 図 3‑13 SanDiegoGasandElectricCoのエネルギー管理ツール

73 表 3‑8 欧米のエネルギー事業者におけるエネルギーサービスの取り組みと需要家のメリット

エネルギーエージェントサービスにおけるビジネスモデル

COzeroHoldingsの企業概要(2016年11月発表時点)

タイトル

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