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路地裏ヒール第3弾。タイ篇
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人の親切を当たり前のようにとらえるようになったのは、いつからだろうか。
流れるように過ぎ去る日々にただ流され、右から左へとこなしていく日常に埋没してしまったのは、いつからだろうか。違う、なにかが違う。直感的にわかる。そうじゃない、心が叫ぶ。
信号が赤から青へと変わる。いますぐ前に行きたいわけじゃない。もう少しだけ立ち止まって、自分の立ち位置を確認したい。
でも、行かなくちゃ。置いてきぼりにされてしまう。心を置いて、目をつぶって前に進もう。思っていたよりも、僕たちには残された選択肢はきっと少ない。
ここに来るまでは、そう思っていた。終着点のないトンネルを延々と、ただ下にだけ向かって掘っていくような、救いようのない日常にがんじがらめにされて。そんな、すり減った体と心をバッグにつめて、バンコクにやってきた。
暑い、汗が首筋からふき出すのがわかる。暑いことを暑いと感じた。それが到着して一番うれしかった。
「Hi Mr.! Do you remember me?」
「Really? Then make a Pad-Thai for you! Come Back Again」
「OK! I'll come back tonight.See you again」
「Of course! I remember your Pad-thai was very nice」
いろんな意味でここが日本じゃないことを感じた
「Hi Mr.! Do you remember me?」
「Really? Then make a Pad-Thai for you! Come Back Again」
「OK! I'll come back tonight.See you again」
「Of course! I remember your Pad-thai was very nice」
いろんな意味でここが日本じゃないことを感じた
この街は歩くだけで、すぐに疲れてしまう。
もちろん慣れない気候のせいかもしれない。でも、それだけじゃない。街全体がエネルギッシュなのだ。それに合わせて自分の体も心もいつも以上に活発に動いているのだろう。
僕がこの街に初めて足を運んだのは、もうだいぶん昔のことだ。当時に比べれば、街はキレイになり、人々は洗練されている。しかし、何気ない街角や路地裏に息づく、住人たちは何も変わらない。当然のごとく、彼らは日常を生き、彼らの人生をまっとうしている。当たり前のことを当たり前のようにこなしている。
いくぶん湿気を含んだ、生暖かい風に身をさらしながら、今日は眠ろう。心地いい疲れに身をゆだねて。
T.M