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5 5 章:分布を制限する要因 章:分布を制限する要因 - - 生息地選択 生息地選択 - - 2Krebs/Ecologyセミナー 岡村

5章:分布を制限する要因 生息地選択cse.fra.affrc.go.jp/okamura/memo/Krebs.pdfHabitat Selection • 個体の生息地選択→分布の決定要因 • 自然選択はhabitat認識能力を進化させる

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55章:分布を制限する要因章:分布を制限する要因 --生息地選択生息地選択--第2回Krebs/Ecologyセミナー

岡村

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Habitat

• ある種が一時的 or 永続的に利用し得る場所

実際に利用していなくても利用できるならば,

それはhabitat

しかし,この定義は問題設定によって柔軟に より具体的に変えられるのではないか?

-> Johnson (1980) & Fig. 5.1

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Habitat Selection

• 個体の生息地選択 → 分布の決定要因

• 自然選択はhabitat認識能力を進化させる

• 通常,動物に対して考えられる

• 最も理解が不十分な生態学的プロセスのひ とつ!

• 人間の感覚と動物の感覚の違いに注意

人間が同じと思っても,アメンボには違う

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2つのアプローチ

• Proximal行動のメカニズムから

生理学的な欲求により選択を行う

• Ultimate or Evolutionary選択には進化的な意義がある

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生息地選択の行動学的仕組み

• 単純な例(p.57)ダンゴムシ

湿り気に勾配をもたせた場所に置く

ランダムに動く

動いた場所が湿っぽい

動きのろい

動いた場所が乾いている

動き速い

結果 → 乾

ダンゴ

ダンゴ

ダンゴ

湿

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生息地選択の行動学的仕組み

• より複雑な例1(p.58)昆虫の産卵場所

蛾の幼虫

トウモロコシの上

甲虫

ククルビタシン

藻類のマット,産卵ダンス

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生息地選択の行動学的仕組み

• より複雑な例2(p.58-60)鳥の生息地選択(habitat selectionといえば鳥)

階層的意思決定(図5.1,5.2)鷹

捕食方法の違い(p.60)

タヒバリ

tree pipit(高好), meadow pipit遺伝

人為的環境の変化に鈍感

実験室で育てられた木を好む

別の雀 方言 (図5.3)

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生息地選択の行動学的仕組み

• より複雑な例3(p.61-62)哺乳類

砂漠ネズミの類(図5.4,5.5)

捕食の危険性

大 open, 小 bushbush除去 -> カンガルーネズミ増加

人工bush設置 -> 大ネズミ減,小ネズミ増

ハツカネズミの類

遺伝と幼少期の経験

長尾,長耳 -> 森短尾,短耳 -> 草地

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生息地嗜好性の進化

• 良いhabitatを選ぶ個体

-> 子供を立派に育て上げ る

-> 自然選択(行動,能力)

habitat認識は種によって異なる

アブラムシ

ランダムに選択

悪->Byeチョウチョの子

栄養餌 -> 餓死

鮭 帰郷 故郷の香り

アブラムシ

確率的 ⇔ 鮭

決定論的

進化は不完全

-> 柔軟 日常=宮下,困惑=加藤

鳥の巣選択(Fig. 5.6, 5.7)

方向性選択

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生息地選択の理論

ideal free distribution(理想自由分布)

= どこでも行ける

suitability = fitness 餌,避難場所,捕食者,密度(Fig.5.8)

仮定:異なるhabitatは異なるsuitabilityを持つ

仮定:混んでくるとsuitability減(Fig.5.8)予測:密度高->good.s=bad.s, good高,bad低実例:カモメ

低木>草地

同fitness(Fig.5.9)

ideal despotic distribution(理想専横分布)

= いじめられる

周辺で密度高,fitness低,おっとせいの雄?

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生息地選択の理論

個々の動物が利用するhabitatを決めるルール

鳥の2つのモデル

ideal despotic model似 椅子鳥ゲーム

同種がいる場所を好む

マガモ

池にあらかじめマガモ->嬉しい

人間活動 -> 生息地の急激な変化 -> 進化が

おっつかない

環境の変化 -> 進化:種は万能ではない

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まとめ

• 動物分布は潜在的な生息地よりも制限される

• 生息地選択は様々な段階における意思決定

• 生息地選択が確かめられた種は少ない

• ある生息地を選んだ個体が他の生息地を選 んだ個体より多くの子孫を残すなら生息地選 択の進化

• 人間による景観や環境の攪乱は生息地選択 を不適応にする

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おまけ:解析方法

• 清田ら(2005a, b)• Manly et al. (2002)• White and Garrott (1991)• Millspaugh and Marzluff (2001)

Habitat Selectionは研究材料の宝庫!

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第 5 回 Ecology 勉強会 岡村 寛

配布先:清田,米崎,仙波,高橋(紀),黒田

第10章 人口統計学の方法 – 生命統計 –

今回の話と関係する水産資源学の話題:生残率の推定,レスリー行列モデル,年齢別資源

動態モデル,VPA,繁殖価

1. 生命表(Life Table)(p.133 - 138)

お金をもうけるため生保会社で考案された -> 人間の生命表膨大,動植物の生命表貧弱

雌雄で別々の生命表を作るのが良い

定義:

生命表 = 同時に生まれたある集団の年齢別死亡率の表

同時出生集団(=cohort)は,全個体群,そのうち雄だけ,ある同じ年に生まれた個体の集

団(= 年級群)など,多岐にわたる。水産資源学では cohort といえば,最後のもの。

生命表の例 Table 10.1 (p.134)

x nx lx dx qx

0 115 1 90 0.78

1 25 0.217 6 0.24

x : 年齢

nx : 年齢 x の個体数

lx : 0 から年齢 x までに生き残った個体の割合,= nx / n0 (px = nx+1/nxとすると,lx = p0…px-1)

dx : 年齢 x から x+1 になる間に死んだ数,= nx – nx+1

qx : 年齢 x から x+1 の死亡率,= dx / nx

nxが分かれば,lx,dx,qx が分かる。

年齢: 人,木 -> 5 年; 鹿,鳥,多年草 -> 1 年; 単年草,ねずみ -> 1 ヶ月

nxを示すことが多い(例: 図 10.1;普通 1000 からはじめる,人間では 100,000 も),lxをプ

ロットするのを好むものもいる。

Box 10.1: 1 個体あたりの死亡・出生率の計算, p.135

死亡数が分かっても個体数が不明だと影響の大きさは分からない

400 個体死亡: 総個体数が 4000,000 なら,個体あたり死亡率 0.01%,個体数 400 なら全滅

1

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Nt = (1/2)Nt-1ならば,対数をとると log(Nt)=log(1/2)+log(Nt-1) -> log(Nt-1)-log(Nt)=log(2) (一定)

生命表の個体数の変化を対数尺で示すと個体あたりの変化率が強調される.

生存曲線の形(Raymond Pearl, p.136) p.134-135, Figure 10.2

Type 1: 若いときほとんど死なない 年とったら急に死ぬ(先進国の人間)

Type 2: 年齢と無関係の一定死亡率(鳥)

Type 3: 最初にたくさん死ぬ(魚,寄生虫)

実際の曲線はこれらの曲線の合成からなる.多くの集団の生存曲線は Type 1と 2の中間型.

生命表には 2 つのタイプがある.p.135 - 137

① コホート生命表(表 10.1)

1931 年に生まれた New York 市の誕生記録を集めて,彼らが死ぬまで記録する

引越しする人もいるので大変な仕事である

(引越しして追跡できなくなった場合:Cox モデル)

② 定常生命表(表 10.2)

ある時間の個体群のスナップショット

年齢別の個体数と死亡数を記録

コホート生命表と等しくなるためには,個体群は増減しない,年齢分布は定常状態

にある必要がある

保険会社は,最新の定常生命表を作ることにより,将来予測を行う

生命表を作るのに必要なデータのタイプ

① 直接コホートの生残数を観測(例:図 10.3)

コホート生命表ができる,Best,定常状態の仮定は必要なし

② 死亡年齢を調べる(例:図 10.4)

定常生命表ができる,個体数一定,各年齢の出生・死亡は一定という仮定が必要

③ 直接年齢構造を調べる

ランダムサンプルして年齢査定を行い,各年齢にどのぐらい多くの個体がいるか

を調べる

定常状態を仮定する必要がある

死亡率が高い生まれてすぐのときを除いて,死亡率は年齢とともに増加すると考えられる

ので,年齢に対して死亡率をプロットすると U 字型の曲線となると考えられる

しかし,いくつかの調査は必ずしもこれが正しくないということを示唆している(図 10.5)

2

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2. 個体数増加の能力(繁殖)p. 138-145

個体群の再生産と死亡に関する情報 -> 内的自然増加率 or マルサス係数(次章参照)

自然は絶えず変動するので,一定の増加率を仮定するのは正しくない

しかし,一定の増加率のままいくと将来どうなるかを予測するのは意味がある(例えば,

鳥島のアホウドリ)

生命表の生残率 lxに各年齢の雌が残す子の数 bxを加えると繁殖と死亡に関する表を得る(図

10.3) -> 次章 Leslie モデルも参照

図 10.3 のデータから純増殖率(net reproductive rate)が計算できる:

純増殖率 R0 = 雌 1 個体あたりが一生の間に作る子(雌)の平均数 = ∑∞

=0xxxbl

Table 10.3 の例で,0-9 歳の間生き残る確率は 0.9932,その間に産む子の数は 0 だから期

待される子の数は 0.9932*0=0.10-14 歳まで生き残る確率は 0.9921,その間に産む子の数

は 0.003 だから,0.9921*0.004=0.0030. これをすべての年齢範囲にわたって足し合わせれ

ば,生涯の平均出生数が計算できる.

個体群は移入・移出がなければ世代ごとに 100(R0-1)%の率で増加(減少)する.

・安定齢分布 p.140 - 141

表 10.3 で年齢によって再生産の期待数は異なっている.よって,個体群の将来を知るため

に,表 10.3 の情報以外に,現在個体群がどのような年齢組成を持っているかの情報も必要

と考えられる.が,実は必要ない.

各年齢に一定の出生・死亡率を持つ個体群は最初の年齢分布がどうであれ,安定齢分布と

呼ばれる一定の年齢組成に近づく*(Lotka,p.141 の例参照,詳細は寺本(1997)など).

安定齢分布に達した個体群は dN/dt = rN(or Nt = N0ert)に従う(図 10.7).

*: 安定齢分布の求め方

レスリー行列(次章)A

⎟⎟⎟

⎜⎜⎜

⎛=

0000

2

1

321

pp

fffA (3×3 行列の場合)

を用いて個体群動態は nt+1 = Antと表されているとする.A の正の実数である最大固有値λ1

を求めると,安定齢分布は (λ12/(p1p2), λ1/p2, 1)となる.

例:(8 ページおまけ参照)n0 = (8,0,3), f1 = 0, f2 = 2, f3 = 3, p1 = 0.4, p2 = 0.7 のとき,

3

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0 5 10 15 20 25 30

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 5 10 15 20 25 30

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 5 10 15 20 25 30

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

generation

age

com

positio

n

> Antei.rei.bunpu.demo()

$values

[1] 1.2200415+0.000000i -0.6100207+0.562473i -0.6100207-0.562473i

$vectors

[,1] [,2] [,3]

[1,] 0.9354068+0i -0.84582578+0.0000000i -0.84582578+0.0000000i

[2,] 0.3066803+0i 0.29976492+0.2763999i 0.29976492-0.2763999i

[3,] 0.1759581+0i -0.02785286-0.3428513i -0.02785286+0.3428513i

$antei.rei.bunpu

[1] 0.6596452+0i 0.2162698+0i 0.1240850+0i

・内的自然増加率 r の計算 p.141-

平均世代時間:親の誕生から子の誕生までの平均経過時間

x 歳における子の誕生の割合は lxbx/Σlxbxだから,これを重みとした平均 G=Σlxbxx/Σlxbxが

平均世代時間となる(10.8 式).

これから,内的自然増加率は r = log(R0)/G (NG=R0N0 ⇔ NG=N0erG,10.9 式)

平均世代時間は世代が重なるとき近似式なので,10.9 式の r も近似となる(近似でない r:

Σlxbxe-rx = 1,Box 10.2).

4

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内的増加率はλ=erによって期間増殖率に変換される(10.11 式,Appendix III).

cf.: 差分方程式(Nt+1=λNt) の解 Nt = λtN0,微分方程式(dN/dt=rN)の解 Nt = ertN0

Box 10.2: Lotka の特性方程式(Euler の方程式),p.145

個体群は増加率 r で成長:N t = N t-x e rx

出生数 Bt = b Nt とする.

安定齢分布を仮定して,x 歳の割合を Cxとすると,Nt Cx = Bt-xlx

Bt-x = bNt-x = bNte-r x → Cx = Bt-xlx/Nt = bNtlxe-rx/Nt = blxe-rx .

Bt = ΣNtCxbx = ΣNtblxe-rxbx. Bt = bNtだから,Σe-rxlxbx=1.

この式から r の値を得るには数値計算が必要である.最初に 10.9 式で推定値を得て,それ

を初期値として,例えば Excel のソルバーなどを用いると良い.

近似式を用いたときの誤差は,r が大きいとき大きくなる(伊藤ら,1992).通常は,真値

の 10%以内の誤差となる(Gotelli, 2001).

p.142-143:内的自然増加率は環境によって変動するので,上の方法は特定の環境下だけで

成り立つ.環境で内的自然増加率が変わる例(図 10.10,10.11).

p.144:内的自然増加率は個体数と相関を持つわけではない.現在,地球上に多くいる種が

大きな r を持っているわけではない.

p.144-145:r に影響する生活史の変化:r を増加する要因

① 最初の再生産の年齢の早期化

② 再生産における子供の数の増加

③ 再生産の回数の増加

r が大きいとき,①が最も顕著な効果を与える(図 10.12 参照).

内的自然増加率の考え方は非現実的である,過度な単純化となっている.現実との比較の

ため,環境の質の診断のために用いられるものである.

3. 繁殖価 p.145-146

(Fisher の)繁殖価 = ある年齢の雌 1 個体からはじめて,将来の世代にどれだけの子孫を

残せるか

年齢 x における繁殖価: x 歳以降のすべての年齢についての出産率とそれまで生きられる確

率との積を加え合わせる(10.12 式).

Vx = bx + px bx+1 + px px+1 bx+2 + ・・・ = (lx/lx) bx + (lx+1/lx) bx+1 + (lx+2/lx) bx+2 + ・・・=∑=

w

xt x

tt

lbl

5

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年齢 0 の繁殖価は純増殖率に等しい.

Vx = bx + ∑+=

w

xt x

tt

lbl

1

= 現在の子の数 + 将来期待される子の数(残差繁殖価)

繁殖価は個体群が定常状態にない場合,扱いが難しい -> 将来に個体群が大きくなるとする

と,将来に残される 1 個体の価値は現在残される 1 個体の価値より低くなる.よって,割

引率を考える必要がある.

年齢や性による繁殖価の変化(図 10.14):自然選択は高い繁殖価を持つ年齢クラスに強く

働き,低い繁殖価の年齢クラスの自然選択は弱い.高い繁殖価を持つ個体を好む捕食者は

その餌となる個体群に大きな影響を与える.

4. 年齢分布 p.146-149

安定年齢分布を考える.

Cx = 幾何級数的に成長する個体群の年齢クラス x から x+1 の間の個体数の割合

上の Box 10.2 より,Cx = blxe-rx =blxλ-x (λ=erより).ΣCx = 1 だから,bΣlxλ

-x = 1. ゆえに,

b = 1/Σlxλ-x. よって,

Cx =λ-xlx /Σλ-ili (10.14)

が得られる.計算例は本文.

安定齢分布に加えて,個体数が一定である場合は,stationary age distribution(静的?年齢分

布)と呼ぶ(図 10.15).

注意:個体群は変動している.自然の中で安定齢分布や静的齢分布を見出すことはほぼな

い.注意深く集められた年齢組成に関する情報は個体群の状態を判断するのに役立つ.増

加している個体群では,若齢が大きな割合を占める(図 10.16).

卓越年級群(図 10.17).

5. 生物特性の進化 p.149-153

「なぜ生物はその生活史を持つようになったのか?」この質問に答えるために生命表の知

識が役立つ

生物による生活史(繁殖戦略)の違い:

太平洋鮭 海で大人に,川に戻って子供を産んで死ぬ(big-bang reproduction)

樫の木 成熟までに 10-20 年,その後 200 年以上の間数千のどんぐりころころ(repeated

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reproduction)

再生産に多くの努力をそそぐことによってだけ再生産成功が得られる -> 資源をすべて再

生産に捧げる -> 再生産後死亡: big-bang reproduction.

低い努力量で再生産成功が達成される or 大人の生残率が高く,若者の生残は変動が大きい

-> repeated reproduction.

Big-bang 戦略か repeated 戦略かは若いときの生残が効く.若いときの生残が低く不安定であ

れば,自然選択は repeated reproduction をもたらす.図 10.18 参照.

例 1:図 10.19

例 2:シシャモ 雄 big-bang,雌 repeated

cost-profit(p.153):大人の死亡率が高い->できるだけ早く再生産,大人死亡率低->成長する

まで待つ

Potential fecundity cost:再生産するとエネルギーを失う,恒温動物の雌は育児にコストがか

かる->雌雄の最適成熟年齢に差

Repeated reproducer は年齢とともに再生産努力をどう変化させるか決定しなければならな

い;進化的には通常,再生産努力を年齢とともに増加させる.

なぜ,Repeated reproducer?->不確実性が大きいときはより長い再生産期間を持つような選

択が起こる.

長寿命 短寿命

再生産成功が確実 ? OK

再生産成功不安定 OK だめ

6. まとめ

・ 生命表 = 死亡の予定表

・ 生命表に繁殖に関する予定表を合わせることにより,内的自然増加率が計算でき,特定

の環境下での将来予測ができる.

・ 年齢別に一定の死亡・繁殖率を持つ個体群は幾何級数的成長をし,死亡率と繁殖率で決

まる安定年齢分布を持つ.

・ これら生命統計は,異なる生活パターンを採用した(単年草と多年草など)生物を定量

的に比較するのに役立つ.

・ 安定した再生産 = Big-bang 戦略,不安定な再生産 = Repeated Reproduction.

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8

おまけ:R コード

Antei.rei.bunpu.demo <- function(N=30,n0=c(8,0,3)){

A <- matrix(c(0,0.4,0,2,0,0.7,3,0,0),ncol=3)

n <- matrix(0,nrow=3,ncol=(N+1))

n[,1] <- n0

for (i in 2:(N+1)){

n[,i] <- A%*%n[,(i-1)]

}

proj <- n/t(matrix(colSums(n),nrow=(N+1),ncol=3))

# plot

plot(1:(N+1),proj[1,],type="l",xlab="",ylab="",ylim=c(0,1))

par(new=T)

plot(1:(N+1),proj[2,],type="l",xlab="",ylab="",ylim=c(0,1))

par(new=T)

plot(1:(N+1),proj[3,],type="l",xlab="generation",ylab="age composition",ylim=c(0,1))

# eigenvalue

res <- eigen(A)

# antei.rei.bunpu

antei.rei.bunpu <- c(res$values[1]^2/(A[2,1]*A[3,2]),res$values[1]/(A[3,2]),1)

res$antei.rei.bunpu <- antei.rei.bunpu/sum(antei.rei.bunpu)

#output

res

}

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第 7 回 Ecology 勉強会 岡村 寛

配布先:清田,米崎,仙波,高橋(紀),(黒田)

第15章 種間関係 – 病気と寄生 –

参考文献:重定南奈子(1992)侵入と伝播の数理生態学.東京大学出版会.

個体群の変化を引き起こす重要な相互作用四天王:病気(伝染病;disease),競争(competition),

捕食(predation),植食(herbivory)

人間の例:

ペスト(黒死病):14 世紀にヨーロッパで広まる.1 億人の 1/4 が死亡.カミュ.

天然痘:南米のアステカ帝国では,ヨーロッパからもたらされる.1500 万が 1/10 に.

その他:エイズ,インフルエンザ,麻疹(ハシカ),梅毒

植物の例:

栗の胴枯れ病:Chapter 4 p.44-45

動物の例:

アフリカにおける腺ペスト

狂犬病

病気は競争や捕食と相互に関係しあう.

1. 感染者と病気の関係の数学モデル p.258-264

病気のモデルは伝統的に微分方程式を用いている.

Kermack-McKendrick モデル(1927)

Anderson (p.259) - May (p.163)モデル(1978)

Compartment モデル:図 15.1 を一部改変

未感染者

発病者

免疫保持者

死亡

d

α+d

d

β

b

生 b

γ

b

1

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未感染者(Susceptible),発病者(Infected),免疫保持者(Recovered)からなるので,SIR

モデルと呼ばれたりする(参考:SRI = Shono Research Institute)

予備知識:指数分布

イベントが発生するまでの時間(確率変数)を T とすると,時間 t 以降にイベントが起こる

確率は, λ/)Pr( tetT −=>

この密度関数は,

λ

λ/1)( tetf −=

である.ハザードレイト(瞬間イベント発生率)は,

f(t)/Pr(T>t) = 1/λ.

平均的なイベント発生までの待ち時間は,

λλλ

λλλλ =−=+−== ∞−−∞−− ∫∫ 0//

0// ][][1 tttt edtetedtetT .

・ 個体数一定下における Compartment モデル p.259-262

上の図で,b=d=0 とする.

テーマ:病気が個体群の中に侵入して来た時,それは定着しうるか?それとも死滅するか?

・モデル(以下,Krebs の本と少し違っているが,基本的には同じ.Krebs の本よりも,重

定(1992)8 章を読んだ方が分かりやすい)

記号:

未感染者(これから感染する可能性がある人)の数 S

感染者の数 I

免疫保持者(回復者)の数 R

病気と遭遇したときに感染者が増える速度 β

感染者が回復する速度 γ

全個体数 N = S + I + R

未感染者の時間変化を表すモデル

(1) dS/dt = -βSI/N

未感染者と感染者がランダムに遭遇したとき,感染率βで感染するということを想定(参

考:Lotka-Volterra モデル,12 章,p.181).

感染者の時間変化を表すモデル

2

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(2) dI/dt = βSI/N-γI

感染者は率γで回復する.

免疫保持者の時間変化を表すモデル

(3) dR/dt = γI

上の式を足し合わせると,dS/dt + dI/dt + dR/dt = dN/dt = 0.すなわち,全個体数は時間的に

変化しない(一定である).

γ=0 (病気から回復しない)のとき,SI モデルと呼ぶ.

最初 S0人の未感染者だけからなる集団に I0人の感染者が侵入してきた状況を考える.ただ

し,I0 << S0.

Box 15.1:

病気が定着するには,感染者の数が増加する必要がある.よって,(2)式>0 を仮定する必要

がある.

βS0I0/N > γI0 ⇔ S0/N > γ/β(閾値)

γ/βは閾値の密度である.条件は R0 = (S0/N)/(γ/β)>1 と書ける.病気侵入時には,S0~N

であるから,R0 = β/γ> 1 が,病気が広がるための条件.

βは 1 感染者が単位時間に感染させることができる他個体の平均数.1/γは感染者が感染状

態である平均時間(予備知識参照)である.その積β*(1/γ)=R0は,1 感染者が感染状態に

ある間に発病させた平均他個体の数である.したがって,R0 は病気の基本繁殖率(basic

reproductive rate)と呼ばれる.これは個体群成長の net reproductive rate に似ている(Chapter

11,p.158).

繁殖率 R0が 1 より小さい場合は病気が侵入しても広がることはない.感染率βが高く,回

復率γが低い病気は定着しやすい.

Essay 15.1

問.どのようにして感染率βを推定するか?

答.病気による死亡の累積数を考える.

β以外のモデルの中のパラメータはすべて既知であるとする.

βをいろいろ変えて,累積曲線にフィットするかどうかを見る.

Best fit モデルのβを推定値とする.

・ 初期定着後の病気の変化

3

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図 15.2 x 軸上の点線矢印の点は閾値密度γ/β.初期定着に成功した病気は感染者の数を

増加させ,ピークに達する.その後,感染者数は減少し,消滅する.ボンベイで発生した

ペストの流行の時間変化はこのモデルでうまく記述できた.

新しい未感染個体が一定の割合で入ってくるとき → 未感染者の密度が基本繁殖率=1 とな

るところで安定するか,安定点のまわりを振動するか.

病気の流行の阻止(p.261-262):

未感染者を間引く(感染率が下がる),ワクチン接種(S → R)

どのぐらい多くの未感染者を処理すべきか?

未感染個体のうち c を免疫保持者とするとする.Box 15.1 の中の式から,

R0’ = {(1-c)S0/N}*(β/γ) = (1-c)β/γ (S0 ~ N より)

R0’ < 1 が病気を阻止する条件だから,

(1-c)β/γ < 1 ⇔ c > 1 - γ/β = 1-1/R0

R0 = 4 ならば,病気の流行を防ぐためには 75%の個体にワクチンを打つか間引くかをしなけ

ればならない.

・ 個体数が変わるときの Compartment モデル p.262-264

上の基本モデルからの変更点

① 個体群は変動する,つまり b > 0, d > 0.

② 個体数の増加とともに増加する接触率 c を導入.

③ 病気から回復することはない,つまりγ=0.→ SI モデル

テーマ:病気は個体数にどのような影響を及ぼすか?

未感染者の時間変化を表すモデル

(4) dS/dt = bN - dS - cβSI/N

感染者の時間変化を表すモデル

(5) dI/dt = cβSI/N - (α+d)I

平衡状態において,dX/dt = dY/dt =0 より,

N=S+I ⇔ S = N-I を(4), (5)に代入すると,

(4)’ bN-d(N-I)-cβ(N-I)I/N=0

(5)’ cβ(N-I)I/N-(α+d)I=0

(5)’より,cβ=(α+d)N/(N-I).これを(4)’に代入すると,

4

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bN-d(N-I)-(α+d)I=0 ⇔ (b-d)N=αI.ゆえに,I* = {(b-d)/α}N*.

c* = (1/β)*(α+d)N/{1-(b-d)/α}N=α(α+d)/{β(α+d-b)}.

よって平衡状態において

(6) I* = {(b-d)/α}N*

(7) c* =α(α+d)/{β(α+d-b)}

が成り立つ.この平衡状態が存在するためには,c(N)が(7)式の値に達するものでなければ

ならない(図 15.3 参照).また,I < N だから,α > b-d が成り立つ必要がある.

・ 病気の阻止

病気が侵入してきたときに,それが蔓延するのを防ぐ.

(8) 間引き(or 種痘)率δとすると(未感染個体のうちδを間引くことにより感染の

広がりを抑えるという発想),式 (5)は,

(9) dI/dt = cβ(1-δ)SI/N - (α+d)I

となる.病気の侵入時 S~N だから,これが負になる(病気が増加しない)条件は

(10) δ > 1 - (α+d)/cβ

これは(α+d) > cβならば,δ > 負の値となり,全然間引かなくとも病気は消えることにな

ることを意味する.

注:この式は Krebs の(15.12)と違っているが,(15.6)式との対応などを考えれば,上の(9)式

の方が適当であろう.p.263 の最後にあるように,感染個体を確認し殺すという方策であれ

ば,

(9)’ dI/dt = cβSI/N - (α+d+δ)I

として,Krebs の(15.12)が得られる.しかし,αとδをこのように独立に考えて良いものか?

(病気により死ぬ間際のものを殺すならば,方程式にインパクトを与えられない.すなわ

ち,この式からは間引き率は過小推定されるであろう)(15.6)の流れからは,(10)式の方が

自然であるが,何故 Krebs が(15.12)を持ち出したか不明.

・ (参考)さらなる発展

重定(1992)参照:

ペストの流行と伝播の波,Kermack-McKendrick モデルに拡散項を加えることにより病気の

空間的な広がりの評価ができる(Chapter 4, p.48 Skellam モデル参照)

dS/dt = D∂2S/∂x2 - βSI

dI/dt = D∂2I/∂x2 + βSI - γI

最近の論文

横田賢史・渡邊精一(2004)一次元養殖場分布モデルによる伝染病リスク評価.日本水産

5

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学会誌 70(6): 889-895. 養殖場で病気の伝播をくいとめる.Kermack-McKendrick のモデルに

魚の移出入を考慮.

2. 個体に対する病気の影響 p.264-267

個体に対する病気の影響の研究は,野生動物ではほとんどされておらず,家畜や人間で多

い.これは野生社会では共進化が起こるためではないかと思われる(Essay 15.2 赤の女王仮

説).しかし,そうではないかもしれない.

・ 再生産に対する影響

生物が利用できるエネルギーの量は限られているので,寄生虫や病気が再生産能力を減じ

ることは自然である.

例 1:マラリアに感染したトカゲの卵のサイズは小さい(図 15.4)

例 2:白鷺(egret)の雛へのダニ(tick)の攻撃(図 15.5,15.6)

・ 死亡率に対する影響

病気は動物を殺す.死亡のうちどの程度が,病気が原因で起こるか?

ゼニガタアザラシ(harbor seal):ジステンパー(図 15.7,図 15.8)

60%が各コロニーで死亡

基本繁殖率 R0 = 2.8.

このような病気の空間的な広がりは通常,拡散項を加えたモデルによって分析される(重

定, 1992 第 9 章参照).この場合(Swinton et al., 1998)には,水産学会誌のものに近いモ

デルか?(Swinton et al.を読んでないので不明).モデルは病気がこのままとどまらないこ

とを予測 -> 実際,病気の流行は一時的なもので個体群は回復した.

3. 集団に対する病気の影響 p.267-275

・ ブルセラ症:感染性流産を誘発(図 15.9,15.10)

ブルセラ菌はバイソンから家畜牛に伝わったのか,その逆か論争がある.

多分,家畜牛 → バイソン.

間引きによってバイソンからブルセラ菌を駆除できるかが単純なモデルで検討された.

バイソンを約 200 頭にすればブルセラ菌の阻止が可能:しかし,200 頭に減らすことは

バイソンが絶滅する危険が大きくなるので,この措置は実行不可能.

・ 狂犬病

古くから知られている病気のひとつ

デモクリトス(笑う哲学者)やアリストテレスの本に記述あり

唾液により感染 感染したら必ず死ぬ 治療法はない

6

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潜伏期間は 10 日以下から 6 年以上まで変動が大きい

媒介生物:ヨーロッパ 赤狐,北アメリカ アライグマ,スカンク,狐,蝙蝠(図 15.11,

15.12)

狂犬病の空間的な伝播(図 15.13)大規模なワクチンの接種を実施 → 効果不明

狂犬病の流行はポーランドで始まり,年 20-60km の速さで西側 14000km の範囲に移動

した(図 15.14,参考:重定 1992 第 9 章 p.140 拡散項を加えたモデルから伝播速度を

推定すると 66-73km/年となる よく一致)

ヨーロッパの狂犬病は 4, 5 年の周期で発生(図 15.15,人口と病気の発生の仕方に関し

ては重定 1992,8 章も参照)

間引きがうまくいかなかった後,ワクチンの方法を採用 -> 成功

Anderson et al. (1981)の Compartment モデル(図 15.16):

Box 15.2

(11) dX/dt = rX -γXN -βXY

(12) dI/dt = βXY - (σ+d+γN)I

(13) dY/dt = σI - (α+d+γN)Y

ここで,

X:未感染個体(狐)の数

I:保菌者(潜伏期間で発病はしていない)の数

Y:感染者(発病個体)の数

β:感染率/1 遭遇

r:狂犬病がない状態での個体群の増殖率=b-d

d:狂犬病がない状態での死亡率(1/d は平均寿命,予備知識参照)

b:狂犬病がない状態での出生率

γ:r/K (K:環境収容力)

σ:潜伏率(平均潜伏時間 1/σ)

α:狂犬病になった狐の死亡率(この場合の平均寿命 1/(d+α),狂犬病にかかったら寿

命は短くなる)

Anderson et al. (1981)は,上のパラメータを p.273 の表のように推定した.このモデルか

ら得られる狂犬病にかかった狐の数は 3-5年の周期で変動し,図 15.15とよく一致した.

このモデルから計算される basic reproductive rate R0は,

(14) R0 = σβK/{(σ+b)(α+b)} ・・・ (*)

となる.これが 1 より小さければ,狂犬病は死滅する.p.273 の数値を入れて閾値密度

を計算すると,1km2 あたり 1 頭の狂犬病となった.

(*):(12) = (13) = 0 として,2 つの式を合わせると,

7

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βXY - (σ+d+γN)(α+d+γN)Y/σ= 0

βX - {K(σ+d)+rN}{K(α+d)+rN}/(σK2)=0

N~K として,r = b-d から,

βX-(σ+b)(α+d)/σ=0 -> X = (σ+b)(α+b)/(βσ)

閾値は X/N であるから,

X/N=X/K=(σ+b)(α+b)/(σβK)

R0は閾値の逆数だから,(14)式を得る.

なぜ間引きが成功しなかったか:高い再生産率,高い移動率 -> かなりの間引きが必要

ワクチンの使用はより効率が良い(図 15.17)-> ワクチン成功

ここでは病原体や宿主の性質は不変であると仮定している.不変でなかった例を次に紹

介.

・ ヨーロッパウサギの粘液腫症

ヨーロッパウサギがオーストラリアに移入された後,爆発的に増加した.粘液腫をばら

まいて大量殺戮計画実施 -> 99%以上のウサギちゃんが死亡(図 15.18)

導入後,粘液腫症の毒性が弱まってきた(表 15.1 導入時のもの I から徐々に IIIB や IV

が優勢に.あまりにも毒性が強いものは宿主をすぐ殺してしまうので伝播能力が弱い,

自然選択)

ウサギも毒性に強くなっていった(自然選択,図 15.19)

毒性が低下したので,病気の効果もほぼなくなったかどうか調べるため実験をした(図

15.20).ウイルスがない方の数は増加し,毒性は弱まっても個体群を抑える効果はまだ

健在であるということが明らかになった.

4. 宿主 - 寄生システムの進化 p.275-277

単純なモデルでは病気は死滅するか爆発的に増えるかといった予測をする.しかし,実際

には病気が持続的に存在し続けるということ多いように思われる.この現象の説明は,自

然選択が病気・宿主の両方に働き,その相互作用が個体群の安定状態をもたらしたという

ものである.上のウサギの粘液腫症で見たように,毒性は徐々に弱められ,毒性の弱い病

気が存続する状態が達成される傾向にある.これより,適応進化をとげた寄生虫は良性の

ものとなると考えられる,というのは正しいか?

答え:進化は必ずしも宿主・寄生虫の平和的共存を好まない.寄生虫には毒性と他の適応

度とのトレード・オフの中で最適な行動を選ぶ.宿主が不変であれば,寄生虫は最適点に

落ち着くが,宿主もまた進化するので,両者の軍拡競争となる.一般に,宿主の遺伝的変

動が大きいときは,病気の毒性は弱い.宿主と病気の進化時間は異なっており,宿主はの

ろいが病原菌は猛スピードである.

8

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9

・ 宿主・寄生虫の進化を研究する方法

serial passage experiment:宿主の性質を一定にしながら,病気をひとつの宿主から別のもの

へ移す.進化していった病原菌と最初のものを比較する(図 15.21).図 15.21 は毒性が際限

なく大きくなっていくことを示している(ランナウェイ進化).しかし,これは自然界で起

こらないだろう.理由は「赤の女王仮説」である.宿主の遺伝的変動が病原菌の一方的進

化を妨げる.

Essay 15.2 赤の女王仮説(ホームページから)

"Now, here, you see, it takes all the running you can do, to keep in the same place."

(いいかい。ここでは力の限り走らなきゃいかんのだよ、同じ場所に留まるためにはね。)

"If you want to get somewhere else, you must run at least twice as fast as that!"

(もし他のところへ行きたいのなら、その2倍の速さで走らなくてはならなんのだ。)

ルイス・キャロル 「鏡の国のアリス」より

ルイス・キャロル著「鏡の国のアリス」の一節を取り上げた、イギリスの生物学者 Wiliam D.

Hamilton の「なぜ生物は雄と雌で繁殖を行うのか」という問題への仮説。

今では2つの「赤の女王仮説」が知られており、もともとの「赤の女王仮説」は L.Van Valen

が 1973 年に提唱した「ある生物群を構成する分類群は、その分類群の出現後、一定の確率

で絶滅している」とする絶滅率一定の法則のこと。

もう一つの「赤の女王仮説」は William D. Hamilton が 1980 年に提唱した「病原菌に対する

抵抗力を得るために積極的に親と異なる子を作り出すように両性生殖が進化した」という

もの。

一般に William D. Hamilton が提唱した「赤の女王仮説」の方が知られている。

ウサギと粘液腫症の例は,病気の方が毒性の弱い集団が選ばれたということで,集団の適

応度に自然選択が働いた例(群選択,2 章参照)と考えられる.

ウサギと粘液腫症の将来関係:イギリスではウサギがゆっくりと増加しており,安定平衡

点にあるとは思われない.オーストラリアでは他の病気が移入されて複雑になり,何だか

分からなくなったのだった(ウサギの密度は減少).

5. まとめ

・ Compartment モデル,臨界密度,基本増殖率,伝播速度

・ 共進化,軍拡競争,ランナウェイモデル,赤の女王仮説

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第 8 回 Ecology 勉強会 岡村 寛

配布先:清田,米崎,仙波,高橋(紀),黒田

第17章 応用問題 I – 個体群からの漁獲 –

今回は水産資源学に関係の深い話である(実例は水産資源学に関係するものだけ).

個体群管理の失敗例は警告や刺激として役立つ.

管理の目的:資源を危険にさらさないレベルで最大の収穫を得ること!

材木の場合,若木を切っても価値がない,腐った老木を切っても売れない -> 最適な伐採年

齢があるはず

漁業:多くの漁業は 1920 年からの乱獲のため縮小化している -> 研究の発展

管理に重要なもの:収穫量,漁獲量 数(クジラなど)や重量(魚や石油など)を単位と

する 時間の単位を必要とする(年が多い)

最適な漁獲量(optimal yield)は何か?

1930 年代 MSY(Maximum Sustainable Yield)登場

Stock:個体群(Population)のうち収穫(漁獲)可能なもの(この定義は水産資源学の stock

とは違う?あいまいなので広く解釈すれば OK か?).漁業の場合,重量(Biomass)で

考えることが多い.

Stock の減少:自然死亡,漁獲死亡

Stock の増加:成長,加入

Russell(1931): S2 = S1 + R + G - M - F

S2 年の終わりの stock の重量(Biomass)

S1 年の始めの stock の重量(Biomass)

R 加入量

G 生き残りの魚の成長

M 自然死亡

F 漁獲死亡

S1 = S2 とすると,R + G = M + F.

開発前(F=0)には stock は一定と考えられるので,R + G = M

開発が始まる(F > 0)と,個体数は減少し,補償(Compensatory)効果が見られるようにな

1

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る.例えば,① 加入率の増大,② 成長率の増大,③ 自然死亡率の減少.こうした補償効

果がどれも起こらない場合,R + G < M + F となり,個体群は絶滅に向かう.

個体群安定(R + G = M + F)の条件で,個体群レベルがどのぐらいのときに最大の漁獲量

が得られるか?

答え:Graham (1935) S 字曲線理論

ロジスティック方程式 dN/dt = rN (K-N)/K

N:個体数(個体重量)

dN/dt:個体数(重量)の増分

r:内的増加率

K:環境収容力

ロジスティック方程式の解

dN/{N(1-N/K)}=rdt

(1/K)*(K/N+1/(1-N/K))dN = rdt (変数分離形)

log(N)-log(1-N/K) = rt + C

KN/(K-N)=Aert

t = 0 で N=N0 とすると,A=KN0/(K-N0)

KN = Aert(K-N) -> N = AKert/(K+Aert) = AK/(A+Ke-rt)

t -> ∞のとき K

N のグラフ(図 17.1 参照)

R コード

K <- 200

r <- 1

N0 <- 1

A <- K*N0/(K-N0)

N <- function(t1) A*K/(A+K*exp(-r*t1))

t1 <- 0:100/10

plot(t1,N(t1))

2

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個体群の増加率 dN/dt が最大になるのは,d(dN/dt)/dt = 0 のときだから,

r(K-N)/K-rN/K = r-2rN/K = 0 -> N = K/2

カーブの中点 K/2 で最大の増加率となる.

従って,個体群を K/2 の大きさに保てば,最大の漁獲が得られることになる.

最大漁獲量は,N=K/2 を dN/dt に代入して,rK/4 となる.これを最大持続生産量(maximum

sustainable yield; MSY)と呼ぶ.

最適漁獲量を決定するための 2 つのアプローチ

① ロジスティックモデル(余剰生産量モデル):Russell -> Graham -> Schaefer

② ダイナミック・プールモデル(成長-生残モデル):Baranov -> Beverton & Holt

1. ロジスティックモデル p.307-309

成長,加入,自然死亡の区別をしないで,すべてを個体群の増加率で代表させる -> ロジス

ティックモデル

漁獲の効果を加えると,

dN/dt = rN(K-N)/K-qXN

N:個体数(重量)

r:内的自然増加率

K:環境収容力

q:漁具能率

X:努力量,F=qX は漁獲係数

単純さのために有効な情報が少ない状況でしばしば用いられる.

最大漁獲量は上の説明より,N=K/2 のとき得られるから,rK/4 -FK/2 = 0 として,最大漁獲

量を与える漁獲係数は F = r/2 である.K/2 は MSY を与える個体サイズであるから MSY レ

ベル(MSYL),r/2 は MSYL に対する漁獲量の割合なので MSY レイト(MSYR)と呼んだ

りする.

例:ペルーのカタクチイワシ(乱獲のモデルケース)

ペルーのカタクチイワシは 1960 年代後半に MSY を少し越える量の漁獲がなされていた(図

17.3).これは平均的な環境条件のもとで正しい関係である.1972 年にエルニーニョが起こ

り環境は大きく変わった.その結果,資源は崩壊した.1980 年代資源は回復しなかったが,

1990 年になってから回復が見られる(図 17.4).1972 年の漁業の崩壊は経済的に大きな打

撃であった.数ヶ月早く漁業をやめるか,図 17.3 の MSY よりもすこし少なめに漁獲してい

れば,崩壊を回避できたかもしれない.

教訓:平均的な条件は不変で,魚資源は平衡状態にあるという仮定は破れがちであるので

3

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注意しましょう.

注:平衡状態(dN/dt = 0)において,努力量に対して漁獲量をプロットすると放物線となる.

dN/dt = 0 より,rN(K-N)/K = qXN = Y(漁獲量)

r(K-N)/K = qX だから,N = K - qXK/r.

これを代入すると,Y = qXN = qX (K - qXK/r) と X の 2 次方程式になる.

・ 関連した話

ぺラ・トムリンソンモデル

dN/dt = rN{1-(N/K)z}

2. ダイナミック・プールモデル p.309-316

ロジスティックモデルは,成長・加入・自然死亡をひとまとめにして扱ったが,ここでは 3

者を区別して扱う(区別するだけの情報がある).ただし,加入は一般に環境変動によって

大きく変動するので,ある加入量が得られたときに,その加入した魚は成長と生残のもの

とでどのような生産を行うのか,それに対してどのような漁獲が許されるのかを考える.

それ故,生産量(Yield)を加入量(Recruitment)で割った Y/R(ワイパーアール,YPR)を

見ていくことになる.

モデルの仮定

・ 自然死亡・漁獲死亡は一定,密度独立,すべての年齢で同じ

・ 成長は年齢依存,密度独立

これらの仮定は非現実的である.いくつかの仮定は適切に変更,あるいは取り除かれる.

目的

漁獲死亡のあるレベルはどのぐらいの漁獲量をもたらすかを決定する

加入量 R で始まる個体群は次の動態に従うとする.個体数 N(重量ではないことに注意)

の変化率は

dN/dt = -(F+M)N, N(0)=R

この式は 1 個体あたりの個体群の変化率(減少率)(dN/dt)/N が漁獲死亡係数 F と自然死亡

係数 M の和にマイナス符号(減少に対応)をつけたもので表されることを意味する.

この微分方程式を解くと,N = N(0)e-(F+M)t = Re-(F+M)t(本文(17.6)式)が得られる.これによ

り個体群は指数的減少を示す.R = 1 とおくと,漁獲開始以来生き残った個体群の割合とな

る.

4

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長年にわたって漁業が安定していて,個体群は平衡状態にあると仮定する.平衡状態にあ

るとき,年の変化と年齢の変化は等しくなる(第 10 章参照).従って,t は“年”ではなく

“年齢”を意識していることに注意(コホートを考えている).

累積漁獲数を C,累積自然死亡数を D とすると,t 年(t 歳)の個体数は,

N = R - C - D

両辺を微分すると,

dN/dt = -dC/dt - dD/dt (R は定数)

これを dN/dt = -FN-MN の式と比較すると,dC/dt = FN,dD/dt = MN となることが分かる.

式(17.7)

生産量 (Y) = Σt 年齢クラス t の個体数(Nt)×年齢クラス t の平均体重(Wt)×漁獲死亡

係数(F); ∑∞

=

=ctt

ttWFNY

と表される.ここで,tcは漁獲開始年齢である.

注:ここでは漁獲が一度に起こることを仮定して離散的な近似を考えているが,水産資源

学の教科書では,微分 -> 積分を使って連続的に定義するのが普通である.すなわち,

dYt/dt = Wt×dCt/dt = FWtNt

Y = ∫t dYt

とする.以下この式で説明する.詳細は,田中(1985),能勢ら(1988),山田・田中(1999)

など.

Nt は上の式,Wtは成長式(ベルタランフィーの成長曲線)

lt = l∞{1-e-K(t-t0)}

を体重の式に変えたもの

Wt = W∞{1-e-K(t-t0)}3 = W∞{1-3e-K(t-t0)+3e-2K(t-t0)-e-3K(t-t0)}

∑=

−−∞=

3

0

)( 0

n

ttnKneAW (A0 = 1, A1 = -3, A2 = 3, A3 = -1)

を用いる.ここで,K は環境収容量ではなく,成長係数と呼ばれる別物であるので注意.成

長曲線のパラメータは年齢と体長のデータから,線形回帰を行ってまず体長の成長曲線を

推定し,それから体重の成長曲線を推定するのが普通である.

Y の式は,上の成長式と生残(17.6)式に基づく個体群動態の式なので,日本語では成長-

生残モデルと呼ばれる.

加入年齢を tr,漁獲開始年齢を tc,寿命を tλとおく.

生残の式は,次のように表される.

漁獲開始年齢から今までの個体数は,Nt = N(tc)exp{-(F+M)(t-tc)}

N(tc)は年齢 trでの加入数から年齢 tc自然死亡の影響だけ減少したものであるので,

5

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N(tc) = Rexp{-M(tc - tr)}

したがって,Nt = R exp{-M(tc - tr)} exp{-(F+M)(t-tc)}となる.

以上の準備から,この分析に必要なパラメータは以下のものである.

成長関係

W∞:最大到達体重

K:成長係数

t0:理論的な体長 0 の年齢

tλ:寿命

生残関係

F:漁獲死亡係数

M:自然死亡係数

tc:漁獲開始年齢

tr:加入年齢

これらのすべての値が何らかの形で知られていないと現在の漁獲の状態を把握することは

できない.

Y についての積分の式を解くと,

{ }

{ }))((3

0

)()(

)()(3

0

)()(

)(3

0

)()(

)(3

0

)()(

3

0

)())(()(

1Re

1Re

Re

Re

Re

0

0

0

0

0

cc

rc

ccrc

c

crc

c

crc

c

crc

c

ttnKMF

n

ttnKnttM

tnKMFtnKMF

n

nKtn

tMFttM

t

t

tnKMF

n

nKtn

tMFttM

t

t

tnKMF

n

nKtn

tMFttM

t

tn

ttnKn

ttMFttM

t

t tt

enKMF

eAWF

eenKMF

eAWeF

nKMFeeAWeF

dteeAWeF

dteAWeF

dtWFNY

−++−

=

−−

∞−−

++−++−

=∞

+−−

++−

=∞

+−−

++−

=∞

+−−

=

−−∞

−+−−−

−++

=

−++

=

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡++

−=

=

=

=

∫∑

∫ ∑

λ

λ

λ

λ

λ

λ

両辺を加入量 R で割って,

{ }))((3

0

)()( 1/

0c

crc ttnKMF

n

ttnKnttM e

nKMFeA

WFeRY −++−

=

−−

∞−− −

++= ∑ λ

が得られる.加入量がどのようなものであっても,それに対する漁獲量の割合を最大にす

る F(あるいは漁獲開始年齢 tc)を決定するのが我々の目的である.ただし,この値は加入

6

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量に対する相対値であるので,加入量が変動すると漁獲量は毎年変わる.これは持続生産

量ではない.この生残-成長モデルから MSY の概念を得るには加入量一定の仮定が必要で

ある.よって以下,加入量が一定で漁業が安定している平衡状態の仮定で議論を進める.

生残-成長モデルはある年級群からの漁獲量を記述するものであるが,持続生産量は年ごと

に一定の維持可能な漁獲量であるので,ある年の年齢の変化と年の変化が等しくなければ

ならない.これを満たすために平衡状態の仮定(毎年加入一定,各パラメータ一定)が必

要となる.これは第 10 章のコホート生命表と定常生命表の関係に似ていると思う.

・数値例による YPR 分析の説明

W∞ = 3000,

K = 0.1,

t0 = -0.18,

tλ = 15,

M = 0.1,

tr = 3.7,

として,F や tcを変えたときの YPR の変化を見てやる.現状は F = 0.3,tc = 5 であるとする.

① F を変えた場合

漁獲開始年齢を tc = 5 歳とする.

付録の R プログラムを使って,

> YPR(tc=5, graph.type=1)

とすると,

0.0 0.5 1.0 1.5

050

100

150

200

250

300

F

YPR tc = 5

のようなグラフが描ける.ここで,YPR は平衡状態における漁獲量であり,持続生産量と

なっている.このグラフが最大となるものは最大持続生産量 MSY である.上の図では,

MSY を与える F = 0.3 ぐらいのところにある.

② tcを変えた場合

F = 0.3 とする.

付録の R プログラムを使って,

7

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> YPR(F=0.3, graph.type=2)

とすると,

4 6 8 10 12 14

010

020

030

0

tc

YPR

F = 0.3

のようなグラフが描ける.この図でも同様に,ある tc で最大の漁獲量 MSY が得られる.8

歳から 9 歳ぐらいから漁獲を開始するのが良いと考えられる.

③ F と tcを同時に変える場合

上の①,②の図は様々な F,様々な tcに対して同様なグラフが描ける.これら 2 つを組み合

わせれば,現状の F と tcのより良い組み合わせなどを考えることができる.

付録の R プログラムを使って,

> YPR(graph.type=3)

とすると,

F

tc

0.0 0.5 1.0 1.5

46

810

1214

というような等漁獲量曲線が得られる.現在の F=0.3,漁獲開始年齢 5 歳とすると,漁獲開

始年齢をそのままで F を増加・減少させても漁獲量はあまり変わらない.しかし,漁獲開

始年齢をあげると漁獲量はかなり増大することが分かる.F が過大で乱獲になっている資源

でも網目の大きさを変えて小型魚を保護すれば,F を変えずに乱獲状態から逃れることがで

きるという話としてしばしば紹介される.この図は,加入量あたりの漁獲量であり,漁獲

8

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の加入への影響を考えていないので(漁獲により加入量が減ることはない),F を無限に大

きくしても漁獲量が減ることがなく,tcがある年齢以上であれば F を強めるほど漁獲量が大

きくなる.したがって,加入量が一定で親魚の量と関係ないという仮定が成り立たない場

合はこの図から適切な管理方策の方向性を見出すことはできない.

・関連した話

加入量あたりの産卵親魚量(SPR)に基づいて管理を行う考え方がある(松宮,1996).こ

れは上記と同様に,成長と生残のモデルをあわせて考えるものであるが,漁獲量ではなく

どのぐらいの親魚を残してやる方が良いかという話となる.松宮(1996)では SPR に基づ

く管理は加入乱獲(魚を過度に獲っていて加入が減少.繁殖のポテンシャルを適切に利用

できていない)を防ぐ管理,YPR は成長乱獲(魚が十分に成長する前に魚を獲ってしまう.

成長のポテンシャルを適切に利用できていない)を防ぐ管理といったような議論がなされ

ている.SPR に基づく管理については前企連室長の和田時夫さんなんかが詳しいと思う.

私が入所して間もない頃は海洋研で松宮先生を中心に盛んに研究されているようであった.

しかし,松宮先生が亡くなってからは以前ほど聞かないような気がする.ワシントン大学

にいた間も YPR や SPR という話を聞くことはなかった.最近は平松さんなどが伝道者とな

ってシミュレーションを用いた管理の話が流行のようである(この辺のことは私よりも黒

田さんや高橋さんが詳しいであろう).鍵は不確実性であろう.YPR や SPR が重要でないと

いうわけではない.

ここまでで水産資源学の中のダイナミック・プールモデルの概要を学んだので,Krebs の本

文に戻る(p.310 右段).

例1. 北海のツノガレイ(plaice)

Plaice の生物学

産卵は真冬に行われる.産卵時,雌 5-7 歳,雄 4-6 歳

多産で 350,000 個の卵を産んだりする.その分稚仔の死亡率は高い(100,000 分の 1 が成熟).

3-5 歳(長さ 20-30cm)になって商業漁業に加入.

plaice 資源は大戦中を除きかなり安定していた.従って平衡状態にあったと仮定してダイナ

ミック・プールモデルを適用できる.その様子は図 17.5.この YPR の図などは上のように

して描かれたものである.自然死亡率は標識放流等によって推定された(M=0.1).離散的

な式に基づく計算例は表 17.1.第 2 次世界大戦前は F=0.73 であったが,図 17.5 から MSY

は 0.4 ぐらいのところにあるので,乱獲状態にあったことが示唆される.

漁獲死亡は自然死亡と同様に扱われ,漁業を捕食者のように扱っていると思えばよい.漁

9

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獲死亡を漁獲努力量に変換して,どのように努力量をコントロールするかということを考

えなければならない.しかし,漁具能率をどう定義するか,漁業の時空間的パターンをど

う考慮するかなどで,この問題は複雑なものとなる.特定の漁業の特性に応じて考えなけ

ればならない.

ダイナミック・プールモデルの予測はうまく働くか?北海のカレイは資源管理の成功例で

ある.第 2 次世界大戦後,漁獲努力量は MSY のレベルに減じられた.その結果,水揚げ量

はその後 30 年間にわたって 3 倍になった!1990 年になると再び漁獲努力量は上昇し,資源

は減少,漁獲量が 35%になったのだった.これはモデルから予測されていたことだったの

にぃ.(例 1 ここで終了)

さて,ダイナミック・プールモデルは平衡状態,すなわち加入一定を仮定しているが,こ

れは正しいか?加入一定ということは個体サイズとは関係していない,すなわち親が 1 億

いようが 2 人だけだろうが,いつも同じ加入が得られるということで,これは普通に考え

るとおかしい.ということで,親の量と加入量の関係を考える必要が出てくる.

これは密度効果の問題と関係している.第 11 章にあったように,無限増殖を避けるため

には,高密度になったときの個体群の増殖が抑えられる効果が働く必要がある.漁業生態

学者は成熟個体の死亡率は密度と独立であると考え,繁殖率が密度増加とともに減少する

という仮定を用いる傾向にある.しかし,漁業資源の Regulation で最も大きいものは若齢段

階で起こると考えられる.

現代漁業生態学の公理:魚の重要な密度異存効果は人生の最初の数週間から数ヶ月の間に

起こる.

親魚と加入の関係のモデル(Ricker):この辺の話は親子の情報を得やすい鮭の研究から大

きく発展した.

図 17.6 の例:簡単のため,r=1 として,離散的ロジステッィクモデルを考えると,

Nt+1 = Nt + Nt (1-Nt/K)

ここで,Ntは親魚の量,Nt+1は加入量である.Nt = 0 なら,加入 Nt+1=0. Nt = K なら,加入

Nt+1 = K. Nt = 2K ならば,Nt+1 = 0. 式から,Ntに対する Nt+1のプロットは Nt = K の点をはさ

んで左右対称になることがわかるので,親魚と子の数の関係(再生産関係)として図 17.6

右側のおわん型が得られる.図中 Equilibrium line は親魚と子の数が等しくなる直線で

Replacement line とも呼ばれる.この直線上の点では親魚と子の数が一定となるので,再生

産曲線との交点が平衡状態を与える.y 軸方向の再生産曲線と Equilibrium line の差は余剰生

産量を与えるので,図中紫色の部分の y 方向の長さが最大になる x 軸上の点が MSY を与え

る個体数サイズである.ここではロジスティックモデルを用いているので,K/2 が MSYL

10

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となる.

再生産曲線にロジスティックモデルをそのまま用いることは少なく,実際には次の 2 つの

曲線形が仮定されることが多い.R は子の数,E は親の数とする.

① Beverton-Holt 型曲線

R = α/(β+1/E)

これは,dN/dt = -(a+bN)N(t=0 で N=E)から得られる.すなわち,若齢個体の死亡率への

密度効果がその時々の若齢個体の数で決まるという仮定をおいている.曲線の形は図 17.7

の B のようになり,最大の加入は最大の資源サイズで起こる.

② Ricker 型曲線

R = αEe-βE

これは,dN/dt = -(a+bE)N(t=0 で N=E)から得られる.すなわち,若齢個体の死亡率への密

度効果が最初の卵の量で働くという仮定をおいている.曲線の形は図 17.7 の A のようにな

る.最大の加入が起こる最適資源サイズがある.

Ricker は,再生産曲線は Equilibrium line の左側でピークを持つとして,図 17.7 のような関

係を考えた.曲線 A と Equilibrium line の交点は平衡状態のポイントである.それより左側

に加入量のピークがある.MSY は加入量最大点よりさらに左側,曲線と直線の y 軸方向の

差が最大になる x 軸上の点で得られる.

問題 1:R を用いて,図 17.7 を再生せよ.

Beverton-Holt 型曲線は本質的にはロジスティック曲線である.Ricker 型曲線はロジスティッ

クモデルの離散版に密接に関係している.従って,短寿命のものは Ricker 型再生産曲線を

持つ傾向にあり,長寿命の生物の再生産曲線は Beverton-Holt 型となる傾向が見られる.

漁業資源の加入量は年々大きく変動する(図 17.8 北海カレイ,図 17.9 ブリティッシュ・コ

ロンビア紅鮭).この変動は海洋条件の影響が大きいと考えられている.大きな変動は密度

効果を不明瞭にし,再生産曲線の実データへのフィットが困難になる.加入の変動幅は種

によってかなり異なる(例:北海モンツキダラ -> 30 年間で 500 倍ぐらいの差の増減,北海

ツノガレイ -> 26 年間で 6 倍程度).加入量の変動が大きいほど乱獲を導きやすい(ペルー

のカタクチイワシ).

では何故ある年休は再生産に失敗するのであろうか?これは漁業の最大の難問である.

match/mismatch 仮説:多くの魚は若いときに環境要因にひどく影響を受けやすい短い期間を

持つ.幼魚の利用できる食べ物は,海流や風,水温で変動する.このような時空間的な変

動にうまく match した場合は卓越年級が得られ,mismatch の場合は加入の失敗につながる.

11

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加入失敗を研究するひとつの方法:環境要因と加入の成功度の相関を考える.多くの事例

で大きな相関が見出された(図 17.10,オレゴン 銀鮭).しかし,図 17.10 の点のちらばり

は大きく,依然として不確実性は大きい.また,相関があるという関係だけであって,環

境の影響がどのようなメカニズムで加入に影響を与えるのかについてはこれでは何も分か

らない.

環境の加入への影響のメカニズム:ほとんど研究事例がない.

English sole(オレゴンの重要魚種)の加入プロセスのモデル(図 17.11).

3. 実験室における漁獲理論 p.316-317

動物の持続生産量はどのぐらいか? -> 動物によって異なる.個体数,重量,増加率など

が関係.

グッピーを用いて実験室で漁獲率,個体数,漁獲量の間の関係を調べた.

水槽のグッピーを 4 つに分ける.2 つには 4 段階の漁獲圧をかけて,生き残りを数える.残

り 2 つは対照群(図 17.12).

1 段階目の漁獲圧 25% バイオマス減少

漁獲がある方のバイオマス:ない方の B = 15g:32g

2 段階目の漁獲圧 10% バイオマス増加

漁獲がある方のバイオマス:ない方の B = 23g:32g

3 段階目の漁獲圧 50% バイオマス減少

漁獲がある方のバイオマス:ない方の B = 7g:32g

4 段階目の漁獲圧 75% バイオマス減少

漁獲がある方のバイオマス:ない方の B = 0g(絶滅):32g

データから漁獲率に対する漁獲量曲線が描ける.その結果 F=0.5 あたりに平衡漁獲量のピー

クがありそうである(図 17.13).MSY における漁獲物の平均体重は 8-12g.

この実験から分かったこと:

① 漁獲は個体数を減らす.漁獲圧が大きければ個体数はそれに応じて減少する.

② 漁獲率がある一定値より下であれば,個体群は回復する.生残や成長の能力を高める

ことにより漁獲された分を補おうとする.

③ 漁獲率を上昇していくと個体群は絶滅する.

④ 漁獲なしと獲りすぎの間に MSY の点がある(MSY の存在).

これらの原理は自然資源でも成り立つであろうか?

4. 最適漁獲量の考え方 p.318-319

12

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野生生物の例を見る前に MSY の考え方(の困難さ)を整理しておく.

MSY の考え方は 1930 年代から漁業資源評価・管理の中核となっていた(余談:私が遠水研

に入所したときに最初に読んだのは川崎健さんのカッパノベルズみたいな本で,その中で

MSY を知った).

しかし, MSY が目的とならない多くの場合がある.

例:釣り,大型哺乳類の捕獲,多魚種管理,

同一種内でも異なる部分集団に分けられる場合には MSY という 1 つの指標で判断すること

は難しい鮭.

また,経済的な観点を考慮する必要がある.漁業から得られる収穫は魚ではなくて金だ,

金が全てだ!

経済学者は MSY で漁業を維持するのはビジネスとしては正しくないと考えた.

Gordon のモデル(図 17.14):ポイントは漁業には金がかかるのでコストを考えるところ.

図 17.14 でおわん型の曲線は投じた努力量に対応して得られる金である(獲った魚の量と金

が比例するならこれは生物学的な MSY と一致する.獲れば獲るほど儲かるので).最大の

金はお山のてっぺんになる努力量で得られるが,それだけの努力量を投じるには金がかか

る.努力量に比例して金がかかるとすると,おわん型のもうけから事前のコストを引いた

分が純粋なもうけとなる.よって,おわんのてっぺんより左側にもうけが最大になる点が

あります.最大の純利益が得られる金を MEY(Maximum economic yield)と呼ぶ.

常に,MEY < MSY である.よって,MEY で漁獲していれば生物学的に安全な管理となる

わけだが,そうはならない.社会的な平衡状態はコスト直線と金曲線の交点となる(とい

うのは,そこまでは少しでももうけがあるので,早い者勝ちで漁獲を行えば利益が得られ

るという考えから,自由競争の場合誰も漁獲をやめない.ゲーム理論や共有地の悲劇とい

ったことに関係?).これは MSY より大きいので,乱獲が引き起こされる.従って,一人

で排他的に漁業を行っていれば乱獲は起こらない(けれども実は起こりうる.割引率があ

る場合,今漁獲した方が得なので,目先の利益を追求してしまう).複数人で自由に(競争

的に)漁業を行っている場合は,各自が利益を多くしようと考えるので,少しでも利益が

ある限り(図 17.14 のおわん型曲線が経費直線より上である限り),努力量が増加し,乱獲

となる.乱獲を防ぐには,何らかの規制をしくか,特定の漁業者に独占させる必要がある

ことになる.この辺は C. W. Clark の生物経済学の教科書や田中(1985)などを参照.

クジラの乱獲(Clark, 1990):割引率の考え方.今日漁獲してお金にして貯金しておけば利

息がついて来年同じだけ漁獲するよりもお金持ちになれる.すなわち,今のお金は明日の

お金より価値がある.将来のお金は,現在のお金に対して割り引いて考える必要があるこ

とになる.よって,漁業者は明日を待たない.

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今年 来年

100 万円 --- 利子 - 110 万円

0 円 ------------- 100 万円

概念図:割引率を考えねばならないということ.

シロナガス換算方式(シロナガスを 1 として,ナガスクジラを 0.5 と考えるとかで各国の総

捕獲数を決定)で,早い者勝ちで好きなクジラを捕って良いとなっていた.シロナガスを

激減させて,次にナガスを激減させて,その次にイワシクジラを激減させ,...と価値のあ

るものから順に乱獲を繰り返していった.

教訓:乱獲を防ぐためには社会的政治的コントロールが不可欠.

世界の漁業の多くは乱獲状態に陥った.将来に悲観的にならざるを得ない(Ludwig et al.,

1993 <- Science の有名な論文)

問題は“資源は平衡状態にない”ということである.そして,漁業がうまく行ったときは,

調子に乗って投資し,漁業が悪かったときは助成金を出して漁業の維持に努めるので,漁

獲圧力が弱めるコントロールが働かず,資源が完全に崩壊するまで産業への過剰な投資が

行われる.

以下,このような MSY 理論を漁業管理に適用する難しさを伝える 3 つの例を紹介する.

5. 事例研究 1:タラバガニ

20 世紀はじめに北太平洋で漁業開始.日本からアメリカへ輸出.

1930 年頃,日本,東ベーリング海で操業

第 2 次大戦中,漁業中断

その後,ソ連,日本が 1970 年まで漁業を継続

さらにアメリカが引き継ぐ

図 17.16 捕獲の歴史

最初のピーク 1964 年 9000,000 かに

次の 7 年で捕獲は減少(ソ連,日本が追い出されていったので)

1970 年代,アメリカの捕獲が急激に上昇 1980 年 2 千 100 万かに

1981-82 年の間に漁業が崩壊,それ以降の回復は遅々としている.

1994-95 には,アラスカの主要なタラバガニ漁業が閉鎖,クモガニにスイッチ,クモガニ崩

14

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タラバガニの生活史:

雌は 11 ヶ月卵を抱いている.卵の数は 1 万から 10 万.

稚仔は 4 段階の変態を行って,2mm から成体へと変化する.

稚仔死亡率は非常に高い.成長は遅い(図 17.17).

成熟年齢 5 歳,成熟体長 90mm

若齢のカニは数百から数千のサイズの群れを作る.

タラバガニは魚や無脊椎動物の捕食者・掃除屋である.

成長率は水温や海洋条件で変わる.

問:なぜタラバガニ漁業は崩壊したか?

考えられる原因:

① 雄だけを漁獲していれば生産量は落ちないと信じられていた.

-> 後にこの仮定が間違っていることを確認.

② 若齢の成長・生残の変動大.多分冬の水温の影響大.1960 年代に卓越年級があった

ので,楽観視する空気ができてしまった.

③ 未成熟蟹の投棄(1 成熟カニあたり 7 未成熟カニの投棄).底魚漁業による混獲.漁

具の紛失(永遠にカニを殺し続けるかも?未知の死亡要因となる).

良い漁獲の年が続いたので,MSY が過大推定された.あまりにも急激に産業が大きくなり,

たとえ環境条件の悪化が分かったとしても速いアクションをとることが不可能であった.

社会経済的な現実と生物学的保護の必要性の間の妥協はほとんどいつでも資源の減少を招

く.その結果,回復までに必要以上の時間を要することになる.

共有地の悲劇:すべての人がある資源を公平に使えるとき,すべての人はできるだけ多く

の資源を利用しようとふるまう.乱獲はより多くの金をもたらすので,個人が最適点で資

源の利用をやめようとする理由はない(もし自分が乱獲しないなら,他の人に出し抜かれ

てしまう).このような悲劇は管理政策や独占によってしか避けられない.漁獲の社会的コ

ントロールはすべての大規模漁業に必要である.良い資源管理は生態学,経済学,社会学

の混合である.しかし,この混合はいつでも成功しない,というのが次の例である.

6. 事例研究 2:北海のタラ

タラにまつわる歴史の物語:

タラはヨーロッパの人たちによる初期の北アメリカ植民地化において大きな役割を担った.

John Cabot(誰か知らない)が 1497 年にアメリカに来たら,タラがうじゃうじゃいた.ス

15

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ペインのバスク民族の漁師たちは Cabot より先にそこでタラを獲っていた.塩漬けのタラは

15 世紀から 16 世紀にかけて珍味としてもてはやされていた.Cabot が来たときには,タラ

は北大西洋の支配的な魚であった.今,タラは乱獲によって絶滅の危機にある.タラの崩

壊はニューファンドランドの人たちの社会,経済,生態系にものすごい打撃を与えた.

タラの資源はいくつかの管理単位に分けられた(図 17.18).ここでは,2J,3K,3L の資源

に話を絞る.

タラの生物学:

移動:800km にわたる回遊を行う(冬に北上,夏にニューファンドランド沿岸に分布).

食性:何でも食う.若齢タラは甲殻類プランクトンを食べる.成長するにつれてエビ,ヨ

コエビ,魚の稚仔を食うようになる.成長したタラはニシン,シシャモ,イカナゴ,エビ,

カニ,その他小魚を食う.

成熟・産卵:雌 6-7 歳,11 歳の雌は 200 万の卵を産む.産卵能力は年齢とともに指数的に

増加し,16 歳の雌は 1 千 100 万の卵を産む.卵は海の表層を漂い,多様な捕食者に食われ

る.稚仔の死亡率は極端な高さで,100 万分の 1 が寿命を全うする.

漁業:

タラ漁業は約 500 年間にわたって続いた.

1600 年代 100,000 トン/年

1700 年代 200,000 トン/年(ヨーロッパへ塩漬けタラ輸出)

1800 年代 150,000 ~ 400,000 トン/年

1900 年代以降 漁船の大型化,網の性能向上,冷凍方法など技術革新

1950 年代 900,000 トン/年

1960 年代 2,000,000 トン/年(このうち 40%が northern cod)

1959 年~1998 年 図 17.19

1960 年代の漁獲は良い加入に応じてかなり高かった

1977 年 200 海里時代 カナダの管轄に

1991 年の産卵新魚量/1962 の産卵新魚量 = 0.04

1992 年 漁業が崩壊 -> 35,000 人失業

質問:何が悪かったのか?

答:1980 年代~1990 年代はじめに 2 つの大きな過ちがあった.

① タラの個体数の推定値は過大推定されていた.

個体数推定値は沿岸の CPUE から推定

タラは数が減ると,集中度合いを増した -> 個体数が減っても CPUE が落ちなかった

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② 漁業による死亡率の過小推定

売れない若齢タラの投棄 莫大な数(例 200,000 の合法サイズのタラを得るために

500,000 タラを漁獲して,そのうち 300,000 は投棄)

若齢個体の死亡率の増加は再生産に強く影響

タラ資源崩壊はニューファンドランドの経済を破壊し,カナダ国民の税金のうち 40 億ドル

が使用された.

崩壊の原因に関して 2 つの仮説が考えられている.

① 海洋環境の変化

ほとんどすべての漁業を危機に陥らせる原因は環境条件の変化である.

海洋においては水温と塩分濃度の変化が容疑者である.

1980 年代と 1990 年はじめの海洋条件の変化がタラ資源崩壊を招いたのであろう.

この仮説が正しいならば,漁業管理者や漁業者に崩壊の責任はない.

しかし,正しくはないであろう:海洋条件のデータから最近年が異常だったという証拠は

ない.

アザラシによる捕食の増大が原因ではないかというどこかで聞いたような説もある.

タテゴトアザラシは 1-2 歳のタラを主に食べ,1980 年代に個体数の増加が見られた.しか

し,1980 年代と 1990 年代はじめの 1-2 歳のタラの調査はこれらの年齢群の生残が変化して

いないことを示唆している.タテゴトアザラシの捕食がタラ崩壊をもたらしたという証拠

は何もない.多くの政治家はタラを救うためにタテゴトアザラシを間引くことを要求した

が,そのような方策が功を奏するという科学的な根拠は何もない.

教訓:どこの政治家も同じ.

② 乱獲

科学的な証拠のすべてが崩壊の原因は乱獲であったことを支持している.

減少は 1980 年代に起こったが,それは漁獲努力量の増加,漁具の技術的改良とマッチして

いる.漁獲圧は法外でほとんどの魚は再生産できるサイズ(年齢 6-7 歳)に達していなかっ

た.大きなタラは卵を産む前に漁獲された.タラの商業漁業は非常に効率がよく,個体群

密度減少により集中度を増したタラを一網打尽にできた.漁業が衰退するに従って,未成

魚の投棄は増大した.

問題 2:2 つの仮説のうちどちらが支持されるか?日本ではよく似た議論はあるか?

タラの回復には何十年もかかるが,漁業再開の絶え間ない政治的圧力がある.最近 7 年間

に見られた資源回復の兆しは限られたものである.タラ資源は昔のようには二度と回復し

ないだろうという懸念がある.回復を 150 万トンの産卵親魚量と毎年 10 億の 3 歳魚の加入

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と定義すれば.およそ 35 年を要するという推定が Carl Walters によってなされている.

感想:非常に身につまされる話である.我々に何ができるか?科学者の役割は?Walters and

Maguire 1996 は読んだが学ぶことが多かったような記憶がある.

7. 事例研究 3:南極捕鯨

クジラ資源の開発は 1970 年代から 80 年代にかけて活発で白熱した議論をうんだ.

現在ほとんどすべての商業捕鯨は禁止されており,大部分のクジラは保護されている.

大型クジラはヒゲクジラとハクジラの 2 種がいて,全部で 10 種類である.

そのうち,マッコウクジラは商業捕鯨の対象であった唯一のハクジラであった.

その他 9 種はすべてヒゲクジラである.ヒゲクジラの主な餌は南極オキアミである.

クジラ関連のお薦め文献:私は加藤さんが書いたわくわく動物シリーズのうちの一冊のク

ジラ・イルカでクジラのことを学んだ.子供向けに書かれたものだが,名著だと思う.絶

版だが,遠水研の図書館にある.

捕鯨の歴史(図 17.21):

捕鯨の歴史は,乱獲の伝播である.価値ある種から食いつぶしていって,次々に種を激減

させた.近代捕鯨はノルウェー人が爆発銛などを開発したことから始まった.1905 年ごろ

鯨捕りたちは南極に行き,シロナガスとナガスの大きな個体群を発見した.1930 年代はシ

ロナガスが捕獲の中心だった.しかし,1955 年にはほとんど捕れなくなった.ナガスはも

ともと最も多くいたのだが,次のターゲットにされた.1960 年代のはじめにはナガスも崩

壊した.イワシクジラはシロナガスやナガスが豊富にいた間は無視されていて,1958 年ま

で捕獲されたことはなかった.イワシクジラの捕獲は1972年以降 IWCによって制限された.

資源評価の歴史:

1961 年以来,クジラの捕獲に関するモデルの開発が広く行われた.

ロジスティックモデルは不適当であることが分かった(MSYL = 0.8K.図 17.22,参考ぺラ・

トムリンソンモデル).

図 17.22 は 1 つの系群を仮定しているが,現在は複数系群がいることが知られている.クジ

ラ資源のモデルは単一種モデルである場合が多いが,多くの種が南極オキアミを食べてお

り,相互作用は大きいであろう.

鯨類の管理:

激減したクジラの回復率を調べなければならないが,有効なデータは商業捕鯨時代のもの

のみであるので,資源の変化を観察する追加の調査が必要である.クジラ資源はゆっくり

と変化するので,10 年ですら個体群の捕獲に対する応答を観測するには短すぎる.

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参考:RMP(成山堂の「クジラに学ぶ」は良い本だと思う)

Cooke, J. G. (1994). The management of whaling. Aquatic Mammals 20(3): 129-135.

オキアミのこと(図 17.23):

オキアミの漁業・生物学に関する面白い話が紹介されている.

南極のクジラ資源の回復へのオキアミ漁獲の効果を推定することは保全問題のひとつであ

る.

8. リスク回避型管理戦略

過去の資源管理の失敗により,リスクを最小にする管理戦略の探索が始められた.

2 つのアプローチ:

① 単純な MSY 戦略ではない漁獲戦略の開発

個体群変動のもとで長期的に漁獲量を最大化する管理戦略.

長期的な漁獲量の最大化と同時に資源崩壊や絶滅の危険を最小化する.

代表的な管理戦略(Box 17.1)

・ Constant quota

・ Constant harvest rate

・ Constant escapement

理論的には(シミュレーション研究?).Constant escapement が漁獲量を最大化する戦略と

なることが知られている.しかし,漁獲の年変動がまた最大化されるので,年変動を抑え

る観点から理論的最大漁獲量より少ない漁獲が最適となるはずである.あるタイプの漁業

(ハマグリやアワビなど)では,毎年少ない漁獲量よりも数年ごとに大きな漁獲量が得ら

れることが望ましい場合もある.漁業に応じて,漁業者や業界との十分な話し合いの上,

漁獲方策を決定するのが望ましい.

閾値を設ける戦略は,閾値があまりにも低く設定されて役に立たない,閾値を正確に判

定することが難しいという問題がある.また,閾値の設定は,その閾値を越えるとそこで

漁業が停止となり,経済的な損失が大きい.Hilborn and Walters(1992)はその点から閾値

管理よりも漁獲率一定方策を好ましいとしている.

③ Marine Protected Area

漁獲をしない海域を設定する.これは陸上の自然公園と似ており,海底の大きな領域を利

用して回遊しない底魚資源に対して効果的と考えられる.たとえば,漁獲があっても現行

~20 年後の資源量が環境収容力の 60%以上となるように“no-take”領域を設定することに

なる.“no-take”の外側では一定の漁獲率で漁獲を行う.この戦略が漁業者の支持を得るた

めに詳細な Cost-Benefit 分析が必要となる.

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・ Essay 17.1 資源管理を有効にしうる原理

Ludwig, Hilborn and Walters (1993)

良い資源管理のための 5 つの原則

① 人間の行動を管理の中で考慮すべし

② 科学的な同意が達成されるまで待つな

③ 科学は問題の認識のためのもので,社会的・政治的観点がまた重要である

④ MSY を疑え

⑤ 自然資源は変動が大きい,不確実性を意識しろ

科学的・技術的進展が管理問題を解決すると考えるべきではない.管理は科学だけの問題

ではなく,人間社会・政治の問題であることを十分意識しなければならない.

9. まとめ

・ 漁獲は資源を減少させる.減少した資源は補償的に成長,再生産を増加させ,自然死亡

を減少させる(密度効果).

・ MSY の概念.通常平衡状態が仮定されており,環境条件の大きな変化等により MSY に

基づく管理は失敗する.

・ 不確実性,環境変動の大きさは MSY より保守的な管理戦略(リスク回避型戦略)に向

かう.

・ 不確実性とともに政治的な圧力が地球規模の乱獲をもたらしている.

・ Marine Protected Area

昨日の資源はうまく管理できるが,同様に明日の資源もうまく管理できる日はいつ来るの

であろうか…?

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付録:ダイナミック・プールモデルの図を描くための R コード

YPR <- function(F = 0.3, tc = 5, WInf = 3000, K = 0.1, t0 = -0.18, tl = 15, M = 0.1, tr = 3.7,

graph.type = 1){

# YPR

YPR <- function(x, y){

A <- c(1,-3,3,-1)

n <- 0:3

x*exp(-M*(y-tr))*WInf*(A[1]*exp(-n[1]*K*(y-t0))*(1-exp(-(x+M+n[1]*K)*(tl-y)))/(x+M+n[1]*K)

+ A[2]*exp(-n[2]*K*(y-t0))*(1-exp(-(x+M+n[2]*K)*(tl-y)))/(x+M+n[2]*K)+

A[3]*exp(-n[3]*K*(y-t0))*(1-exp(-(x+M+n[3]*K)*(tl-y)))/(x+M+n[3]*K)+

A[4]*exp(-n[4]*K*(y-t0))*(1-exp(-(x+M+n[4]*K)*(tl-y)))/(x+M+n[4]*K))

}

# YPR vs. F plot

if (graph.type == 1) {

YPR.F <- function(x) YPR(x, y=tc)

F.x <- 0:150/100

plot(F.x,YPR.F(F.x),type="l",xlab="F",ylab="YPR")

text(0.7,150,paste("tc =",tc))

}

# YPR vs. tc plot

if (graph.type == 2) {

YPR.tc <- function(y) YPR(x=F, y)

tc.x <- 4:15

plot(tc.x,YPR.tc(tc.x),type="l",xlab="tc",ylab="YPR")

text(10,150,paste("F =",F))

}

# YPR contour

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if (graph.type == 3){

F.x <- 0:150/100

tc.y <- 4:15

YPR.F.tc <- outer(F.x, tc.y, FUN="YPR")

print(YPR.F.tc)

contour(F.x, tc.y, YPR.F.tc,xlab="F",ylab="tc")

}

}