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量子物性特論(第8回目) 11/26
室温超伝導を実現するには?
outline • 超伝(電)導が夢を抱かせる社会情勢の認識(10/8)
• 超伝導発見の歴史(10/2)
• 超伝導の未来(エネルギー問題, 世界的ナットワーク構築<電力, 物流>, 医療, デバイス)(10/8)
• 超伝導のしくみ(基本概念)(10/22)
• 実用化段階の超伝導体
(酸化物高温超伝導体(10/29, 11/5), MgB2 (11/12))
• FET超伝導?(疑惑と最新研究)(11/19)
• 室温超伝導探索
有機超伝導体(11/26), 酸化物高温超伝導体(11/26), フラーレン系(12/3),グラファイト系, B-CNT (12/10), C(diamond) (12/10), Si系(12/10), Co系, Fe系超伝導(1/7), ピセン(C22H14) (1/21),高圧力印加(12/21),
期末試験(1/28) 最近の超伝導物質群までを講義の範疇に含め、物質科学的側面から
超伝導を勉強しなおしてみる!
室温超伝導への道
銅酸化物超伝導体編
今日のテーマ ・超伝導発現のメカニズムについては既に概略を学んだので、その範疇でいかにTcを上げるかを考えてみる。 ・同様な超伝導発現の現象を示す物質群を振り返ることで、超伝導の(物理的)本質について想いを巡らす。
「パウリの排他律」とは、
二個の粒子が同一の量子力学的状態を取る事ができない、というもので、
粒子間に相互作用がなくとも働く純粋な量子力学的効果である。
量子力学では、
拘束条件のきつい電子の運動は、エネルギーが上がる。
hopingが入ることで、t2/Uの割合で、エネルギー利得を得る。
H = Σtij ci,†
scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s i
hoping クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。
スピンによらない。
ハバード・モデル
前川禎通 「高温超伝導の物理」 応用物理75(2006)17
+
+
-
-
銅酸化物高温超伝導体のペアリング
d波:角運動量2→一方の電子が中心にあるとき、相棒の電子はその周りをぐるぐる回っている。2個の電子が互いに距離を置いてクーパー対を作る(強い斥力を避けるため)。
s波:一方の電子を中心においたとき角運動量ゼロ→相手の電子が中心の電子に向かって直線的に往来する。
一般に、超伝導相は反強磁性相に隣接している。
どんな領域で超伝導は出現しているのか?
*絶縁性の起源は反強磁性秩序ではなく、電子間斥力。
「パウリの排他律」とは、
二個の粒子が同一の量子力学的状態を取る事ができない、
というもので、粒子間に相互作用がなくとも働く
純粋な量子力学的効果である。
量子力学では、
拘束条件のきつい電子の運動は、エネルギーが上がる。
hopingが入ることで、t2/Uの割合で、エネルギー利得を得る。
H = Σtij ci,†
scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s i
hoping クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。
スピンによらない。
「電子が格子上を跳び回るが、同じ格子点上に来れば
斥力を受ける。」
cf.
BCSタイプは、電子系は格子系の格子振動を交換して
相互作用した。
強いて描けば
電荷と「スピン」を分けて考えてみよう!
ファインマンダイアグラム (相互作用する粒子系)
BCS超伝導とモット絶縁体ベースの超伝導の違い
なぜ、銅酸化物なのか?
条件 ハバード模型を実現していて、
U/tが小さすぎず大きすぎず10の程度
この二つの条件を満たすものは、
今のところ銅酸化物しかない。
電子のもつエネルギーt ~ 1eV (104K)
電子機構のTc 104 K → 102 K
フォノン機構のTc 102 K → 101 K
スピン揺らぎを大きくするのは難しい。大きくしすぎると反強磁性相に近づく。
H = Σtij ci,†
scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s i
hoping クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。
スピンによらない。
Tc を上げるには?
1 U/tを最適にする。 Ans. 正方格子 5~10
2 銅酸化物以外には? Ans. 銅酸化物がベストだろう。(Ti, V, Co)
3 他の格子系は? Ans. 層状構造が必要であろう。
層状構造は、電荷供給層と伝導層が共存できる。
+α
ビスマス系超伝導体の結晶構造
結晶構造の異方性(2次元性)
CuO2面内に
超伝導状態の電子が集中している。
→臨界電流特性に異方性有り
前川禎通 「高温超伝導の物理」 応用物理75(2006)17
D>50meV not SC
D<50meV SC
50meVは2nm相当の超伝導コヒーレンス長(SCの島の大きさ)に相当する。
温度スケールに換算すると300Kとなる。
→もし, 50meV程度の大きさを持っている部
分をマクロスケールで実現できれば、室温超伝導体を実現したことになる。
超伝導コヒーレンス長 x = hvF/pD
D = 2kBTc
超伝導コヒーレンス長 x :クーパー対の波動関数の拡がり(クーパー対の半径)
BCS-type SC x = 10 – 100 nm
結果、多数のクーパー対が重なり合っている。 つまり、クーパー対の波動関数が重なり合っているからこそ クーパー対の位相が揃う。 1つのクーパー対の拡がりには、およそ1万個から10万個の クーパー対が重なっている。
cuprate-type SC x = 2 nm
1つのクーパー対の拡がりには、数個から10個程度の クーパー対しかなく、重なり合うというよりお互いに孤立して いる感あり。
前のスライドを要約すると
~謎~ 不純物・欠陥を数多く含み、原子間に隙間の多く、局所的に結晶変形が起こりやすい系で、d波超伝導の安定性と高いTcの保持はいかにして実現できているのか?
island 間距離 5-10 nm
通常、バルクのSCを示さないレベル でも、電気抵抗ゼロ、マイスナー効果を示す。 つまりisland間距離がコヒーレンス長よりはる かに長くても、SCの位相情報は十分長距離まで 運べることを示している!
有機超伝導
「分子」とは、種々の機能の集積が可能な究極のナノ構造体である。 小林速男先生 日本物理学会誌2001年3月号
フタロシアニン
有機色素と金属(M)の化合物
青・緑色の顔料(新幹線の青が有名)やコピー機用の静電気発生体、大容量光ディスク(CD-R)用色素として既に実用化されていて、生活に大変密着した物質。さらに癌のレーザー治療、非線型光学材料(光通信等に用いられる)等、さまざまな分野での応用が期待されているスーパーマン的な化合物。
有機化合物の一例
年代 有機超伝導体(分子性超伝導体) 有機金属 超伝導全般
1911 超伝導の発見
1933 Meissner効果の発見
1935 Londonの理論
1950 生体物質での超伝導の可能性を指摘 (London) Ginzburg-Landau理論
1954 ぺリレン・Brでの金属伝導の発見
1957 (1955 Peierls Peierls不安定性) BCS理論, Abriksov理論
1962 Josephson理論
1964 Little モデルの提案, Ginzburgモデルの提案
1973 TTF・TCNQでの巨大電気伝導率の発見
1975 ポリチアジル(SN)xでの<無機高分子>超伝導の発見
1976 TTF・TCNQでのPeierls超格子の発見
TTF・TCNQでのCDW伝導の確認
1977 ポリアセチレンを初めとする高分子金属の出現
1980 圧力下(TMTSF)2PF6での超伝導発見 [Tc = 0.9 K, P = 1.2 GPa] TMTSF塩での金属伝導の発見
1981 常圧(TMTSF)2ClO4での超伝導発見 [Tc = 1.4 K]
1982 TMTSF塩でのSDW発見 重い電子系での超伝導発見
1983 圧力下(BEDT-TTF)2ReO4での超伝導発見[Tc = 2 K, P = 0.4 GPa]
1984 (BEDT-TTF)2I3での超伝導発見[Tc = 1.4 K] 磁場誘起SDWの理論
1985 圧力下(BEDT-TTF)2I3で(急冷で)8Kの超伝導発見
1986 DCNQI塩での金属伝導の発見 銅酸化物高温超伝導体の発見
1987 Dmit塩での超伝導の発見
1988 DMET塩での超伝導発見, MDT-TTF塩での超伝導発見,
(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2で10.4Kの超伝導発見
1990 (BEDT-TTF)2Cu(N(CN)2)Clで13.2Kの超伝導発見
1991 アルカリ金属ドープC60での超伝導発見
2001 磁場誘起超伝導(磁性分子伝導系) (2002)単一分子性金属 (2001) MgB2
第一世代
第二世代
「2D性顕著」
「1D性顕著」
0.28K
max.33K
分子性超伝導体
Tc = 0.28 K at P = 0
Max, 0.54 K
TMTSFとBEDT-TTFの合成分子
有機超伝導の発端となった「エキシトンモデル」とは、
1964 Littleはフォノンに代えて励起子を介した
電子対形成による高温超電導体の可能性について
言及。
問題点
1. 一次元系での揺らぎの効果を過小評価
有限温度ではLROが生じにくい。
現実: LROなしでSCは起こらない。
2.低次元不安定性(パイエルス転移)による
金属-絶縁体転移が起こり易い
3.高分子中の電子間斥力を過小評価
現実物質は今日に至っても実現されていない。
Little自身の詳細な解析に寄れば、電子-エキシトン結合によって引力が生じるためには、電子は側鎖分子から 十分に離れていなければならない。 なぜならば、側鎖分子のそばの電子とエキシトンが結合すると、エキシトン形成に必要なクーロン引力そのものが 遮蔽されてしまうから。しかし、電子が離れていれば当然結合は弱い
Littleの励起子機構
格子振動の代わりに
電気分極による
電子間引力を媒介とする
e-
d+ d-
金属鎖 分極率の大きな有機分子側鎖
金属鎖上の電子は
クーロン相互作用によって
側鎖分子を分極させ、
この分極をもう一つの電子が
感じ、実効的な引力を与える。
電子とホールの生成と
見なすことができる
→励起子(エキシトン)
エキシトンを介するエネルギー~数eV cf フォノンSCはデバイエネルギー程度の エネルギーカットオフがある。 →室温超伝導の期待
*Ginzburgは二次元電子系を誘電体の層にはり合わせた層状構造において エキシトン媒介の超伝導の可能性を議論した。
分子性結晶―有機分子で金属を!
(TMTSF)2PF6
Se
Se
Se
Se
CH 3
CH 3
H 3 C
H 3 C
PF6 -
TMTSF 提供:加藤礼三氏
妹尾仁嗣氏
最初の有機超伝導体
福山先生PPT
tetra-methyl-tetra-selena-fulvalene
ベチガード塩 DX2
平面ドナー分子(D) : 無機アニオン(X-) = 2 : 1
HOMOバンド
DのHOMOが分子間で
重なり合って伝導バンドを形成 DX2 DX2 DX2 DX2
二つのD分子あたり一つの電子がHOMOバンドから
Xに引き抜かれる。
バンド内にキャリア(ホール)が発生し、金属状態となる。
DX2
DX2
DX2
DX2
有機伝導系における電気伝導の機構
HOMO
SOMO
LUMO
LUMO: lowest unoccupied molecular orbital
SOMO: single occupied molecular orbital
HOMO: highest occupied molecular orbital
キャリアを供給するドーパントは伝導部と空間的に離れたところに存在していて、
キャリアの供給と運動が空間的に分離されている