AI-OCRとRPAを組み合わせた業務改善実施報告書 - TamaAI-OCR 項目名と相対位置からAIで欲しい文字データをデータ化（項目認識AI) 手書き

AI-OCRとRPAを組み合わせた業務改善実施報告書

令和元年7月31日

1

多摩市企画政策部行政管理課UiPath株式会社株式会社インテック

Copyright City of TAMA , 2019 UiPath Inc , INTEC Inc. All right reserved.

目次

１.実証実験までの経緯２.実証実験の概要３.実証実験の結果４.実験結果の分析及び考察５.全体総括

Copyright City of TAMA , 2019 UiPath Inc , INTEC Inc. All right reserved.2

１.実証実験までの経緯

職員を定型的な業務から解放し重点分野に業務シフト

【多摩市の課題】・少子・高齢化社会の進展による社会保障費の増大・多様化する市民ニーズへの対応や老朽化施設の更新問題・これら喫緊の課題に対応するための人材確保

【更なる改革の必要性】・総務省の「革新的ビッグデータ処理技術導入推進事業」により、AI-OCR、RPAの活用可能性を検証・定型的な業務を職員からロボットへ

【本検証の目的】申請が一時的に集中し、短時間での入力処理等を要する職員負荷が大きい業務を中心にAI-OCR、RPAの導入可能性を探る

【将来的な展望】業務の自動化の拡大

職員が定型的な入力業務から解放

その分の労力を喫緊の課題への重点的な対応といった真に職員が行うべき業務に注力することが可能に

背景目的


２.実証実験の概要

実証実験の概要は以下のとおりです。


項目内容

作業期間 2019年3月1日～2019年7月31日

参加団体多摩市、株式会社インテック、UiPath株式会社

対象業務１．法人住民税法人設立届出書入力業務２．児童手当所得異動入力業務３．保育園入所申請書入力業務

特徴・RPAの機能検証（操作のしやすさ・AI-OCRとの連携）・項目認識AI技術を用いたOCR技術の検証（準定型様式）

※インテック独自開発の技術・OCR技術の検証（定型様式）


【定型様式】

【準定型】

【非定型様式】

レター等

No. 対象業務技術要素ツール

1 法人設立届出書入力業務 AI-OCRとRPAとの連携

・活字－準定型様式の項目認識精度 ※１・EXCELデータの基幹システムへの登録作業の自動化

RPAAI/テキスト解析エンジンOCRソフト

２児童手当所得異動入力業務 eL-TAXデータ（CSV）の所得情報の基幹系システムへの自動登録

RPA

３保育園入所申請書入力業務 OCRとRPAとの連携

・手書ー定型様式の文字認識 ※２・EXCELデータの基幹システムへの登録作業の自動化

RPAOCRソフト

実証実験の３業務の特性は以下のとおりです。

定型様式準定型様式非定型様式

活字既存OCRソフトで対応可 AI-OCR項目名と相対位置からAIで欲しい文字データをデータ化（項目認識AI)

AI-OCR項目名と相対位置からAIで欲しい文字データをデータ化（項目認識AI)

手書き OCR既存OCRソフトを利用（読取精度が低く、まだ実

用化至らず）（読取精度が低く、まだ実用

化に至らず）

OCR対応を整理したマトリックス表

※１

※２



・人間の数倍～数十倍の処理速度・大量の処理を正確に、休みなく実行・既存システム間の「橋渡し」を簡易に自動化例）メール受信

→添付ファイルのフォルダ格納（メールソフト→ファイル管理システム）→ファイル内容の一括転記（エクセル→勤怠管理システム）

エクセルの「マクロ」と似ていますが、ブラウザや各種アプリケーションなど、多様なシステムを自動化できます。

コンピュータ上で人間が行う操作を自動化するソフトウェアです。

いわゆる物理的な実態のある「ロボット」ではありません。

AI（人工知能）とは違い、自分で学習はしません。（人間が処理手順を教える必要があります。）

RPA

RPAとは何か



RPAの得意領域

これらの機能を組み合わせた高度な自動化によりルーティン作業の生産性を飛躍的に向上させる

• データの複数システムへの自動入力／自動出力

入力／抽出

•複数システム間でのデータ照合

照合

•インターネット／データベース／フォルダの高度な検索

検索

•スプレッドシート（EXCEL、CSVファイル等の作業）

作業

•メールの自動発信

配信

•メール添付資料のシステムへの自動格納

格納

•報告用資料の自動作成

資料

•AI用の教師データの自動作成

データ



項目認識AI-OCRとは何か

AI-OCR

準定型様式の帳票の印字を読み取り、指定の項目と値を、AIを用いて紐づけしデジタル化する技術。定型様式のOCR技術は既に普及段階にあるが、この項目認識AIを用いて準定型様式にも対応することで応用範囲が格段に広がり、単なるOCRとRPAの適用に比べ、より大きく業務効率化の成果を出すことができる。項目認識AIはインテックで研究開発の項目選定に関する独自エンジンであり、印刷文字・不定形書式文書の読み取りができる。

〇〇申請書

氏名 ■■■生年月日 ●金額 ▲▲▲期限 XXXXX

〇〇申請書

金額 ▲▲▲期限 XXXXX氏名 ■■■生年月日 ●

項目の並びが違う

〇〇申請書

合計額 ▲▲なまえ ■■■生年月日 ●締切 XXXXX

項目名が違う



実証実験のスケジュール


内容担当2019年3月

2019年4月

2019年5月

2019年6月

2019年7月

キックオフ多摩市、UiPath

インテック

業務選定（評価項目、目標値設定）

多摩市、UiPathインテック

現状調査（業務フロー作成、現行工数測定）

多摩市、インテック

RPA稼働端末準備多摩市、UiPath

RPAシナリオ設計インテック

RPAシナリオ開発（現地）インテック

効果検証効果検証報告書作成

多摩市、UiPathインテック

課題・今後の方針検討多摩市、UiPath

インテック

RPA環境アンインストールインテック

最終報告（納品物）多摩市、UiPath

インテック

３.実証実験の結果

法人設立届出書関連業務－概要－


対象業務業務内容年間件数技術要素ツール

1 法人設立届出書入力業務

法人設立届出書をAI-OCRでデータ化し、RPAで必要項目をシステムに自動入力

150件 AI-OCRとRPAとの連携・活字－準定型様式の項目認識精度・EXCELデータの基幹システムへの登録作業の自動化

RPAAI/テキスト解析エンジンOCRソフト


0

5

10

15

20

25

1 2

単位

：分

１件あたりの処理時間

0

2

4

6

8

10

12

1 2

150件/年間の処理時間（想定）

法人設立届出書入力業務－定量評価－

■シール貼り■スキャン■ファイル移動■OCR処理■ファイル移動■チェック■入力作業

1件あたりの時間では、AI-OCR処理やCD-ROMによるデータファイルの書き込み・移動・読み込みのハンドリング作業が増えたため増となっている。年間の処理件数（想定）では、ハンドリング作業は件数に影響せず、職員の入力作業を自動化できたことによる工数削減効果が顕著に表れた。またRPAによってチェック作業やエラー作業が省力化できたことも工数削減に寄与した。


年間約1.56時間削減単位

：時

間


児童手当所得異動入力業務－概要－



２児童手当所得異動入力業務

照会した個人情報を別システムへ入力

1,320件 eLTAXデータ（CSV）の所得情報の基幹系システムへの自動登録

RPA

従来

変更

職員作業

職員作業 RPA

中間サーバからダウンロードしたファイル

中間サーバからダウンロードしたファイル

CDでファイル移動

業務システムへ入力

業務システムへはRPAで自動入力


0

2

4

6

8

10

12

14

1 2

単位

：分


0

20

40

60

80

100

120

140

1 2

1,320件/年間の処理時間（想定）

児童手当所得異動入力業務－定量評価－

■団体統合宛名番号取得■情報照会■ファイル移動■税情報入力■入力情報チェック

1件あたりの時間では、CD-ROMによるデータファイルの書き込み・移動・読み込みのハンドリング作業が増えたため増となっている。年間の処理件数（想定）では、ハンドリング作業は件数に影響せず、職員の入力作業を自動化できたことによる工数削減効果が顕著に表れた。またRPAによってチェック作業やエラー作業が省力化できたことも工数削減に寄与した。


年間約22.52時間削減単

位：

時間


保育園入所申請書入力関連業務－概要－



３保育園入所申請書入力業務

保育園入所申請に関する情報をシステムへ入力

1,240件 OCRとRPAとの連携・手書ー定型様式の文字認識・EXCELデータの基幹システムへの登録作業の自動化

RPAOCRソフト

従来

変更

職員作業

職員作業 OCR 職員作業

入所申請書チェック

指数確認

指数システム登録

選考調整会議

調整結果システム登録


OCR

OCRでデータ化し、中間ファイル作成指数確認

職員作業 RPA


選考調整会議

選考結果システム登録

RPA


0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

1 2

単位

：分


0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1 2

1,240件/年間の処理時間（想定）

保育園入所申請書入力関連業務－定量評価－

■スキャン・OCR処理■中間ファイル■指数設定■ファイル移動■入力作業（指数）■チェック修正■入力作業（選考結果）

保育の場合は、業務システムへのデータ入力項目数が多く、他の業務と比べ、1件あたりの作業時間が多く、RPA導入後は入力作業が大きく削減されたため、1件あたりの処理時間も削減できた。また、今後一つのPCで業務システム及びRPAが組み合わさった場合、ネック部分であるファイル移動が無くなりさらなる時間削減が見込まれる。


年間約237.13時間削減（約29人日）

単位

：時

間

４.実験結果の分析及び考察

検証を実施した業務の工数削減サマリー

工程

削減できない作業削減できた作業増えた作業(AI-OCR,RPA要因)

増えた作業(多摩市環境要因)

1 帳票（データ）点検－－－

2 宛名（事業所）特定－－－

3 －－帳票前捌き－

4 －－シール貼り－

5 －－帳票スキャン－

6 －－ AI-OCR処理－

7 －－－ファイル移動

8 －－中間ファイル作成－

9 －データ入力－－

10 －エラー対応－－

11 処理結果確認－－－


AI-OCR、RPAを導入することは、作業がなくなるばかりの話ではなく、削減できない作業、逆に増える作業があります。それを以下の表にまとめました。件数が少ない場合は十分な工数削減効果がでないため、業務設定を慎重に行う必要がある。


各技術要素の評価－項目認識AI－


工程認識誤りの原因例対策

1 項目名のばらつき「代表者名」「代表者氏名」項目名の初期設定値に、新しいパターンを追加することで、次回より正しく認識

2 出現位置のばらつき「項目の上部」検出範囲の設定値を調整することで、次回より正しく認識

3 途中で改行が入る資本金又は出資金の額

改行前までの項目で設定する等で調整

4 項目名が縦書きになっている

氏名

認識不可

文字認識率は、平均91.5％となった。帳票の中には職員のレ点チェックが書かれているものもあったので、それがなければさらに文字認識率は改善する見込みである。

スケール/解像度認識率ファイルサイズ総合評価

モノクロ/200dpi × ◎ ×

モノクロ/300dpi × 〇 ×

モノクロ/400dpi × △ ×

グレースケール/200dpi △ ◎ △

グレースケール/300dpi ◎ 〇 ◎

グレースケール/400dpi 〇 △ 〇

一番数値が高かった設定は、グレースケールの300dpiである。


各技術要素の評価－RPAツール UiPath－

・多摩市特有のマルチベンダー環境でも対応できた。・RPAツール（UiPath)の各技術要素の評価でも、問題はなかった。


拡張性

●

開発保守

生産性

● ●

● ●

●

● ●

管理統制

●

関係する観点

サポート

●

コンピュータビジョン MS Office製品やブラウザだけでなく、Java等で開発されたア

プリケーション、汎用機エミュレータ等のUIを認識可能 Citrix等イメージ型インターフェースでも容易に開発可能

ユーザーフレンドリーなロボット開発

高度なレコーディング機能 GUIを用い容易にワークフローを開発・メンテ可能あらかじめ300種類以上のアクティビティを準備

機能の柔軟な拡張性

IBM Watson、Google Cloud Machine Learning等の代表的なAIやOCR等とweb APIを用い容易に連携可能

アクティビティのカスタマイズ開発が可能

Orchestrator（管理コンソール）

大規模なロボットの稼働を管理ワークフローのバージョン・ステータスを管理ユーザー・セキュリティをきめ細やかに管理

充実した日本語サポート

日本語版ドキュメントの提供日本語による無償・有償のトレーニングを提供日本語によるカスタマーサポートを実施

特長

１

２

３

４

５

評価結果

対象となる多摩市の業務システムのUIを適切に認識し、正確かつ安定的に稼働

レコーディング機能等の利用により、シナリオの開発難易度が低下、保守が容易化

項目認識AI-OCR、OCRとの柔軟な連携を確認

今回未評価であるが、今後の全庁展開に向けて必要になると思料

日本語ドキュメント、カスタマーサポートの活用による支援を確認

これから


各技術要素の評価－多摩市システム環境－

実証実験は、多摩市役所内の基幹業務システムが稼働する環境で実施した。自治体の業務システムが稼働する環境は、総務省が示す「自治体システム強靭化モデル」の三層（住基ネット系、LGWAN系、インターネット系）に分離されており、このセキュリティ確保に向けた対策が、実証実験を行う上でネックとなる場面があった。


既存住基

税社会保障

人事給与

庶務事務

財務会計

インターネット

メール

住基ネット

個人番号利用事務系

LGWAN

LGWAN接続系

インターネット

インターネット接続系

中間サーバ

媒体渡しでないとダメ

オンラインアクティベーションはできない


各技術要素の評価－多摩市システム環境－

AI-OCRツールやRPAツールでは、オンラインアクティベーションや機能アップのためにアップデートを行う機能がある。この場合も、インターネット接続環境にないために、媒体等を利用してオフラインで行う必要がある。AI-OCRツールやRPAツールはまだまだ発展の途上であり頻繁にアップデートにより機能アップしていくことから、アップデートのやり方や頻度については、本格導入時にはルールづけしておく必要がある。今回検証を行ったUiPathは、オフラインアップデートの機能があったため、利用できた。

中間サーバから取り込んだ連携データ（EXCELファイル）やスキャナーで取り込んだPDFファイル、AI-OCRで生成したEXCELファイル等は、それぞれのセキュリティ区画にあるため、その間でファイルを移動させるためには、都度、媒体に書き込んでやる作業が必要となった。これは、従来のなかった作業であり新しく増えた作業となることから、作業工数削減とは逆行するものとなった。

本格展開を行うと想定し、RPA管理ツールを導入し、夜間バッチを実行する場合は、PCの夜間保管や顔認証がネックとなるため、新たなルールの見直しが必要である。


AI-OCRツールやRPAツールのアクティベーションやアップデート

OCR取り込み後のデータの移動

PCの個人認証やPC保管

５.全体総括

実証実験の総合評価

業務名称活用技術現状工数

➡ 削減工数

増加工数

改善後工数

増減削減率

①法人設立届出書入力業務

RPA,AI-OCR

11.25 ➡ 6.39 4.83 9.69 ▲1.56 14％

②児童手当所得異動入力業務

RPA 132.00 ➡ 23.92 1.40 109.48 ▲22.52 17%

③保育園入所申請書入力業務

RPA,OCR 382.33 ➡ 242.05 4.92 145.20 ▲237.13 62％

525.58 264.37 ▲261.21 50%

AI-OCR、RPA導入により年間合計261.21時間削減（50%削減）が見込まれる。


単位：時間

■件数が少ない場合は工数が増える例もあるものの、処理件数の増加に伴い全体としては工数削減に向かう見込である。ファイル移動の時間が改善されれば、さらに時間削減につながる。

■RPAツール（UiPath）については以下を確認できた。

① AI、OCR機能との柔軟な連携性②正確かつ安定した動作③シナリオ作成の容易性、保守のし易さ

■項目認識AIについては以下を確認できた。

①現行の様式のバラツキでも、許容範囲内②RPAとの組み合わせで自動化が可能③初期設定の調整は容易に可能

工数削減

AI-OCR RPAツール

0

100

200

300

400

500

600

前後

保育

児童手当

法人

５.全体総括

今回の実証実験の結果、RPAを導入することによって、当初目的である「業務の効率化」や「正確性の向上」、「時間外勤務の削減」等の効果は十分に出せることが確認できた。また、保育所入所申請関連業務では、保育所入所申請書様式そのものの見直しから始まり、業務フロー全体の見直しまで踏み込んで評価を行った。単に現行業務をそのまま自動化するのではなくRPAやAI-OCRの特性に合わせた改善を進めることでBPR（Business Process Re-engineering）によって業務効率化につながることが確認できた。


従来

変更

職員作業

職員作業 OCR 職員作業


指数確認指数システム登録

選考調整会議

調整結果システム登録


OCR

OCRでデータ化し、中間ファイル作成

指数確認

職員作業 RPA


選考調整会議

選考結果システム登録

RPA

様式変更手順変更

保育AIを導入するとさらに効率的に

５.全体総括

さらに付加価値として１）単純作業をRPAに代替させることにより、職員を付加価値業務に回すことができる。２）お昼や定時後もRPAに作業を行わせることができ、業務時間外も活用できる。３）繰り返しの単純作業から解放され職員のストレスが軽減できる。４）人の手を介さないので、コンプライアンスが強化できる。５）人の異動に比べ、柔軟な要員調整が可能となる。

等が見込まれることから、早期に全庁展開を行い、成果を具体的に結実させていくことが必要である。


お問い合わせ多摩市企画政策部行政管理課公民連携係

電話番号：０４２－３３８－６９４１

ファクシミリ番号：０４２－３３７－７６５８

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