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56 Ⅲ.堆肥の製造手法 1.まえがき ··································································· 57 2.堆肥の基本 ································································· 60 3.堆肥の原材料 ······························································ 63 4.施設の計画 ································································· 68 5.施設の設計 ································································· 89 6.施設の運転管理 ························································ 110 7.堆肥の品質管理 ························································ 131

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Ⅲ.堆肥の製造手法

1.まえがき ···································································57 2.堆肥の基本 ·································································60 3.堆肥の原材料 ······························································ 63 4.施設の計画 ·································································68 5.施設の設計 ·································································89 6.施設の運転管理 ························································ 110 7.堆肥の品質管理 ························································ 131

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1.まえがき

1)南房総市における堆肥の製造状況

南房総市は日本酪農の発祥の地であり、現在でも畜産業が農業算出額の25%を占めて

いる状況である。 平成20年時点で、家畜排せつ物発生量108,800t/年の内訳は乳牛77%、肉

牛 20%、採卵鶏3%である。畜産農家が215戸あり、家畜排せつ物の処理施設として堆肥舎71ヶ所、発酵舎16ヶ所、密閉型堆肥設備2ヶ所、乾燥舎33ヶ所、液肥化施設4

ヶ所が整備され、利用組合組織による堆肥化・液肥化の取組み体制がある。

堆肥舎 堆肥舎

機械攪拌式(回行式) 乾燥舎・機械攪拌式

施設整備後、年数を経ているものも多く、機械の未修理等で稼動されていない施設も散

見されるが、その主因としては労働力不足・高齢化等の要因もあるが、堆肥の流通が促進

できないことも一因である。

堆肥の品質については、基本通りの工程を経れば良いものが出来ることは周知されてい

るが、堆肥製造施設周辺住民からの臭気に関する抗議を恐れ、十分に熟成しないまま農地

に移送しているケースも見受けられる。

また、なばな等では腐熟度が低い状態でも利用可能である場合もあり、堆肥製造にあま

り手を掛けず、未熟のまま施用しているケースもある。

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密閉型堆肥 堆肥舎

南房総市では堆肥化施設は完成しているが、その運転・維持管理に苦心されている施設

も見受けられる。

堆肥製造におけるポイント及び堆肥化施設の運転管理のポイントを次項以下に述べる。

2)堆肥製造におけるポイント

①微生物はたくさんいるか?

⇒家畜ふん、戻し堆肥で十分

②水分は適当か?

⇒通気性が良くなるように、副資材・戻し堆肥を利用

⇒手で握り締めて水がしみ出ない程度が良い

③空気は十分に送られているか?

⇒通気装置が無い場合は、1m以上積まない

⇒堆肥舎の場合は3回/月の切り返し

④温度は上がっているか?

⇒上記3条件が整えば60~70℃に達する

⇒温度が上がり、病原菌、寄生虫の卵、雑草の種子が死滅

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3)堆肥化装置の運転管理のポイント

①堆肥化施設が目的通り堆肥の生産に活かされていること

⇒モニタリング(温度・臭気・物性など)を定期的に実施すること。

⇒家畜ふんや生ごみなどは65℃を超えるような温度上昇が堆積後

数日の間に起こる。

②公害をもたらさないこと

⇒順調に堆肥化が進んでいれば、悪臭・ハエ・カラスの飛来等の公害は

生じにくい。

⇒経費節減目的で堆肥化処理(攪拌機・扇風機・エアレーション等)

を怠ると削減した経費以上に改善のための支出が必要となる場合

もある。

③腐食しやすい環境への対策

⇒堆肥化とともに堆肥材料から腐食性に富んだ水蒸気があがるため

に、装置への対策が不可欠となる。対策としては換気や結露水の始

末が必要で、装置や建物の材料を選ぶことも大切である。また、清

潔・整理・整頓の心がけと給油・注油等のメンテナンスも欠かさない

ことも重要である。

⇒製品保管場所の制約があっても、正しい管理が出来るように、製品

の販売促進のための方策(季節価格など)を講じることが必要であ

る。

家畜排せつ物を主原料として堆肥を製造する手法を次項以下に述べる。

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2.堆肥の基本 1)堆肥の定義 ・堆肥とは、家畜排せつ物、生ごみ、食品工業残さ、その他の有機物を、制御された方

法で堆積又は攪拌し、腐熟した有機質資材であり、腐熟の過程で発生する熱により微

生物学的に安定化し、植物の生育並びに土壌の改良に有効で、取扱いが容易となるよ

うに加工されたものをいう。 【解説】 平成 12 年の肥料取締法の改正により、堆肥の定義は「わら、もみがら、樹皮、動物の

排せつ物その他の動植物質の有機質物(汚泥及び魚介類の臓器を除く)をたい積又は撹拌

し、腐熟させたものをいう」となり、それまで特殊肥料で流通していた、下水汚泥堆肥等

の汚泥を原料とするものは普通肥料となり、特殊肥料である堆肥とは区別されることにな

った。汚泥堆肥は改正された肥料取締法上は普通肥料(汚泥発酵肥料)で、特殊肥料の堆

肥の定義からすれば堆肥とはいえないが、処理のプロセスからすれば堆肥の範疇に入る。 2)堆肥化の原理 ・堆肥化とは、有機物を堆積し、攪拌、通気して好気性状態とし、原料中の有機物が微生

物により分解され、この分解により発生する熱により、水分は蒸発し、病原菌や寄生虫

卵や雑草種子等が死滅あるいは不活性化して、安全で衛生的、かつ安定化したものとす

ることである。 ・有機物の分解の過程は、易分解性有機物が主として分解する一次発酵と、可分解性有機

物の分解と腐植化が進行する二次発酵に分かれる。なお、特に需要がある場合は、二次

発酵後も長期にわたって熟成処理することがある。 【解説】 有機性廃棄物等を堆肥化する目的は、第一には、堆肥化により廃棄物の減量と資源化利

用が期待でき、廃棄物による環境負荷を軽減することであり、第二には、農業生産の基盤

づくりに寄与することである。堆肥は土壌を改良し、また植物に必要な栄養分を供給する

ことは従来から明らかなところである。 堆肥化のプロセスは、この目的のうち、農業生産に有効な農業用資材の生産に適したも

のでなければならず、それが適切であることにより環境保全への寄与が可能となり、堆肥

化の目的を達成することになる。 堆肥化の基本プロセスは、酸素の存在下で進める「好気性堆肥化」であるが、酸素が不

足した状態での「嫌気性堆肥化」もある。主として行われている「好気性堆肥化」は、有

機物の分解速度が速く、分解による発熱量も多いため発酵温度が高く、ハエの卵や、病原

菌、雑草の種子などを死滅あるいは、不活性化することが可能で、衛生的である。水分も

蒸発し、貯蔵とハンドリングに有利である。堆肥化による最終生成物を図1-1に示す。

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セルロ-ス

粗大有機物 リグニンなど

微生物群とその遺骸

フルボ酸 堆肥 腐 植 質

フミン酸

土砂粒子 アンモニア

無 機 物 質 硝酸、リン酸

カリ、石灰、苦土、

マンガン、ケイ酸、ホウ素、

塩素、微量金属塩など

図1-1 堆肥化による最終生成物 堆肥化を担う微生物群は、生物由来の高分子物質を低分子化し、二酸化炭素、水、窒素

塩・リン酸塩・カリウム塩など各種無機塩などまで分解するとともに、残留有機物として

フミン酸やフルボ酸を生成させる。堆積することで、分解される有機物が周辺に十分あり、

品温保持の断熱効果があるという条件で、堆肥原料の分解されやすい成分、易分解性物質

の分解による発熱が、堆積物の品温を上昇させ、それにより分解を担う微生物の活動が一

層活発になり、分解がさらに進むという循環が形成される。 分解が進む発酵工程は大きく分けて、一次発酵、二次発酵の二段階になり、その前に原

料の性状を発酵条件に調整する前処理工程、発酵工程後の生成物(堆肥といえる状態にあ

る)を商品として流通させるための製品化工程がある。これらの三つの工程が堆肥化の基

本工程であり、この工程を終了したものが製品堆肥となって提供される。

(1) 前処理工程 前処理工程は、原料の通気性の改善や水分、pH の調整などを目的とする工程である。

一般的には原料の受入供給設備と前処理設備が設けられる。受入供給設備は原料及び添加

する副資材を一旦貯留し、前処理設備へ安定的に供給する設備である。前処理設備は、原

料の性状を改善して、発酵工程において、微生物が活動し易くなり、良好な発酵が進行す

る条件に原料を調整する設備であり、原料と二次発酵設備からの返送堆肥を混合したり、

もみ殻、おがくずその他の副資材を添加したり、また、副資材などの破砕、乾燥などを行

う。 この他に、堆肥化に不適切な異物の混入の可能性が高い原料を扱う場合には、それらを

分別除去する。

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(2) 発酵工程 発酵工程は、堆肥化の基本をなす工程であり、製品の品質を決める最も重要な工程でも

あり、一次発酵、二次発酵の二段階に分けるのが一般であるが明確な区分があるとはいえ

ない。発酵工程は、発酵設備投入物全体の均一な発酵を図るために、投入物の切返し・移

動や通気を行う。 (3) 製品化工程 製品化工程は、発酵を完了した堆肥を製品堆肥として商品化する工程であり、保管、貯

蔵、輸送及び使用の各面に便利なように、ふるい分け、造粒、袋詰めなどを行う工程である。 ふるい分けは製品粒径を整え、取扱い易いものとするだけでなく、未発酵部分が内部に

残っていると考えられる比較的大きな塊を分別除去し、返送堆肥として再度発酵工程に返

す役割も果たしている。また、最近は製品堆肥の品質の向上、保管容量の減少及び機械散

布に対応できるよう造粒化を実施する例が増えてきている。 (4) その他の設備 堆肥化施設においては、上記の主体設備のほかに、貯留、貯蔵、搬送、計量などに関連

した設備として、原料や製品の貯留槽、貯蔵設備、搬送・移送コンベヤ、ショベルローダ

などを施設の規模等に応じて設置する。特に、製品堆肥の貯留、貯蔵は、製品堆肥の需給

バランスを調整する上で重要である。 また、施設が設置される環境によって違いはあるが、受入供給設備や発酵工程で発生す

る悪臭に対する脱臭設備、受入供給設備から製品化工程に到るまでに発生し易い粉じんに

対する集じん設備の設置も必要になってきている。これは、施設の周辺環境保全と施設内

で作業に従事している職員の作業環境保全の両面から必要とされる。

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3.堆肥の原材料 1)堆肥原材料の条件 ・堆肥の原材料は、原料、副資材及び二次発酵設備よりの返送堆肥とする。 ・原材料は、肥料取締法における特殊肥料、普通肥料の原材料となり得る有機性廃棄

物とする。なお、副資材としては土壌改良材となる無機資材を用いることもある。 ・原材料は、非生物分解性物質、微生物学的汚染物質、重金属、有害物その他夾雑物

が基準値を超えていないものとする。但し、前処理工程で処理が可能の場合はこの

限りでない。 ・原料の発生状況、性状を事前に十分把握し、堆肥生産方式や製品堆肥の用途に合わ

せ、副資材等と最適な組合せを採用する。 【解 説】 堆肥は、肥料取締法における特殊肥料あるいは普通肥料として扱われるものであるから、

原料は肥料取締法における特殊肥料、普通肥料の原材料となり得る有機性廃棄物でなくて

はならない。なお、副資材(原料の性状を調整する資材)としては有機資材(主として粗

大有機物)のほかに土壌改良材となる無機資材(ゼオライト、バーミキュライト、パーラ

イトなど)を用いることがある。 一般的に堆肥化が可能な有機性廃棄物としては、表2-1に示すようなものがある。 有機性廃棄物は堆肥化のための好気性発酵を受け易いとされているが、シリカ系成分の

多いもみ殻やセルロース系含有成分の多い木質系原料(おがくず、剪定枝など)は非分解

性物質の含有率が高く分解に時間がかかるが、土壌改良材として効果があり、他の原料と

融合処理することにより高品質の堆肥生産が可能となり、また、副資材として混合利用す

るのに適している。

木材系チップや樹皮チップは、通気性確保に最適な副資材になるので利用頻度が高く、

堆肥化の過程では返送循環利用が行われている。しかし、樹木の種類によっては、針状短

繊維が生じ製品の取扱い上問題が発生するから注意を要する。もみ殻も研磨性があるので

注意を要する。

生ごみを主とする都市ごみの堆肥化は、食品包装プラスチック、金属やガラスその他の

発酵不適物の混入が多く、徹底した分別収集が求められており、農緑地に施用できる製品

堆肥生産に留意する必要がある。さらに、収集袋として使用されているポリ袋は大きな阻

害要因となっており、生分解性プラスチック袋が早急に普及されることが望まれている。

下水汚泥については含有する重金属への留意が重要であり、建設廃木材については、シ

ロアリ駆除や防腐のための CCA 処理、合板などの接着剤、ペンキ類その他の汚染について適切な対応が必要である。 資源循環といっても廃棄物といわれるものを原料とすることから、堆肥生産者は、農耕

地等の土壌保全と安全な農作物生産を常に念頭におき、法令を遵守し、適切な生産管理基

準と製品堆肥の目標とする品質性状を設定したうえで、原料の発生状況や性状を的確に把

握し、製品堆肥の品質の向上・安定化を図り、ユーザのニーズに対応できる良質の堆肥生

産につとめなければ、製品堆肥の円滑な利用推進はのぞめない。 代表的な堆肥原料の発生量、性状、堆肥化としての利用などの現況について次項で述べ

る。

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表2-1 堆肥化が可能な有機性廃棄物の種類と利用態様

区分 種 類 利用態様 区分 種 類 利用態様

牛ふん 原料 緑化業 水草 原料

豚ふん 原料 残飯・生ごみ 原料

鶏ふん 原料 野菜くず 原料

馬ふん 原料 おから 原料

廃家禽 原料 コーヒーかす 原料・副資材

畜産業

食肉工場汚泥 原料 茶かす 原料

もみ殻 原料・副資材 果汁かす 原料

わら類(稲、麦) 原料・副資材 ビールかす 原料

果樹剪定枝 原料・副資材 焼酎かす 原料

野菜加工くず 原料 かん詰加工かす 原料

菌床かす 原料

食品

加工業

食品加工汚泥 原料

間伐材 原料・副資材 生ごみ等 原料

農林業

バーク 原料・副資材 し尿汚泥 原料

魚のあら 原料

生活系

下水汚泥 原料

魚かす 原料 バーク 原料・副資材

貝類かす 原料 製紙業

製紙汚泥 原料 漁業

海藻残さ 原料 おがくず 副資材

剪定枝葉 原料・副資材 伐採木材 原料・副資材

刈り草、刈り芝 原料 カンナくず 副資材

落葉 原料・副資材 廃木材 副資材 緑化業

花き、花きくず 原料

建設業

木炭くず 副資材

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2)家畜排せつ物 (1)発生量 家畜ふん尿の発生量原単位については、調査データによりかなりの違いがある。いずれ

も、調査時の条件の違いが差を生じさせている。また、排せつ量は個体の違い、あるいは

同一個体であっても飼養状況、時期の変化によって日々変化している。規模算定などの設

計上使用する基準値は、既設については過去の排せつデータを、新規については中央畜産

会の堆肥化施設設計マニュアル等に記載の参考数値を用いる場合が多いが、処理条件や立

地条件を考慮することが望ましい。 家畜のふん尿排せつ量は、種類・体重・発育時期・飼育時期・飼料の種類・飲料水量・

季節・飼養形態など多くの条件により変動し、一律に正確な算定をすることは困難である。

従って、本稿では、畜種別の飼養頭数及び排せつ量原単位より推計するものとする。

表2-2 畜種別排せつ量原単位表 ふん(日・頭羽) 尿 合 計

畜 種 体重 (㎏) 乾燥物 水分 生重 (日・頭羽) (日・頭羽)

搾乳牛 1) 700 7.5 kg 86% 54 kg 17 kg 71 kg

搾乳牛 2) 700 6.8 kg 86% 50 kg 15 kg 65 kg

搾乳牛 3) 600~700 5.7 kg 84% 36 kg 14 kg 50 kg

乾乳牛 550~650 4.2 kg 80% 21 kg 6 kg 27 kg

乳用牛

育成牛 40~500 3.6 kg 78% 16 kg 7 kg 23 kg

2才未満 - 3.6 kg 78% 16 kg 7 kg 23 kg

2才以上 400~700 4.0 kg 78% 18 kg 7 kg 25 kg 肉用牛

乳用種 250~700 3.6 kg 78% 16 kg 7 kg 23 kg

子豚 3~ 30 0.15kg 72% 0.5kg 1 kg 1.5kg

肥育豚 30~110 0.53kg 72% 1.9kg 3.8kg 5.7kg 豚

繁殖豚 150~300 0.83kg 72% 3.0kg 7.0kg 10 kg

雛 - 13g 70% 43g - 43g

成 鶏 4) - 30g 70% 100g - 100g 採卵鶏

成 鶏 5) - 30g 60% 75g - 75g

ブロイラー - 26g 70% 87g - 87g 肉 鶏

ブロイラー 6) 26g 40% 43g 43g

出典:「堆肥化施設設計マニュアル(2000 年)」中央畜産会

注: 1)生乳生産量が年間 10,000 ㎏以上の場合

2)生乳生産量が年間 10,000 ㎏程度の場合

3)生乳生産量が年間 7,600 ㎏程度の場合

4)低床式鶏舎のふんの場合

5)高床式鶏舎のふんの場合

6)床暖房式のウインドレス鶏舎のふんの場合

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(2)性 状 各家畜別のふん尿の水分については、乳用牛、肉用牛、豚ともにふんのみで水分が70%

を越えているので、尿と分別収集を行っても、水分調整が必要となる。多くの場合は、も

み殻などの副資材で水分調整を行うことが多いが、必要量を常時確保することや堆肥化工

程における処理量が増加することに留意が必要である。 家畜ふん尿の汚濁データの資料を表2-5に示した。各濃度ともに人間の汚濁データと

比較すると非常に高濃度であり、これにより処理施設費や設備の運転管理費が増大し、そ

れが家畜ふん尿処理施設の設置が進まない原因の一つとなっている。

表2-5 家畜ふん尿の汚濁諸元 乳用牛 肉用牛 豚 採卵鶏 ブロイラー

ふん(mg/l) 24,000 24,000 60,000 65,000 65,000

尿(mg/l) 4,000(5,800) 4,000 5,000(3,300) BO

D 合計 (mg/l) 18,400 18,400 23,300 65,000 65,000

ふん(mg/l) 19,000 19,000 35,000 45,000 45,000

尿(mg/l) 6,000 6,000 9,000 CO

D 合計 (mg/l) 15,360 15,360 17,667 45,000 45,000

ふん(mg/l) 120,000 120,000 220,000 130,000 130,000

尿(mg/l) 5,000(5,800) 5,000 5,000(5,300) SS

合計 (mg/l) 87,800 87,800 76,667 130,000 130,000

ふん(mg/l) 4,500 3,000 5,000 25,000 20,000

尿(mg/l) 8,000 12,000 7,000 窒

素 合計 (mg/l ) 5,480 5,520 6,333 25,000 20,000

ふん(mg/l) 1,000 800 5,000 4,500 2,500

尿(mg/l) 100 150 500 リ

ン 合計 (mg/l ) 748 618 2,000 4,500 2,500

ふん(%DRY) 80 % 80 % 85 % 70% 70%

尿(%DRY) 70 % 70 % 70 % 有機

物量 合計 (%DRY) 79.90% 79.90% 84.50% 70% 70%

出典:「家畜尿汚水の処理利用技術と事例」中央畜産会

注: ( )内は肥育

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(3)副資材 表2-7 主な副資材の特徴

副資材 利 点 欠 点 備考

稲わら

麦わら

①通気性改善効果大 ①収集時期が限定される

②収集作業が多労

③処理施設によっては細断

必要

①収集作業の共同化(機械

化)が必要

②粗飼料として利用される

場合が多い

もみ殻 ①通気性改善効果あり

②粉砕すると吸水性高

まる

①分解が比較的困難

②粉砕に多エネルギー必要

共管施設で発生するもみ殻

の有効利用が必要

お が く

バーク

①材料の通気性改善効

果・吸水性あり

①入手が次第に困難(高価

になってきている)

②分解が比較的困難

③作物の生育阻害物質を含

むものあり

常時一定量入手可能な相手

先の確保が必要

無機質

資材

①材料の通気性改善効

果・吸水性あり

②安定した必要量の

確保可能

③分解しない

①高価である ①使用量を極力少なくする

よう畜ふんの水分低下を

図る

②製品が高価販売できるよ

う努める

返 送 堆

①材料の通気性改善

効果・吸水性あり

(ただし低水分の

場合)

②確保が比較的容易

①高水分の場合は通気性改

善効果小

②分解による発生熱エネル

ギー小または無し

③販売できる製品量が少な

①戻し堆肥の水分を低下さ

せる乾燥施設を設ける必

要あり

②共同処理施設などではこ

の例が多い

出典:「堆肥化施設設計マニュアル (2000 年 )」中央畜産会

表2-8 もみ殻及びおがくずの粒径と吸水率

材料名 粒径別 (mm) 水分(%) 吸水率(%) 備考

現物 9.5 74

2.0mm 以上 8.3 136 現物の 1/2 程度粉砕

2.0 ~0.85 8.7 150 現物の 1/4~1/5 程度粉

0.85~0.4 9.1 237 おがくず程度

0.4 ~0.25 9.0 244 細粉状

0.25~0.11 8.8 250 細粉~微細粉

もみ殻

0.11 以下 8.3 215 微細粉

おがくず 現物(0.25~0.85) 34.2 249

出典:「堆肥化施設設計マニュアル(2000 年)」中央畜産会

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4.施設の計画 1)原料条件 (1)原料の発生量 ・原料の発生量は、施設計画の基礎となる重要な数値である。原料の発生量は畜ふん、

生ごみ、汚泥などにより異なるので、実態調査と計測による原単位から年間発生量

を決める。 【解説】 原料の発生量は、畜ふん、生ごみ、汚泥により異なるので、堆肥化施設の規模を決定す

る場合には、それぞれ、畜種ごとの飼育頭数などから毎日の発生量が求められ、それに 365日 /年を乗じて年間発生量とする。 本来なら、その地域で発生する原料について、実態調査と計測により実際の原単位を、

発生する原料の個体数などから求めるのが一番正確であるが、各々の原料についてそのよ

うな資料が整っていない場合には、以下の数値を採用し原料の発生量を決める。 ①畜ふん 畜ふんの発生量は、表2-2 畜種別排せつ量原単位表の数値を採用する。 ふん尿が混合して排せつされる場合には、この表の「ふん+尿」の合計量となる。その

場合のふん尿混合後の水分は、尿の水分を 100%として計算した数値を用いる。 畜ふんについて、飼育状況により敷料や粗飼料などが畜ふんの中に混入する場合には、

それらの量を加えたものとする。敷料などの種類、量が不明な場合には、牛ふんの場合 2kg/日・頭とする。

畜ふんの発生量(t/年) : =畜ふんの発生原単位(kg/頭(羽)・日)×飼育頭 (羽)数×365(日 /年)÷1,000

②もみ殻 もみ殻の発生量は、水田の耕作面積から決まり、玄米収穫量の 25%のもみ殻が発生する。

作付面積当たりに換算すると、玄米収穫量は、4.5t/ha のため、もみ殻発生量は 1.1t/ha となる。 もみ殻の発生量(t/年):

=もみ殻の発生原単位(1.1t/ha)×作付面積(ha) (2)施設への搬入量 ・施設への原料などの搬入量は、1日当たり施設へ搬入される原料、副資材の量とす

る。搬入量は、施設の受入設備の仕様、容量などの基本となるもので、原料の年間

発生量、収集率及び搬入日数から施設への搬入量が決まる。 【解説】 施設への原料の搬入量は、受入設備の仕様、容量などの基本となる。 施設への搬入量は、各原料として施設に搬入するものの年間発生量、収集率及び搬入日

数から算出される。 搬入量(t/日)=各原料の年間発生量(t/年)×収集率÷搬入日数(日 /年)

畜ふんの場合は、毎日の畜種毎の搬入量を均一化するため、各畜産農家から排出される

畜ふんの搬入日を定め、その日程に合わせて各畜産農家が畜ふんを搬入する場合が多い。

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そのため、畜産農家では、施設へ搬入するまでの数日間、畜舎の一角に堆積したり、収集

容器やコンテナで保管している。 有機性廃棄物は腐敗性の原料が多く、長期間溜めておくと、腐敗や変質により原料の性

状が好気性発酵に適さなくなったり、悪臭が発生するため、原料は発生後、日数を置かず

に発酵設備へ投入するようにしなければならない。そのため、基本的には、施設への原料

の搬入日数=運転日数が理想であり、このようにすれば、施設での受入設備での貯留日数

は1日で済むこととなる。 実際稼動している施設では、搬入日数と運転日数が同一の場合がほとんどである。しか

し、原料発生量は、季節や時期などにより変動があり、特に、生ごみは季節変動が大きい

こともある。これらより、受入設備は、受入容量に余裕を持たせること及び万一のトラブ

ル時に備えて、2 日分の貯留日数を確保する施設が多い。 また、搬入日数が運転日数と違いがある場合や搬入量と処理量に差異がある場合には、

受入設備において、搬入原料を処理する期間、貯留しなければならない。 原料などの貯留方式は、原料性状、貯留日数により置場貯留か貯槽貯留方式かを決める。

(3)原料の性状 ・堆肥化の対象となる有機性廃棄物の原料は、さまざまな性状を持っている。良質の

製品堆肥を製造するためには、各種有機性廃棄物の性状、特性などを十分に調査し

て原料の性状を設定する。 ・実際に原料性状の調査が困難であったり、性状が不明な場合は、原料別の代表値を

用いる。 【解説】 良質の製品堆肥を製造するためには、その施設で処理する各種有機性廃棄物の性状や量、

特性などを事前に十分に調査分析し、それに合致した前処理、発酵処理などのシステムを

構築する必要がある。 畜ふんについては、畜種や生体の大きさ、飼育方法、与えている飼料の種類、ふんの排

出状況などにより、ふんの性状が大幅に異なる。特に、飼育時に敷料を使用する場合は、

ふんと敷料が混入して排出される。また、敷料として稲わらを使用している場合には、発

酵設備の機械切返し機の運転に大きな影響を与える。

表3-5 家畜排せつ物の性状

項 目 水分 pH 有機

物 全炭素 全窒素 C/N リン酸 カリ 見掛

比重 発熱量 総有機

物分解率注 )

単 位 % - % % % - % % t/m3 kcal/kg %

牛ふん 約 80 70~75 40~45 2.0~2.5 15~

20 2.0~2.5

1.5~2.0 4500 40

豚ふん 約 70 80~85 40~45 3.0~4.0 10~

15 5.0~6.0

1.5~2.0 4500 35

鶏ふん 約 65 70~75 35~40 5.0~6.0 6~10 6.0~

7.0 3.0~4.0 3500 35

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表3-6 搬入される原料(家畜排せつ物)の性状

種 類 水分

見掛比重

t/m3

分解発熱量

kcal/kg

総有機物分解率

肉牛ふん 78 0.80 4,500 40

肉牛ふん尿 84 0.90 4,500 40

乳牛ふん 86 0.90 4,500 40

乳牛ふん尿 90 0.95 4,500 40

脱水した乳牛ふん尿 80 0.85 4,000 35

豚ふん 72 0.75 4,500 35

豚ふん尿 91 0.95 4,500 35

脱水した豚ふん尿 80 0.85 4,000 30

ブロイラーふん 50 0.60 2,500 30

畜ふん

採卵鶏ふん 70 0.70 3,500 30

(4)副資材の性状 ・堆肥の原料となる有機性廃棄物は、水分が高いため、通気性の改善と水分調整のた

め、副資材や返送堆肥などにより発酵に適した原料性状とすることが必要である。

副資材の選定に当たっては、その水分や性状のみならず、必要な量の副資材が長期

的に、年間を通して安定して入手可能であることが重要である。 【解説】 有機性廃棄物には、鶏ふん、バークなど一部の原料を除き、大半の畜ふん、生ごみ、汚

泥などは水分の高いものが多く、そのままでは通気性が悪いため、良好な好気性発酵が難

しい。このような水分の高い有機性廃棄物を堆肥化する場合には、通気性の改善と水分調

整のために、もみ殻やおがくずなどの副資材や返送堆肥、あるいはその併用により発酵に

適した条件へ原料を調整することが必要である。 一般に、返送堆肥よりも水分調整材の方が水分が低く、通気性を保有しているため、水

分及び通気性の改善効果が大きい。 副資材の選定に当たっては、その水分や性状のみならず、必要な量の副資材が年間を通

して安定して入手可能かどうかが重要である。その上で、さらに肥料効果成分のバランス

なども検討する。 副資材の性状についても、原料性状と同様に、実際に入手する予定の副資材の性状を分

析したデータ値を使用するのを基本とするが、データなどの入手が難しい場合には、表3

-7に一般的な施設において使用される副資材について、水分、見掛比重、分解発熱量及

び総有機物分解率を示すので、計画に当たりこれらの代表的な数値を使って計画を進める。 また、表3-8に各種副資材の性状について上記以外のデータを示す。

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表3-7 搬入される副資材の性状

種 類

水分

見掛比重

t/m3

分解発熱量

kcal/kg

総有機物分解率

もみ殻 12 0.10 2,500 10

粉砕もみ殻 25 0.25 2,500 12

おがくず 30 0.25 2,500 5

稲わら 11 0.05 3,000 30

破砕稲わら 11 0.15 3,000 30

チップ 30 0.25 2,500 3

バーク 50 0.12 2,500 5

破砕バーク 50 0.15 2,500 5

破砕剪定枝(葉主体) 60 0.25 3,000 15

副資材

破砕剪定枝(枝主体) 40 0.15 2,500 5

表3-8 各種副資材の性状 項 目 水分 pH 有機物 全炭素 全窒素 C/N リン酸 カリ 粒 径 見掛

比重 発熱量 総有機物分解率注 )

単 位 % - % % % - % % mm t/m3 kcal/kg %

もみ殻 12.5 7.0 79.3 35 0.25 140 1.43 0.28 3 0.1 2500 10

おがくず 30.2 5.5 99 49 1.0 49 0.05 0.11 1~3 0.25 2500 5

稲わら 10.5 ND 85.5 37 0.9 41 2.6 1.39 800 0.05 3000 30

注)一次発酵での有機物分解率と二次発酵での有機物分解率の合計を示す。

出典: (財 )下水道新技術推進機構下水汚泥堆肥化施設計画・設計マニュアルを基にして作成

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2)発酵設備投入条件 (1)好気性発酵の条件 ・施設において良質の製品堆肥を生産するためには、堆肥化原料を好気性発酵の条件

に合わせることが不可欠であり、このために、原料の性状により、異物を除去し、

水分、有機物、pH、粒径及び温度を調整し、原料と副資材等との混合を行う。 【解説】 施設において良質の製品堆肥を生産するためには、二つの重要な要件がある。 a)原料条件--------原料を好気性発酵の条件に合わせる b)操作条件--------原料を発酵期間中、切返しや通気などの操作条件により好気的状

況に保つ これら二つの要素が相まって、発酵設備内混合物の好気性発酵が行われ、有機物の分解

により原料の温度が上がり、かつ高温が維持され安全で衛生的な製品堆肥が生産される。 ここでは、これらの操作のうち、a)原料条件の好気性発酵の条件に合わせるための、

発酵設備投入条件について述べる。 堆肥化における好気性発酵は微生物により行われるため、発酵に寄与する微生物の生息

環境を適切に保つことが重要である。その好気性発酵の条件は、発酵設備投入時の原料条

件をいかに適切に調整できるかにかかっている。 従来の施設においては、一般に、原料の水分だけを調整すれば良質の製品堆肥が生産さ

れると考えられており、水分以外の原料の発酵条件である有機物、pH、粒径及び温度の設定については、考慮はされていたが、現場管理では十分な配慮はなかった。特に好気性

発酵を行わせるために必須の水分と並ぶ有機物の最低含有量についてあまり考慮されてな

く、同様に、原料、副資材、返送堆肥の混合効果についても重要視されていなかった。 堆肥生産現場では、発酵設備投入条件を設定し、それらを十分に達成することにより、

すべての原料が適切な条件で好気性発酵が行われ、原料の温度は 65℃を超えかつ 48 時間以上を維持できる。その結果、発酵日数の短縮が図られ、易分解性有機物の分解と水分の

蒸発により臭気のない、水分の低下した良質の製品堆肥が生産される。

(2)水分条件 ・発酵設備投入時の原料の水分は原料種別により異なり、状況により、好気性発酵が

期待できるように前処理工程で調整する。また、副資材の種類及び添加量により、

発酵設備投入時の水分が変わる。なお、発酵設備投入時の投入物の水分が高い場合

には、嫌気性発酵による腐敗が生じないよう十分注意する。 【解説】 原料の水分が高いと原料の粒子間が水で満たされ、好気的雰囲気から嫌気的雰囲気とな

るため、好気的条件を維持するためには水分の上限がある。換言すれば、水分を調整する

と言うよりは水分が高いと通気性が悪くなり嫌気的条件となるため、通気性を改善するた

めに水分を下げることである。一方、著しい乾燥状態では微生物の増殖が抑制され、発酵

は進まない。 水分の上限は原料の通気性の良し悪しにより異なり、牧草を飼料とし敷料が混入した畜

ふんでは、それらの繊維状物質が通気性を改善するため 68%でも好気性発酵が行われるが、

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汚泥では微細な微生物の集まりのため通気性が悪く水分を 50%以下に調整しないと好気性発酵は行われない。 また、副資材としてもみ殻、おがくず、稲わらなどの粗大有機物を添加すると通気性が

悪い汚泥であっても通気性の改善が行われ水分が 60%を超えても良好な好気性発酵が行われる。 副資材の種類により発酵設備投入時の水分は変わり、副資材自体に空隙がたくさんある

ものほど、空隙に空気が溜まり、通気性が保たれるため、稲わら>もみ殻>おがくずの順

に水分を高く設定することができる。また、これらの副資材はいずれも、それ自体に空隙

が有るばかりでなく、はく離性を持つため、水分が高く、付着、粘着性がある豚ふん、高

分子系の脱水助剤で脱水した汚泥などが付着し、通気性が悪くなるのを防止することも、

発酵設備投入時の水分を上げられる理由である。 また、副資材の添加量を増やすほど発酵設備投入時の水分を上げることができる。しか

し、発酵設備容量が大きくなるので、設置費、運転費ともに嵩むことになる。 このように発酵設備投入時の原料水分の上限は、原料の種類や通気性の改善のため使用

する副資材の種類や添加量により変ってくるが、通常は 55%~65%の範囲で調整する。

表3-9 原料別発酵設備投入時の水分限度 (%) 添加方式(添加率、乾基準) 原料の種類 無添加方式・

返送方式 1:0.5 1:1

牛ふん 68 70 72

豚ふん 60 63 65 畜ふん

鶏ふん 55 58 63

生ごみ 50 60 65

石灰添加 50 58 63 汚泥

高分子添加 48 55 60

表3-9に原料別発酵設備投入時の水分限度の目安を示す。 なお、これより高い水分の場合は、すぐに好気性発酵は行われないが、原料の圧密によ

る脱水作用などにより水分がこの数値程度まで低下すると、通気性が改善され好気性発酵

が開始される。施設において、一時的に、所定の水分より高い発酵設備投入条件で投入し

た場合には、原料がこの脱水などの期間に準好気或いは嫌気的条件のため嫌気性発酵とな

らないよう十分注意する必要がある。一旦嫌気性発酵となると原料のpHが極端な酸性側

へ移行する。その期間が長くなると腐敗によりイオウ系の甘酸っぱい腐敗臭が発生しはじ

める。一旦嫌気性発酵となると、好気性発酵に戻すことは難しく、最悪の場合は、発酵設

備内の原料をすべて入れ替えないと好気的雰囲気へ戻せない場合が多い。 これらから、発酵設備投入時の水分は、原料の水分変化、冬季の発酵温度の立ち上がり

の遅れなどが想定される場合には、表3-9に示す水分限度より2%程度低めに設定する

とこれらの変動を吸収でき、安心して安定的な発酵管理ができる。

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(3)有機物条件 ・原料の有機物性状の指標として C/N 比を用いる。 ・発酵設備投入時の原料、返送堆肥及び副資材を合わせた C/N 比は 40 以下に設定し、可能の限り 30 以下とすることが好ましい。C/N 比により、発酵温度のピーク、高温の持続時間が変わり、C/N 比が小さいほど発酵温度が高くなり、持続時間も長くなる。

【解説】 有機物量の指標として C/N 比、BOD が用いられる。ただし、C/N 比は、有機物全体に

占める炭素と窒素の比率のため、実際の微生物による分解可能な有機物量としては、生物

分解による数値を示す BOD の方がより好気性発酵の指標として適切である。しかし、BODは測定に時間がかかり、下水汚泥以外の測定方法としては確立されていないため、本書で

は C/N 比を使用する。 C/N 比が大きいと、一般的には発酵過程で分解する有機物量が少なく、好気性発酵が遅

くなる傾向がある。 返送堆肥の戻し量や副資材の使用割合を多くし、好気性発酵の水分条件のみを合わせれ

ば良好な堆肥化条件になるとの概念が一般的であるが、重要なことは、水分条件と有機物

量の両条件が成り立たないと好気性発酵は維持できないことである。水分条件を合わせた

だけで、有機物量がある程度以上含まれていない場合でも好気性発酵は行われるが、発酵

過程での発酵温度は高くならず、堆肥の安全や衛生の観点から必要とされる 65℃、48 時間の温度保持を満たさない恐れがある。 安全で衛生的な堆肥を生産し、易分解性及び可分解性有機物を分解させるためには原料

の品温を上昇させ、一定時間以上高い温度を維持させることが必要であり、そのため有機

物の最低含有量の限度が定められる。 C/N 比を使う場合、発酵設備投入時において原料、返送堆肥及び副資材を合計した C/N

比は 40 以下とする必要があり、好ましい C/N 比は 30 以下である。 発酵設備投入時の原料などの C/N 比は 40 以上では、原料全体として発酵温度と保持時

間を維持できなくなる。 木質系のバークなどのように C/N 比が 100 を超える場合には、C/N 比を 40 程度にする

ために鶏ふんなどの窒素分の含有量が多い原料を加えて好気性発酵を行わせる。また、C/N比が大きな場合には、有機物分解発熱量が少ないため、好気性発酵により上昇した原料の

温度を保つために、切返しの頻度を減少させたりして発酵により上昇した原料の温度が下

がらないような運転操作とする。 逆に、乾燥した生ごみやフィルタプレスで脱水した生汚泥のように高い有機物の含有量

で低水分の原料を少ない返送堆肥や副資材により発酵させる場合には、C/N 比が 15~20と低いため、一次発酵設備での切返しの頻度を多くしたり、通気量を増やしたりして、好

気性発酵を促進させないといつまでも高い温度を保ち、一次発酵が終了しない。

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表3-10 有機物の炭素、窒素の含有量及び C/N 比

原料及び副資材の種類 炭素(C)

(乾基準%)

窒素(N)

(乾基準%)

C/N 比

牛ふん 30 ~ 40 1.5 ~ 2.5 15 ~ 25

豚ふん 40 ~ 45 3.0 ~ 4.5 10 ~ 15 畜ふん

鶏ふん 35 ~ 40 3.0 ~ 4.5 6 ~ 10

ごみ 生ごみ 30 ~ 40 2.0 ~ 3.0 10 ~ 25

下水汚泥(生汚泥) 30 ~ 40 4.5 ~ 6.0 6.5 ~ 7.0

下水汚泥(消化汚泥) 20 ~ 25 2.5 ~ 3.0 7.0 ~ 9.0

し尿汚泥 25 ~ 35 3.5 ~ 4.5 6.5 ~ 8.0 汚泥

集落排水汚泥 20 ~ 25 2.5 ~ 3.0 7.0 ~ 9.0

もみ殻 33 ~ 39 0.5 ~ 0.6 60 ~ 72

おがくず 50 ~ 55 0.05~ 0.2 200 ~1000

バーク 50 ~ 60 0.2 ~ 0.6 100 ~ 300 副資材

稲わら 39 ~ 43 0.6 ~ 0.7 50 ~ 70

(4)pH条件 ・原料は、搬入された段階では酸性を示すが、通常は特に調整しなくとも発酵設備へ

投入すると好気性発酵が始まる。ただし、石灰系の脱水助剤を使って脱水した汚泥

では、pHが強アルカリ性となっているため、pHを中性域へ低下させて好気性発

酵を進める。 【解説】 pH は好気性発酵を行わせるための要因であるが、通常堆肥化原料が搬入される場合は

水分が高い状態が多く嫌気的雰囲気のため、pHは酸性領域の 4~6 程度である。しかし、この程度の範囲であれば、水分と有機物量を最適条件に調整し、通気を行うと急速に好気

性発酵が開始され、アンモニアが発生しpHがアルカリ領域の 7~9 へ上昇する。 ただし、汚泥を脱水する過程で脱水助剤として石灰を添加している場合には、脱水汚泥

のpHが 10~12 のアルカリ性となり、そのままでは好気性発酵は進まないため、好気性発酵が開始するpHが 8~9 程度まで低下させるため、通常は返送堆肥を使うことでpHを下げ、かつ水分調整の両方を行わせている。また、他の生ごみや畜ふんは若干酸性なの

でそれらと融合させることも対応策である。 (5)粒径条件 ・原料の粒径を小さくすることは、好気性発酵を促進させるための重要な要素である。

団子状、塊状の原料は 1cm 程度以下に破砕しないと内部が未発酵となる。ただし、破砕し過ぎると逆に堆積物の通気性を損なうので、破砕機の選定に留意する。

【解説】 粒径は好気性発酵を促進させるために重要な要素の一つである。好気性の微生物は酸素

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のある条件で有機物を分解するが、原料の粒径が大きいと内部には酸素が十分に行き渡ら

ないため、嫌気性の状態のままである。そのため、原料を細粒化し原料の表面積を拡大し、

酸素を十分に接触させることが微生物の生息、すなわち好気性発酵の条件となる。 畜ふんではふん同士が固まり団子状になったり、稲わらなどの敷料が加わるとしっくい

のように強固な塊となったりすることがある。汚泥ではフィルタプレスなどの脱水機から

排出され板塊状となったもの、貯槽で貯めている間に固まった汚泥、生ごみでは各種肉片、

魚、野菜、果物などがある。これらの塊状の原料は、発酵過程において、切返しや通気に

よる物理的破砕や発酵により分解、細粒化が行われるが、一部は塊状のまま発酵設備から

排出される。その結果、製品堆肥の中に、内部に水分を含んだ嫌気性発酵の塊、あるいは、

発酵ではなく乾燥した塊が混在することとなる。 原料の発酵状況は、一般に、粒径が大きいほど発酵日数が長く必要であり、また、切返

し機の破砕能力により発酵日数が変わる。発酵設備へ投入された原料全体を好気性発酵さ

せるためには、概略1cm 程度以下に細粒化する必要がある。 しかし、粒径はあまり細かく破砕しすぎると逆に空気が通過するための空間が細かな原

料や水分で覆われ、通気性が悪くなるので注意を要する。畜ふんなどは破砕機で破砕して

も敷料はほとんど破砕されないため過剰に破砕することは少ないが、生ごみの場合は破砕

しすぎるとペースト状となり、通気性が逆に悪くなる。汚泥の場合は、破砕機での滞留時

間が長くなると粘着性が出てきて練り始め通気性が阻害される。これらから、破砕機の機

種として、通気性を損なわず、かつ過度に破砕し過ぎない性能を持った機種を選定する。 細粒化の方法として、生ごみの場合には、異物の分別を兼ねた破砕分別機やせん断式破

砕機で破砕する場合が多い。ショベルローダで原料を持ち上げて落下させることにより破

砕する場合もあるが、破砕の程度が作業員の技量に依存し、また、所定の大きさまで均一

に破砕するのことは難しいため、破砕する原料の量が少ない場合にしか採用できない。 このように、原料の破砕を行い発酵に適した粒径にすると、原料全体が均一化し好気的

条件となる。 (6)温度条件 ・原料の品温が低いと発酵の立ち上がりに日数がかかる。原料の品温を上げるために、

発酵設備の入口部に加温装置を設置する方法、あるいは、発酵設備の滞留日数に余

裕をとり、原料の品温が上がるのを待つ方法を採用する。 ・原材料の品温は、外気温の影響を直接に受けるが 10℃を下回らないことが望ましい。 ・自然昇温を待つか、加温するかは種々の条件によるが、基本的には前者を優先する。 【解説】 原料の発酵設備投入時の温度も発酵を促進させるための要素である。 原料の温度は通常外気にさらされたまま、貯留、搬入されるため、直接外気温の影響を

受ける。そのため、外気温が高い春から秋までの期間は、原料の品温も外気温から数℃低

い程度で発酵にあまり影響はない。しかし、外気温が低下する冬季や寒冷地ではその影響

を受け原料の温度も低下する。 一般に、微生物は温度が 10℃を下回ってくると活動が急速に低下するため、温度をそれ

以上に保つことが肝要である。

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畜ふんや生ごみは収集のために畜舎や家庭から、屋外へ排出されるので、冬季には凍結

したり、シャーベット状となるため、外気温にさらされる時間を短くし、貯留しないです

ぐに施設へ搬入するのが一番よい。一方、下水汚泥、集落排水汚泥は、処理場において、

脱水から汚泥の貯槽までの工程が室内で行われるため、凍結した汚泥が施設へ搬入される

ことはない。 しかし、現実としては温度が低い原料が投入されると、すぐに処理しなければならない

場合がほとんどなので、対策として、発酵設備投入部に加温設備を設置し原料へ加温空気

を供給したり、発酵設備の周囲をヒータで加熱したりして原料の温度を上昇させる方式を

取っている。ただし、これらの方式は、設備費及び運転経費がかかるため、運転すること

は極力避けたい。 解決策として、発酵設備投入時の温度がすぐに上昇しないのは止むを得ないと割り切り、

発酵設備内で徐々に温度が上がり 10℃程度になるまで発酵を期待しない方法がある。そのため、その発酵前の助走部分の期間は発酵設備に原料が投入されているが発酵に寄与して

いないため、発酵日数に温度上昇までの日数を加えた日数とする。当然、延長する分だけ

発酵設備の奥行長が長くなり、発酵設備の容量を大きくする必要がある。 従来の施設の発酵設備等では、冬季の品温が低下するのを考慮していないため、加温装

置の設置も無く、発酵設備の容量も的確に余裕を見ていないため、冬季には、一次発酵に

必要な発酵日数が不足し、未熟な製品堆肥が生産されている場合がある。 冬季時の発酵を期待できないとき、原料の温度の昇温までの助走日数として、外気温が

0℃程度なら、通常の発酵日数に 2 日を加え、外気温がマイナス 10℃なら4日を加える必要がある。 自然昇温を待つか、加温設備を設けて加温するかは、対象となる原料の品温の程度、施

設の敷地規模、建設費、運転管理費等により決めるが、運転管理面からみて、基本的には

前者によることを優先する。 (7)混合条件 ・発酵設備投入条件を満足するように、入念に返送堆肥や副資材の量を設定しても、そ

れらの原料などが十分に混合されていないと、原料全体として良好な好気性発酵は行

われない。発酵設備投入条件を設定し実行することと、原料などを十分に混合するこ

とが、良質な製品堆肥生産のための必須条件である。 ・混合機の採用の可否、機種の選定は、機械切返し機の機種により異なるので切返し機

と混合機は一体で検討する必要がある。 【解説】 原料、返送堆肥及び副資材の水分、有機物量、pH、粒径及び温度の条件を満たすだけ

では好気性発酵は行われない。 それらの原料などが十分に混合されていないと、せっかくの発酵条件を設定しても全体

として良好な好気性発酵がなされない。そのため、発酵設備へ上記原料を投入する前の前

処理工程における混合機が重要な役割を果たす。従来この混合操作の重要性はあまり考慮

されていなかったが、均一で良好な製品堆肥を生産するためにはこの発酵初期での立ち上

がり段階を重要視しなければならない。

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特に堆積式の発酵設備、サイロ式、トンネル式、回分式発酵設備のように、一旦発酵設

備内に堆積すると、その後の切返し頻度が少ないか、まったく切返しを行わない発酵設備

の場合には、効率の良い混合機を用いて十分混合を行わせることが必須である。 それ以外の機械切返し機能をもつ発酵設備においても、切返し機として混合機能を持た

ない機種の場合には混合機を採用しなければならない。 混合機としては、原料置場の一角にロータリー式やスクリュー式の混合機を設置し、所

定の原料条件となるように、原料、返送堆肥及び副資材をショベルローダで堆積し、混合

機により混合させるシステムがある。 規模が小さな施設では、ショベルローダの運転により原料など混合することも行われる

が、混合性能は、ショベルローダの運転員の技量に因るため、混合機には及ばない。 また、前処理工程を自動化したシステムにおいては、原料、返送堆肥、副資材などの貯

槽へそれらを貯留し、定量的に排出し、混合機へ投入し混合を行わせている。この連続式

の混合機の場合は、混合される原料、返送堆肥及び副資材が、混合機へ所定量ずつ確実に

供給できること及び混合機での滞留時間の設定が重要である。 3)発酵条件 (1)発酵温度 ・堆肥生産は、原料条件、発酵方式、運転管理などを整え、発酵温度条件を満足する

ようにしなければならない。良質で、微生物学的に安定した製品堆肥を生産するた

めに、原料の発酵過程において、発酵設備内混合物の温度を 65℃以上、48 時間以上保持することは必要最低条件である。

【解説】 好気的条件での堆肥生産システムにおいては、発酵設備内混合物の温度は、微生物の活

動、有機物の分解、水分の蒸発などに関与し、堆肥化の進行状況を示すバロメーターであ

る。温度の上昇は有機物の分解速度を高め、水分蒸発を加速する。また、一般には発酵設

備内混合物の温度を 65℃以上、48 時間以上保持することにより、病原菌、寄生虫卵を死滅させ雑草種子を不活化させる。 病原菌、寄生虫卵を死滅させ雑草種子を不活化させるためには、高温とともに高温に曝

す時間の長さが大切であり、表3-11は病原菌の死滅温度を示し、表3-12は雑草種子の温度と発芽状況を示す。これらの表から、病原菌や寄生虫卵の死滅には温度が重要な因

子であることが分かる。

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表3-11 病原菌、寄生虫の耐熱性 (Golueke,1977) 致死条件 .

温度 (℃ ) 期間 (min)

備 考

チフス菌 55~60 30 46℃以上で成長停止

56 60 サルモネラ菌

60 15

赤痢菌 55 60

55 15~20 大腸菌

60 15~20

ブドウ球菌 50 10

連鎖球菌 54 10

結核菌 66 15~20

ジフテリア菌 55 45

ブルセラ菌 61 3

アミーバ赤痢 55 シスト

条虫 55~60 5

旋毛虫 62~65 50℃,1時間処理で感染性減少

アメリカ鉤虫 45 50

回虫 60 15~20 卵

表3-12 牛ふん堆肥に埋設した雑草種子の発芽率 (高林ら) 種類 埋設条件・50℃未満 (%) 埋設条件・60℃、2 日間

(%)

対照 (%)

メヒシバ 96 0 74

ノビエ 72 0 87

カヤツリグサ 56 0 30

シロザ 26 0 16

オオイヌタデ 8 0 53

スベリヒユ 85 0 91

イヌビユ 68 0 70

ユキノグサ 7 0 51

クワクサ 26 0 19

出典:「堆肥化の基本と利用側から見た品質」 (2001)原田靖生、 (財 )畜産環境整備機構 (財 )農業技術協会

このようなことから、施設では、どのような発酵方式を採用しても、すべての原料の温

度を 65℃、48 時間経過させることは、安全、衛生的な製品堆肥を生産するための必要最低条件であるため、この条件になるような、計画、設計、運転管理を行わなければならな

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い。 堆肥化のように生物がもっている酵素が関与する反応では、原料の温度が上昇するとあ

る温度までは反応速度が大きくなっていくが、温度が高くなりすぎると反応速度が低下す

る。反応速度が小さくなっても、わずかでも熱が発生し、その熱量が失われなければ、温

度は上昇していく。堆積された堆肥層は断熱効果が高いため、熱が逃げにくく、熱の発生

が少なくなっても温度が下がりにくい。このため、発酵温度が高いことは発酵が盛んに起

きているようにも見えるが、原料の温度が高いことが必ずしも反応速度が大きいわけでは

ない。 具体例としては、堆積式において堆積後1ヶ月を経過しても堆積層内の温度が 70℃と高

い温度を維持し続けることがあるが、これは発酵が促進されているわけではなく、切返し

も通気も行われないため放熱が少ないだけである。 堆積式では堆積層内部の温度はこのように高いが表面は外気温と同じため病原菌、寄生

虫卵が生存し、雑草種子が発芽できる可能性が高い。ショベルローダなどの切返しにより、

表面の原料を確実に内部へ移動させないと安全で衛生的な製品堆肥を生産することはでき

ない。 発酵温度は反応の結果生じる有機物の分解発酵熱量と外部への放熱量との平衡によっ

て決まり、原料への通気量を調節することにより放散熱量を増減させ堆積層内部の温度を

制御できる。 なお、原料の種類や性状などにもよるが、発酵による蓄熱あるいは過度の加温その他に

より、自然発火という恐れがあるので留意し、関連設備を設計する。

(2)切返し方式 ・発酵設備へ投入された原材料が、温度条件を確実に満たすには、表面及び底部の原

料が中央部へ移動できる切返し方式を採用しなければならない。機械切返し機は、

一部の投入混合物が所定の滞留日数を経ないまま発酵槽から排出される(ショート

カット)ことがないような切返し方式が望ましい。 ・発酵設備の壁面についても、外気温の影響を受けやすいから、必要に応じて放熱を

少なくする対策を施す必要がある。 【解説】 図3-4から判るように、通気を行っている堆積層の表面及び底部は外気温の影響を受

けやすく中央部よりも温度が低い。

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-105 -90 -75 -60 -45 -30 -15 0 15 30 45 60 75 90 10515

30

45

60

75

82

中心からの距離 (cm)

高さ(cm)

図3-4 発酵設備内混合物の内部横断面温度分布(堆積型、強制通気の場合) 堆積物の通気性改善、原料と空気との接触の均一化、発酵ムラや塊状化の解消を図り、

堆積物全体を 65℃以上の温度を 48 時間以上継続させるためには、表面及び底部の原料が中央部へ移動できる切返し方式を採用しなければならない。なお、機械切返し機は、一部

の投入混合物が所定の滞留日数を経ないまま発酵槽から排出される(ショートカット)こ

とがないような切返し方式が望ましい。 また、切返し効率を高めるため、外気温の影響を受けやすい発酵設備の壁部について、

横型発酵槽では、熱伝導率が低いコンクリート造、コンクリートブロック造とし、縦型発

酵槽などのように熱伝導率が高い鋼鈑により構成される場合には、地域によっては、最低

10cm 以上のグラスウール、ロックウールなどの断熱材により保温する必要がある。 (3)通気方式 ・発酵設備内混合物へ通気する場合、通気空気が原料全体へ均一に行き渡るような通

気方式とする。 ・通気方式には、送気方式と吸引方式の 2 種がある。 ・通気ブロアの運転方法としては、連続運転と間欠運転がある。 【解説】 発酵設備内混合物へ通気する場合、通気空気が原料全体へ均一に行き渡るような通気方

式とする。 通気方式には、発酵設備床面から発酵設備内の混合物へ通気する送気方式と発酵設備内

混合物から発酵設備床面へ向って吸気する吸引方式の2種がある。図3-5、3-6は送

気方式及び吸気方式による発酵設備内通気の例である。 送気方式は、ほとんどの施設で採用されている方式である。空気を通気ブロアにより堆

積物へ送気するため発酵設備床面は常に乾燥しており、通気抵抗も小さいが、発酵設備内

混合物を通過した後の空気が発酵設備室へ拡散されるため、臭気と水蒸気が発酵設備室内

へ拡散する。また、送気方式では、発酵設備内の原料や堆肥からの水分蒸発を増やすため

に、外気の代わりに空気加熱器により暖めた空気を送ることも可能である。

10℃

10 -20℃

50 -60℃

40 -50℃

20 -30℃

60 -70℃

70 -80℃

50 -60℃

30 -40℃

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吸気方式は送気方式に比べ発酵設備室への臭気や水蒸気の拡散を少なくでき、脱臭風量

を小さくできる特徴を持っているが、底部が湿潤状態になりやすく、送気方式に比べ送風

機の圧力損失を大きくとる等の配慮が必要である。 また、サイロ式発酵槽においては発酵温度の高い発酵設備内混合物中央部へ床部からの

通気とは別の通気を行うケースもある。縦型発酵槽やロータリーキルン式発酵槽では、原

料の水分蒸発を行わせると同時に発酵に伴い蒸発した水分を発酵槽内へ結露させずに排出

させるため、加熱した空気を送気方式により発酵設備内混合物へ供給している。 日本の施設においては、通常、通気ブロアの運転は連続通気とし、発酵設備内混合物の

温度パターンが理想的な発酵温度パターンになるように調整する方法であるが、海外の施

設では、大容量の通気ブロアを設置し、発酵設備内混合物の発酵温度が所定の温度の範囲

内になるように、通気ブロアの起動、停止により制御する方法も採用されている。また、

通気ブロアの運転を 1 時間に 30 分運転、30 分停止などの交互運転により、通気ブロアの電気代を低減させながら、発酵設備内混合物の温度を所定の温度に保つ制御方法もある。

図3-5 送気方式による発酵設備内通気

図3-6 吸気方式による発酵設備内通気

通気床

通気ブロア

発酵設備内混合物

通気床

発酵 設備 内混 合

吸気ブロア

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4)製品堆肥の条件 (1)製品堆肥の品質 ・堆肥流通の分野においても市場原理が入り始め、競合するシステムや競合する製品

堆肥などがあり、ユーザが信頼し歓迎する製品堆肥を生産しなければならない。 【解説】

従来、堆肥化は、畜ふん、生ごみ、汚泥などの有機性廃棄物の処理方法の一つとして考

えられていたため、ややもすると品質への配慮を欠くことがあり、減容化され目の前から

なくなればよいとの認識が強かった。そのために、ユーザのニーズに応えられず、市場形

成も困難であった。

また、今までの廃棄物処理から、リサイクル製品を生産しているとの意識へ転換し、更

なる良質の製品堆肥を生産できるようにしなければならない。当然のこととして競争原理

が働きはじめ、良質の製品堆肥を生産しないと、せっかく生産した製品堆肥が無料でもさ

ばけずに、単に減容化した廃棄物に変わるだけで、その処理に頭を悩ませ、処理費の掛け

捨てになる可能性もある。農家や、一般家庭などのユーザが信頼し、有償でも購入したい

と考える品質性状の製品堆肥を生産する努力が望まれる。

基本的な製品堆肥の品質とは、

a)病原菌、寄生虫卵が死滅していること。 b)雑草種子が不活性化されていること。 c)熟成が進行し、植物などへ悪影響がないこと。 d)肥料取締法による基準を満足すること。 e)有機物の腐熟化が進み土壌改良効果が高いこと。 f)水分が低下していること。 g)悪臭がしないこと。 h)異物がないこと。 i)利用者にとって、製品堆肥の取扱い、施用が容易であること。 a)b)は、製品堆肥の安全及び衛生に係わる、最も基本的な最低基準の項目で、これ

以外の品質項目をすべて満足していても、製品堆肥とは呼べない。

この項目は、前記のように一次発酵設備内において原料の発酵温度が 65℃で 48 時間を経

過すれば、問題無しとされる。

c)は、製品堆肥中の有機物性状として C/N 比を 20~30 程度とするが、無添加方式では、C/N 比は 20 以下、副資材を添加した方式では 30 以下とする。 一次発酵において、高い発酵温度を維持し、易分解性有機物の分解を行わせ、二次発酵

において可分解性有機物を分解すれば良いが、副資材としておがくずなどの木質系を使用

する場合には、おがくずなどに含まれるフェノールなどの有害物質の分解や C/N 比の低下に日数がかかる。 これらから、発酵方式、副資材の種類などにより所定の一次、二次発酵を終了したもの

とする。植物への影響については、幼植物試験において確認すれば容易に判断できる。 d)は、畜ふん、生ごみなどは従来どおり特殊肥料の分野に属し、届出制となっており、

元来、重金属などの有害物質は含まれていないか、土壌や植物にとって無視できる量とさ

れている。よって、豚ふん堆肥で銅、豚ふんと鶏ふんを原料とした堆肥で亜鉛の含有量が

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基準値を越える場合にのみこれらの含有量を表示する必要がある。 e)、f)、g)は、従来から、感覚的に製品堆肥の品質として言われてきていることで

あり、施設において、原料、発酵から製品堆肥に至るまで原料管理、運転管理をしておれ

ば、良質の製品堆肥が生産される。 h)は、原料として生ごみを用いる場合に多くみられ、ポリ袋、ガラスなどの異物混入

率を乾燥状態で1%以下とする必要がある。 i)は、従来、製品堆肥をバラで保管、運搬していたが、取扱いの利便性から、袋詰製

品堆肥の導入が増えてきた。また、製品堆肥を農緑地へ散布する場合、昔は手蒔きが多か

ったが、現在では、マニュアスプレッダなどで散布している。その場合、製品堆肥の水分

が高いと散布ができなかったり、逆に水分が低すぎると飛散してしまうことがあって、最

近では、散布のしやすさが求められている。 5)環境条件 (1)施設内の環境条件 ・堆肥化施設における環境阻害要因は、湿度、臭気、粉じん、騒音振動などである。こ

のうち他の廃棄物処理施設と較べると、湿度が高く、腐食性ガス、粉じんの発生量

が多い。

・湿度は発酵設備内が非常に高く、結露と多少の乾燥した状態が繰り返えされている。 ・腐食性ガスは、受入供給設備での嫌気的条件下で発生する硫化水素ガスと、発酵設

備において好気性発酵により生じるアンモニアガスが主である。 ・粉じんは、前処理工程の受入供給設備や発酵設備、製品化工程のふるい分け、袋詰

設備で多く発生する。 ・騒音は破砕機やブロアなど、振動は破砕機や粉砕機、振動ふるいなどにおいて特に

発生する。 【解説】 堆肥化施設内は他の廃棄物処理方式の焼却、水処理・汚泥処理施設と較べると、湿度が

高く、腐食性ガス、粉じんの発生量が多い。このような場所に他の施設と同様な仕様の機

械、電気設備などを設置すると、短期間の内に腐食により故障が発生しやすい。 このため、機械、電気設備に係わる仕様については設計段階から、堆肥化施設特有の雰囲

気を考慮し、また、運転管理においても日常点検を行い、定期的な補修を行う必要がある。 従来の堆積式など開放型の発酵設備の場合には、施設内で発生した水分、腐食性ガス及

び粉じんは外部へ拡散していたため、機械、電気設備は特別な対応策をとらなくてもトラ

ブルの発生がなく運転できていた。そのため、密閉した建屋内に機械切返し式を設置した

施設においても、通常の雰囲気で使用する機械、電気設備の仕様で設計、製作、工事が施

工される傾向があり、数年で機器類の鉄板減肉による強度低下、電動機、電気配線の絶縁

抵抗値の低下、動力制御盤内の電機部品の腐食が急速に進む。その結果、機械、電気設備

の部品の交換や補修費が嵩み、施設の運転が継続できなくなった施設もある。 環境対策の第一歩として、施設内の雰囲気は他の廃棄物処理施設、下水処理施設とは比

べものにならないほど悪い雰囲気であることを理解し、設計段階において適切な対策をた

てて施工すれば、ほとんどトラブルを発生せずに運転できるようになる。

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①湿度 湿度は前処理工程においては、水分が高い原料を取扱っているため、原料置場、原料貯

槽などから汚水などが浸出したり、もみ殻粉砕機の破砕中に水蒸気が発生するなどにより、

周囲より多少高い場合もあるが、全体として結露が生じるほど湿度が高い状態ではない。 しかし、発酵設備内では、非常に湿度が高く、通気ブロアで原料などへ通気中は 90~

100%であり、切返し時には原料の切返し作用により多量の高温の水蒸気が発生するため過飽和の状況となる。この過飽和水蒸気の状態は、切返し機が運転中及び運転終了後1時

間程度は継続するため、発酵設備内は、日中の大半の時間は過飽和水蒸気で充満された状

態である。そのため、発酵設備内の温度が低い個所である、発酵設備室建屋の天井部、壁

部には結露が発生し、一部の結露水が発酵設備内の混合物や発酵設備内の床面に落下する。 また、切返し機が運転していない時間帯の昼間及び夜間は、通気ブロアにより常に発酵

に伴う水蒸気が発酵設備内へ供給されるため、一部は上記と同様に発酵設備室天井部、壁

部に結露する。この結露は外気温が低下する冬季や夜間に増えるため、冬季の朝は、発酵

設備内の床面は結露水が溜まったり、濡れている状態である。 このように発酵設備内においては、結露と多少の乾燥した状態が繰り返えされている状

況である。 これらの高い湿度や結露にさらされると、機器類の腐食が急速に進み、電気設備では腐

食、絶縁不良などが発生し耐用年数が短くなる。 ②腐食性ガス 腐食性ガスは、受入供給設備や発酵設備が主な発生源である。受入供給設備においては、

水分の高い原料が嫌気的条件下で発生する硫化水素ガスが主であり、発酵設備では好気性

発酵で生じるアンモニアガスが主である。 発酵設備で発生するアンモニアガス濃度を表3-13に示した。原料の種類、添加物の

有無、発酵設備の形式などにより異なるが、臭気の強い鶏ふん、生ごみ及び生汚泥を発酵

させている場合に特にアンモニアガスの発生量が多いため、臭気濃度は高くなる。 鶏ふん、生ごみ及び生汚泥とそれ以外の有機性廃棄物の原料について、横形及び立形発

酵槽で発酵処理する場合の発酵設備内のアンモニアガス濃度を示す。 立形発酵槽では横形発酵槽と比較すると、原料の投入容積と比較し、発酵設備内の空間

が少ないため、発酵設備内の換気回数を多くしても、換気の絶対風量が少ないため、アン

モニアガス濃度は横形発酵槽に比してかなり高い。

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表3-13 原料の種類及び発酵設備型式による発酵設備内のアンモニアガス濃度 発酵設備内のアンモニア濃度(ppm) 横形発酵槽 立形発酵槽

項 目

通気中 切返し中 通気中 切返し中 鶏ふん、生ごみ、生汚泥 20~200 100~2,000 50~500 200~5,000 上記以外の有機性廃棄物 20~ 50 50~ 500 50~150 100~1,000

腐食性ガスの中で、硫化水素は、機器類のみならず、電気盤内の制御機器の素子やはん

だ付けした部分の金属を腐食させ絶縁不良や断線を起こすため、電気盤などの設置場所に

は注意を払う必要がある。アンモニアガスも硫化水素ガスと同様に、金属腐食を促進し電

気ケーブルの劣化を早める。

③粉じん 前処理工程の受入供給設備や発酵設備、製品化工程のふるい分け、袋詰設備で多く発生

する。発酵設備では切返し時に粉じんが多量に発生することがある。受入供給設備やふる

い分け、袋詰設備ではショベルローダなどによる堆積、搬送、貯槽への投入時に発生する。 粉じんは機器の内部に入りこみ、チェーン、軸受けなどの潤滑不良を起こす。また、電

気盤内の接点、接続部などへ入り込み、絶縁抵抗値を低下させたり、漏電を発生させたり

する。また、粉じんと前記湿度や腐食性ガスが同時に共存する状況では、鉄板に付着し競

合して腐食を速めたり、電気機器のトラブルが加速度的に進行する。

④騒音振動 騒音は破砕機やブロアなど、振動は破砕機や粉砕機、振動ふるいなどにおいて特に発生

する。 施設計画、設計においては、これらの発生する公害発生状況を十分把握し対策を取らなけ

ればならない。 作業員の労働安全衛生面の対策とした、極力、臭気や紛じんの発生が予想される個所を

無くすこと及び、臭気や紛じんが発生される場所での作業が行われる場合には、それらに

さらされる曝露濃度や時間を極力少なくすることが必要である。

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(2)周囲の環境対策 ・施設周囲の環境対策の内容として、臭気、排水、粉じん、騒音及び振動への対策があ

り、特に臭気対策が重要である。 ・臭気対策は、単に脱臭装置を設置するだけでは解決せず、原料の受入から発酵設備の

密閉化、臭気の拡散防止、脱臭装置の選定など施設全体において対策を取らないと効

果を発揮できない。 ・脱臭対策などにより発酵槽を密閉化するときは、結露水などの処理対策を適切に行わ

ないと汚水による地下水等の汚染が発生する。 ・粉じんは機器類を建屋内に収納することで対応できる。 ・騒音、振動対策は、それらの発生機器を強固な基礎などで固定し、囲うことで対応で

きる。 【解説】 周囲の環境対策の内容として、臭気、排水、粉じん、騒音及び振動がある。これらの中

で、施設を計画、建設、運転していく場合、周囲への環境対策として臭気が最も重要であ

る。 ①臭気対策 施設を建設する場合に、建設地近隣の住民からの問題提起のほとんどは臭気の発生であ

る。そのため、施設は住民に受け入れられる臭気防止対策をとる必要があり、重要なこと

は、脱臭対策を的確に行うことである。 まず、収集方式として畜ふん、生ごみなどの搬入車両は密閉形式の車両を使用し、臭気、

汚水などが搬入車両から漏れないようにする。 また、受入供給設備においては、搬入車両が建屋の中で原料を原料置場あるいは、貯槽

へ投入できるようにし、投入時の臭気の拡散を防止できるようにする。さらに必要な場合

は車輌が出入りする入口部にエアカーテンを取り付け臭気の内部からの流出を防止する場

合もある。またこれらの原料置場、貯槽をビニールシートや蓋などで覆い密閉化を図る。 一番臭気が発生する発酵設備は建屋内に収納するが、建屋に隙間が無いようにコーキン

グなどで密閉性を増し更に、発酵設備内から吸引することで臭気の拡散を防ぐ。現在では、

上記に加えて発酵槽室の内部をビニールシートで覆い二重の臭気対策を行うことで臭気の

拡散を完全に防止している例もある。 これらにより、発酵設備などから吸引したアンモニアを主体とした悪臭は、生物脱臭装

置、薬液洗浄脱臭装置などで脱臭する。 このように、収集から処理過程、最後の脱臭装置に至るまで施設全体として総合的な対

応を行って、始めて臭気問題を発生させない施設となる。 ②汚水対策 施設から排出される汚水については、原料からの浸出水など高 BOD の汚水は原則とし

てすべて発酵設備内において水分調整用に散布して処理する。 従来の開放型の施設では、発酵設備において発酵の過程に発生する臭気と一緒に水蒸気

も大気へ拡散させることで処理してきた。

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しかし、臭気対策を行うと発酵過程で発生した水蒸気は、すべて脱臭装置へ送られて脱

臭装置内で結露する。従来の土壌脱臭装置においては結露した窒素分を含んだ結露水は地

下浸透させていたが、最近の地下水汚染問題から、結露水を処理する必要がある。 そのため、脱臭装置を設置した施設では、結露水の脱窒装置を設置し排水処理をして河

川へ放流するか、結露水を定期的にバキュームカーで場外排出したり、あるいは、排水処

理場へ送水して処理することが行われている。

③粉じん対策 粉じん対策の基本は、粉じんの発生を押さえることと発生個所の密閉化である。

粉じんの発生を押さえる方法として、物理的に動かさない、湿度を上げるなどである。 そのため、無駄に副資材や返送堆肥を移動させない、必要に応じて加水を行う。 また、粉じん発生場所の密閉化により粉じんの発生を押さえることができ、振動ふるい

やトロンメルにはカバーを付けるなどである。全体として、施設内の機器を密閉した建屋

内に収納することで粉じんが施設外へ飛散することを押さえることができる。 ④騒音対策 騒音対策は、必要となったときは通気ブロア、脱臭ファンに対し騒音対策を行う。発酵

設備の壁際に取りつける場合には、雨よけを兼ねて鉄板でブロアを囲っているが、処理規

模が増えると、大きなブロアを設置することとなり騒音も大きくなるため、建屋内に収納

し騒音対策としている。

⑤振動対策 振動が発生する振動ふるいなどは、強固な基礎上に設置することで外部への振動公害を

防止できる。

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5.施設の設計 1)生産システムの基本 ・堆肥化施設の設計に当たっては、基本計画策定構想を十分に理解し、原料の性状、地

域特性、施設周辺の状況、住民意識、既存の有機性廃棄物処理施設の稼動状況、堆肥

需要動向などを調査し、必要あるときは計画構想を変更し、実施設計を行う。

・取扱う原料の性状を確実に把握して、過剰仕様、過剰投資にならない最適な生産システ

ムを選定する。

・原料については、堆肥化施設への搬入に先立って、水分を低下させるなどの前処理を

行い、運搬時の環境問題抑制、堆肥化施設の建設費、運転経費の削減を図る。 【解説】 堆肥化施設の実施設計に当たっては、地域環境、原料の発生状況や種別性状その他が基

本計画の構想と相違することが考えられる。基本計画の構想を十分に理解したうえで、設

計の対象となる原料の性状、地域特性、施設周辺状況、住民意識、既存の有機性廃棄物処

理施設の稼動状況などを調査する。その結果と基本計画との比較検討の中で、必要あると

きは計画内容を変更し実施設計を行う。

原料を搬入する前に、脱水、乾燥、異物除去などの対策を行っておくと、廃棄物運搬に

伴う環境問題の予防、施設受入時の原料処理量の減少、原料性状の良好化が図られ、機器

点数の削減、設備の容量の減少などに伴う建設費、運転経費の削減が図れ、事業執行に有

利である。

この場合、堆肥化事業者は原料排出者又は原料となる廃棄物等の収集運搬事業管理者と

協議し、協力を受けることが必要である。

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図4-1 簡易型のフローシート

一次発酵設備 ニ次発酵設備

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図4-2 標準型のフローシート

一次発酵設備

ニ次発酵設備

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2)前処理工程の設計 (1)前処理プロセスの選定 ・前処理工程は、原料の水分や有機物量などを把握し、原料の性状を発酵設備投入条件

に設定する方式を決定して必要な処理を行う。 ・原料性状を発酵設備投入条件に設定する方式には、無添加方式、添加方式、返送方式、

乾燥方式、返送方式+添加方式、返送方式+添加方式+乾燥方式及び返送方式+乾燥

方式がある。 【解説】 施設では、良好な好気性発酵を行わせるために、原料の水分や有機物量などを発酵設備投

入条件に設定する前処理工程が重要である。発酵設備投入条件に合わせる前処理工程での原

料性状の設定方式には、無添加方式、添加方式、返送方式、乾燥方式、返送方式+添加方式、

返送方式+添加方式+乾燥方式及び返送方式+乾燥方式がある。表4-3に代表的な前処理

設定方式を示す。 ①添加方式

副資材を添加するもので、もみ殻やおがくずの入手が容易で入手コストが安い場合、原料

の通気性の改善と水分調整が簡単にできるうえに、運転管理が容易で冬季でも、もみ殻やお

がくずの水分が低いため安定して運転ができる。但し、年間をとおして副資材が安定して確

保できることが必要であり、そのための貯蔵設備が必要になる。

②返送方式

製品堆肥を水分調整材として用いるもので、もみ殻やおがくずなどの水分調整材の確保が

不用であり、かつ、製品堆肥の実際の発酵日数は返送堆肥の返送量が増えれば増えるほど公

称の発酵日数より長くなるため、発酵設備において熟成が進み、更に良質の製品堆肥となり、

また、製品堆肥に生息する発酵菌が好気性発酵を促す効果も見こめる。しかし、返送堆肥は、

添加方式と比較すると通気性が劣り、また発酵設備での発酵条件により、製品堆肥の水分が

影響を受けるため、冬季には、所定の水分まで低下した返送堆肥を得ることは難しく、その

ため、乾燥設備を必要とする場合が多い。

③返送方式+添加方式

返送方式における、冬季の製品堆肥の水分上昇をもみ殻やおがくずなどの副資材により補

うもので、両方式の特徴を兼ね備えたものである。

なお、添加方式、返送方式、返送方式+添加方式のいずれも、原料に副資材や返送堆肥を

混合して発酵設備へ投入するため、発酵設備はこれらを受入ることにより容積が大きくなる。

④乾燥方式

原料あるいは返送堆肥を乾燥して、発酵槽投入時の原料の水分を調整する。乾燥方式が前

記の方式と大きく異なるのは、原料の有機物含有量を減少させないで、水分のみを減少させ

る特徴をもっていることである。そのため、原料の水分が高く、有機物含有量が少ない、乳

牛ふん、消化下水汚泥、集落排水汚泥などを好気性発酵させ、所定の発酵温度を維持させる

ためにはこの乾燥方式あるいは前記の脱水方式のいずれか採用する必要がある。 また、乾燥方式を採用すると、原料や返送堆肥の重量及び容量が減少するため、発酵容量

を小さくすることができる。なお、乾燥方式での被乾燥物の乾燥に伴う臭気の拡散を防止す

るため、まず、臭気の発生する恐れの無い返送堆肥を乾燥し、それでも水分の蒸発量が不足

する場合に、原料の乾燥を行う。

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表4-3 前処理工程における発酵設備投入条件設定方式 種類

比較項目 添加方式 添加+返送方式 返送方式 乾燥方式

概要 発酵設備投入物の水分調整や通気性の改善を

目的に、もみ殻やおがくず等の副資材を添加す

る方式である。

発酵設備投入物の水分調整や通気性の改善

を目的に、副資材の添加及び製品堆肥の一

部を返送する方式である。

製品堆肥の一部を水分調整目的に返送する方式で

ある。 返送堆肥を乾燥させ、発酵槽投入物の水

分を維持する方式が一般的であるが、原

料の水分が高い場合には、原料の一部又

は全量を乾燥させる場合もある。

主原料の性状 高水分の場合は添加量が多くなり、粘性の高い場合は混合設備に注意を要する。

原料の性状の影響はあまり受けないが、粘

性の高い場合は混合設備に注意を要する。 原料の水分が高い場合や有機物含有量が少ない場

合はあまり適さない。 どのような原料にも使える。

副資材の 入手の容易さ

地域性はあるがもみ殻あるいはおがくずの入

手は比較的容易である。 もみ殻、おがくずの入手は比較的容易であ

る。 不要 不要

発酵日数 副資材の発酵期間が必要であり、返送方式と比

較すると発酵日数が長くなる。一次、二次発酵

の合計日数は、もみ殻系で 30~60 日、木質系で 40~110 日の場合が多い。

副資材の発酵期間が必要であり、添加方式

と返送方式の間の発酵日数がかかる。

一次発酵として 7~14 日、二次発酵として 14~35日、合計 21~49 日が採用される場合が多い。 返送量が多いほど実際の発酵日数が長くなる。

原料を乾燥する場合には有機物含有率が

高くなるため、一次発酵として 10 日、二次発酵として 20 日、合計 30 日が採用される場合が多い。

敷地面積 副資材の発酵期間及び量分だけ発酵に必要な

面積が広くなる。また、副資材の貯蔵面積が必

要である。

副資材の発酵期間及び副資材と返送堆肥の

量分だけ発酵に必要な面積が広くなる。ま

た、副資材の貯蔵面積が必要である。

返送堆肥の量分だけ発酵に必要な総容量が増え面

積が広くなる。 発酵に必要な面積は一番狭くなるが、乾

燥機や温風を作るための設備が必要であ

る。

製品 堆肥

副資材は、土壌改良材の役目を果たす。 製品堆肥となった場合、もみ殻やおがくずは分

解しにくいため、目立ちやすい。 また、見掛比重が小さいため水田散布の場合、

水に浮かないよう施用時期に注意する。 製品量は全方式の中では多くなる。

返送堆肥を使用する分だけ、製品堆肥量は

少なくなる。 肥効成分は原料に由来する。 水分は全方式の中では高くなる。 製品堆肥の生産量は全方式の中で最も少ない。

肥効成分は原料に由来する。

運転管理

副資材の水分がほぼ安定していることから、発

酵槽投入条件の管理が簡単なため、運転管理は

容易である。

原料及び副資材の水分がほぼ安定している

ことから、返送堆肥の水分も安定する。 冬期に返送堆肥の水分が高くなると連続運転がで

きなくなるので、十分に施設の保温や発酵管理を

行う必要があり、運転管理が重要である。 すべての方式の中で、一番運転管理が難しい方式

である。

乾燥方式にもよるが発酵槽投入物の水分

を安定に維持できるため、管理は比較的

容易である。

副資材の管理 副資材を安定的に入手できるような管理が必

要である。 副資材を安定的に供給するための管理が必

要である。 発酵槽投入物の水分を維持するために必要な返送

率により返送量を求める必要があり技術を要す

る。

全方式の中では運転操作は最も楽である

が、機器の保守管理が必要である。

運転員の 作業環境

副資材による粉じんが発生しやすい。 副資材の添加により通気性が確保されるため、

好気性発酵が促進され、嫌気時に発生する臭気

は抑制される。

返送品や副資材による粉じんが発生しやす

い。 副資材の添加により通気性が確保され、ま

た、臭気は副資材や返送堆肥により抑制さ

れる。

夏場は返送堆肥が乾燥し粉じんが発生しやすい。

冬場は返送堆肥の水分が高くなり易く、場合によ

っては嫌気性発酵ぎみとなりイオウ系の臭気が発

生する。

作業環境は良好に維持しやすい。 原料乾燥時に発生する特有の臭気対策、

安全対策が必要である。

建設費 建設費は比較的安い。 建設費は比較的安い。 建設費は比較的安い。 乾燥方式によるが、建設費は高めである。

運転管理費 もみ殻、おがくずなどの副資材購入費用が必要

な場合もある。 副資材購入費用が必要である。

全方式の中では最も安い。 返送堆肥量が添加方式と比較すると多くなるため

搬送などに人手を要する。

乾燥方式によるが、運転経費は一番高い。

施設の実績

畜ふん、生ごみ、汚泥などすべての原料の施設

で採用されている。 畜ふん、生ごみ、汚泥などすべての原料の

施設で採用されている。添加物の使用によ

る運転管理の容易さと返送堆肥の使用によ

る添加物使用量の減少、適度な製品堆肥の

生産量などから、一番実績が多いプロセス

である。

水分が少ない畜ふんでは、最も採用されている方

式である。 全プロセスの中では採用される場合が一

番少ない。 原料の乾燥時に多少の臭気が発生するの

で、燃焼脱臭などを乾燥機に付属する。

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3)発酵工程の設計 (1)設計の方針 ・発酵設備は生産システムの中核となる施設であり、目的とする製品堆肥を生産するに

必要な機能を保持するよう留意する。特に、所定の発酵温度を維持できる施設としな

ければならない。 【解説】 昔から営々と堆積式により堆肥化を行ってきた歴史があるため、堆肥に対する経験や実績

がなくとも、なんとなく簡単に処理できそうな雰囲気のため、安易に計画、建設し、その結

果、農緑地へ施用できる品質の堆肥が生産されない例がある。また、夏場はどの施設でも、

水分が低下した良質の製品堆肥が生産できるが、冬季になると、同じ原料、発酵条件であっ

ても発酵温度が上昇せず、その結果製品堆肥の水分も高く、多少臭気も残り、農家が使える

ような製品堆肥が生産されないばかりか、返送堆肥の水分が下がらず、その結果、施設の運

転ができない例もある。 従って、発酵設備の設計に当たっては、発酵温度を最も重要視し、良質で安全、衛生的な

製品堆肥の生産のためには最低限所定の発酵温度を維持できる機能を持ち、管理運営できる

施設となるよう留意する。 冬季でも高い発酵温度を維持できれば、発酵過程での水分蒸発が行われるため、堆肥の水

分も低下し、製品堆肥の品質も良くなり、返送堆肥の水分も低下したものとなるため、冬季

においても所定の処理量を処理できる。冬季に十分な発酵温度を得られるかどうかを見極め

るには、まず、原料の種類、水分、発熱量、総乾物分解率などの各種条件を正確に規定し、

それに発酵槽の機種による水分蒸発量が決まると、冬季にどのような量と水分を持った製品

堆肥が生産されるかが想定される。 また、見掛比重や発酵日数、貯留日数についても、明確に規定することで、誰が設計、建

設しても所定の受入能力を持つ発酵設備、副資材置場、製品堆肥置場となる。 置場については、重機類の最大積み上げ高さにより、それらの堆積高さが決まるが、これ

についても明確に規定することが、ユーザにとっても使い勝手のよい所定の貯留容量を持つ

施設となる。

(2)発酵日数 ・発酵日数は一次発酵と二次発酵の合計日数である。 ・発酵日数は、施設の休止日数を考慮し、寒冷地では、外気温度により発酵日数を延長

する。 ・発酵日数は原材料の種類により異なり、また副資材の有無、発酵方式、切返し頻度の

大小、通気の有無により変わるので、これらを、すべて考慮して発酵日数を設定する。 ・発酵日数は、原材料が発酵設備内に滞留している日数のため、原材料の発酵設備への

投入日数は運転日数から求められる。発酵設備の設計容量はこの投入日数を基本とす

る。 【解説】 発酵日数は易分解性有機物の分解に必要な一次発酵日数とその後引き続き行われる可分解

性有機物の分解に必要な二次発酵日数とする。しかし、原料の発酵条件において、冬季の外

気温が低下する地域においては、発酵設備投入物の温度が発酵できる温度まで立ちあがるの

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に日数がかかるので、その日数分は上記投入日数に加算する必要がある。加算する日数は、

第3章 3-4-6で述べたように、外気温が 0℃なら発酵日数に2日加え、外気温がマイナス 10℃では4日を加える。 発酵日数は原料の種類により異なり、また副資材の有無、発酵方式、切返し頻度の大小、

通気の有無により変わる。参考として、原料別発酵日数を表4-14、表4-15に示す。 在来の堆積式では一次発酵、二次発酵では切返し頻度が少なく通気を行わず、また、原料

全体を均一に切返しを行うことが難しいことなどから、一次発酵日数は 30~60 日、二次発酵日数として 90~180 日、合計 120 から 240 日以上必要であり、ここに記載する発酵日数を採用することはできない。 発酵日数は易分解性有機物が多いほど短期間である。データ的にはC/N比が小さいもの、

BODが大きいものほど発酵が早い。 原料別では、生ごみ>汚泥>畜ふん(鶏ふん>豚ふん>牛ふん)となる。 副資材も同様で、C/N比が小さい稲わらは大きなおがくずよりも発酵日数が短い。

しかし、副資材は一般に発酵による分解が遅いため、副資材を使用すると発酵日数が長くな

る。また、木質系の副資材は特にC/N比が大きいためとフェノールなどの植物への有害物

質を含有しているため、木質系の副資材を使用する場合には最低一次、二次発酵の合計で 6ヶ月程度の発酵日数が必要である。 発酵日数は、原料が発酵設備内に滞留している日数である。そのため、施設の運転状況に

より日曜日や土、日曜日に休止する場合にはそれらの日数を考慮した発酵日数となる。原料

の発酵設備への投入日数と発酵日数とは異なり、施設休止日がある施設では、休日が発酵日

数に入るため投入日数が短くなる。従って、一次発酵設備、二次発酵設備の設計容量は、そ

れらへの投入日数を基本に設計を行う。製品置場などの設計容量も同様とする。

表4-14 原料別発酵日数(日) (無添加、一次発酵機械切返し+通気有り、二次発酵堆積式+通気有り)

原料の種類 一次発酵 二次発酵 合計 牛ふん 10~14 21~35 31~49 豚ふん 10~14 21~28 31~42 畜ふん 鶏ふん 7~14 14~21 21~35

生ごみ 7~14 14~21 21~35 生汚泥 7~14 14~21 21~35

汚泥 消化汚泥 7~14 14~21 21~35

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表4-15 原料別発酵日数(日) (添加、一次発酵機械切返し+通気有り、二次発酵堆積式+通気有り)

原料の種類(副資材有り) 一次発酵 二次発酵 合計 原料 副資材

もみ殻系 14~21 28~42 42~ 63 牛ふん

木質系 14~21 28~90 42~111 もみ殻系 14~21 28~42 42~ 63

豚ふん 木質系 14~21 28~90 42~111 もみ殻系 10~14 21~28 31~ 42

畜ふん

鶏ふん 木質系 10~18 28~90 38~108 もみ殻系 10~14 21~28 31~ 42

生汚泥 木質系 10~14 28~90 38~104 もみ殻系 10~14 21~28 31~ 42 汚泥

消化汚泥 木質系 10~14 28~90 38~104 もみ殻系 10~14 21~28 31~ 42

生ごみ 木質系 10~14 28~90 38~104

注:副資材のもみ殻系はもみ殻、稲わら、麦稈類とし、木質系はおがくず、 バーク、チップとする。 運転条件として、一次発酵は機械切返し式により1日に1回攪拌、二次発

酵は、堆積式により1週間に1回ショベルローダにより切返し、一次醗酵

設備、二次発酵設備とも通気する。一次発酵で通気、二次発酵で通気を行

わない場合には、二次発酵日数として無添加方式で 10~20 日、添加方式で 20~30 日ほど発酵日数が加算される。

(3)切返し頻度 ・発酵設備での切返しは、原料の破砕、混合による均一化、空気の供給、表面更新作用、

水蒸気の揮散作用があるが、その反面、切返しにより発酵温度を低下させる。 ・堆肥化原料中の有機物含有量や切返し機種により、最適の切返し頻度を設定し、切返

しによる種々の発酵促進効果を高め、短所である放熱を極力少なくするようにしなけ

ればならない。 【解説】 切返し頻度は一般的に多いほど、堆肥化原料に対して物理的な破砕作用による原料の細粒

化と混合作用による均一化が行われる。加えて切返しにより空気の供給と堆肥化原料と微生

物との表面更新作用が活発に行われるため好気性発酵が促進される。同時に切返しにより水

蒸気の蒸発が同時並行で行われるため原料の水分の低下が起こる。しかし、あまり切返し頻

度が多いと、発酵により昇温した原料からの放熱量が増加し、返って発酵温度を低下させる

恐れがある。このため、切返し頻度が多い発酵設備では密閉型として放熱量を減少させると

か、発酵設備の外壁を保温材で保温する、あるいは他の熱源により加温し発酵温度が低下し

ない方法を採用している。 逆に切返し頻度が少ない場合には、上記の切返しに伴うメリットを享受できないため、好

気性発酵が効率的に行われず発酵日数が長くなる。 このように、切返しは好気性発酵にとっては良い面が多いが、放熱量を増やすため好まし

くない面も持っている。 一般的に横形などの発酵設備では攪拌頻度は1~2回/日、密閉式の発酵設備で5~20 回/

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日、ロータリーキルン式では初期発酵に使う場合は数回/分、一次発酵として使う場合は数回/時間である。密閉トンネル式や密閉容器式の発酵設備の場合は、原料の水分調整を行った後は密閉式の発酵設備へ投入し通気管理を行うだけである。この種類の発酵設備では切返しが

ないため、均一に通気が行われかつ原料全体の発酵温度が所定に到達させるため、密閉方式

として通気量を管理することにより、発酵設備からの放熱を押さえ切返しができない欠点を

補っている。 また、集落排水汚泥やメタン発酵後の消化液を脱水した固形物など、原料中に有機物含有

量が少ない場合や、水分の多い乳牛ふんに多量の返送堆肥や水分調整材を加えて発酵させる

場合には、発酵槽投入時の条件としての発酵温度が上昇し温度を保つだけの発熱量が少ない

ため、好気性発酵に必要な酸素要求量も少ないため、通気量を絞りかつ、切返し頻度を少な

くして放熱を少なくして発酵温度を維持するようにしなければならない。 (4)通気量 ・通気は、原料の好気性発酵に必要な酸素の供給と、発酵に伴い発生する水蒸気を原料

から排除するために必要である。 ・通気量は、原料の有機物量が多いほど多くなるため、発酵設備投入時のC/N比が小

さいほど通気量を多くする。また、原料の種類、水分、季節などによっても変える。 【解説】 通気は原料の好気性発酵に必要な酸素の供給と、発酵に伴い発生する水蒸気を原料から排

除するために必要である。 好気性発酵に必要な酸素量は、原料の種類、すなわち易分解性有機物の量により決まり、

分解しやすい原料ほど必要な通気量が多くなる。逆に消化汚泥のように有機物の含有量が少

ない場合は少量の通気量でよい。 通気量は上記のように易分解性有機物の含有量により決まるため、発酵初期に易分解性有

機物が多く、活発に好気性発酵が行われている時期には多量の空気を必要とし、二次発酵設

備のように易分解性有機物の分解が終了し、可分解性有機物の分解時には少なくて良い。 また、水蒸気を排除するための空気量は、実際の施設の運転実績から酸素供給用の数倍必

要である。この水蒸気を原料から蒸発させるには、温度が高い時期、すなわち一次発酵設備

の前半部において多量の発熱が起こるので、この時期に適切な通気を行うと多量の水蒸気を

蒸発させることができる。 なお、通気量は原料の種類、水分、季節などにより必要な空気量は異なる。夏季は外気温

が高く微生物の活動が活発なため、易分解性有機物の分解が促進されることにより通気量を

多くし、冬季は放熱を防ぐため通気量を絞る場合が多い。しかし、このように通気量を管理

すると、夏場には一次発酵設備において水分蒸発が促進されるため、投入物の水分が低下し

すぎ、微生物の生息環境の水分 30%を下回る場合が発生する。そのため、発酵設備内へ散水し投入物の水分を 40~50%程度に保つ操作が行われる。逆に冬季には外気温が低く、放熱が大きくなるなど堆肥化には悪い条件のため、発酵温度を高く維持するために、通気量を絞る

と投入物からの蒸発水分量が少なくなり、その結果、堆肥の水分が高くなる。 冬季にはこの悪循環が発生することにより、返送堆肥の水分が上昇し、発酵設備投入時の

水分の上昇を招く。その結果、最適発酵条件を満足しなくなって、好気性発酵ができなくな

り、その結果として運転不能の状況になる場合がある。

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従来の施設で良好な堆肥が生産されなかったり、発酵に失敗するのは、冬季の上記現象に

よる。 この現象を回避するため、冬季においては、発酵設備投入時の原料水分を通常よりも低減

させたり、発酵設備において加温設備により槽内堆積物の水分を低減させる。 通気量は発酵設備投入時のC/N比により決まるため、鶏ふん、生汚泥、生ごみなどで無

添加方式や副資材の添加量が特に少ない場合などでは多くなる。

表4-16 原料別通気量 (m3/min/投入量1m2当たり) 原料の種類 一次発酵 二次発酵 備 考

牛ふん 0.05~0.10 0.05~0.10 豚ふん 0.07~0.10 0.05~0.10 畜ふん

鶏ふん 0.10~0.15 0.05~0.10

生ごみ 0.10~0.15 0.05~0.10

生汚泥 0.07~0.10 0.05~0.10 汚泥

消化汚泥 0.05~0.10 0.05~0.10

通気量の下限は、発酵設備投入時の原料条件として返送堆肥や副資材の量が多くC/N比

が高い場合に使い、上限は無添加方式などで C/N比が低い場合に採用する。 二次発酵においては、切返し頻度が数日に1回程度以下の場合には通気がゼロから下限値

の数値を使用し、切返しの頻度が1週間に1回程度以上の間隔がある場合には上限値を採用

する。

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(5)発酵温度 ・発酵設備投入物の温度を上げ、維持することが、安全で衛生的な良質の製品堆肥を生

産するための最も重要な指標であり、確実に、発酵温度 65℃を累積して 48 時間以上に保持できるシステム、発酵装置を採用する。

・一次発酵設備内の最高温度や高温の継続時間及び温度分布をチェックすることにより、

好気性発酵が良好に行われているかどうか判断できる。 【解説】 所定の発酵温度まで原料の温度を上げ、それを維持することが良質の製品堆肥を生産する

ための最も重要な指標である。 65℃以上の堆積物品温を 48 時間以上保持することは、原料中に混入している可能性があ

る病原菌、寄生虫卵などの死滅、飼料穀物など雑草種子の不活性化のための最低条件とされ

ており、この条件を満たすシステム、発酵装置を採用する必要がある。 有機性廃棄物を好気性の発酵条件を満たすように、堆肥化原料を水分、有機物量、pH、

粒径、温度などの原料条件を設定して調整し、それを好気性発酵ができる切返し機能を持つ

発酵設備へ投入すると、一次発酵設備の初期の段階、通常は夏場で1~5日、冬季で3~7

日の滞留日数の期間で上記の温度を超え 70~80℃程度まで上昇する。この期間に切返しを行うと、切返し時には一時的に発酵温度は低下するが、その後急速に温度が上昇する。その高

温の期間を3~5日程度経過した後、除々に温度が低下し一次発酵設備出口では 50℃以下となる。 図4-5は発酵設備内での温度パターンの例であるが、一次発酵設備内の最高温度や高温

の継続時間及び一次発酵設備内での温度分布をチェックすることにより好気性発酵が良好に

行われているかどうかの判断材料となる。特に一次発酵設備の投入部から1週間目までの温

度分布は最重要ポイントである。上記の温度パターンが維持できておれば良好な発酵条件、

運転管理条件で運営されているとみなされるが、温度パターンが変動した場合は留意しなけ

ればならない。 良くある例としては、冬季には原料の温度低下、水分低下の遅れにより発酵温度が多少低

下する。その対策として通気量の減少、発酵設備投入時の水分を下げるなどの対策をとるが、

それらの対策を採用しない場合には、多少嫌気性発酵ぎみとなり発酵温度が低下する場合が

多い。 今までの長い堆肥化の実績から、畜ふん、生ごみ、汚泥などの有機性廃棄物は、発酵菌な

どの添加などをしなくとも、発酵設備投入時の発酵条件を整えて、通気などの発酵管理を行

えば良好な好気性発酵が行われ、発酵設備内での投入物の温度として 65℃を 48 時間以上を維持した典型的な温度パターンを示す。 これらから、発酵設備内の堆肥化原料などの発酵温度をチェックすることで容易に発酵状

況を知ることができる。

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図4-5 発酵設備内での温度パターン例

出典:有機質資源化推進会議 有機廃棄物資源化大辞典

(6)有機物分解率 ・有機物分解率は原料により異なり、C/N比が小さいもの、BODが大きいものほど

有機物分解率が大きい。 ・発酵工程における有機物分解率は 20~75%程度で、一次発酵段階でその 60~80%が分解し、二次発酵以降で残りの有機物が分解する。

・有機物が微生物により分解したときに発生する有機物分解発熱量は、原料、副資材に

より異なる。返送堆肥の有機物分解発熱量は発酵計算ではゼロとする。 【解説】 有機物分解率は原料により異なり、C/N比が小さいもの、BODが大きいものほど有機

物分解率が大きい傾向にある。有機物分解率は原料により差異があり 20~75%程度で、一次発酵でその 60~80%が分解し、二次発酵以降で残りが分解する。 有機物分解は発酵設備投入時の発酵条件を満足している場合において、切返し機能が大、

切返し頻度が多い、通気量が多い、加温するなどの操作条件を行うと速くなる。発酵条件を

満足していない場合は、上記操作条件を行っても有機物分解は速くならず、逆に水分の蒸発

のみが促進され、発酵ではなく乾燥が行われる。しかし、どのような発酵システムを採用し

ても、それぞれのシステムでの必要発酵日数を保持すると最終的な有機物分解率は同じとな

る。 有機物分解発熱量は、有機物が微生物により分解したときに発生する熱量で、原料により

異なる。なお、発酵計算時には、返送堆肥の有機物分解はゼロとする。 表4-17に有機物分解率と分解発熱量を示す。

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表4-17 原料別有機物分解率及び分解発熱量 有機物分解率(%)

原料の種類 有機物分解率 一次発酵 二次発酵

分解発熱量 (kcal/kg)

乳牛ふん 40 30 10 4,500 牛ふん

肉牛ふん 40 30 10 4,500 豚ふん 35 28 7 4,500

低床式採卵鶏 30 25 5 3,500 高床式採卵鶏 30 25 5 3,500

畜ふん

鶏ふん ブロイラー 30 25 5 2,500 石灰添加 20 15 5 4,500

生汚泥 高分子添加 30 25 5 4,500 石灰添加 20 15 5 4,500 汚泥

消化汚泥 高分子添加 30 25 5 4,500

生ごみ 75 60 15 4,500

表4-18 副資材の有機物分解率及び分解発熱量 有機物分解率(%)

副資材の種類 有機物分解率 一次発酵 二次発酵

分解発熱量 (kcal/kg)

生もみ殻 10 5 5 2,500 もみ殻

粉砕もみ殻 12 6 6 2,500 おがくず 5 2 3 2,500 稲わら 30 15 15 3,000 チップ 3 1 2 2,500 バーク 5 2 3 2,500

(7)水分蒸発量 ・水分蒸発量は、有機物分解率と原料からの放熱に影響される。有機物分解率と分解発

熱量から、発酵過程での総有機物分解発熱量が求まり、この発熱により原料の温度が

上昇し同時に水分の蒸発が行われる。 ・放熱は発酵設備の機種や外気温に影響されるから、放熱を減らすために原料の物理形

状や発酵設備室への放熱防止対策を行う。 【解説】 水分蒸発量は、有機物分解率と原料からの放熱に影響される。有機物分解率と分解発熱量

から、発酵過程での総有機物分解発熱量が求まる。 この発熱により原料の温度が上昇し同時に水分の蒸発が行われる。水分の蒸発において、

理論的には水分蒸発熱量の値は 600kcal/kg である。しかし、実際の施設では原料からの放熱や通気量の加減などで理論値より少ない水分蒸発しかできない。 表4-19に発酵槽機種毎及び外気温による水分蒸発熱量を示す。なお、夏季の場合は外

気温が高くなるため上記の数値から 100 kcal/kg を引き、冬季には 100 kcal/kg を加算した数値を発酵設備の機種毎の水分蒸発熱量とする。

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表4-19 発酵設備の機種毎及び設置場所による水分蒸発熱量 (kcal/kg)

発酵方式 発酵設備内層

厚 屋内設置*1 屋外設置*2

0.8m 以下 1,000 1,200

1.5m 以下 900 1,100 横形

1.5m 以上 800 1,000 機械式

立形 800 900

堆積式 900 1,100

トンネル式、回分式 800 900

*1 屋内設置は発酵槽を鉄骨スレートの密閉構造の建屋内に収納した場合である。 *2 屋外設置は屋外やビニールハウス内に設置する場合など発酵槽内の温度が外気温

と変らない状況の場合である。

放熱は発酵設備の機種や外気温に影響される。放熱を減らす方法として、原料をできるだ

け一箇所にまとめ、外気との接触面積を減らすことである。そのため、発酵設備での原料の

層厚を高く、槽幅を広くして原料の外気との接触面積をできるだけ小さくする。また、でき

るだけ発酵設備を覆う発酵設備建屋などを小さくすること望ましい。 また、発酵設備の壁の厚みを厚くしたり、発酵設備を断熱性の高い材料の壁を用いた建屋

内に収納したり、防臭を兼ねて発酵設備建屋内をさらにビニールシートなどで覆い2重構造

の建屋にする。また、発酵設備建屋の内面にグラスウールやウレタン吹き付けなどを施工し

断熱性を高めている施設もある。ただし、それらの断熱材は発酵に伴う水蒸気を吸湿しない

ようビニールで表面を覆ったり、各種ライニングを行う必要がある。 従来の施設では、外気温の低下に伴う発酵設備内の高温物質と外気の低温部との境界面で

発生する結露をあまり考慮していなかったが、施設に脱臭設備を設置するにつれて、密閉化

すればするほど、内外面の境界面で多量の結露が発生する。この結露を円滑に発酵設備外へ

排除する排水設備を設ける。 (8)発酵設備の運転時間 ・発酵設備で使用される攪拌装置の運転時間は、大規模の施設を除き、原則として昼間

の6時間以内とするが、安全に運転管理ができる自動運転方式の攪拌装置の場合は、

この時間に係わらず運転を行うことができる。 ・通気設備は、攪拌作業時間に関係なく24時間連通気あるいは間欠通気を行う。 【解説】 発酵設備で使用される攪拌装置の運転時間は、処理規模が 100t 以上で施設の運転が 16 時

間以上の連続運転をされる場合を除き、通常の昼間運転主体の場合においては、作業員の勤

務時間との関係から昼間の6時間以内とする。 しかし、自動運転方式の攪拌装置の場合は、故障やトラブル時に攪拌装置などが安全に停止で

きるシステムを取られておれば、運転は昼間に限らず、夜間でも運転を行うことができる。 また、通気設備については、上記に係わらず 24 時間連続あるいは間欠通気を行う。

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(9)発酵設備の容量 ・発酵設備の容量は、発酵に伴い、有機物の分解と水分の蒸発により重量と容積が減少

するため、 発酵設備有効容量=(投入物の容量+排出物の容量)÷2×発酵設備への投入日数 として決定する。

・発酵設備の寸法は、投入口部においては、投入物総量を受け入れられる容量を保有し、

かつ 10%程度の余裕をとらなければならない。 【解説】 発酵設備の容量は、発酵に伴い、有機物の分解と水分の蒸発により重量と容積が減少する

ため、全体の発酵設備容量は次式で決定する。 V=(Q1+Q2)÷2×t

ここで、 V :発酵設備有効容量(㎥) Q1:投入物(発酵設備に投入される原料と副資材、返送堆肥)の

容量(㎥/日) Q2:排出物(発酵設備から取り出される堆肥)の容量(㎥/日) t :発酵設備への投入日数(日)

ここで重要な項目はこれら混合物の見掛比重である。従来、発酵設備の容量を決定するた

めに重要な見掛比重については、原料の種類や返送堆肥あるいは副資材の種類や量により、

条件に差異があることなどから、あまりデータが採取されてなく、施設計画に当たり見掛比

重の数値が不明確であったため、他の条件が同一であっても、発酵設備投入容量がバラバラ

で、どの数値が現実に合致しているのかがわからなかった。 本書では、各種原料の見掛比重は各種データを元にして、これらが混合した後の見掛比重

をまとめて示すことにより、原料置場の容量、発酵設備投入容量、製品堆肥の量、製品堆肥

置場の容量を統一するものである。 見掛比重は小さく想定するほうが、容積が大きくなり安全側であり、多少原料条件などが

変動しても発酵設備が小さすぎて所定の原料を受入れられないなどのトラブルをなくすこと

ができる。 混合物の性質として、粒径の大きなものと小さなものを混合すると大粒子の間に小粒子が

入り込み見掛比重が大きくなる。また、発酵設備内での堆肥化原料の層厚が高くなると圧密

により見掛比重が大きくなる。 このことから、発酵設備投入時の混合物の見掛比重KTAは、混合前の原料、返送堆肥及

び副資材の見掛比重KTBに、発酵設備投入時の混合効果(原料の層厚による見掛比重掛け

率K1、返送堆肥の返送による見掛比重掛け率K2及び副資材の添加による見掛比重掛け率K

3)を勘案し、下記により算定する。 KTA=KTB×K1×K2×K3 ここで、 KTB=(W1÷G1+W2÷G2+W3÷G3)÷(W1+W2+W3) K1、K2、K3は表4-20に示すとおり W1:原料の重量 W2:返送堆肥の重量 W3:副資材の重量 G1:原料の見掛比重 G2:返送堆肥の見掛比重 G3:副資材の見掛比重

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表4-20 見掛比重の掛け率 層厚(cm) 50 100 150 200 250 300 原料の層厚による

見掛比重の掛け率 K1 見掛比重の掛け率 1.00 1.10 1.15 1.20 1.25 1.25

返送量(重量比) 1:0.25 1:0.50 1:0.75 1:1 1:1.5 1:2 返送堆肥返送量による 見掛比重の掛け率 K2 見掛比重の掛け率 1.00 1.02 1.04 1.06 1.09 1.12

添加量(重量比) 1:0.2 1:0.4 1:0.6 1:0.8 1:1.0 1:1.2 副資材の添加量による 見掛比重の掛け率 K3 見掛比重の掛け率 1.05 1.07 1.08 1.10 1.12 1.14

発酵設備の寸法は、投入口部においては、上記の容量の堆肥化原料を受入れられる容量を

保有しなければならない。 また、上記の見掛比重は原料の性状変動、混合状態により変わるので、発酵設備投入部の

容量は 10%程度の余裕をとらなければならない。 発酵設備の寸法は、発酵に伴い、有機物の分解と水分の蒸発により重量と容積が減少する

ため、全体の発酵設備容量は(投入時の容量+排出時の容量)÷2×発酵設備への投入日数

であるが、発酵設備の寸法として投入時も排出時も同じ層厚を維持できる場合、例としてサ

イロ式発酵槽の場合にはこの発酵設備容量を採用できる。 しかし、横形発酵槽や多段立形発酵槽のように攪拌の回数によってのみ移動距離が決まって

いる場合には、攪拌回数などに応じた発酵槽の長さが必要である。ただし、攪拌装置の切込み

量や移送量を変えて運転できる場合には、発酵槽の長さを短くできる。 (10) 発酵設備 ・発酵設備は一次発酵設備と二次発酵設備とから構成され、それぞれに合致した堆積、攪拌

方式で処理する。 ・発酵方式は大きく分けて堆積式と機械切返し式があり、原料条件、攪拌効率、運転状況、

周辺の環境条件、設置スペース、建設費などにより方式が決められるが、安全で衛生的な

製品堆肥を生産するためには、一次発酵設備は機械切返し式を採用することが望ましい。 【解説】 発酵設備は施設の中核をなす設備であって、一次発酵設備と二次発酵設備に大別され、そ

れぞれに合致した堆積、攪拌・切返し方式で処理する。 発酵方式は、堆積式と機械切返し式に大別され、原料条件、攪拌効率、運転状況、周囲の

環境条件、設置スペース、建設費などにより方式が決められるが、安全で衛生的な製品堆肥

を生産するために、一次発酵設備は機械切返し式を採用する。堆積式では切返し方式はショ

ベルローダ、専用の切返し機、クレーンなど各種方式を採用している。

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表4-21 各種発酵設備の機種

発 酵 設 備 タ イ プ 切 返 し 方 法 箱式 ショベルローダ うね溝式 ショベルローダ又は専用機 静置堆積式 ショベルローダ、専用機、クレーン

堆積式

容器式 無し スクープ式 スクープの移動 パドル式 パドルの回転

横形平面式

ロータリー式 ロータリーの回転 スクープ式 スクープの旋回 横形円形式 オーガ式 オーガの旋回 ロータリー式 ロータリーの旋回 横形楕円形式 スクープ式 スクープの旋回

立形単段式 サイロ式 無し 落とし戸式 無し パドル式 パドルの旋転

立形多段式

移動床式 無し

機械切返し式

回転式 ロータリー キルン式

ロータリーキルンの回転

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表4-22 発酵設備の比較表 (1/4) システムタイプ 堆 積 式 機械方式、横形平面式 項 目 箱 式 うね溝式 横形パドルタイプ スクープタイプ オーガータイプ

概念図

概要

屋内熟成タイプ(堆肥高1.5~2.5m) ショベルローダにより、発酵物は矩形の

貯留タンクに積み上げられる。

うねタイプ (堆肥高1.5~2.5m)

円形跳ね上げパドル発酵タイプ(最大幅20m、堆肥高2.2m)。発酵物の切返しと移動は、パドルのジグザグ運転(横断方向、前進後退)によ

って同時に行われる。発酵物はパドルの反対方

向に跳ね返され徐々に堆積される。

平面タイプ(最大幅3m、堆肥高1.5m)、発酵物の切返しと移動は、移動スクープ

により同時に行われる。スクープは投入

側で上方に折り返し、その後搬出側へ戻

る。

平面タイプ(最大幅3m、堆肥高1.5m)、発酵物の切返しと移動は、オーガーの運

転により同時に行われる。投入側に達し

たオーガーは持ち上げられ搬出側に戻

る。 一次発酵期間 30~60日 60~90日 10~20日 14~28日 14~28日 切返し方法 及び頻度

ショベルローダ等による。 1回/1週間~1ヶ月

ショベルローダ或いは専用機による。

1回/1週間~1ヶ月 パドルのジグザグ運転による。 1回/日

移動スクープによる。 1回/日

オーガーの運転による。 1回/日

通気方法 仕切りされた箱の底より通気。 うねの下部より通気を行う。 発酵槽底部から吸気による。 発酵槽底部からの通気による 発酵槽底部からの通気による

圧縮塊状化と 通気性

切返し頻度が少ないと塊状化が発生し

通気が不良となりやすい。 切返し頻度が少ないと塊状化が発生し

通気が不良となりやすい。

パドルによる切返しによって、発酵物は破砕さ

れ、徐々に堆積される。そのため圧縮塊状化さ

れず、通気がかなり良好。

スクープによる切返しによって、発酵物

は破砕され輸送される。それゆえ、若干

発酵物の凝結化がある。通気は良好。

スクリューによって発酵物が押され、

塊状化が起こりやすく、通気は不良。

通気抵抗 大 大 小 小 中 通気動力 大 大 小 小 中 用地 大 大 大 大 大 密閉性 開放型 屋外開放型 開放及び密閉型 開放及び密閉型 開放及び密閉型

利点 ①施設がシンプル ①施設がシンプル ①パドル切返しにより、塊状化は発生せず通気

は良好で発酵期間は短い。 ②パドルの使用により大型化が可能。

①スクープ切返しにより、塊状化はほと

んど発生しない。

欠点

①大型の脱臭設備が必要。 ②切返しがわずらわしい。 ③塊状化のため、通気が不良、発酵期間

は長くなる。 ④生成発酵物の均一化が困難

①脱臭が困難。 ②切返しがわずらわしい。 ③通気が不良。発酵期間が塊状化のた

めに極めて長い。 ④生成発酵物の均一化が困難

①脱臭設備は大型になる。 ①脱臭施設は大型になる・。 ②発酵槽の最大規模は小さい。

①脱臭施設の大型化 ②オーガーの数が発酵槽幅に比例して増

大。 ③オーガー切返しにより、塊状化が発生

しやすい。

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表4-22 発酵設備の比較表 (2/4) システムタイプ 機械方式、立形多段式 横形円形式 立形単段式 項 目 立形多段パドル式 落し戸形式 移動床タイプ ロータリーオーガータイプ サイロタイプ

概念図

概要

多段パドル式発酵タイプ(堆肥高 1~1.5m) 発酵物は各段の回転掻板によって同時に

攪拌、移動され、パドルの反対側に飛ば

され、連続的に下方に移動堆積される。

多段落とし戸タイプ 各段のフロアは落し戸を備えている。 発酵物は落し戸の開閉によって連続的

に落下し攪拌・移動される。

多段移送床タイプ(堆肥高2.5m)。すべての床が移動できる。発酵物は移動床の

前後(水平)移動によって部分的に押し

出され下方に落下(輸送)される。

単段円筒形タイプ(堆肥高1.5~2.0m)。発酵槽内の旋回回転オーガーによって、発酵槽の

外側に投入された発酵物は、切返しされ発酵

槽の中心に移動され、中央の排出口より搬出

される。

単段円筒形タイプ(堆肥高2.5m)発酵槽の上部に貯留された発酵物は、徐々に下

方に移動して、発酵槽の底部の回転切返

しスクリューにより屋外へ搬出される。

一次発酵期間 10~20日 14~28日 14~28日 10~20日 10~30日 切返し方法とそ

の頻度 各段の回転掻板による。

3~8回/日 各段の落し戸の開閉による。

1回/3~4日 全てのステージにおける移動。

1回/2日 ロータリーオーガーによる。

1回/日 なし

通気 各段のフロアから送気され、発酵槽上部

に移動。 通気と排気は各段交互に行われる。 全段の移動床から通気し、槽上部より排

気。 発酵槽底部の分岐管から通気し、上部の出口

より排気。 発酵槽底部に通気し、槽上部より排気。

圧縮塊状化と 通気

発酵物は分解、攪拌され、集積される。

それゆえ、圧縮塊状化は起こらなく通気

は良好。

粉砕はあまり期待できないが、切返し

は落し戸の開放により自然落下で行わ

れるので圧縮塊状化は少なく通気は良

好。

発酵物は発酵槽壁に押しつけられやす

く、塊状化が予想される。通気は不良。 ロータリーオーガーによる切返しのため、ス

クリューによって発酵物が圧縮され、塊状化

が発生しやすい。通気は不良である。

発酵槽内には、切返し装置がなく、貯留

発酵物は常に圧縮される。 通気は不良。

通気抵抗 小 普通 大 中 かなり大 通気動力 小 小 大 中 かなり大 用地 小 小 小 中 小 密閉性 閉鎖型 閉鎖型 閉鎖型 開放型 閉鎖型

利点

①発酵物回転掻板によって攪拌され圧縮

しないため、通気抵抗は小さく、必要

動力は少なくてよい。 ③敷地面積小 ④閉鎖型ゆえ小規模な脱臭設備。

①敷地面積小 ②閉鎖型のため大規模脱臭設備は不

要。

①用地面積小 ②閉鎖タイプのため脱臭設備は小。

①排出口の高さを変更することにより滞留日

数が調整できる。 ①用地面積小。 ②発酵槽の有効容量大。 ③閉鎖タイプのため脱臭設備は小。

欠点

①多段形式のため機械高が高くなる。 ②機械式のため建設費が高い。

①自然落下による攪拌なので適度な粉

砕と通気は期待できない。 ②機械装置は密閉型のため比較的複

雑。 ③発酵物供給のときならす装置が必

要。 ④多段のため機械高が高くなる。

①発酵物は塊状化しやすく、移動床使用

により通気が不良。 ②移動床の採用により構造は複雑。 ③多段タイプのため、機械高が高い。

①ショートパスが発生しやすく、滞留時間が

不安定、それゆえ生成物の均一性を図るこ

とが困難。 ②塊状化が発生しやすく、オーガー切返しの

ため通気は不良。 ③発酵物が発酵槽の周辺に投入される。した

がって機槽が複雑。 ④開放タイプのため、大型の脱臭設備が必要。

①堆肥高が大で、切返し装置がないため、

圧密状態となり、通気は不良。 ②空気抵抗が大きく、動力はかなり必要。 ③生成物の均一化が困難。

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表4-22 発酵設備の比較表 (3/4) システムタイプ 機械方式、回転式 機械方式、横形平面式 堆積式

項 目 ロータリーキルン式 ロータリー式 クレーン式 重機式(うね溝) 重機式(台形)

概念図

概要

低速で回転するロータリーキルンにより

常に切返しと移送が行われる。

発酵槽壁上に発酵槽幅全幅に攪拌棒な

どを回転させ、切返しと移送がおこなわ

れる。ロータリーは投入部へ移動した

後、持ち上げられ排出部へ戻る。

堆積した原料をバケットなどにより上部へ持

ち上げたり、落下させることにより切返しを

行わせる。原料は堆積させる場所を変えても、

同じ場所で行うこともできる。

堆積したうねの切返し機能を持つ専用の

重機により切返す方式である。 台形状の畝にまたがって原料の切返しを

行うものである。

堆積した台形状原料の切返し機能を持つ

専用の重機により切返す方式である。 堆積された台形の一方から重機が切り込

んで行き、切り替えした原料をコンベヤ

で別の台形に堆積するので、堆積効率が

よい。 一次発酵期間 1~4日(予備発酵) 14~28日 30~60日 60~90日 60~90日 切返し方法とそ

の頻度 キルンの回転による。 数回/1時間

ロータリーの運転による。 1回/1日

バケットによる持ち上げと落下による。 1回/1日~1週間

専用重機による。 1回/日~週

専用重機による。 1回/日~週

通気 キルンの投入口あるいは排出口より排気

を行う。 発酵槽底部の通気装置による 発酵槽底部の通気装置による。 通気装置を設置しない場合が多い 通気装置を設置しない場合が多い

圧縮塊状化と 通気

キルンへの投入原料の水分が高かった

り、性状が一定でないと、塊状化し原料

への通気が不良となる。 ロータリーによる切返しにより、発酵物

は堆積したまま少しずつ後方へ送られ

る。

バケットよる原料のつかみや落下により発酵

物は破砕、切返しを受ける。かなりの頻度で

上記を行わないと切返しの効果は少ない。 切返し頻度が少なくてよい二次発酵槽での堆

肥の切返しに使われることが多い。

スクリュー、攪拌羽根、攪拌棒などによ

り堆積された畝の列を重機が移動するこ

とにより原料をその場所で切返す。 重機を通過させるための通路が必要とな

り、広い面積がいる。

スクリュー、攪拌羽根、攪拌棒などによ

り堆積された台形の列を重機が移動し、

別の台形に堆積するため、左の方式より

混合効果は大。 重機を通過させる通路が不要なため左よ

り少ない面積でよい。 通気抵抗 小 小 中 中 中 通気動力 小 小 中 中 中 用地 小 中 中 大 大 密閉性 密閉型 開放及び密閉型 開放及び密閉型 開放型 開放型

利点

①設置面積が小さい。 ②脱臭風量が小さくてよい。 ③密閉形式のため臭気、紛じんの発生が

ない。

①ロータリーの回転により、塊状化はほ

とんど発生しない. ①施設はシンプル。

①施設はシンプル。

①施設はシンプル ②うねみぞを切返す重機式と比較すると

設置面積が小さくなる。

欠点

①投入原料の水分が高いと塊状化のた

め、発酵が不良となる。 ④発酵に伴い発生する水蒸気の排出が難

しく、原料の水分を下げるためには加

熱、保温対策が必要。

①脱臭設備は大型となる。 ②ロータリーでの原料の移送距離が原

料性状により変わるため、発酵槽内で

の滞留日数が変わる。

①脱臭設備は大型になる。 ②均一な切返しや発酵槽内での滞留日数を的

確に把握することが困難。 ③バケットの運転に運転員が必要

①屋外型のため、脱臭は困難。 ②重機の運転に運転員が必要。また、運

転時の騒音が大きく運転員の作業環境

は悪い。 ③運転中に臭気、騒音、紛じんが発生す

る。

①屋外型のため、脱臭は困難。 ②重機の運転に運転員が必要。また、運

転時の騒音が大きく運転員の作業環境

は悪い。 ③運転中に臭気、騒音、紛じんが発生す

る。

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109

表4-22 発酵設備の比較表 (4/4) システムタイプ 堆積式、容器式 横形楕円形式 横型円形式

項 目 回分式 連続式 スクープ式 ロータリー式 スクープ式

概念図

概要

水分調整と均一混合した堆肥化原料を容

器へ投入する。その後は、通気管理によ

り発酵状況を管理する。 所定の発酵期間が経過すると、内容物を

排出する。 一次、二次発酵までなど発酵期間を任意

に設定できる。

水分調整と均一混合した堆肥化原料を

容器へ投入し、投入側から少しずつ容器

の排出側へ床部コンベヤで移動させる。

発酵情況は通気管理により行う。

横型平面式のスクープ式を楕円形にしエンド

レスとしたもの。 投入口と排出口が同じ場所にあるため戻し堆

肥の移送が不要となる。

横型平面式のロータリー式を楕円形にし

エンドレスとしたもの。 投入口と排出口が同じ場所にあるため戻

し堆肥の移送が不要となる。

単段円筒形タイプ(堆肥高 1.5~2.0m)。発酵槽内の旋回回転スクープによって、

発酵槽の外側に投入された発酵物は、切

返しされ発酵槽の中心に移動され、中央

の排出口より搬出される。

一次発酵期間 30~60日 20~30日 20~30日 20~30日 10~20日 切返し方法とそ

の頻度 なし なし

なし なし

移動スクープによる。 1回/日

移動ロータリーによる。 1回/日

ロータリースクープによる。 1回/日

通気 容器の下部から通気、上部から排気を行

う。 容器の下部から通気、上部から排気を行

う。 発酵槽底部からの通気による 発酵槽底部からの通気による 発酵槽底部の分岐管から通気し、上部の

出口より排気。

圧密塊状化と 通気

容器へ投入する原料の水分が高かった

り、性状が一定でないと、発酵が不均一

となる。 切返し機能がないため、原料の圧密塊状

化が発生する。

容器へ投入する原料の水分が高かった

り、性状が一定でないと、発酵が不均一

となる。 切返し機能がないため、原料の圧密塊状

化が発生する。

スクープによる切返しにより塊状化は発生し

ない。 ロータリーによる切返しにより塊状化は

発生しない。 スクープによる切返しにより塊状化は発

生しない。

通気抵抗 初期小→中 初期小→中 小 小 中 通気動力 中 中 小 小 中 用地 中 中 大 大 中 密閉性 密閉型 密閉型 開放及び密閉型 開放及び密閉型 密閉型

利点

①脱臭設備が小さくてよい。 ②施設がシンプル ③原料別に堆肥を生産できる。

①脱臭設備が小さくてよい。

①スクープ切返しにより、塊状化はほとんど

発生しない。 ②戻し堆肥の搬送が不要。

①スクープ切返しにより、塊状化はほと

んど発生しない。 ②戻し堆肥の搬送が不要。

①脱臭設備が小さくてよい。 ②設置面積が小さい。

欠点

①原料の投入、搬出作業が煩雑。 ②原料を仕込む毎にゼロから発酵を立ち

上げなければ成らず発酵管理が難し

い。 ③圧密化により通気が不均一となり、堆

肥の均一化が難しい。

③切返し機能がないため、原料の圧密化

が発生しやすい。 ②圧密化により通気が不均一となり、堆

肥の均一化が難しい。

①脱臭施設は大型になる。 ②発酵槽の最大規模は小さい。

①脱臭施設は大型になる・。 ②発酵槽の最大規模は小さい。 ③ロータリーでの攪拌のため、発酵槽内

での滞留日数が変わる。

①スクープでの原料の移送距離が原料性

状により変わるため、発酵槽内での滞留

日数が変わる。

出典:(財)下水道新技術推進機構 下水汚泥コンポスト化施設計画・設計マニュアル等

通気

排気

原料などの投入物 投入 原料など コンポスト

ロータリー式

投入 施回回転スクープ

排出

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6.施設の運転管理

1)堆肥化施設の運転管理

(1)運転管理の基本

・堆肥化施設の運転管理は、好気性条件下で有機物を分解する微生物の生息に適した環

境をつくり、ユーザのニーズに対応できる、良質で安全かつ衛生的な製品堆肥を安定

して生産出来るように、施設の生産機能及び環境保全機能を最適な状態に保ち、的確

に運営することである。

【解説】

堆肥の生産施設では、各種有機性廃棄物や有機性残さなどの原材料が、微生物により好気

性条件下において分解され、腐植性物質などに安定化される。さらに、ユーザのニーズに応

じて、C/N比が 10 程度で腐植質土壌に近い状態まで腐熟させた製品堆肥や、ブレンドによ

り肥料成分を高めた高品質な製品堆肥が生産される場合もある。

有機性廃棄物などの堆肥化は、いわゆる静脈産業の一環として位置づけられており、循環

型社会形成のうえから重要な事業である。この事業を適正かつ効率的に運営するには、関係

法令を遵守し、計画対象地域の各種の条件に適応し、地域住民の理解と協力が得られて事業

計画、施設計画がたてられ、それに則って施設を設置し、円滑に事業が執行される、といっ

た構図が描かれる。

堆肥化についての原理原則を確実に理解し、類似する稼動施設の現状を調査するなどした

うえで、自ら管理する施設での日々の生産過程を入念に調査検討し、その実績から固有の管

理基準を整備し、それに基づいて、時には必要な修正などを行いながら、適正に施設の全て

の機能を管理することが必要である。

施設の運転管理全般について、留意事項を総括すると下記のようになる。

①施設での作業は、廃棄物処理ではなく、人間や家畜の食を確保するために必要な、農業

資材を生産していることを強く認識する。

②堆肥化の原理を認識し、施設の計画構想・設計条件などを十分に理解したうえで、現場

に適応する原料条件及び発酵条件を整えて、日々の現場管理を適正に実施する。

③原料排出者あるいは原料収集運搬事業管理者との間に、廃棄物の資源化についての共通

の認識をもち、確かな協力関係を持続する。

④生産する製品堆肥について、商品としてのユーザの評価、意向を十分に把握し、それに

適応する製品堆肥を生産する。

⑤施設内環境は、湿気や腐食性ガスなどにより劣悪になり易いので、施設運転員の健康維

持と設備機器の保守に十分に留意する。

⑥施設は、いわゆる迷惑施設であるので、周辺住民との間に、持続的で良好な隣人関係を

形成するよう努める。

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2)工程管理

・良質で安全かつ衛生的な製品を安定して生産するためには、前処理工程、発酵工程及

び製品化工程において、次に掲げる項目について、実施・結果の確認及び記録を的確

に行う。

1)原材料管理 2)前処理管理 3)発酵管理 4)品質確認・評価

5)商品化作業管理 6)製品保管 7)生産設備・装置等の保守管理

【解説】

製品堆肥は、堆肥化に適した原料と適した手法により生産されることが望まれるが、原料

が廃棄物であり、発生状況のコントロールは困難であり、同一材種であっても生産条件が変

ってくるから、「適した」ということの実行は容易でない。しかし、状況はどうあろうとも、

「持続して適量を施用することにより、養分としての効果、腐植としての土壌の物理的、化

学的改良と土壌の緩衝能を高める効果、土壌に起因する病害の軽減」というような、植物の

生育と土壌改良への効果が期待される有機資材として生産されなければならない。

堆肥化の工程管理は、このような製品堆肥が安定して生産される環境を作り出し、施設機

能を円滑に持続させることである。本章では、生産工程のうち前処理工程及び発酵工程にお

ける運転管理の要点を述べるが、製品管理工程を含めて総括すると下記のとおりである。ま

た、施設全般についての運転管理記録の参考として、表5-1を例示した。

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表5-1 堆肥化施設運転管理日報(例)

11.電気使用量(1)畜ふん t 袋 項目 開始時間 停止時間 稼動時間 (1)本日指針 kWh

台数 ( 台) t (1)施設の運転 : : : (2)前日指針 kWh(2)生ごみ t (2)畜ふんホッパ : : :   使用量 kWh

台数 ( 台) (3)生ごみホッパ : : :(3)もみ殻 t 袋 (4)もみ殻粉砕機 : : : 12.上水使用量

台数 ( 台) t (5)攪拌装置 : : : (1)本日指針 m3 合   計 t t (6)トロンメル : : : (2)前日指針 m3

台数 ( 台) t (7)袋詰装置 : : :   使用量 m3(8)通気ファン : : :(9)脱臭ファン : : : 13.備考

(1)前処理残さ t (    分) (10)加水ポンプ : : :(2)製品化残さ t L 合   計 t (    分)

LL 測定値 定格

(1)畜ふん t バケット数 ( 杯)(2)破砕生ごみ t NO. 時間 時間 バケット数 ( 杯) (  : ) (   : )(3)もみ殻 t 1 バケット数 ( 杯) 2 22A(4)返送コンポスト t 3   バケット数 ( 杯) 4(5)その他 t 5 90A   バケット数 ( 杯) 6 150A 合   計 t 7 9.8A

89

(1)前処理残さ t 10(2)製品化残さ t 11 71A 合   計 t 12

平成  年  月  日(  ) 天気(   )

(1)一次発酵槽7.汚水散水量

コンポスト化施設運転管理日報

(15)脱臭ファン(16)生物脱臭装置(17)加水ポンプ(18)汚水ポンプ

(11)通気ファン(12)コンポストホッパ(13)トロンメル(14)袋詰装置

(7)原料搬送コンベヤ1(8)原料搬送コンベヤ2(9)もみ殻粉砕機(10)攪拌装置

(3)畜ふん搬送コンベヤ(4)生ごみホッパ(5)生ごみ搬送コンベヤ(6)生ごみ破砕機

9.機器運転記録

10.機器運転記録    ○良 △注意 ×否 /不稼動

(1)トラックスケール(2)畜ふんホッパ

電流値機器名 運転状況

(2)バラ製品 合   計

4.残さ発生量

8.一次,二次発酵槽内温度(℃)

2.残さ搬出量

3.発酵槽投入量

(2)二次発酵槽

 合   計

(1)袋詰数(2)袋詰数

(1)袋詰製品

5.製品コンポスト袋詰量

6.製品コンポスト搬出量

1.搬入量

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(1)前処理工程

原材料管理と発酵設備投入のための前処理条件の管理及び関連する設備・装置・機器等の保守管理

を行うもので、日々の業務は、確実に実行し、その結果を確認し、記録する。

①原料性状の調整の良否が、発酵工程に大きく影響することを認識する。

②搬入される原料の発生状況や性状を的確に把握し、含まれる発酵不適物への対応を適正に行う

(受入拒否、異物除去、性状調整など)。

③発酵設備投入条件を適正に整える。

④原料性状の調整に副資材を必要とするときは、その確保については少なくとも数年先までの見通

しを的確にする。

⑤原料及び副資材の性状、発酵設備投入条件、発酵設備投入量については、日々の作業状況を的確

に記録する。

(2)発酵工程

発酵条件の管理と品質確認・評価及び設備・装置・機器等の保守管理を行う。製品堆肥としてユー

ザに提供するものは、一般的には二次発酵を経た堆肥であるが、時には、一次発酵堆肥を希望するユ

ーザもいるから、この品質確認も行えるようにする。なお、施設が新設されたものである場合は、供

用開始に先立って、種堆肥の製造あるいは類似施設から種堆肥を入手し、施設のスタートアップを円

滑にする。

なお、日々の業務は確実に実行し、その結果を確認し記録する。

①発酵設備は堆肥化における中核的設備である。

②発酵温度は、特に通気量、水分、有機物性状の影響をうける。毎日、確実に測定・記録し補完す

る。

③一次発酵の過程で、発酵設備内混合物の品温は 65℃を 48 時間以上保持しなければならない。

④通気量が不足すると発酵が抑制され、過大であると水分の蒸発・揮散、発酵熱の発散などによる

発酵温度の低下が発生するから、通気の管理を的確に行う。

⑤発酵物の水分は、多すぎても(70%以上)また少なくても(40%以下)、発酵が抑制されるから、

水分の管理を的確に行う。

⑥攪拌・切返しにより発酵設備内混合物は均一に混合され、通気性が改善されるが、品温の低下を

招くから、攪拌・切返し回数の管理を的確に行う。

⑦外気温が低い場合には、発酵設備及び脱臭装置からの結露水について適切に対応する。

⑧発酵設備内の蓄熱異常過熱などによる自然発火の恐れがあるから、原料の性状にもよるが温度管

理、排気、水分管理に留意する。

(3)製品化工程

品質確認・評価、商品化管理、製品保管及び設備・装置・機器等の保守管理を行う。

なお、日々の業務を確実に実行し、その結果を確認し記録する。

①製品堆肥の品質性状を確認・評価し、その結果を的確に記録し保管する。

②粉じん、騒音、振動が発生する作業が多いので、環境保全に留意する。

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③製品堆肥の保管日数、保管状態などを、常に明確に把握する。また、適宜に品質性状を確認・評

価する。水分については、1回/週程度の確認を行う。

④なるべく多くのユーザと交流を深め、製品堆肥の評価や希望などを収集し、市場価値に富んだ製

品の生産など生産機能管理に反映させる。

⑤法規制のある重金属を含む原料を使用する場合は、ユーザの協力を得て、製品堆肥使用前及び使

用後は毎年 1回程度、堆肥施用土壌のモニタリングを行うよう努める。

(4)生産設備・装置等の保守管理

上記の各工程には、第4章各項で述べたような各種の設備がある。それらの運転管理の詳細につい

ては、当該設備を構成する機器のメーカ等の協力も受けて、それぞれの仕様に従って管理項目を定め、

日常点検、毎週点検、月例点検などの定期的な保守点検を行う。

また、年間を通じての総合的な保守点検として、年に1回は運転を休止して、主要施設のオーバー

ホールや機能診断を行うようにする。

なお、下記により業務は確実に実行し、その結果を確認し、記録するものとし、その例を巻末の参

考資料-7に示した。

イ)日常点検すべき機器

①システムに与える影響が大きく、補修等に時間的余裕が取れない機器・部品

②日常的な点検・処置を怠れば、重大な事故等が発生する可能性がある機器・部品について、給油・

異常音・振動・温度等の巡視点検

③システムに与える影響は小さいが、異状発生頻度の高い機器・部品

④毎日の始業時、終業時に行う始業点検、終了点検

⑤特に特殊な工具や技量を要しない点検・調整・清掃

ロ)定期点検

①システムに与える影響は大きいが、部品等の延命化を図ることにより、補修等に時間的余裕が取

れる機器・部品

②日常点検で観察された状況の詳細点検調査

③システムの機能・性能の低下の有無及び支障をもたらす機器・部品の点検調整

④特殊な工具や技量を要する点検・調整・清掃

⑤システム的に影響はないが日常できない個所の清掃・汚れ落とし

⑥計量機器の校正又は法定点検

⑦次回定期点検までの予防的処置点検

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3)前処理工程の管理

(1)原材料条件

・所定の性状及び品質をもつた製品堆肥を確保するには、まず、原材料の発生状況、性状の把

握を徹底して行うことである。原材料の堆肥化施設への受入れ基準を明確化し、不適合品の

混入を防止する。このためには、原材料排出者及び収集・運搬業務管理者等との連携を緊密

にする。

【解説】

堆肥化の対象となる有機性廃棄物は、種類性状は種々様々で、同一品種であっても発生状況により

成分構成や性状が異なり、特に発酵状態、発酵期間などに大きな違いがあるものがある。また、単品

での堆肥化よりも、他の原料との融合あるいは副資材として添加することが有利なものもある。

堆肥生産者は、次に挙げるような認識を持って、原材料の受入れ条件を定め、常に性状確認を怠ら

ないようにすることが必要である。

イ)原料受入れについての認識

①原材料は生活や事業における廃棄物が主体である。

②製品堆肥の品質は、原材料の性状に負うところが大きいから、発生状況や性状を確実に把握する。

③良質で安全かつ衛生的な製品堆肥を安定して生産するには、原料排出及び収集段階での資源化へ

の取組みが必要である。

④発酵不適物が混合している原材料は受入を中止する。また、前処理で過度の分別などを行い、更

に製品化工程において、発酵物から異物の分別が必要となるような原料については、排出者に事

前処理又は費用負担を要請することも考える。

ロ)原料受入れの基本的条件

①発生時の形状を保持していること(新鮮な廃棄物)。

②金属や非生物分解性プラスチックなどの発酵不適物を極力含まないこと。

③製品堆肥の品質として規制対象となっている重金属類や有機性化合物などが、施設の環境保全や

製品堆肥の品質を害するような濃度で含有していないこと。

④伝染性病原菌、食中毒菌、プリオンなど疫学上の汚染を受けていないこと。

⑤上記以外で、施設の環境保全や製品堆肥の品質及び取扱い上で問題になるものを極力含まないこ

と。

(2)前処理工程の管理

・堆肥化に係る微生物の活動を活性化し、有るように機物の分解を円滑にするために、原材料

の水分、C/N比、pH、粒径、温度などが、発酵設備投入条件に適合するように調整を行

う。

【解説】

ユーザのニーズに応えられる品質性状の製品堆肥を的確に生産するには、受入れる原料の管理とと

もに、前処理工程の管理が重要である。

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表5-2 前処理工程の管理項目と前処理方法

前処理

項目 管理目標 前 処 理 方 法

水分調整

50~65%

副資材添加、堆肥の返送又は乾燥:水分65%以上の原料、あるいは発

酵設備によっては50%以上の場合にも必要とされる。

加水: 水分40%以下の原料。

C/N比 10~30 副資材添加、堆肥の返送:大のときは窒素源、小のときは炭素源

pH 6~10 副資材添加、堆肥の返送:一般的には管理目標の範囲内、脱水汚泥では

10 以上のものがあり前処理が必要。

粒径

10 ㎜以下

破砕・分別: 生ごみ、もみ殻、バーク、剪定枝、伐採木材などで、破砕

あるいは粉砕を必要とするもの(表5-3参照)、また、畜ふんや脱水

汚泥で塊状や板状になったもの

温度 10℃以上 発酵工程で加温・加熱、又は発酵工程で発酵期間を延長

異物除去 危険物、発酵

阻害物等

破砕・分別: 除去出来なかったものは製品化工程で除去

①水分の調整

堆肥化は、好気性微生物により有機物を分解することであり、原料の水分が大きく影響する。

水分から原料を分類すると次のようになる。

○水分過剰原料; 畜ふん尿や汚泥系、夏場の生ごみ等は水分が 80%を越し、ベトベトした泥

ねい状、液状原料

○水分不足原料; もみ殻、稲わらなど乾燥されたもの

原料の水分が高いと原料の粒子間が水で満たされ、好気的雰囲気から嫌気的雰囲気となるため、好

気的条件を維持するためには水分の上限がある。一方、著しい乾燥状態では微生物の増殖が抑制され

て発酵は進まないから下限もある。換言すれば、水分を調整すると言うよりは水分が高いと通気性が

悪くなり嫌気的条件となるため、通気性を改善するために水分を調整することである。

堆肥化のための空気(酸素)の供給は、強制的に送風機により行われる場合と切返しで行うものとが

あるが、いずれにしても、原料の水分が高いと十分な空気の供給が行われず酸素不足で嫌気性になる

おそれがあるため、好気性微生物の活動が促進できる通気が可能となる状態に水分を管理する必要が

ある。

原料中の水分と通気性についての定性的関係を図5-1に示す。なお、図中のA、A’は堆肥原料

で、水分はAが多いが、いずれも水分調整が必要であり、Dはそれらの副資材(同一性状品質の材料

を使用するとする)を、それぞれ表わしている。曲線DCBA、D’C’B’A’は、原料への副資

材の添加率を変えていくときの通気性と水分の関係を示す。

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図5-1 堆肥原料の通気性と水分の定性的関係

出典:有機廃棄物資源化大事典;有機資源化推進会議編・農文協

堆肥化の過程における発酵設備投入時の原材料の水分は、発酵反応及び製品堆肥の性状に大きな影

響を及ぼす。牛ふんの場合、発酵設備投入時の水分が 68%程度では、良好な好気性条件での発酵に

より有機物が 40%程度分解され、発生する発酵熱により水分蒸発があっても、製品堆肥の水分は 60%

程度でほとんど減少しない。しかし、発酵設備投入時の水分が 60%程度以下であれば、製品堆肥の

水分は 40%程度になる。また、鶏ふんは発酵過程で発生する発酵熱による水分の蒸発により、発酵

設備内混合物の水分が減少化をきたし、30%以下になることがある。このような水分の低下は、微生

物の活動を休止状態にし、発酵機能を低下させ、場合によっては停止してしまうこともある。このよ

うな場合には、混合物に加水し、水分を 40%以上に維持して、好気性発酵を円滑に持続させること

が必要である。

水分調整のための前処理方式としては、前処理工程で述べたように副資材を用いる添加方式、返送

堆肥による返送方式及び乾燥方式とこれらの組み合わせによる方式などがあり、原料の品質性状、製

品堆肥の施用目的などを考慮して、前処理方式について検討し実施する

②C/N比の調整

好気性発酵において水分管理と通気管理が、良好な堆肥化の条件になるとの概念が一般的であるが、

分解のための 必要水分下限

たい積放置でも好気的

分解が期待できる通気

性下限

強制通気によれば好気

的分解が期待できる通

気性下限

C’ C

B’ B

A’ A

水分含量 少 多

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原料のC/N比もまた重要な指標である。C/N比が大きいと、一般的には発酵過程で分解する有機

物量が少なく、好気性発酵が遅くなる傾向があるとされる。

微生物による有機物の分解は、窒素1に対して炭素 10 の比率でこれらを消費するとされており、

原料のC/N比が著しく大きいと窒素だけが消費されて炭素が残り、有機物の分解は滞ってしまうこ

とになる。

従って、発酵設備投入時において、原料と返送堆肥あるいは原料と副資材について合計したC/N

比は 40 以下とする必要があり、出来れば 30 以下とすることが好ましい。

木質系のバークなどのようにC/N比が 100 を超える場合には、30 程度にするためには窒素源と

して、鶏ふん、油かす、汚泥など、窒素分の含有量が多い原料を加えて好気性発酵を行わせる。この

場合、汚泥については、これが混合されたものは法的規制があることに留意することはいうまでもな

いことである。また、C/N比が大きな場合には、有機物分解による発熱量が少ないため、好気性発

酵により上昇した原料の温度を保つために、切返しの頻度を減少させたりして、入念な運転操作をと

る。

逆に、脱水汚泥のようにC/N比が小さい場合には、返送堆肥や炭素源となる副資材を添加し、一

次発酵での切返しの頻度を多くしたり、通気量を増やしたりして、好気性発酵を促進させる。

③pHの調整

一般的には、堆肥化の原料は廃棄物であり、施設に搬入されてくるものは水分が多く嫌気的雰囲気

のため、pHは酸性領域の 4~6 程度である。しかし、この程度の範囲であれば、水分とC/N比を

最適条件に調整し、通気を行うとアンモニアが発生しpHがアルカリ領域の 7~9 となる。従って、

多くの原料については、前処理工程での特段の処理は必要ないといえる。しかし、脱水助剤として石

灰を添加した脱水汚泥のように、pHが 10~12 のアルカリ性となるものについては、返送堆肥を使

うことでpHを下げ、かつ水分調整の両方を行わせている。また、生ごみや畜ふんは若干酸性である

から、それらと融合させることは、製品堆肥の品質向上の点からも有利であるが、汚泥を融合する場

合は、前項と同様に法的規制への配慮が必要である。

④粒径の調整

堆肥生産は、好気性条件下で有機物を分解させることであり、原料の通気性や、分解に関与する微

生物との混合、接触を十分に行うには適当なサイズに原料を破砕する必要がある。特に生ごみ、剪定

枝、チップ、バーク、その他の固形状態にあるものは、水分調整やあるいは、融合堆肥化を目的とし

て破砕し細粒化することが必要である。また、畜ふんでは糞同士が固まり団子状になったり、汚泥で

は脱水機から排出される際に板塊状となるものがある。さらには施設内の貯槽で固まったものができ

ることもあり、これらの塊状の原料は破砕する必要がある。

従来から、前処理としての破砕処理は実用化されてきている。しかし、破砕サイズなどは、運転員

の経験に頼っている。堆肥化の難易からは、多分に軟質系が硬質系より分解を受け易く、草質系は木

質系より分解を受け易い傾向にあると言える。しかし、木質系は、発酵時の通気性改良や施用土壌の

物理的環境の改良に効果が大きく、目的によって破砕程度もそれに合わせて違ってくる。もみ殻は、

吸湿性の向上と見栄えを良くすることから破砕処理することが多い。

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破砕に関しての特別な共通基準は無いが、本委員会調査による前処理段階での破砕の基準を表5-

3に示す。なお、この段階での破砕は、堆肥化に当たって、好気性発酵を効率良く進行させるための

ものであり、製品化工程での製品品質基準などに対応した破砕・分別によるサイズ調整とは異なる。

表5-3 前処理工程での破砕処理基準

対象原料・材料 大きさの基準 備 考

茎、枝 10mm 以下

剪定枝などは、破砕機に直接は投入できないので、2m程度

に切断した後に破砕機に投入する。

10mm以上では9ヵ月程度の堆肥化期間では木質形状が残る。 木

系 葉 無破砕、大型;L<30mm

しなやかで破砕が難しいものがあるが、堆肥化の過程で分解

する。

乾燥した葉は分解容易。

茎 L<10mm、

大型茎;幅<10mm

太い茎は堆肥化の過程では分解しないので破砕する。 草

系 葉、軟質茎 無破砕、大型;L<30mm 破砕は難しいが、発酵過程で分解する。

生ごみ

10mm程度以下、

但しペースト状にしないこ

分別収集された生ごみ。

10mm以上の場合は発酵過程で分解未了になることがある。

もみ殻 1/2 以下に破砕 Si 系材質の殻を破砕。

破砕しない方が発酵過程で通気性が良い場合もある。

生分解性プラス

チック

軟質;不定形で、出来るだけ

細破砕

硬質;木質系並み

フィルム状のものが発酵過程で原料を包み込み腐敗しない

ように破砕する。

生分解性プラスチックは種類により、発酵過程で完全に分解

が出来ない場合があり、異物として除去する。

⑤温度の調整

原料の発酵設備投入時の温度も発酵工程に影響する。外気温が高い春から秋までの期間は、原料の

品温は低くても外気温から数℃低い程度で発酵にあまり影響はない。しかし、外気温が低下する冬季

や寒冷地では原料の温度が低下し、発酵に影響する。

一般に、微生物は温度が 10℃を下回ってくると活動が急速に低下するため、温度をそれ以上に保

つことが肝要である。

外気温にさらされる時間を短くし、貯留しないですぐに施設へ搬入し堆肥化工程に乗せるのがよい

が、対策として、発酵設備投入部に加温設備を設置し、原料へ加温空気を送ったり、発酵設備の周囲

をヒータで加熱したりする方法がある。しかし、これらの方式は設備費及び運転経費がかかる。低い

温度の原料が発酵設備内で徐々に温度が上がり 10℃程度になるまで発酵を期待しない方法もあるが、

発酵設備の容量を大きくなる。

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4)発酵工程の管理

(1)発酵工程の生産機能

・堆肥生産に重要なことは、発酵設備において、有機物の分解に関与する微生物の最適な生育

環境条件を作り、維持することである。これを達成するために、次の項目に関し、日々の業

務を的確に行い、適正に記録し管理することである。

1)通気管理 2)温度管理 3)攪拌・切返し管理 4)発酵期間管理

5)水分管理 6)発酵物品質管理

【解説】

有機物の分解過程は大きく分けて3段階になる。各過程で多くの種類の異なる微生物が作用し、過

程の推移に従って消長を繰返す(微生物の遷移)。

一方、有機物も易分解性のものから、難分解性のものを含んでおり、これらの分解過程での分解微

生物の遷移が起こる。

有機物の好気性分解の三段階は、図5-2に示すように比較的分解し易い糖分解期、セルロース分

解期、リグニン分解期である。

[第1段階] 糖類の分解; 細菌や糸状菌が作用し、発酵反応により発酵槽内堆積物の品温の上

昇が起こる。堆肥化初期に発生する悪臭は解消される。

[第 2 段階] セルロースの分解; 高温好気性の放線菌や、セルロース分解菌により繊維質が分

解される。品温は 60~80℃まで上昇、高温が維持され、病原菌、寄生虫卵などは死

滅化し、雑草種子は不活性化する。この段階は酸素が盛んに消費されるので、切返

しと通気が重要になる。

[第3段階] リグニンの分解; リグニン分解はかなり時間がかかり、品温は少しずつ低下する。

また品温の低下に伴って、不活性化していた各種常温菌類が増殖活性化し、多様な

微生物が繁殖するようになって、有機性廃棄物は農耕地に施用できる資材となる。

この段階で発酵物は、黒色でパサパサした触感を持ち、堆積した発酵物の表面近く

に、カビと放線菌による帯状の白色模様が定着する。

好気性分解に関与する微生物の環境には幾つかの要因があるが、特に好気性発酵の進行には、水分

と酸素が大きな影響を及ぼす。これらは、前述した前処理工程において、原材料の性状が適切に調整

されていることが前提となることと同様である。好気性発酵は、発熱反応であり、反応の進行に伴っ

て品温は上昇してくる。品温の上昇により微生物の活性も加速され、品温は 60~80℃に達し、高温

が維持されることにより、病原菌、寄生虫卵などは死滅し、雑草種子は不活性化する。しかし、発酵

設備内混合物の品温が上がると混合物の水分が蒸発して混合物の水分が減少する。また、通気が過度

であっても水分の減少がおこり、切返しによって混合物の品温低下や水分の減少などがおこる。これ

らはいずれも発酵反応に影響する。発酵設備内混合物についての通気と水分及び温度管理は、良質で

安全かつ衛生的な製品堆肥を生産する上で欠くことのできない条件であり、施設の運転管理上の重要

な条件である。なお、日々の業務は、事実を適正に管理記録に記録し保管する。

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図5-2 堆肥化過程の微生物変化模式図

出典:「有機物をどう使いこなすか」西尾道徳ら(1996)

(2)通気管理

・発酵設備内混合物を均一な好気的状態にして、微生物による有機物の好気性分解を促進する

ことは重要であり、畜ふん、生ごみや汚泥などのような易分解性有機物の含有量の多い原料の

場合は、強制的な通気管理を行うことが有効である。但し、強制通気が過度になると発酵熱

を外部に持ち出し、堆積物の品温低下と分解率の低下をきたすので、装置、原料に合った通

気量の管理を行うことが重要である。

【解説】

有機性廃棄物の堆肥化において、発酵設備内混合物の通気性を確保することは、原材料の種別に関

係なく、共通する有効で且つ重要な運転管理項目である。

強制通気量と有機物分解率などの相互関係を図5-3に示す。

通気管理については、発酵システム、発酵設備の形状によって違ってくる。的確な通気管理がなさ

れると、好気性発酵の進行によって発酵設備内混合物の水分の減少や見掛比重が変化してくるととも

に、ふっくらとした性状になり、通気状況は良くなる。

リグ

コンポスト

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図5-3 通気量と分解率、水の飛散量、所要動力の定性的関係

出典:「有機廃棄物資源化大辞典」有機質資源化推進協議会(1997)

表5-4 通気条件確認内容

項 目 確 認 内 容 事 例

装置事前確認 ① 送風機の送風量と圧損性能(性能表確認)

② 設備、装置、送風配管・送風状態などの確認

③ 加温装置、加温設備昇温性能確認(性能表、昇温確認)

装置稼動中の確認 ① 送風機吐出側圧力チェック

② 切返し時の混合物からの水蒸気排出状況の確認(開放型装置)

③ 吐出空気温度

④ 発酵設備内混合物の温度分布状況の測定及び確認

⑤ 発酵設備内混合物からの水蒸気発生状況の確認(密閉装置では困難なも

のもある)

⑥ 発酵設備内混合物の水分分布測定及び確認

通気条件確認項目を表5-4に示した。送風機の圧力チェック、通気量チェック及び発酵設備内温

度チェックなどによる発酵状況の管理・確認が日常的に可能な管理手段である。

なお、発酵設備内温度の急激な低下や、水分の低下が生じた場合には、通気空気の加温や、通気量

の制限、撹拌頻度の減少、発酵設備内混合物への加水などの処置を行う。

一次発酵においては、通気管理は温度管理に直結するために、日常チェック確認・運転調整が必要

である。二次発酵では、強制通気は必ずしも必要としないが、熟成の促進・熟成期間の短縮などのた

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めには、通気することが有効である。

二次発酵における通気管理は、一次発酵に比べ発酵設備内混合物の通気性が向上していることから

管理は容易である。但し、通気性が改良されているだけに発酵設備内混合物の発酵熱が放散し易く、

切返し頻度との関係で混合物の温度低下が起こらない程度で調整することが必要である。管理項目は

表5-4に示す程度で良いが、切返し頻度が少ないため、管理確認の頻度は一次発酵に較べて少なく

て良い。

機械撹拌方式の場合は、表5-4の管理内容に沿って、装置の特性を加味した管理指標値を設定し

管理を行う。ショベルローダによる撹拌の場合は、撹拌移送終了後、堆積物の温度や水分を測定確認

することにより管理を行う。

表5-5 発酵設備別の通気量

通気量の指標 発酵設備の形式 通気量の範囲 備 考

堆積式・横形 50~150

立形単段式 30~100

槽有効容量m3当り

(L/min) 立形多段式 100~150

槽内通気速度(m/min) 横形及び立形 0.10~0.25

原料の堆積高、見掛

比重、有機物含有量

によって通気量が

変わる。

出典:「有機廃棄物資源化大辞典」有機質資源化推進協議会(1997)

通気量は、発酵システムや発酵設備投入時の原材料の発熱量、堆積高さ、発酵過程などにより異な

る。また、季節や地域によっても差異がある。このため、表5-4による確認項目による確認結果に基

づいて通気量を調整し、生産目標の製品堆肥の生産を確保するように努める。

通気量については、発酵装置別の通気量の例を表5-5に示した。原料別通気量については第4章

4-3-4 通気量 表4-16に示している。なお、二次発酵設備については前述のように一次発

酵に較べて少なくてよく、通気量は堆積物 1m3当たり 5~10L/min が一般的である。

(3)発酵温度の管理

・良質で、安全で衛生的な製品堆肥を生産するために、原料の発酵過程において、温度 65℃以

上を 48 時間以上経過させることが必要である。

・発酵温度の計測場所として、一次発酵設備の場合は、一次発酵期間中、最低でも発酵日数経

過順に5個所以上とする。二次発酵設備も同様に 5箇所以上とする。

・発酵設備内混合物の温度測定場所は、直接原料に温度計を差込んで計測する場合は、原料の

表面及び壁面からそれぞれ 30cm 以上離して差込む。

・間接的に発酵温度を計測する場合には、実際の発酵槽内の原料温度との相関係数を求め、実

際の原料の発酵温度とするが、3 ヶ月に 1 回はそれらの相関を調べ、相関係数の補正を行う

必要がある。

【解説】

温度管理は、製品堆肥の品質に大きな影響を及ぼすもので、良質で、安全で衛生的な製品堆肥を生

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産するためには、発酵過程において、温度 65℃以上を 48 時間以上経過させることが最も重要な生産

管理項目である。

発酵設備投入条件に適切に調整された原料は、発酵設備において、通気と切返しが行われることに

より分解が促進し温度上昇が起こる。しかし、発酵過程での温度経過の管理と、切返し装置の設置状

況によって、特に外気温及び原料の温度が低下する冬季においては、発酵管理を適切に行わないと品

温を下げ発酵を阻害することとなる。わが国においては、冬季はほとんどの地域において最低気温は

10 度を下まわる。外気温が低温時の対策として、発酵設備内混合物の堆積高を増したり、通気量を

減少したり、あるいは加温式通気装置を設置し、吸込み空気を加温装置で加温して送気することが必

要である。

図5-4 牛糞とおがくず混合物の堆肥化装置内温度経過

出典:有機質資源化推進会議「有機廃棄物資源化大辞典」

一次発酵での温度管理は、特に製品堆肥の品質に大きな影響を及ぼす。有機物の分解を十分に行い

安定した品質を確保するには、発酵期間中は、十分な品温の確保が出来るような管理が必須条件であ

る。

一次発酵過程における温度変化の一例を図5-4に示した。好気性発酵開始後、品温の上昇が起こ

り、それに伴って水分の蒸発や通気による品温の低下が起こってくるが、通気による酸素供給により

品温は再び上昇し、この品温の上昇・低下を繰返しながら、一次発酵の終期に向かう。品温が最高温

度に到達する時間や、低下速度は原材料や通気速度などにより違いがある。汚泥系原材料の堆肥化に

おいては、発酵開始後2週間頃まで品温の上昇・低下を繰返した後、二次発酵に移行する。この間原

材料中の有機物が分解され、良好な条件下では 40%程度分解される。

二次発酵に移行しても、品温が常温(25℃以上)以上で水分が 30%程度以上確保されれば、継続

的に分解発酵は進行し熟成して行く。

二次発酵は、通常機械攪拌方式より、堆肥盤方式による堆積式が多いが、一次発酵製品を移行後十

分な通気と水分が保持されれば品温の再上昇もあり、40℃~50℃程度になる原料もある。攪拌方式の

違いにより管理方法の違いはあるが、通気温度と水分と攪拌頻度が二次発酵の進行管理要点であるこ

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とは一次発酵と変わらない。品温管理は、分解対象有機物の変化により発酵熱の発生速度が低下する

ため外気温、通気温度による影響が大きく、困難になる。基本的には、攪拌頻度と通気温度の調整で

管理を行う。

二次発酵過程での一般的な発酵温度パターンは図5-5のような温度カーブを描く。この温度カ

ーブの中で、温度が再度急上昇しているのは、機械切返し機による切返しが行われた結果である。切

返しの効果により、短時間的に、原料などの温度は室温程度まで低下するが、すぐに切返し時の原料

の混合効果と空気に曝露されることにより切返し時の温度以上まで上昇する。

図 5-5 二次発酵における温度変化の例

出典:「有機廃棄物資源化大事典」

発酵温度の計測場所として、一次発酵設備の場合は、一次発酵期間中、最低でも発酵日数経過順

に 5個所以上とする。

二次発酵設備に置いても、二次発酵日数経過順に 5 個所以上とする。例として、一次発酵設備で

の発酵期間が 10 日の場合は、2 日ごと、15 日の場合には、3 日ごとの原料などの温度を測定する。

二次発酵設備において熟成期間が 30 日の場合は、6日ごとの堆肥の温度を測定する。

温度測定場所として、発酵設備側壁あるいは、発酵設備の上部や側面部から温度計を差し込んで

測定する場合は、原料の表面から 30cm以上の深さで、壁面からも 30cm以上離した場所に差込む。

また、原料中に直接温度計を差し込んで測定する場合、切返し機の運転時に温度計を引き抜かな

ければならないため、切返し機が接触しない、発酵設備側壁の内側に温度計を設置している。発酵設

備内混合物への通気方式が吸気方式の場合には、吸気配管に同様な温度計を設置し、吸気温度と実際

の発酵設備内の温度との相関から、実際の原料の発酵温度としている。

いずれの方法を採用するにしても、温度計の指示と実際の発酵設備内混合物などの温度との相関

が適正に取れていることが要件であり、3ヶ月に 1回は実際の原料温度と、計測している温度計との

相関を調べ、相関係数の補正を行う必要がある。

なお、使用する温度計は、運転員が発酵設備を巡回して温度を記録する場合には、直示式のデジタル

温度計、保護管付きのアルコール温度計を使い、自動で温度計測、記録を行い、その後発酵設備内混

合物の温度管理としたり、制御を行う場合には測温抵抗体を用いることが多い。

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(4)発酵期間の管理

・発酵工程について、一次発酵から二次発酵への移行の時期には厳密な定義・区別は確定されてい

ないが、近年、ユーザのニーズにより一次発酵のみで製品堆肥とする場合があるので、期間の管

理を的確に行う。

・一次発酵から二次発酵への移行の時期は明確には出来ないが、一般的な目安としては一次発酵設

備で 2 週間以上の発酵期間を経過し、品温が 65℃を超えなくなった段階とする。二次発酵につ

いての目安は、品温が低下、常温安定状態になり、原料の原形が見られないなど外観が明確に変

化し、堆積した発酵物の表面近く内部にカビや放線菌による白帯状の模様がみえることなどで判

定するが、原則として「幼植物試験法」により検定する。

【解説】

有機性廃棄物の堆肥化においては、原材料によって含有される有機物の成分に違いがあり、好気性

分解による熟成期間に差ができてくる。しかし、通気性や水分の調整により易分解性の有機物の分解

期間は 1~2 週間程度でほぼ完了する。その段階以降からいわゆる完熟(農地に施用するのに適した

腐熟度)といわれるまでの期間については、原料により異なり、繊維質、木質系などセルロ-スやリ

グニン系の含有率の高い原料は、熟成期間が長くかかる傾向にある。

畜産系のふん尿では、豚ふん系は比較的分解され易い成分が多い。牛ふん系は敷わらや、飼料とし

てわら成分が混入したりするために、セルロース系の繊維質を多く含む傾向にあり、熟成に日数がか

かる。

堆肥化の期間については、発酵設備混合物が熟成し所定の品質の製品堆肥を供給できる為の期間で

あることが重要であるが、一次発酵から二次発酵への移行の時期はいつか、二次発酵の完了は如何な

る状態を示すかなどについて明確には出来ない。

図 5-7 堆肥化処理中のC/N比の経時低下(松崎,1995)

出典:有機質資源化大事典・有機質資源化推進会議編・農文協

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堆肥化には、有機物の分解とともにタンパク質系窒素もアンモニア性窒素に分解され、アンモニア

としてガス化される。炭水化物系などに含有される炭素は分解され炭酸ガスとしてガス化される。こ

のように好気性発酵分解によって炭素(C)ともども窒素(N)も除去される結果C/N比の低下と

安定化がおこる。

図5-7に各種原材料の堆肥化過程の進行に伴うC/N比の変化をまとめた結果例を示す。この結

果から、原材料の違いや時間的経過の相違はあっても、有機性廃棄物は堆肥化の進行に伴ってC/N

比はほぼ 10に収斂してゆくことが推定される。

これらのことから、一次発酵、ニ次発酵についての管理は次のようになる。

一次発酵工程:

2週間以上同一設備において好気性発酵させ、易分解性成分の分解を完了させ、次の分解

工程に移行中の工程で、工程の区切りの目安は悪臭が解消し、発酵設備内混合物の品温が

65℃を超えなくなった段階とする。本工程では品温、水分の分析を行い、管理目標に合 わせて、攪拌・切返しの頻度、通気を管理する。品温は、混合物のどこでも 65℃を 48 時間以上保持させる。急速な水分蒸発により、水分が 40%以下になる場合は加水し水分管 理が必要である。アンモニアを主体とした悪臭の発生、水蒸気の発生に対し、適切な排除 処理を行い二次公害の発生防止など適切に管理すること。 二次発酵工程:

2~4週間、通気あるいは静置状態で、攪拌・切返しの頻度、通気を管理する。工程の進行に伴い

発熱量が低下し品温が低下、常温安定状態に至った段階で終期とする。外観からは、「施設に搬入さ

れたときの形が見当たらない」、「一様に黒色を呈している」、「悪臭がなく腐蝕土臭がする」、「堆積し

た発酵物の表面近く内部にカビや放線菌による白帯状の模様がみえる」などで判定する。品質分析か

らは、「C/N比が 10~30 で安定(原料により異なる)」「pH7~8.5 で安定」「硝酸態窒素が存在す

るようになった」などによるが、「幼植物試験法」により検定する。本工程においても、品温、水分

の分析管理を行い、急速な品温の低下が起こらない程度に攪拌・切返しを行う。本工程においても、

水分の低下が起こるようであれば加水する水分管理が必要である。

(5)攪拌・切返しの管理

・発酵過程における攪拌・切返しを適切に行うことによって、的確な通気と相まって品質の良い製

品堆肥を生産できる。

・攪拌・切返し頻度の管理は、品温、水分を管理指標とする。頻度調整は、品温管理では、特に外

気低温季において低下を来たさない頻度に調整、水分管理では、水分が低下するようであれば、

頻度を少なくするなどして、発酵速度の低下や、不活性化の起こらないように調整する。

・攪拌・切返し頻度は、原材料、装置により異なる。それぞれに適した頻度で攪拌・切返しを行う。

なお、攪拌・切返し頻度については、運転初期において調整・確認を行う。また、原材料が変更

される場合においても必ず調整・確認を行う。

【解説】

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発酵過程における攪拌・切返しの効果といえるものは次の各点である。

1) 堆積原料の圧密による通気不良の発生を防止する。

2)塊状化などを防止する。

3)新鮮空気を補給する。

4)アンモニアを主体とした発生ガスを放散する。

5)発酵熱により発生した水蒸気の放出を行う。

攪拌・切返し頻度は、堆肥化施設での運転管理において重要なものであるが、比較的容易に管理調

整できる要因である。機械攪拌においては、装置・機器により変更範囲に制限があるが、範囲内での

変更は容易である。ショベルローダによる切返しは、人為的に変更可能で容易に調整対応ができる。

一般的に横形などの発酵設備では攪拌頻度は 1~2回/日、密閉式の発酵設備で 5~20 回/日、ロ

ータリーキルン式では初期発酵に使う場合は数回/分、一次発酵として使う場合は数回/時間である。

密閉トンネル式や密閉容器式の発酵設備の場合は、原料の水分調整を行った後は密閉式の発酵設備へ

投入し通気管理を行う

一次発酵では、微生物による分解反応が活発で、発酵熱による品温上昇が顕著で、且つ水分の蒸発、

アンモニアガス等の放散など、製品堆肥の品質に大きな影響を及ぼすが、この期間は酸素要求も大き

く通気、攪拌が重要な運転管理要因となる。

易分解性有機物含有量の多い原料では、好気性発酵に必要な空気(酸素)を多く必要とするから、

比較的攪拌頻度は多く必要とする。他方、チップ材、剪定枝などが原料の水分やC/Nの調整材とし

て使用される時は、十分な通気性や発生ガス排出が確保され、攪拌頻度も少なくて良い場合がある。

寒冷季では外気温が 10℃より低く、攪拌・切返しによる放熱が大きいため、品温の上昇が困難に

なったり、逆に品温低下が起こる。必要に応じて通気空気温度の加温とともに、放熱を少なくするよ

うな攪拌・切返し頻度にする運転管理が要求される。

二次発酵においては、分解反応速度が低下して、発酵熱の発生も減少しており、攪拌・切返し頻度

は少なくて良い。

二次発酵において、発酵熱の発生が継続して大きい場合には、一次発酵期間が不足していることと

なる。原料や、寒冷季においては、設定された一次発酵期間では十分な分解反応時間が確保できない

ことになる可能性もある。この場合には、二次発酵の前半で攪拌・切返し頻度の調整を行い、製品堆

肥の品質が確保出来るように運転管理する必要がある。

前項で述べた二次発酵後の熟成工程においては、製品堆肥品質の均一化や、嫌気性化防止のために、

通常は週1回程度の攪拌や切返しを行う。

(6)水分管理

・好気性発酵の工程では、有機物の分解に伴って発熱し、発酵設備内混合物の水分が水蒸気となっ

て発散され、水分は工程が進むに従って低下する。水分が 40%以下になる場合には、加水して

40%程度を維持するように管理し、微生物の分解活性を維持することが必要である。

【解説】

畜産系や生ごみ、汚泥系などの有機性廃棄物は、原料発生時では 80%以上の高水分のものが多

く、そのままでは堆肥化を進行させることが困難である。もみ殻、木質系チップ、剪定枝、食品工場

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129

残さ廃棄物など、比較的に水分の低い原料もある。これら、各種の有機性廃棄物を前処理段階で混合

し、融合処理などをすることにより水分調整される。

しかし、堆肥化を進行維持するためには、原料の分解に必要な一定以上の有機物の保持が必要であ

る。低有機物含有量の場合は有機性廃油あるいは、油脂を混合し堆肥化を進める必要があるものもあ

る。

他方、堆肥化の進行に伴って、発酵熱により急激な水分の蒸発が起こり、水分が発酵設備内の工

程途中で 40%以下になり、発酵分解が低下してしまう現象が起こることがある。夏季や、有機物の

多い原料の分解過程などに起りやすい。

水分が低下すると微生物による有機物分解が抑制される。このため、特に一次発酵においては、

発酵設備内の混合物の水分については、40~45%程度が確保されるように管理し、必要であれば加水

などにより適切な水分を保持する。

(7)種堆肥の確保

・堆肥化施設を新設したとき、施設の円滑なスタートアップを期すために諸般の準備を行うが、特

に、種堆肥を適切な手法で確保する。

【解説】

新設により堆肥化施設を建設する場合、定常運転を行わせるに先立ち諸般の準備がある。その中で、

施設の中核である発酵設備の円滑な運転を最も注意深く進められなければならない。これは前処理工

程に定めた原料の量や性状の確認から、副資材及び返送堆肥の準備などが始まるが、新設ということ

で返送する堆肥はないから、種堆肥の確保が必要である。この場合、表5-6に示す3方式が考えら

れる。

いずれの方法を採用するにしても、発酵設備から返送堆肥が排出されるまでの期間、すなわち発酵

日数分の返送堆肥に相当する量の種堆肥を確保しなければならない。また、それらの入手方法、輸送、

保管方法、保管スペースなども事前に十分検討し、試運転途中で種堆肥が不足することがないように

する。

なお、特定の微生物を培養した微生物資材が数多く市販されており、堆肥化促進に有効なものも

有る。これらを特に使用しなくても上記の方法でスタートアップは可能である。もし利用する場合は、

菌や培養資材、堆肥化条件への適否などが明確にされているものを選ぶようにし、可能の限り、実際

に使用している堆肥化施設において、自ら確かめることが望ましい。

表5-6 種堆肥の確保の方法

自 家 生 産

原料を乾燥で水分調整 副資材添加で性状調整

他の類似施設の堆肥を使用する

内容

堆肥化施設で処理する原料

を、天日乾燥あるいは機械乾

燥により乾燥させたものを

使用する。

もみ殻、おがくずなどの副資

材を使用する。

他の堆肥化施設で生産した堆肥

を使用する。

試運転 原料を乾燥させたものは有 副資材は通気性が良いため 発酵設備投入時の条件が定常時

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130

機物量が多く含まれている

ため、発酵設備投入物はすぐ

に温度が上昇するため試運

転は容易である。

発酵管理がそれほど難しく

ない。

と近いため、所定の発酵設備投

入条件で試運転を行える。

製品

堆肥

当初は発酵設備から排出さ

れた堆肥はすべて返送堆肥

として使われるため製品堆

肥は生産されないが、徐々に

製品堆肥が生産される。

当初発酵設備から排出され

た堆肥中には副資材が混じ

っているため、すべての副資

材が入れ替わるまで定常状

態にはならない。

当初発酵設備から排出された堆

肥中には他の堆肥が混じってい

るため、すべての他の堆肥が入

れ替わるまで定常状態にはなら

ない。

特徴

原料の乾燥には、相当な手間

と費用がかかる。

製品堆肥へ他の原料の混入

や副資材の混入が許されな

い場合にはこの方式を採用

する。

製品堆肥中に多少の副資材

の混入が許される場合は、試

運転の発酵温度の立ち上げ、

発酵管理が容易である。

類似した原料から生産された堆

肥が近隣で入手できる場合はこ

の方式が良い。

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131

7.堆肥の品質管理

1)堆肥品質管理

(1)堆肥の生産管理

・ユーザのニーズに応えられる、良質で微生物学的に安定した製品堆肥を生産するには、生産過程

におけるすべての作業が、予め定められた生産管理基準等に従って、適正かつ確実に執行されな

ければならない。

・製品品質管理の適正かつ確実な執行は、生産管理における工程管理及び環境保全機能管理が適切

に執行されることによってのみ可能となる。

【解説】

ユーザのニーズに応えられる、良質で安全かつ衛生的な製品堆肥の生産は、堆肥化施設の現場にお

いて、原料の発生状況の把握に始まり、前処理工程、発酵工程、製品化工程を経て、商品価値を持つ

適格品としてユーザに引き渡すまでの間の、工程管理及びそれと併行する品質管理が適正かつ確実に

行われてはじめて達成される。

有機性廃棄物の堆肥化は廃棄物を原材料とするから、その発生状況や収集状況を把握し、発酵不適

物を排除した原料を、円滑に発酵工程に乗せる前処理工程についての工程管理が、まず、品質管理に

大きく関係してくる。発酵不適物には、ビニールなど高分子系のものから金属類、ガラス片、砂礫な

どがある。これらは、発生現場で混入したり、収集や搬送過程で使用されたりして混入する。これら

発酵不適物が堆肥施設に搬入される前や搬入時点で分別・分離し、また、適切に前処理することによ

り最終の製品堆肥の品質を確保することが必要である。

原料には有害な重金属その他の物質が含有されていたり、病原菌を保持している恐れもあり、これ

に対する前処理も必要である。発酵工程での工程管理が、製品堆肥の品質管理に深く関わりあうこと

は当然として、製品化工程では、製品堆肥として商品化するためのふるい分け分別、造粒、袋詰めな

どから保管、貯蔵まで、製品堆肥の商品価値を左右する作業があり、ユーザとの交流を深め、製品に

対する評価や要望を聴取することも品質管理業務の一環である。また、取扱う材料は廃棄物であり、

作業場では湿気や腐食性ガス、粉じんなどが発生する。劣悪な生産環境からは適正な品質の製品生産

は期待できないことに留意し、環境管理の万全を期す必要がある。

(2)製品堆肥の成分特性

・堆肥は、土壌に継続して施用されることにより、肥料効果と土壌改良効果が期待される。

・2種類以上の原料を使用し、適切に管理された融合堆肥は、廃棄物資源化の効率性と施用効果の

両面で、単一のものに比べ有利である。

・製品堆肥の含有成分は、原材料の違いによって異なる特性を持っている。これらの特性を把握し

ておくことは、ユーザのニーズに応える堆肥生産に有効である。

【解説】

堆肥は、土壌に継続して施用されることにより、肥料効果と土壌改良効果が期待される。製品堆肥

の評価対象成分は、肥効成分としての窒素、リン酸、カリウムをはじめ、炭素、

カルシウム、マグネシウムなど及び熟成度にかかわる有機成分形態である。

しかし、製品堆肥の含有成分は、原材料の違いによって異なる特性を持っている(表6-1)。堆

肥生産管理者は、これらの特性を把握しておくことがユーザのニーズに応える堆肥生産に有効である。

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表6-1 各 種 有 機 物 の 施 用 特 性

施 用 効 果 有機物の種類 原 材 料

肥料的 化学性改良 物理性改良

施用上の注意

堆肥 イナワラ、ムギワラ及び野菜

クズなど

きゅう肥

(牛ふん尿)

(豚ふん尿)

(鶏 糞)

牛ふん尿と敷料

豚ふん尿と敷料

鶏糞とワラなど

肥料効果を考え

て施用量を決定

する

木質混合堆肥

(牛ふん尿)

(豚ふん尿)

(鶏 糞)

牛ふん尿とオガクズ

豚ふん尿とオガクズ

鶏糞とオガクズ

未熟木質がある

と虫害が発生し

易い

バーク堆肥

バークやオガクズを主体にし

たもの

未熟木質がある

と虫害が発生し

易い

モミガラ堆肥

モミガラを主体としたもの

物理性の改良効

果を中心に考え

都市ごみ堆肥 家庭の厨芥類など

ガラスなど異物

の混入に注意す

下水汚泥堆肥 下水汚泥及び水分調整材

石灰の量に注意

する

食品産業廃棄物

食品産業廃棄物及び水分調整

肥料効果を考え

て施用量を決定

する

出典:「有機物をどう使いこなすか」(西尾ら)・農文協

しかし、有機性廃棄物が原材料であるために、原材料の性状、発酵期間の違いによって、製品堆肥

の含有成分の質・量的比率に違いができる。特に肥料効果成分である窒素の肥料効果発現については、

C/N比による影響が大きく、その数値は熟成度によって変化する。このC/N比は、施用において

重要な品質判断基準となり、植物体の生育に関わる基本的成分であるため販売・流通に当たっては表

示されなければならない。

リン酸、カリウムについては、原材料となる有機性廃棄物の種類によって含有量・比率に違いがあ

り、原材料の特徴が出てくる。発酵過程での分解・減少による変化は少なく、含有比率は、炭素、窒

素の分解・減少に伴って変化する。有機性廃棄物を原料とする堆肥では、畜ふん尿系以外はカリウム

が不足するものが多い。リン酸については、生ごみ、刈り草以外は比較的含有量が高いものが多い。

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堆肥の原材料となる有機性廃棄物は堆肥化の進行に従い、易分解性成分は一次発酵の期間に分解さ

れる。二次発酵過程においては、セルロースやリグニンなど高分子系、多環系の可分解性の有機物が

分解を受ける。しかし、堆肥の中には残留有機物があり、また発酵過程で再合成される有機物もある。

これらの有機物は土壌改良に益するとともに、施用後、土壌中で経時的に分解を受け、堆肥中の無機

系の肥料効果成分ともども植物に利用されることになる。

堆肥は、含有される有機物の土壌中での分解を通じて窒素、リン酸、カリウムなどが生成され、遅

効性肥料としての効果を持つとともに、施用時に堆肥に含有される無機系のイオン化された窒素、リ

ン酸、カリウムなどは無機系肥料同様に、比較的早い段階で吸収利用され即効性も一部あり、即効性

と遅効性の両面を持ち、土壌改良面と共に地力の増進に有効な素材となる。

現在流通している代表的な堆肥の成分特性について報告がある(図6-1)。以下に、若干の説明

を記す。

牛ふんに関しては、カルシウム分以外は非常にバランスがとれている。豚ふんや鶏ふんは、肥効成

分は十分含まれている。C/N比は 20を下回っていて、良好な肥料としての成分組成になっている。

畜ふんは、発生時は水分が高く、そのままでは嫌気性化し易く、堆肥化には水分調整が必要である。

前処理での調整材の混合状態によって肥効成分など含有成分率に変化が出てくる。

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注:図の円は T-N 2%、T-C 30%、C/N 20、Ash 35%、P2O5 2%、MgO 1%、

CaO 5%、K2O 2%を基準として描いている

図6-1 堆肥、きゅう肥の種類別成分特性

出典:有機物をどう使いこなすか(西尾ら)・農文協

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2)製品堆肥の品質判定

(1)肥料効果成分の評価

・堆肥に期待される効果は、次のとおりである.

①土壌の通気性、保水性、pHなど作物生育の環境条件を改良し整える。

②肥料としての効果

③土壌微生物の増殖・活性化による地力増進効果

・汚泥系堆肥は普通肥料として肥料効果成分が表示され、他の特殊肥料となるコンポストにつ

いても、肥料効果についての評価は施用の目安を計る上で必要である。

・肥料効果成分対象として、農水省が保全推進基準項目として11項目を規定している。

①水分 ②pH ③有機物量 ④C/N比 ⑤全窒素

⑥無機態窒素 ⑦全リン酸 ⑧全カリウム ⑨アルカリ分

⑩電気伝導率(EC) ⑪陽イオン交換容量(CEC)

【解説】

各種有機性廃棄物から製造される堆肥は、原料の違いにより成分にも違いがでてくる。 堆肥の肥料効果成分については、1994年全国農業協同組合中央会の「有機質肥料等品質保全研究会報告」を受けて、農水省農蚕園芸局長名で「堆肥等特殊肥料に係る品質保全推進基準について」が通達され、原料の違いにより含有成分分析結果が規定され、表示されるようになった。 表6-4に肥料取締法に規定されている肥効成分項目等と分析方法を示す。

表6-4 肥料取締法に規定されている肥効成分項目等と分析方法

分析対象項目 分 析 方 法

全窒素量 ケルダール法によって窒素の全量を定量し、堆肥製品乾物当りの含有率で表す。ただし、硝酸

性窒素を含有する場合は、前処理により硝酸性窒素をアンモニア性窒素に還元する。

全リン酸量 硫酸分解または、灰化した後、塩酸で溶解し、バナドモリブデン酸アンモニウム法等によりリ

ン酸(P2O5)の全量を定量し、堆肥製品乾物当りの含有率で表す。

全カリウム量 灰化した後、塩酸で溶解し、原子吸光測定法等でカリウム(K2O)を定量し、堆肥製品乾物

当りの含有率で表す。

C/N 比 ニクロム酸酸化法により有機炭素を定量し、堆肥製品乾物当りの含有率を求め、全窒素含有率

で除して、C/N比を求める。

全石灰量 灰化した後、塩酸で溶解し、原子吸光測定法等でカルシウム(CaO)の含有量を定量し、堆

肥製品乾物当りの含有率で表す。

全亜鉛量 湿式分解法により溶解し、原子吸光測定法等で亜鉛(Zn)の含有量を定量し、乾物1kg当

りのmgで表す。

全銅量 湿式分解法により溶解し、原子吸光測定法等で銅(Cu)の含有量を定量し、乾物1kg当り

のmgで表す。

水分含有量 磁性皿に秤量された試料を、100℃で5時間乾燥し、乾燥冷却後秤量する。乾燥前後の重量

差の試料に対する百分率(%)をもって水分含有率とする。ただし、揮発性物質を含有する場

合は、補正を行う。

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(2)腐熟度の判定・分析

・堆肥化の目的は、有機物を腐熟させて農緑地に施用することであり、堆肥化の過程における

腐熟度の判定は、製品堆肥の品質管理上、極めて重要なものである。

・腐熟度の判定方法は数多いが、すべての有機物に汎用的に適用できるものは少ない。

【解説】

堆肥化では、有機物の分解が進行するに従い、炭素系物質は二酸化炭素に、窒素系物質はアンモニ

アや硝酸などに、リンを含む物質はリン酸に、その他分解過程でカリウム、カルシウム、マグネシウ

ムなどは、酸化化合物や炭酸化合物などに変化し、発酵設備内混合物全体としての減量・乾燥ととも

に熟成化する。

堆肥の品質管理において、製品堆肥の肥料成分の含有量とともに、発酵設備内混合物の腐熟度判定

は極めて重要であり、この判定の適否は土壌への施用上大きな影響を与える。しかし、数多く提案さ

れている判定法の中で、全ての有機物を対象としては汎用的に採用されるものは少ない。また、生産

現場で器具などを用いずに出来る簡便で確度の高い判定法が望まれている。

いずれにしても、発酵工程の生産管理に当たっては、品温の測定とともに、外観観測のような現場

で手軽に出来る評価判定で日常的に熟成の程度を観測し、二次発酵については幼植物試験法ほかの生

物的あるいは化学的手法の採用と併せて、製品堆肥の品質・安全性の確認を行うことが必要である。

腐熟度判定方法を判定対象に分類したものを表6-5に示し、比較的に使用例の多い判定方法の個

別の要点を表6-6に示す。これらの採用に当たっては、それまでに生産した堆肥との相対比較を行

うようにすることが望ましいが、特に、生産現場での日々の外観判定については必ず実行するように

する。

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137

表6-5 腐熟度の判定方法分類

腐熟度

判定対象 判 定 項 目 分 析 方 法 例 論 文 報 告 者

a.堆積物の温度 熱電対法 Golueke(1972)

b.BOD 下水試験法など 羽賀、原田

c.酸素活性 Godden etc.(1984)

1.微生物活

動から判

d.ガス発生量(ポリ袋) 吉野(1979)

a.発芽試験(コマツナ) 藤原(1980)、長田(1985)

b.幼植物試験(コマツナ) 河田(1981)

c.ミミズを用いた試験 吉野(1979)

2.生物を用

いた判定

d.花粉管成長テスト 若澤 etc.(1986)

a.物体色 菅原 etc.(1979)

b.微細形態の観察 藤原 etc.(1980)

c.粒度分布(ふるい分け残渣重量) 日向 etc.(1981)

3.物性判定

d.粒状強度

a.円形ろ紙クロマトグラフィ 井ノ子(1976)

b.腐植物質含有量 渡辺・栗原(1982)

4.腐植物質

による判

定 c.沈殿部割合 菅原・井ノ子(1981)

a.C/N比 下水試験法、JIS 法など Golueke(1981)

b.水抽出物のC/N比 下水試験法、JIS 法など Chanyasak, 久保田(1981)

c.還元糖割合 井ノ子・原田(1979)

d.アンモニア検出 ガス検地管法 森・木村(1984)

e.硝酸イオン検出 下水試験法、JIS 法など 原田(1983),Finstein(1985)

f.COD 下水試験法、JIS 法など Lossin(1971)

g.PH 下水試験法、JIS 法など Jann etc.(1960)

h.EC(電気伝導度) 上水試験法、JIS 法など 日向(1981)

i.揮発性成分(VTS) 下水試験法、JIS 法など 羽賀 etc.(1978)

j.遊離アミノ酸 原 etc.(1991)

k.水抽出物の GCG 吉田・久保田(1979)

5.化学特性

判定

l.陽イオン交換容量(CEC) Lossin(1971)

a.評点法 原田(1983) 6.総合判定

b.判別スコア値 下水汚泥資源利用協議会

出典:「再生と利用」No.60,下水汚泥資源利用協議会

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138

表6-6 製品堆肥の腐熟度測定・分析方法(1/3)

判定法 測定材料 測定方法 測定結果評価 測定原理

色調評価

なし

各部位の堆肥化物をサンプリングし

て色調を観察。

未熟;褐色もしくは暗黄

中熟;暗褐色

完熟;黒褐色

一般に熟成に従って

腐植物質が生成し、暗

褐色から黒色化して

くる。

臭気評価

なし

各部位の堆肥化物をサンプリングし

て臭気をかぐ。

腐敗;H2S 刺激臭、カプタン

類腐卵臭

未熟;NH4刺激臭

熟成;堆肥臭・土壌臭

正常に堆肥化が進行

すると未熟時のアンモニア

刺激臭が経時的に腐

植土壌臭、堆肥臭に変

化してくる。

品温評価法

温度計;棒温度計

深度 50cmまで測定

堆肥化物:上部 20~30cm、下部 50~

60cm経時測定する。

堆肥盤;切返し後品温の

増加が無くなると熟成

したと判断

機械攪拌;末端部で品温

低下(40℃前後)

但しバークやオガクズを

多量に含む物では判

断し難くなる。

好気性発酵の発熱反

応により品温が上昇

する。比較的易分解性

のものが分解される

間は顕著な温度上昇

がみられ、温度上昇―

低下―酸素供給―温

度上昇を繰り返す。

ポリ袋法

(ガス発生量法)

ポリ袋(幅 20cm

×長さ 30cm)

①堆肥化物 300g をポリ袋に入れ、空

気を排出して密閉封入する。

②25℃で 3~4日静置する。

発生するガスによるポリ

袋の膨らみで判定する。

膨らみが大きい程熟成過

程にある。

堆肥化に従って有機

物が分解され、CO2 ガ

スなどが多量に発生

する。熟成が進むに従

って減少する。

外観評価法 なし 本章6-2-5参照

硝酸検出法

ポリビン 200ml

硝酸イオン試験紙純

*硝酸イオンメーターやジフェ

ニルアミン測定法もある。

①ポリビンに 100mlの純水を入れ、堆

肥化物 50gを加える。

②手で振とうし、10 分間静置する。

③上澄み液に硝酸イオン試験紙を浸

け発色判定。

未熟;発色なし

熟成;発色あり。原料に

より差異あるが、抽出

液中に数 mg/l 以上あ

れば可

堆肥化に従ってアンモニア

が発生してくるが、分

解が進むとアンモニアが硝

酸菌により酸化され

硝酸が生産されてく

る。

ミミズ評価法

非透明プラスチック製のコ

ップ

遮光用黒布

シマミミズ(体長 50mm 以

上)数匹

①堆肥化物を容器に 1/3ほど充填(水

分 60~70%)

②ミミズをコップに入れ、行動と色調

を観察する。(直後と 1日後)

未熟;直後は逃亡行動、1

日後は死滅

中熟;直後は多少の拒否

反応あり、1 日後は行

動緩慢で、変色がある。

完熟;直後は潜り行動、1

日後変化なし。

ミミズは、未分解の有

機物から発生するフェノ

ール類、アンモニアガスを忌避

する行動を利用し腐

熟度を測定する。

幼植物試験法

コマツナ種子

シャーレ

200ml 三角フラスコ

ビーカ

ろ紙

ガーゼ

アルミホイル

熱湯

物指し

光学顕微鏡

堆肥化物 10g(乾物では 5g)を三角フ

ラスコにとる。

沸騰水 100ml 加え、アルミホイルで蓋する。

↓(1時間静置)

ガーゼ 2枚でろ過、ろ液 10mlをろ紙

2枚を敷いたシャーレーに分注。

コマツナ種子 30~50粒蒔く(同時に水

10mlいれたものを用意)。

室温または 20℃、3~6日後発芽率と

根を観察、判定する。

ろ液 EC(伝導率)が

5mS/cm以上なら1mS以下

に希釈して測定する。

判定は発芽率と根長を測

定する。

①発芽率

>80%

②正常根であること

*未熟の場合;根の周囲

がゼリー化し、高濃度細

菌が繁殖。

対象堆肥に作物の生

育阻害物が含まれて

いると発芽率が低く

なる。未熟で高濃度に

有機物が含まれてい

ると培養水が早期に

嫌気性化し根腐れを

起こす。

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139

表6-6 製品堆肥の腐熟度測定・分析方法(2/3)

判定法 測定材料 測定方法 測定結果評価 測定原理

花粉管成長

試験法

保温機(20℃)

ホットプレート

プラスチックシャ

ーレ

ビーカ

カバーグラス

100 メッシュふる

ノギス

コルクボーラー

ガーゼ

ろ紙(東洋 No.6)

ショ糖

ホウ素

寒天

チャ花粉

サンプル調整

堆肥化物に2倍量水を加え 24 時間常

温浸漬後、二重ガーゼ搾り、ろ紙でろ

過して被検液を用意。

<ウエル法>

培地;ショ糖 8%、寒天 1.2%、

ホウ酸 17mg/l、pH5.5 に調整、加熱溶

解後、シャーレーに固化。

コルクボーラーで抽出液注入穴 6 個あ

ける。

100 メッシュふるいでチャ花粉をガラス板

上に撒布、カバーグラスで掻取り、培地穴

から中心に向かって置床する。

穴に抽出液の原液 (1, 1/2, 1/3, 1/4,

1/5及び対照として水を各50μl注入。

20 時間、 25℃で暗所培養。

<培地法>

ウエル培地に被検液を 1/3, 1/7, 1/16

の濃度に加え培地調整。対照区として

被検液を加えないものを用意。

各シャーレーにカバーグラスで掻取ったチャ花粉

を放射線状に置床。

20 時間、 25℃で暗所培養。

<ウエル法>

花粉管の伸張阻害を確

認する。

サンプル穴から伸張阻

害されている部分の長

さを測定。

5mm 以下は安全

10mm 以上は強い阻害

(熟成度以外に阻害物

質による事もある)。

<培地法>

伸張花粉管の長さを測

定する。

対象花粉管長と比較

し、80%以上の伸張長

であれば安全と評価。

堆肥サンプルに

植物根生育阻害

物質が含まれて

いれば、比較的

短い時間で評価

判定できる。

発芽試験とかな

り互換性があ

る。

また、発芽試験

と違って試験濃

度の幅がとれ、

濃度による影響

が少ない。

ポット栽培

試験法

(農林水産省方

法:1984年)

ノイバウエルポッ

土壌(2mm 目ふ

るい通過風乾燥土)

コマツナ種子

ノイバウエルポット当たり土壌(2mm

目ふるい通過風乾燥土)500ml。

水分は、最大容水量の 50~60%となる

ように加水。

堆肥化物は細かく砕き均質化。

堆肥化物施用量は、堆肥化物窒素量が

2%以下では乾物換算で 5g,2%以上は

窒素として 100mg(N)を標準施用利用

とし、この 2,3,4倍量のポットを設定。

窒素(N)、リン酸(P2O5)、カリ(K2O)

として各 25mgに相当する硫安、過リン

酸石灰、塩化カリを施用。対照区も同

様に設定。

それぞれ土壌と肥料を均一混合。

コマツナ種子 20 粒または 25 粒播種、

風乾土で種子を覆う。

↓(15~25℃で 3週間)

播種 10日間は初期設定水分量保持、そ

の後は作物生育に合せ給水、栽培する。

下記項目について調査

し、対照区と比較する。

・供試土壌;土壌の種

類、土性、pH、EC、

塩基置換容量、最大

容水量

・跡地土壌;pH、EC、

アンモニア態 N、硝酸態 N

・作物生育;発芽率、

葉長、生体重、生育

状態の異常の有無

作物栽培結果として、

対照区に比較して、作

物の生育阻害がみられ

ると未熟。

対照区と同等であれば

ほぼ完熟していると判

断できる。

ポット栽培試験

は堆肥の熟成度

や効果を直接判

定し、最も効果

がある方法であ

る。

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140

表6-6 製品堆肥の腐熟度測定・分析方法(3/3)

腐熟度評価項目 測定材料 測定方法 測定結果評価 測定原理

外観色測定法

色彩色差計(ミノル

タ CR 型など)小型容

乾燥堆肥化物粉砕し、容

器に入れる(容器が透明

のときは黒色紙上に)。

色彩色差計で色彩測定

(数箇所測定し平均)。

明度を表示する、CIA表色

の Yxy 表示の Y 値を求め

る。

Y値が 12~13になれば

熟成していると言え

る。

腐植化過程の指標とし

て⊿logK(アルカリ抽

出液の 400nm と 600nm

吸光度の差)と Y 値に

は相関関係がある。こ

のことから色彩色差計

での色判定で⊿logK を

測定する方法とほぼ類

似の結果が得られる事

を利用している。

炭素率測定法

窒素・炭素自動分析

乾燥堆肥化物粉砕化し 50

~500mg を量りとる(機種

により決める)。

窒素・炭素計で測定。

未熟;炭素率 25以上

完熟;10~20

ただし、炭素率 10以下

の鶏ふんや汚泥では堆

肥化進行で炭素率上昇

することがある。

炭素含有率の多い有機

物が分解して、炭素が

炭酸ガスとして排出さ

れると含有炭素率が低

下する。しかし、蛋白

質系で原料の炭素率の

低いものは分解し逆に

炭素率が高くなる原料

もある。

円形ろ紙クロマトフィ

ー法

通風乾燥器

ろ紙(No.6)

シャーレ

ビーカ

試薬びんの蓋

試験管

硝酸銀

0.1mol 水酸化ナト

リウム液

乾燥堆肥化物

粉末.1g(現物では 0.2g)

を試験管に入れる。

0.1mol 水酸化ナトリウム

液 10mlを加え、数時間振

とう攪拌。

静置あるいは、遠心分離

し上澄水を分取する。

シャーレ中心の試薬びん

の蓋に上澄液を注入。

0.5%硝酸銀含浸乾燥し

たろ紙に切り口をつけ、

その部分を折り曲げて中

心部に浸漬し、ろ紙をシ

ャーレの内蓋の間に挟み

固定する。15~30 分、上

澄液を吸上げ、ろ紙に展

開させる。

吸い上げ部を切捨て、直

射日光を避けて通風乾

燥。発現するクロマトグ

ラムで判断。

未熟;のこぎり歯状切

り込みが見えず同心

円展開。

完熟;のこぎり歯状外

周状態を示す。

歯状切れ込みは、熟

成が進むに従って明

確になる。

Hertelendy(1974) 報

告、藤原(1985)によ

り改良された方法であ

る。

有機物は堆肥化に従っ

て分解し、低分子から

高分子の有機物になっ

てくる。その結果ろ紙

クロマトでの展開速度

に明確な違いができて

くる。その結果として、

歯状展開することとな

る。

*ただし、木質系のも

のが混入した堆肥には

適用困難

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141

(3)外観による判定法

・発酵設備内混合物は、有機物の分解により、品温、色調、臭い、水分などが変化するので、これを

観測することにより、分析器具を用いずに、腐熟の度合いを現場で判定することが出来る。但し、

観測者の主観によることもあるので、堆肥の既往のデータと相対比較が出来るようにする。

【解説】

堆肥原材料は、まず易分解性の有機物が好気性分解され、腐植質化し、原料の原型はなくなる。臭

気はアンモニア臭や硫化水素が薄れ、やがて感じなくなる。また、有機物の分解の進行、切返し、通

気などにより、発酵設備内混合物の品温は上下し、やがて安定する。

表6-7 外観判定参考基準

判定方法 未熟成 1次発酵 2次発酵以上

色別法 黄色~黄褐色 黄褐色~黒褐色 黒褐色

臭気法 原料臭、刺激臭 腐植臭~

堆肥臭

堆肥臭、

土壌臭

触手法 泥触・原型あり 土壌塊状で比較的壊れ易

粉・小塊状触(パサパサで壊

れ易い)

豚毛引張り法

(豚ふん系)

付着粘性あり 引き抜き易い 簡単に抜ける

品温測定法 低温(50℃以下) 高温(60℃以上 80℃) ほぼ常温

* 色別法では、熟成化の過程で表面にカビが生え、灰白色化することがある。

色調は原色から暗褐色、黒色へと変化してくる。これらのように原材料から一次発酵物、二次発

酵物へと移行するとともに外観が変わることから、分析器具を用いずに、腐熟の度合いを現場で判

定することが出来る。但し、観測者の主観により、また、その経験によって差異がおこることが予

想されるので、前述のように、生産した堆肥のデータと相対比較が出来るようにする。また、この

方法は、ユーザの観点での評価も可能となる方法であり、ユーザとの対話の中で判定も出来るから、

評価手段として十分有効である。

評価基準は、原材料の持つ特有な性質もあるが、表6-7に示すのような評価レベルで熟成度を

判断できる。

(4)外観評点法による製品堆肥腐熟度評価

・製品堆肥の評価については、外観判定方法があるが、総合評価をするためには、評価対象項

目に評価点を設け、合計点による評価をもって現場での製品評価を行う方法が有効である。

特に、原材料の量や、質に変動があるものについては、施設の現場においての評価に従って、

運転管理方法の変更適正化を図ったり、製品の出荷の適否についての管理指針として採用す

るなど有効な手段となる。

【解説】

堆肥の生産現場で、外観上の性状から見て腐熟度を判定する方法には前述のように各種あるが、

色、形、臭気、水分、発酵設備内混合物の品温、発酵期間、切返し及び通気の状態を総合的に評価

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142

し、熟成の進行状況を判断する方法がある。

外観評定法がそれであり、表6-9に示すように、各項目ごとに、その現状による評価点を定め、

それにより現状を評点化し、合計点数によりその時の腐熟度を判定する。評価点合計が81点以上

のものを製品堆肥と判定する。

表6-9 現地における腐熟度判定基準

判定項目 判定基準

色 黄~黄褐色(2)、褐色(5)、黒褐色~黒色(10)

形状 現物の形状を留める(2)、かなり崩れる(5)、殆ど認められない(10)

臭気 ふん尿などの現物臭・刺激臭強い(2)、ふん尿・刺激臭弱い(5)、

堆肥臭・土壌臭(10)

水分 強く握ると指の間から滴る・・70%以上(2)、

強く握ると掌にかなり付着・・60%前後(5)、

強く握っても掌にあまり付着しない・・50%前後(10)、

堆積中の最高温度 50℃以下(2)、50~60℃(10)、60~70℃(15)、

70℃以上(20)

堆積期間 家畜ふんだけ:20日以内(2)、20日~2ヶ月(10)、

2ヶ月以上(20)

作物収穫残渣との混合物:20日以内(2)、20日~3ヶ月(10)、

3ヶ月以上(20)

木質物との混合物:20日以内(2)、20日~6ヶ月(10)、

6ヶ月以上(20)

切返し回数 2回以下(2)、 3~6回(5)、 7回以上(10)

通気強度 なし(0)、 あり(10)

腐敗、或は未熟成 一次発酵、或は中熟成 二次発酵、或は完熟 熟成度

総合評点 30点以下 31点~80点 80点以上

出典:原田,1983 注:( )内は評価点を示す

3)堆肥品質管理の基準

現在流通している製品堆肥の品質については、「肥料取締法」、「土壌汚染防止法」、「農用地におけ

る土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準」や各都道府県による独自の規制や基準が定められて

いる。また農林水産省や、全国農業協同組合中央会、下水汚泥資源利用協議会などによる推奨品質基

準などがある。しかし、原料管理に始まる生産管理を含めた品質管理基準は明確に定められていない

ため、原材料や生産システム、季節など時期、貯蔵期間などによって製品品質の違いが大きい。特に、

腐熟の程度に大きな幅があり、施用の仕方によっては、根腐れや、窒素過多或いは、逆に窒素飢餓、

土壌の酸性化などの問題が発生するおそれもある。

今後、リサイクル社会の進行に従って、有機性廃棄物などからの再生利用・再資源化される製品堆

肥の市場が形成されることを想定すると、製品堆肥の品質に起因する問題を回避し、良質で安定した

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143

製品を継続的に供給するための基準を整備し、優良な製品堆肥をユーザに供給することが望まれる。

このことは、農作物を消費する国民の意向でもあり、全国民的要望といえる。

肥料取締法においては、特殊肥料については含有重金属についての規制が設けられている。汚泥系

を原材料とするものに関しては普通肥料として成分の表示などが義務付けられている。

土壌汚染防止については、製品堆肥使用に関する有害重金属を始め、各種の有機性有害物に至るま

での溶出規制値が設けられている。

堆肥の施用基準に関しては、農用地における土壌中の亜鉛(Zn)の蓄積基準が設けられている。

土壌への蓄積は 120mg/kg以下を基準として長期的な施用の一つの目安にもなっている。

1994 年には、農林水産省農蚕園芸局長通達「堆肥等特殊肥料に係る品質保全推進基準について」

において有機肥料に対する基本姿勢が示されている。

堆肥の品質に対する要求は、施用対象土壌の状況や、栽培対象植種によって違ってくる。また、堆

肥の需要は変動が大きく、端境期には、保管期間が長くなるが、微生物活動は継続している。このた

め、その間の管理上の取扱い方によっては品質上有効な熟成期間ともなり、品質の安定化が促進でき

る。

有機性廃棄物の堆肥化施設の設計指針や製品堆肥の品質については、統一基準は定められていない

が、各種原料ごとに、原料の違いに合わせ、設計指針や団体基準などが、特に、製品堆肥の安全性に

重点をおいて決められている。しかし、統一的なものは定められていない。

本項においては、これまでの調査結果を調整し、有機性廃棄物の堆肥化の現状を踏まえた上で、良

質・安全、衛生的な製品堆肥を、安定的かつ継続的に供給し、利用するための、総合的な品質管理の

基準を示すものである。

なお、それぞれの原材料についての具体的な工程管理、品質管理等は、法令並びにそれぞれの関係

機関・団体の定めるところによることとする。

(1)品質管理基準の前提条件

イ)有機性廃棄物など有機物を原材料とした製品堆肥の施用目的は次のとおりである。

①土壌に物理的・化学的変化をもたらし、植物の生育環境を改良する。

②植物の成長に必要な栄養分を供給する。

③土壌微生物の活性を増加・促進する。

ロ)製品堆肥の品質に影響を与える要因となるものは次のとおりである。

①原料の性状、副資材の確保

②堆肥生産管理(工程管理、品質管理、環境管理)

ハ)すべての原料について製品品質条件を画一的に設けることは出来ないが、堆肥の使用に当たって

安全で、出来るだけ安定した組成・成分含有率を持ち、作業性に優れたものとする。

ニ)基準については、好気性発酵装置を持つ堆肥化施設を対象とする。

①施用目的を果たす為に必要な製品堆肥の品質について、物理・化学的成分含有量、生物学的安全

性、微生物学的安定性、各種試験などの基準を定める。

②製品堆肥が、安全で安定した品質を確保するために必要な、工程管理及び品質管理の基準につい

て定める。

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表6-10 品質基準の評価項目・評価内容

評価目的 評価項目 評価内容

VTS 有機性成分含有量の評価、易分解性有機物分解状況評価

C/N 比 素材評価、生物分解安定度評価、肥料としての安定性評価

ガス発生判定 生物分解安定度評価、易分解有機物残存評価

臭気判定 易分解性有機物生物分解状況の確認評価

外観判定 易分解性有機物生物分解による色調変化で分解況評価

触手判定 湿感と塊状・破砕の難易で生物分解状況を評価

熟成度評価

陽イオン交換容量

(CEC) バーク堆肥熟成状況評価

生物判定評価 発芽試験 生物分解安定度評価、有害物質含有評価、安全性評価

全窒素

全リン 肥料効果

成分評価 全カリウム

肥料効果成分含有量評価

アルカリ分 酸性土壌の中和による土壌環境影響評価

電気伝導率(EC) 塩濃度による植物障害影響評価 土壌改良効果

成分評価 pH 酸性或いは、アルカリ性による植物生育環境影響評価

有害成分評価 重金属 「肥料取締法」による重金属含有量評価

製品粒度分布 製品完成度・商品価値評価、肥料散布への効果評価

夾雑物含有量 肥料・土壌改良材としての商品価値の評価、作業性評価 製品品質評価

水分 取扱い・商品価値評価・作業性評価

微生物学的評価 発酵温度・病原菌 発酵過程で高温持続期間評価の病原性菌死滅・減菌評価

堆肥化条件 発酵条件(温度、期間、水分、通気、切返し条件など)の評価 発酵環境

条件評価 原材料受入れ条件 発酵不適物混入条件の評価により製品品質評価

(2)工程管理と品質管理

一定の品質を確保するには、生産システムが適正かつ円滑に機能することが肝要である。

堆肥化施設の工程管理と品質管理との関係を表6-11により理解し、適切な生産管理を行う。

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表6-11 工程管理・品質管理の項目と内容(1/2)

管理対象項目 管 理 目 的 管 理 指 標・内 容 代表的装置・測定機器

原料性状

発酵槽投入条件

発酵の安定化、

安定した良質製品の確保

円滑な好気性を確保し、有

機物分解を促進

発生源確認

受入量と性状確認

原料の種類の変化、成分の季節変動

などにより発酵槽投入条件を最適

なものに設定変更

基本水分の目安は 60%以下、密閉撹

拌方式;55%以下、副資材、返送堆肥

など混合の場合は 65%以下

有機物分解率の目安は、畜ふん

40%、汚泥系が 30%生ごみ系 75%

以上

回分投入のため、ショベ

ルローダなどで投入

赤外線式水分計

蒸発乾固分析方式

副資材 水分調整、発酵促進、 種別、供給者、所要量 置場、倉庫、搬送装置

返送堆肥量

水分調整、発酵促進

投入原料の水分上限量が確保でき、

発酵期間を確保できる範囲で調整

返送堆肥、貯槽、搬送装

通気量

発酵設備内混合物を好気

性に保ち、有機物の分解発

酵を促進させる。

0.05~0.15m3/min・m3・発酵槽有

効容量を目安に、堆積高に合わせて

圧損換算をして通気量を設定する。

送風機

通気温度 冬季などにおいて発酵設

備内混合物の温度が 65℃

を 48 時間以上保持できな

い場合など、品温低下を防

止し、発酵分解を継続・促

進させる。外気温10℃以

下を目安に吹込み空気温

度20℃以上

大型;圧縮熱で送風空気は高温化す

るが、圧縮率が低い場合は

加温式とする。

小型;加温装置付き送風機とする

か、吸込み空気加温方式が必

加温ヒータ付ブロワ

ブロワー室内ヒータ

空気予熱器

排気量 好気性発酵熱により原料

中の水分が蒸発し、発酵設

備内の壁・機器で結露す

る。

結露防止と悪臭排除を

目的として発酵槽上部か

らの排気を行う。

発酵設備内を負圧に保つ。

結露水の排除可能な仕様とする。

吸気設備脱臭ファン

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表6-11 工程管理・品質管理の項目と内容(2/2)

管理対象項目 管 理 目 的 管 理 指 標・内 容 代表的装置・測定機器

切返し

原料の圧密防止、通気性確保 発生した水蒸気除去、嫌気性化防止

発酵設備内混合物の品温低下が起こらない範囲で切返す。基本的には設計条件参考。 一次発酵(機械切返し);

1回/日以上 二次発酵(機械切返し);

投入・搬出に合せ 1回/日程度

二次発酵(堆積式); 1~2回/週以上

機械切返し装置 ショベルローダなど

一次発酵過程 有機物の分解性能確認 病原菌、寄生虫などの死滅化及び雑草種子の不活性化 発酵設備内混合物の水分の低下促進 製品堆肥品質向上推進

投入後、1~2日で投入物温度70℃以上、以後、上昇、低下を繰返し、やがて定着 基本条件;65℃以上 48 時間(以上)確保 水分量 40%以下になれば加水 外観評価

発酵設備 切返し装置 ショベルローダ 加水装置 測温抵抗体

二次発酵過程 発酵の促進・継続 製品の安定化

一次発酵堆肥移送・堆積後、短時間品温再上昇、 その後経時的に低下(品温上昇が急激にあれば、一次発酵中と判断し二次発酵期間延長する)

撹拌・切返し装置 発酵設備 ショベルローダ 測温抵抗体

一次発酵 製品堆肥

二次発酵移行製品品質確認 二次発酵条件設定

品温は 50℃以下 水分は 40%~60% 臭気は堆肥臭(土壌臭に近い) 悪臭発生無し 触感は粘性少なく、乾燥性触感あり、塊状化し難い 色調は原料により違いがある が、黒褐色系 有機物分解率 30~40%を目安 とする

二次発酵 製品堆肥

製品品質確認・確保 熟成度評価レベル確認・確保 粒度調整 菌類発生確認

品温は常温以上 腐熟度判定クリア 肥効成分確保 各種法規制基準値以下確保 色調は黒褐色 ペレット化

造粒設備 袋詰設備 貯蔵設備 製品品質分析機器 幼植物試験その他

保管管理 製品品質維持 倉庫内状況

製品の吸湿 積上げ高さ 荷崩れ・袋破損

(3)製品堆肥の品質基準

堆肥生産者は、堆肥の原材料、生産工程での前処理工程、発酵工程、製品化工程の各過程において、

定期的に分析・評価・判定を行い、製品堆肥のユーザとも円滑な関係を保ち、

①肥料取締法の規制基準に適合していること

②人間や動物の健康の維持を阻害しないこと

③植物の生育に異常を認めないこと

について、常に、製品堆肥の品質を確認し、製品堆肥ユーザの信頼に応えられるように、適正な工程

管理及び品質管理を行い、利用者に対して安定した品質と供給を保証する。

堆肥生産に当たっての製品堆肥の品質基準を表6-12に示す。

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147

表6-12 製品堆肥の品質基準(1/2)

対象

基準項目 原材料

一次発酵

堆肥

二次発酵

堆肥 説 明

外観評価

外観判定 ●褐色~黒褐色 ◯黒褐色~黒色

触感判定 ○壌塊状で壊れ易い ◯粉・小塊状(パサパサ)

臭気判定 ○腐植臭~堆肥臭 ◯堆肥臭-腐植土臭

粒度 ◯<10mm

腐熟度評価

水分(%) ●85(調整後<65) ○<50 ●<40 数値等は参考

発酵温度(℃) ●>50 ◯<50

pH ●弱酸性以上 ○~弱アルカリ性 ●7~8.5 数値等は参考

ガス発生判定 ○少量、アンモニア臭無し ○発生無し

有機物含有量(%/DS)

●原料、副資材とも

に分析評価する

こと

○汚泥系:35~40

○畜ふん系:60前後

○生ごみ系:35~40

●汚泥系 :>35

●畜ふん系:>60

●生ごみ系:>35

●バーク:>70

数値等は参考

C/N比

●原料、副資材とも

に分析評価する

こと

○1次発酵評価参考

の為に分析・評価する

こと

●汚泥系:<20

●畜ふん、生ごみ:<30

●バーク:<40

数値等は参考

幼植物試験(小松菜) ●発芽異常を認めない

肥料効果成分評価

全窒素(%/DS) 原材料毎に分析・評

価する

○分解経過判定のため

に分析する

●畜ふん≧1.5

●汚泥、生ごみ≧1.5

●し尿汚泥系≧2

●食品系汚泥≧2.5

数値等は参考

全リン(%/DS) 原材料毎に分析・評

価する

●畜ふん系 ≧1

●鶏ふん、汚泥系≧2

●生ゴミ系 ≧1.5

数値等は参考

全カリウム(%/DS) 原材料毎に分析・評

価する

●畜ふん、生ゴミ:≧1

●他は、含有量を表示 数値等は参考

夾雑物含有量評価

10mm (%/DS)以上 ●含有率 0% ガラス、金属、

プラスチック

2.0mm(%/DS)以上 ●≦2.0 同上 全夾雑物(%/DS) ○ ●≦1.0 同上及び石

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148

表6-12 製品堆肥の品質基準(2/2)

対象

基準項目 原材料

一次発酵

堆肥

二次発酵

堆肥 説 明

阻害・有害成分評価

電 気 伝 導 率 ( E C )

(mS/cm) ●<5 数値等は参考

ひ素(As)(%/DS) ○ ●<0.005 肥料取締法による

カドミウム(Cd)

(%/DS) ○ ●<0.0005 肥料取締法による

水銀(Hg)(%/DS) ○ ●<0.0002 肥料取締法による

ニッケル (Ni)

(%/DS) ○ ●<0.03 肥料取締法による

クロム(Cr)(%/DS) ○ ●<0.05 肥料取締法による

鉛(Pb)(%/DS) ○ ●<0.01 肥料取締法による

有害・有毒物 ○ ● 総理府令第5号1973

亜鉛(Zn) ○ ● 環水土第149号1984

微生物学的評価

大腸菌(EーColi) ◯1,000CFU/g

サルモネラ菌 ◯現物25g中に存在しないこと

発酵温度(℃×期間) ●65℃×48h以上

(注)1. ●:必須確認判定項目 ○:自主項目

2.参考値について

1)表示について法令及び団体の規制、基準がある場合は、その定めるところに準拠する。

2)団体等の規制、基準で本基準に上乗せ基準があるものについては、その定めるところに準拠する。本

基準に掲げていない品質項目についても同様とする。

3.評価頻度は次による。

1)一次発酵工程については、発酵温度(℃×期間)を3回/全日実施

2)必須確認判定項目については、下記による。但し、上記1)を除く。

a.製品堆肥生産量 1,000t/年につき: 6ケ月に1回

b.製品堆肥生産量 6,000t/年以上 : 1ケ月に1回