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1 響 和 会 会 報 2 0 1 5年秋 第16号 平成27年12月17日発行 編集・発行 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校 響和会 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8 TEL.050-5525-2406 FAX.03-5685-7803 URL:http://geiko.geidai.ac.jp/ 「響和会」とは…藝高現役生徒の保護者約120名で構成される。昭和29年、藝高創立時に後援会として発足。現在は「藝高後援会」と役割を分担し、学校の 教育活動の運営と充実に協力する。全国に存在する会員の親睦を図る一方、図書の寄贈、公開レッスン開催協力等の活動を行う。 第27回 藝高定期演奏会 ~輝きの瞬間 情熱の響きに満ち溢れて~ 上野公園が美しく色づき始めた10月24日 (土)、第27回定期演奏会が東京藝術大学奏楽堂 で行われました。10月末とは思えない暖かい陽 気に恵まれ、開場前からたくさんのお客様がお 越しくださいました。 定期演奏会は藝高のメインイベントであり、生 徒たちは3年生を中心として学年、専攻楽器の 枠をこえて全員が一丸となり練習に取り組みま す。今年は201ホール改修工事のため例年より練 習が少ない中、合唱ではパートリーダー、オーケ ストラではインスペクターとセクショントップが 工夫して自主練習を重ねてきました。 指揮は英国ギルドホール音楽院で教鞭をとられているドミニク・ウィラー先生、合唱は清水敬一先生がご指導下さいました。 第1部の邦楽合奏では、箏、尺八による「岡康砧」「都踊」と長唄三味線による「越後獅子」が披露され、趣のある日本の調べが奏楽堂を包みました。 第2部は合唱曲「マニフィカト」で始まりました。管楽器と通奏低音の崇高なメロディーに合唱とオーケストラが見事に調和して、天から音が降り 注いでくるようでした。最後にブラームスの交響曲第2番が演奏されました。プロの方でも難曲とされている曲で、藝高で取り組むのは初めての試 みでした。ブラームスの重厚な音楽の中に、高校生らしく瑞々しい爽やかさを感じることのできる熱演となりました。 満員の会場からは惜しみない拍手が送られ、生徒たちの表情は喜びと達成感に満ち溢れていました。 岡安小三郎 原曲 中能島欣一 編曲:「岡康砧」(山田流箏曲・尺八) 大和田建樹 作詞 宮城道雄 作曲:「都踊」(生田流箏曲・尺八) 九世 杵屋六左衛門 作曲:「越後獅子」(長唄三味線) J.S. バッハ:マニフィカト 二長調 BWV 243 J.ブラームス:交響曲 第2番 二長調 作品73 響和会会長 山本ますみ

第27回 藝高定期演奏会geiko.geidai.ac.jp/kyowakai/files/2015/12/芸高_2015...柳川瑞季:Circle of Circle(12手連弾) ピアソラ:Libertango(Sax,Perc,Pf,Cb)

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響 和 会 会 報

2015年秋 第16号 平成27年12月17日発行

編集・発行 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校 響和会〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8TEL.050-5525-2406 FAX.03-5685-7803URL:http://geiko.geidai.ac.jp/

「響和会」とは…藝高現役生徒の保護者約120名で構成される。昭和29年、藝高創立時に後援会として発足。現在は「藝高後援会」と役割を分担し、学校の教育活動の運営と充実に協力する。全国に存在する会員の親睦を図る一方、図書の寄贈、公開レッスン開催協力等の活動を行う。

第27回 藝高定期演奏会~輝きの瞬間 情熱の響きに満ち溢れて~

 上野公園が美しく色づき始めた10月24日(土)、第27回定期演奏会が東京藝術大学奏楽堂で行われました。10月末とは思えない暖かい陽気に恵まれ、開場前からたくさんのお客様がお越しくださいました。 定期演奏会は藝高のメインイベントであり、生徒たちは3年生を中心として学年、専攻楽器の枠をこえて全員が一丸となり練習に取り組みます。今年は201ホール改修工事のため例年より練習が少ない中、合唱ではパートリーダー、オーケストラではインスペクターとセクショントップが工夫して自主練習を重ねてきました。 指揮は英国ギルドホール音楽院で教鞭をとられているドミニク・ウィラー先生、合唱は清水敬一先生がご指導下さいました。 第1部の邦楽合奏では、箏、尺八による「岡康砧」「都踊」と長唄三味線による「越後獅子」が披露され、趣のある日本の調べが奏楽堂を包みました。第2部は合唱曲「マニフィカト」で始まりました。管楽器と通奏低音の崇高なメロディーに合唱とオーケストラが見事に調和して、天から音が降り注いでくるようでした。最後にブラームスの交響曲第2番が演奏されました。プロの方でも難曲とされている曲で、藝高で取り組むのは初めての試みでした。ブラームスの重厚な音楽の中に、高校生らしく瑞々しい爽やかさを感じることのできる熱演となりました。 満員の会場からは惜しみない拍手が送られ、生徒たちの表情は喜びと達成感に満ち溢れていました。

岡安小三郎 原曲 中能島欣一 編曲:「岡康砧」(山田流箏曲・尺八) 大和田建樹 作詞 宮城道雄 作曲:「都踊」(生田流箏曲・尺八) 九世 杵屋六左衛門 作曲:「越後獅子」(長唄三味線)

J.S. バッハ:マニフィカト 二長調 BWV 243

J.ブラームス:交響曲 第2番 二長調 作品73

響和会会長 山本ますみ

Page 2: 第27回 藝高定期演奏会geiko.geidai.ac.jp/kyowakai/files/2015/12/芸高_2015...柳川瑞季:Circle of Circle(12手連弾) ピアソラ:Libertango(Sax,Perc,Pf,Cb)

中正学生の生徒とお別れ

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 藝高開校以来初の海外演奏修学旅行が行われました。台湾全土に台風21号が猛威を振るう中、一行は羽田を出発しました。しかし、台北松山空港に着陸することができず、羽田空港に引き返すというハプニングに見舞わされました。フライト中は機体が激しく揺れたため具合が悪くなった生徒もいたようです。

演奏修学旅行  7月13日(月)に国立劇場にて歌舞伎鑑賞教室が行われました。演目上演の前には、初めて歌舞伎を鑑賞する生徒のために、舞台の装置や音楽に関する説明がありました。その後、滅びゆく者の悲ひ

哀あい

や怨おん

念ねん

、恩おん

愛あい

を描き、全編にわたってロマンが溢れる「義経千本桜」の一幕を鑑賞しました。見どころである最後の、知盛が碇

いかり

綱づな

を身体に巻き付けて入水する場面は迫力があり、どの生徒も物語の世界に引き込まれた様子でした。「義経千本桜」は『平家物語』を題材とした演目ですが、平家の武将が実はまだ生きていたという設定であり、現代に生きる私たちにも十分に楽しめるストーリーでした。今回、日本の古典の世界を体感したことが、更なる自国の芸能、文化に理解を深め、藝高生の格

かく

致ち

日にっ

新しん

につながればと思っております。

 龍山寺を見学し、お土産物屋さんを楽しみ、初日のハプニングがあったものの大変充実した旅行を終え無事に帰国の途に就きました。

5日目

 修学旅行のメインでもある、台北市立中正高級中学との交流演奏会が行われました。台風の影響でホールコンディションの悪い中、澤和樹先生の指揮のもと、生徒たちはとても素晴らしい演奏を披露しました。最後は平川加恵先生作曲「台湾と日本の歌による大合奏曲」を両校合同で演奏し、とても友好的なムードで演奏会は大成功に終わりました。 この修学旅行では、生徒全員が演奏を行い、更には海外の学生と合同で演奏するというとても貴重な経験ができて、得るものも大きかったことでしょう。

3日目

1日目

メンデルスゾーン:三重奏OP.114(2Cl,Pf) スメタナ:Rondo(8手連弾)

宮城道雄:さらし風手事(生田流箏曲)中尾都山:朝風(都山流尺八)藤舎呂華泉:流れ~滝流し(長唄三味線)中能島欣一:花三題(山田流箏曲) イベール:間奏曲(Fl,Hp)

柳川瑞季:Circle of Circle(12手連弾) ピアソラ:Libertango(Sax,Perc,Pf,Cb) 芥川也寸志:Triptyque(弦合奏)

in 台 湾二年生9月28日~10月2日

好!ニーハオ

歌舞伎鑑賞教室

THE ROYAL OPERA英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演

『ドン・ジョバンニ』9月20日(日)1:30p.m. NHKホール

三年に一度のオペラ鑑賞伝統的なオペラの代表作を、最新の舞台演出である

プロジェクション・マッピングで堪能しました。

ソリスト達の圧倒的な歌唱力に感動!

 今年の入学式で藝高生は「ドン・ジョバンニ」序曲を演奏したので、このオペラを、一層興味深く鑑賞しました。 藝高には声楽専攻の生徒が在籍していませんが、声楽家の声量、表現力、豊かな音楽性に、生徒たちは多くの魅力を感じたことでしょう。時間を忘れてしまうような夢の一夜となりました。

(写真提供:公益財団法人日本舞台芸術振興会)

ヴィオラ&チェロ公開レッスン

藝校初の海外修学旅行 4泊5日の旅

交流会

李先生・澤先生

10月29日木 於:201ホール  ヴィオラ ブルーノ・パスキエ先生

(東京藝術大学音楽学部卓越教授)

12月10日木 於:201ホール チェロ エマ・フェランド先生(英国王立ノーザン音楽大学教授)

平成28年度東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校

公開実技試験 ▪第1日 ピアノ 6月19日日 於:奏楽堂

▪第2日 管打楽器・邦楽 6月22日水 於:藝高201ホール

▪第3日 弦楽器 6月24日金 於:奏楽堂

 学校説明会において、平成25年度より始まった「高大連携授業」の発表として、東京藝術大学音楽学部管打楽器専攻1年生と本校管打楽器専攻生との合同でオープニングコンサートを行いました。華やかな雰囲気で来校された631名をお迎えいたしました。

ナイジェル・ヘス作曲「イーストコーストの風景」 1.シェルター島 2.キャッツキル島 3.ニューヨーク

 前日の疲れを物ともせず、生徒達はみんな元気に再び台湾へ飛び立ちました。 到着後はバスで市内観光、夕食では本場の台湾料理に舌鼓。大勢の人々で賑わう士林夜市へ出かけ、楽しい夜を過ごしました。

2日目

台湾料理

4日目

 台北から台南へ新幹線で移動し、演奏修学旅行最後の演奏会場となる【奇美博物館】に到着しました。公開レッスンでお世話になりました台南藝術大学の李先生のご尽力により、博物館での演奏会を実現する運びとなりました。またハープや多くの打楽器は全て台南藝術大学から提供されました。前日同様、生徒全員が演奏し大合奏曲で演奏会が幕を閉じると、来場者からは惜しみない拍手が送られ、博物館関係者の方々から沢山のお褒めの言葉をいただき大成功をおさめました。

 博物館の心臓部である収納庫まで見学させていただき、なんと、ストラディヴァリウス、ガルネリ等の銘器コレクションを弦楽器専攻生徒全員が試奏できて、その美しい音色に聴き入っていました。博物館では藝高生の演奏が素晴ら

しかったため楽器常設展示に演奏動画が採用される予定です。李先生をはじめ、博物館関係者の方々、演奏にご尽力いただきました先生方には深くお礼を申し上げます。

夜 市

出 発羽田空港

奇美博物館

中正記念堂

龍山寺

2年生の弦楽合奏 指揮:澤 和樹先生

芥川也寸志:弦楽のための三楽章より第1楽章

2年生ピアノ専攻6人と夫人と岡本誠司さん(学部3年生)

柳川瑞希:Circle of Circle 6人12手ピアノ連弾

アンヌ・グラヴォワン フランス首相夫人の来学  ~アンヌ・グラヴォワン夫人~パリ国立高等音楽院ヴァイオリン科および室内楽科を満場一致の一等賞でご卒業の音楽家

 藝大をご視察になったこの日、大学の授業風景や、学部生と藝高生の演奏を鑑賞され、大変お喜びになられました。藝大ホームページGEIDAI×GLOBALにも大きくとりあげられました。

10月5日月 於:藝大第6ホール学校説明会・高大連携管打合奏(吹奏楽)オープニングコンサート 7月12日日 於:奏楽堂

平川先生プレゼントプログラム

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第27回藝高定期演奏会リハーサルより

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下野園ひな子(Vn)コンサートミストレス

尾田奈々帆(Pf)合唱ソプラノパートリーダー

石井 里佳(Pf)合唱メゾソプラノパートリーダー

大塚菜々子(Pf)合唱アルトパートリーダー

佐藤 晴真(Vc)オーケストラサブインスペクター

ご寄付のお願い 今年度は以下の耐震工事と修繕工事をおこないました。   201ホールの天井補強工事(7月末~9月末)   校舎内すべての棚やロッカー、テレビ等の固定工事   レッスン室・更衣室の壁や天井のひび割れの修繕工事   防災用品の補充と、備蓄倉庫内の整備棚の設置工事 築20年を経た藝高は、今後もいたる所で修繕の必要な箇所があちらこちらに出てまいります。豊かで安全な教育環境を維持できますように、引き続き皆様からのご寄付を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

編集後記 藝高 Acanthus 秋号も、先生方をはじめ、たくさんの方々のご協力を得まして、無事に発行することが

できました。この会報が作成され始めて8年。作成方法も年々変化してきたのでしょうか。スマホが普及した今日、今回は原稿の提出や管理などは、「LINE」の機能をフルに活用しました。遠く離れた9人の委員を「LINE」が結び、日々、作業が前に進んでいきました。8年後には、どんな方法を使っていることでしょう? 「LINE?そんな時代もあったねぇ」となっているのでしょうか。

会 長:山本ますみ  副会長:川守田祐佳・竹本敦子  会 計:伴野美香  広報委員:泉野美和子・大道幸枝・下野園博子・荒井景子・佐藤真由美     田口貴子・岡安亜由美・菊川美由紀・島田麻由子

takanosファイト!

秋の祭典(体育の部)

藝高史上初!3連覇の60期生

秋の祭典(体育の部)

私はベル♪

秋の祭典(文化の部)

塩見先生、あのCD入りました?

図書室

千谷先生、あのね~

保健室

お昼休みにハイ、チーズ♪

教 室

齋藤 碧(Vn)コンサートミストレス

山田 哲朗(Fg)オーケストラインスペクター

ドミニク・ウィラー ギルドホール音楽院 教授 英国国立オペラ(ENO)をはじめとし、各国のオペラ団体で指揮を務める。2012年東京藝術大学、奏楽堂シリーズ特別演奏会にてブリテン作曲《カーリュー・リバー》を上演・高い評価を受ける。

❖音楽的なアドバイスを 正しく弾く、鍛錬する、厳格に、楽譜に忠実に演奏することはもちろん大切ですが、それと同じぐらい『情熱』をもって演奏しなさい、自分自身が演奏を楽しんでいないと、聴衆は絶対にその音楽を楽しめないのです。そして一番大切なことは、『愛』を忘れないこと。私には三人の音楽をやっている子供がいていつも彼らにそれを話しています。本人だけではなく、ご両親にもそのことを忘れないでほしいと思います。

❖藝高生に向けてのメッセージ 一番大切なことは、自ら楽しみながら物語を語ること。音楽とはただ心地いいだけではないので、その中に秘められているものを伝えてほしい。もし、演奏中に何か細かい事故があってもそれは全く重要ではなくて、自分の感情を聴衆とシェアすることが大切だと思います。演奏家も聴衆もみんな人間なのだから変な完璧さを求めず、演奏家はとにかくベストを尽くすこと。そう考えることによってリラックスして楽しめるようになります。

ドミニク・ウィラー先生 インタビュー

School Life※過去の定期演奏会の模様はホームページ演奏会案内よりご覧になれます。

(通訳 町田美弥子先生)

藤井 鴻気(Pf)合唱サブインスペクター

千葉遥一郎(Pf)合唱バスパートリーダー

青島 周平(Pf)合唱テノールパートリーダー

吉田サハラ(Pf)合唱インスペクター