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第4回 市大センター病院・薬局間地域連携ワーキング 「血液関連の検査値」 横浜市立大学附属市民総合医療センター薬剤部 外来化学療法室担当 薬薬連携担当 椙山 聡一郎 平成27年11月27日 ヨッチー

第4回 市大センター病院・薬局間地域連携ワーキン …urayaku/sp/sp/area...PTは使用る試薬によって測定値の 差が大きいため、試薬とに係数(

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YOKOHAMA CITY UNIVERSITY MEDICAL CENTER

第4回市大センター病院・薬局間地域連携ワーキング

「血液関連の検査値」

横浜市立大学附属市民総合医療センター薬剤部

外来化学療法室担当

薬薬連携担当

椙山 聡一郎

平成27年11月27日

ヨッチー

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当院で掲載する予定の検査値

WBC

Neu

Hb

Plt

CK

AST

ALT

T-Bil

Cr

K

PT-INR

CRP

HbA1c

Alb

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各検査項目の名称と基準値

略号 検査項目名 基準値 単位

WBC 白血球数 3300-9400 /μL

Neu 好中球 37.5-66.0 %

Hb ヘモグロビン男性 13.8-17.2

女性 11.3-14.5g/dL

Plt 血小板数 18-39 ×104/μL

PT-INRプロトロンビン

時間0.90-1.10

CRP C-反応性蛋白 0.2以下 mg/dL

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パニック値

WBC <1000/μL

Hb <5.0g/dL

Plt <3.0×104/μL

PT-INR ≧4.00

パニック値≒異常値 院内では医師へ連絡

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検査値低下により起こりうる副作用

WBC減少・・・無顆粒球症

Neu減少・・・発熱性好中球減少症

Hb減少・・・貧血

Plt減少・・・血小板減少症

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白血球、好中球とは

病気がみえる(血液)より抜粋

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無顆粒球症とは

血液中の白血球のうち、体内に入った細菌を殺す重要な働きをする好中球が著しく減少し、免疫力が低下すること

顆粒球、特に好中球が著しく減少し、通常好中球が500/μL以下のことをいう

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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早期発見と対応のポイント

早期に認められる症状発熱、悪寒、咽頭痛、全身衰弱感

患者のリスク因子高齢、女性、腎機能障害、自己免疫疾患の合併など

発現時期原因となる医薬品の服用開始後2~3か月以内に発症することが多い

対応医薬品を中止して適切な治療が行われれは、通常

1〜3 週間で、減少していた血球は回復してくる重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変

厚生労働省

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無顆粒球症を引き起こす医薬品

チアマゾール、プロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬

3ヶ月以内に発症(0.2〜0.5%)

サラゾスルファピリジン

6ヶ月以内に多く発症(0.06〜0.6%)

チクロピジン

3〜4週以内に多く発症(2.4%)

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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検査値低下により起こりうる副作用

WBC減少・・・無顆粒球症

Neu減少・・・発熱性好中球減少症

Hb減少・・・貧血

Plt減少・・・血小板減少症

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発熱性好中球減少症(FN)とは

38℃以上の発熱

好中球数が500/μL未満、または1,000/μL未満で500/μL未満に減少することが予測される場合

感染源が不明なことが多い

抗菌薬の予防投与をする場合がある

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早期発見と対応のポイント

早期に認められる症状

発熱、悪寒

患者のリスク因子

抗がん剤治療患者

発現時期

抗がん剤治療後7〜14日間が最も起こりやすい

対応

抗がん剤治療によっては抗菌薬を予防投与重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変

厚生労働省

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検査値低下により起こりうる副作用

WBC減少・・・無顆粒球症

Neu減少・・・発熱性好中球減少症

Hb減少・・・貧血

Plt減少・・・血小板減少症

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Hbとは

病気がみえる(血液)より抜粋

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貧血とは

血液中のHb濃度が基準値以下に低下し、体内の酸素が少なくなる状態のこと

赤血球があっても、中身のHbが少ないと酸素を十分に運べない

そのため、貧血の定義は赤血球数ではなく、Hbの濃度で決まっている

WHOによる基準では男性は13g/dL、女性では12g/dL未満を基準としている

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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早期発見と対応のポイント

早期に認められる症状

顔色が悪い、倦怠感、動悸、頭痛、めまい

患者のリスク因子

高齢者

対応

原因薬剤の中止により、多くの場合、1〜2週間で改善

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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貧血の主な症状

めまい耳鳴り 赤血球量の減少

顔色不良眼瞼結膜蒼白

酸素欠乏による代償息切れ動悸頻脈

易疲労感倦怠感

病気がみえる(血液)より抜粋

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貧血を引き起こす医薬品

いずれの医薬品も引き起こす可能性がある

一般的に軽度から中等度

投与数日から1〜2週間で徐々に発症

オメプラゾール、ペニシリン、テトラサイクリン、セファロスポリン、レボフロキサシン、リファンピシン、α-メチルドパ

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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検査値低下により起こりうる副作用

WBC減少・・・無顆粒球症

Neu減少・・・発熱性好中球減少症

Hb減少・・・貧血

Plt減少・・・血小板減少症

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Pltとは

病気がみえる(血液)より抜粋

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血小板減少症とは

血液の凝固、止血に重要な役割を果たしている血小板が減少すること

通常、10×104/μL以下を血小板減少症として

いる

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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早期発見と対応のポイント

早期に認められる症状手足に点状出血、あざができやすい、出血しやすい(歯くきの出血・鼻血・生理が止まりにくい)

患者のリスク因子不明。多剤併用の高齢者

発症時期7日〜2週間後に症状がでやすい

同薬品でも、早期に出現する場合や、数ヶ月または数年と長期的に出現する場合もある

対応薬剤を中止し、適切な処置を行うことで、多くは1週間程度で改善 重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変

厚生労働省

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血小板減少を引き起こす医薬品

血小板減少が比較的重症で、出血傾向の頻度が高い

金製剤、ST合剤、キニン、キニジン

血小板減少、出血傾向ともに軽度

ペニシラミン、チアジド系利尿薬、バルプロ酸Na、カルバマゼピン

長期間投与後に発症

金製剤、ペニシラミン、バルプロ酸Na(約120〜180日)

重篤副作用疾患別対応マニュアルより一部改変厚生労働省

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骨髄抑制とは

抗がん剤投与により白血球、赤血球、血小板などの骨髄機能が強く障害をうけること

白血球減少(好中球減少)感染のリスクが高くなる投与から7~14日程度で最も低くなる薬が多い

Hb減少貧血の症状が出現する頻度が高くなる数週間〜数ヶ月にかけて緩やかに減少する

血小板減少出血のリスクが高くなる投与から14~21日程度で最も低くなる薬が多い

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CHOP療法施行後の検査値の推移

10/29 11/2 11/5 11/9 11/11 11/18

WBC 6560 4950 2710 520 3090 7310

Neu 88.5 91.0 68.0 11.5 56.5 75.5

Hb 11.7 10.9 10.9 10.5 10.2 11.9

Plt 21.8 13.6 12.3 14.0 19.7 33.2

CHOP① CHOP②

0

5

10

15

20

25

30

0

2000

4000

6000

10/29 11/3 11/8 11/13 11/18

WBC

Neu

Hb

Plt

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PT-INRとは

プロトロンビン時間(PT)

Prothrombin time International normalized ratio

国際標準比(INR)組織トロンボプラスチン(生体由来の試薬)を添加した際に血液が凝固するまでの時間。(正常値:11-13秒)

PTは使用する試薬によって測定値の差が大きいため、試薬ごとに係数(ISI)

を決め、PTの比をとって標準化したもの。(正常値:0.85-1.15)

PT-INRは、その患者の血液が正常の人と比べて何倍凝固しにくくなっているかを示す

PT-INR =患者血漿のPT(秒)

正常血漿のPT(秒)

ISI

ISI :国際感受性指標 International Sensitivity Index

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検査目的

出血傾向のスクリーニング

(血液凝固因子の欠乏症など)

播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断

肝障害のモニタリング

(肝硬変など)

ワルファリンのモニタリング

ワルファリンを使用する際は、PT-INRが適度に上昇しているか確認

上昇していたら異常

上昇させることが治療

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必要量に個人差がある

原因:年齢、体重、遺伝子多型、合併症など

長期服用患者においても予期せぬ変動がある

原因:食事の変化、併用薬の影響、コンプライアンス不良や自己調節、断続的なアルコール摂取、血液疾患など

導入時期だけでなく、安定期であっても月1回程度のモニタリングを考慮

ワルファリン服用中にPT-INRを確認しなくてはならない理由

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薬物相互作用を起こす薬剤の例

CYP2C9の阻害薬 CYP2C9の誘導薬

フルオロウラシル系抗悪性腫瘍薬(※)S-1(ティーエスワン)、フルオロウラシル(5-FU)、ドキシフルリジン(フルツロ

ン)、カペシタビン(ゼローダ)、テガフール・ウラシル(ユーエフティ)等

アゾール系抗真菌薬

ミコナゾール(フロリード)、フルコナゾール(ジフルカン)等

サルファ剤アミオダロン(アンカロン)ブコローム(パラミジン)ベンズブロマロン(ユリノーム)

リファンピシン(リファジン)フェノバルビタール(フェノバール)フェニトイン(アレビアチン)カルバマゼピン(テグレトール)アプレピタント(イメンド)

※フルオロウラシル系抗悪性腫瘍薬は、CYP2C9を直接阻害しないが、その発現量を低下させるという報告がある 大野ら 月刊薬事 2012.12 (Vol.54 No.13)124-129 より引用

※ワルファリンは主にCYP2C9により代謝される

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CRPとは

C-reactive protein(C-反応性蛋白)

炎症性疾患や組織の損傷がある場合、著しく上昇する

健常者では陰性であり、炎症の有無を判断するのに有用

高値となる疾患・病態

手術後、感染症、膠原病、リウマチ、肝硬変、心筋梗塞、抗がん剤 etc

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まとめ

検査値に異常値はないか?

異常値の原因となる医薬品はあるか?