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第7回 一次元反強磁性体(ハルデン予想に関連して)
Haldane予想
◆ 整数スピン
1. 基底状態と第一励起状態間にエネルギーギャップが存在する。
2. スピン相関関数が指数関数的に落ちる。
◆ 半整数スピン
1. 基底状態と励起状態間に波数0とπでエネルギーギャップが存在しない。
2. スピン相関関数がべき級数的に落ちる。
F. D. M. Haldane 1983
S=1の一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の研究
様々な数値計算やモデル化合物を用いた実験によって上記予想によるエネルギーギャップの存在や相関関数の振る舞いが検証された。
実験による検証)(
)(~1
1
SS
g eSSE
2016年ノーベル物理学賞受賞
冪乗則とスケール不変性
相関関数 G(r)=Ar -h
b倍のスケール変換をすると
G(r)=G(r/b)/bh
b倍のスケール変換をしても相関関数をbhを1単位として測れば、その値は変わらない。
スケール不変性 => 特徴的な長さがない
臨界点
したがって半整数の一次元ハイゼンベルグ反強磁性体は臨界状態になっておりスケールを変えても同じ構造を持っていることになる。
いわゆるフラクタル構造
フラクタル(図形)
図形の部分と全体が自己相似になっているもの
コッホ曲線
シェルビンスキーのギャスケット
メンガーのスポンジ
コッホ曲線の描き方
相似次元d
自分自身がサイズ1/nのミニチュアm個から成っているとき
d=lognm
正方形 ½サイズ4個 2次元立方体 ½サイズ8個 3次元
コッホ曲線1/3サイズ 4個 n=約1.26次元
S=1一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の計算I
EG=0.41J シングルイオン異方性や鎖間相互作用を考慮した相図
),(
')(ji
jii
zii
ii JSDH SSSS
21
S=1一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の計算II
シングルイオン異方性とハルデンギャップ
様々な数値計算とハルデンギャップの大きさと相関長
量子多体系の解析における数値的手法
NENPの結晶構造
Meyer et al. (1982).
NENPの磁気測定結果
帯磁率 磁化
帯磁率が低温になるに従って零に向うことは基底状態が非磁性状態であることとエネルギーギャップを
有する事を意味する。
EG
K. Katsumata et al. (1989).
ハルデン磁性体の磁化過程
(a) ハイゼンベルグハミルトニアンのみ
(b) 結晶場の付け加わった場合
(c) スピンの量子化軸に磁場を印加
(d) (c)に垂直に磁場を印加
S=1のD>0を持った磁性体の磁化過程との違い
ハルデン磁性体の全磁化過程
D
4J
D=0.41J
Takeuchi et al. (1992).
NENPのESR
低周波ESR
三重項励起間の遷移
高周波ESR
Date & Kindo (1990). Lu et al. (1991).
不純物効果(帯磁率)
pure NENP Cu doped NENP
■a軸、●b軸、▲c軸 ■,□0.36%Cu、▲,△0.62%Cu
Renard et al. (1988).
S=1 一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の基底状態
Valence Bond Solid (VBS) 状態
もしS=1一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の基底状態がVBS状態に近ければJ’ J’
不純物スピン(S=1/2)と両隣の1/2のスピン自由度が相互作用した状態
電子スピン共鳴(ESR)法による観測
Hagiwara et al. (1990).
∑
NENP:CuのESR シグナル
Hagiwara et al. (1990).
スピンハミルトニアン
一つ二つとでとと
がカップルしたモデルととすると
quartetdoubletssinglettripletS
g
g
g
g
g
g
g
g
J
J
J
ggJ
z
y
x
z
y
x
z
y
x
2101
00
00
00
00
00
00
00
00
00
21
0
0
0
0
02121
/)()(
~,~,~
~~)(~
)(
sSssS
J
HsHsssssH
s1 s2s
J Jg gg0
エネルギーレベルと磁場(実験と計算の比較)
Hagiwara et al. (1990).
ESRシグナルの角度依存性
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0-90
-60
-30
0
30
60
90
Magnetic field (kOe)
An
gle
(d
eg
ree
s)
ab-plane
b-axis
a-axis
a-axis
T=4.2 K
NENP: Cu 0.7at%
Cu不純物を入れたNENPの磁化
実線:ESRで求められたパラメーターを用いて計算した磁化
Hagiwara et al. (1992).
端スピン状態(数値計算)
Quantum Monte Carlo method
VBS 状態
スピン相関長
Miyashita & Yamamoto, (1993).
端スピン状態のエネルギー構造
Yoshida et al. (2005).
VBS状態の隠れた磁気秩序
S=1 VBS state
1 0 -1 1 0 0 -1 0 1 0
0を除くと, 1 -1 1 -1 1 (ネール状態)が現れる
隠れた秩序ストリング秩序パラメーター
磁気量子数
)][(1
1
kk
jllj
kjstring SSiSO
explim||
Ostring0 ハルデン相Ostring=0 ラージ D相
() 基底状態の期待値
VBS Ostring=1
Haldane Ostring~0.9
Kennedy & Tasaki (1992).
S=1一次元反強磁性体の基底状態と素励起
S=1 VBS state
1 0 -1 1 0 0 -1 0 1 0
0を除くと 1 -1 1 -1 1 (ネール状態)
隠れた秩序状態 ストリングオーダーパラメーター
1 0 -1 1 0 0 -1 0 1 0
1 0 0 1 0 0 -1 0 1 0
位相
-1 1 -1 1 1 -1 1 -1 1 -1
ずれる
ハルデン磁性体の磁気励起
磁気ドメインは運動量空間の位相を変える。
interactive=>continuum
磁気モーメントを持つ酸素分子
酸素分子の場合は全電子数が16で偶数になっているが、分子軌道の縮退のために全スピンは1になっている。
O (1s)2(2s)2(2p)4
酸素原子は内側から1s軌道に二つ、2s軌道に二つ、そして、2p軌道に四つの電子を入れている。
スピン量子数(1)を持つ唯一の等核二原子分子
磁性を持つ気体ー酸素ー
シャボン玉内に酸素ガスを入れてネオジム磁石を近づける。
カーボンナノチューブ
2a
2an
1am
1a
hC
カーボンナノチューブ
炭素から成る六員環のネットワーク(グラフェンシート)を円筒形に丸めたもの。
nmanamCh ,21
:カイラル指数m n
カイラルベクトル
22 nmnmaL
R
・チューブの直径:
・チューブの周の長さ:22 nmnmaCL h
、
カイラル指数 カーボンナノチューブの構造を決定。
Y. Maniwa et al. (2007).
A
B
Chの幅だけシートを切り取り、AとBが重なるように巻く。
カーボンナノチューブと酸素分子の配列
K. Hanami et al. (2010).
・直線1次元(1DL:(8,0)、 (10,0)) (R≦0.783 nm) 反強磁性的相互作用
・十字1次元(1DX:(6,6))(R =0.814 nm) 強磁性的相互作用
・螺旋(spiral:(10,3)) (R =0.923 nm)
・平行ジグザグ(H:(7,7))(R =0.949 nm) 反強磁性的相互作用
・3重螺旋(3-helix:(8,8)) (R =1.085 nm)
・5重螺旋(5-helix:(10,9)、 (10,10)) (1.289≦R≦1.356 nm)
M. C. van Hemert et al. (1983).
Perspective view Side view
直径:R
Inte
nsit
y (
arb
. u
nit
)
O2 760 Torr
vacuum
difference
(a) observed
Q (1/nm)
10 20 30In
ten
sit
y (
arb
. u
nit
)
Q (1/nm)
10 20 30
difference
O2empty
(b) calculated
X線回折とシミュレーション結果
カイラル指数(6,5)のSWCNT中に閉じ込められた酸素分子を仮定
(6,5) (0.7468 nm) 40%
(8,3) (0.7711 nm) 20%
(7.5) (0.8174 nm) 27%
(8,4) (0.8285 nm) 13% 29
単層カーボンナノチューブ中の酸素分子によるハルデン状態
単層のカーボンナノチューブに酸素分子(スピン量子数1)を導入した試料(a)の帯磁率(b)と強磁場磁化(c)測定を行い、酸素分子の鎖によるハルデン状態を観測した。
(a) (b)
(c)
赤丸が酸素分子で単層カーボンチューブ中に配列している様子を示した図
赤丸が実験結果で実線と破線はそれぞれスピン量子数1の一次元反強磁性体と反強磁性ダイマーで計算した帯磁率、挿入図は最大値で規格化して示したもの。
赤い実線が実験結果で破線がスピン量子数1の一次元反強磁性体で計算した磁化曲線。
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0 10 20 30 40 50 60 70
Experiment
Calculation
Magnetic field (T)
T=1.4 KMag
ne
tiza
tion
(
B/O
2)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
Experiment
Calculation
0 50 100 150 200
Suscep
tibili
ty (
em
u/m
ol)
Temperature (K)
x10-3 帯磁率
磁化
M. Hagiwara et al. (2014).
酸素分子研究の最近のトピックス
K. Shimizu et al., Nature 393, 767 (1998). T. Nomura et al., Phys. Rev. Lett. 112, 247201 (2014).
-O2
31
S=2のハルデン磁性体
S=2
S=1 D
h
2
i
z
i
z
1i
z
i
y
1i
y
i
x
1ii
x
i)(SD)SSSSSS
h(Η
0.0886(18)0.4104789(13)厳密対角化Nakano et al. (2009).
0.08917(4)0.41048(6)量子モンテカルロTodo et al. (2001).
⊿E / J (S = 2)⊿E / J (S = 1)計算方法
S=2のハルデン磁性体の候補物質
S = 2 ハルデン物質MnCl3(bpy)
bpy=C8H10N2
結晶構造Mn3+
(S =2)
Perlepes et al. (1991)
単斜晶系space group;cca = 8.170(4)Å
b = 16.177(12)Å
c = 9.660(5)Å
β = 109.55(1)Å
唯一低温まで長距離秩序を示さないと報告された候補物質
CrCl2, FePb4Sb6S14CsCr1-xMgxCl3
数少ない候補物質がすべて低温で長距離秩序を示していた。
Mn
ClC
N
c
𝑏
7.96 Å
4.83Å
MnCl3(bpy)の帯磁率と磁化
・臨界磁場(Hc∥=1.2±0.2 T, Hc⊥=1.8±0.2 T)・D/kB = 0.3 ± 0.1 K D / J = 0.010 ± 0.003
・g = 2.04 ± 0.04 J /kB= 34.8 ± 1.6 K
G. E. Granroth et al. (1996)
90 μm× 0.4 mm × 0.9 mm微小単結晶 マイクロカンチレバーによるトルク測定
dχ/d
T
Anomaly @11.5 K
Magnetic long-range
order?
H//c
H//a**
単結晶試料の帯磁率
Shinozaki et al. (2016).
TN=11.5 K
MnCl3(bpy) も理想的なハルデン物質ではなかった.
単結晶試料の比熱
Shinozaki et al. (2016).
強磁場磁化過程
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0 10 20 30 40 50
Mag
ne
tiza
tion
(
B)
Magnetic field B(T)
T = 1.7 K
B | | b
B | | a*
B | | c, T = 1.4 K
c軸の22 T辺りの磁化の跳びはスピンフロップ転移
Fishman et al. (2016).
a*-axis b-axis c-axis
▼ sample 、▽ESR standard DPPH
強磁場ESRスペクトル
Shinozaki et al. (2016).
共鳴磁場の周波数プロット
DM相互作用(D)が重要
エラーバー Fishman et al. (2016).
S=2 ハルデン 相とエッジ状態
エッジ状態
ハルデン状態 中間 D状態 シングレットダイマー状態 ハルデン状態
偶整数と奇整数スピンではハルデン相はトポロジカルに別の相
ハルデン状態
中間 D状態
ラージ D状態 Tonegawa et al. (2011).
S=2 S=1