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420 第54巻 第10 号 (2000 年) 植物防疫基礎議座 農業害虫および天敵昆虫等の薬剤感受性検定マニュアル(39) 天敵生 :昆 昆虫に寄生し病気を引き起こす糸状菌 (カ ビ) は昆虫 寄生菌や見虫病原糸状菌 と 呼ばれ, 数多 く の種類が知 ら れている。 現在, 我が国で農薬登録を取得した昆虫寄生 菌製剤は, クワ, カンキツ類およびイチジクなどのカミ キ リ ム シ類を対象 と し た Beauveria brongniaii の不織 布製剤 「 バイオリサ カ ミ キ リ j があ る が, 今後, 施設 栽培を中心としたコナジラミ類やアブラムシ類など の昆 虫寄生菌製剤 と し て Veicillium lecanii や Beauvea bassiana の散布製剤が登録 さ れて く る も の と 考 え ら れ る。 昆虫寄生菌は同一種に分類されていて も, 菌株に よ って害虫類に対する病原力が異なる場合が多 く (HALL, 1982 ; KANAGARATNAM et a1., 1982 : 増田 ・ 菊池, 1992 : 噌田, 1992 : 津田 ら, 1996, 1997 : 増田 1998) , 製剤に 含まれる昆虫寄生菌や採集した寄生菌の病原性を調査し てお く こ とはきわめて重要である。 そ こ で, 今回は野外 で比較的普通 に 見 ら れ, また, すでに製剤の委託試験が 実施されている V lecanii と B. bassia仰 の害虫類に対 する病原性の検定法について述べる。 I 接種液 準備 1 昆虫寄生菌製剤 製剤は含まれる昆虫寄 生菌の胞子濃度がわかっている ので, それに基づいて製剤を滅菌水で希釈する。 胞子濃 度 は 1 ml あ た り 1 X 108, 10', 106, 10 5 , 10' 個 と い う よ う に, 10 倍単位で階段希釈す る と よ い。 通常の場合 はこれを接種液として用いてよいが, 正確を期する よ う な試験の場合は製剤に含まれている菌を一度分離し, ( ブ ド ウ 糖 40 g, ぺ プ ト ン 10 g, 寒 天 15�20 g, 留水1,000mt) 上で培養してそれを用いる。 製剤から の菌 の分離は以下のよ う に行う。 製剤 を 10 倍単位で数 段階に希釈し, それぞれの希釈液を約 1 ml, 直径 9 cm のシャーレに固化させた0.2%の酵母エキスを加用した Methods for the Measurement of SusceptibiIity of Agricul. tural Insect Pests and Natural Enemies to Pesticides Entomopathogenic Fungi. By Toshio MASUDA ( キ ー ワ ー ド : 天敵微生物, 見虫寄生菌, 病原性検定, ポーベリ ア・パツシアナ, パ ー テ ィ シ リ ウ ム ・ レ カ ニ, Beauven . a bas. siana, Verticilliurn lecaniil サプロー寒天培地上に入れて均一にのばす。 250C前後で 2�5 日程 度培養する と菌糸が伸びて く る ので, 菌糸が発生しているものは除外し, 菌のコ ロニーが重な り合わないよ う なシャーレを選ぶ。 選んだシャーレを裏 側か ら 実体顕微鏡で観察 し , そのなかから菌糸がそれぞ れ離れているコロニーに油性ぺンで印をつけておく。 リーンベンチの中で, 印を つけたコロニーの部分を培地 ごと切り取り, 新しい培地に移して再び培養する。 菌が 十分に伸びたら (菌 種 に よ っ て 異 な る が, おおむね 7�20 日間), 界面活性剤 (Tween 20, 0.01�0 .02%な ど) を加用 した滅菌水で胞子を懸濁 し, 血球計算盤で濃 度を決定したあと, 試験用 に 10 倍単位で希釈す る 。 常 は 10'�108 個Im l の濃度範囲で行う。 なお, 菌を保 存する場合は, 試験管の斜面培地で培養 した後, 5'(に 保持する と 3 か月から 1 年間は生存している。 凍結させ ておけば, さ ら に長期期間保存 が可能である。 製剤か ら の分離は比較的簡単であ り , 雑菌が混 じ る こ ともほとんどない。 また, 現在試験などに用いられてい る製剤は, 複数の菌株やほかの菌種が混合されている も のはないので, 明らかに菌糸の様子 (色や形) が異なる もの以外は目的の菌と考えてよい。 2 病死虫からの昆虫寄生菌の分離 寄生菌に感染して死亡した昆虫は体表面や体節聞から 菌糸や胞子が発生 し て い る こ と が多 く , 比較的見つけや すい。 死亡虫が複数いる場合は, な る べ く 新鮮な死亡虫 (死亡直後の も の) を選ぶ。 また, 周辺の生存虫から も 目的の菌が高率でとれる場合がある。 V lecanii は ア ブ ラムシ類や コナジラミ類に発生する場合が多 く, B baiana は 半 麹 目 の 成 幼 虫 , 鱗麹目の幼虫, 鞘麹目の 成虫などで見つかる こ とが多い。 アブラムシ類, コナジ ラ ミ 類の 医 lecanii の分離は以下の よ う に行 う 。 死亡虫 を潰さ ない よ う に ピ ンセ ッ ト や細筆な どで 70�75%エ タノールの中に浸し, 1�3 分程度表面消毒す る。 サン プルが多 く あ る場合は, 体表面消毒の時間を何段階かに 変えて行う と よい。 表面消毒後は滅菌したろ紙上に引き 上げてエタノールをとばし, 乾いたらシャーレに流した 0.2%の酵母エキスを加用したサブロー寒天培地上にお いてふたをする。 その後, 250C程度の恒温器に入れて培 26

天敵生物:昆虫寄生菌Entomopathogenic Fungi. By Toshio MASUDA (キーワード:天敵微生物,見虫寄生菌,病原性検定, ポーベリ ア・パツシアナ, パーティシリウム・レカニ,

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420 植 物 防 疫 第54巻 第10 号 (2000 年)

植物防疫基礎議座

農業害虫 お よ び天敵昆 虫等の薬剤感受性検定 マ ニ ュ ア ル (39)

天 敵 生 物 : 昆 虫 寄 生 菌

昆虫 に 寄生 し病気 を 引 き 起 こ す糸状菌 ( カ ビ) は昆虫

寄生菌や見虫病原糸状菌 と 呼 ばれ, 数多 く の種類が知 ら

れて い る 。 現在, 我が国 で農薬登録 を 取得 し た 昆虫寄生

菌製剤 は, ク ワ , カ ン キ ツ 類お よ び イ チ ジ ク な ど の カ ミ

キ リ ム シ類 を 対象 と し た Beauveria brongniartii の不織

布製剤 「バイ オ リ サ ・ カ ミ キ リ j が あ る が, 今後, 施設

栽培 を 中心 と し た コ ナ ジ ラ ミ 類や ア ブ ラ ム シ類な どの 昆虫寄生菌製剤 と し て Verticillium lecanii や Beauveria

bassiana の 散布製剤が登録 さ れ て く る も の と 考 え ら れ

る 。 昆虫寄生菌 は 同一種 に分類 さ れて い て も , 菌株 に よ

っ て 害虫類 に 対 す る 病原力 が異 な る 場合が多 く (HALL,

1982 ; KANAGARATNAM et a1 . , 1982 : 増 田 ・ 菊池, 1992 :

噌田, 1992 : 津田 ら , 1996 , 1997 : 増 田, 1998) , 製剤 に

含 ま れ る 昆虫寄生菌や採集 し た 寄生菌の病原性 を 調査 して お く こ と は き わ め て 重要であ る 。 そ こ で, 今回 は野外で比較的普通 に 見 ら れ, ま た , す で に 製剤の委託試験が

実施 さ れて い る V. lecanii と B. bassia仰 の害虫類 に対

す る 病原性の検定法 に つ い て 述べ る 。

I 接種液の準備

1 昆虫寄生菌製剤

製剤 は含 ま れ る 昆虫寄生菌の胞子濃度がわ か っ て い る

の で, そ れ に 基づい て 製剤 を滅菌水で希釈す る 。 胞子濃度 は 1 m l あ た り 1 X 108, 10', 106, 105, 10' 個 と い う

よ う に , 10 倍単位で階段希釈 す る と よ い。 通常 の場合

は こ れ を 接種液 と し て 用 い て よ い が, 正確 を期す る よ う

な試験の場合 は製剤 に 含 ま れて い る 菌 を一度分離 し, 培

地 ( ブ ド ウ 糖 40 g, ぺ プ ト ン 10 g, 寒 天 15�20 g, 蒸

留水 1 , 000 m t) 上 で培養 し て そ れ を 用 い る 。 製 剤 か ら

の菌の分離は以下の よ う に 行 う 。 製剤 を 10 倍単位で数段階 に 希釈 し, そ れ ぞ れの 希釈液 を 約 1 m l, 直径 9 cm

の シ ャ ー レ に 固化 さ せ た 0 . 2 % の 酵母エ キ ス を加用 し た

Methods for the Measurement of Susceptibi I ity of Agricul. tural Insect Pests and Natural Enemies to Pesticides Entomopathogenic Fungi . By Toshio MASUDA

( キ ー ワ ー ド : 天敵微生物, 見虫寄生菌, 病原性検定, ポ ー ベ リア ・ パ ツ シ ア ナ , パ ー テ ィ シ リ ウ ム ・ レ カ ニ, Beauven.a bas. siana, Verticilliurn lecaniil

討増場験試古一A園県城宮 田 雄イ愛

サ プ ロ ー寒天培地上 に 入 れ て 均一 に の ばす。 250C前後で

2�5 日 程度培養す る と 菌 糸 が 伸 び て く る の で, 一面 に

菌糸が発生 し て い る も の は 除外 し , 菌 の コ ロ ニ ー が重 な

り 合わ な い よ う な シ ャ ー レ を 選ぶ。 選 ん だ シ ャ ー レ を 裏

側か ら 実体顕微鏡で観察 し , そ の な か か ら 菌糸 が そ れ ぞ

れ離れて い る コ ロ ニ ー に 油性ぺ ン で印 を つ け て お く 。 ク

リ ー ンベ ン チ の 中 で, 印 を つ け た コ ロ ニ ー の部分 を培地

ご と 切 り 取 り , 新 し い培地 に 移 し て再 び培養す る 。 菌が

十 分 に 伸 び た ら (菌 種 に よ っ て 異 な る が, お お む ね

7�20 日 間) , 界面活性剤 (Tween 20, 0 . 01�0 . 02% な

ど) を加用 し た 滅菌水で胞子 を 懸濁 し , 血球計算盤で濃

度 を 決定 し た あ と , 試験用 に 10 倍単位で希釈 す る 。 通

常 は 10'�108 個Im l の 濃度 範 囲 で行 う 。 な お , 菌 を 保

存す る 場合 は, 試験管 の 斜面培地 で培養 し た 後, 5'( に

保持す る と 3 か月 か ら 1 年間 は生存 し て い る 。 凍結 さ せ

て お け ば, さ ら に 長期期間保存が可能で あ る 。

製剤か ら の分離 は比較的簡単で あ り , 雑菌が混 じ る こ

と も ほ と ん ど な い 。 ま た , 現在試験な ど に 用 い ら れて い

る 製剤 は , 複数の菌株や ほ か の 菌種が混合 さ れて い る も

の は な い の で, 明 ら か に 菌糸 の様子 (色や形) が異 な る

も の以外 は 目 的の 菌 と 考 え て よ い。

2 病死虫 か ら の昆 虫寄生菌の分離

寄生菌 に 感染 し て死亡 し た 昆虫 は体表面や体節聞か ら

菌糸 や胞子が発生 し て い る こ と が多 く , 比較的見つ け やす い。 死亡虫が複数い る 場合 は, な る べ く 新鮮な死亡虫

(死亡直後の も の ) を 選ぶ。 ま た , 周 辺 の 生存 虫 か ら も

目 的の菌が高率で と れ る 場合があ る 。 V. lecanii は ア ブ

ラ ム シ 類 や コ ナ ジ ラ ミ 類 に 発 生 す る 場 合 が 多 く , B

bassiana は 半麹 目 の 成幼虫, 鱗麹 目 の 幼 虫, 鞘麹 目 の

成虫 な ど で見 つ か る こ と が多 い。 ア ブ ラ ム シ類, コ ナ ジ

ラ ミ 類の 医 lecanii の分離 は以下の よ う に 行 う 。 死亡虫

を 潰 さ な い よ う に ピ ン セ ッ ト や 細筆 な ど で 70�75 % エ

タ ノ ー ル の 中 に 浸 し, 1�3 分程度表面消毒 す る 。 サ ン

プルが多 く あ る 場合 は, 体表面消毒の時間 を 何段階か に

変 え て 行 う と よ い。 表面消毒後 は滅菌 し た ろ 紙上 に 引 き

上 げて エ タ ノ ー ル を と ば し , 乾 い た ら シ ャ ー レ に 流 し た

0 . 2%の酵母エ キ ス を加用 し た サ ブ ロ ー 寒天培地上 に お

い て ふ た を す る 。 そ の後, 250C程度 の恒温器 に 入れ て 培

一一一 26 一一一

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天敵生物 ・ 昆虫寄生菌 421

養する。 V lecani i は 白 色~淡黄 色 の菌 そ う 色で あ り ,

こ の よ う な菌がで て き た ら 試験管の斜面培地に 移 し さ らに 培養する。 菌が発育 し て き た ら ク リ ー ン ベ ンチ 内で 白

金耳に 滅菌水 を つ け て 菌 そ う の 表 面か ら 胞 子 をか き 取り , 9 cm シ ャ ー レで 固化 さ せ た 培地に ギ ザ ギ ザ の 線 を

描 く よ うに 薄 く の ばす。 シ ャ ー レ を変え て そ れ を 数回繰り 返す。 慣れて く れ ば, 昆虫 の体表面に 発生 し た歯ーか ら直 接 胞 子 をか き 取っ て , 同 様 に 行っ て も よ い。 BbωS1Gηa は体表面に 多 く の胞 子 を 作る こ とが多 い ので ,

死亡 虫か ら の直接か き 取 り が効率 的で ある。 処理後 は

250C前後で 2�5 日 間培養 し , 昆 虫寄 生菌製剤の場合と同様に し て 試験に 供試する。 得 ら れた 菌 は検索表 を 用 いて 種 を 同 定 するが (青木, 1989) , はっ き り し な い場合は専門家に 依頼する。

H 検 定 方 法

1 虫体浸漬 (散布) 法

昆虫寄 生菌の病原性 を確認する うえで 最 も 一般的で あり で 得 ら れた昆虫寄 生菌の胞 子接種液に 直接供試虫

を浸漬 (散布) し , そ の後の感染発病 を観察する方法である (増 田 ・ 前 田, 1998 ; 増 田 ・ 菊 地, 1992 : 増 田,1993 ; 増田, 1 998) 。

1 ) ア ブ ラ ム シ類の場合

{共試虫 は野外で 採集 さ れた も ので も 室内飼育 さ れた もので も よ い が, ス テ ージは脱皮に よる影紳 を 受 け な い無

麹胎生雌 虫 が適 し て いる。 供試虫 を 1O"�108 胞 子Im l

の範囲で 希釈 し た 接種液に 1�5 秒間浸出 し , そ の 後,ろ 紙上に 引 き上 げて体表に 付着 し た 懸濁 液 を取 り 除 く 。処理後水分が乾燥 し歩行を始め た 供試虫の うち, 脚部や触覚 な どが破損 し て い な い外見上 健全 な 虫 を選んで , 餌

植物とと もに 飼育容器に 5�10 個体収容する。 1 濃度 あ

た り の供試虫 数 は 20 個体以上 が望 ま し い。 感染に は 高湿度が必要 な ので 飼育容器 は密閉で きるネジ口 式 の スチロ ー ル 管瓶 (径 3 cm, 高 さ 85 cm) な ど が よ い が, パ

図 - 1 ア ブ ラ ム シ類の検定用飼育主主総

ラ フ ィ ル ム な どで 密閉 す れ ばプ ラ スチ ッ ク シ ャ ー レ も 使

用で きる。 飼育容器内 の 湿度 は餌植物の水分に よ り ほ ぼ100%に なる。 こ のと き , 容器内部に 水滴が発生 し て 供試虫が溺死する こ とが あるので , 菌以外の要 因に よる死亡虫の発生 をで きるだ け 防止するため容器に ろ 紙 を敷 い

た り ペ ー パ ータ オ ル を折 り た た んで 入れて お く 。 餌植物は常に 新鮮な も の を与える よ うに する。 接極後 は 定温器な どに 入れ て 飼育するが, 高温条件で は餌条件の悪化やほか の要 因に よる死亡 虫 の発生が多 く なるので , 筆者は200Cで 試験 し て いる。 調査は接種 7 日 後 ぐ ら い までで き

れ ば毎 日 , 供試虫の 生死の判別で 行 う 。 死亡虫 は 湿室条件下に お い て 接種菌に よる死亡 虫 数 を 確認する。

2) 鱗麹 目 害虫の場合監禁麹 目 筈虫に よる作物への被害 は ほとん ど が幼虫に よ

る も の な ので , コ ナ ガ幼虫に 対 する B. bassi ana の病原性検定 を例に 説明する。 コ ブ yゲ は 1 齢か ら 4 齢 を 経過 し

て 帰化するが, 1 齢幼虫 は 体サ イ ズ が小 さ い ので 扱 いに

く し ま た , 2 , 3 齢幼虫 は齢期聞が短 い ので 齢期後半に接種 を 行 う と感染前に 脱皮 し て 正確 な デ ー タ が取れな くなるので , 病原性検定に は体 サ イ ズ が最 も 大 き く 齢期間も 長 い 4 齢幼虫 を 用 い て 行 う と よ い。

接種方法 は 1 ) の ア ブ ラ ム シ 類に 対する方 法と ほ ぼ同

様で , 供試虫 を 浸漬処埋 し ろ 紙上で 風乾 さ せ た 後, ろ 紙を 敷 い た プ ラ スチ ッ ク シャ ー レ (径 9 cm) 内に 餌 の キャ ベ ツ 生業とと もに 5�10 個体収容する。 コ ナ ガ の場合

は ア ブラ ム シ類ほ ど デ リ ケ ー トで な く て よ く , 温度条件

も 20�250Cの範囲で よ い。 ま た , 供 試虫 の 数が 多 い 場合 な ど は 接種液 を ハ ン ド ス プ レ ー な どで 散布 し で も よく , 虫体浸泊とほ ぽ同様 の結果が得 ら れる。 調 査 は ア ブラ ム シと同様で ある。

3) オ ン シ ツ コ ナジラ ミ の場合

( 1 ) 成虫ウ ン カ 飼育容器 な どに 成虫 を 放飼 し , そ の 中に 50 m l

三角 フ ラ ス コに 水差 し た イ チ ゴ や イ ンゲ ン の葉 な ど餌植

図 - 2 オ ン シ ツ コ ナ ジ ラ ミ 成虫の検定用飼育容器一一一 27一一一

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422 植 物 防 疫 第 54 巻 第 10 号 (2000 年)

物 を 入れ て 一昼夜お き , 成虫 を餌植物に 50 個体程度定着 さ せる。 ハ ン ド ス プ レ ー な どで 成虫が逃げな い よ うに静かに 接種液 を噴霧 し , 成虫数 を カ ウ ン 卜 し た 後, 三角フ ラ ス コ ごと腰高 シャ ー レに 収容 し て , 25'C前後で 飼育する。 1 濃度 あ た り 3 反復以上で 実験 する の が望 ま しい。 成虫の試験で は供試虫の逃 亡 の お そ れがあるので ,調査は外側か ら 見て死亡 虫の発生が認め ら れて か らに な

るが, 筆者は 1ペ lecani i を 用 い た 試験で 接種 4 日 後に 実施 し て いる。

( 2 ) 幼虫 な どハダニ 薬剤検定試験な どで 用 い ら れる リ ー フ デ ィ ス ク

法で行 う 。 幼虫の寄 生が認め ら れる イ チ ゴや イ ン ゲ ン な

ど の植物 を採集 し , 直径 2 cm 程度に 打ち抜 い て 使用 する。 発育ス テ ー ジ を分 り て 試験する場合 は ( 1 齢, 2 (f命,

3 齢幼虫 な ど) , 実体顕微鏡下で 極細 の 針 を 用 い て ほ かの ス テ ー ジ を あ ら か じめ取 り 除 い て お く 。 1 リ ー フ デ ィ

ス ク あ た り の 幼虫数 は, 30 個体前後が調査 し や す い。こ の リ ー フ デ ィ ス クに ハ ン ド ス プ レ ー な どで 接積液を噴綴 し, 風乾する。 処理 し た リ ー フ デ ィ ス ク は峨化 ビニ ール製 ア イ ス ク リ ー ム カ ッ プの ふ たに 穴 を 聞 け て カ ッ プに入れた 水 を舌状に 切っ た部分か ら l汲水 さ せる よ うに し たろ 紙上に 置 い て , 25'C前後で 飼育 する。 反 復 数 は 3�5反復とする。 調査 は 実態顕微鋭 を 用 い, 桜積 5�7 日 後

図 3 ミ カ ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ主!;片浸前期飼育容撚

図 4 ミ カ ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ虫体浸iW汗j飼育年李総

までで き れば毎 日 行 い , 菌糸の発生があっ た り , 変色や陥没が認め ら れる も の を死亡 虫と し て計数する。

4) ア ザ ミ ウ マ類 ( ミ カ ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ ) の場合

微小な 昆 虫 な ので , 筆者 は 最 も 体の 大 き い雌成虫 を 用い て 実施 し て いる。 直 径 10 cm の ア ク リ ル 円 偽ー の 片 側関 口 部に ゴ ー ス を 張 り つ け た 飼育容棋に ミ カ ン キ イ ロ アザ ミ ウ マ雌成虫 を い れ, 他方開 口 部 をパ ラ フ ィ ル ム な ど

で シ ー ノレ する。 接種液 を ゴー ス 側 か らハ ン ド ス プ レ ー などで |噴霧 し , そ の後す ぐに シ ー ル し た パ ラ フ ィ ル ム を 交換するとと もに , ゴ ー ス を張 り つ け た 開 口 部 を下に し てペーパータ オ ル上に お き , 余分な水分 を 吸収 さ せる。 動き 出 し た雌成虫 を 選 び, '.汲虫管で 5 個体ずつ飼育容器に移す。 飼育容器 は直径 5 . 5 cm の プ ラ スチ ッ ク シャ ー レを逆 さに し て 用 い, フ タ の部分に 湿 ら せ た同サ イ ズ の ろ

紙 を 2 枚数 き (餌の乾燥や供試虫 の逃 亡 を 防 ぐ た め) ,直径約 4 cmに 切 り 取っ た パ ラ フ ィ ル ム を の せ て , そ の

上に 餌の ソ ラ マ メ 催芽種子 を 置 く 。 シャ ー レ の底 (00)には直径 3 mm の穴 を 聞 け , ゴ ー ス を 張 り つ け て換気で き

る よ うに し て お く 。 l 濃度 あ た り の供試虫数 は 20 個体以上が望 ま し く , 20�25'Cで 飼育する。 調査 は供試虫の生死の判別で 行い, 死亡 虫 は混室条件下に お い て 接種菌

に よる死亡虫数を確認する。2 葉片浸漬法虫体浸漬法 よ り も 簡便で あるが, 供試虫の処理築への

接触程度で 効果が振れる場合が ある。 供試虫が積極的に餌植物 を摂食する よ う な場合 は有効な方法で ある。 筆者は ア ブ ラ ム シ 類, コ ナ ガ幼虫, ミ カ ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ

で 実施 し て いるが, コ ナ ガ幼虫で は虫体浸潰法 よ り も 感度が鈍い よ うで ある。 ア ブ ラ ム シ類や ミ カ ン キ イ ロ ア サー

ミ ウ マに つ い て は 虫体浸演と変わ ら な い 結果 を 得 て いる。 手順 は, f共試虫 の餌摘物 を 接種液に 10 秒間程度浸

出 し て風乾後, 飼育容器に 供試虫と処理葉 を入れ て そ の後は虫体浸潰法と同様に 飼育する。 調査 も 虫体浸前法と同様で ある。

ミ カ ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ の検定に つ い て は, 本虫 は 微

小で あ り , 特に 雌成虫に 対する検定の場合, 餌替え や調査中に 供試虫が逃 亡 する こ とが多 く , 正確な結果 を 得 られ な い こ とが ある。 現在 , 現場でで きる簡易 な 薬 剤 検定, 昆虫成育制御剤や見虫寄 生菌 な ど検定に 時間がかか

る も のに 対 し て利 用で きる方法と し て マ イ ク ロ ピペ ッ トのチ ッ プ を 用 い た 葉 片 浸漬 法 を 検討 I:FIで あ り , 紹 介 す

る。1 ) 方法検定用飼育容器に マ イ ク ロ ピ ペ ッ ト の青チ ッ プ を ( 1

ml 用 ) 用 い, そ の な かに 供試虫と処理業 を 入 れる方法一一一 28 一一一

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天敵生物 : 昆虫寄生菌 423

で, 先端 を 約 1 cm (直径 3 mm 程度) 切 り 取 っ た 青 チ

ッ プ に 短冊状 に 切 っ た 処理葉 ( キ ャ ベ ツ , 5 x 15 mm)

を チ ッ プ中央部 ま で押 し 込 ん で, で き る だ け処理葉が動

か な い よ う に セ ッ ト す る 。 チ ッ プの 底 を パ ラ フ ィ ノレ ム に

強 く 押 し つ け て 張 り つ け , 先端部 か ら 供試虫 を 放飼 す

る 。 餌植物 は キ ク の棄 な ど で も よ い が, キ ャ ベ ツ は ミ カ

ン キ イ ロ ア ザ ミ ウ マ の 成 虫 が よ く 摂食 し, 餌持 ち が よ

い。 放飼 は , 吸虫管 の 先端 に 青 チ ッ プ を取 り 付 け て 成虫

を チ ッ プ内 に 吸 い取 り , そ の先端部 を飼育容器の放飼 口

に 差 し 込 ん で側面 を 軽 く 叩 い て 落 と し 込 む。 放飼 口 に

は, 湿度調節 と 逃亡防止の た め , 先端 を 約 l cm 切 り 取

っ て (直径 2 mm 程度) 中 に ペ ー パ ー タ オ ル ( キ ム ワ イ

プ) を詰め た 黄色 チ ッ プ を 押 し 込 ん で栓 を す る 。 1 容器

あ た り の 供 試 虫 は 5�lO 個 体 が よ い と 思 わ れ る 。

20�250Cで飼育す る 。

2) 調査

虫体浸漬 (散布) 法 と 同様 に 行 う 。

マ イ ク ロ ピ ペ ッ ト の チ ッ プ を 用 い た 葉片浸漬法 は , 観

察容器内部 を高湿度 に保て る こ と か ら 見虫寄生菌の感染

に 好適で あ り , 餌持 ち も よ い こ と , 栓か ら 余分 な 水分が

抜 け壁面 に 水滴がつ き に く い の で溺死等 に よ る 処埋以外

の要因 に よ る 死亡虫の発生が少 な い こ と , 供試虫 の放飼

が簡単で あ る こ と , 外側か ら の 観察 が可能であ り , 外側

か ら 生死の判別が難 し い と き に は底部の パ ラ フ ィ ル ム を

はが し て調査で き る こ と , 場所 を 取 ら ず, 持 ち 運びがで

き る こ と な ど か ら , 有効 な 方法 で あ る と 考 え て い る 。

引 用 文 献1 ) 青木裏児 ( 1989) : 昆虫病原菌の検索, 全国農村教育協会,

東京, 280 pp 2) 津田勝男 ら (1996) : 応動昆 40 : 3 18�32 1 . 3) 一一一一一 ら (1997) : 向上 41 : 95�98 4 ) HALL, R. A. ( 1982) : J. Invertebr. Pathol. 27 : 41 �48 5) KANAGARATNAM, P. , et a l . ( 1 982) : Ann. Appl . Biol

100 : 1�1l 6) 増田俊雄 ・ 菊地 修 ( 1 992) 応動昆 36 : 239�245 7) 一一一一 ・ 前田 正孝 ( 1989) 同上 33 : 101 � 104 . 8) 一一一一 ( 1992) : 北 日 本病虫研報 43 : 191 � 193. 8) 一一一一一 ( 1993) : 向上 44 : 189�1 90 9) 一一一一一 ( 1998) : 応動昆 42 : 5 1�58

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処理場面な ど を掲載 し , 生物農薬の実用書 と し て , 技術指導書 と し て 最適です。

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定価 8 , 4 0 0 円税込み (本体 8 , 000 円 ) 送料サ ー ビ ス

市販農薬 を用途別 に 作用特性, 使用上の注意, 各製剤 の使用 方法 ・ 適用 な ど に つ い て 解説。 一般名 ・ 化学

名 ・ 構造式 ・ 物理化学的性質, 毒性 ・ 魚毒性 を付録に ま と め た 農薬 に 関 す る 解説書です。

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