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2016年度 第9回日本スピリチュアルケア学会 学術大会 一般研究発表
割り箸書画と詩歌療法によるスピリチュアルケアの試み~感情と言葉におけるスピリチュアリティ~
2016.9.18一般財団法人 心と文化書画詩歌財団
理事長 齊藤光子
はじめに
• 日本の緩和医療において
スピリチュアルケアの重要性が認識されている。
人々が命の危機に直面したときに望む感情の安定の一助として
割り箸書画を用いた詩歌療法の実践を紹介する。
• 割り箸書画とは
割り箸を用いて、文字だけでなく言葉や詩に感情をのせて描く。
無断使用・無断転用禁止
詩歌療法とは
精神科や心療内科において臨床への適応と実践
• 心理療法としての詩歌療法
適応・・・悩める人の感情の開放と情緒の安定の援助
実践・・・詩・連詩・俳句・短歌・連句による心理療法
• 芸術療法としての詩歌療法
適応・・・日常の中でも感情の開放や肯定的思考の援助
実践・・・文芸以外に言葉の組み合わせや絵画・箱庭療法無断使用・無断転用禁止
詩歌療法のはじまりは海外から• アリストテレス・・詩を「人間精神の父」と讃えた。
• ソラヌス・・・・・・古代ローマ時代の詩を聞かせる療法が最古の文献(現代でも有効な精神療法)
• エリアーデ・・・・・シャーマンが病人を前に唱える言葉こそ詩の起源 引用文献 『ホモ・ロクェンスの病』 飯森眞喜雄 著
• 1928年アメリカのエリ・グライファーが(Eli Greifer. 1902-1966)精神的に悩んでいる人々に詩を処方したことから始まったとされている。
• グライファーは精神科医リーディ(Leedy.J.J)と出会い、それまで言われていた詩療法(PoemTherapy)から詩歌療法(Poetry Therapy )と用語を改めている。
• 1969年 『詩歌療法(poetry therapy)-情動障害者の治療における詩歌の使用』 リーディ編。• 他にもリーディ・ヘニンガー・マッツア等が詩歌療法を行っている。 引用文献 『詩歌療法』 小山田隆明 著
無断使用・無断転用禁止
日本における詩歌療法の試み
• 1990年 『俳句・連句療法』 徳田良仁監修、飯森眞喜雄・浅野欣也共著
• 2012年 『詩歌療法』 小山田隆明著
• 2015年 『詩歌に救われた人びと』-詩歌療法入門- 小山田隆明著
※多くの記述は、エピソード的な報告であり、研究としては不十分なものだった。
• 2016年 現在では集団・個人で短歌や俳句を詠んだり投稿することが広がり
一般的行われるようになっている。
医学博士 田村 宏(タムラクリニック院長)
無断使用・無断転用禁止
従来の詩歌療法とは
目的• 悩める事柄を詩で表現することにより、鬱積する感情を開放し情緒を安定させる。
• 感情の浄化による認知的変容の感情の整理を援助することにある。
状態の変化• 詩を読み書くことで潜在的な問題に気づき、他者との共有や共感を得るようになる。
• 詩の言葉は、混乱した思考に秩序を与え、感情を安定させ、浄化(カタルシス)を促す。
効果• カウンセリングの有意義な治療手段として認められている。
• 対人関係を改善し、他の人とのコミュニケーションを促進させることになる。
• 詩人の詩を読むことは、詩人の自我の強さ、葛藤の処理・対処の仕方を学ぶことになる。
• 詩を読む人は共感的理解や自己理解を広げ、イメージ力を豊かにする働きがある。
引用文献 『詩歌療法』 小山田隆明 著
無断使用・無断転用禁止
割り箸書画詩歌療法
割り箸書画詩歌療法とは・・・
割り箸を用いてクライエントが発する口語を中心に、詩や言葉を表現・表出させて描くことで詩
歌療法を行う。また、描くだけではなく自分の感情に向き合うことができる詩にふれること、または
聴くことも詩歌療法に含まれる。
感情の整理、感情の浄化はリラクゼーション瞑想やイメージ療法を併用し、鬱積した感情や任
されていない感情にフォーカシングしながら実践する。
感情の表出・表現はクライエントのほか、治療者やカウンセラー、セラピストや家族でも実践する
ことができる。
目的
自由に表現することで、固定観念からの脱却や意識的・無意識的思考または感情に向き合う
ことを試みる。感情を表現・表出する、または触れ、何度も確認することで、思考の修正や自
己肯定感による自信と感情コントロールを促す。
無断使用・無断転用禁止
割り箸書画詩歌療法
効果
割り箸で時間をかけてひと線ごとに書くため、一文字に対する集中力を高め、
言葉の理解を深める。
自分が発した口語、もしくは普段発している言葉を表現することで自己の価
値観や思考の傾向を認知し、自己理解を深める。
自由な表現方法から、文字や言葉を柔らかに表現でき観るものを和ませ反
復効果と他者との共有、共感を得る。
表現・表出は他者(詩人・他者の詩)の詩や言葉であっても共感、浄化し、
自己に限らず、家族・セラピスト・介護者が表現者でもよい。(著作権法遵守)
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割り箸書画詩歌療法
• 従来の詩歌療法との比較
項目 詩歌療法 割り箸書画詩歌療法
年齢層 限られる 幅広い
目的 心理療法(芸術療法) 趣味からスピリチュアルケアまで 多目的
詩作 規則性がある 短歌・俳句・連句 規則性が少ない 口語・言葉・文字
内容 症状で選択するのが望ましい 肯定的な表現で終わる
表現 描くことで感情表現しない 描くことで感情表現する
対象者 治療対象者 療法以外・ストレスケア・教育・レクレーションリハビリ・メンタルトレーニング・脳トレ・芸術
効果的な活用 精神科、心療内科、医療全般 趣味から教育、スピリチュアルケアまで内科外科問わない医療、ストレスケア、道徳面の意識向上、芸術インテリア、補助的治療法
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割り箸書画詩歌療法
• 従来の詩歌療法との比較 技法
技法 詩歌療法 割り箸書画詩歌療法
詩を読むための技法 一人あるいは集団で詩を読む 詩の朗読・一人あるいは集団で詩を読む・展示・掲示する
書く動機付けの技法 詩について質問する
「その詩はあなたにとって何を意味しますか」「心に響く詩の行はどこですか」等質問することにより詩作
絵本の読み聞かせ・詩の朗読等で感想や感情、気持ちを言葉にイメージ療法で自分や他者へ送る言葉「感謝の言葉」「ねぎらい」「励まし」の言葉をかけるようにイメージし詩作
詩を書くための技法 一行あるいは数行の詩を用意する。治療者が作る。
文字や言葉に感情をこめて、呼吸を吐き出すように自分や伝えたい相手を思いながら言葉や文字の意味をイメージして描く
『詩歌療法』小山田隆明著より
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割り箸書画詩歌療法
①割り箸を2つに折る
祝箸を使う(竹箸や割り箸では材質が固い)
②先端を削り整える
割った先端をカッターで小さなピラミッド状に削る
持ち方は自由ですが、力を抜いて描くことを心がける
墨汁や墨をつけて描く(練習用の新聞紙に直線や曲線を描く)
③持ち方・書き方 ④墨をつけ描く
⑤文字や言葉をかく
半紙や画用紙・和紙にあわせてひと線ごとに墨を付けて描く(用紙や角度によって、墨の強弱や長短を描くことができる)
⑥完成
乾燥 墨の乾き具合いが素材や湿度で異なる
描いた日時と名前を記入
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書画と詩歌療法によるスピリチュアルケアの試み
•事例 1 57歳 女性 筆者・平成6年2月、出産後に大量出血し、退院後、免疫低下による肺炎を繰り返し10年間入退院。
※精神安定を目的に割り箸書画詩歌療法を実践
事例 2 49歳 女性 Aさん
・平成26年12月、スキルス性胃がんステージ3b、手術不可、リンパ節転移。
※過去の心の清算を目的に割り箸書画詩歌療法を実践 無断使用・
無断転用禁止
・言葉による感情の整理 ~割り箸書画詩歌療法~
事例1・2で用いられた割り箸書画詩歌
無断使用・無断転用禁止
考察・・・
事例1、事例2 療法実践後前向きに物事をとらえることができるようになった。
また、どちらも症状が良好にむかい、職場復帰を果たしている。
割り箸書画詩歌療法を行うことで得られる効果は、スピリチュアルケアの一助になりえると考える。
今後の課題として・・・
症例を増やし割り箸書画詩歌療法の認知を高めていく必要がある。
また、症例に合った詩の処方と療法方法の研究に取り組み、割り箸書画詩歌療法という新しい療法
を確立することに努める。
まとめ(考察と今後の課題)
ご清聴ありがとうございました。無断使用・無断転用禁止