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《熊本県小中学校長会 会報第1号 05.6.28 学校組織の活性化と 校長のリーダーシップ 05/06/27 14:55-16:05 市民会館) 熊本大学 吉田道雄

学校組織の活性化と 校長のリーダーシップyoshida/kenkochokai05.pdf(4)講演記録 “組織の活性化と学校長のリーダーシップ’ 一組織マネジメントのグループ・ダイナミックスー

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《熊本県小中学校長会 会報第1号 05.6.28

学校組織の活性化と校長のリーダーシップ

(05/06/27 14:55-16:05 市民会館)

熊本大学 吉田道雄

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( 4) 講 演 記 録

“組織 の活性化 と学校長 の リー ダー シ ップ ’

一組 織 マ ネ ジ メ ン トの グル ー プ・ ダイ ナ ミ ック ス ー

講師 熊本大学教育学部教授 吉 田 道 雄 氏

皆 さん こん にちは。 お疲 れ様 で ござい ます 。 ただ い ま ご紹介 いただ き ま した吉 田で ござい ます 。

今日は 1 時 間 ほ どお話 させ て いた だ きます。

お昼 過 ぎの講演 は なか なか難 しい ものが ござい ます 。 と くに 2 時前後 は気 が遠 くな る先 生方 も増

えて くるのです が、 もう 3 時過 ぎてお ります 。 したが って、 しっか りお 聞 きいただ け る と思 い ます。

いつ も、 熊本 大学 教育 学部 の学 生が お世 話 にな ってお ります。 と くに熊 本市 内 を中心 に教育 実習

で学 生た ち を ご指導 い ただ いてお ります。 この場 をお借 りしま して、 お礼 を 申 し上 げ ます 。

そ うい う ことで、 私 と して も ご恩 返 しが 出来 れ ば と思 って お りますが 、 何分 に も 1 時 間 で学校

組織 の活性 化 と校長 先 生の リー ダー シ ップ につ いてお話 しす るのは、 とて も難 しい ことです。 今 日

は、 パ ワー ポイ ン トで2 7枚分 の コマ を準 備 して参 りま した が、 全 部 を使 い切 ってお 話す る ことは

出来 な い と思 い ます。

そ れ では、 早速 ス ター トさせ て いた だき ます。

先 ほ ど会 長 の叶 先 生か ら ご紹介 して いた だ き ま した が、 まず は私 のホ ーム ペ ー ジヘ ご案 内 した

い と思 い ます 。 まあ、 最 初 か らコマー シ ャル とい うわ け です 。U R L の入 力 は面倒 です ね。 そ の代

わりに、 Y a h o o や G o o g le で私 の名 前 を入 れ て いた だ けれ ば 、 い ま の と ころ トッ プ に出 ます 。 こ

こで は、 これ を申 し上 げたか った わ けです …。 こん な こ とを言 って い ます と、「貴 重な 時 間な の に、

ホーム ペー ジ の宣 伝 なん かす るな」 とお しか りを受 け るか も しれ ませ ん。 た だ、私 と しま して は、

ここに教育 に関 わ る問題 な ど も、 け っ こう真面 目に書 いてお ります。 文体 は軽 くて、 格調 が高 い と

は言 えませ んが、先 生方 の リー ダー シ ップにつ いて も ご参 考 にな る もの も含 まれて い る と思 います。

そ の 中で も、 ご覧 いた だき た いのは 「味な 話 の素」 とい うタイ トル の コ ラムです 。「味 の素」 な

らぬ、「味 な話 の素」 で すが 、私 のオ リジナル で ござい ます。

ここで は、 教育 に関 わ る内容 の もの を ご紹介 して み よ う と思 い ます 。 これ は、 中学校 の研 究 発表

会 で音楽 の授 業 を見 せ て いただ いた ときに考 えた ことを書 いた もの です。 み んな で手 を叩 いて 合奏

す る授 業で した。 私が 参加 す るのが 音楽 の授 業だ とい うこ とは、 あ とで お聞 き しま した。 それ で、

「私 は音 楽 には、 まるで ご縁 が あ りませ んよ」 と申 し上 げ ま した。 そ れ に対 して、 「子 ど もたちが

み ん なで合 奏 す る授業 で、 グル ー プの効 果 を考 え る ものな んで す」 とい うお話 で ござい ま した。

そ れな ら勉 強 させ て いた だ こ うとい う ことで 出か けた わ けです。 とにか く授業 は とて も印 象的 で し

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た。 中学 生 たちが 男女 混合 で ニ コニ コ しな が ら合奏 に取 り組 んで いる ことに感 動 した のです 。 そ こ

で、 ど うしてそ うな るん だ ろ うか と思 って 、そ の理 由を考 えて みた わ けです。

まず私 が取 り上 げま した のは 「目標 が は っき りして い る こと」 で す。 み んなで 音符 を読 み なが ら

合奏す る とい う こ とが全 員 に分か って いる のです。

そ の次 は、「全員 がそ の 目標 を受 け入 れて い る こと」 です 。 目標が は っ き りして い て も受 け入 れ

る気持 ち が無 けれ ばや る気 は起 こ らな いで しょ う。 もち ろん、 中には気 が 進 まな い生徒 が いたか も

しれ ませ んが、 そ れ も程 度 の 問題で す。 仕方 が な い と思 いな が らも、 と りあ えず 目標 を受 け入れ て

いれ ば、 まず は い い と思 うんです。 そ の うち、「意外 に面 白い じゃないか 」 とい う発見 もす るんだ

ろ う と い う気 が し ま した 。

そ して 第 3 日は、「自分 が何 をす れ ば いいか もは っき りして い る こと」 だ と思 うん ですね 。 目標

がは っ き り して い て 、 そ れ を 受 け 入 れ て 、 と に か くや っ て み よ う と い う こ と に な っ た と して も 、 自

分が何 を して い いか 分か らな けれ ばや る気 は起 こ りませ んね 。

さ らに、 す る こ とが分 か って も、 自分 に 出来 るか どうか が 問題 にな ります 。 それ が 自分 には出来

な い と い う の で は お 話 に な りま せ ん 。 で す か ら、「自分 に も 出 来 る こ と が は っ き り して い る こ と」

を第 4 の要 因 に挙 げ たので す。

こう して分析 して くる と、 また まだ 出て き ます。 そ の 5 番 目 と して は、「全 員 が参 画 して い る こ

と」 が あ ります。 1 人 ひ と りが 自分 の役割 を持 って、 手 を叩 いて い るわ けで す。 私 が見 せ て いた

だ いた授業 で は、 同 じパ ー トを 2 人 一組 で担 当 して いま した。 です か ら、「自分 が いなけれ ば成 り

立た な い」 とい う意 識 も高 まって い るよ うに感 じま した。「あ なた が必 要 だ」 とい う こ とです 。 こ

う した状況 で は、子 ど もた ち もや る気 にな ります。

そ うな る と 「責任 感 も生 まれ て くる こと」 は容 易 に想 像 で きます。 これ を第 6 番 目の要 因 として

挙 げた い と思 い ます。「責任 と誇 り」 は何 をす るに も大 切 なの です。

それ か ら、「子 どもた ちの行動 が 、周 りに見 える」 んです ね。 心 の 中で考 えて い るの とほ違 って 、

みん なで 手 を叩 いて い る こ とが見 え るのです 。、この、「や って いる ことが 目に見 え る こと」 が 、第

7 番 目の要 因 と して、や る気や楽 しさを高め る上で大 きな役割 を果 た して い るん じゃな いか な と思 っ

たわけです。

「見 える こと」 の結果 と して、 それ が評価 され るんです ね。 生徒 たち 同士 が、 す ごくい いよ とい

うプ ラスの評価 をす るわ けです。 これ を見 て いて、私 は 8 番 目の要 因 と して、「 周 りか らの プ ラス

の評価 ・ サ ポー トが ある こと」 が大事 な んだ と考 えた のです。

しか も、練 習 を して きたわ けです か ら、 子 どもた ち も、「自分 た ちが上 手 くな って きたん じゃな

い か 」 と感 じて い た よ う に 見 え ま した 。「前 よ りも 良 くな っ た ぞ 」。 こ う した 「前 進 して い る と い う

実 感 が ある こ と」。 これ を 9 番 目に挙 げよ う と思 うので す。

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最後 は何 と言 って も、「や った-」 とい う達成 感で す。 それ ぞ れの グル ー プが合奏 し終 わ る と、

周りか らもワー とい う拍手 を貰 うんです ね。研 究 会で は、 私 たち の よ うに授 業 を見 に来 て いる人 た

ちも、 手 を叩 いて くれ るので す。 そ う した 中 で、 生徒 た ちは 「や った -」 とい う気 分 に浸 って い

たと思 い ます 。 こう した 「達成 感 が感 じ られ る こと」 を 1 0 番 目の要 因 として 挙 げたわ けで す。

こう して、 多 少 こ じつ け も含 めなが ら意 欲 とい う観点 か ら授業 を分 析 した わけで ござ います。 こ

こで 強調 した いの は、 私 が見 せ て い ただ いた あの 1 回の 授業 で 、 10個 の要 因 を見 つ け た とい う こ

とで はあ りませ ん。 本 当 に申 し上 げ たい のは、 学校 で行 われ る どん な授 業 も このよ うな要 因 を取 り 一

入れ る努力 を して いただ きた い とい う ことです。 じつ は、 さ らにそれ だけで もな いので す。 これ は、

ま ことにお こが ま しい とは思 うのです が、 校 長先 生や部 下 で あ る先 生方 のお 仕事 にも 当て は ま る と

いう こと をご提 案 した いの です。

こんな感 じで 、「味 な話 の 素」 を書 いて お ります 。私 の性格 が 粘着 質 のた め で しょ うか 、 とにか

く毎 日更新 して お ります 。先 生方 には、 これ を機 会 に よろ し くお付 き合 いいた だき たい と思 います。

それ では、 本 日の本 題 で ある リー ダー シ ップの話題 に入 らせ て いた だ き ます。

私 は リー ダー シ ップや 対 人 関係 の トレーニ ング を研 究 してお ります。 そ ん な こと もあ って、 熊

本市で実施 されている「10年経験者研修」 と「学級経営の研修」 についてお手伝 いしてお ります。

前者 は 4 日、 後 者 は 2 日ほ どいた だ いて お ります。 また、 熊本 県 の 「1 0年 経験 者研 修 」 につ き ま

して も、 昨年度 か らお話 をす る機 会 を与 えて いた だ いてお ります。 そ の内容 を単純 化 します と、 こ

の よ うな 式 にな ります。 ポイ ン トは 「教 師 力」 の育成 です。

教師力専門 力 × 人間 力

子どもの数

教師力は、専門力と人間力の掛け算 の結果です。専門的な知識や能力に人間力が大きな影響 を持 っ

てくるわ けです。 人 間力 が 2 倍 になれ ば、 専 門的な知 識や 技術 が 同 じで も教 師 力は 2 倍 にな る とい

う こ とで ご ざ い ま す 。

そ れ か ら、 最 近 は少 人数 も話題 にな って き ま した。教 師 力 には子 どもの数 も影 響 して き ます。

子どもの数が 多 ければ、 教師 力 は相対 的 には 小さ くな る。 これ は当然 だ ろ う と思 います。 ここで 問

題にな る のは人 間 力が とる値 で ござい ます。 これ が 2 倍 ・ 3 倍・ 1 0倍 とな れば 、そ れ に応 じて 教

師力が強 化 され ます 。 しか し、 この人間 力 には恐 ろ しい性質 が あ るのです 。そ れ は、ゼ ロに も狩 り

うる とい う ことです。 そ うな る と、 専 門力 ×人間 力はゼ ロです か ら、 どんな に専 門的 な力や 知識 を

お持 ちで も、教 師 と して の影 響 力 は失わ れて しま うのです。 それ だ けで は ござい ませ ん。 人間 力 は

マイ ナス の値 だ って取 り得 るんです 。そ の場 合 は、専 門 力が あるが故 に、 か え って仇 にな る とい う

ことさえ起 きて しま う。知 識 もあ り、多 様 な経験 をお 持 ちで、 自信 もある。 しか し、そ れ だか らこ

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1 0年経験者研修会体の流れ

そ子 ども との関 係 が上 手 くいか な

い。 そ んな こ とだ って あ り得 る と

思うのです 。

し か も、「少 人 数 」 と い う こ と

が話 題 に な って くる この時代 、 人

間力が マイ ナ ス だ と、子 ど もの 人

数が少 な い ほ ど、 マイ ナ スの影 響

も大 き い ことです。 大学 の場合 は、

2 0 0人 を超 える授業 もあ りますが 、

これ は案 外 と楽 な んで す。 これ だ

け多 い と、 学 生 の顔 も名 前 もみ ん

な覚 える こ とが で きませ ん。 だか らとい って、 い い加 減 な授 業 をす るつ も りはあ りませ んが 、個 々

人に対 す る責任 は小 さ いのです 。 ところが、 人 数が 少な くな って くれ ば くるほ ど、 子 どもたち 1 人

当た りに対 す る影 響 力は大 き くな ります。 それ だ け、マ イナ ス も大 き くな るわ けです。 先 生方 には

何と して も人間 力 を磨 いて いただ かね ば な らな いのです 。

そ こで、 人間 力 を高 め るた め の方法 を考 え る必要 が 出て き ます 。そ のひ とつ に、 リー ダー シ ップ

や対 人関係 の トレー ニ ン グが あ ります 。 ここでは、 そ の流 れ を簡 単 に ご紹 介 した い と思 います。

これは、熊 本市で お手伝 い してい る 「1 0年経験 者研修 」 のスケ ジ ュール です (図)。 5 月 に始 まっ

て、 7 月 と 12 月、 そ して 2 月 の合 計 4 回 の研 修 か ら構成 され て います 。 1 年 がか りの研 修 プ ラン

です 。今 日は細 か いお 話 をす る時 間 は ござ い ませ んが、 各 教師 が子 どもた ちか ら期 待 され て いる行

動を集 めて、 それ に応 え る とい うのが基 本的 な柱 になって い ます。 子 ど もたち の期待 を分 析 して、

先生方 が 「そ うね え、 これは しな い とい けな いか」 と納 得 いた だ いた もの を本 当に実践 しま し ょ

うとい うわ けです 。そ して 、 実践 した 結果 を子 どもに評価 して も らう ことにな ります 。

子 どもた ちは、「先 生、 も っ と頑張 ってね 」 と 「止 めて 欲 しい、 押 さえて 欲 しい」 ことを カー ド

に書 き ます 。前 者 には○ を、後 者 には △が 付 け られ ます。 こうしたカ ー ドを子 どもたち か らも らう

のです。 1 人 の子 どもが○ と△ を 1 枚 ずつ書 き ます と、3 0 人の学級 です と6 0枚、 3 5人で7 0枚 のカ ー

ドを 手 にす る こ と に な り ます 。

カー ドの内容 を見 ます と、 △ の場合 、「先生 だ って きつ い と言わ な いで欲 しい」「男 女 の接 し方 を

平等 に して欲 しいです」 といった ものが あ ります 。 また 、「連絡 忘 れが た ま にあ るので 忘 れ な いで

欲 しい」「生徒 1 人ひ と りに 目を向 けて欲 しい」、 さ らには、 「少 し 自分 が頑 張 って い る とい うの

をア ピール しす ぎでは な いか」 な ど、 いろい ろ挙が って くるわ けです。 これ に対 して、 先生方 に子

どもが 6 0枚 も書 いて い るん だか ら、 そ のすべ て に応 え ま し ょう とは言 いませ ん。 そ うで はな くて 、

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その 中か ら、 ご 自身 が ご納 得 い

くもの を 1 つ か 2 つ だ け選 ん で い

ただ くこ とに して い ます 。 熊 本市

の「10 年経験者研修」 の場合は、

研修 テー マ も持 ってお られ ます か

ら、 5 つ ほ ど選 択 して いただ いて

います。 こ こで重要 な の は、 ご本

人が 「納 得」 で き る もの だ け を選

ぶと い う こ と で す 。

これ に つ いて興 味深 い結果 が あ

ります (図 )。 子 ど もた ち が 書 い

たカー ドを、 A 先生・ B 先生・ C 先生、それぞれ 10個ずつ ほど挙 げて、同僚 の先生方に どの先生

のことか を推測 して いた だ いた んで す。 そ れ が、 じつ によ く当た るん です 。 つ ま り、「これ は子 ど

もが好 き勝 手 に言 って いる」 とか 「自分 はそ んな こと して い な いの に、 子 どもは ゆが んで見 て い

る」 とい った こ とで はな いわ けです 。

私 は こう した研 鹿 プ ログ ラム を開発 し、 実践 させ て いた だ いて いるわ けで ござ います。 校 長先 生

方の学 校 で もお 試 しに なって は いかが で しょ うか。 そ の内容 を校 長 先生 ご 自身 の リー ダー シ ップ改

善に役 立 てて いた だ く ことも可能 です 。

さて、 本 日は校長 先 生 を対 象 に した リー ダー シ ップ特 性 チ ェ ック リス トを持 って参 りま した。 こ

れは、 私 どもが長 年 にわた って研 究 して き た結果、 よ うや く完 成 した ものです。 サ ンプル 数 は3,0 0

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0 で ござい ます。 対 象 は熊本 市 だ けで はな く、 全 国的 な レベ ル の もので す。 何 と言 い ま して も、 信

頼係 数 0.9 4 7で す か ら、 は ぼ 10 0 %当 た る とい うす ごい もので です 。 そ こで、 で き るだ け多 くの先

生方 にお 受 けい ただ きた い と思 い ます。

そ こで 、 この調査 につ い て簡 単 に説 明 させ て いた だ き ます 。 調査 は 3 0 開 か ら構成 され て お り、

わず か 1 0分 で終 ります 。 校 長先 生 の リー ダ ー シ ップ特 性 を測 るた め に欠 かせ な い 3 因子 が ござ い

ま して、調 査で はそ れ を測 ります。 まず 、 A ・ B ・ C タイ プは、 この基 本 因子 の 1 つ以 上 に プ ラス

反応 が出 る方で す。 この先生 方は ご安 心 くだ さい。 定年 まで校 長 先 生 と して立 派 にや り通 せ る こ と

は疑 い あ りませ ん。 ご 自身 もか な り自信 をお持 ちの方 で す。「いや あ、 若 い ころか ら リー グ「 シ ッ

プ抜群 だ った な あ。 学 生時代 も リー ダー シ ップ抜群 で評 判 も良か った」 なん て思わ れ て いる先 生方

です。

ただ、 この特性 チ ェ ック リス トで は、基 本 的要 因の 1 つ以 上 がマイ ナ ス にな る場合 が あ るわ けで

す。 D ・ E ・ F タイ プがそれ に当た ります 。 こち らは、 少 しば か り説 明 しに くい方 々です。 マイ ナ

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ス反応 が 1 個 のD タイ プは まだ しも、 す べて がマ イナ ス の F タイ プです と、 これは まず い。私 とし

ても、「校長 先 生 にな られ た の も間違 い だ った」 な あんて 言 っ た りす るか も しれ ませ ん。 じつ に失

礼な 言 い方 です が、「いや 、 自分 も間違 ったか な と思 っ て る」 な ど と弱 気 の方 は い らっ しゃい ませ

んか。 しか も、 この タイ プの方 は、 今後 もうま くいき ませ ん。 努 力 して もど うに もな らない のです。

これ は科 学的 な結 果で すか ら、 率直 に申 し上 げてお き たい と思 い ます 。J

さ あ、 このテ ス トを受 け てみ よ うと思わ れ る先 生 は手 を上 げて い ただ け ます で し ょ うか。(笑)

いやー 、 先生 方 はか な り消極 的 です ね。 こん な ときは、「と りあ えず 手 だ け上 げて お いて、 あ とで

もらわ な きゃ いい」 なん て考 え られて 、 8 割 く らい の方 が 反応 され る と思 って い ま した。

いや あ、 こ こで先 生方 にお 詫 び します。 じつは 、 い まの調査 の話 は 嘘な のです 。 そん なテ ス トな

んて あ りませ ん。 リー ダー シ ップや対 人 関係 の本 質 を理解 して いただ くた め に、 わ ざわ ざ作 り話 を

したわ けです。 つ ま り、 リー ダー シ ップは、 それ とは まった く逆 の考 え方 で いき ま し ょう とい うこi

とで す。 リー ダー シ ップは、 生 まれ つ きの性 格 だ とか特性 で 決 まる もので は な いのです 。そ うで あ

れば、 リー ダー シ ップの トレー ニ ング もあ り得 ませ ん。「リー ダー シ ップは個 人 の資 質や 性 格 で決

まる」 ので は な いので す。 私 た ちは、「リー ダー シ ップは個 人 の行 動で 決 ま る」 と考 え て い ます 。

つま り、個 人の行 動そ の ものが 大事 な ので あ って、 それ をす るか しな いかが リー ダー シッ プを決定

づけ るのです 。 です か ら、 子 どもか らこう して 欲 しい とか、 少 し押 さえ て ほ しい とい う期待 のカー

ドを薫 っ た ら、 そ の う ち 実 できる ものか らや れ ば いい。 これ が私 どもの基本 的 な考 え方 で ござ い

ます。

この よ うに、 リー ダ ー シ ップ に対 す る考 え方 は、「特 性」 と 「行 動」 の どち らを重 視 す るか で 2

つに分 か れ るの です 。「特性 論」 は運 命論 ・ 決定 論 で もあ ります。 前 者 は リー ダー シ ップに欠 かせ

ない性 格 な どの特性 が あ って、行 動 はそ れ に引 きず られだ け だ と考 え ます。 です か ら、 リー ダー と

して好 ま しい特 性 を持 って いれ ば、「私 は、 生 まれ つ き恵 まれ て い るの よ」 と喜 べ ば い い。 まず い

特性 の場合 は、「分か っ ち ゃあ い るけ ど、性 格 だか らどう しよ う もない の よね」 と居直 る しか あ り

ません。 私 としては、 そ うした発 想は しな いで お きま し ょう と申 し上 げた いので す。

私 のお薦 め は 「行動 論」 です 。そ れ は、「特 性論 」 の対 局 にあ ります。 性 格 の よ うな変 わ らな い

もの も無視 は しませ ん。 しか し、 そ う した性 格 な どを乗 り越 えな が ら、 いろん な行動 にチ ャ レンジ

しま しょ うとい う ことで す。 失敗 して もめ げず に、新 しい行 動 を試 み るの です。 そ こにあ るのは 、

「努力すれば出来る」「行動は改善できる」の世界なのです。

もちろ ん、特性 の影響 が大 き くて、行 動 の改善 がむず か しい と思 われ る方 もゼ ロで はあ りませ ん。

だれ もが 頑張 りさえすれ ば、 素晴 らしい リー ダー シ ップ を発 揮で き る とい うわ け にいか な い こと も

あ ります。 しか し、 基 本的 には 「行動 論」 の立 場で 校長 の お仕 事 を して いた だき た いので す。「ど

うせ や って も無理」 と諦めず にい き まし ょう と申 し上 げた いの です。

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そ こで、「リー ダー シ ップは行動 」で あ る こ とを強 調す る立 場 か ら、 P M 論 につ いて お話 した い と

思います。 これ は 3 年 ほ ど前 に亡 くな られ ま した三 隅二 不二 先 生 を中心 に ま とめ られ た ものです 。

三隅 先生 は私 の恩師 で もい らっ しゃい ま して、 ご一 緒 に研 究 をさせ て いただ き ま した。

これ まで 申 し上 げ ま したが、 P M 論 の基 本 は、「リー ダー シ ップは行 動 だ。 生 まれつ き の体 質 と

かで はな い」 とい う点 に あ ります。 もちろ ん、 そ れは校 長 先生 の リー ダー シ ップ につ いて も当て は

まるので す。 自分 の性 格 を変 える とい った ことで はな く、 や って いな い こ とをや る、 もっ と しな け

ればな らな い行動 がで き るよ うに練 習す る ことが重 要な のです 。◆ その 「しな ければ な らない行 動」

にP とM が あ る とい うのが、 P M 論 の 名前 の 由来 で す。 こ こで、P は 目標 を達成 す る ため に必 要 な行

動です。 英語 のP erfo rm an ce に、「遂 行」「実行」 といった意 味 が あ ります ので、そ の頭 文字 を とっ

てP 行動 と呼 び ます。 学 校 の 目標 を達 成 す るた め に教 師 に働 きか け るあ らゆる行 動 がP とい う こと

にな ります。 しか し、「目標 、 目標 」 と言 うばか りで は人 間集 団 は うま くいき ませ ん。 集 団が 健康

で あるた め には、 人間 関係 を維持 し、 ま とめて い く働 きか け も必 要 です。 そ こで、集 団 の保守 ・点

検 をす る、 壊 れ な い よ うに 日頃 か ら集 団 の健 康管 理 をす る と い う意 味 で、 M a in te n a n c e とい う英

語 を使 お う とい うわ けです。 これで P と M が 出て くるわ けで ござい ます 。

こ こまでは、「な るほ ど」 と思 って いた だ ける のです が 、 P につ いて は誤 解 され る ことが あ るの

で す。「そ うか 、 目標 達 成 か。 そ れ じゃあ プ レッ シ ャー (P re ssu re) をか け ま くる ことが大 事 な

んだ ろ う」。 こんな受 け止 め方 を され ます と大 い に困 る のです 。 じつは 、 目標 達成 のた め に取 られ

るP には、 圧 力 とは違 った大 事 なポイ ン トが ある のです。

それ を5 つ にに分 けて ご説明 しま しょ う。 まず、 第 1 の P は 「専 門的 な力」 です。 校 長先 生 には、

専 門性 に関わ る力が 求 め られ る のです。 そ れ は、 教 科 の専 門性 をは じめ として、そ の地 位 に期待 さ

れ る さま ざまな 力で す。 人 生 の専 門性 な どとい い ます と暖 味 にな ります が 、「校長 先 生 って 、す ご

いな」 とい う気持 ち を持 たせ る専 門性 です 。 これ を、「P rofe ssio n a lism 」 と い う英語 を使 え ば、

P の頭文字がついてきます。

そ の次 に、「大 局的 な見 方」 を挙 げ る こ とがで きます 。 若か った り、 経 験 が少 な い間 は全 体 を見

通す立場 にいませんので、大局的な見方 もできません。校長先生には、火の見櫓か ら町中を見渡 し

展 望す る力 もいる のです。 これ を英 語 で言 うな ら、「P e rsp e ctiv e」 とな るで しょ う。 仕事 の全 体 を

望 遠鏡 で遠 くまで覗 け るよ うな力 とい うこ とです 。

これ と似 て い るのです が、 時間軸 で見 通 しが き く こと も大変 に重 要 な要 素 にな ります。 先 の こ と

まで 見通す 力 です。「校長 先 生 ってす ごい よね。 先 の こ とをちゃ あん と読 んで らっ しゃるか ら…」。

部 下 た ちが こう した気 持 ち にな る よ うな影 響 の 与 え方 です 。 これ に 「P ro sp e ct」 と い う英 語 をあ

て た い と思 い ます 。P の第 3 番 目です 。

つ づ いて 4 番 目に挙 げ るの は計画 力です 。 これ まで の3 つ の要 因 を合 わせ た 結果 とい って もいい

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M

リー ダー シップの 4 タイプ

P と思 います が、 リー ダー には将 来 の

計画 をき ちん と立 て る力 が必要 な の

で す 。 ま さ に、「P la n n in g 」 の P と

い う こ とで す 。

そ して、 最 後 に くる のが圧 力 な の

で す。 文字 通 り 「p ress u re」 そ の も

ので す。 まず は 、4 つ のP が あ って、

そ れ に圧 力 のP が加 わ る こ とが大 事

なんですね。 プレッシャーは必要だ

けれ ど、 そ の 前 に 4 つ のP が 欠 け て

・い る と、 部下 た ち に 「圧 力」 として

すら感 じられ な い とい うこ とで ござい ます。

こう した前 提 の も とで、 P とM を組 み 合 わせ て リー ダ ー を 4 つ の タイ プに分 類 す る こ とに な りま

す(図)。 そ して、 そ の効 果 は どうな るか といい ます と、 校長 先 生 の リー ダー シ ップに よって 、 先

生方 の意 欲や 満 足度 、 チー ム ワー クが違 って くる と いう こ とで す。 一般 的 には、P M 〉M 〉P 〉p m とな

ります。 ご想像 の とお りで すね 。何 と言 って も、 P もM も しっか り発揮 す る こ とです 。P もM も弱 い

p m タイ プの リー ダー が最後 に くるの も納得 で き ます。 結果 は当た り前 と言 えば 当た り前 な んです 。

企業の 場合 には、 管理 者 の リー ダー シ ップが事故 率 に も影 響 します 。 た とえ ば、バ ス の営業 所長 さ

んの リー ダー シ ップタイ プに よって 、 事故 の発 生 件数 が違 う とい うデー タ も ござい ます。「何 とな

くイ ライ ラす る」「ス トレス を感 じ る」 といった精 神 衛 生的 な面 で も リー ダー シ ップが効 いて いる

ことが分か って い ます。 もちろ ん、P M タイ プの上 司の方 が、 部下 の気 持 も安定 してい るので す。

ここで 具体 的 なデ ー タ をお見 せ しま し ょう (図)。 これ は、 企 業 で調 査 した 結果 で ござ います け

れど、「仕事 に対 す る意 欲」 が リー ダー シ ッ プに よって違 って い る こ とが おわ か りだ と思 うます。

これ は部下 の 「仕事 に対 す る意欲 」 です。 管理 者 の リー ダー シ ップによ って、 同 じ組織 に所 属 して

いる従 業 員 の人 た ち の間 で もこれ だ け意 欲 の違 いが 出 ます よ と い う こ とで ござ い ます。 これ は、

「精 神衛 生」 や 「チー ム ワー ク」 な ど、 他 の重要 な要 因に つ いて も同 じ結 果が 得 られ て い ます。 ア■

メ リカ では考 え られ ない ことで し ょうが 、 日本 の場合 は給与 満足 です らこうい う傾 向 が出 ます。 給

与は 同 じで も、 リー ダー シ ップの あ り方 によ って、 満足 して いる人 た ち もいれば、 不満 タ ラタ ラの

方も い ら っ し ゃ る と い う こ と で ご ざ い ま す 。

と ころで 、 こうした情報 を見 られ ま して、「自分は、 P もM もや って いるな」 と思 ってお られ る校

長先 生 も多 い と思 い ます。 じつは、 リー ダー シ ップは こ こが大 きな ポイ ン トにな ります 。私 た ち の

研究 で は、 リー ダー シ ップのタイ プは部 下評 価 で決 め る ことに して い るのです 。 リー ダー 自身 の思

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田 田由 ・

駕田

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い込 み で決 め る の は 止 め ま し ょ う

とい う こ とで す 。 そ の 理 由は 、 世

の中の管 理 者 は、 ご 自分 はP もM も

十分 に発 揮 して い る と考 え る 傾 向

をお 持 ち だ か らで す 。 で す か ら、

企業 な どで 調 査 し ます と、 自己 評

価は ピ カ ピカ の P M タイ プば か りに

なるわ けです 。 と ころが、 部下 に

聞 きます と 「い いや 、そ こまで し

てくれ て い な い 」 と い っ た こ と に

な る ん で す。 ご自分 が 思 っ て い る

ほどには通 じて いな い とい う事例 が け っ こう多 いわ けです。 そ ん な 羊 とで、 部 下評価 を大事 に して

いただ きた いので す。 もちろ ん、 校 長先 生方 にす ぐにで も部下 評価 の調 査 を しろ とい うつ も りは ご

ざい ませ ん。 た だ、部 下 との コ ミュニ ケー シ ョンを持 ち なが ら、 自分 が部 下か らどの よ うに見 られ

てい るか につ いて気 を配 って いた だ きた いのです 。

もちろん、 高 い 自己評価 をす る こと 自身 が間違 いだ と言 うつ も りはあ りませ ん。 私 として は、 自

己評価 は 高 くな い と困 る と思 うん です。 企 業 で調 査 を行 っ た際 に、 面 白い体 験 を し ま した。「あな

たね、 自己 評価 と部 下評価 にズ レが あ る、 ズ レが ある と偉そ うに言 うけ ど、私 なんか ズ レな どまっ

たくな いよ」 と言わ れ る方 が い らっ しゃっ たんで す。 私 は、 「そ ん な こ とはな い です よ。 そ うい

う方 に限 って ズ レが大 き いんです よ」 な ど と反論 した わけ です。 しか し、 相 手は 譲 らな いんで す。

そこで、「どう して そ んな に 自信 が あ るんです か」 と聞 きま した。す る と、「私 の職場 に来 て由 査 を

して み た らいい。 あな た が挙 げ た2 0項 目の行 動 なん て、 ま るでや って な いん だ か ら」 とい うお 話

なんです。 そ んな わ けで、 自己 評価 が も うピカ ピカ の p m です よ。 そ して部 下 に調査 した ら、 これ

また何 もや って くれ ない とい うわ けで ドンピ シヤの p m にな って、 自分 と部 下 の評価 が 一致 して い

るんです 。 しか し、 こんな もの リーダー シ ップ を発揮 して いな い とい うた だそれ だ けの話 なんで す。

まるで、 リー ダー シ ップ放 棄 とい うこ とです 。

私 は、 せ めて 自己評 価 はPM で あって ほ しい と思 い ます 。そ して 、部 下評 価 が低 か った場 合で も、

自分 の評価 を下 げ るので は な くて、 どうした ら評 価 され るか考 えて いた だき たいわ けで す。 それ が

健全 な リー ダー シ ップのあ り方 なん です。

ところで、 調査 の結果 が 出 ます と一 喜一 憂 しが ちです 。P M だ と喜 び、p m だ とガ ック リ とい うわ

け です。 しか し、 そ うした受 け止 め方 は どち ら も正解 じゃあ りませ ん。 なぜ な らば、 P M 論 は特 性

論 の立場 を取 らないか らで す。 リー ダー シ ップは あ くまで行 動 なの です。 つ ま り、 リーダ ー シ ップ

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は努 力す れ ば改 善 され ます し.、 怠 けれ ば悪 い方 向へ 向か う ことにな ります 。 これ は人 間 ドック と似

てい ます 。 ドック のデー タが来 て、 「あな た は大 丈夫 よ」 と言 われ た ら、「将来 もず っ と健康 だ」

と思わ れ ますか。 そ んな ことは あ りませ んね。 デー タ はあ くまで検査 時点 の ものな のです。 ど こか

が「おか しい よ」 と言 われ た ら、「ああ、 そ うか 。そ れ な らそ の改 善 の ため にチ ャ レンジ しよ う」

が正解 です 。そ れ で うま くいけ ば、健 康 だ って取 り戻せ るので す。 大事 な ことは、 リー ダー シ ップ

は刻 々 と変 化 す る とい うこ とを頭 に置 かれ て、 しっか り努 力 して いた だ く ことです。l

も う少 し、 リー ダー シ ッ プの 具体 的な側 面 をお 見せ しま し ょう。 世 の 中には い ろい ろな リー ダー

卿1 らっ しゃ います。 例 えば、「大 声で怒 鳴 りた て るだ け」「忙 しいそ うに して い る こ とに 自己満 足

して い る」「部 下 を育 成 しよ う としな い」「部下 の改 善提 案 を不 満 の表 れ とみ なす」「自分 の職務 に

自信が あ るが、部 下 に教 えな い」「部下 に仕 事 を任せ な いで抱 え込 む」「自分 の枠組 み か ら外 れ よ う

としな い」「逃 げの態 度 が多 く責任 を取 らな い」「周 りの情 勢 に無 関心」。 いかが で しょ うか 。 リー

ダー に こ うい う行動 パ ター ンの方 は、 け っ こ うい らっ しゃる のでほ な いです か。 この中 の 「大 声で

怒鳴 りたて るだけ だけ」な どは、 きわめ て強 いP タイ プだ と思 われ るか も しれ ませ ん。 プ レ ッシ ャー

をか けて い ます か らね。「仕 事 を任せ な いで抱 え込 む」 と い うの も、 仕事 が 出来 るか らP タイ プだ

と予 想 され るか も しれ ませ ん。 じつ は、 こ こで 挙 げた の は、 すべ たp m タイ プの リー ダー に見 られ

た んで す。 ただ 激 しい、 厳 しいだ けで は、 P す ら発 揮 して い る と認知 され な いわ け です 。「大 声 で

怒 鳴 りたて るだ け」 だ と認知 され た 瞬間 か ら、 そ れは 免疫 化 して いま うん です。「あ あ、校 長 は、

3 分間 だ け、『は い、 は い』 と言 ってお け ば、す ぐにお とな しくな るよ」 なん て言 われ だ した らお

しまいで ございます。

ともあれ 、 トップの影 響 力は大 き いんです 。 それ だ け責任 もあ るわ けで すね 。 もち ろん、 先生 方

はそ のあた りの ことは十二分 にご承知 の こ とでは あ りますが。 これ は最 近 の新 聞記事で すが、 ち ょっ

とあきれ る とい うか、 不謹慎 にも笑 って しまい ま した。 つ い先 日、 関西地 方 の ある県 で起 きた事 件

です 。 P T A が 主催 した運動 家 の打 ち上 げで、 校長 と教頭 が喧嘩 にな った らしいんで す。 日頃か ら

仲 が悪 か った ので しょうね。 会場 は し らけた と思 い ます が、 そ の時 は周 りか ら押 さえ られ て、騒 ぎ

はお さまった よ うで す。 ところが、 教頭 先生 は血 の気 が多 い のか、 帰宅後 に校 長 先 生 を魚 市場 へ呼

び 出 して い るんです ね。校 長先 生 もそれ に応 じて 出か けて い ったわ けで す。 しか も、 教頭 先生 は飲

酒運 転で 魚市場 で行 った とい うの です。 O K 牧場 の決 闘 じゃああ る まい し、何 と もあきれ て しま い

ます。 そ こで2 人は もみ合 いにな って 、校 長 先 生は意 識腹 膜 とな るわ けです 。そ して、 脳 内 出血 で

緊急 手術 を受 け る ことにな って しま った とい う、 信 じ られ な いよ うな話 で ござい ます。 こん な こと

は熊本県 で は起 こりよ うが な い とは思 い ますが 、 ともあれ組織 の トップが うま くいか な い と駄 目で

す よね。 校長 と教 頭が コミ ュニ ケー シ ョンを十 分 に とって、 同 じ方 向で学校 の経 営 を行 う。 そ れ は

当た り前 の話 な んです ね。 この2人 が うま くいって い ない ことは、 保護 者 にはす ぐに分 か ります 。

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もちろん、 子 どもに も伝 わ って しまい ます 。 ま こ とに恐 ろ しい世界 で ござい ます ね。

そ ろそ ろ終 わ りの時 間が 近 づ いて き ま した が、 ここで、 ス イ カの お話 を した い と思 い ます。「ス

イカ と塩」 の物 語 です。 熊本 は、 植木 のスイ カが 4 月の終 わ りぐ らいか ら食べ られ て いいで すね。

そのスイ カ を食べ よ う と、サ ッサ ッと塩 をか けた とき に、 ふ と疑 問 に思 ったん です。 スイ カ に塩 を

かけ る と甘 くな るって 本 当な んだ ろ うか と。 そ こでイ ンター ネ ッ トで調 べ てみ ま した。 や は り本 当

なんです ね。 私 たち の味覚 は塩 辛 さ と甘 さを感 じるまで に時 間的 なズ レがあ るの だそ うです 。 まず

は塩 辛 さを感 じて、 そ れ か ら甘 さを感 じる よ うにで きて い るん です ね 。 です か ら、 寒 い時 に4 0度

のお風 呂 に入 る と火傷 す るよ うに熱 いけれ ど、夏 は 平気 な の と同 じで、対 比効 果 が働 いて 本 当 に甘

く感 じるわ けです 。J

そ こで 思 いつ いた ので す が、 リー ダー シ ッ プで も、「叱 って ばか り」 で も 「甘 いばか り」 で もま

ずいんで すね 。 どち らかだ け だ と、 感 覚 はす ぐに麻 疹 して しま い ます か ら。「甘 い」 とい うのは誤

解を招 きやす い ので、「優 しさ」 と しま し ょう。 M に当 た りますね 。 そ して、「辛 い」 を 「厳 しさ」

と考 え る わ け で す 。 こ ち らは P に な り ま す 。 そ して 、 リ ー ダ ー に は 、「優 し さ」 と 「厳 し さ 」 の コ

ン ビネ ー シ ョンが 大事 なん です。 もっ と も、 味覚 の場 合 は、先 に 「塩 辛 さ」 を感 じる とい う順番 が

ある よ うで す が、 リー ダー シ ップ の場合 は、 どち らが先 に来 るべ きか は 人 によ って 違 って き ます

よね。 先 に厳 し くして、 優 し くす る方 が い いのか 。優 しさ先行 な のか は相 手 によ って違 い ます か

ら、先 生方 に対す る校 長 として の リー ダー シ ップの 出 し ど ころは 変わ る と思 い ます 。

そ して、最 後 に教師 力 の式 につ いてお 話 ししま したが、 校長 先 生 の リー ダー シ ップにつ いて も同

じこ とが言 え る と思 い ます 。専 門力 と人 間 力のか け算 で す。 先 生方 も、 P の 力 に人 間力 を掛 け て い

ただ きた い と思 い ます 。 間違 って も人 間力 がゼ ロや マイ ナス にな らな いよ うに ご注 意 くだ さ います

よ うに。わ た しは、 リー ダー は 「ミニ カ リスマ」 にな って いた だ きた い と思 って い ます 。 カ リスマ

とい うのは、 自分 の前 に いな いで すね。 見 た ことはな いけれ ど も、崇 め奉 れ とい うわ けで す。 そ の

意 味では ビ ン・ ラデ ィンみた いな人 はカ リスマ で し ょうけれ ど も、私 は リー ダー は 「ミニ カ リスマ」

で あ るべ き だ と思 って い ます 。そ れ は、 目の 前 に実 在 して い る人で あ り、 尊敬 と憧 憤 を 引き起 こす

人 なん です。 こ こにお集 ま りの先生方 には、 これ まで 以上 に、部 下 た ちか ら 「あの校 長先 生 につ い

て い きた いな」 とい う気持 ち を引 き出す 「ミニ カ リス マ」 にな って い ただ きた い と思 い ます。

時間 にな りま した ので、 これ で終 らせ て いただ きた い と思 い ます。 ご清聴、 あ りが とう ござい ま

した 。

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