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診療放射線技術科学科論集 第 14 号 (2016)
CdTe半導体検出器を用いた異なるターゲットを有する乳房撮影装置間のX線スペクトルの評価
(平成 28 年 11 月 25 日受理)
近藤 祐樹1)、金子 順一 2)、青木 清 2)
1) 立正佼成会附属佼成病院 2) 駒澤大学医療健康科学部
乳房撮影装置の品質管理において、装置から発生する X 線の線質を評価することは非常に重要である。X
線の線質測定法にはアルミニウムや銅のフィルタを用いた半価層測定法や X 線スペクトル測定法がある。X
線管から発生する X 線は連続スペクトルであるため、より詳細な線質評価を行う場合は X 線スペクトル測
定法が適している。本研究では駒澤大学に備わる 2 台の乳房 X 線撮影装置を用いてスペクトル測定を行い、
異なるターゲットやフィルタでの線質の違いを検証した。さらに圧迫板の有無による影響を、電離箱による
実測値とスペクトルから評価を行った。
乳房撮影装置には東芝メディカル社製の MGS100B(以下 TOSHIBA)と富士フイルム社製 FDR MS-1000(以
下 FUJI)を使用した。TOSHIBA はターゲットに Mo、フィルタには Mo と Rh を使用し、FUJI はそれに加え
W ターゲットも使用している。実験では管電圧 25, 28, 30, 32 [kV] におけるスペクトルを測定した。さらに
圧迫板の有無による影響を調べるため FUJI では圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態の両方を測定し、
さらに電離箱による線量測定も行った。
X 線スペクトル測定の結果、TOSHIBA に比べ FUJI では低エネルギー領域の光子数が少なく、相対的に特
性 X 線が多く出ていることがわかった。Mo フィルタ、管電圧 28kV での平均エネルギーは、TOSHIBA で
16.6 [keV]、FUJI で 17.4 [keV] となり、FUJI の方が硬い線質であった。W ターゲットの測定では他のターゲッ
ト、フィルタに比べて低エネルギー領域の光子数が最も少なかった。管電圧 28kV での平均エネルギーは
19.6[keV] となり、最も硬い線質であった。圧迫板の有無による違いは、スペクトル上では低エネルギー領域
でわずかに見られるのに対し、電離箱による線量測定では違いが大きくなった。Moターゲット、Moフィルタ、25kV の条件において、圧迫板無に対する圧迫板有のとき約 3 割の線量低下が見られた。この線量減少率は、
軟線成分の多い撮影条件ほど大きくなった。これは空気の質量エネルギー吸収係数がエネルギーが低いほど
大きな値となるため低エネルギー X 線が多くなる撮影条件で違いが大きくなったと考えられる。
1. 諸言
乳がんによる死亡者数は近年増加傾向にあり、
女性のがんによる死亡原因の 5 位 [1] となっている。
このため、乳がんの早期発見・治療は若年層を含
む女性にとって重要である。現在の乳がん検診で
は、、問診及び乳房エックス線検査(以下マンモグ
ラフィー)が行われている[2]。乳房は比較的放射
線感受性が高いため、マンモグラフィーによる被
ばくを十分考慮し、撮影条件の最適化や被ばく線
量の低減を行うことが強く求められる[3]。マンモ
グラフィーでは、微細でコントラス差の少ない被
写体を撮影するために、他の部位とは異なり低エ
ネルギーの X 線が用いられる。これまでは X 線管
焦点ターゲットにモリブデン (Mo)、付加フィルタ
に Mo 及びロジウム (Rh) を使用した撮影装置が主
に用いられてきた。また、近年ではターゲットに
タングステン (W) を用いた撮影装置も、デジタル
化の進展に伴い普及してきている。
これら様々な乳房撮影装置から発生する X 線の
線質を評価することは、乳房撮影における品質管
理において非常に重要である。American College of
Radiology(ACR)の定めた評価法 [4] や European
Reference Organisation or Quality Assured Breast
Screening and Diagnostic Services(EUREF)の定め
たガイドライン[5]による評価法では、線質の影響
についてはターゲット・付加フィルタ及び半価層
でのみ考慮しているが、X 線の線質評価において
は、スペクトルを測定することが最も本質的であ
1
る。また、X 線のスペクトルデータはモンテカル
ロ計算などを行う際にも非常に重要な基礎データ
となる。X 線のスペクトル測定に多用されている
CdTe 半導体検出器は、高計数率環境下でパイル
アップ現象により正確なエネルギー測定ができな
くなる。このため、計数率を適切な範囲に制限す
る必要がある。しかしながら、乳房撮影装置は他
の X 線撮影装置と比較して乳房支持台の存在によ
り X 線管焦点 - 検出器間距離を大きくすることが
できないため、計数率を制限することが非常に困
難である。
本研究では、開口径が非常に微小な W コリメー
ターと精密なゴニオステージを組み合わせて用い
ることで、異なるターゲット - 付加フィルタの組
み合わせを持つ乳房撮影装置の線質を、X 線スペ
クトルを直接測定することによって評価すること
が目的である。また、電離箱線量計を用いた線量
測定をあわせて行い、乳房圧迫版の影響について
も評価を行う。
2. 実験方法
2.1. X 線スペクトル測定
X 線スペクトル測定の実験配置の概要を図 1 に
示す。使用した乳房撮影装置は、駒澤大学に設置
されている MG100B(東芝メディカル社製、以下
TOSHIBA)、 FDR MS-1000(富士フイルム社製、以
下 FUJI) の 2 台を使用した。X 線スペクトル測定
には、CdTe 検出器として XR-100T-CZT を持つ、
RAMTEC-413(東洋メディック社製)を使用した。
CdTe 検出器が X 線管焦点に対し正確に指向す
るようゴニオステージで微調整を行う。検出器に
入射する光子数が多くなることで発生するパイル
アップ現象を防ぐために CdTe 検出器の前には W
コリメータを設置し、入射光子数を制限した。位
置合わせの段階から小さな径のコリメータを使用
すると、X 線焦点を見つけることが非常に困難と
なる。そのため位置合わせの段階では、X 線管焦
点と検出器の間にポリエチレン板を挟み光子数を
制限しつつ、大きめの径のコリメータを使用して
焦点位置を探した。その後徐々にコリメータ径を
小さくした。最終的に 0.035mm 径の W コリメー
タを使用し、位置合わせ時に使用したポリエチレ
ン板は取り除いた。
X 線スペクトル測定条件は、それぞれの乳房撮
影装置ごとに以下のように決定した。
・TOSHIBA
ターゲットとフィルタの組み合わせはモリブデ
ン-モリブデン(以下 Mo/Mo)とモリブデン-
ロジウム(以下 Mo/Rh)である。管電圧は 25kV,
28kV, 30kV, 32kV と変化させた。パイルアップ現
象を防ぐため、管電流は最小設定である 16mA と
した。撮影時間は 1.0s とし、測定される光子の総
計数が 5 万カウント前後になるまで曝射を繰り返
した。
・FUJI
ターゲットとフィルタの組み合わせはTOSHIBA
のものに加え、さらにタングステンターゲット-
ロジウムフィルタ(以下 W/Rh)でも同様の管電
圧で測定を行った。測定の際には、FPD を保護す
るため FPD の全面に鉛版を置いて行った。FUJI
では撮影条件の設定が管電圧と mAs 値のみのた
め、管電流や撮影時間を細かく設定することが出
来ない。そのため複数の mAs 値における撮影時間
をコンパクト X 線アナライザ Rapidose(Radcal 社
製)を使用して測定し、パイルアップが起きない
程度の mAs 値で測定を行った。TOSHIBA と同様
に、総計数は 5 万カウント程度になるまで曝射を
繰り返した。また、圧迫板の有無による影響を調
べるため圧迫板を取り外した状態でも同様な測定
を行った。
2
図 1. X線スペクトルの測定配置
乳房用X線管球 X線管焦点
圧迫版
コリメータ
ゴニオステージ
マルチチャンネルアナライザー
CdTe半導体検出器
2.2. 電離箱による線量測定
FUJIの線量を電離箱を用いて測定した。使用し
た電離箱は、軟 X線用0.2cc平行平板電離箱N23344
(PTW社製)であり、これを UNIDOS 線量計(PTW
社製)に接続して使用した。電離箱の測定位置
は FUJI の装置に付属する品質管理プログラムに
従い、胸壁端から 6cm、高さが 4cm の点とした。
mAs 値は 10mAs で一定とし、スペクトル測定と同
じターゲット、フィルタ、管電圧で測定した。圧
迫板は、圧迫板からの散乱線の影響を防ぐため、
電離箱より 30cm 上の位置に設置した。また、圧
迫板による線量の影響を調べるため、圧迫板を取
り外した状態でも測定を行った。
3. 結果
3.1. X 線スペクトル測定結果
Mo/Mo の条件における TOSHIBA の X 線スペク
トルを図 2 に、FUJI の X 線スペクトルを図 3 に示
す。横軸はエネルギー [keV]、縦軸は総光子数が 1
となるよう規格化してある。
図2,3ともに、Mo ターゲットから放出される2本
の特性 X 線によるエネルギーピークが見られる。
また、モリブデンフィルタの K 吸収端が20keVのた
め、20keV 以上の光子が選択的に吸収されている。
Mo/Mo, 管電圧 28kV における X 線スペクトル
を、FUJI と TOSHIBA で比較した結果を図 4 に
示す。TOSHIBA に比べ FUJI では低エネルギー側
の光子数が減少し、軟線成分が抑えられていた。
また、特性 X 線は FUJI のほうが多く出ており、
28kV の条件では 2 つの特性 X 線ピークの計数は
TOSHIBA に比べ 54.7%増加した。
Mo/Rh の条件での TOSHIBA の X 線スペクトル
を図 5 に、FUJI の X 線スペクトルを図 6 に示す。
図 5,6 ともに、Mo ターゲットによる 2 本の特性 X
診療放射線技術科学科論集 第 14 号 (2016)
3
図 2. Mo/Moのスペクトル(TOSHIBA)
図 3. Mo/Moのスペクトル (FUJI)
図 4. Mo/Mo,管電圧 28[kV]の装置による比較
図 5. Mo/Rhのスペクトル (TOSHIBA)
図 6. Mo/Rhのスペクトル (FUJI)
度になるまで曝射を繰り返した。また、圧迫板の有無に
よる影響を調べるため圧迫板を取り外した状態でも同様
な測定を行った。
2.2 電離箱による線量測定
FUJIの線量を電離箱を用いて測定した。使用した電離
箱は、軟X線用 0.2 cc平行平板電離箱 N23344 (PTW社
製)であり、これをUNIDOS線量計(PTW社製)に接続
して使用した。電離箱の測定位置はFUJIの装置に付属す
る品質管理プログラムに従い、胸壁端から 6cm、高さが
4cmの点とした。mAs値は 10mAsで一定とし、スペク
トル測定と同じターゲット、フィルタ、管電圧で測定し
た。圧迫板は、圧迫板からの散乱線の影響を防ぐため、
電離箱より 30cm上の位置に設置した。また、圧迫板に
よる線量の影響を調べるため、圧迫板を取り外した状態
でも測定を行った。
3. 結果
3.1 X線スペクトル測定結果
Mo/Moの条件における TOSHIBAの X線スペクトル
を図2に、FUJIのX線スペクトルを図3に示す。横軸は
エネルギー[keV]、縦軸は総光子数が1となるよう規格化
してある。
図2.Mo/Moのスペクトル(TOSHIBA)
図 2,3 ともに、Mo ターゲットから放出される2本の
特性X線によるエネルギーピークが見られる。また、モ
リブデンフィルタのK吸収端が 20keVのため、20keV以
上の光子が選択的に吸収されている。
Mo/Mo,管電圧 28kVにおけるX線スペクトルを、FUJI
と TOSHIBA で比較した結果を図4に示す。TOSHIBA
に比べFUJIでは低エネルギー側の光子数が減少し、軟線
成分が抑えられていた。また、特性X線は FUJIのほう
が多く出ており、28kVの条件では 2つの特性X線ピー
クの計数はTOSHIBAに比べ54.7%増加した。
図3.Mo/Moのスペクトル(FUJI)
図 4.Mo/Mo,管電圧 28[kV]の装置による比較
Mo/Rhの条件でのTOSHIBAのX線スペクトルを図 5
に、FUJIのX線スペクトルを図 6に示す。図5,6とも
に、Moターゲットによる2本の特性X線のピークが見
られる。また、Rhフィルタの K吸収端が 23.2keVのた
めMoフィルタに比較して高エネルギー成分が多くなり、
線質は硬化した。
Mo/Rh,管電圧28kVにおけるFUJIとTOSHIBAの比較
を図 7に示す。Moフィルタのときと同様にFUJIでは低
エネルギー成分が減少し、特性X線もTOSHIBAより多
くなった。
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0.02
0.03
0.04
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相対光子数
エネルギー[keV]
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28kV
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相対光子数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
度になるまで曝射を繰り返した。また、圧迫板の有無に
よる影響を調べるため圧迫板を取り外した状態でも同様
な測定を行った。
2.2 電離箱による線量測定
FUJIの線量を電離箱を用いて測定した。使用した電離
箱は、軟X線用 0.2 cc平行平板電離箱 N23344 (PTW社
製)であり、これをUNIDOS線量計(PTW社製)に接続
して使用した。電離箱の測定位置はFUJIの装置に付属す
る品質管理プログラムに従い、胸壁端から 6cm、高さが
4cmの点とした。mAs値は 10mAsで一定とし、スペク
トル測定と同じターゲット、フィルタ、管電圧で測定し
た。圧迫板は、圧迫板からの散乱線の影響を防ぐため、
電離箱より 30cm上の位置に設置した。また、圧迫板に
よる線量の影響を調べるため、圧迫板を取り外した状態
でも測定を行った。
3. 結果
3.1 X線スペクトル測定結果
Mo/Moの条件における TOSHIBAの X線スペクトル
を図2に、FUJIのX線スペクトルを図3に示す。横軸は
エネルギー[keV]、縦軸は総光子数が1となるよう規格化
してある。
図2.Mo/Moのスペクトル(TOSHIBA)
図 2,3 ともに、Mo ターゲットから放出される2本の
特性X線によるエネルギーピークが見られる。また、モ
リブデンフィルタのK吸収端が 20keVのため、20keV以
上の光子が選択的に吸収されている。
Mo/Mo,管電圧 28kVにおけるX線スペクトルを、FUJI
と TOSHIBA で比較した結果を図4に示す。TOSHIBA
に比べFUJIでは低エネルギー側の光子数が減少し、軟線
成分が抑えられていた。また、特性X線は FUJIのほう
が多く出ており、28kVの条件では 2つの特性X線ピー
クの計数はTOSHIBAに比べ54.7%増加した。
図3.Mo/Moのスペクトル(FUJI)
図 4.Mo/Mo,管電圧 28[kV]の装置による比較
Mo/Rhの条件でのTOSHIBAのX線スペクトルを図 5
に、FUJIのX線スペクトルを図 6に示す。図5,6とも
に、Moターゲットによる2本の特性X線のピークが見
られる。また、Rhフィルタの K吸収端が 23.2keVのた
めMoフィルタに比較して高エネルギー成分が多くなり、
線質は硬化した。
Mo/Rh,管電圧28kVにおけるFUJIとTOSHIBAの比較
を図 7に示す。Moフィルタのときと同様にFUJIでは低
エネルギー成分が減少し、特性X線もTOSHIBAより多
くなった。
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相対光子数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
度になるまで曝射を繰り返した。また、圧迫板の有無に
よる影響を調べるため圧迫板を取り外した状態でも同様
な測定を行った。
2.2 電離箱による線量測定
FUJIの線量を電離箱を用いて測定した。使用した電離
箱は、軟X線用 0.2 cc平行平板電離箱 N23344 (PTW社
製)であり、これをUNIDOS線量計(PTW社製)に接続
して使用した。電離箱の測定位置はFUJIの装置に付属す
る品質管理プログラムに従い、胸壁端から 6cm、高さが
4cmの点とした。mAs値は 10mAsで一定とし、スペク
トル測定と同じターゲット、フィルタ、管電圧で測定し
た。圧迫板は、圧迫板からの散乱線の影響を防ぐため、
電離箱より 30cm上の位置に設置した。また、圧迫板に
よる線量の影響を調べるため、圧迫板を取り外した状態
でも測定を行った。
3. 結果
3.1 X線スペクトル測定結果
Mo/Moの条件における TOSHIBAの X線スペクトル
を図2に、FUJIのX線スペクトルを図3に示す。横軸は
エネルギー[keV]、縦軸は総光子数が1となるよう規格化
してある。
図2.Mo/Moのスペクトル(TOSHIBA)
図 2,3 ともに、Mo ターゲットから放出される2本の
特性X線によるエネルギーピークが見られる。また、モ
リブデンフィルタのK吸収端が 20keVのため、20keV以
上の光子が選択的に吸収されている。
Mo/Mo,管電圧 28kVにおけるX線スペクトルを、FUJI
と TOSHIBA で比較した結果を図4に示す。TOSHIBA
に比べFUJIでは低エネルギー側の光子数が減少し、軟線
成分が抑えられていた。また、特性X線は FUJIのほう
が多く出ており、28kVの条件では 2つの特性X線ピー
クの計数はTOSHIBAに比べ 54.7%増加した。
図3.Mo/Moのスペクトル(FUJI)
図 4.Mo/Mo,管電圧 28[kV]の装置による比較
Mo/Rhの条件でのTOSHIBAのX線スペクトルを図 5
に、FUJIのX線スペクトルを図 6に示す。図5,6とも
に、Moターゲットによる2本の特性X線のピークが見
られる。また、Rhフィルタの K吸収端が 23.2keVのた
めMoフィルタに比較して高エネルギー成分が多くなり、
線質は硬化した。
Mo/Rh,管電圧28kVにおけるFUJIとTOSHIBAの比較
を図 7に示す。Moフィルタのときと同様にFUJIでは低
エネルギー成分が減少し、特性X線もTOSHIBAより多
くなった。
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図 5.Mo/Rhのスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rhのスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/RhのX線スペクトルを図 8に示す。Wターゲット
の場合、K特性X線は 59.3keVと 67.2keVのため乳房撮
影の領域では特性X線によるピークは見られない。また
WターゲットのフィルタにはRhが使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJIの装置においてMoターゲットとWターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rhのスペクトル
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.MoターゲットとWターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットがMoのとき、
RhフィルタよりもMoフィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響はMoターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
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エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
図 5.Mo/Rhのスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rhのスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/RhのX線スペクトルを図 8に示す。Wターゲット
の場合、K特性X線は 59.3keVと 67.2keVのため乳房撮
影の領域では特性X線によるピークは見られない。また
WターゲットのフィルタにはRhが使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJIの装置においてMoターゲットとWターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rhのスペクトル
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.MoターゲットとWターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットがMoのとき、
RhフィルタよりもMoフィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響はMoターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
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相対光子数
エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
線のピークが見られる。また、Rh フィルタの K
吸収端が 23.2keV のため Mo フィルタに比較して
高エネルギー成分が多くなり、線質は硬化した。
Mo/Rh, 管電圧 28kV における FUJI と TOSHIBA の
比較を図 7 に示す。Mo フィルタのときと同様に
FUJI では低エネルギー成分が減少し、特性 X 線も
TOSHIBA より多くなった。
W/Rh の X 線スペクトルを図 8 に示す。W ター
ゲットの場合、K 特性 X 線は 59.3keV と 67.2keV
のため乳房撮影の領域では特性 X 線によるピーク
は見られない。また W ターゲットのフィルタには
4
図 5.Mo/Rhのスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rhのスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/RhのX線スペクトルを図 8に示す。Wターゲット
の場合、K特性X線は 59.3keVと 67.2keVのため乳房撮
影の領域では特性X線によるピークは見られない。また
WターゲットのフィルタにはRhが使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJIの装置においてMoターゲットとWターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rhのスペクトル
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.MoターゲットとWターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットがMoのとき、
RhフィルタよりもMoフィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響はMoターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0 10 20 30
相対光子数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
25kV
28kV
30kV
32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
0.00
0.01
0.01
0.02
0.02
0.03
0.03
0.04
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 10 20 30
相対光子数
エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
図 5.Mo/Rhのスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rhのスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/RhのX線スペクトルを図 8に示す。Wターゲット
の場合、K特性X線は 59.3keVと 67.2keVのため乳房撮
影の領域では特性X線によるピークは見られない。また
WターゲットのフィルタにはRhが使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJIの装置においてMoターゲットとWターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rhのスペクトル
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.MoターゲットとWターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットがMoのとき、
RhフィルタよりもMoフィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響はMoターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0 10 20 30
相対光子数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
25kV
28kV
30kV
32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
0.00
0.01
0.01
0.02
0.02
0.03
0.03
0.04
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 10 20 30
相対光子数
エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
図 7. Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
図 8. W/Rhのスペクトル
図 9. Moターゲットと Wターゲットの比較 28[kV]
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
Rh が使用されているため、23.2keV 以上のエネル
ギーを持つ光子は選択的に吸収されている。
FUJI の装置において Mo ターゲットと W ターゲッ
トのスペクトルを比較したものを図 9 に示す。低
エネルギー側では Mo/Mo,Mo/Rh,W/Rh の順に光子
数が減少し、W ターゲット使用時で最も軟線成分
が減少した。
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した
状態のスペクトルを図 10 ~図 14 に示す。縦軸は
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
3.2 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線量結
果を表1に示す。また、この線量測定の結果をもとに圧
迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率を図
15に示す。同じ管電圧の条件ではWターゲットよりも
Moターゲットで線量は多くなった。また、Moターゲッ
トでは、RhフィルタよりもMoフィルタで線量は多くな
った。また図 15より線量の減少率はMo/Moの条件で最
も大きくなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3割低下した。W/Rhでは変化は小さくなった。
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板あり
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
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1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
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0 5 10 15 20 25 30 35
光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
3.2 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線量結
果を表1に示す。また、この線量測定の結果をもとに圧
迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率を図
15に示す。同じ管電圧の条件ではWターゲットよりも
Moターゲットで線量は多くなった。また、Moターゲッ
トでは、RhフィルタよりもMoフィルタで線量は多くな
った。また図 15より線量の減少率はMo/Moの条件で最
も大きくなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3割低下した。W/Rhでは変化は小さくなった。
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
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1
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0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板あり
圧迫板無し
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0.6
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1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
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0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
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0 5 10 15 20 25 30 35光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
3.2 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線量結
果を表1に示す。また、この線量測定の結果をもとに圧
迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率を図
15に示す。同じ管電圧の条件ではWターゲットよりも
Moターゲットで線量は多くなった。また、Moターゲッ
トでは、RhフィルタよりもMoフィルタで線量は多くな
った。また図 15より線量の減少率はMo/Moの条件で最
も大きくなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3割低下した。W/Rhでは変化は小さくなった。
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板あり
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
図 5.Mo/Rh のスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rh のスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/Rh のX 線スペクトルを図 8 に示す。W ターゲット
の場合、K特性X 線は 59.3keV と 67.2keV のため乳房撮
影の領域では特性X 線によるピークは見られない。また
W ターゲットのフィルタにはRh が使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJI の装置において Mo ターゲットと W ターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9 に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rh のスペクトル
エネルギー[keV]
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14 に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.Mo ターゲットとW ターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットが Mo のとき、
Rh フィルタよりもMo フィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響は Mo ターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0 10 20 30
相対光子
数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0
0.02
0.04
0.06
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0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子
数
エネルギー[kV]
25kV
28kV
30kV
32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対
光子
数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
0.00
0.01
0.01
0.02
0.02
0.03
0.03
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0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子
数
25kV28kV30kV32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 10 20 30
相対
光子
数
エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
図 5.Mo/Rh のスペクトル(TOSHIBA)
図 6.Mo/Rh のスペクトル(FUJI)
図 7.Mo/Rh,管電圧 28[kV]の装置による比較
W/Rh のX 線スペクトルを図 8 に示す。W ターゲット
の場合、K特性X 線は 59.3keV と 67.2keV のため乳房撮
影の領域では特性X 線によるピークは見られない。また
W ターゲットのフィルタにはRh が使用されているため、
23.2keV 以上のエネルギーを持つ光子は選択的に吸収さ
れている。
FUJI の装置において Mo ターゲットと W ターゲット
のスペクトルを比較したものを図 9 に示す。低エネルギ
ー側ではMo/Mo,Mo/Rh,W/Rhの順に光子数が減少し、W
ターゲット使用時で最も軟線成分が減少した。
図8.W/Rh のスペクトル
エネルギー[keV]
FUJI での圧迫板を取り付けた状態と取り外した状態のスペ
クトルを図 10~図 14 に示す。縦軸は圧迫板による光子の減弱
を見るために光子数の最大値が1となるよう規格化してある。
図 9.Mo ターゲットとW ターゲットの比較 28[kV]
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主に低
エネルギー領域で見られた。ターゲットが Mo のとき、
Rh フィルタよりもMo フィルタで違いが大きくなり、さ
らに管電圧が低いほど違いが大きくなった。
W ターゲットでは管電圧による違いはあまり見られ
ず、圧迫板の有無による影響は Mo ターゲットよりも小
さくなった。どの条件においてもスペクトル全体の形状
は大きな違いは見られなかった。
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0 10 20 30
相対光子
数
エネルギー[keV]
25kV28kV30kV32kV
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対光子
数
エネルギー[kV]
25kV
28kV
30kV
32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 5 10 15 20 25 30
相対
光子
数
エネルギー[keV]
TOSHIBA
FUJI
0.00
0.01
0.01
0.02
0.02
0.03
0.03
0.04
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子
数
25kV28kV30kV32kV
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0 10 20 30
相対
光子
数
エネルギー[keV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
圧迫板による光子の減弱を見るために光子数の最
大値が 1 となるよう規格化してある。
圧迫板の有無による違いはスペクトル上では主
に低エネルギー領域で見られた。ターゲットが
Mo のとき、Rh フィルタよりも Mo フィルタで違
いが大きくなり、さらに管電圧が低いほど違いが
大きくなった。
Wターゲットでは管電圧による違いはあまり見
られず、圧迫板の有無による影響は Mo ターゲッ
トよりも小さくなった。どの条件においてもスペ
クトル全体の形状は大きな違いは見られなかった。
3.2. 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線
量結果を表 1 に示す。また、この線量測定の結果
をもとに圧迫板無しに対する圧迫板有りのときの
線量減少率を図 15 に示す。同じ管電圧の条件では
W ターゲットよりも Mo ターゲットで線量は多く
なった。また、Mo ターゲットでは、Rh フィルタ
よりも Mo フィルタで線量は多くなった。また図
15 より線量の減少率は Mo/Mo の条件で最も大き
くなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3 割低下した。W/Rh では変化は小さくなった。
表 1. FUJIの各条件における線量測定結果
電圧 [kV] 線量[mGy]
圧迫板有 圧迫板無
Mo/Mo 25283032
0.660.991.231.48
0.941.341.631.95
Mo/Rh 25283032
0.510.760.961.17
0.660.981.211.46
W/Rh 25283032
0.220.300.360.41
0.270.360.430.49
診療放射線技術科学科論集 第 14 号 (2016)
5
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
3.2 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線量結
果を表1に示す。また、この線量測定の結果をもとに圧
迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率を図
15に示す。同じ管電圧の条件ではWターゲットよりも
Moターゲットで線量は多くなった。また、Moターゲッ
トでは、RhフィルタよりもMoフィルタで線量は多くな
った。また図 15より線量の減少率はMo/Moの条件で最
も大きくなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3割低下した。W/Rhでは変化は小さくなった。
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
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0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板あり
圧迫板無し
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0.2
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0.6
0.8
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1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
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0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
図 10. Mo/Mo,25[kV] 圧迫板の有無による比較
図 11. Mo/Mo,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 12. Mo/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 13. W/Rh,28[kV] 圧迫板の有無による比較
図 14. W/Rh,32[kV] 圧迫板の有無による比較
3.2 電離箱による線量測定結果
電離箱測定による FUJI の各々の条件における線量結
果を表1に示す。また、この線量測定の結果をもとに圧
迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率を図
15に示す。同じ管電圧の条件ではWターゲットよりも
Moターゲットで線量は多くなった。また、Moターゲッ
トでは、RhフィルタよりもMoフィルタで線量は多くな
った。また図 15より線量の減少率はMo/Moの条件で最
も大きくなり、圧迫板を入れることで 25kV では線量が
約 3割低下した。W/Rhでは変化は小さくなった。
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板あり
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
相対光子数
エネルギー[keV]
圧迫板有り
圧迫板無し
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 5 10 15 20 25 30 35
光子数
エネルギー[kV]
圧迫板有り
圧迫板無し
4. 考察
4.1. X 線スペクトル
TOSHIBA と FUJI のそれぞれの撮影条件で X 線
スペクトルから算出した平均エネルギーを表 2 に
示す。Mo/Mo、管電圧 28kV の条件で TOSHIBA
が 16.64[keV]、FUJI で 17.38[keV] となり FUJI の
ほうが平均エネルギーは高くなった。その他の条
件でも、管電圧を一定とした場合 FUJI の平均エネ
ルギーは TOSHIBA に比べ一様に高くなっていた。
これは図 4,7 からも見られたように、TOSHIBA に
比べ FUJI では低エネルギー領域の光子数が少な
く、かつ特性 X 線が多く出ていたためである。装
置に付属する仕様書より、固有ろ過はどちらの装
表 1. FUJIの各条件における線量測定結果
電圧[kV]線量[mGy]
圧迫板有 圧迫板無
Mo/Mo
25 0.66 0.94
28 0.99 1.34
30 1.23 1.63
32 1.48 1.95
Mo/Rh
25 0.51 0.66
28 0.76 0.98
30 0.96 1.21
32 1.17 1.46
W/Rh
25 0.22 0.27
28 0.30 0.36
30 0.36 0.43
32 0.41 0.49
図 15.圧迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少
率
4. 考察
4.1 X線スペクトル
TOSHIBAと FUJIのそれぞれの撮影条件で X線スペ
クトルから算出した平均エネルギーを表 2 に示す。
Mo/Mo、管電圧 28kVの条件でTOSHIBAが 16.64[keV]、
FUJIで 17.38[keV]となり FUJIのほうが平均エネルギー
は高くなった。その他の条件でも、管電圧を一定とした
場合FUJIの平均エネルギーはTOSHIBAに比べ一様に高
くなっていた。これは図4,7 からも見られたように、
TOSHIBAに比べFUJIでは低エネルギー領域の光子数が
少なく、かつ特性X線が多く出ていたためである。装置
に付属する仕様書より、固有ろ過はどちらの装置も
1.0mmBeであるため、FUJIのフィルタ厚はTOSHIBAに
比べ厚い可能性が示唆される。
Wターゲットによる測定では、図 9からもわかるよう
にMoターゲットに比べ低エネルギー領域で光子数が少
なく、高エネルギー領域で光子数が多くなった。表 2に
示すように、管電圧 28kV の条件での平均エネルギーを
比較した場合、Mo/Moで17.4[keV]、Mo/Rhで18.0[keV]、
W/Rhで 19.6[keV]となり、Wターゲットが最も高い値と
なった。このためタングステンターゲットは透過エネル
ギーの必要な厚い乳房の撮影に対して、低エネルギー光
子による被ばくを抑えつつ、適した撮影が行えると思わ
れる。
表 2. TOSHIBAとFUJIの平均エネルギー
4.2 電離箱による線量測定
図 15 に示すように、管電圧が一定の場合、圧迫版に
よる線量減少率はMo/Mo > Mo/Rh > W/Rh となった。ま
た、同じターゲット・フィルタの条件では管電圧が小さ
くなるほど線量減少率は大きくなり、軟線成分の多い条
件ほど線量減少率は大きくなった。その一方でスペクト
ル上の圧迫板の有無による違いは図 10~14 から見られ
たように低エネルギー光子でわずかに見られたのみで、
全体としては大きな違いは見られなかった。
スペクトル測定と線量測定で圧迫版の影響が異なっ
て表れた原因として、質量エネルギー吸収係数のエネル
ギー依存性が考えられる。空気の質量エネルギー吸収係
10
15
20
25
30
35
24 25 26 27 28 29 30 31 32 33
減少率
[%]
管電圧[kV]
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
平均エネルギー[keV]
管電圧
[kV]
TOSHIBA FUJI
Mo/Mo Mo/Rh Mo/Mo Mo/Rh W/Rh
25 15.84 16.81 16.72 17.76 19.16
28 16.64 17.36 17.38 18.04 19.59
30 17.00 17.67 17.73 18.30 19.89
32 17.50 18.04 18.11 18.62 20.31
図15. 圧迫板無しに対する圧迫板有りのときの線量減少率
置も 1.0mmBe であるため、FUJI のフィルタ厚は
TOSHIBA に比べ厚い可能性が示唆される。
W ターゲットによる測定では、図 9 からもわ
かるように Mo ターゲットに比べ低エネルギー領
域で光子数が少なく、高エネルギー領域で光子数
が多くなった。表 2 に示すように、管電圧 28kV
の条件での平均エネルギーを比較した場合、Mo/
Mo で 17.4[keV]、Mo/Rh で 18.0[keV]、W/Rh で
19.6[keV] となり、W ターゲットが最も高い値と
なった。このため透過エネルギーの必要な厚い乳
房の撮影に対して、W ターゲットは低エネルギー
光子による被ばくを抑えつつ、より適した撮影が
行えると思われる。
4.2. 電離箱による線量測定
図 15 に示すように、管電圧が一定の場合、圧迫
版による線量減少率は Mo/Mo > Mo/Rh > W/Rh と
なった。また、同じターゲット・フィルタの条件
では管電圧が小さくなるほど線量減少率は大きく
なり、軟線成分の多い条件ほど線量減少率は大き
くなった。その一方でスペクトル上の圧迫板の有
無による違いは図 10 ~ 14 から見られたように低
エネルギー光子でわずかに見られたのみで、全体
としては大きな違いは見られなかった。
スペクトル測定と線量測定で圧迫版の影響が異
なって表れた原因として、質量エネルギー吸収係
数のエネルギー依存性が考えられる。空気の質量
エネルギー吸収係数は 20[keV] で 0.5389[cm2/g]、
30[keV] で 0.1537[cm2/g] であり、X 線のエネルギー
が小さいほど大きな値となる [6]。よって線量への
寄与は低エネルギー X 線のほうが大きくなる。こ
のため、圧迫板の有無によるスペクトル上での変
化と比べて線量の変化が顕著となったと考えられ
る。
5. 結語
微小な開口径の W コリメータと精密なゴニオス
テージを組み合わせて用いることで、異なるター
ゲット - フィルタの組み合わせを有する乳房撮影
装置間の線質の違いを、X 線スペクトルを直接測
定することで評価することができた。スペクル測
定による TOSHIBA と FUJI の X 線の線質の比較
では、FUJI の方が低エネルギー側の光子数が少な
く、特性X線が多く出ていることがわかった。また、
W ターゲットでは Mo タ-ゲットに比べて X 線の
平均エネルギーが高くなることも示した。圧迫板
の有無による影響は、電離箱による線量測定で顕
著に見られ、圧迫板による線量減少は軟線成分が
多い条件ほど大きくなった。これは空気の質量エ
ネルギー吸収係数のエネルギー依存性によるもの
であると考えられる。
参考文献
[1] 厚生労働省 , 平成 26 年 人口動態統計
(2014)
[2] 厚生労働省 , がん予防重点健康教育及びがん
検診実施のための指針 , 健発第 0331058号(2016)
[3] Beckett JR, Kotre CJ, Michaelson JS. Analysis of
benefit: risk ratio and mortality reduction for the UK
Breast Screening Programme. Br J Radiol 2003 May;
76 (905): 309-20
[ 4 ] M a m m o g r a p h y A c c r e d i t a t i o n P r o g r a m
Requirements, 2002. American College of Radiology
[5] European Reference Organisation for Quality
Assured Breast Screening and Diagnostic Services,
2005. European guidelines for quality assurance
in breast cancer screening and diagnosis. Fourth
Edition
[6] J.H. Hubbell and S.M. Seltzer,Tables of X-Ray
Mass Attenuation Coefficients and Mass Energy-
Absorption Coefficients from 1 keV to 20 MeV for
Elements Z=1to 92 and 48 Additional Substances
of Dosimetric Interest, NISTIR 5632,(1995) (http://
physics.nist.gov/PhysRefData/XrayMassCoef/cover.
html)
6
表 2. TOSHIBA と FUJI の平均エネルギー平均エネルギー [keV]
管電圧[kV]
TOSHIBA FUJIMo/Mo Mo/Rh Mo/Mo Mo/Rh W/Rh
25283032
15.8416.6417.0017.50
16.8117.3617.6718.04
16.7217.3817.7318.11
17.7618.0418.3018.62
19.1619.5919.8920.31