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Copyright () 2000 by [email protected] 光物性講義 光物性講義 光物性講義 光物性講義 京都大学大学院理学研究科 田中耕一郎 1. 1. 1. 1. Introduction 別掲

光物性講義 - Kyoto U...QUIZ(第2回) 1.分散関係(2-11)を導け。 2.以下の電磁場 0 sin sin sin cos cos sin cos cos 0 0 0 0 = = = = = = z z y x y x E H

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光物性講義光物性講義光物性講義光物性講義

京都大学大学院理学研究科 田中耕一郎 1.1.1.1. Introduction別掲

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2.2.2.2. 光学の基礎光学の基礎光学の基礎光学の基礎

2-12-12-12-1 電磁波としての光電磁波としての光電磁波としての光電磁波としての光 ―電磁気学との橋渡し―電磁気学との橋渡し―電磁気学との橋渡し―電磁気学との橋渡し

さまざまな光源 ハロゲンランプ(OHP) レーザー シンクロトロン放射光 いずれも自由空間を伝播していく様はMaxwell方程式で記述可能。 このセクションでは真空または誘電体内の電磁波=光を考える。 すなわち、真電荷も真電流もないとする。

0

0

==jeρ

(2-1)

Maxwell 方程式 場 ),( trE , ),( trD , ),( trH , ),( trB ,

0

0

=⋅∇=⋅∇

∂∂=×∇

∂∂−=×∇

B

D

DH

BE

t

t

(2-2)

媒質方程式

HB

ED

µε

==

(2-3)

一般的にはε, µ はテンソル量。(2-1)の条件下、等方的媒質中ではスカラー量。 以下、一様な媒質を考える。すなわち、ε, µ に空間依存性はないものとする。

(2-2)と(2-3)から、

2

2

t∂∂−=×∇×∇ E

E εµ (2-4)

ベクトル解析の公式 AAA 2)( ∇−⋅∇∇=×∇×∇ と(2-2)から、

2

22

t∂∂=∇ E

E εµ (2-5)

が得られる。

εµ12 =c (2-6)

とおくと、(2-5)式は

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0),()1

(2

2

22 =

∂∂−∇ ttc

rE (2-7)

これは、波動方程式である。 一様な媒質中の波動方程式の解 本来 EEEEはベクトル場であるが、議論を簡単にするためにスカラー場とし、かつ1次元的(z方向)な伝播をするものとして以下議論する。 この場合(2-7)は以下のようになる。

0),()1

(2

2

22

2

=∂∂−

∂∂

tzEtcz

(2-8)

一般解 )/()/(),( cztgcztftzE ++−= (2-9)

第一項(第二項) +z(―z)方向に伝播していく波 ()の中が不変 → 位相不変 3次元では面になる 波面 波面が進行する速度 位相速度c

t = 0

t = δt z

z -c δt c δt 0

f g

図2-1 波面の進行と位相速度

波数空間でのMaxwell方程式の解

フーリエ成分 E(k,ω)

∫ −= ωω ω dzdekEtzE tiikz),(),( (2-10)

(2-8)に代入すると、 ck=ω (2-11) が得られる。(Quiz1)ここで、ω: 角振動数、k: 波数 と呼ばれる。 (2-11)は分散関係と呼ばれる。媒質中では複雑(3-1節)。 Eは観測量 ⇔ Eは実数

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ある角振動数、波を持つ解 ( )kztEE −= ωcos0 (2-12) または、

−= )(2cos0 λ

νπ ztEE (2-13)

ここに、 λ: 波長(m)、 ν: 振動数(Hz)

λππνω

2

2

=

=

k (2-14)

図2-2 波長と振動数 光の波長と振動数 緑-500 nm (10-9 m), 数百 THz(1012Hz) 場の複素表示

しばしば、(2-12)のような実数ではなく、(2-15)のような複素数の形

に場を表現することがある。この方が問題を解くときに便利。

)exp(0 kztEE −= ω (2-15)

この場合でも、物理的に意味のある解にするためには、最後に実数部分をとると

いう約束事にしておく。すなわち E → ( ))exp(Re 0 kztE −ω (2-16)

屈折率 真空中のε, µ をε0, µ0と書くと、真空中の光速(c0)が得られる。

8

000 10998.2

1 ×==µε

c (m/s) (2-17)

媒質中と真空中の光の位相速度の比を屈折率 nと呼ぶ。

λ

t

1/ν

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00

0

µεεµ==

c

cn (2-18)

3次元への拡張

(2-15)は次のように3次元に素直に拡張される。以下、真空中を考える。電場が

ある定数のフーリエ成分(2-19)で記述されるとする。

)exp(0 rkEE ⋅−= tω (2-19)

この場合、ひとつの解として

)exp(0 rkHH ⋅−= tω (2-20)

が存在する。(2-2),(2-3)から、

)(7.376

1

0

0

0

0

Ω==

×=

=⋅=⋅

εµ

z

z 00

00

EkH

HkEk

(2-21)

0k はk方向の単位ベクトル、zは輻射(真空)インピーダンス。 (2-21)は電場と磁場が波数ベクトルに垂直かつ互いに垂直であることを意味してい

る。これは、波面が平面であることをあらわしている。(平面波)

zk // の場合には、 xE と yE の2つの独立な解がある。(光の2つの独立な偏光成分)

QUIZ(第2回)QUIZ(第2回)QUIZ(第2回)QUIZ(第2回)

1.分散関係(2-11)を導け。 2.以下の電磁場

0

sinsin

cossin

sincos

coscos

0

0

0

0

==

=

=

=

=

zz

y

x

y

x

HE

tkzH

tkzH

tkzE

tkzE

ωε

ωε

ωµ

ωµ

(2-22)

がMaxwell方程式(2-2)、(2-3)を満たすことを示せ。この場合、ベクトルEEEEとHHHHの間の関係を導け。 また、ポインティングベクトル HES ×= はどうなるか? 以上から、(2-19)―(2-21)の解の場合と比較して、この解の物理

的意味を述べよ。

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2-22-22-22-2 幾何光学幾何光学幾何光学幾何光学 幾何光学はε が波長に比べてゆっくりと空間的に変化する場合に適用可能である。この時、光のエネルギーの伝播は「光線(ray)」として記述される。 2-2-12-2-12-2-12-2-1 アイコナール方程式アイコナール方程式アイコナール方程式アイコナール方程式

この節では、一様な媒質ではなく、誘電関数(誘電率)ε が空間依存性を持つ場合を考える。すなわち、 )(rεε = 。(ここでは、まだ時間依存性は考えない。3-1節で述べる。)

この時、屈折率 n、位相速度 cも以下のように空間依存性を持つ。µの空間依存性は考えず、真空中の値と同じにしておく。すなわち 0µµ =

)()(

)()(

)()(

0

0

rr

rr

rr

n

cc

n r

r

=

=

=

ε

εεε (2-23)

(2-23)を Maxwell 方程式(2-2)に代入する。いま、波長λ 、角振動数ωの光を

考える。 )(rεε = の変化が電場の空間変化(波長 kπλ 2= )よりゆっくりとしている場

合、すなわち

1<<∇εε

λ (2-24)

の場合、波動方程式

0),())(

1(

2

2

22 =

∂∂−∇ ttc

rEr

(2-25)

が得られる。(Quiz 3)以後、簡単のため、スカラー場 ),( trΨ を考える。

0),())(

1(

2

2

22 =Ψ

∂∂−∇ ttc

rr

(2-26)

単色光(角振動数ω)を扱っているので、以下の形の解を考える。 )()(),( tieat ωφ −=Ψ rrr (2-27) ここで )(ra を電場振幅、 )(rφ をアイコナールアイコナールアイコナールアイコナール1111と呼ぶ。共に実関数であるとする。 (2-27)を(2-26)に代入すると、

0))()()()(2())()(

))()(()(( 22

222 =∇+∇⋅∇++∇−∇ rrrrr

rrrr φφωφ aaia

caa

(2-28) 1 ギリシャ語のアイコン( νωεικ ~ )=像に由来。最近のコンピューター(Macを代表とするウィンドウシステム)にもたくさん入っているアイコンと語源は同じ。

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が得られる。 )(ra 、 )(rφ は実関数であるから、実部、虚部はそれぞれ0である。 故に、

0)()()()(2

0)()(

)()()(

2

2

222

=∇+∇⋅∇

=+∇−∇

rrrr

rr

rrr

φφ

ωφ

aa

ac

aa (2-29)

が得られる。ここまでは厳密である。次に、媒質( )(rε )の変化が電場の空間変化よりゆ

っくりとしている場合を考えていることから、以下の近似をする。 幾何光学近似幾何光学近似幾何光学近似幾何光学近似

電場振幅 )(ra ,アイコナール )(rφ は電磁波の空間変化((2-27)式 exponential part)に比べてゆっくりと変化する。 この場合、 0r の近傍で )(rφ をテーラー展開すると、

......))(()()( 00 +−∇+= 0rrrrr φφφ (2-30)

第2項は )( 0rk φ∇= とおくと、(2-19)式の空間依存性と同じ形をしている。 この類推から電磁波の波長λ は、

)(

22rk φ

ππλ∇

== (2-31)

で定義される。幾何光学近似幾何光学近似幾何光学近似幾何光学近似は、

1)(

)(22 <<∇

rr

a

aλ (2-32)

として(2-29)式の第一式の第一項を無視する近似である。 アイコナール方程式(アイコナール方程式(アイコナール方程式(アイコナール方程式(eikonal equationeikonal equationeikonal equationeikonal equation)))) 幾何光学近似のもとで、(2-29)の第一式は、

2202

22

)()(

)( rr

r nkc

==∇ ωφ (2-33)

と変形される。これをアイコナール方程式アイコナール方程式アイコナール方程式アイコナール方程式と呼ぶ。 アイコナール方程式が解け、 )(rφ がわかると、(2-29)式の第二式

0)()()()(2 2 =∇+∇⋅∇ rrrr φφ aa (2-34) から、電場振幅 )(ra を得ることができる。 以上から、誘電率が空間的に変化している場合でも、波長に比べてゆっくりと変化してい

る場合には、問題が解けることがわかる。

rrrr0 rrrr

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「幾何光学」では、アイコナール方程式の解 )(rφ から作られるベクトル )(rk φ∇= (2-35) の積分曲線が「光線」と一致する。 波面は .)( constt =−ωφ r により決定される。波面にとった任意の変位 rδ に対して、 0)( ==⋅∇=⋅ δφδφδ rrrk 故に、 )(rk φ∇= は波面に垂直。 光線の経路長を lとすると、

er =dl

d

は「光線」の接線ベクトルである。(2-33)、(2-35)より、

erer

r )()(

)( 0nkc==∇ ωφ (2-36)

故に、 )(

)()(

rr

rr

cdl

d

dl

d ωφφ =⋅∇= (2-37)

この式からアイコナール )(rφ は光線に沿った積分

)()()( 0

r

r

rrr

0

φφω −=∫ dlc

(2-38)

によりあたえられる。 ハミルトンの特性関数

)()(),( 00 rrrr φφφ −=H (2-39) これを用いるとアイコナール方程式は、

2

0

20

22 ))(

()(,))(

()(rr cc HH

ωφωφ =∇=∇

とかける。力学におけるHamilton-Jacobi方程式はこのアナロジーから導かれた。2

2 HamiltonHamiltonHamiltonHamilton----JacobiJacobiJacobiJacobi((((HJHJHJHJ)方程式)方程式)方程式)方程式のひとつの表現は以下のように与えられる。 ハミルトンの主関数 EtpqtpqS H −= ),(),,( φ から、導かれるハミルトンの特性関数

),( pqHφ をもちいると、運動方程式は 22 )(2)( pVEmH =−=∇ φ

となる。 歴史的には、ドブロイ波( ph=λ )の長波長近似(幾何光学近似)としてHJ方程式を考え、近似の前の波動方程式として、Schrodinger方程式が導かれた。(波動力学) このように、「幾何光学」の思考:Maxwell方程式→アイコナール方程式(「光線」の

方程式)の逆をたどって、HJ方程式(質点の力学)→Schrodinger方程式(波動方程式)が導かれたのは大変興味深い。

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2-2-22-2-22-2-22-2-2 フェルマーの原理とホイヘンスの原理フェルマーの原理とホイヘンスの原理フェルマーの原理とホイヘンスの原理フェルマーの原理とホイヘンスの原理

アイコナール方程式から「フェルマーの原理」を導出する。 アイコナール方程式(2-33)

220

2 ))(()( rnk=∇ φ (2-40)

において空間の尺度を、

),,()(),,( 220 dzdydxnkddd r=ςηξ (2-41)

と変更する。この時、空間の計量は、

)()( 222220

2222 dzdydxnkdddd ++=++= rςηξσ

となる。この空間でアイコナール方程式は、

1)()()( 222 =∂∂+

∂∂+

∂∂

ςφ

ηφ

ξφ (2-42)

と書き直すことができる。この方程式のひとつの解 )1( 222 =++++= cbacba ςηξφ (2-43) を考える。この空間では、 .const=φ の面は平行平面なので、それと直交する曲線は直線

となる。したがって、この解に対応する「光線」は直線となる。それ故、2点 P,Qを通る光線は積分

∫∫∫ ==Q

P

Q

P

Q

P c

dldlrnkd

)()(0 r

ωσ (2-44)

が極値をとるという条件になる。ここにdlはカーテシアン座標系での線要素である。

(2-44)式の ∫Q

P c

dl

)(rは PQ間を光が進む時間に相当する。したがって、(2-44)

式が極値をとるという条件は、以下のように記述可能である。 フェルマーの原理フェルマーの原理フェルマーの原理フェルマーの原理 「2点間を通る光は所要時間が最短(または、最長)となる経路を通る。」 と書き直すことが可能である。 フェルマーの原理の応用例フェルマーの原理の応用例フェルマーの原理の応用例フェルマーの原理の応用例

授業で、スネルの法則の導出や、「逃げ水」の定性的な説明をおこなう。 乞ご期待!

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以下、フェルマーの原理からホイヘンスの原理を導出する。 ホイヘンスの原理ホイヘンスの原理ホイヘンスの原理ホイヘンスの原理 「波源 P からでた並みの時間 t 後の波面を )(tPφ 、またこの波面の任意の点 Q からでた波の時間s後の波面をとすると、波源 P からの波の時間 t+s 後の波面 )( stP +φ はすべての

)()( tQs PQ φφ ∈ の包絡線である。」

図2-3 ホイヘンスの原理

<導出><導出><導出><導出> 授業でやります。 <ヒント>

)(sQφ は波面 )( stP +φ と接していることを示せばよい。もし交わっていた場合、どんな矛

盾が存在するか? QUIZ(第3回)QUIZ(第3回)QUIZ(第3回)QUIZ(第3回)

3.(2-24)の近似のもとで波動方程式(2-25)を導け。 4. 蜃気楼はなぜあらわれるのか?密度の高い空気ほど屈折率 n(rrrr)が大きいことを考慮して定性的に説明せよ。

Q’’

P Q’

Q

)(tPφ

)( stP +φ

)('' sQφ)(sQφ

)(' sQφ

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1n 2n

P Q

O 2αβ

1s 2s

1ζ 2ζ

r

2-2-32-2-32-2-32-2-3 レンレンレンレンズ系ズ系ズ系ズ系

カメラやメガネなど身近なものの中で活躍しているレンズを幾何光学の枠組み

で記述する。また、レンズの公式やレンズを組み合わせていったとき、どこに像が生

じるかを議論する。応用上も球面が作りやすいので、この節の議論は球面球面球面球面に限る。 (a)(a)(a)(a) 近軸近似近軸近似近軸近似近軸近似 図2-4の様に、屈折率 1n の物質と屈折率 2n の物質が半径 rの球面で接している場合

を考える。球の中心球の中心球の中心球の中心 OOOO をとおる直線を光軸と呼ぶをとおる直線を光軸と呼ぶをとおる直線を光軸と呼ぶをとおる直線を光軸と呼ぶ。球面左の光軸上の一点 P から、球面右の光軸上の1点 Qに光線が到達する場合を考える。

図2-4 近軸近似 屈折率は 12 nn > を満たしているとする。また、 0,, 21 >rss とする。 この時、サイン定理から

)sin(sin

sin)sin(

2

2

2

1

1

1

βπζ

θ

βζ

θπ

−=

=−

+

rs

rs

(2-45)

スネルの法則 2211 sinsin θθ nn = (2-46) より、

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1n 2n

P ),( 00 yx

0 x

Q ),( ii yx

2

2

1

2

1

1

ζζrs

n

nrs −=

+ (2-47)

が得られる。ここで光線が光軸からあまり離れないという近似(近軸近似)を

すると、 22,11 ζζ ≅≅ ss となるから、(2-47)式は

)1(122

1

1 s

r

n

n

s

r −=+ (2-48)

変形して、 r

nn

s

n

s

n 12

2

2

1

1 −=+ (2-49)

が得られる。この式はもはや、 1α や 2α に依存していないことから、1点 Pから発した近軸な光線はすべて Qを通ることがわかる。Pの像が Qにできることがわかる。 ここでいくつか例題を解こう。 例1.例1.例1.例1. 1,4,5.1,1 121 ==== rsnn の場合 この屈折率の組み合わせは、空気中のガラスの場合に相当している。(2-49)

を計算すると、 62 =s が得られる。Qに実像実像実像実像ができる。 例2.例2.例2.例2. 15.0,5.1,1 121 ==== rsnn の場合 例1とは異なり、 12 −=s となってしまう。これは球面境界の右側に像ができずに、

発散光となることを意味している。この場合、境界の左側のQに虚像虚像虚像虚像ができ、そこから、あたかも境界がないかのごとく光が伝わるという記述が可能である。(詳しくは

授業で) 例2のような場合も系統的に扱うために、以降は、図2-5のように座標系を定めて

記述する。ここでは、Pのx座標が負になっていることに注意。

図2-5 レンズ系を扱うための座標系

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この座標系では、

r

nn

x

n

x

n

i

122

1

1 −=+− (2-50)

この表記では、rが負の場合も扱うことが可能である。これは、図2-5において、

1n の側に球面がある場合に相当する(球の中心が負の側にある)。 例3例3例3例3. 1,2,5.1,1 121 −=−=== rxnn の場合

5.1−=ix となる。したがって、虚像となり発散光として振舞うことがわかる。 例4例4例4例4.平行光が入射する場合 例1の条件では、 ∞=1s とおくと、 32 =s となる。 例3の条件では、 −∞=0x とおくと、 3−=ix となる。

それぞれ、半径rの3倍(12

2

nn

n

−)の位置に実像または虚像ができることになる。

(b)(b)(b)(b) 薄いレンズの公式薄いレンズの公式薄いレンズの公式薄いレンズの公式 正の曲率の球面と負の曲率の球面が組合わさった場合の結象について考える。

図2-6 薄いレンズの公式 (2-50)式より、

'''233

0

2

122

0

1

r

nn

x

n

x

n

r

nn

x

n

x

n

i

i

−=+−

−=+−

(2-51)

レンズの厚さ dを以下のように定義する。 '0xxd i −= (2-52) (2-52)を(2-51)の第一式に代入すると、

)( 01 xP

)''( 03 ii xxxP +−

0x− ix '0x− 'ix

3n1n

0 0>r

2n

0'<r

)(2 ixP

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r

nn

dx

n

x

n 12

0

2

0

1

'

−=

++− (2-53)

ここで、「薄いレンズ」の近似をする。dは他の量に比べて非常に小さいものとする。

すなわち、 ',,', 00 rrxxd << (2-54)

この場合、(2-53)式は、

rnn

xn

xn 12

0

2

0

1

'−=+− (2-55)

となるから、これをもちいて、(2-51)の第二式に代入して '0x を消去すると以下

の式が得られる。

r

nn

r

nn

x

n

x

n

i

12233

0

1

''

−+

−=+− (2-56)

レンズの外側は空気であるとして、 131 == nn とし、 nn =2 とおくと、

r

n

r

n

xx i

1'

1'

11

0

−+−=+− (2-57)

が得られる。右辺を焦点距離 fの逆数であると定義する。

r

n

r

n

f

1'

11 −+−≡ (2-58)

fをもちいて(2-57)を書き直すと薄いレンズの公式薄いレンズの公式薄いレンズの公式薄いレンズの公式が得られる。

fxx i

1'

11

0

=+− (2-59)

となり、 b',0 →→− ixax と置き換えると「レンズの公式」としてよく知ら

れた形になる。

QUIZ(第4回)QUIZ(第4回)QUIZ(第4回)QUIZ(第4回)

5.図2-4の角度 1α が大きくなって近軸近似から外れる場合、球面の右側で光軸と交差する点は、Q の左右どちら側にずれるか?また、この効果は、Q における像にどのような影響をおよぼすか?

6.〔様々なレンズ様々なレンズ様々なレンズ様々なレンズ〕 レンズの材料を石英ガラスにすると、 5.1≈n となる。

(a)両凸レンズ( 0'>−= rr )の場合と、(b) 両凹レンズ( 0'<−= rr )の場

合について、焦点距離 f を求めよ。また、平行光はレンズからどのくらいの

距離で像をつくるか?

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(a)(a)(a)(a) ABCDABCDABCDABCD行列によるガウス光学系の記述行列によるガウス光学系の記述行列によるガウス光学系の記述行列によるガウス光学系の記述

光学系が光軸の周りに軸対称な系を考える。これをガウス光学系ガウス光学系ガウス光学系ガウス光学系と呼ぶ。ガウス光学系で

の結像を考えるために、以下のような座標系を考える。ここで光軸をz軸とする。

レンズなどの媒質で光線(図中の赤線)

p

xが写像されていくと考える。3

ここで、 )(zp は屈折率を考慮した波数であり、近軸近似(光軸とpのなす角が1より十分

小さい)のもとで次のようにあたえられる。

すなわち、 θndz

dxznzp ≅≡ )()( (2-60)

写像として、次のような1次写像を考える。

=

0

0

1

1

p

x

DC

BA

p

x (2-61)

ここで相反性4より、 DA = かつ 1det =

DC

BA (2-62)

が成立する(Quiz 7)。ここで、行列

DC

BAを ABCD行列と呼ぶ。

例1.例1.例1.例1. 屈折率 nの媒質中をz方向に dだけ進む場合の ABCD行列。

向きが変化しないから、 01 pp = , 0001 pn

dx

dz

dxdxx +=+= が成り立つ。

故に、

=

10

/1 nd

DC

BA (2-64)

3 力学において、質点が位相空間(x、p)内を運動することに対応している。 4 相反性: 逆向きに進む光線も同じ ABCD行列で記述出来るものとする。

すなわち、(2-61)の逆向き

=

− 1

1

0

0

p

x

DC

BA

p

x (2-63)

が成立するものとする。ここで光線は無機があるので、pの符号がマイナスであることに

注意すること。

z

x

x(z)

dz

dxnzp ≡)(

θ

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例2.例2.例2.例2. 平面境界 屈折率はpの中にすでに考慮されているので、近軸近似のもとで、

011111222221 sinsin pdz

dxnnnnn

dz

dxnp ==≈=≈≈= θθθθ

すなわち、

p

xという空間では何も変化しないことになる。

故に、

=

10

01

DC

BA (2-65)

例3.例3.例3.例3. 球面境界

左図および図2-5の表記で議論する。(2-49)式から、

xR

nnp

x

p

R

nnx

s

n

R

nnx

s

xnp

)(

)(

)(

120

012

1

112

221

−−=

−−−=

−−−=−=

となる。5 これより、

−=

1

0112

R

nnDC

BA (2-66)

QUIZ(第5回QUIZ(第5回QUIZ(第5回QUIZ(第5回 その1)その1)その1)その1)

7.相反性が成り立つとき、

DA = かつ 1det =

DC

BA であることを証明せよ。

8.焦点距離fのレンズに対する ABCD行列の表式を求めよ。

(解)

−=

1

101

fDC

BA (2-67)

5 第一式のマイナス符号は球面境界の右側はマイナスの傾きであることに由来する。

n1 n2

θ1

θ2

n1 n2

R

x

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((((bbbb))))ABCDABCDABCDABCD行列による結像論行列による結像論行列による結像論行列による結像論

上図のようにレンズによって物体 L0を L1に結像させることを考える。 物体 L0から空中をとんでレンズに入射して、また空中を飛んで結像点に至る訳だから、ABCD行列を使ってこの光線を記述すると、

−−

−+−=

=

0

0

0

1010

1

0

001

1

1

11

1

10

11

101

10

1

α

αα

L

f

z

f

f

zzzz

f

z

Lz

f

zL

(2-68)

このままだと、L1はα0に依存している。すなわち、L0を異なる向きに発した光は1点に集まらない。したがってα0の係数が0にならなければならない。

すなわち、 01010 =−+

f

zzzz となる。これは、薄いレンズの公式に等価である。

この場合、ABCD行列は

−−

1

0

0

1

1

0

z

z

f

z

z

(2-69)

となる。この行列の意味するところは、1 つのレンズによる像は反転し、0

1

z

z倍に拡

大されていることである。 (c)組み合わせレンズへの応用(c)組み合わせレンズへの応用(c)組み合わせレンズへの応用(c)組み合わせレンズへの応用 ABCD行列をもちいて組み合わせレンズについて考える。 まず、図のような H1平面から H2平面にいたる ABCD 行列を求めてみよう。空間の

ffff ffff L0

L1

z0

z1

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屈折率は簡単のために1であるとする。 の部分の ABCD行列をまず計算する。

+−−

−=

11

1

11

01

10

11

101

2

1

12f

d

F

df

d

f

d

f (2-70)

ただし、 2121

111ff

d

ffF−+= (2-71)

H1-H2全体の計算

−−−

−−−++−−=

+−−

F

x

f

d

F

F

xx

f

x

f

xdxx

F

x

f

d

x

f

d

F

df

dx

1

2

21

2

2

1

121

2

1

1

2

12

11

1

10

1

11

1

10

1

(2-72)

21, xx は任意なので、この表式が薄いレンズと等価になることを要求する。 すなわち、対角要素が1であることから、

0

0

1

2

2

1

=+

=+

F

x

f

d

F

x

f

d

(2-73)

である。(2-72)の ABCD行列の(1,2)成分に(2-73)を代入すると、0であることがすぐに示せる。(Quiz9) まとめると、 21, xx を(2-73)のように定めると、

x1 d x2

f1 f2

H1 H2

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ABCD行列は、

− 1

101

F (2-74)

となる。これは、薄いレンズの公式と等価であることから、H1-H2全体として一つの薄いレ

ンズとして考えればよいことがわかる。 この時、H1および H2面を「主平面主平面主平面主平面」とよぶ。したがって、複数の組のレンズに対しては、

主平面を考え、主平面から、物体、像までの距離に対してレンズの公式を用いる主平面から、物体、像までの距離に対してレンズの公式を用いる主平面から、物体、像までの距離に対してレンズの公式を用いる主平面から、物体、像までの距離に対してレンズの公式を用いるとよい。 例1.例1.例1.例1. 2つのレンズ(焦点距離f1、f2)を密接しておいた場合(d=0に相当)の合成焦

点距離fを求めよ。

(解)(2-67)より、21

111fff

+= である。(2-73)より、 21, xx はゼロになるから

レンズの位置が主平面になる。

(別解)行列

− 1

101

11

01

12 ffを計算する。

例2.例2.例2.例2. 1021 == ff [cm], d=40 [cm] の2つのレンズの組を考える。合成焦点距離 Fおよび主平面はどうなるか? 物体の主平面 H1からの距離を 10 [cm]とすると、主平面 H2からどの位置に像は結像するか? それはどのような像か?

(略解)F = -5 [cm], 主平面はレンズから左右に 20 [cm]。主平面 H2から内側に 3.3 [cm]のところに正立像が結像する。 QUIZ(第5回QUIZ(第5回QUIZ(第5回QUIZ(第5回 その2)その2)その2)その2)

9.H1-H2平面の ABCD行列が

− 1

101

F であることを証明せよ。

ただし、F、 21, xx は(2-71)、(2-73)であたえられるものとする。

10. 3つのレンズ f1,f2,f3を考え、それぞれの距離を d12, d23とする。 このときの主平面および合成焦点距離を求めよ。

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2-32-32-32-3 波動光学波動光学波動光学波動光学

2-3-12-3-12-3-12-3-1 干渉干渉干渉干渉 光はMaxwell方程式で記述される波である。電場や磁場は正、負どちらの値もとるので、2つ以上の光が同じ場所に重なったとき、互いに打ち消しあってゼロになったり、強め合って強度を増す場合がある。これが干渉である。空気中を伝わる波である音の場合は、

応用技術として干渉が積極的に使われている。例えば、家電機器が出す音と半周期ずれた

音をわざと発生させることで能動的に騒音の低減化を図るとか、ヘッドフォン内部に外界

からの騒音と半周期ずれた音を発生させて静寂な環境を作り出す、といった具合である。

光の場合は、レーザーの発明により位相のそろった波が発生可能になり、干渉を用いた光

によるパターン書き込みなどが既に応用技術として行われている。以下、光の干渉性を測

定するための装置としての干渉計を紹介する。 (a)(a)(a)(a) 二光波干渉二光波干渉二光波干渉二光波干渉 2方向から同じ振動数を持つ平面波の光がついたての同じ場所に照射されている状況

を考える。 偏光は紙面に垂直であるとして、その偏光成分の電場強度をそれぞれ以下の様におく。

)(

22

)(11

2

1

ˆ

ˆxkti

xkti

eaE

eaE−

=

ω

(2-75)

ここに、 1a 、 2a は複素振幅であり、それぞれの振幅と位相(正数)を次のようにおく。

2

1

22

11

ˆ

ˆϕ

ϕ

i

i

eaa

eaa

=

= (2-76)

重ね合わせた電場は、

)( )(2

)(1

)(2

)(121

2211

2211

xkixkiti

xktiixktii

eaeae

eeaeeaEE−−

−−

+=

+=+ϕϕω

ωϕωϕ

(2-77)

強度 Iはこの絶対値の2乗であるから、

x

kkkk1111

kkkk2222

kkkk1111----kkkk2222

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))(cos(2 212121

22

21

2

21

xkkaaaa

EEI

−−−++=

+=

ϕϕ (2-78)

位相差 xkk )( 2121 −−−= ϕϕθ の大きさによって、

221

221

)(

)(

aaI

aaI

MIN

MAX

−=

+= for

πθπθ

)12(

2

+==

m

m (2-79)

スクリーン上の点の位置(x)により、位相差が変化し強度が周期的に変わる(干渉縞)。 (b)(b)(b)(b) ビームスプリッタによる干渉ビームスプリッタによる干渉ビームスプリッタによる干渉ビームスプリッタによる干渉 1つの光(平面波)を2つに分ける素子をビームスプリッタとよぶ。干渉計においては、

光を2つに分ける部分、または2つの光を1つに合わせる部分にこの素子が使われている。

ここでは、ビームスプリッタを入射光の関数と見たとき、どのように数学的にあらわすこ

とができるか見ていく。以下では、反射光と透過光の強度を1:1にわけ、厚さが無視で

きるビームスプリッタを考える。 上図のように2つの方向からビームスプリッタに同じ振動数の光を入射してビームスプリ

ッタ上で重ね、干渉させる。(平面波なので横の広がりがあることに注意)このときの、そ

れぞれの方向の光の反射係数、透過係数を ca, および db, とおく。入射電場を、

tii

tii

eeau

eeauωϕ

ωϕ

2

1

22

11

=

= (2-80)

とすると、出力光は、

=

2

1

2

1

'

'

u

u

dc

ba

u

u (2-81)

と書ける。エネルギー保存則エネルギー保存則エネルギー保存則エネルギー保存則から

反射面

u1

u2

a

c

d

b

u’1

u’2

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2

2

2

1

2

2

2

1 '' uuuu +=+ (2-82)

が成立する。また、1:1に分ける条件から、

2222, dbca == (2-83)

が成り立つ。 (2-82)の条件より、

0

1

1

**

22

22

=+

=+

=+

cdab

db

ca

(2-84)

が導ける。(Quiz 11) (2-84)式から、

2

1==== dcba (2-85)

である。ここでビームスプリッタがどちらの方向からの入射に対して等価であることを仮

定すると、 cda == b, であるから、(2-84)式の第三式より、aとbの位相差は2π

であればよい。(Quiz 12)したがって、(2-81)は次のようになる。

=

2

1

2

1

1

1

2

1'

'

u

u

i

i

u

u (2-86)

この物理的意味については、Quiz 12 および講義で述べる。 (c)(c)(c)(c) マイケルソン干渉計マイケルソン干渉計マイケルソン干渉計マイケルソン干渉計

(b)で述べたビームスプリッタを2回使った、最もシンプルな干渉計であるマイケルソン干渉計について述べる。この干渉計は、マイケルソン・モレーの実験や重力波の検出、

超高速レーザー分光など多岐にわたる実験で用いられている。

u0

L1

L2

1

4

2 0

3

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上記のように左(0)から入射して1,2に分岐し、それぞれミラーで全反射してビームスプリッタの同じ点にもどって干渉し、3,4に分岐する過程を考える。入射光は単

色光の平面波であるとする。 図の上方から入射する光は 0(真空)なので、1,2に分岐した光は次のように書ける。

=

01

1

2

1'

' 1

2

1 u

i

i

u

u (2-87)

それぞれの光はビームスプリッタとミラーの間を往復するから、それぞれの距離を L1、

L2とすると、ビームスプリッタに戻ってきたときには以下のような位相が加わることに

なる。6

=

01

1

2

1

0

0

'

' 1

)2(

)2(

2

1

2

1 u

i

i

e

e

u

ukLi

kLi

(2-88)

ここで、kは光の波数である。さらに、ビームスプリッタで分岐して出力光 3,4が得られる。

−−

=

=

+−

)(cos

)(sin

01

1

2

1

0

0

1

1

2

1

12

12)(0

0

)2(

)2(

4

3

21

2

1

LLk

LLkieu

u

i

i

e

e

i

i

u

u

LLik

kLi

kLi

(2-89)

これは、明らかにエネルギー保存則を満たしている。(Quiz 14)また、2つの出力は位

相が2πずれており、L1と L2の距離差によって周期的に出力が変動することがわかる。

特に、L1と L2の距離が等しい場合には、4からのみ出力光が出てくる。一般的には、

integer):()( )12 mmLLk π=− のとき4のみから出力され、

integer):()21

()( )12 mmLLk π+=− のとき3のみから出力されることがわかる。

例.例.例.例. マイケルソン干渉計を用いた力波検出の試みについて講義で述べる。 (d)(d)(d)(d) サニャック干渉計サニャック干渉計サニャック干渉計サニャック干渉計 レーザージャイロとして航空機などに搭載されているサニャック干渉計について簡単

に述べる。次図のようなリング型の干渉計を考える。

6 ミラーでの位相変化は対称な光学系なので無視している。

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この干渉計は、左から入射した光がビームスプリッタで分かれたあと右回りと左回りに進

み、また同じビームスプリッタで干渉するものである。図のように出力光を定義すると、

出力光として(2-89)式と同じ式が得られる。ただし、同じ場所を右回りが左回りに

回るだけなので、静止系では、 21 LL = である。したがって、u3の方には光は出力されない。

ここで、系全体を左回りに回転させよう。この場合、特殊相対論特殊相対論特殊相対論特殊相対論により回転系での光

の振動数が変化する7 ので、右回りと左回りの経路に位相差がつく。この場合は u3から光

が出力され、その強度から逆に角速度がわかる。これが、レーザージャイロの原理である。

簡単のため、干渉計を半径 R の円と考え、角速度をΩとすると、右まわりと左回りの間の

位相差は、

Ω=

Ω−−Ω+=

c

kR

RcRcc

R

024

)()(2

π

πδ(2-90)

とあたえられる。

実際の応用ではループには光ファイバが用いられる。ファイバーをループにし、それ

を複数回巻いて有効的な位相差を大きくする。n回巻けば、(2-90)がn倍になること

に注意せよ。

7 光に対して速度 uで遠ざかっていく系からみた光の振動数は、

ννuc

uc

+−=' となる。 cu << の場合は、 νν

−=

c

u1' となる。

u0

u3

u4BS

Ω

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QUIZ(第QUIZ(第QUIZ(第QUIZ(第 6666回)回)回)回)

11. (2-84)式が成り立つことを示せ。

12. (2-81)式の行列要素aとbの位相差は2πであることを示せ。

また、この物理的意味について述べよ。(Hint: aとbは反射係数と透

過係数であることに着目。) 13. (2-86)式で、片方に出力光がない場合(たとえば、 0'2 =u )、入力

光の間にはどんな関係が成り立つか? 14. (2-89)式を導き(計算を実行せよ)、マイケルソン干渉計において

エネルギー保存が成り立っていることを確認せよ。

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(e) ファブリペロー干渉計 (f) 多重干渉による干渉フィルター

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2-3-22-3-22-3-22-3-2 回折回折回折回折 回折とは光が物体を回り込んで伝播する現象である。 (a) 近軸近似(再)近軸近似(再)近軸近似(再)近軸近似(再) ホイヘンスの原理を用いてスクリーン上の Q点での電場を考える。 開口ΣΣΣΣ 中の点 Pから発生する 2次波のΣΣΣΣ’’’’ 平面への投影成分は

( ) ( )0,,cos,, 11222

0

yxur

ezyxu

rih

γα−

≈ (2-91)

ここに 0λ

α i= である8。

Σ´面上での光電場はすべての P点からの 2次波の重ね合わせであるから、

( ) ( )∫∫Σ

= 11110

22 cos0,,,,0

dydxr

eyxu

izyxu

rih

γλ

(2-92)

と表せる。

8 αの決定; ∫∞

∞−

− =απα dxe x2

開口Σをなくして、平面波かつ 022 == yx の点を見ると、 ( ) 1, 11 =yxu

( )

zikzikzk

yxz

ikzik

ei

eikik

zze

dydxeze

zu

00

0

21

21

00

0

0

2

0

0

112

22

),0,0(

−−−

+−−

==

=

= ∫∫

αλπαπα

α

これより、0λ

α i=

γ

γ P )0,,( 11 yxu

Q ),,( 22 zyxu

Σ' Σ

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ここで、距離 ( ) ( ) 2212

212 zyyxxr +−+−= である。

PQがzzzz軸とほぼ平行な場合、すなわち 1cos,0 ≈≈ γγ の場合を考える。(近軸近似) 今までは、 zr ≈ として取り扱ってきた。 しかし、指数の中の rに関しては、

ri

rik ee 00

2λπ

=

0)(

2

0

0

0

≠=−zri

zik

rik

eee λ

π

(2-93)

考えている領域では、 10

⟩⟩−λzr

であるので、

故に、

( ) ( )

⋅⋅⋅++++−++=

⋅⋅⋅+−+−+≈

−+

−+=

zyx

zyyxx

zyx

z

zyyxx

z

zyy

zxx

zr

22

2

1

21

211212

22

22

212

212

2

12

2

12

(2-94)

第 4項までとると、

11

)(2

)(2

1122022

21

21

01212

)0,,(),,(),,( dydxeeyxuzyxAzyxuyx

z

ikyyxx

ik +−

Σ

+

∫∫= (2-95)

となる。 ただし、

)(

2

0220

22

22

00

)0,,(yx

z

ikzik

ez

ieyxA

+−−

(2-96)

である。(2-95)式を回折のフレネル(Fresnel)近似と呼ぶ。 (b) フラウンフラウンフラウンフラウンホーファー(ホーファー(ホーファー(ホーファー(FlaunhoferFlaunhoferFlaunhoferFlaunhofer)近似)近似)近似)近似 (2-94)の第4項が小さい場合には、(2-95)式は次のように変形される。

11

)(2

1122022

1212

)0,,(),,(),,( dydxeyxuzyxAzyxuyyxx

ik

∫∫Σ

+= (2-96)

これを回折のフラウンホーファー近似フラウンホーファー近似フラウンホーファー近似フラウンホーファー近似と呼ぶ。

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近似の正当性近似の正当性近似の正当性近似の正当性 4項が充分小さい。 即ち、開口ΣΣΣΣ のx、y座標の最大値を MAXx1 、 MAXy1 とおくと、

1)(2

21

21

0 <<+ MAXMAX yxzk (2-97)

Σ(開口)を円と考えると.その直径 Dを用いて、

221

21 2

=+ D

yx MAXMAX (2-98)

と表すことができる。したがって、Flaunhofer近似において条件式(2-98)は

0

2

0

2

0

222 λλπ ADDk

z =

=

>> (2-98)

となる。ここで、Aは開口(円)の面積である。 例例例例: 開口が 1mm、λ0=1μm の場合、z>>10-6m2/10-6m=1m であれば Flaunhofer 近似

が使える。 (2-96)式において、fx=-ix2k0/z, , fy=-iy2k0/z, とおくと、 (fx、fyは空間フーリエ周波数と呼ぶ。)

11)(

112202211)0,,(),,(),,( dydxeyxuzyxAzyxu yfxfi yx∫∫

Σ

+−= (2-99)

この式は(x1,y1)→(fx, fy)への 2次元フーリエ変換に相当する。 (c)(c)(c)(c) フラウンホーファー回折の具体例フラウンホーファー回折の具体例フラウンホーファー回折の具体例フラウンホーファー回折の具体例 i) 単一開口の場合(例) l 方形の場合

))sinc(sinc(

)0,,(),,(),,(

0

2

0

200

11)(

112202211

zay

zax

abuA

dydxeyxuzyxAzyxu yfxfi yx

λλ=

= ∫∫Σ

+−

(2-100)

但し、sinc(X)=sin(πX)/ πXである。

u0(電場)

ba

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従って、強度分布は

)()sinc(sinc

0,(),,(22

0

2

2222

YXI

yxuzyxI

=

= (2-101)

ただし、z

ayY

zax

X0

2

0

2 ,λλ

==

l 円形の場合 極座標表示で表す。

111 cosθrx = , 222 cosθrx = 111 sinθry = , 222 sinθry =

z

arkz

arkJ

auA

ddrreuA

dydxeyxuzyxAzru

arr

z

ik

yfxfi yx

20

201

200

11

2

0 0

)cos(

00

11)(

1122022

)(2)(

)0,,(),,(),,(

21210

11

π

θ

θ

π θθ

=

=

=

∫ ∫

∫∫−−

Σ

+−

(2-102)

ただし、J1は 1次のベッセル関数である。(Quiz 15) QUIZ(第QUIZ(第QUIZ(第QUIZ(第 7777回)回)回)回)

15. (2-102)式が成り立つことを示せ。

Hint: ヤコビ・ポアンカレの展開式 ∑∞

−∞=

=m

imm

mz ezJie θθ )(cos1 を適用し、

漸化式 )(')()(1 xJxJxn

xJ nn +=− は両辺に xnをかけて整理すると、

[ ] )()( 1 xJxxJxdxd

nn

nn

−= となることを用いよ。

a

z

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xx)sin(のグラフ

-15 -10 -5 5 10 15

-0.2

0.2

0.4

0.6

0.8

1

xxJ )(1 のグラフ

-15 -10 -5 5 10 15

-0.1

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

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2-3-32-3-32-3-32-3-3 ガウスビームの伝播ガウスビームの伝播ガウスビームの伝播ガウスビームの伝播 レーザーのように細いビームが空間を伝播していく様子を考えよう。レーザーは通常

断面上の強度がガウス関数で表されるガウスビームガウスビームガウスビームガウスビームとなっている。これまで、自由空間に

おける伝播は平面波を考えてきたが、レーザーは細いビームであるから回折を考慮しなけ

ればならない。ここでは、波動方程式からはじめる。一つの偏光成分のみを考慮して、ス

カラー方程式

0),())(

1(

2

2

22 =Ψ

∂∂−∇ ttc

rr

(2-25)

を考えよう。良いレーザービームは軸対称なので、円筒座標系を考える。z方向にすすむ

レーザー光に対して、媒質が均一で光速 c(rrrr)が一様な場合を考える。 )(),( kztiezrE −− ωという

解を考えると、

021

2

2

=∂∂+

∂∂+

∂∂

z

Eik

r

E

rr

E (2-103)

が得られる。ただし、軸方向の変化は波長に比べると十分ゆっくりとしていると近似した。

すなわち、 Ekk

Ek

k

E 22

2

,∂∂<<

∂∂ を仮定している。(Quiz16)

この解が、

))(2

)(exp(),( 2rzq

ikziPzrE += (2-104)

という形であると仮定する。1/ )(zq の実数部分は動径方向の位相変化をあらわしており、

虚数部分は振幅の変化に対応する。この場合、

q

i

dz

dP

dz

dq == ,1 (2-105)

の 2つの方程式が導ける。最初の方程式から、 )0()( qzzq += (2-106) が得られ、これを第二の方程式に代入することで、

))0(

1ln()(q

zizP += (2-107)

となる。したがって、(2-104)は、

)))0((2

))0(

1ln(exp(),( 2rqz

ik

q

zzrE

+++−= (2-108)

これがレーザー光が z軸の方向に進んでいくときのビーム径や位相、波面の変化をあたえる式である。 まず、 )0(q を純虚数に選んだ場合を考える。

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0)0( izq = かつ 2

20

0

kwz = (2-109)

とおくと、(2-108)式は、以下のようになる。

)(2)(

1))0((2 2 zR

ik

zwqz

ik +−=+

(2-110)

ただし、

+=

2

0

20

2 1)(z

zwzw および

+=

2

01)(z

zzzR (2-111)

である。(2-108)の第一項は、

+

+=+ −

0

1

2

0

tan1ln))0(

1ln(z

zi

z

z

q

z (2-112)

であるから、結局(2-108)は

+−

+

= −

)(2)(tanexp

1

1),(

2

2

2

0

1

2

0

zR

kri

zw

r

z

zi

z

zzrE (2-113)

となる。これに平面波の部分)( kztie −− ωをかけたものが求める伝播の式である。第一項はz軸

上の波面の位相である(r には依存しない)。第2項は電場が動径方向にガウス関数的に減

少し、1/eになる値である w(z)はビーム半径をあらわしている。(ガウスビーム)下図から、

z=0の時に最小の幅 w0にビームが細くなる(くびれる)ことがわかる。また、z=z0の時に

幅は 02w となることから、z0はくびれの範囲をあらわすパラメーター(コンフォーカルパコンフォーカルパコンフォーカルパコンフォーカルパ

ラメーターラメーターラメーターラメーター)であることがわかる。

-3 -2 -1 1 2 3

-1.5

-1

-0.5

0.5

1

1.5

-3 -2 -1 1 2 3

2

4

6

8

10

-3 -2 -1 1 2 3

-6

-4

-2

2

4

6

z/z0

z/z0

z/z0

R(z)/z0 w2(z)/w02 tan-1 z/z0

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第3項に ikz を加えたものは z=0 からでていく曲率半径 R(z)の球面波の位相をあらわして

いる。なぜなら、(2-94)でもみたように、近軸の場合( zRryx ,22 <<=+ )、

R

rz

R

yxz

z

yxzzyxR

22222222

22+=++≈++≅++=

が成り立つからである。 R(z)はくびれのあたり( z=0 )では無限大になり、平行光であることがわかる。遠方で

は zに漸近することから、上での議論よりくびれの位置からの球面波としてよく記述できることがわかる。その発散角は近軸の近似の範囲内で次のようになる。

00

0

2

0

0

0

2

0

0

2

11)(

kwz

w

z

z

z

w

z

z

z

w

z

zw

=≈

+=

+==θ

(2-114)

円形開口の回折の式(2-102)をプロットすると、下図になる。ここで電場の大きさ

が半分になるのはベッセル関数の引数が2のとき、すなわち 220 =z

arkである。これを変

形すると akz

r

0

2 2= であることから、ガウスビームは半径 w0の円形開口からの回折光のよ

うに広がっていくことがわかる。 幾何光学の場合は焦点の位置で光線は点に集光されることになるが、レーザー光のような

ガウスビームは、コンフォーカルパラメーターz0の範囲内で最小の幅 w0にビームが細くな

ることがわかった。これは、すべて、波動としての特質の現れ(回折の効果)である。

-3 -2 -1 1 2 3

-10

-7.5

-5

-2.5

2.5

5

7.5

10

2 4 6 8 10

-2

-1.5

-1

-0.5

0.5

1

1.5

2 Plot@2 BesselJ@1,xDêx, 8x,0, 10<, PlotRange−> 8−2, 2<D

2w0

2z0

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QUIZ(第8回)QUIZ(第8回)QUIZ(第8回)QUIZ(第8回)

16. (2-103)式が成り立つことを示せ。 17. 波長633nmのレーザー光を月まで飛ばすことを考えよう。実験室でほぼ平行な半径 10 =w [mm]のビームが月ではどのくらい広がるか?ただし、月までは真空、地球と月との距離は 384000kmであるとする。この広がりをなるべく小さくするにはどのような工夫をしたらよいか?

18. 2-3-3節の議論は 0)0( izq = と )0(q を純虚数において議論をすすめ

た。もし、 01)0( izzq += のように複素数の場合は、ガウスビームのくびれの

位置、コンフォーカルパラメータ-、最小ビーム径はどのようになるか?

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3.3.3.3. 光物性の基礎光物性の基礎光物性の基礎光物性の基礎

3-13-13-13-1 誘電関数誘電関数誘電関数誘電関数

3-1-13-1-13-1-13-1-1 光吸収と光散乱の現象論(光吸収と光散乱の現象論(光吸収と光散乱の現象論(光吸収と光散乱の現象論(IntroductionIntroductionIntroductionIntroduction)))) 光吸収=物質の中で光が減衰する現象光吸収=物質の中で光が減衰する現象光吸収=物質の中で光が減衰する現象光吸収=物質の中で光が減衰する現象

物質中のエネルギー準位に共鳴。 物質中で他の形態のエネルギー(熱など)に変換 発光などの形で再放出されることがある。 視覚は網膜の視細胞が光を吸収することから9、光合成は葉の中の葉緑

体中のクロロフィルが光を吸収することから開始する。 色ガラ色ガラ色ガラ色ガラスススス → 実験

光散乱=物質中で光の波数ベクトル、偏光、振動数などが変化する現象。光散乱=物質中で光の波数ベクトル、偏光、振動数などが変化する現象。光散乱=物質中で光の波数ベクトル、偏光、振動数などが変化する現象。光散乱=物質中で光の波数ベクトル、偏光、振動数などが変化する現象。 物質中のエネルギー準位に共鳴して効率が上がることがある。 入射光の位相を覚えている。光吸収のあとでてくる発光は入射光の位

相を覚えていない。 全立体角で集めると入力の光のエネルギー総量と一致する。 牛乳は白く見える。空は青く見える。氷は透明だが雪は白い。 夕焼けは赤い。火星の夕焼けは.... 物質の「ゆらぎ」を反映

空間的なゆらぎ レーリー散乱 時間的なゆらぎ ラマン散乱(振動数の変化)

9 Coffee Break を参照

白い光

I0 I

d

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吸収の現象論吸収の現象論吸収の現象論吸収の現象論 単位長さあたりα だけの割合で光が減衰する場合。

IdxdI α−= (3-1) これを境界条件( 0)0( II = )のもとで解くと、

]exp[)( 0 xIxI α−= (3-2) が得られる。光は指数関数的に減衰する。 α を吸収係数とよぶ。単位は[cm-1]。厚さ d の物体に光を通過させたときの光の強度を

IとしたときにI

ID 0

10log= を吸光度(optical density)とよぶ。したがって、吸収係数と

の間には次の関係式が成り立つ。 edD 10logα= (3-3)

吸収係数吸収係数吸収係数吸収係数α は、屈折率は、屈折率は、屈折率は、屈折率nnnnが物質中では複素数であることと深く関係している。が物質中では複素数であることと深く関係している。が物質中では複素数であることと深く関係している。が物質中では複素数であることと深く関係している。一様な物質

中での平面波の伝播を考える。屈折率を nとおくと、

]exp[]exp[ 00 tixc

niEtiikxEE ωωω −=−= (3-4)

ここで、nが複素数であるとし、以下の様におく。 κinn +=~ (3-5) この場合、(3-4)は、

]exp[]exp[

]~

exp[

0

0

tixc

nix

cE

tixc

niEE

ωωκω

ωω

−−=

−=

となり、光強度は、

]2

exp[)(2

0

2x

cEExI

κω−=∝ (3-6)

となる。(3-2)と見比べることで、

c

κωα 2= (3-7)

が得られる。nが複素数の意味については次節で述べる。

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Coffee Break

視細胞の働き視細胞の働き視細胞の働き視細胞の働き

網膜には捍状体と錐状体と呼ばれる視細胞が敷きつめられていて、色を感じるのは錐状

体(約650万個)の方であり、明るいところで働き、中心窩(か)の付近に密集してい

る。この錐状体には3種類あり、それぞれ長波長(赤)、中波長(緑)、短波長(青)の光

に反応します。カラーテレビが赤、緑、青(R、G、B)のわずか3種類の小さい色光を

並べて様々な色を表現できるのは、人間の目の網膜にこのように3種類の錐状体細胞があ

るためです。(ヤングヤングヤングヤング----ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説))))

これら網膜で感じられた光の刺激が視神経を通じて脳に送られて色や形が認識されるこ

とになるのですが、脳に送られるときに、あるいは脳の中で次のような信号処理がなされ

ていると考えられています。つまり、長波長(赤)、中波長(緑)、短波長(青)の3種類

の錐状体細胞で感じた光刺激を、赤と緑を対とする尺度、黄と青を対とする尺度、それに

明るさの尺度の3つの尺度による信号に変換して脳で認識されると考えられています。こ

れは、色を認識するときの心理的な原色として赤、黄、緑、青の4つの原色があることか

らこのように考えられています。((((最近の色覚モデル最近の色覚モデル最近の色覚モデル最近の色覚モデル))))

暗い場所では捍状体(約1億2000万個)と呼ばれる視細胞が働きます。この視細胞

は極めて高感度なのですが、色を識別することはできず明暗だけに反応します。また長波

長の光には反応しません。そのため赤いものは暗く見えます。形に関してもいわゆる低解

像度で細かい部分を判別することはできません。明るい場所で錐状体によって物を見てい

る視覚の状態を明所視といい、暗い場所での視覚の状態を暗所視といいます。明るい場所

から暗い場所に移るとしばらく回りの様子がわかりませんが、だんだんとよく見えてくる

ようになります。この現象を暗順応といいますが、これは明所視から暗所視に目が切り替

わるためです。

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ヤングヤングヤングヤング----ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説ヘルムホルツの三色説

1666年にニュートンが

プリズムによって白色光を分光

して、 赤から紫色のスペクトル

を発見。さらに赤色スペクトルと

緑色スぺクトルを混色する事で、

黄色スペクトルが得られた。この

結果、 種々の色のスペクトルの

混色により様々な色がつくり出

せる事が分かった。

ヤングは、「網膜の光感受性のある部位にそれぞれ特有な波長 に完全に同調して振動

する受容器の種類が無限に存在するとは考 えられない。そこに存在する数は限定されてお

り、例えば基本の 色、赤、黄、青といったものにのみ反応すると、考えねばならない。」

と述べ、その後この基本色の数を三つに確定し、赤、緑、紫に変更した。

ヘルムホルツは、RGB 三つの色に感じる光受容器のそれぞれに 分光的な感度帯を考え

た。つまり、赤受容器は赤色光に最も敏感に感じるが、黄赤光にも少しは感じる。また赤

色光は、赤受容器 だけに感じるのではなく、他の緑受容器、青受容器にも感じ、その応答

は分光的感度によるものと考えた。

( 図は、山中俊夫 色彩学の基礎 p.14 より抜粋 )

最近の色覚モデル最近の色覚モデル最近の色覚モデル最近の色覚モデル

電気生理学の発展により、視覚系の種々の細胞から直接電気信号を測定することで、

網膜視細胞段階では三色説がよく、大脳レベルでは赤と緑を対とする尺度、黄と青を対と

する尺度に信号が変換されて認識されていると解明された。

( 図は、山中俊夫 色彩学の基礎 p.14 より抜粋 ) 以上。

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3-1-23-1-23-1-23-1-2 古典論古典論古典論古典論

誘電体中のMaxwell方程式から出発する。

0

0

=⋅∇=⋅∇

∂∂=×∇

∂∂−=×∇

B

D

DH

BE

t

t

(3-8)

ここで、 ),( trD 、 ),( trB は第2章とは異なり媒質の性質により決まる。この講義では磁性

体は扱わないので、 ),( trB は ),( trH と比例関係にあるとする。この時の比例係数を透磁率

とよぶ。 ),( trD に関しては、

PEED +== 0εε (3-9) のように、真空中での電束密度と誘起双極子モーメントPによる電束密度に分けることが

できるものとする。Pは物質が電場に応答して発生した双極子モーメントであり、物質と

光の相互作用が含まれている。したがって、Pを決定するためには物質に関する記述がしを決定するためには物質に関する記述がしを決定するためには物質に関する記述がしを決定するためには物質に関する記述がし

っかりとできなければならない。っかりとできなければならない。っかりとできなければならない。っかりとできなければならない。高校の物理でも習ったように、光と物質との相互作用に

は、光電効果のように量子効果が現れる。これはとりもなおさず、Pを考えるときには物

質を量子力学的に扱わなければならないことを意味する。このように誘電率 ),( txε には物

質と光との相互作用に関する情報が含まれているから、誘電率は時間と空間の関数になる。

このような意味をこめて以降では誘電率を誘電関数と呼ぼう。 「光物「光物「光物「光物性」という学問は、性」という学問は、性」という学問は、性」という学問は、

誘電関数誘電関数誘電関数誘電関数εを明らかにすることにより、光と物質との相互作用から生じる様々な物理現象を明らかにすることにより、光と物質との相互作用から生じる様々な物理現象を明らかにすることにより、光と物質との相互作用から生じる様々な物理現象を明らかにすることにより、光と物質との相互作用から生じる様々な物理現象

を解明する学問であると位置付けることができる。を解明する学問であると位置付けることができる。を解明する学問であると位置付けることができる。を解明する学問であると位置付けることができる。 誘電関数εの完全な量子論的な取り扱いは大学院レベルの知識が必要なので、本講義では

マクロスコピックな古典論と物質を2準位系に近似した量子論について述べる。後者は次

節に譲る。外場(ここでは光電場)が弱い時にはPは摂動展開できる。

......)( )3()2()1(0 +++= EEEEEEP χχχε (3-10)

第二項以降は第1章で触れた非線形光学効果を表す項である。これらについては、3-3

節で詳しく触れる。この章では線形な光学効果線形な光学効果線形な光学効果線形な光学効果だけに限って話を進める。(3-10)式の

第一項だけを使って(3―9)は次のように書きかえれる。

EEEED )1( )1(0

)1(00 χεχεεε +=+== (3-11)

ここで)1(χ 、

)1(* 1 χε += は線形感受率、比誘電率と呼ばれる。以下では、)1(χ を χ と記す

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ことにする。 (1)(1)(1)(1) 応答関数とクラマース・クローニッヒ関係式応答関数とクラマース・クローニッヒ関係式応答関数とクラマース・クローニッヒ関係式応答関数とクラマース・クローニッヒ関係式 (3-9)式のように誘起ダイポールは、物質の外場による応答をあらわしている。光電

場に対して線形に応答する項のみを考えると、ある点 ),( tx における誘起ダイポールは、様々

な場所、時間からの応答の和になっている。この応答は、外場との距離や時間の関数とな

っている。これを応答関数とよび ),( txf と書こう。

)','()','(''),( 0 txEttxxfdtdxtxPt

−−= ∫∫∞−

∞−

ε (3-12)

ここで、応答関数 f は実関数であるとする。また、時間積分の積分区間が ∞− から tになっ

ているのは、因果律因果律因果律因果律を反映している。すなわち、過去に起きた事象しか応答には反映され

ない。そこで、関数 ),(~ τξf を以下の様に定義する。

<≥

=0for0

0for),(),(

~τττξ

τξf

f (3-13)

したがって、(3-10)は下のように変更される。

)','()','(~

''),( 0 txEttxxfdtdxtxP −−= ∫∫∞

∞−

∞−

ε (3-14)

),(~

),,(,),( txftxEtxP のフーリエ成分をそれぞれ ),(),,(,),( ωχωω kkEkP とすると、

(3-14)式の両辺に)( tkxie ω−−をかけて積分することによりフーリエ成分間の関係式が得

られる。10

∫ ∫ ∫∫∫∞

∞−

−−∞

∞−

∞−

∞−

−−∞

∞−

−−= )(0

)( )','()','(~

''),( tkxitkxi etxEttxxfdtdxdxdtdxdtetxP ωω ε

),(),(),( 0 ωωχεω kEkkP = (3-15)

10 フーリエ成分は、次のようにあたえられる。

dxdtetxEkE tkxi∫ ∫∞

∞−

∞−

−−= )(),(),( ωω 、 ωωπ

ω dkdekEtxE tkxi∫ ∫∞

∞−

∞−

−= )(2

),()2(

1),(

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このことから、感受率は誘起ダイポールの応答関数 ),(~ τξf のフーリエ成分であることがわ

かる。以下、時間成分(ω成分)のみに着目する。定義より

ti

ti

etfdt

etfdt

ω

ωωχ

)(

)(~

)(

0∫

∫∞

∞−

=

= (3-16)

f は実関数であったから、 )(ωχ の実部 )(' ωχ 、虚部 )('' ωχ は次の関係を満たす。

ttfdt

ttfdt

ωωχ

ωωχ

sin)()(''

cos)()('

0

0

∫∞

=

= (3-17)

(3-9)式を両辺フーリエ変換すると、各フーリエ成分の間に次の関係が導かれる。

))(1(

)),(1(),(

0

0

00

ti

r

etfdt

kk

ωε

ωχεεεωε

∫∞

+=

+== (3-18)

複素屈折率は定義から )(1~ ωχεκ +==+= rinn であるので、

),(''2

)(

),(''2

)),('122

ωχωκωωα

ωχκωχκ

kcnc

kn

kn

==

=+=−

(3-19)

が得られる、したがって、誘電関数(応答関数)がわかると屈折率nや消衰係数κ が求まり、反射や屈折、吸収などの光の振動数(ω)や波数(k)に対する依存性がわかることに

なる。11 複素関数としての誘電関数複素関数としての誘電関数複素関数としての誘電関数複素関数としての誘電関数 (3-18)式をもとに、 ''' ωωω i+= のように複素空間に拡張して、複素関数としての

誘電関数を考えてみる。被積分関数である応答関数 )(tf は発散のような特異点をもたない

11 3-1-1節で屈折率を複素関数にとると光吸収が説明できることを述べた。散逸(エネルギーが失われていく過程)をあらわす消衰係数κ は誘電関数の虚数部に比例することに着目せよ。

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実関数12である。また、 ∞→t で0に収束する関数である。これは、応答は有限時間でしか

起こらないことを意味している。これから、 )(ωχ は複素上半面( 0'' >ω )には特異点を

持たないことがわかる。確かに、上半面では被積分関数は 0>t で指数関数的に減衰する項

''ωte−を含んでいる。これは、積分区間が正の領域に限られているからで、上で指摘したよ

うに因果律を反映している。また、実軸上も原点を除いて特異点を持たない。(あとで述べ

るように金属の誘電関数は原点に極を持っている。) クラマース・クローニッヒ関係式クラマース・クローニッヒ関係式クラマース・クローニッヒ関係式クラマース・クローニッヒ関係式 誘電関数または感受率の実部、虚部は共に同じ f から導かれるので独立でない。以下、ま

ず、誘電体中においては、(3-20)のような関係がある。これを Kramers-Krohnig relation (クラマース・クローニッヒ関係式)と呼ぶ。ここで、Pはコーシーの主値積分をあらわす。

220

220

'

)'(''P

2)(''

'

)'(''''P

2)('

ωωωχω

πωωχ

ωωωχωω

πωχ

−−=

−=

∫∞

d

d

(3-20)

(導出) 誘電体の場合、誘電関数(したがって、感受率 )(ωχ )はω複素上半面および実軸にお

いて発散するような特異点を持たない関数である。したがって図の C のような経路に沿った積分は0になる。

0)( =

−∫ dss

s

C ωχ (3-21)

∞− ω ∞ s 無限に遠い半円上の積分は、前節の議論から被積分関数が0になるので0である。したが

12 これは、電場 Eが実数の時に Pや Dも実数にならなければならないことから容易にいえる。

C

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って、主値の意味での実軸上の ∞− から∞までの積分13と、極 ω=s を時計回りに回避する

半円の積分14の和が 0になる。 故に、

0)()(

P =−−∫

∞−

ωπχω

χi

s

sds

ωχ

πωχ

−= ∫

∞− s

sds

i

)(P

1)( (3-22)

実数部を考えると、

ωχ

πωχ

π

ωχ

πωχ

−+

−=

−=

∫∫

∞−

∞−

p

pdp

s

sds

s

sds

)(''P

1)(''P

1

)(''P

1)('

0

0

第2項で sp −= の置き換えをして、

ω

χπω

χπ

ωχ+−−

−= ∫∫

∞∞

s

sds

s

sds

)(''P

1)(''P

1)('

00

(3-17)式から ''χ は奇関数なので、

220

00

)(''2P

2

)(''P

1)(''P

1)('

ωχ

π

ωχ

πωχ

πωχ

−=

++

−=

∫∫∞

∞∞

s

sds

s

sds

s

sds

(証明終)

13 主値積分は極が x=ω にあるとすると、

+= ∫∫∫

+

∞−→

∞− δ

δ

δωωω

x

x

ddd limp0

であたえられる。

14 時計回りの半円積分は )(ωπχi− である。

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(2)(2)(2)(2) 分散関係分散関係分散関係分散関係

Maxwell 方程式(3-8)の両辺をフーリエ変換して、フーリエ成分の関係式を導くことができる。フーリエ成分の係数には微分演算子の結果がかかることを考えると、次の対

応が成り立つ。

kiit

→∇−→∂∂

,ω (3-23)

場 ),( trE , ),( trD , ),( trH , ),( trB ,および誘電関数 ),( txε のフーリエ成分をそれぞれ

),(~ ϖkE , ),(

~ ϖkD , ),(~ ϖkH , ),(

~ ϖkB 、 ),( ϖε k とおくと、(3-8)は次のようになる。

0~

0~

~~

~~

=⋅

=⋅

−=×

Bk

Dk

DHk

BEk

i

i

ii

ii

ωω

(3-24)

磁場に関しては真空の透磁率µ、誘電関数テンソルはスカラーを考えることにすると、

εµω22

0~

=

=⋅

k

Ek (3―25)

が得られる。15 第1式は横波であることを表す。第2式は媒質中の光の分散関係光の分散関係光の分散関係光の分散関係になって

おり、誘電関数は複素数であったから、波数kも複素数であることがわかる。 (3)(3)(3)(3) 振動子強度(振動子強度(振動子強度(振動子強度(Oscillator strengthOscillator strengthOscillator strengthOscillator strength)と総和則)と総和則)と総和則)と総和則 分散理論では )(' ωχ をあらわす式を

2200

2

'

)'('P

e)('

ωωωω

εωχ

−−= ∫

∞ fd

m (3-26)

と習慣的に書く。(ローレンツ振動子の項をを参照)ここで eとmは電子の電荷と質量である。また ωω df )( は振動数 ωd の中にある振動子の強さ(Oscillator strength)である。(3-20)式と見比べると、

)(''2

)(2

0 ωχπ

ωεωe

mf = (3-27)

ωが大きいところでは被積分関数の 'ω を無視することができる。この場合、

15この式の変形では、第2式の両辺に ×k をかけると EHkEkk

~~)

~( 2εµωωµ −=×=×× が

得られる。これにベクトル積の公式 )BC(AC)B(AC)(BA ⋅−⋅=×× を使えば導出できる。

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)'(''''2

)('0

2ωχωω

πωωχ ∫

−= d (3-28)

が得られる。一方振動数が大きい極限での誘電率は、自由な電子の光電場による誘起双極

子であると考えられる。運動方程式から、

ErP

Er

Ev

EEv

2

2

2

0

/

/

ω

ωω

ω

m

Nee

me

mie

eeedt

dm ti

−==

−=

=

==

(3-29)

が得られる。ここに Nは電子密度である。 最終的に、

(3-30) となる。この式と(3-27)、(3-28)を比較することで次の公式が導かれる。

Nde

mfd == ∫∫

∞∞

)(''2

)(0

20

0

ωωχωπ

εωω (3-31)

すなわち、振動子強度の和は電子密度に等しい。これが、振動子強度の総和則(振動子強度の総和則(振動子強度の総和則(振動子強度の総和則(ffff----sum rulesum rulesum rulesum rule))))と呼ばれる重要な公式である。 (4)(4)(4)(4) 金属金属金属金属の場合の取り扱い-オームの法則の場合の取り扱い-オームの法則の場合の取り扱い-オームの法則の場合の取り扱い-オームの法則 金属の場合には、Maxwell方程式(3-8)の第 3式は、 ρ=⋅∇ D のように外部電荷

を考慮しなければならない。この式の両辺の時間微分をとって連続の式

0=⋅∇+∂∂

it

ρ (3-32)

を使うと、以下の式が得られる。ここでは iは外部電流である。

0)( =+∂∂⋅∇ iDt

(3-33)

これは()内があるベクトルの回転(rotation)で与えられることを示している。このベクトルを Hにとることは自然であり、結果としてMaxwell方程式(3-8)の第 3式

t∂∂+=×∇ D

iH (3-34)

が得られる。ここで、「オームの法則」 Ei σ= を考慮し、(3-23)と同様にフーリエ

Nm

e2

0

2

)(ωε

ωχ −=

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成分を考えると、以下の式が得られる。ここで、σ は電気伝導率であり抵抗率の逆数である。

E

E

EEHk

~)(

~~~

εωωσεω

ωεσ

i

ii

ii

+−=

−=×

(3-35)

したがって、

ωσεε i+=ˆ (3-36)

が金属の場合の有効誘電率であるといえる。16 ここで注目すべきは、誘電関数に 0→ω で

発散する虚数部が加わったことである。虚数部は光吸収に寄与していることから、振動数

が低く DC に近い場合には実電流の流れの減衰(オームの法則)が重要であることがわかる。この場合、クラマース・クローニッヒ関係式は、実軸上のポールが増えるので以下のクラマース・クローニッヒ関係式は、実軸上のポールが増えるので以下のクラマース・クローニッヒ関係式は、実軸上のポールが増えるので以下のクラマース・クローニッヒ関係式は、実軸上のポールが増えるので以下の

ように修正されるように修正されるように修正されるように修正される。

ωεσ

ωωωχω

πωωχ

ωωωχωω

πωχ

022

0

220

'

)'(''P

2)(''

'

)'(''''P

2)('

+−

−=

−=

∫∞

d

d

(3-37)

(5)(5)(5)(5) 指数関数的な応答をする双極子モーメントによる光吸収指数関数的な応答をする双極子モーメントによる光吸収指数関数的な応答をする双極子モーメントによる光吸収指数関数的な応答をする双極子モーメントによる光吸収

応答関数として、図に示すようなtetAtf γω −= )sin()( 0 を考えよう。いわゆる減衰振動の応

答である。17 ここにAは定数である。

16 有効という意味はMaxwell方程式の第 3式(3-27)の外部電流を Dに繰り込む形で誘電率を定義するという意味がある。 17 例えば、鐘を叩いた後の残響を考えればよい。

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この場合、感受率はフーリエ変換することにより容易に求まる。

γωωωω

γωωγωω

γωωγωω

ωχ ω

iA

iiA

etfdt ti

2

)()(

2

)()(

220

0

220

022

0

0

0

−−=

+−−−

−++

−+=

= ∫∞

(3-38)

ここで、最後の変形では 0ωγ << をもちいて、分母の2γ の項を落としている。

共鳴に近いところ( 0ωω ≈ )では、(3-38)の2列目の第二項が主になり、

220

220

0

)(2)(''

)(2)('

γωωγωχ

γωωωωωχ

+−=

+−−

−=

A

A

(3-39)

が得られる。図に共鳴近傍の実部、虚部のグラフを示す。虚数部はローレンツ型とよばれる

曲線になっている。吸収係数は虚部に比例することから共鳴周波数 0ωω ≈ にピークを持つ

ことがいえる。

また、 0→ω 、 ∞→ω の極限ではそれぞれ、

0)(

)()0(

022

0

0

=∞

≈+

=

χωγω

ωχ AA

(3-40)

となり、特に振動数が0に近いときは虚数部は消失するが、実数部は残る。これは静的な

誘電率にはすべての共鳴の情報が含まれていることを意味する。 (6)(6)(6)(6) ローレンツ振動子モデルローレンツ振動子モデルローレンツ振動子モデルローレンツ振動子モデル 物質系として振動子を考え、それが光電場により強制振動させられている力学モデルを

考える。(3-29)で考えた振動数が大きい極限での誘電率は、この力学モデルの振動数

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が大きい極限に相当する。

EEEErrrrrrrrrrrr

efmdt

dm

dt

dm jjj

jj

j =++ 2002

2

0 2 ωγ (3-41)

ここに、振動子の質量: 0m 、有効電荷: ef j 、固有振動数: jω 、減衰定数: jγ 、

jf :振動子強度である。単位体積に nヶの振動子があると考えると、誘起双極子は

∑=

=nj

jjj ef rrrrPPPP (3-42)

であたえられる。 各振動子の振幅のフーリエ成分を考える。

titi

tijj

ee

etωωωω

ωωω

−−

==

=

PPPPPPPPEEEEEEEE

rrrrrrrr

,

)( (3-43)

∑=j

jj efωω rrrrPPPP (3-44)

したがって、(3-41)式の EEEEによる強制振動解は、

ωωωωγω EEEErrrr efim jjjj =+−− )22

0 2( (3-45)

とあらわすことができる。 jrrrr を(3-44)式に代入して、 ωω χε EEEEPPPP 0= を考えると、

∑−−

=j jj

j

i

f

m

e

ωγωωεχ ω

2220

2

(3-46)

が得られる。注目するのは1つの振動子のみとすると、以下の式になる。

ωγωωεχ ω

022

0

0

0

2

2i

f

me

−−= (3-47)

この式と(3-38)を比較すると、係数を除いて同等な式であることがわかる。すなわ

ち、前節の応答関数は(3-41)のような運動方程式で記述される振動子の応答を表し

ていると考えてよい。これら 2つの式を比較することにより、前節の応答関数の定数Aを、

00

02

ωεmfe

A = (3-48)

と決めることができる。このモデルをローレンツ振動子モデルと呼ぶ。

(3-47)は 0→ω の極限2

0

0

0

2

)0(ωε

χ f

me= をもちいると、

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ωγωωωχ

ωγωωεωχ

022

0

20

022

0

0

0

2

2

)0(

2)(

i

i

f

m

e

−−=

−−=

(3-49)

のように変形され、見とうしが良くなる。この時、実部、虚部は

220

2220

20,,

220

2220

220

20,

4)(

)0(2

4)(

)()0(

ωγωωωγωχχ

ωγωωωωωχχ

+−=

+−−

= (3-50)

であたえられる。これは、共鳴近傍で前節のグラフと同じ形状をあたえる。

∞→ω においては、

20

0

2

)(ωε

ωχ f

me−= (3-51)

が得られる。この式と(3-30)を比較すると、 Nf =0 であることがわかる。単一の振

動子を考えていることを考慮すると、この関係式は(3)で述べた振動子強度の総和則そ

のものである。総和則は複数の振動子がある場合には、

∑=

=nj

jjfN (3-52)

と書ける。N=1とおけば、電子1個に複数の振動子が対応することになる。この場合、(3

-41)、(3-42)における有効電荷 ef j の 2 乗の和は ∑=

=nj

jjefe 22のように

2e に等

しくなることを意味する。(前期)量子力学では、光遷移は離散的なエネルギー準位の差を

hで割ったものが光の角振動数に一致したときに生じる(Bohrの量子仮説)ことを考慮すると、量子論の立場ではこれらの振動子は各準位間の光遷移に相当すると考えてよい。

この場合、振動子強度は 2

02

xjm

f jj

h

ω= (3-53)

のように遷移を表すmatrix elementの絶対値の2乗に関係しており、総和則は遷移確率の和が1になることに対応している。 (次節を参照)

1ωh 2ωh 3ωh

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3-1-33-1-33-1-33-1-3 量子論(半古典論)量子論(半古典論)量子論(半古典論)量子論(半古典論)

ここでは、光は古典的な波として取り扱い物質を量子力学的に扱った場合(半古典論)

の光遷移を考えよう。ベクトルポテンシャル A で記述される光(クーロンゲージ、0==⋅∇ φA )と相互作用する電子(質量 m 、電荷 e )を考える。この場合、ハミルト

ニアンは、

radiationHUem

H ++−= 2)(21

Ap (3-54)

と書ける。ここで、Uは電子の感じるポテンシャルであり、電磁場のないとき(AAAA=0)のハ

ミルトニアン Um

Hmaterial += 2

21p により、固有エネルギーや波動関数を求めるのが物質の

量子力学の問題である。(3-54)を展開することにより下式が得られる。

22

222ApAAp

me

me

me

HHH radiationmaterial +⋅−⋅−+= (3-55)

第三項は量子力学では ∇−= hip であることを考慮すると、クーロンゲージの条件から0に

なる。したがって、ハミルトニアンは

22

2

1

21

2

2

A

pA

me

H

me

H

HHHHH radiationmaterial

=

⋅−=

+++=

(3-56)

と書けることになる。このハミルトニアンの第四項 H2は X線散乱や電子ラマン散乱といった現象において重要になるが、通常の光吸収の場合には小さいので無視する。以下、 materialH

で解けた物質系に対して 1H で記述される光との相互作用を時間に依存する摂動法で取り

扱う。

時間に依存する摂動法から、物質系が光との摂動により fi → に遷移する確率 fip は、

iffi

fifi iHfp

ωωω

ωωδπ

−=

−= )(2 2

12h (3-57)

で与えられる。ベクトルポテンシャルを平面波 )exp( tiikx ω−0A で表すと、単位時間、単

位面積あたりの光強度は

20

20

2)( A

cnI

ωεω = (3-58)

と書ける。この関係式と運動量演算子の行列要素をもちいると、(3-57)は以下の様に

変形される。

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if

ncm

IeiHf

fi

fi

pp

lp

=

⋅=2

20

2

22

1 2

)(

ωεω

(3-59)

ここで、lは 0AlA0 = をみたす偏光単位ベクトルである。ところで任意のオペレーターAはハイゼンベルグ表示で、

][ HAi

A ,h

& −=

と書ける。この行列の行列要素は

fifi

fifififi

fifi

Ai

AiAEEi

HAAHi

A

ω

ωω

=

−−=−−=

−−=

)()(

)(

h

h&

(3-60)

一方、pとxの交換関係より18、

m

p

pxppixpm

ixpxp

m

iHxxH

ix

=

−+−=−−=−−= )(2

)(2

)( 222 hhhh

&

(3-60)の Aとして位置演算子xを用いると、 fififi ximω=p である。故に、

)(2

2)(

)(2

2)(

)(2

2

20

2

2

2

20

2

12

ωωδπεω

ωωδωωπ

εω

ωωδπ

−≅

−=

−=

fifi

fififi

fifi

ecn

I

ecn

I

iHfp

x

x

h

h

h

(3-61)

となる。最後の式変形ではデルタ関数の項を考慮して fiωω ≅ とした。以降、始状態として

基底状態をとり 00 =ω とする。この場合 ffi ωω = である。吸収係数は単位長さあたりの光

エネルギーの減少量であるから、この電子が体積 V の中に存在するとすると、

VIp f )()(0 ωωαω =⋅h がなりたつはずである19。したがって、

18 ハミルトニアンのポテンシャルの項には運動量は含まれないものとする。 19 光強度I(ω)は単位面積単位時間あたりの光強度であることに気をつけよ。

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∑ −=f

ffecnV

)(2

2)(

2

00

ωωδπε

ωωα xh

(3-62)

が得られる。吸収係数と感受率の虚数部は(3-19)式より、

22

2

00

0

22

2

00

0

2

00

)(

1lim

)(

1lim

1

)(1

)()(''

ff

f

ff

fff

ff

fff

eV

eV

eV

cn

γωωγ

ε

γωωπγπ

ε

ωωδπε

ωαω

ωχ

γ

γ

+−=

+−=

−==

x

x

x

h

h

h

(3-63)

となる。共鳴の位置では和の中の共鳴項だけが重要になるので、

)(1

1lim)(''

j

2

00

2

00

0

ωγγε

γεωχ

γ

<<≈

=→

j

jj

eV

eV

x

x

h

h (3-64)

となる。最後の変形で、極限をはずして共鳴エネルギーに比べれば細い有限の幅をもつ吸

収にかえた。一方、古典論では(3-46)から共鳴の位置で

j

jj m

fe

γωεωχ

0

2

2)('' = (3-65)

が得られるから、これら二式を比較することで、 2

02

12j

jj e

Ve

mf x

h

ω= (3-66)

が得られる。20これは前節で提示した単位体積あたりの表記(3-53)と同じものである。 このようにして、我々は振動子強度を電子と光との相互作用により基底状態からある準位振動子強度を電子と光との相互作用により基底状態からある準位振動子強度を電子と光との相互作用により基底状態からある準位振動子強度を電子と光との相互作用により基底状態からある準位

に移る遷移確率と関係付けることができたに移る遷移確率と関係付けることができたに移る遷移確率と関係付けることができたに移る遷移確率と関係付けることができた。 まとめまとめまとめまとめ 誘電関数(すなわち、感受率)は古典論では光によって駆動される「振動子」の応答関誘電関数(すなわち、感受率)は古典論では光によって駆動される「振動子」の応答関誘電関数(すなわち、感受率)は古典論では光によって駆動される「振動子」の応答関誘電関数(すなわち、感受率)は古典論では光によって駆動される「振動子」の応答関

数のフーリエ変換で与えられたが、量子論では「振動子」は量子化された物質系の準位間数のフーリエ変換で与えられたが、量子論では「振動子」は量子化された物質系の準位間数のフーリエ変換で与えられたが、量子論では「振動子」は量子化された物質系の準位間数のフーリエ変換で与えられたが、量子論では「振動子」は量子化された物質系の準位間

の遷移に対応しており、古典論の応答関数の大きさは準位間の遷移確率に比の遷移に対応しており、古典論の応答関数の大きさは準位間の遷移確率に比の遷移に対応しており、古典論の応答関数の大きさは準位間の遷移確率に比の遷移に対応しており、古典論の応答関数の大きさは準位間の遷移確率に比例している。例している。例している。例している。

20 同様に応答関数の係数も2

00

2je

VA x

hε= となる。

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3-23-23-23-2 局在中心の光学スペクトル局在中心の光学スペクトル局在中心の光学スペクトル局在中心の光学スペクトル

前節で得られた、誘電関数の表式をもちいて、局在中心の光学スペクトルについて考え

てみよう。局在中心は結晶やガラスなどの凝縮体(ホスト)中の不純物イオン(原子)や

欠陥のことである。イオンや欠陥の電子はホストの電子(いわゆるバンド電子)とは異な

ってイオンや欠陥の周りに局在しているために、「局在中心」と呼ばれる。以下で幾つかの

例を紹介しよう。(講義では実物を見せながら詳しく説明する。ここでは概略のみを示す。) ①①①① ルビールビールビールビー サファイア21 に不純物としてクロムイオンが入っている結晶は赤色(またはピンク色)をしている。この結晶は、宝石として有名なルビーである。ルビーはクロムイオンの dレベルの電子が紫~青緑と黄色~橙色の光を吸収するので、補色である赤色に見えるので

ある。 ②②②② FFFFセンターセンターセンターセンター 塩の結晶の一つにKClがある。これは、右図のようにカリウムイオン(K)と塩素イオン(Cl)が交互に等間隔に並んでいる立方晶の結晶であるが、放射線を当てると塩素イオン

が飛びでて、あいた穴に電子がつかまった格

子欠陥がつくられる(青色で示したのが電子

雲の密度)。これを F センターと呼ぶ。KClの F センターは緑~赤色に強い吸収帯を持つので、結晶は青色に見えるようになる。 ③ CDCDCDCD----RRRR コンピューターの記録材料として進展が著しい CD-R はレーザー光で情報をポリカーボネートの円盤に書き込むメディアである。下図にあるように、円盤中にはポリマーの中

にドープされた色素が存在し、材料によって「シアニン系」(緑色)、「フタロシアニン系」

(金色)、「アゾ系」

(濃い青色)などが

市販されている。こ

れらの色素の色は色

素分子の電子準位に

より決まっている。

レーザー光が照射さ

21 サファイアの純粋な結晶は無色透明である。

K

Cl

電子電子電子電子

書き込み前 書き込み後 保護層保護層保護層保護層

反射層反射層反射層反射層

色素層色素層色素層色素層

ポリカーボネートポリカーボネートポリカーボネートポリカーボネート へこみの生成へこみの生成へこみの生成へこみの生成

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れると、色素は光を吸収した後に分解するので、体積が減少しポリカーボネート膜の変形

が生じる。これが CD-Rにおけるビットの生成である。

局在中心の吸収スペクトル局在中心の吸収スペクトル局在中心の吸収スペクトル局在中心の吸収スペクトル 上の例から、物質の色や機能は局在中心の光吸収によって生じていることを見てきた。

それでは局在中心の光吸収はどのように記述されるのであろうか? 前節で見てきたよう

に光吸収、すなわち誘電関数を決定するためには物質系のエネルギー準位がわからなけれ

ばならない。

1.6

1.4

1.2

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0.0

Optica

lD

ensi

ty

800700600500400300200

Wavelength (nm)

Absorption spectrumof R6G in EtOH

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

Optica

lD

ensi

ty

800700600500400300200

Wavelength (nm)

Absorption Spectrumof Yellow Diamond

色素分子の吸収スペクトル

人工ダイヤモンドの吸収スペクトル

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局在中心の電子は孤立して存在しているのではなく、まわりの振動(色素分子の場合は

自らの分子振動そのもの)と相互作用している。これは、電子の感じるポテンシャルはそ

もそも周りの原子核の位置で決まっており、原子核の位置が振動により動くとポテンシャ

ルそのものも変わることになる。すると、電子のエネルギー準位はシフトするだろう。こ

れは、電子と振動が相互作用していることにほかならない。したがって、物質系の準位を

考える上では、電子系はもちろんのこと核の振動との相互作用を考える必要がある。(下図) 物質系のハミルトニアンを以下の様に書こう。

)(2

)(

),()()(),(

22

int

RUM

RH

RrHRHrHRrH

Rn

ne

+∇−=

++=

h (3-67)

ここで、第一項は電子系、第二項は振動系、第三項は、相互作用ハミルトニアンである。

Rは平衡位置からのずれであるとする。 まず、電子系のみの部分のハミルトニアンの Schrodinger 方程式を解く。ここでは、核の座標 Rはパラメータとして扱う。電子系の固有エネルギーをWlとしよう。

),()(),(),()( int RrRWRrRrHrH llle ϕϕ =+ (3-68) ここで、{ ),( Rrlϕ }は規格直交系をなしている。真のハミルトニアンの波動関数 ),( Rrφ は

次の Schrodinger 方程式を満たす。 ),(),(),( RrERrRrH φφ = (3-69) 波動関数 ),( Rrφ は{ ),( Rrlϕ }で展開可能であるから、

e

電子系 核の振動系

相互作用相互作用相互作用相互作用

r R

)(RU

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∑=l

ll RRrRr )(),(),( ξϕφ (3-70)

と書ける。(3-69)の左から ),(* Rrkϕ をかけてrで積分すると、

[ ]

[ ]∫ ∫

∇∇+∇−=

=+−+

RlRklRkkl

llklkkn

rdrdM

RL

RRLRERWRH

3*32*2

22

)(

0)()()()()(

ϕϕϕϕ

ξξ

h (3-71)

(3-71)式は )(Rkξ の間の連立微分方程式となり、 )(Rkξ の間にミキシングを生み出

す。しかし、解くのは容易でない。そこで、第一式の第二項を無視する近似をおこなう。

これを Born-Oppenheimer近似または断熱近似と呼ぶ。この場合、(3-71)式は次のようになる。 [ ] 0)()()( =−+ RERWRH kvkvkn ξ (3-72) すなわち、 )(Rkvξ は核の系の有効ハミルトニアン )()( RWRH kn + の固有関数であり、全系

の固有エネルギーは kvE のように、(3-68)できめた電子系の固有状態と(3-72)

の核の固有状態をつかってあらわらされることになる。すなわち全系の波動関数は )(),(),( RRrRr lvllv ξϕφ = (3-73)

のように積の形にかけることになる。 (3-71)の第二項を無視する意味は、電子の質量に比べて核の質量は1000倍ほ

ど重いから、核の運動はゆっくりしていると考え、電子はその動きに完全に追随するとい

うことである。 (3-72)の有効ハミルトニアンは、以下のようになる。

)()(2

)( 22

RWRUM

RH lRl ++∇−= h (3-74)

ここで、 )()( RWRU l+ を断熱ポテンシャルと呼ぶ。このようにして、核が断熱ポテンシャ

ル中を運動する問題を解けばよいことがわかる。 電子系として前ページの図に示したような2準位系をとろう。(3-68)の相互作用ハミ

ルトニアンの1次摂動を考えると、電子系のエネルギーは、

RE

lHlERW

ll

ll

η−=+= int)(

(3-75)

となる。(核の座標に関するテーラー展開)基底状態の電子系のエネルギーは0にとる。 この場合、断熱ポテンシャルは、

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lll

llll

Ekk

Rk

ERRk

RWRURU

+−−=

+−=+=

2)(

2

2)()()(

~

22

2

ηη

η (3-76)

となる。これは、平衡位置がシフトした調和ポテンシャルを表している。基底状態のエネ

ルギーを0にとり、その平衡位置を R=0にとるように座標系を変更すると、基底状態、励

起状態それぞれの断熱ポテンシャル )(~

,)(~

RURU eg は以下のようになる。

eee

e

g

Ekk

Rk

RU

Rk

RU

+−−=

=

2)(

2)(

~

2)(

~

22

2

ηη (3-77)

あとは、この断熱ポテンシャル中での核の問題を解き22、固有状態を決定して遷移行列要素

を計算すれば吸収スペクトルが求まることになる。

22 これはいわゆるシフトした調和振動子の問題である。

断熱ポテンシャル

R

)(~

RUe

eE

)(~

RUg

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光吸収スペクトル光吸収スペクトル光吸収スペクトル光吸収スペクトル

)(2

2)(

2

00

ωωδπε

ωωα −= ∑ fff

ecnV

xh

(3-78)

ここで、

drdRRreRre ff ∫= ),())(,( 0*

0 φφ xx (3-79)

コンドン近似 波動関数 )(),(),( RRrRr ξϕφ = の電子部分 ),( Rrϕ の R依存性を無視する。すなわち、どの Rの位置でも、電子の遷移確率は一定であるとする。この場合、

dRdre

drdRRreRre

ff

ff

∫ ∫∫

=

=

0*

0*

0*

0

)(

),())(,(

ξξϕϕ

φφ

x

xx

電子のみの遷移双極子モーメントefe 0x に等しい

となる。したがって吸収スペクトルは、

)(2

2)(

2

0*2

00

ωωδξξπε

ωωα −= ∫∑ ffef

f

dRecnV

xh

(3-80)

定数 フランクコンドン因子

である。要は、フランクコンドン因子を計算できれば良い。励起状態の振動波動関数は前

ページの断熱ポテンシャルに示したように、調和ポテンシャルの平衡位置が、k

RR eη−='

のようにkeηだけずれたものなので、計算は容易に実行できる。波動関数は調和振動子の波

動関数を用い、振動準位間 'll → の遷移を考えると、フランクコンドン因子は以下のように

なる。ここに、 )(Qlχ は調和振動子の波動関数である。

[ ]2''

2*'

2

0*

)(!'!

)()(

SLSl

le

dQQQdR

lll

llS

ilf

−−−

=

−= ∫∫ χδχξξ (3-81)

ここで、座標は基準モードに変数変換し、2

,,2δ

ωηδ

ω=== S

kR

kQ e

hhである。

)(' SL lll−

はラゲールの多項式である。23 極低温を考えて、基底状態は一番下の振動準位に

23 この変数変換で励起状態の断熱ポテンシャルは

eESQ +−− ωδω hh 2)(21

となることに注意せよ。

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おり、以下、極低温を考えて、基底状態は一番下の振動準位にいるとすると、(3-81)

は簡単になり、

=

−=

∫∫

!'

)()(

'

2

0*'

2

0*

l

Se

dQQQdR

lS

lf χδχξξ (3-82)

であるから、吸収スペクトルは、以下のようになる。

)(!

22

)( 00

2

00

ωωωδπε

ωωα −+−= ∑− hhh

lSEl

See

cnV el

lSe

fx

(3-83) これは、 lに関してポアッソン分布になっていることがわかる。特に 0=l の場合をゼロフォ

ノン線または0-0遷移とよぶ。これが最低エネルギーの光遷移となる。また、(3-83)

の和の中で一番大きい寄与をするのは Sl ≈ のときである。これは前ページの脚注を考え合

わせると、Q=0 の位置で基底状態から垂直に遷移する場合に相当している。このように、断熱ポテンシャル間を光遷移するときには垂直に遷移する確率が一番大きい。これをフラフラフラフラ

ンクコンドン原理ンクコンドン原理ンクコンドン原理ンクコンドン原理と呼ぶ。 和の中のデルタ関数を有限な幅のローレンツ関数でおきかえると、この章でみせた色

素や格子欠陥の「光吸収の広い幅」の原因が良くわかる。すなわち、電子系と核が(3-

67)のように強く結合している系では光によって電子遷移がおきると同時に振動状態も

励起されるので、幾つかの遷移がエネルギー的に重なり合って幅広い吸収として観測され

るのである。(授業で図を配る予定) これまでは、吸収過程を考えてきたが、物質から光が生成される発光という現象は、

励起状態から基底状態に電子系が遷移するときに生じる光である。この場合も、上と同じ

方法で考えることが出来る。励起状態は振動状態は一番下にあるとし、基底状態の振動状

態への光遷移を考えればよい。 この場合発光スペクトルは以下の様に与えられる。

)(!

22

)( 00

2

00

ωωωδπε

ωω −−−= ∑− hhh

lSEl

See

cnVI e

l

lSe

fx

(3-84) 明らかにゼロフォノン線の位置は吸収のそれと一致し、鏡映対称なポアッソン分布になっ

ていることがわかる。すなわち、発光は吸収の存在しない低エネルギー領域に現れること

がわかる。このような性質(吸収によるロスがない発光)を利用してレーザー発振の材料

がつくられている。

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3-33-33-33-3 ポラリトンポラリトンポラリトンポラリトン 3-1節の(3-25)式で分散関係

εµω22 =k (3-85)

を導いた。この中の誘電関数は、単一ローレンツ振動子を考えると(3-49)のように

ωγωωωγωωχε

ωγωωωχε

ωγωωεε

ωχεε

022

0

022

00

022

0

20

0

022

0

0

0

2

0

0

2

2))0(1(

)2

)0(1(

)2

1(

))(1(

i

i

i

i

f

m

e

−−−−+

=

−−+=

−−+=

+=

となるから、結局

2

022

0

022

02

2

2

2))0(1(1 ωωγωω

ωγωωχi

i

ck

−−−−+

= (3-86)

が得られる。この式は右辺はωのみの関数なので、ωを決めると kは一意的に決まるが、k

を決めてもωに関する4次方程式になり複数のωの解がえられる。これは真空中の光の分

散関係 ck=ω とはまったく異なっている。これは、上の導出がMaxwell方程式のPとEと、

物質中の振動子を表す(3-41)、(3-42)のなかのPとEの連立微分方程式を解い

たことに対応していることからきている。すなわち、電場Eにより振動子が駆動され双極

子Pが発生し、双極子Pは電場Eの値を変えるという物質中の事情を正確に反映している

のである。 分散関係は一般にある粒子を表すので、物質中では振動子と光は渾然一体となり(3-分散関係は一般にある粒子を表すので、物質中では振動子と光は渾然一体となり(3-分散関係は一般にある粒子を表すので、物質中では振動子と光は渾然一体となり(3-分散関係は一般にある粒子を表すので、物質中では振動子と光は渾然一体となり(3-

86)の分散関係で表される粒子が存在すると考えたほうが良い。この素励起をポラリト86)の分散関係で表される粒子が存在すると考えたほうが良い。この素励起をポラリト86)の分散関係で表される粒子が存在すると考えたほうが良い。この素励起をポラリト86)の分散関係で表される粒子が存在すると考えたほうが良い。この素励起をポラリト

ンと呼ぶ。ンと呼ぶ。ンと呼ぶ。ンと呼ぶ。 (3-86)式のなかの減衰定数が0であると考えると、

0)))0(1(( 20

2222220

4 =+++− ωωωχω kckc

のように 2 次方程式に帰着できるので解くことが可能である。この解は次ページの図のようになる。この分散関係から得られる物質の特徴的な光学的性質については授業で述べる。 (馬より遅く走る光 など)

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ここでは、 kの0や無限大の極限での値について検討する。 kが無限大の場合は明らかに 0ωω → となる。すなわち固有振動数が現れる。

kが0の場合は、 0)0(1( ωχω +→ となる。これは、(3-85)から誘電関数のゼロ点

である。この場合電束密度は0になるから、 PEεED 0 +=== ε0 より、

E0

1−= (3-87)

である。これの発散は0にならないから、kが0の極限での電磁波は縦波であることを表し

ている。したがって、 kが0の極限は縦波の振動数 Lω である。 上図からωが 0ω と Lω のあいだの領域では解がない。これは、物質の中にはこの振動数

領域の光は存在しないことをあらわしており、外から物質に入射した光は全反射する。こ

れを LTLTLTLTギャップギャップギャップギャップとよぶ。 3-43-43-43-4 半導体の光吸収と励起子半導体の光吸収と励起子半導体の光吸収と励起子半導体の光吸収と励起子

・ 半導体のバンド構造 ・ 光吸収(直接遷移型、間接遷移型) ・ 励起子

上記のことについて、授業で具体例を交えながら説明する。

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3-53-53-53-5 非線形光学への誘い非線形光学への誘い非線形光学への誘い非線形光学への誘い 光混合、光スイッチ光混合、光スイッチ光混合、光スイッチ光混合、光スイッチ