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赤血球液
目的
末梢への十分な酸素の供給を補充
循環血液量の維持
適応
慢性貧血
造血機能不全・・・Hb:7g/dlが目安
消化管や生殖器からの少量長期的な
出血 ・・・Hb:6g/dlが目安
急性出血
臨床症状、血液検査などをみる。
Hb:6g/dlでは必須。
保存方法
2〜6℃で保存→冷蔵庫へ
血小板濃厚液
目的
血小板の量的・質的低下による出血の止血、出血予防
適応
化学療法後の血小板減少
・・Plt<1万/μlまたは出血傾向
再生不良性貧血等の産生不良
・・Plt:5千〜1万/μlが目安
出血時の治療的投与
侵襲的処置時、外科的処置時
保存方法
20〜24℃で震盪保存→室温で
新鮮凍結血漿
目的
複数の凝固因子活性の低下を伴う出血や、血漿分画製剤のない凝固因子の補充
適応
大量出血時にRCC、PCと併用しDIC
予防
術後肝不全、肝移植時
濃縮製剤のない凝固因子欠乏症など
保存方法
-20℃以下→冷凍庫へ
http://www.municipal-hospital.toyohashi.aichi.jp/bumon/center/center_07/center_07_02.html
血液を遠心分離すると・・・
新鮮凍結血漿
血小板濃厚液
赤血球液
抗体(
血漿中)
が
含まれている
抗原(
血球中)
が
含まれている
輸血の単位とは?
200 mlの献血から作られる量が1単位
赤血球液:
血液200ml中の赤血球+赤血球保存用添加液(MAP)46ml→1単位(140ml)
血液400ml中の赤血球+赤血球保存用添加液(MAP)92ml→2単位(280ml)
新鮮凍結血漿:
血液200mlから分離→1単位(120ml)
血液400mlから分離→2単位(240ml)
濃厚血小板:
血液200mlまたは400mlから分離した血小板を血漿に浮遊。
1単位(約20ml) 血小板数 0.2×1011個以上
2単位(約40ml) 血小板数 0.4×1011個以上
5単位(約100ml) 血小板数 1.0×1011個以上
10単位(約200ml)血小板数 2.0×1011個以上
輸血ができるとはどういうことか。
溶血しなければ輸血できる!
重要な副作用の起こるABO型を含め、血漿の抗体と血球の抗原で抗原抗体反応が起こらなければ良い。
患者の血液中にどんな抗原・抗体があるか。
血液製剤中にどんな抗原・抗体があるか。
ABO型
赤血球には300〜400種類の血液型があり、中でもABO型が最も重要である。
それぞれの抗原と抗体で抗原抗体反応が起こることによって溶血する。
http://thongman26.rssing.com/chan-13678185/all_p4.html
ABO型
おもて試験 うら試験
採血時の取り違いや誤判定を防止するため、原則として異なる時点で採血された2検体でそれぞれ検査を行い、両方の結果が一致することを確認し血液型を
確定する。 http://www.soarer.hoken.med.yamaguchi-u.ac.jp/Wiki/?ABO%BC%B0%B7%EC%B1%D5%B7%BF%B8%A1%BA%BA
不規則抗体とは
規則抗体(自然抗体)
生まれながらに持っている抗体。
抗A抗体、抗B抗体がこれに含まれる。
不規則抗体(免疫抗体)
血球表面には多くの抗原が発現している。輸血などによっ
て他人の血球が血液中に入ってきた場合、ある種の抗原に
対する抗体が産生される場合がある。これを不規則抗体(免
疫抗体)という。
不規則抗体が産生される原因としては、輸血、妊娠である。
クロスマッチ(交差適合試験)
クロスマッチは溶血性輸血副作用防止の最後の砦!
ABO血液型の不適合を検出
37℃で反応する臨床的に意義のある不規則抗体を検出
クロスマッチ検体はABO血液型検体とは別の時点で採血した検体を用いて行う。
→検体取り違えによるABO不適合輸血を防止するため
超緊急時
検査用採血ができない!
血液型の検査も不能!
このような状態で直ちに輸血が必要な時は・・・
O型の赤血球と必要に応じてAB型の新鮮凍結血漿、血小板を投与する。
Rh型については妊娠可能な女性に対してはRh(-)が理想だが、救命第一でRh(+)を投与可。
同時に血液型の検査、不規則抗体についても検査行っていく。
▶異型輸血という。
緊急時
クロスマッチ試験を施行する時間のない時
患者側:ABO型、Rho(D)型、不規則抗体の有無を明らかにしておく。
製剤側:ABO血液型のおもて試験を行う。
コンピューター上で確認行い、型一致の血液製剤を選択する。またこのコンピュータークロスマッチは、コンピューターシステムが整っていることが前提である。
クロスマッチ試験を省略し、輸血する赤血球製剤のABO
型を再確認し型適合輸血を行う。
Type&Screen
手術時、出血量が500〜600ml以下と少なく、直ちに輸血する可能性が少ないと予測される場合
受血者のABO血液型
Rho(D)抗原
臨床的に意義のある不規則抗体の有無
をあらかじめ検査しておく。
Rho(D)陽性かつ不規則抗体が陰性の場合
→クロスマッチ済みの血液の用意はしない。
緊急で術中に輸血が必要になった時
→おもて検査または主試験で適合の血液を輸血する。
輸血製剤を無駄にせず、効率的に輸血を行える。
フィルタメッシュ:約180μm(点滴筒上部)
赤血球の大きさ 6~9.5μm(平均 8μm)
輸血セット
赤血球・新鮮凍結血漿用
140~170㎛(先端コネクター部)
血小板の大きさ1.5~3.5μm(平均 2μm)
濃厚血小板用
テルフュージョン血小板輸血セット JMS輸血セット
輸液セットに輸血をつなぐと・・・
目詰まりおこしたり、無理に加圧して輸血すると溶血する。
必ず輸血セットで輸血する!
血液製剤は単独投与が原則!
他薬剤との混注で凝固が起こる可能性がある。
前後に生食を流し他薬剤との混注は避ける!
輸血用血液製剤取り扱いマニュアル
副作用 溶血性副作用
非溶血性副作用
免疫学的副作用・・アレルギー、発熱など
非免疫学的副作用・・感染、高K血症、TACO(循環過負荷)など
副作用発生頻度
日本赤十字社 Haemovigilance by JRCS 2008
溶血性副作用
赤血球製剤に特徴的な副作用として、溶血性副作用がある。
急性溶血・・・ABO型不適合輸血、機械的溶血
遅発性溶血・・・不規則抗体
特に注意すべきはABO型不適合輸血による急性溶血!
頻度は1/200000と報告されているが致死的な副作用である。
ABO型不適合による急性溶血
原因
赤血球上の抗原にIgM型の抗体が結合することにより補体を活性化させ血管内溶血を起こすと、それに続いてサイトカインの過剰産生、血圧低下、腎不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)等の症状が出現する。
症状
▶発熱・悪寒
▶疼痛
▶悪心・嘔吐
▶呼吸困難
▶興奮・錯乱
▶血圧低下・頻脈・ショック
TRALI (Transfusion-related acute lung injury:輸血関連急性肺障害)
輸血中もしくは輸血後6時間以内に両肺浸潤を伴う肺障害をきたす。致死率は約10〜15%と考えられている。
症状
▶呼吸困難・発熱・血圧低下・頻脈など
診断基準
▶輸血中〜輸血後6時間以内
▶低酸素血症:PaO2/FiO2<300mmHg or SpO2<90%(Room air)
▶胸部X-Pで両側肺浸潤影
▶循環過負荷を認めない(非心原性)
▶急性肺障害を来す他の要因を除外
TRALI
TACO(輸血関連循環過負荷)との鑑別
TRALIと同様の症状を来す。BNP測定が鑑別に有用。
原因
血液製剤中の白血球抗体が受血者の白血球もしくは血管内皮細胞などと反応し、肺の毛細血管内皮細胞の透過性亢進が起こる。それにより肺胞が浸出液で満たされ呼吸不全となる。
治療
直ちに輸血中止する。
呼吸管理:酸素療法。必要に応じて人工呼吸器の使用。
薬物治療:副腎皮質ステロイド剤、昇圧剤(血圧低下時)
TACO (Transfusion Associated Circulatory Overload:輸血関連循環負荷)
輸血後6時間以内に起きる呼吸不全を伴う心不全。
症状
▶呼吸困難、高血圧、頻呼吸、頻脈
診断基準
▶下記項目のうち4つを満たすものをTACOとする。
▶急性呼吸不全
▶頻脈
▶血圧上昇
▶胸部X 線上急性肺水腫もしくは肺水腫の悪化
▶水分バランスの超過
TACO
原因
輸血速度が速すぎる、または輸血量が多すぎることが循環量過剰となり発症する。
診断
プラスの水バランス、高い中心静脈圧・肺動脈楔入圧、心エコー等による臨床所見、BNPの測定
治療
▶直ちに輸血中止
▶人工呼吸器の管理
▶利尿剤投与
症例① 65y.M 再生不良性貧血
10:10 BP:121/71mmHg SpO2:88~91%(room air) BT:36.4℃
12:45 PC10単位ゆっくり輸血開始。
13:20 PC輸血中変わりなし。
13:45 トイレから帰ってきた後、呼吸苦の訴えあり。
肩での努力様呼吸、やや喘鳴認める。全肺でラ音聴取。
→PC輸血すぐに中止し、生食に変更。ベッド80度挙上し酸素カ
スロ3Lより開始。
BT:36.9℃,SpO2:68~72%(room air) BP:測定不可
悪寒、呼吸苦出現しており喘鳴持続。酸素カスロ8Lに増量後リ
ザーバーマスクで全開投与。
13:50 サクシゾン100mg+生食50mlを急速静注。
TRALIと判断しICUに入室し陽圧換気開始。(BiPAP Vision CPAP:FiO2
0.7,PEEP 8cm)入室後mPSL1000mg点滴。
14:30 呼吸苦改善し、ラ音消失。
症例② 52y.F 多発性骨髄腫
1日目
来院時 BT:36.8℃,BP:110/53mmHg,HR:107回/分
Hb:3.7g/dl、SpO2:56%(room air)→97%(マスク5L)
air入りは右でやや弱、肺雑音聴取せず。咳嗽喀痰なし。
19:12 RBC2単位輸血開始。
20:39 RBC2単位輸血開始。
21:15 SpO2:88%(O2 5L)→93%(O2 8L)、喘鳴なし。
22:20 RBC2単位輸血開始。
22:30 SpO2:98%(O2 8L)→5Lに変更。右肺狭窄音軽度あり。
23:25 SpO2:88~92%(O2 5L)→8Lに変更。喘鳴軽度あり。右肺狭窄音あり。
2日目
00:28 RBC2単位輸血開始。
02:55 入眠中SpO2:89%(O2 5L)→10Lに変更。
03:10 RBC計8単位終了。輸血量:800ml、輸液量:500ml、計900ml
BP:157/80,HR:100,SpO2:93%(O2 10L),喘鳴・呼吸困難感あり。
07:50 SpO2:60台。リザーバーmax投与。メプチンエア2吸入,ソルメルコート
125mg,ネオフィリン125mg点滴。
09:20 挿管目的でHCU入室。ベネット84OBILEVEL装着FiO2:0.9にてSpO2:95%。
10:30 気管支鏡検査施行したが少量の漿液性分泌物吸引するのみで喀痰な
く、粘膜に異常なし。
徐々にFiO2下げ、FiO2:0.45にてSpO2:98%。
ラシックス20mg+ソルダクトン100mg投与にてHr:1110/6h。
3日目
ベネット840 BILEVELから自発呼吸に変更しVT:300~400,SpO2:95%。
PEEP:6,FiO2:0.4
4日目
PEEP:3,FiO2:0.4→SpO2:96%
5日目
PEEP:3,FiO2:0.4→SpO2:100%で抜管。ネーザルハイフローを経てインス
ピリン50%でSpO2:99%