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家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 生産局畜産部畜産振興課 資料5

家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 …...平成20年8月 家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 生産局畜産部畜産振興課

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平 成 2 0 年 8 月

家畜人工授精制度及び受精卵移植制度の概要と課題

生産局畜産部畜産振興課

資料5

Page 2: 家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 …...平成20年8月 家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 生産局畜産部畜産振興課

目次

1.家畜改良増殖の概要 ・・・ 1頁

2.家畜繁殖技術の概要 ・・・ 4頁

3.家畜改良増殖法の改正経緯及び法律改正に係る背景 ・・・ 6頁

4.家畜人工授精制度の概要及び課題 ・・・ 7頁

5.家畜受精卵移植制度の概要及び課題 ・・・ 17頁

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工場集乳

家畜改良増殖と畜産物生産の流れ

小売・量販店等

家畜改良増殖

家畜人工授精用精液等の流通管理の徹底家畜人工授精用精液等の流通管理の徹底

種雄牛

雌牛

精液(受精卵)

人工授精所

家畜市場等

卸売業者

人工授精師獣医師

種畜検査に合格した種雄牛以外の精液は流通しない。 家畜登録制度により、血統(品種)が管理されている。

人工授精受精卵移植

子牛生産

肥育農家

(導入)

と畜場

食肉市場

酪農家

搾乳小売・量販店等

肥育牛

-1-

酪農家・肉牛繁殖農家

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○ 家畜の改良増殖の着実な推進は、血統、能力、体型等を指標とした家畜の交配と選抜による

優良な家畜の生産・確保を通じて、畜産経営の収益性向上・経営安定や国民への良質な畜産物の安定的な供給に寄与。

家畜の改良増殖の意義

質的な向上 量的な向上

肥育和牛1日平均増体量(kg/日):0.60(S50)→0.73(H17)

経産牛1頭当たりの乳量(kg):4,464(S50)→7,893(H17)

乳脂率(%):3.44(S50)→3.99(H17)無脂乳固形分率(%):8.18(S50)→8.79(H17)

和牛A・B4等級以上の比率(%):39.4(H7)→48.1(H19)

畜産農家

・畜産物の付加価値の向上等が図られ、畜産経営における収益性が向上

消費者

・ニーズに合った畜産物の消費が可能

畜産農家

・畜産物の単位当たりの生産コストの低減等が図られ、畜産経営が改善

消費者

・畜産物の安定供給の確保が図られ、合理的な価格での購入が可能

家畜の改良増殖の役割

-2-

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○ 飼料価格の高騰等により、国内の畜産農家の経営は非常に厳しい状況にあり、更なる品質の向

上や生産コストの低減が課題。

○ また、消費者の安心・安全に対する意識が高まる中で、良質な畜産物が生産され、安定的に供

給されることが課題。

○ さらに、国、地方における厳しい財政状況やそれぞれの役割、加えて新しい技術の進展等を踏

まえ、効率的で効果的な家畜改良増殖制度とすることが課題。

家畜の改良増殖を取り巻く状況

優良な家畜の雄の選抜

国の家畜改良増殖目標 都道府県の家畜改良増殖計画

優良な家畜の雌の選抜

種畜候補の造成

体内受精卵・体外受精卵の移植精液の供給・人工授精

種畜検査・証明精液の採取

家畜人工授精所

・体内受精卵の採取

種畜

家畜卵巣の採取

獣医師・家畜人工授精師

・精液の処理

・体内受精卵の処理

・家畜卵巣からの未受精卵の採取・処理、体外受精、体外受精卵の処理

消費者畜産農家

良質な畜産物の生産-3-

能力評価・登録

能力評価・登録

(注:採取・処理等の実施者の詳細は10頁及び17頁を参照)

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家畜繁殖技術の発展

○ 家畜の繁殖に関する技術は、人工授精技術を基礎に発展し、体内受精卵移植技術、体外

受精卵移植技術についても、国内で広く利用されている。

○ 現在では、性判別技術やOPU技術(生体卵胞卵子吸引技術)などが実用化され、さらなる

普及が期待されている。

人工授精技術 体外受精卵移植技術体内受精卵移植技術(技術普及)

1920年代~ 新鮮精液1950年代~ 凍結精液

(技術普及)

1960年代~

(利点)

○ 優良な雌畜から多くの卵子を確保できるともに、枝肉成績等が優れたと体由来の牛生産が可能。

(利点)

○ 生殖器感染性疾病の

蔓延予防に有効。

○ 優良な雄畜を多くの雌

畜に交配することが可能である。

(概要)

○ 雄畜の精液を凍結保存後、人工的に子宮内に注入して妊娠させる技術。

(概要)

○ 雌畜へのホルモン処理により複数排卵を促し人工授精を行った後、複数の受精卵を採取し、 これらを受卵牛の子宮に移植して産子を得る技術。

(利点)

○ 優良な雄と雌から優良な遺伝形質を持った子畜を多数生産することが可能。

○ ホルスタイン雌牛に黒毛和

種の受精卵を移植して子牛を生産することが可能(酪農家の収入源)。

(概要)

○ 生体又はと体の卵巣から採取した未成熟卵子を、体外で培養 して成熟させ、体外受精して受精卵を生産し、これらを受卵牛の子宮に移植して産子を得る技術。

(技術普及)

1980年代~

性判別技術精液や受精卵段階で雌雄判別する技術。

生体から直接未受精卵子を回収する技術。

1頭の雌牛から複数回採卵することが可能。

OPU技術

-4-

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家畜繁殖技術の概要

人工授精技術 体外受精卵移植技術体内受精卵移植技術

人工授精

液体窒素中に凍結保存

種雄牛からの精液採取繁殖雌牛への過排卵処理

人工授精

体内受精卵の回収

体内受精卵移植 体外受精卵移植

体外受精

卵巣からの体外未受精卵の吸引採取及び体外成熟培養

と畜する雌牛から卵巣採取

-5-

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S20年代 S30~40年代 S50年代 S60~現在

種畜法制定 一部改正 一部改正 一部改正家

畜 <昭和23年(1948)> <昭和36年(1961)> <昭和58年(1983)> <平成4年(1992)>

改 ・種牡畜に係る伝染性疾患の検査 ・家畜改良増殖目標(国)、家畜改良 ・家畜体内受精卵移植に関する規制 ・家畜体外受精卵移植に関する規制

良 ・種畜の血統、能力及び体型に応 増殖計画(都道府県)の策定 ・家畜人工授精用精液の譲渡等(輸

増 じた等級の付与 ・家畜登録事業制度の設置 入)制限の緩和

殖 ・家畜人工授精師制度の改善

法 (種畜法廃止)家畜改良増殖法制定

の <昭和25年(1950)>

改 ・臨時種畜検査(都道府県)制度

正 ・家畜人工授精師の免許制

経 ・家畜人工授精所の許可制

(種畜法)

・戦後、家畜の改良増殖の基礎と ・畜産の農業に占める地位の向上、 ・家畜受精卵移植技術が普及し、受 ・家畜体外受精卵移植技術の開発が

なる種畜の確保とその利用の合理 凍結精液の利用の進展等による家畜 精卵の凍結利用の普及も想定された 急速に進展したことを受け、それを

化を図り、家畜の改良増殖を一層 改良増殖技術の進歩により、従来の ことから、伝染性疾患等の蔓延防止 行う者の資格等所要の規定を整備。

法 促進させるため、統制的色彩の濃 種畜の確保及びその効率的な利用の のため、家畜体内受精卵移植に関す

律 い従来の種牡牛検査法及び種馬統 みでは農業経営の改善に不十分とな る規制を導入し、併せて受精卵移植

改 制法に代わり制定。 ったことから、家畜改良増殖目標を 等に係る人工授精師制度の改善を実

正 明らかにし、計画的に達成する制度 施。

に (家畜改良増殖法) を導入。 ・凍結精液利用が一般化するととも

係 ・不慮の事故等で種畜の補充が必 ・公正な家畜登録事業が家畜改良増 に、各国で後代検定システムが整備

る 要となる場合に機動的に対応する 殖を促進することから、家畜改良増 され海外の種雄畜の遺伝的能力の把

背 ため、都道府県知事の臨時種畜検 殖目標に即した登録規程について、 握が可能となった状況を踏まえ、海

景 査制度を導入。 農林大臣の承認制度を導入。 外の種雄畜精液の国内で利用できる

・家畜人工授精技術が飛躍的に発 よう規制緩和を実施。

展・普及したことから、その実施

主体、場所について規制を導入。

家畜改良増殖法の改正経緯及び法律改正に係る背景

-6-

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人工授精受胎率について

○ 近年、乳用牛、肉用牛の人工授精受胎率が低下。

○ 生産性向上のため、低下要因を分析するとともに、その改善を図っていくことが重要な課題

である。

○ 受胎率低下の要因としては、牛側の要因のほか、技術的な面も考えられる。

49.1

59.1

50.9

40.5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

昭58

59

60

61

62

63

平元 2 3 4 5 6 7 8 9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

(年)

(%)

乳用牛

肉用牛

体内受精卵移植

体外受精卵移植

<初回人工授精受胎率の推移>

資料:農林水産省畜産振興課、(社)家畜改良事業団

注:受精卵移植の受胎率は、新鮮1卵移植の受胎率である。ただし、体外受精卵移植の昭62~平8年度の受胎率には凍結卵を含む。

<受胎率向上のための課題(農家からの聞き取り)>

飼養管理・衛生管理の改善 27.9%

発情が明瞭になること 24.1%

19.2%発情発見技術の上達

人工授精技術者の技術向上 10.3%

課 題 割 合

資料:平成14年度繁殖成績実態調査(農家からのアンケート)

-7-

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20.0 22.0

29.0 35.931.8 32.8

0

10

20

30

40

H12 13 14 15 16 17 18 19

(%)

(年)

豚の人工授精について

○ 豚の人工授精実施率は近年増加傾向で推移しているものの、実施率は35.9%(H19年度)

にとどまっており、牛の人工授精実施率がほぼ100%であるのに対しまだ低水準。

○ 飼養規模が大きな経営体では人工授精の普及が進んでいる。

<豚の人工授精実施率の推移>

<規模別人工授精実施状況>

<平成27年度における生産努力目標

(食料・農業・農村基本計画)>

資料:(社)日本養豚協会「養豚基礎調査全国集計結果」注:実施率は、「自然交配と人工授精の併用」と「人工授精のみ」の和である。

64.1

85.0

72.6

55.5

30.4

12.2

3.8

30.1

10.8

15.3

24.4

40.3

56.1

68.6

65.4

13.5

19.2

30.8

83.2

4.2

1.6

3.0

4.3

5.8全体

1~19頭

20~49頭

50~99頭

100~199頭

200~499頭

500~999頭

1,000頭以上

自然交配のみ 自然交配と人工授精の併用 人工授精のみ

資料:(社)日本養豚協会「養豚基礎調査全国集計結果」

豚肉

15年度 27年度農業者その他の関係者

が積極的に取り組むべき課題

127万トン 131万トン

産肉・繁殖能力の向上、

飼養管理技術の高度化(人工授精の4割程度の実施等)による一分娩当たり生産頭数の増加等を通じて経営体質を強化(生産コストの1割程度の低減)

-8-

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精液・受精卵の輸入について

○ 家畜人工授精用精液・家畜受精卵の輸入は、家畜衛生条件に関する二国間の取決めが締

結された国からのみ可能となっている。

○ また、国内で人工受精、受精卵移植に使用するためには、農林水産大臣が指定する輸入精

液証明書発行機関、輸入受精卵証明書発行機関又は当該国の政府機関が発行する輸入精液証明書、輸入受精卵証明書の添付が必要。

オーストラリア、ニュージーランド

めん羊

米国豚

米国、カナダ、オーストラリア、フランス、オランダ、ドイツ

国家畜の種類

<家畜人工授精用精液の輸入が可能な国>

<家畜受精卵の輸入が可能な国>

米国、カナダ牛

国家畜の種類

件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量

アメリカ 124 334,964 285 1,740 29 1,015カナダ 66 205,304 12 202

計 190 540,268 285 1,740 0 0 41 1,217

アメリカ 128 286,497 255 1,521 36 1,615カナダ 68 228,014 9 165

計 196 514,511 255 1,521 0 0 45 1,780

アメリカ 132 272,929 266 1,517 45 2,322カナダ 11 20,693 15 425オランダ 72 315,296

計 215 608,918 266 1,517 0 0 60 2,747

アメリカ 140 359,127 232 1,373 41 1,763カナダ 16 37,838 20 893オランダ 68 260,479ニュージーランド 1 270

計 224 657,444 232 1,373 1 270 61 2,656

アメリカ 138 316,629 102 623 42 1,732カナダ 14 60,662 19 713オランダ 72 271,324ニュージーランド 1 234

計 224 648,615 102 623 1 234 61 2,445

受精卵

2002

2003

精液

牛 豚 めん羊

2004

2005

2006

<家畜人工授精用精液と家畜受精卵の輸入状況>

資料:動物検疫所調べ

-9-

(平成20年8月現在)

(平成20年8月現在)

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家畜人工授精技術に係る規制1 目的と概要

○ 家畜人工授精は、優良な種畜の精液を効率的に利用することにより、家畜の改良増殖を推

進するものであり、家畜人工授精を適切に推進していくため、実施者や実施場所等について、家畜改良増殖法により必要な規制が定められている。

○ 精液の採取、処理、注入実施者: 獣医師又は家畜人工授精師(法第11条)

○ 精液の採取、処理場所: 家畜人工授精所、家畜保健衛生所、その他家畜改良センター又は

都道府県が開設する施設 (法第12条)

○ 家畜人工授精師: 都道府県知事の免許制 (法第16条)

○ 家畜人工授精所: 都道府県知事の許可制 (法第24条)

3 実施者や実施場所等に関する規制

獣医師又は家畜人工授精師

獣医師又は家畜人工授精師

精液採取・処理(検査、収容、封) 人工授精精液流通

<実施者>

家畜人工授精所家畜保健衛生所等 農家等

<実施場所>

2 家畜人工授精のスキーム

-10-

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家畜人工授精所について

○ 家畜人工授精所は、精液・受精卵が細菌の増殖等の悪感作を受けることを防止するため、一

定の衛生条件を満たすものとする必要があり、都道府県知事の許可制とされている。

○ 農林水産大臣又は都道府県知事は、家畜の改良増殖を促進するため必要があると認めると

きは、種畜検査委員等に家畜人工授精所に立ち入り検査を行わせることができることとされているが、その実施状況は都道府県により異なっている状況。

法第35条

農林水産大臣又は都道府県知事は、家畜の改良増殖を促進するため必要があると認めるときは、種畜検査委員又は地方種畜検査委員に畜舎、家畜人工授精所その他家畜人工授精若しくは家畜受精卵移植を行う場所に立ち入らせ、関係者に質問させ、家畜、施設の構造、設備、器具その他の物件若しくは種付台帳、家畜人工授精簿その他必要な書類(これらの作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。次条第一項において同じ。)を検査させ、又は検査に必要な最少限度の分量に限り種畜の精液、家畜卵巣、家畜未受精卵若しくは家畜受精卵を収去させることができる。2 (略)3 第一項の規定による立入検査等は、犯罪捜査のため認められたものと解釈してはならない。

<家畜人工授精所の具体的な基準> <立ち入り検査に係る規定>

<構造>

処理室を有し、かつ、家畜人工授精用精液を採取し、若しくは注入し、家畜体内受精卵を採取し、若しくは移植し、又は家畜体外受精卵を移植する場所が外部から見えないような囲障があること。

<設備>

処理室が衛生的操作並びに家畜人工授精用精液又は家畜受精卵及び薬品の保管に支障がないこと。

<器具>

○ 家畜人工授精を行う場合にあつては、その採取、検査、処理、保存又は注入に必要な器具及びこれらの器具の消 毒に必要な器具を備えていること。

○ 家畜体内受精卵移植を行う場合にあつては、その採取、検査、処理、保存又は移植に必要な器具及びこれらの器具の消毒に必要な器具を備えていること。

○ 家畜体外受精卵移植を行う場合にあつては、家畜未受精卵の採取、処理、家畜体外授精、家畜体外受精卵の検査、処理、保存又は移植に必要な器具及びこれらの器具の消毒に必要な器具を備えていること。

<家畜人工授精所>

3,019ヵ所(平成20年3月末)

-11-

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家畜人工授精師の免許制度

○ 家畜人工授精師の免許は、農林水産大臣の指定する者又は都道府県が家畜種類別に行う

講習会の課程を修了してその修業試験に合格した者に与えられる。

○ 修業試験に係る家畜の種類についてのみ、当該免許に係る家畜人工授精等の業務を行う

ことができる。

○ 技術者を安定的に確保するためには、講習会の開催状況等の情報提供を充実させる必要

があるのではないか。

<対象とする家畜の種類><講習会・修業試験の内容と資格の区分>

家畜人工授精

のみできる家畜人工授精師

家畜人工授精及び家畜体内受精卵移植

(家畜体外授精卵の移植を含む)のみできる家畜人工授精師

家畜人工授精並びに家畜体内受精卵移植及び

家畜体外授精卵移植を実施できる家畜人工授精師

家畜体内受精卵移植

に関する科目家畜体外受精卵移植

に関する科目

資格区分

講習会・

修業試験の内容

県、大学豚

家畜改良センター、大学山羊

家畜改良センター、大学めん羊

家畜改良センター、民間団体馬

県、大学、家畜改良センター、民間団体

主な講習会開催者家畜の種類

<免許交付者>

家畜人工授精師 :75,717名

家畜体内受精卵移植の業務 : 3,152名

家畜体内受精卵移植及び家畜体外受精卵移植の業務 : 820名

資料:(社)中央畜産会「家畜改良関係資料」

(平成18年12月末現在)

家畜人工授精

に関する科目

-12-

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家畜人工授精において必要とされる書類等

○家畜人工授精用精液証明書(表)

(うら)

種畜証明書番号 種畜の等級

名    前

家畜登録機関名及び登録番号

種類及び品種

精液採取年月日

種畜飼養者の住所及び氏名又は名称

獣医師(家畜人工授精師)の登録番号(免許番号)及び住所、氏名

精液を採取した種畜

第          号(番号又は記号)

家畜人工授精用精液証明書

○ 種畜の飼養者は、「種付台帳」を備え、種付け又は家畜人工授精用精液の採取に関する

事項について、正確な記録を行い、少なくとも5年間は保存しなければならないと規定されている。

○ 採取された家畜人工授精用精液は、検査後、速やかに容器に収められ、封かんされるが、

その際には、家畜人工授精用精液証明書が添付される。

○ 「家畜人工授精用精液証明書」の裏に、流通段階における経由を確認するため、譲渡者

の住所、氏名、譲渡年月日を記載する必要。

○種付台帳(表紙) (家畜人工授精用精液の採取等に関する事項)

種畜飼養者  住所  氏名又は名称

血統

家畜登録

種畜

種付台帳(精液採取台帳)

種畜証明書番号

名前

種類及び品種

生年月日

家畜登録機関名

登録番号

1   回

2   回

3   回

4回以上

年次

種付け

精液の採取

精液採取回数

精液譲渡量

産子数

不 明 数

不 受 胎 数

受 胎 数

種付回数別実頭数

種付回数

(年次別の種付け及び精液採取の成績表)番号

名前

家畜登録機関名及び登録番号

種類及び品種

毛色及び特徴

生年月日

飼養者の住所及び氏名又は名称

摘要

 月  日  月  日  月  日  月  日

発行年月日

番号及び契印

生年月日

摘要

子畜

種付けした雌

種 付

証明書

種付年月日

(種付けに関する事項)

活力及び生存率

き型率

き釈液及びき釈倍率

凍結後の活力及び生存率

(※) (※) (※) (※) ※

号から

号まで

摘要

封を施した本数及び家畜人工授精用精液証明書番号

精液の譲渡又は注入若しく

は体外受精

(※)

年月日家畜人工授精用精液証明書番号

譲渡量譲渡先又は注入を受けた雌畜の飼養者若しくは体外受精に係る未受精卵の所有者の住所及び氏名又は名称

獣医師(家畜人工授精師)

採取した獣医師又は家畜人工授精師の氏名

PH

(※)

精子数

(※)

-13-

流通段階における経由を確認するため、譲渡者及び譲受者の住所、氏名、譲渡年月日を記載するよう規定。

     (県) 第      号              印

譲受者の住所、氏名又は名称及び譲受けをした年月日

  譲 渡 ・ 経 由 の 確 認

(参考)注入又は体外授精記録

注入を受けた雌畜の飼養者又は体外授精に係る未受精卵の所有者の氏名又は名称

獣医師(家畜人工授精師)の登録番号(免許番号)及び氏名

注入又は体外授精をした年月日

注入を受けた雌畜又は対外授精に係る未受精卵を採取した卵巣と採取した雌畜の名前

家畜登録機関名及び登録番号

譲渡者の住所、氏名又は名称及び譲渡をした年月日

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各県メインセンター 農協獣医師人工授精師

各県サブセンター

(各地域)

精液ストロー

県有種雄牛(肉牛)

LIAJ有種雄牛(肉牛)AI事業体有種雄牛(乳牛)

民間種雄牛(肉牛)

輸入精液(乳牛)獣医師人工授精師

人工授精

中間取扱者

家畜人工授精用精液の都道府県域での主な流通(イメージ)

○ 肉用牛における県有や改良事業団有種雄牛の精液、国産乳用牛精液は、各人工授精師まで

の流通ルートが確立しており、問題が生じたとしても、ある程度トレースが可能と思われる。

○ その一方、肉用牛における民間種雄牛の精液や、乳用牛における輸入精液は、流通ルートが

不明な場合がある。

<精液の流通ルート>

中間取扱者

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家畜人工授精用精液証明書等における課題

○家畜人工授精用精液証明書 ○授精証明書 ○家畜人工授精簿(表)

(うら)

種畜証明書番号 種畜の等級

名    前

家畜登録機関名及び登録番号

種類及び品種

精液採取年月日

種畜飼養者の住所及び氏名又は名称

獣医師(家畜人工授精師)の登録番号(免許番号)及び住所、氏名

精液を採取した種畜

第          号(番号又は記号)

家畜人工授精用精液証明書種畜

家畜人工授精用精液証明書番号

名前

名      前

家畜登録機関名及び登録番号

種類及び品種

毛色及び特徴

生 年 月 日

飼養者の住所及び氏名又は名称

獣医師 (家畜人工授精師)   登録番号 (免許番号)     (県)第       号

住 所氏 名               印

年   月   日

(家畜人工授精用精液証明書又は精液採取に関する証明書(乙)をここにはり付けること。)

第   号授 精 証 明 書

精液を注入した雌畜

精液注入年月日

 上記のとおり家畜人工授精用精液を雌畜に注入したことを証明する。

獣医師 (家畜人工授精師)

登録番号 (免許番号)            (県) 第    号

住   所

氏   名

家 畜 人 工 授 精 簿

(表紙)

○ 授精証明書を交付する際には、家畜人工授精用精液証明書をはり付けること、また、授精証明書

の交付前においては、家畜人工授精簿に添付しておくことが規定されている。

○ 家畜人工授精用精液証明書は、個体の識別及び不正防止のために添付されるが、現状の精液流

通においては、精液ストローと証明書が分離して流通する可能性があり、取り間違えや故意の偽装が生じる可能性がある。

○ 牛については、精液ストローに種畜の名前、精液採取年月日等が印字されていれば、ストロー自体

を精液証明書と同様と見なすことが可能ではないか。

○ また、証明書の裏書きに流通段階における譲渡先等を記載することと規定されているが、大量に精

液を生産する人工授精所においては事務量が膨大となっている。

○ 授精証明書の偽装事例

栃木県那須塩原市の酪農家が、偽の授精証明書をつけた子牛を同県の家畜市場に出荷。

DNA鑑定により授精証明

書に記載された親の雄牛と異なっていることが判明。

県は、家畜改良増殖法に基づき行政指導を実施。

(平成20年3月)

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     (県) 第      号              印

譲受者の住所、氏名又は名称及び譲受けをした年月日

  譲 渡 ・ 経 由 の 確 認

(参考)注入又は体外授精記録

注入を受けた雌畜の飼養者又は体外授精に係る未受精卵の所有者の氏名又は名称

獣医師(家畜人工授精師)の登録番号(免許番号)及び氏名

注入又は体外授精をした年月日

注入を受けた雌畜又は対外授精に係る未受精卵を採取した卵巣と採取した雌畜の名前

家畜登録機関名及び登録番号

譲渡者の住所、氏名又は名称及び譲渡をした年月日

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牛の人工授精用精液等の流通における課題

○ 「家畜の遺伝資源の保護に関する検討会」の中間取りまとめにおいては、『精液証明書と一体

になった精液ストロー等の流通管理の強化を図るため、精液の利用状況を生産者へフィードバックしていくシステムを構築する等、流通管理体制の構築を進めるべきである』とされたところ。

○ 流通管理体制構築のため、人工授精所開設者や、精液の流通に携わる者の協力の下、精液ス

トローに印字を行い、その情報を活用することによるトレーサビリティ制度の導入も考えられるが、労力やコストなどが課題。

精液生産段階

精 液 生 産 報 告

流通段階 人工授精段階

精 液 使 用 報 告

精液ストロー

○月○日種雄牛名

○○本生産○月○日種雄牛名

精液生産・使用データベース

平茂 H20.5.12種雄牛名、採精年月日、

バーコード

精 液 証 明 書

<精液流通管理トレーサビリティ制度のイメージ>

精液証明書

譲渡先を記入

人工授精師

獣医師

人工授精師、獣医師

精液証明書

譲渡先を記入

中間取扱者

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家畜受精卵移植技術に係る規制1 目的と概要

○ 家畜受精卵移植は、優良な雄と雌から、優良な遺伝形質を持った子畜を多数生産する技術

であり、家畜受精卵移植を適切に推進していくため、実施者や処理の場所等について、家畜

改良増殖法により必要な規制が定められている。

○受精卵採取及び生体からの卵巣採取実施者: 獣医師(法第11条の2第1・2項)

○と体からの卵巣採取・未受精卵採取及び受精卵の移植実施者: 獣医師又は家畜人工授精師(法第11条の2第3~5項)

○体内受精卵及び卵巣の採取場所: 場所を制限しない

○処理場所: 家畜人工授精所、家畜保健衛生所、その他家畜改良センター又は都道府県が開設する施設 (法第12条)

3 実施者や実施場所等に関する規制

2 受精卵移植のスキーム

<実施者>

<実施場所>

獣医師 獣医師又は家畜人工授精師

家畜人工授精所家畜保健衛生所等

農家等

採取した獣医師(指示下の他の

獣医師又は家畜人工授精師)

農家等

受精卵採取 受精卵移植受精卵流通処理(検査、収容、封)

<体内受精卵移植>

獣医師又は家畜人工授精師

獣医師又は家畜人工授精師

家畜人工授精所家畜保健衛生所等

農家等

採取した獣医師又は家畜人工授精師(指示下の他の獣医師又は家畜人工授精師)

と畜場、農家等

(と体から卵巣採取)

(生体から卵巣採取)

獣医師 採取した獣医師(指示下の他の獣医師又は家畜人工授精師)

卵巣採取 処理(未受精卵の採取、

体外受精、検査、収容、封)

受精卵移植受精卵流通

<実施者>

<実施場所>

<体外受精卵移植>

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Page 20: 家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 …...平成20年8月 家畜人工授精制度及び受精卵移 植制度の概要と課題 生産局畜産部畜産振興課

OPU技術(生体卵胞卵子吸引技術)における課題

○ 雌の生体内の卵巣から未受精卵を吸引し、体外受精により受精卵を生産する技術(OPU技術)

は、これまで困難であった若齢牛や妊娠牛、繁殖障害牛からの受精卵生産を可能とすることから、今後、進展が期待される技術。

○ 家畜改良増殖法では、「雌の家畜から家畜卵巣を採取」と規定されているので、OPU技術の普

及のためには検討が必要。

移植可能胚(体外受精卵)

生体卵胞卵子吸引(OPU)

採取した卵子(未受精卵)

超音波像

円内の黒い部分が卵胞。点線上に吸引針が出る。

体外受精

プローブ、吸引針、卵巣超音波像を確認しながらプローブに卵巣を押しつけ、卵胞を吸引針で穿刺して卵子を採取する。

<OPU技術による家畜体外受精卵の生産>

OPU採卵頭数:1,552頭(延べ頭数)

OPU由来体外受精卵生産数:3,846個

(体外受精卵総生産数:48,939個)

(平成17年度)

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