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平成28年度 経済建設委員会行政視察報告書 期 間: 平成 28 年 11 月 8 日(火)~11 月 10 日(木) 視察先: 福岡県久留米市 佐賀県鳥栖市 福岡県飯塚市 宮ノ陣クリーンセンターの建設について 企業誘致戦略について 立地適正化計画(コンパクトシティ)について 参加者: 松崎隆治、長谷川敏廣、岡田隆司、鈴木規子 神谷庄二、髙須一弘、鈴木正章 随行: 大野修司、菅沼賢次

経済建設委員会行政視察報告書 - Nishio47458,c...2017/02/02  · 平成28年度 経済建設委員会行政視察報告書 期 間: 平成28年11月8日(火)~11月10日(木)

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平成28年度

経済建設委員会行政視察報告書

期 間: 平成 28年 11月 8日(火)~11月 10日(木)

視察先: 福岡県久留米市

佐賀県鳥栖市

福岡県飯塚市

宮ノ陣クリーンセンターの建設について

企業誘致戦略について

立地適正化計画(コンパクトシティ)について

参加者:

松崎隆治、長谷川敏廣、岡田隆司、鈴木規子

神谷庄二、髙須一弘、鈴木正章

随行: 大野修司、菅沼賢次

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(経済建設委員会・福岡県久留米市)

-1-

久留米市は、福岡県南部に位置する人口約 30万人余り、

面積約 230k ㎡を要する福岡第3の都市で平成 20 年に中核

市となった。財政力指数 0.61ではあるが、ベッドタウンと

して福岡市、北九州市へも近く、また九州各地への交通ア

クセスの要衝となっており、ブリジストン起業の地として

栄えている。

宮ノ陣クリーンセンターの建設について

【日時】平成 28年 11月 8日 14時~16時

【場所】久留米市宮ノ陣クリーンセンター

1. はじめに

2. 調査事項の概要

施設名称: 久留米市宮ノ陣クリーンセンター

敷地面積: 74,000㎡

工場棟: 地上 6階、地下 1階 17,170㎡、リサイクル棟地上 3階 5,419㎡、環境交流プラ

ザ地上 3階 2,763㎡

事業費: 約 145億円(用地費除く)

事業期間: 平成 25年 3月~平成 28年 6月

特色

「ごみを安全にかつ安定的に処理できる施設」、「資源

を有効活用する施設」、「環境まなびの拠点」

(ア) 焼却で発生する熱エネルギーの積極的活用

蒸気タービン発電(出力 3,560kw)で施設用電力と

余剰電力の売電(年間約 1億 4千万円)

場外余熱利用への供給

場内余熱利用、足湯への供給

(イ) 災害廃棄物貯留ヤードの整備(4,050 ㎡、45m×90

m)まき芝仕様とし常時はサッカー場、グランド

ゴルフ場、イベント等に活用

(ウ) 30 万人都市において、クリーンセンター2 カ所体

制堅持の方針により、施設を建設、運営している。

搬入距離、更新時の対応が課題である。

久留米市宮ノ陣クリーンセンター前にて

リサイクル棟における分別作業

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(経済建設委員会・福岡県久留米市)

-2-

3. 主な質疑とその回答

Q. 施設建設に至った経緯と施設概要をご教示ください。

A. (1)昭和 63年「南北 2カ所体制による長期安定処理」方針決定。平成 8年度に市北部に新施設

を計画。

(2)平成 19 年に事業系ごみ量の増加、ごみの高質化、将来のごみ量増加(4 町との合併)を踏

まえて、「久留米市新中間処理施設整備基本構想」を公表。

(3)平成 23年に整備方針を公表

処理方式:ストーカ炉+灰セメント化方式

施設規模:163t/日(81.5t/24h×2炉)

事業手法:DBO方式

Q. 建築物及び設備の耐震設計強度はどれほどですか。

A. 国が定める官庁施設の総合耐震計画基準においてⅡ類を採用。

Q. 敷地内の広場(45m×90m)は、災害廃棄物の一時置き場として計画されていますが、どれほ

どの量を想定していますか。

A. 2,200t程度

Q. 焼却灰はセメントの原料として有効活用されておられるとのことですが、品質管理の必要性は

ありますか。(例えば、ふるいをかけて粒度や異物除去を行ったり、成分測定分析結果証明書

など)また、処理費用はどれほどですか。

A. セメント化を採用するにあたっては既存施設の焼却灰を提供し採用の可否を協議したが、工場

棟の運営と灰セメント化・運搬の両方を事業者に委ねているので、現時点では特段の品質管理

を行っていない。処理費用は約 32,000円/t

Q. 整備にかかった事業費及び補助金等についてご教示ください。

A. 事業費 全体 約 145億円(用地費除く)

(内訳) ・工場棟 94.5億円

・リサイクル棟 20.5億円

・環境交流プラザ 11.0億円

・その他 19.0億円

(交付金)

・環境省(循環型社会推進交付金) 37億円

・国土交通省(社会資本整備総合交付金) 1.8億円

Q. 整備にあたり、ご苦労された点と特にこだわった(力を入れた)点はどのようですか。

A. 苦労した点は工程管理、複数業者の調整、こだわった点は品質管理と地場企業の育成。

Q. 施設運営にあたって、今後の課題はどのようですか。

A. DBO事業の 20 年間安定継続、運営期間終了時の対応、2工場での可燃ごみの振り分け、リ

サイクル棟のプラント保守点検。

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(経済建設委員会・福岡県久留米市)

-3-

Q. 利用者の声はどのようですか。また、それらをどのように反映していますか。

A. 利便性の向上と搬入基準の明確化。

Q. 平成 28年 4月 16日に発生した熊本地震での被害状況はどのようですか。(久留米市震度5強)

A. 主要施設(工場棟のプラント、リサイクル棟のプラント)に異常なし。

4. 所見・西尾市政への反映に向けた課題

現在、本市では岡崎市及び幸田町との間で広域によるクリーンセンター建設を検討、協議中で

あるが、集約、大型化によるコストダウンと同時に耐用年数に到った場合の更新工事や修繕工事

を考慮して、適正規模(施設数/人口)を導き出す必要がある。

本市のクリーンセンターは余熱利用のホワイトウェイブと表裏一帯の施設であり、周辺には訳

用地確保を図り、現施設を稼働させながら新施設の建設を進めなければならない。

広い用地は災害廃棄物貯留地をして位置付ければよい。

本市では、年々、焼却ごみの増加が進んでいます。発生する熱エネルギーの有効活用のため、

余熱発電のさらなる効率化を図り、売電収入の増額を目指す必要がある。

久留米市のごみ焼却施設は、旧来からの設置計画による焼却場の建設ではあったが、人口 30万

の都市として、平成 17年の近隣4町との合併によるゴミ増加の将来予測に伴うものでもあったと

いう。ゴミ量自体は全国的にも減少傾向にあるため、増加対策にはいささか違和感を覚えた。残

念ながら、合併後のゴミ量の推移のデータは入手できなかったが、どのように減量を図っていく

かの基本計画を立てた上での将来予測が必須と考える。本視察では、焼却炉の建設を主としてい

たことから次の2点を課題と捉えた。

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(経済建設委員会・福岡県久留米市)

-4-

課題の1点目は方式の選定である。

本市では、幸田町・岡崎市との間で広域の焼却場建設計画が控えており、28 年度から調査に着

手。来年度からは具体的な協議が始まろうとしている。どの程度の規模になるのかにもよるが、

焼却炉の方式選定には関心を持たずにはいられない。

近隣では、豊橋市がガス化溶融炉を採用した後、問題が生じている。当時、ガス化溶融炉は実

験段階の域を出ていなかったときくが、国は推奨していたという。久留米市での選定過程でも溶

融炉が奨められていたが、セメント会社が集中する九州という地域性に即した「焼却灰をセメン

ト化する手法」が優先されたという。

焼却炉の方式選定では、時々の流行りや先物買いに踊らされることなく、時間をかけた検討が

求められる。議会としても積極的に情報収集を図り、岡崎・幸田の議会との連携も考えるべきで

はないだろうか。

課題の2点目は運営の手法をどう選択するかである。

久留米市は、市の直営ではなく設計・建設・運営までを 20年の長期にわたって民間業者に委ね

るDBO方式としている。2社の応募からタクマグループを選定。SPC業者とは 17~18年経過

した時点で大規模改修を行い、契約終了後も 15年程度は使用できる状態にして引き渡す契約を結

んでいるという(運転自体は直営)。しかし、その契約通りにいくかどうか、また、市が引き渡し

時に、それらを検証できるかどうかが心配されるとのことであった。現在は、直営で建設・維持

管理している同種施設があるから対応できたが、専門性のある職員が残せるかどうかはわからな

いという。

大規模かつ専門性の高い諸事業については、自治体がそれをコントロールできない状況が生じ

る可能性が高くなろう。本市の場合は、単体ではなく広域の事業であることを利点として知恵を

出し合うことができるのではないか。

また、本市では、西尾市方式PFI事業が始まろうとしているが、30 年契約の建物建設・維持

管理・運営については、久留米市と同様の懸念がある。160 施設の維持管理についても同じだが、

任せきりにすることなく、市として管理監督しコントロールする能力を担保していかなければな

らない。

<委員所見>

建設場所は河川より低い農地の跡地に建設されているが、かさ上げや防水扉など災害対策が

しっかりとられていた。事業費に対して交付金の金額が少ないように思えるが、太陽光発電

などを利用した余剰電力の売電による収入を約1億4千万円を見込んでおられることは、参

考にすべき点だと思った。見学コースも充実していて、子ども達にもわかりやすく、体験し

楽しみながら学習できる工夫もされており、視察もみこめるところも参考にすべきである。

クリーンセンターの中に環境プラザ等を取り入れ環境を身近で学べるなど、今の西尾市では

考えの無いものであり、今後の建設に向けて、先進技術であったり、環境を身近で学べるも

ので逢ったり、防災の考えを取り入れたりしながら進めたいものです。

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(経済建設委員会・福岡県久留米市)

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ワンウエイでの見学通路、特にゴミピットを最上階から見学できる点は大変良かった。参考

にすべき視点と考える。また、環境について学ぶ施設として、太陽光発電、ハイブリッド灯、

足湯、屋上緑化、ビオトープ、環境学習ルーム等を設置しているが、補助金のセットメニュ

ーであろうが導入には十分な検討が必要である。ストーカー炉を採用しているが、焼却灰は

灰セメントの原料受入先が近隣に3社あり、灰の処理コストの視点からストーカー炉を採用

している。当市では無理な方式である。なお、久留米市では建設予定地を公表し、地元了解、

用地取得まで2年半の短期間で行いえた市当局のノウハウは西尾市も見習うべき点である。

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(経済建設委員会・佐賀県鳥栖市)

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九州における交通の要衝として発展してきた鳥栖市は、

『鳥栖ジャンクション』『JR鳥栖駅』『新幹線新鳥栖駅』

などのクロスポイントがあり、九州各地への抜群の交通ア

クセスを誇っています。

また、アジアにも近く、九州・アジアへのビジネス展開

に最適な環境も持ち合わせています。

企業誘致戦略について

【日時】平成 28年 11月 9日 10時~12時

【場所】鳥栖市議会 委員会室

1. はじめに

2. 調査事項の概要

鳥栖市の企業誘致は、歴史的には、富山、大和、近江とともに四大配置売薬の一つ「田代売薬」

として発展して、昭和 29 年の市制施行と同時に工業誘致条例を制定し、積極的な企業誘致施策を

展開したのがはじまりになります。

鳥栖市は、九州でも有数の「内陸工業都市」として、進出協定締結企業数は 194 社(製造業 73

社・流通業 115 社・その他 6 社)、製造品出荷額は約 3,399 億円(県内第1位)として、最先端の

研究機関が集積をしています。

また、九州のハブ機能「物流拠点都市」へと、保税蔵設置場所の数は内陸部で全国トップの 25

箇所、流通業務団地(グリーン・ロジスティスク・パーク)の分譲、環境への負荷が少ない鳥栖貨

物ターミナル駅の開業、アジアの玄関口「福岡市」等との広域連携(グランドクロス広域連合)の

積極的な取り組みにも努力をしています。

<鳥栖市の誘致企業への優遇措置は、企業立地奨励金として>

製造業には、新規雇用等の条件に応じて固定資産税相当額を3ヵ年度交付します。

流通業には、流通業務団地への立地企業に対し、従業者数に応じ、固定資産税相当額を3ヵ年度

交付されます。

ISO認証取得奨励金として、ISO9000'S、ISO14000'S を取得する市内に本社を有する中小企業

へ奨励金を交付しています。

環境保全奨励金として、流通業務団地内で緑地等を整備した場合等に奨励金の交付があります。

雇用奨励金として、特定地域に事業所等を設置する者が、新規常時従業者(創業1年以内に市内

居住者を新規採用の)数に対して奨励金が交付されます。

鳥栖市役所正面

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(経済建設委員会・佐賀県鳥栖市)

-7-

3. <主な質疑とその回答>

Q. 地域経済の持続的な発展に繋がるような企業誘致には、主体的・戦略的な取り組みが重要だと

思われますが、岸の取り組みと最近の誘致実績はどのようですか。(大規模工業団地開発(手

続き、期間、事業費等)、企業誘致優遇制度、国家戦略特区など)

A.

大規模工業団地開発

新産業集積エリア整備事業(県・市共同整備事業、開発面積:約 27ha、分譲面積:約 21ha)

手続き:農村地域工業等導入促進法及び地区計画

期間:平成 18年 3月~

用地買収・・~28年度、造成工事・・28年度~32年度(予定)、分譲開始・・32年度以降

事業費:約 70億円

企業誘致優遇制度

企業立地奨励金、雇用奨励金、環境保全等奨励金等の交付を行っている。

国家戦略特区

鳥栖インターチェンジ周辺地域(約4km圏内)の農振除外手続きなどの弾力的な運用や、

市街化調整区域での大規模開発基準の緩和などの施策を盛り込んだ「交通結節機能を最大限生

かす、九州における『新たな地域集積構造』構築特区~『一生涯働けるまち』モデルの創出~」

を提案中である。

誘致実績

平成 27年度:2件、平成 28年度:2件

Q. 貴市で積極的に行われている大規模工業団地の開発において誘致実現に向けて、進出意向企業

の絞り込みや企業ニーズの把握調査等はどのように行っていますか。

A. 全国の優良企業等(2,000 社)に対し立地意向調査とシティセールスを行う「鳥栖市企業立地

意向調査」を平成 27 年度に実施。その調査結果をもとに現在、企業誘致等を進めている。ま

た、県において毎年、ターゲットリストを作成し、県内全市町協力して企業誘致活動を行って

いる。

Q. 貴市では、地方版総合戦略においても"しごとの創出"として企業誘致を重点施策と位置付けさ

れていますが、企業誘致の計画(ビジョン)を策定するにあたり、地場産業や労働力といった

「地域資源」(まち・ひと・しごと)の特性をどのように把握されましたか。

A.

鳥栖市は周辺企業の雇用の受け皿となっている。

市内立地企業の従業者は、鳥栖市民約3割、佐賀県民約3割、福岡県民約3割となっている。

市民の約4割は市外・県外で従業している。

製造業や運輸業の雇用の場は創出しているが、情報通信業や金融業、保険業などの事務職系

の雇用の場が少ない。

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(経済建設委員会・佐賀県鳥栖市)

-8-

Q. 地場産業との連携を創出するような産業分野をターゲットとして誘致推進を図られましたか。

その結果、どのような成果がありましたか。

A. 地場産業との連携を創出するような産業分野の誘致推進は図られていない。

Q. 誘致した後も自治体は進出企業に対するきめ細かなフォローを行うなど、その競争力の継続的

な向上を支援することが重要だと思われますが、進出企業あるいは既存企業の競争力強化を図

るための取り組みはありますか。

A. 付加価値の高い産業創出を目指し、市内に立地している最先端研究機関である産業技術総合研

究所九州センターや、佐賀県立シンクロトロン光研究センターとの連携を推進しているほか、

各企業への年末挨拶訪問等を行い、立地後のアフターフォローに努めている。

また、県・市各々で立地企業交流会を年1回開催し、各企業間の交流を図っている。工場との

増設に対する奨励金も創設している。

Q. これまでに、業況悪化等を受けて進出された企業が生産拠点の集約・再配置を行い、撤退する

ことはありませんでしたか。

A. 世界同時不況により2社の撤退があった。

1. 半導体ウエハーを洗浄する装置を製造している「東京エレクトロン九州」の佐賀事業所が、

平成 22年3月に熊本県の合志事業所に統合され撤退。

2. 工業用ロボットを生産している「パナソニックファクトリーソリューションズ」の鳥栖事

業所が、平成 21年9月に山梨県の甲府事業所に統合され撤退。

3. 小麦粉を製造している「日清製粉」の鳥栖工場が、輸入した小麦をそのまま加工できるよ

う内陸部から港湾付近へ移転するため新設する福岡県の福岡工場に集約され、平成 26 年

6月に撤退。

Q. 誘致後の撤退又は流出防止するような取り組みはどのようですか。

A. 具体的な撤退等の防止策は行っていないが、撤退のリスクを少しでも減らすために、年末年始

挨拶など、企業訪問を行い、立地後のアフターフォローに努めている。また、老朽化した工場

の建て替えに対する新たな奨励金制度を検討中である。

鳥栖市担当者の説明および質疑応答

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(経済建設委員会・佐賀県鳥栖市)

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4. 所見・西尾市政への反映に向けた課題

西尾市は、『鳥栖ジャンクション』『JR鳥栖駅』『新幹線新鳥栖駅』などのクロスポイントがあ

り、九州各地への抜群の交通アクセスを誇っている鳥栖市と、JRも主要国道もない西尾市を単純

に比較することはできませんが、県・市各々で立地企業交流会を年一回開催したり、年末挨拶等の

企業訪問を行う中で積極的な誘致施策も実施をしており、参考になる点も非常に多いと感じた。

また、県との連携体制が確立されていることも大きな違いと言える。

将来的な人口減少が叫ばれる中で、少しでも歯止めをかけていくには地域産業の活性化と新たな

産業を創出して、街に仕事を増やすことが不可欠である。

今後、西尾市も、積極的に産業振興を図り企業誘致に注力することが必要だと思います。

<委員所見>

西尾市でも企業誘致は積極的に進めているが、鳥栖市のようなJR線や国道等の交通アクセス

が無いため比較することは非常に難しいと感じる。また、南海トラフ、東南海トラフの変動に

よる災害が危惧されることもあり、用意する立地も限りがあるが、それでもよりよい西尾市の

発展のために助言をしていきたい。

九州地方の交通の要であることを最大限に活かした誘致をされている。多くは佐賀県主導で誘

致を行っており、共同でされていることは、困難があったとしても乗り越えやすく、市として

もメリットがとても大きい。佐賀県は鳥栖市だけでなく県全体で市と県が共同で企業誘致を行

える環境にあると伺った。愛知県でもそのような体制になれば、誘致の拡大が見込めるのでは

ないかと感じた。

鳥栖市は、九州内では、一番に企業誘致に成功しているが、その理由は何といっても交通の利

に恵まれている点で、佐賀県と一体となった誘致計画による。主要な道路整備は国と県のリー

ドによると思われるが、194 社の誘致は豊富な水資源と 10 ㎞圏内の労働人口 40 万人という地

理的条件が活かされている。県が県内全市町村と協力して、毎年ターゲットリストを作成して

いるなどの点も大きいと思われる。愛知県はその点では県のリードは低く、各自治体が主体で

はあるが、県全体として地理的にも労働力にも恵まれており、本市も誘致の点では遜色はない

と思う。ただ、鳥栖市の誘致は、アイリスオーヤマ・アマゾンジャパン、コカコーラ、プロロ

ジス、日本ハム等多種多様な業態に及んでいることは参考とすべきではないか。本市では、自

動車関連企業が主体に留まっている。鳥栖市の独自施策としては「雇用奨励金制度」で、特定

地域に事業所を有する者が新規常時従業者(操業1年以内に市内居住者を新規採用)を採用し

た数によって奨励金が交付されるとのことである。本市でも、昨年の委員会で「市内の雇用は

増加しているのか」と質したところ、「新たな企業誘致に際しては、成果として市内の雇用が

増えたかどうかのチェックを始めたい」とのことだが、制度とされている好例が得られたので

はないか。具体的な検討を期待したい。

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(経済建設委員会・佐賀県鳥栖市)

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鳥栖市は九州地域の道路アクセスの大動脈である、九州自動車道、長崎自動車道、大分自動車

道の分岐点としての、鳥栖ジャンクションを有しています。この好立地を生かし佐賀県の活力

向上を目指し、佐賀県と鳥栖市がタイアップして企業を積極的に誘致するため、鳥栖市内に 6

つの工業団地を整備しました。鳥栖市の事例のように、県と市がタイアップしての企業誘致は

進出先の信頼力の向上、団地開発のスピード化のメリットがあります。当市としても県と協力

した開発について積極的に取り組む良い事案である。

注目すべきは、人口が着実に増加、今後も増加が予測されていること。立地条件の良さが目に

付く。北九州における交通の要衝(九州自動車道鳥栖ジャンクション・JR鳥栖駅・九州新幹

線新鳥栖駅)「流通業務団地」は九州主要都市へのアクセスの便利さ、地の利を生かし、物流、

製造業を中心に企業誘致は順調である。

※本市では国道 23 号線西尾東インター周辺の「流通業務団地」の充実拡大、そして周辺道路

の整備を図れば当地区の飛躍的な発展が望めるものと思う。

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(経済建設委員会・福岡県飯塚市)

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飯塚市は、総人口 130,009人(H28.4.1現在)、面積 214.07

平方キロメートルで、福岡県のほぼ中央に位置している。

東西は山であり、南北は遠賀川流域平野の盆地の地域であ

る。平成 18年に1市4町が合併し現在の飯塚市となった。

福岡市、北九州市への鉄道路線があり通勤・通学圏内とな

っている。

古くは長崎街道の宿場町として、明治時代から筑豊炭田

の中心地として、近年では3つの大学を有する情報産業都

市、学園都市として位置付けられている。

立地適正化計画(コンパクトシティ)について

【日時】平成 28年 11月 10日 10時~12時

【場所】飯塚市議会 会議室

1. はじめに

2. 調査事項の概要

(1) 立地適正化計画のフレーム

基本計画 第2次飯塚市総合計画(H29~H38)

重点施策 飯塚市都市計画マスタープラン(H22~H38)

飯塚市立地適正化計画(H29~H38)

飯塚市中心市街地活性化基本計画(H24~H28)

連携

飯塚市公共施設等総合管理計画

(2) 拠店連携型都市の構築

中心拠点(庁舎周辺エリア)

都市機能が相当程度集積し、あるいは、将来、集積が見込まれる地域で『本市の顔

となる地域』

地域拠点(支所周辺)

居住環境の確保・向上や人口密度の維持等の施策を講じることで、周辺地域を含ん

だ地域住民の暮らしが守られ、地域の交流拠点となり得る地域で、『将来に亘り生

活圏の中心となる地域』

拠点連携

中心拠点・地域拠点、集落を交通ネットワークで結ぶことにより、地域間の連携や

交流を活発にすること

飯塚市役所前にて

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(経済建設委員会・福岡県飯塚市)

-12-

3. 主な質疑とその回答

(1) 立地適正化計画の策定に至った経緯はどのようですか。

① 中心市街地活性化から中心市街地を軸とした拠点連携型都市づくりの推進へ旧町の役

場周辺=地域拠点における拠点性の回復/拠点間の交通ネットワークの形成/持続的

な民間活力の活用

② 人口減少下での暮らしの確保(都市再生基本方針・都市計画運用指針:多極ネットワ

ーク型コンパクトシティ/小さな拠点づくり)

③ 国の政策と連動した取り組みによる事業の加速化

通常の都市再生整備計画(国費40%)⇒立地適正化計画の都市機能誘導区域(国費

45%)⇒中心拠点誘導(国費50%かつ優先配分)

(2) 策定までのスケジュールはどのようですか。

① 平成27年5月31日素案発表→市民意見募集、市民懇談会開催

② 平成27年9月12日計画案公表→区域設定の市民意見募集、市民説明会開催

③ 平成27年11月→計画策定

*H27/7月→ 11月→ H28/4月→ 11月→ 12月以降

基礎調査 素 案 検 討 計画調整 計画策定

*地域連係都市政策協議会(外部組織)→計画検討を6回開催。都度検討内容をHPで市

民に周知

(3) 立地適正化計画を策定することによるメリット、デメリットはどのようですか。

<メリット>

① 飯塚市の現状と将来見通しの把握

・20年後には4割の高齢者が交通便利地域外に居住

・市営住宅人口千人当たり戸数33,7戸(全国平均の3倍)

② 将来見通しによる対応の明確化

・将来の拠点への行政投資、公共施設集約、市営住宅集約、公園再編

③ 民間事業者・住民への理解

・集約型都市構造への転換、民間施設の誘導と建設等の届出制度

④ 国の支援

<デメリット(住民意見)>

① 地域の切り捨てになるの

では。新たな開発も大事で

はないか。

② 民間の開発意欲の停滞リ

スク

③ まちの成り立ちから古く

からの住民の居場所があ

るか。

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(経済建設委員会・福岡県飯塚市)

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(4) 立地適正化計画の策定にあたり、策定委員会を設置されましたか。

「地域連携都市政策協議会」(メンバー:自治会、子育て、福祉、医師会、商業、JA、

交通、不動産、大学、国、県、市等22名)で6回開催

(5) 市議会にはいつ、どのような形で情報提供をされましたか。

① 総務委員会・経済建設委員会へ随時報告→他の委員会委員に資料配布

② 地域連携都市政策協議会開催後に配布資料を全議員に配布

③ 総務委員会報告:H27,6月所管事務調査、H27,12月現状調査結果

H28,5月計画素案、H28,9月計画案・区域案

(6) 住民との合意形成が最も重要であると考えますが、具体的にどのような手法で行いましたか。

① 市民向けセミナーの開催 H27,2月

② 12地区自治会長会への説明 H27,6月

③ 12地区住民説明会の開催:計画素案に対する意見聴衆 H28,6月

④ 12地区自治会長会、まちづくり協議会との懇談会 H28,9月

*関連会議、計画案、調査結果等の全てを飯塚市HPへの掲載

(7) 都市機能誘導区域及び居住誘導区域はどのように考え、決定されましたか。

都市機能誘導区域の考え方は ア 拠点における都市機能の維持・増進、イ 地域コミ

ュニテイの活性化、ウ 都市機能を相互に補完するための拠点間の連携促進、エ 地域の

魅力づくり、オ 上記の項目が将来的に形成されうる区域で、

① 都市機能誘導区域は類型で5区分(中心拠点型、地域拠点型、コミュニテイ拠点型、

暮らし維持型、学園都市型)に区域の役割と求められる都市機能にマトリックスして

区分けする

② 設定方法は、上記の区分けを

ア 客観的な指標で区域を抽出、イ 高齢者の歩いて暮らせる範囲(500m)生活便利

施設の徒歩圏(800m)に区域の役割に応じて判断(決定)、ウ 中心点は鉄道駅及び運

行本数が1日15回(往復)以上のバス停、ただしコミュニテイ交通エリア和はその

バス停とする。

居住誘導区域の考え方は ア 都市機能誘導区域及びその周辺における人口密度の維

持、イ 公共交通を連携軸とした居住の誘導、ウ 公的不動産の有効活用、エ 居住

誘導区域内外にわたる良好な居住環境の確保される区域で、

設定方法は、都市機能誘導区域の周辺区域の抽出⇒左記区域を含む公共交通便利地域

を構成する駅・バス停の周辺区域の抽出⇒人口密度が今後も500m人口メッシュ密度

が概ね30人/ha以上と、政策的に公共施設の跡地等の周辺利活用を図る予定のある

地区周辺区域の抽出⇒災害リスクの高い区域の除外⇒用途地域指定のないエリアの除外

⇒居住誘導区域候補地の抽出

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(経済建設委員会・福岡県飯塚市)

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(8) 上位計画や関連計画とは、どのように整合性を図られましたか。

飯塚市都市計画マスタープラン(H22~H38)の一部として立地適正化計画(H29~H38)を

位置づけ、中心市街地活性化基本計画(H24~H28)を立地適正化計画に移行させた。すべて

の包括として第2次飯塚市総合計画(H29 ~H38)を作成。

(9) 立地適正化計画検討にあたって特に考慮すべき点は。

① 計画を策定する目的の明確化

ア 集約型都市構造を目指す必要性、ストーリーの明確化

イ 人口減少を前提としたまちづくりへの住民の理解

ウ 公共施設の集約・一定のエリアのへの居住の誘導

エ 10年間で国の支援を受ける事業の有無

② 近隣市町等の動向

ア 近隣市町を含め大規模商業施設の立地の可能性

イ 鉄道沿線のまちづくり等広域連携の可能性

4. 所見・西尾市政への反映に向けた課題

飯塚市の財政力指数は0.5前後で推移していて、国の政策に沿った行政運営ウエイトが高い。

平成24年度より平成28年度の計画で、拠点連携型都市づくりの一環として中心市街地の活性

化事業を国の認定を受け着手する。

一方、国では平成26年6月に「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」を施行して、

市町村が住宅及び医療、福祉、商業その他の居住に関連する施設の立地の適正化を図るための「立

地適正化計画」を作成することができることになり、国の施策が変更となった。(コンパクトシ

ティ構想)

H26年9月には同法の勉強会を国土交通省担当を講師に市職員の勉強会を開催し、H26年

11月に立地適正化計画策定を庁議決定した。また、H27年2月には市民向けに「コンパクト

なまちづくりセミナー」を国土交通省の講師で開催する。

H27年4月には立地適正化計画の事務局を企画調整部内に設け、H27年7月には都市計画

審議会に立地適正化計画概要を説明、H27年12月には市内地区町内会長会へ計画概要説明し

H28年5月には立地適正化計画素案公表と、計画の立ち上げから、実践に至るまで非常にスピ

ーディーである。国の新施策検討段階より何か情報を得ていたのではないのか。

これも、国の政策にいち早く対応し、事業認定を確保する狙いであろう。いずれにしても市が

目指す「持続可能な都市“飯塚”」をめざし、国の施策とリンクしての事業取り組みが不可欠な

財政運営に由来しているのであろう。

なお、短期間での計画策定のため、8項目の評価指標は現在検討中であり、市民の当計画への

関心度はいまひとつである。国の認可のため、ゴールを定めた策定スケジュールと想われるが、

当西尾市議会では考えにくい内容といえる。

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(経済建設委員会・福岡県飯塚市)

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国の動向に注視し、いち早く国の担当との勉強会を開催できる普段からの国・県との連携は西

尾市としても見習うべきである。国の方針転換は計画検討段階で国・県とのパイプがあれば事前

に知ることも可能であろう。いち早く国・県の動向を察知することは重要であり、今後当市とし

て国・県とのパイプ作りの大切さを改めて痛感した。

<委員所見>

郊外に住みたいとか、郊外の発展を抑えれば中心市街地が再生するのかなどの問題点など

があり、思うようには進まないのが現状であり、大学誘致や公共交通機関、不動産の有効

活用など飯塚市でのメリット・デメリットの取り組みを参考にしながら、西尾市の取り組

みがよりよい方向に向かうよう助言していきたい。

合併による公共施設の重複と人口ビジョンにおける将来人口の減少が著しく進むことを

背景に、将来自動車がなくても健康であれば歩いて生活できる環境整備を目指されている。

西尾市も進めるべき施策であるが、住民の理解がなくては出来るものではない。丁寧な説

明と理解を求める PR が重要になる。飯塚市と西尾市は似たような地域環境にあると思う

ので、動向を注視したい。庁舎内連係も重要になる。

急速な人口減少と高齢化に加え、市街地の拡散による人口の低密度かが進み、将来の居住

者の生活を支えるサービスが困難になると考えられる。

本市では、飯塚市ほど人口密度は低くないが、コミュニティバスなどの運航の充実により

解決できるものと考える。

飯塚市は炭鉱都市として繁栄したが、現在は特筆すべき独自産業はなく、福岡市の衛星都

市的要素が大きいと思われる。今視察の「立地適正化計画」は、人口減少や高齢化の進展

のなかで、「まちのかたちのコンパクト化」を図るという政府の推奨によるもので、私自

身はこうした手法には疑問を持つところである。飯塚市では、明治以降、近隣との合併を

繰り返し、平成 18 年にも4町と合併しており、人口 13 万人に比して、市域は 214k ㎡と

広範で、市街地が拡散、低密度な市街地が形成されているため、居住者の生活を支えるサ

ービスの提供が将来、困難になりかねないとのことである。この対策としての「まちのか

たちのコンパクト化」といい、都市計画審議会がメインで、計画策定には市民や各種団体

から意見を聞きながら進めるとのことであったが、意見聴取の後は、特段の参画は見込ま

れていないとのこと。それでは、住民の意見聴取は形だけで、上から目線に終わってしま

わないかが非常に気にかかった。なぜなら、本市の場合も、ほぼ同様で、合併による市域

の拡大、旧1市3町時代の市街地がそれぞれにあるなかで低密度化が進んでいる。合併時

に、市幹部が山の人には里に下りてもらうなどと発言したことがあったが、私には、そん

な半強制的に統合することなどは考えられない。一定程度の行政機関の統合はあるとして

も、医療と保健、福祉サービスは身近になければならない。となれば、私は、公共交通網

をどう展開するかが重要と考える。