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投資家に企業の 真価を伝える 非財務情報開示とは? 2017

投資家に企業の 真価を伝える 非財務情報開示とは?...2017/06/29  · 投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? | 1 Welcome 非財務パフォーマンスと投資家の意思決定

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投資家に企業の 真価を伝える 非財務情報開示とは?

2017年

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B

エグゼクティブサマリー 2

調査結果の要点 2

1. 投資家は、ESG評価の高い企業に 長期的、財務的なメリットを見ている 3

2. 非財務報告を行う 企業の動機とは? 8

3. 投資家は、COP21がESG報告に インパクトをもたらすと期待 14

4. 投資家は企業のESG報告に対して、 より多くを求めている 18

5. リスク管理における ESG分析の利点 20

6. ESGの目標と優先課題は進展している 22

次にすべきこと 26

今回の調査について 28

Contents

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1投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

Wel

com

e非財務パフォーマンスと投資家の意思決定の関連性に関するEYのリポートにご関心を寄せていただき、EYを代表して御礼申し上げます。

昨今、非財務パフォーマンスの重要性について、特に債権の発行体である企業による環境、社会、ガバナンス(environmental, social and governance、以下「ESG」)の実践に関するディスクロージャーに関し、語られることが増えています。前回調査からの1年間はさまざまな出来事が起こった年でした。持続可能な事業戦略や責任あるビジネス慣行に関する議論に影響を及ぼす、極めて重要な合意や声明が立て続けに発表され、危機が出現しました。

これらの事象に対する投資家の反応について、議論し評価する機は熟しています。これまでのEYの調査によれば、非財務報告の統合を推進、進化させる起爆剤は、機関投資家のコミュニティにあります。

グローバルな政策論議、新たな規制要件、企業によるサプライチェーンに対するESG実践の徹底と、すべて非財務報告統合推進に一役買っていますが、投資家が声を上げ続けることが、最も有効です。

今年の議論の核心は、次の単純な質問にあります。統合の推進や、予測可能で戦略的ESGディスクロージャーに対する投資家の要求を、企業は満たしているか。この繰り返し問われる質問の回答結果を見ると、その答えは、情報に通じた投資家の判断に頼る人たちにとって、悩ましいものであるようです。企業が適切にESGリスクを開示しているかという問いに対し、今年は回答者の60%が「いいえ」と答えました。これは去年と比べて20%以上高い数字です。

マシュー・ネルソン(Mathew Nelson)EYCCaSS(気候変動/サステナビリティ)グローバル・リーダー

調査対象投資家の大多数が、現状のディスクロージャーに失望しています。重大なリスクや機会とあまり関連付けられていない、企業の全体価値を反映していない、環境や社会の課題を明確にしていないなどの見方が投資家の間に広まっています。投資家は、財務・非財務報告の統合をさらに進めることにメリットがあるとみています。

こうした背景の下、前向きな変化が起こりつつあり、新たな報告慣行が業界や地域を超えて採用される兆候が見られています。国際統合報告評議会(IIRC)、グローバル報告イニシアチブ、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、金融安定理事会(Financial Stability Board)の気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォースなどの組織それぞれが、より効果的で説得力のある比較可能なディスクロージャーについて重要なベンチマークや基準を設けています。

全世界320以上の参加者から率直なご意見を頂き、心より感謝申し上げます。参加者の3分の1は100億米ドル以上の資産を運用しており、多くの有名、有力なアセットマネージャーから見解を頂きました。

地球の未来は、多くの面で危機に瀕しています。EYにとって、より良い社会の構築を目指すという目標を達成する上で、いかに自らの役割を果たしていくかについて、今回調査は洞察を与えてくれるものとなりました。では、いかに役割を果たしていくのか? 透明性をさらに高め、長期的価値を構築するにとどまらず、未来の世界をいかにより良いものとしていくかという観点から、地球に生きる人々、その資源、環境への責任が中心課題であるという意識を醸成していくこと、これが私たちEYにできる貢献となるでしょう。

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エグゼクティブサマリー

EYによるESG報告に関する数年にわたる調査から、EYのメンバーファームは非財務情報に対する投資家の関心は世界的に増大傾向にあると結論付けています。しかし、私たちが依然答えを求め続けている問題は、ESG情報が投資家の意思決定に最終的に影響するのかという点です。EYが毎年実施している過去3回の調査は、全世界の投資家が下した意思決定においてESG要素が果たす役割が拡大していることを裏付けています。

有効なESG分析が、機関投資家とその注目企業にとってますます重要となっている理由を、最近のニュースから読み取ることができます。世界最大の資産運用会社のトップが、高いESG投資実績の有効性とその企業価値評価への影響をたたえた書簡を公開会社のCEOに送った際、ブルームバーグは「ラリー・フィンク氏、企業に対し将来について、より多くを語るよう求める」と報じました。200近くの国がパリに集い、金融市場に影響を与える国際的な気候協定について協議・署名しました。また、世界最大級のある自動車メーカーは、未曽有の排出テストスキャンダルに見舞われました。ここ数カ月の間にニュースとなった出来事が、ESGを世界的課題のトップへと押し上げています。世界的な規制環境が整っていない状況にもかかわらず、こうした状態が続いているのです。

ESGや非財務報告に関する今年のリポートは、株式公開企業による非財務報告とESG分析が機関投資家の投資判断に果たす役割に対する、320以上の機関投資家の視点について、洞察しています。

ブラックロック会長兼CEO、ローレンス・フィンク氏が2016年2月に世界有数企業経営層へ宛てた書簡が、世界中の投資家から広く支持されています。そこでは、ESGに関する提言がされています。特に、公開会社に対し、年次取締役会で戦略文書を承認すべきとの呼び掛けが、投資家から強く支持されています。ESG要素が、長年無視されてきたリスクと機会を突き付けていることを、彼らは認め、持続可能なリターンのためには、コーポレートガバナンスや環境的・社会的要素をさらに重視していくことが必要であると、表明しています。

ディスクロージャーと非財務情報の精査の重要性は、今後数年間高まり続けていきます。投資家によると、気候変動に関するパリ協定の合意は、企業の気候変動に向けた行動やリスクマネジメント戦略に関するディスクロージャーの促進につながります。最近の環境的・社会的不祥事により非財務ディスクロージャーが再評価され、入手可能な非財務情報がより精査されているとの報告もされています。

調査参加投資家の大半にとって、非財務パフォーマンスは投資判断の際重要な役割を果たしており、またそれを重視する投資家の割合も昨年より増大しています。非財務的情報の開示が重要であるかどうか分からないとする投資家の数は、2015年、2013年の調査と比べて大幅に減少しています。

機関投資家にとって、座礁資産リスクに対する懸念は依然として深刻であり、この傾向は昨年のリポートから続いています。2016年調査では、60%以上の投資家が、座礁資産リスクにより最近保有額を減らす、保有額の監視を厳しくすると回答しました。

投資家は、企業にESG情報の報告を動機付ける最大の要因は、顧客からの評判や法規制の遵守義務であると考えています。大半の投資家が、事業に影響を与えかねないESGリスクを企業は開示しないとみています。

非財務パフォーマンスやディスクロージャーが重要性を増しているにもかかわらず、調査に参加した投資家の大半は、体系化していない、簡略化された方法で環境的・社会的要素を評価しています。

調査結果の要点

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3投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

投資家は、ESG評価の高い企業に 長期的、財務的なメリットを見ている

2016年2月、ESG投資機運を高める出来事がありました。世界最大の資産運用会社、ブラックロックの会長兼最高経営責任者がS&P500企業と欧州の大企業CEOらに書簡を送ったのです。この書簡には、短期的な配当よりも長期的な価値創造の重視、オープンで透明性のある成長計画、環境・社会・ガバナンスの重視に重点を置くべきこと、そして、この三つが「定量化でき、実質的に財務に影響力を持つ」ことが、書かれていました。

ローレンス・フィンク氏の運営するブラックロック社は、運用資産4兆6000億米ドルで、うち2,000億米ドルをサステナブル投資に投じています。同氏の意見はESGパフォーマンス動向を常時注視している多数の投資家の意見をも反映しています。すなわち、ESG問題に善処している事実は、しばしば企業の経営手腕の高さを表していると考えられているのです。

投資家に対する私たちの調査によると、フィンク氏の書簡にあるESGの論点について、幅広い支持が見られます。調査回答者の80%以上が、フィンク氏の4論点に賛同しています。その論点とは、CEOが毎年、取締役会の検討・承認を経た長期的戦略を策定すること、企業があまりに長い間、環境問題や社会問題を事業の中心課題として考慮してこなかったこと、持続可能なリターンを長期的に生み出すには、ESG要素に重点を置くべきこと、ESG問題が長期的には実質的かつ定量化可能な財務的影響力を有することです(図1参照)。非財務的要素の価値について懐疑的な投資家は、企業のESGパフォーマンスと財務パフォーマンスとの因果関係を無視しがちです。しかし、深刻

1

な風評リスクや環境リスクが浮上する可能性があり、それらが純利益に大きな影響を及ぼし得ることは広く理解されています。ESG要素を分析に取り入れている投資家は、ESG要素に細心の注意を払う企業に投資することによって長期的メリットが得られ、投資リスクが低下することを指摘しています。300億ニュージーランド・ドルを運用するニュージーランドの老齢退職年金基金の最高投資責任者、マット・ウィナリー氏は、ESG要素は新たな機会の特定や長期的な投資リスクの管理に役立ち、脆弱なガバナンスや貧弱な環境的・社会的実践によるパフォーマンスの弱体化を避けることができると述べています。

1%

10%51%38%

持続可能なリターンを長期的に生み出すには、ガバナンスだけでなく環境や社会要素をさらに重視するべきである。

2%

16%52%30%

環境や社会の課題にはリスクと機会の両面があるが、あまりに長い間、企業はこれらを事業の中心課題として考慮してこなかった。

強く同意する 同意する 同意できない まったく同意できない

3%

5%53%39%

公開会社のCEOは、毎年、長期的価値創造のための明確な戦略を策定し、取締役会がこれを検討承認したことを直接的に表明すべきである。

6%50%42%

気候変動からダイバーシティ、取締役会の有効性に至るまでさまざまなESG問題は、長期的には実質的かつ定量化可能な影響力を持つ。 2%

図1

CEOや取締役会に説明責任を求める最近の風潮を、投資家は高く支持している。以下の項目についてどの程度同意しますか?

* 各項目に賛同した回答者の割合

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4

ウィナリー氏は、ESG投資を支持する事例として、二つの研究を挙げています。200以上の学術研究、業界報告、新聞記事や書籍を基にしたオックスフォード大学とアラベスク・アセット・マネジメントによる2015年のリポートは、調査対象研究の88%が、「堅実なESGの実践」を行う企業が業務実績で優れていることを示し、80%が、良好なサステナビリティの実践が株価に好影響をもたらすことを示しています¹。また、2012年のドイツ銀行にのリポートでは、100以上の学術研究の調査により、ESG要素は高いリスク調整後リターンと相関性があると結論付けています²。さらに、多くのSRIマネージャーが、ESG投資家が以前から使用していらアプローチであるポジティブ/クラス最高スクリーニングではなく、排他的スクリーニングを行った結果、「社会的責任投資(SRI)」カテゴリーに属するファンドのリターンは、マイナスプラス相半ばするか中立的な結果となっていることが判明しました。

ハーバード・ビジネス・スクールやロンドン・ビジネス・スクールによる関連調査によれば、「サステナビリティを重視する」企業業績は、他の企業に比べて株式市場と会計業績の両面で長期的に大きく上回ることが明らかとなっています³。ESG分析は、株価だけでなく、社債や実物資産の評価も含めた企業や資産の価値を検討評価する新たな視点を投資家に与えるものであると、AMPキャピタルのESG責任者、アダム・カークマン(Adam Kirkman)氏は述べています。このオーストラリアに拠点を置く、1,200億米ドルを運用する資産運用会社は、ESGリスク管理要素を重視した株式の内部資産モデルポートフォリオを有しています。このポートフォリオによる実績はESG要素に基づかない株式インデックスを上回っています。

>> 環境、社会、ガバナンスに関するディスクロージャーに対する投資家やステークホルダーの要求は、急速に拡大しています。政府、基準策定機関、規制当局も、サステナビリティ報告に関する協議や調査の遂行を促しています。同時に、企業も、透明性の改善、ガバナンスとサステナビリティ報告プロセスの強化、より適切な報告の公表を通じ、改革を目指しています。 <<

北米で 見られることジェアンナ・ドハーティ EY Americas(北・中・南米)CCaSSリーダー

現場からの 報告

3 RG Eccles, I Ioannou, S Serafeim; The Impact of Corporate Sustainability on Organizational Processes and Performance; Harvard Business School Working Paper; 2012.

また、カークマン氏は個別の事例にも触れています。AMPキャピタルのアナリストが、環境や社会的リスクを十分に管理していない鉱業企業群に懸念を抱き、それら企業をポートフォリオの中でアンダーウェイトしたところ、リバランスを行わなかった場合と比べてポートフォリオ全体のパフォーマンスが1年間で11ベーシスポイント上昇しました。同様に、ある小売業者のESGについて懸念を抱いたアナリストが、同社株をアンダーウェイトしたところ、相対的にポートフォリオは年間で52ベーシスポイント上昇したのです。

懸念が生じる前であっても、ESGに取り組む企業は投資家の成果に影響を与え、投資成果を最大限に高めることができると、1000億オーストラリア・ドルを運用する年金基金、オーストラリアンスーパーのESG投資管理者ケリー・クリストードゥールー氏は述べています。ESGに積極的に取り組むことはまた、将来起こり得る懸念について投資家が経営者と話し合う必要が生じた場合にも、有効な関係構築の一助となります。

1 オックスフォード大学とアラベスク・アセット・マネジメントによる研究については、次のURLを参照。http://www.sbs.ox.ac.uk/sites/default/files/research-projects/MiB/4-Arabesque-Case-Narrative.pdf

2 Deutsche Bank’s 2012 report, “Sustainable Investing: Establishing Long-Term Value and Performance,” appears at this URL: https://institutional.deutscheam.com/content/_media/Sustainable_Investing_2012.pdf

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5投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

私たちは、投資家の長期的価値に対する関心の高まりを裏付ける、EYの先駆的調査を歓迎します。とりわけ喜ばしいことは、取締役会に対し、長期的な価値創造への戦略フレームワークを毎年策定するよう呼び掛けたブラックロックに対する幅広い支持があったことです。

本調査は、この課題を達成するに当たって統合報告( I n te g ra te d Reporting)が果たし得る役割を明確にするものです。調査結果は、すべての投資家が評価や決定において、より広範な情報をさらに構造的に分析するための理論的根拠となります。こうした変化は、企業がパフォーマンス評価指標のディスクロージャーをさらに促します。投資家はさらに先に進み、企業も進化を目指します。統合報告はそのための手段となるものです。

リチャード・ホウィット 国際統合報告評議会(IIRC)、CEO

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焦点 >>

3年間のデータは転換点を 示しつつある。ここ数年で、ESG要素の価値に対する投資家の評価は高まってきました。3年間の調査データ、投資家へのインタビュー、最近の出来事や地球規模での取組み等が、投資判断に対するESG要素の影響力が拡大していることを証明しています。

ESGやその他非財務情報の分析は、機関投資家にとって一時的な流行ではありません。

投資家心理の大きな変化を、一つの出来事や原因に帰することはできませんが、私たちは注目すべき転換点の兆候を捉えたようです。ESG投資が主流に躍り出てきているのです。こうした変化は、ESGポリシーがどこに向かっているのか分からないにもかかわらず、ESG投資が主流になりつつあるのです。80億ポンド以上を運用するロンドンの年金信託の責任投資責任者、ジェニファー・アンダーソン氏は以下のように述べています。過去10年間ESG分析に対する投資家の関心は、初期のガバナンス課題から、近年の環境的要素へ、幅広い領域に拡大してきました。かつては、「最優先課題は、常にガバナンスサイドにありました。つまり、投資家が最も重視したのはコーポレートガバナンスでした。しかし昨年、気候変動に大きく拍車が掛かり、環境リスクは喫緊の課題となっています。今では、議論する上で、両者の重要性は変わりありません。」

最近の出来事は、発行体の非財務情報に重大なリスクやメリットが内抱されていることを示しています。こうしたリスクやメリットを把握することにより、非財務的事業活動から生じる価値の低下を回避し、その恩恵を受けることができることに、投資家は次第に気付き始めています。非財務情報分析に対する投資家の関心の高さには、十分な理由があるように思われます。ミレニアル世代が抱いているESG問題に対する考えや、この世代が両親や祖父母から将来受け継ぐ約30兆米ドルの影響など、ミレニアル世代の人口増に伴い、投資におけるESG要素の重要性は引き続き増していくと投資家は期待しています。

私たちの3回の各調査において、過去12カ月間で非財務パフォーマンスが投資決定に重要な役割を果たした頻度を質問しました。2016年は、68%が非財務情報はしばしば、または時々重要な役割を果たしたと答えました。これは2015年の52%、2013年の58%を上回る数字です。つまり、非財務情報を活用する投資家の割合、特に時々活用する投資家の割合が著しく伸びたことになります。回答者10人のうち4人以上が、非財務情報は投資決定において時々重要な役割を果たすと回答していることは、投資家やアナリストが、非財務情報の評価に対して便宜的に幅広いアプローチをとっている可能性を示唆するものです。

さらに本調査では、コーポレートガバナンスリスクや世界中の従業員に対する扱いなどに関する事柄など、特定のESGディスクロージャーが持つ重要性にの理解が進んでいる傾向が示されています。将来的な投資リスクや過去の脆弱なガバナンスに関する情報開示があった場合、投資判断にどのような影響を与えるかを投資家に尋ねたところ、2016年は、投資対象からすぐに除外すると39%が答えました。この数字は、2015年では27%、2013年では30%でした。事業から生じる人権リスクのディスクロージャーについて尋ねたところ、投資対象からすぐに除外すると答えたのは32%でした。この数字は、2015年では19%、2013年では22%でした(図7参照)。

しばしば 時々 たまに まったくない

5%27%41%27%

2016年

26%22%28%24%

2015年

11%31%35%23%

2013年

投資家は、投資判断における非財務情報の重要な役割を以前に増して認識している。過去12カ月間において、投資判断に企業の非財務パフォーマンスが重要な役割を果たしてきた頻度はどれくらいですか?

投資家が意思決定における非財務情報の影響を認識するにつれて、非財務情報やESG情報を重要でない、またはささいなこととして無視する人々の割合は減少してきています。投資判断をする上で、ESG問題を考慮しない理由について尋ねたところ、16%が非財務ディスクロージャーの重要性や財務的影響が明確でないからとと答えました。これは2015年に52%がESGの重要性を受け入れなかったことや、2013年の調査で投資家の60%が潜在的な重要性が明らかでなかったときと比べて劇的に低下しています。

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7投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

ESG情報に対する評価が高まる中で、発行体から入手できる情報の質について、投資家の間では大きな不満が見受けられます。過去には、3分の1以下の回答者が、非財務情報の品質は低いことが多いので考慮しないと答えていました。非財務情報重視されるにつれ、投資家はよりタイムリーで、比較・検証可能な情報を期待するようになっていることが明らかとなっています。

投資家はより多くを求め、探究心と洞察力を持つようになっています。

ESG問題を投資判断の際に考慮しない理由について尋ねたところ、2016年は42%の回答者が、非財務情報は一貫性がない、入手できない、または検証されていないためと答えました。これは2015年の32%、2013年の20%を上回る数字です。同様に、他社と比較できる非財務測定値が入手できることはほとんどないと答えた回答者の数は伸び、2015年の調査では16%、2013年の20%と比べ、2016年の調査では42%に上りました。

最終的には、発行体の提供する非財務情報の品質に対する投資家の見解が、機関投資家の関心を引きたい最高財務責任者や企業幹部らに対する痛烈な警鐘となるかもしれません。現在の事業モデルに影響し得るESGリスクを企業が適切に開示しているかを尋ねたところ、80%以上が否定的でした。かなりの数、つまり60%の回答者が、企業に対して十分なリスクの開示を求めているのです。

投資家に「もっと情報を」

企業は現在の事業モデルに影響し得るESGリスクを適切に開示していますか?

2015年

2016年

39% 25% 14%22%

いいえ 分からないいいえ、しかし会社はリスクをもっと開示すべき

7%60%12% 21%

はい

投資家の疑念はかなり解消されたが、情報の質への期待は上昇している。

「非財務ディスクロージャーはほとんど重要ではない、または財務的影響はほとんどない」という回答の割合

16%

52%60%

2013年 2015年 2016年

「非財務情報は一貫性がない、入手できない、または検証されていない」という回答の割合

32%20%

42%

2013年 2015年 2016年

「他社と比較できる非財務測定値はほとんど入手できない」という回答の割合

16%

2013年 2015年 2016年

20%

42%

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非財務報告を行う 企業の動機とは?2

さらに多くの発行体に対してESG活動の報告をが求められるようになると、企業にとって情報開示する動機は何でしょうか? 調査した投資家によると、大半の企業において最大の動機は、依然として顧客からの企業評価を確立することにあり、次に規制要件の遵守が続きます(図2参照)。投資家からの開示要求もある程度重要で、それに加えて株価評価の向上といった動機もありますが、その重要度は下がります。

パリのBNPパリバにおけるESG統合・社会事業投資の責任者、ジャッキー・プルドム氏は次のように述べています。「企業の社会的責任について語ることがまさに企業評価の一環となっていることを、現在の企業は明確に認識していると思います。その過程で、事業の適切な運営状況を公に説明するのです。私は今では大半の企業がこうした意識をもって行動していると思います」

多くの投資家が、「セクター や業種に特化した報告基準や

主要パフォーマンス指標」のある企業報告を、他のあらゆる種類の

報告に比べて「より有益」であったと述べています。

顧客からの企業評価を 確立する。

顧客からの企業評価を確立する。

規制要件を遵守する。

投資家のディスクロージャーに対する要望に応える。

リスク管理の姿勢を示す。

競争圧力に対応する。

事業戦略をさらに明確に説明する。

ESG投資のリターンを示す。

コスト削減を示す。

11%

22%

30%

31%

37%

38%

62%

74%

図2

発行体は非財務報告により顧客に好印象を与え、規制要件の充足を目指している。非財務活動やESG活動を詳細に報告することを動機付けるものは何だと思いますか?

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9投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

機関投資家は、先進的なESG企業リスト、ESG重視した特定指標やポートフォリオに名前が挙がれば、企業経営陣は称賛されるであろうとも述べています。投資家によると、非財務パフォーマンスの問題に力を入れている企業は実のところ同業他社と比較されることを歓迎しており、経営上層部はこうした評価を可能にするESGの統一基準を提唱しているとと言われています。

ある企業からESG情報が広範囲に開示されると、環境に関する困難な問題を抱えているにもかかわらず、その業種に将来性があると金融業界を何としても説得したいという動機があるのではと疑われるケースもあります。「私にしてみれば、それはその企業が事業の拡大や転換を考えているとはっきり宣言しているようなものです」とプルドム氏は述べます。ESGへの取組みの成果や報告は、企業の株価に影響を与えることもあります。これが、今や多くのCEOが四半期報告の公表や年次投資家会議においてESGについて語り、社会的責任投資の担当者やESGコミュニティーを招いて直接会って話す理由であると、プルドム氏は述べます。

一定数の機関投資家は、企業がESGパフォーマンスと投資機会を結び付けるESGの格付けを上げた場合、超過リターンの機会が得られることを十分理解しています。ESGパフォーマンスへの信用と評価を求める企業に対して、投資家は株式投資額を通じて評価を表すことができるでしょう。

企業のESG問題に関する報告や取組みへの動機として他に挙げられるのは、社会問題や環境問題をめぐるプロキシファイトから守るということがあります。ブラックロック社のフィンク氏は、企業がESG要素を重視した長期的計画を優先しない場合、巨大投資機関がアクティビスト(もの言う株主)たちを後押しすることになりかねないと警告しています。

ESG情報に対する投資家の要求を満たすことは、企業にとってますます困難になっています。企業は1990年代後半から非財務要素を報告してきましたが、当初は、多くの企業がほんの数ページしか費やしていませんでした。今日では、年次報告書よりも長いこともあり、企業の全子会社が実践した、さまざまなベストプラクティスの説明も加えています。

>> アジア太平洋の発行体について私たちが調査研究したところによれば、経営者と投資家双方において非財務パフォーマンスが重要であるかという問いに関しては、すでに答えは出ています。この地域の主要マーケットでは、問題はESGの重要性ではなく、投資家の期待する内容と、企業が開示する内容にギャップがあるということです。調査によると、このギャップはオーストラリアのような国ではかなり小さい一方で、統合やその一貫性をさらに進める必要があることが分かっています。アジア・パシフィックはこの分野で他をリードできる現実的な可能性があります。 <<

アジア・パシフィックで 見られることマシュー・ネルソン EYグローバル兼アジア・パシフィックCCaSSリーダー

現場からの 報告

私たちの調査によると、多くの投資家が、「セクターや業種に特化した報告基準や主要業績評価指標」のある企業報告が、他のよりも「有益」であったと述べています。二番目に有益とされたのは、「将来の業績予測と関連する非財務リスクへの言及や指標」でした。

発行体にとって、進捗状況を報告することは難しい場合があり、投資家がポートフォリオから潜在的リスクを排除することに集中しているような環境では、特に顕著です。将来の目標について語ることは、成果や業績を語るよりも経営陣にとってリスクとなることもあります。目標が達成できない、あるいは期限に間に合わない可能性があるからだと、プルドム氏は述べています。

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10

プルドム氏はさらに次のように続けます。「失敗した場合、企業の大計画の下、環境面、社会面で進展がなかったことに対し、投資家が非常に否定的な反応を示すであろうことを企業は恐れているのです。現在はますますリスクを回避する傾向にあります。目標の一つを達成できないことが企業の弱みとなれば、報告すべて、特にESG(計画)に関する話題をコントロールしたい企業にとって進捗状況を報告することがいかに困難か分かるでしょう」

投資家が特に懸念するESG関連リスクの一つは、規制、社会的期待、破壊的技術や環境条件などの変化によって生じる座礁資産です。調査した回答者の60%以上が、過去12カ月以内に座礁資産保有額を減らした、あるいは、将来の座礁資産リスクに備え、保有額を厳しく監視すると答えました(図3参照)。

パリで2億ユーロのファンド・オブ・ファンズを運用するシーダー・アセット・マネジメントのファンド担当者、エドモンド・シャフ氏は、次のように述べます。「座礁資産リスクにさらされている場合、それがいつ株価に反映されるかを投資家が判断することは難しい」と語っています。

投資家にとっては、座礁資産リスクにさらされている株を、完全に排除する、あるいは、大きくアンダーウェイトする方針をとるのが簡単です。なぜなら、リスクはいずれ市場価格に織り込まれますが、いつそれが起こるかを知ることは難しいからです。

一部の機関投資家は、再生可能エネルギーへの転換を迫られる気候変動などの環境問題が、特定のセクターに対して10年後あるいはそれ以降に及ぼす影響を算定する長期的金融モデルに基づき、購入、売却、価格決定を行っています。この金融モデルにより、一部の投資家は、環境的懸念に基づく下落を予測して、市場全体の下落が始まる前に、投資していた米国の石炭株を売却しました。

過去12カ月間で、(規制、社会的期待、破壊的技術や環境条件などの変化により生じる)座礁資産リスクにより企業の株式保有額を減らしたことがありますか?

はい

いいえ、ただし今後厳しく監視する

いいえ

わからない33%

26%

12%

29%はい

図3

座礁資産は多くの投資家にとって現在も懸念材料である。

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11投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

「投資家は引き続き財務情報を重視しているものの、投資決定の際は、それだけで十分とは限らない」

ファン・コスタ・クリメント EY スペイン、パートナー

CCaSS

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1212

焦点 >>

過去3年にわたり、本調査は世界の主要地域における投資家の見解に著しい相違があることが分かってきました。昨年の調査では、ESG情報分析に構造的アプローチを用いる点で、欧州とオーストラリアの投資家が他地域の投資家をリードしていたことを思い出す読者もいることでしょう。北米の回答者は、投資判断にESG情報を徐々に取り入れつつありました。そして、極東は、非財務情報利用において西側に遅れを取っていました。

今年の調査結果は、以前に世界中で見られた地域差の多くが平準化されつつあることを示しています。

今年の調査でも、数値は当然地域によって異なっています。しかし、調査全体を通じて、以前には著しかった地域間ギャップは縮小しつつあるようです、「環境、社会への影響報告やディスクロージャー評価に対する、構造的で体系的なアプローチ」の利用に関する質問では、2015年は北・中・南米の回答者25%が高度な構造的アプローチを用いていると答えました。この数字は、欧州では42%、アジアでは38%でした。しかし、1年後の調査では、北・中・南米の回答者22%が高度な構造的アプローチを用いていると答え、欧州とアジアでは値が減少しています。欧州の投資家が、ESG情報評価に高度構造的アプローチを用いる傾向はそのままですが、世界中の回答者間に見られた差は縮まり、体系化されたディスクロージャーの採用率の相違はなくなりつつあります。

ただし、2016年調査における二つの例は、時事的なテーマを扱った質問項目に対する投資家の態度の違いを示しています。調査から判断すると、オーストラリアとニュージーランドの投資家は、最近のスキャンダルを受けESG情報に対して従来よりも注視するようになりました。最近の法令違反を受け、非財務ディスクロージャーにかなり注視するようになった、またはある程度注視するようになったという回答は、世界全体で81%であるのに対し、この地域では94%に上りました。北・中・南米の投資家は、80%がかなり注意を払うようになった、または、ある程度注意を払うと回答しました。

同様に、オーストラリアとニュージーランドでは、調査対象となった投資家の100%が、COP21の地球の平均気温上昇を「2度」未満に抑える目標を受けて、企業は気候変動への対応に関するディスクロージャーを増やすだろうと予想しました。北・中・南米の投資家は85%、アジア・パシフィックの投資家は79%がディスクロージャーを増やすと予想しています。

投資判断におけるESG要素の重要性について、一部地域の投資家が懐疑的なのはなぜでしょうか。理由の一つとして、その地域の根強い固定観念や規制、特に環境規制に対する政治的見解に投資家が従っているということが挙げられるでしょう。投資業界では長年、米国の投資家は全体的にESGに対して懐疑的であり、欧州とオーストラリアの投資家がESG投資を主導してきたと考えられてきました。

一部の米国機関投資家における、地球規模の気候変動の要因に対する懐疑的な態度によって(炭素排出量と地球温暖化の因果関係を裏付ける証拠があるにもかかわらず)投資判断におけるESG要素の採用を制限してきました。

例えば、運用資産250億米ドル超の米国の公的年金基金の運用担当者が匿名を条件に語ったことによると、2015年のCOP21の目標や気候変動の影響全般に向け、企業がいかに努力しているかといったことは投資判断にほとんど影響しないということです。投資における環境的要因の重要性に対するこうした懐疑的な考え方は、取締役会、そして究極的には有権者の意思に従うことが義務だと考える州議員から生じています。そして、ニューヨークやカリフォルニア州政府下の年金基金であれば、おそらく環境問題を支持する政治的見解が影響力を持つだろうと述べています。

投資判断がその地域の一般的な見解に基づいているとすれば、法規制、特に環境規制に見られる地域差が投資判断に表れている可能性があります。

世界的にESG分野における 地域差は縮小しつつあるのか?

38%25%

42%

2016年2016年 2015年2015年 2015年 2016年

22%33%

23%

北・中・南米EMEIA* アジア・パシフィック

ESGを評価するアプローチにおいては地域差は縮小している。環境・社会的影響に関する報告やディスクロージャーに対し、構造的で体系的な評価を常に行っている。

* : 欧州、中東、インド、アフリカ

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13投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

厳格な環境規制を課している国で事業を行う企業の方が、ESGの実践や報告において進んでいる傾向にあると機関投資家は報告しています。また、これらの企業はCOP21ベースの目標達成でもやや先行しています。

ただし、北・中・南米やアジア・パシフィックでも、大多数の投資家は非財務ディスクロージャーに高い期待を抱いているようだということには留意すべきです。

また、今回の調査ではESG問題に対する投資家間の地域差が縮まっている可能性も示しています。2015年と2016年、過去12カ月間で非財務パフォーマンスが投資判断に重要な役割を果たした頻度を投資家に質問したところ、全体の27%が「しばしば」、41%が「時々」、27%が「たまに」、そして5%のみが「まったくない」と答えました。投資家の見解は地域によって平均とは異なりますが、その差は2015年調査と比べて縮小し、投資家とその見解が、地域を越えて一致しつつあることを示しています。

ESG問題に関する投資家間の地域差が縮小した要因には、最近の世界規模でのいくつかの取組みや出来事が考えられます。ブラックロックCEOからの書簡に加えていくつかの例を挙げると、COP21目標が米国労働省を初めとする195の国帆政府機関により法制化されたこと、国連責任投資原則(United Nations Principles for Responsible Investment、以下「UN PRI」)などの国際団体が、受託者責任基準としてESG要素を考慮することを推進していることなどがあります。

ESG懐疑論者はしばしば、顧客のために投資する投資家が非財務的要素を考慮することは、受託者責任により許されていないと主張します。しかし、いくつかの国では、受託者責任の定義と解釈を変更しています。

UN PRIは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ドイツ、日本、南アフリカ、英国、米国における投資慣行と受託者責任の定義ついて分析し、「21世紀の受託者責任(Fiduciary Duty in the 21st Century)」と題する報告を2015年に公表しました。その結論で、「受託者責任と責任投資に関する認識が時代遅れ」になっており、特に米国ではそれがESG問題を特徴付けていることを明らかにしています。また、投資判断におけるESG問題に関する投資家の説明義務を受託者責任に盛り込むことを政策立案者が明確化することを勧告しています。

2016年、UN PRIは、8カ国の受託者責任に関する報告書で明らかになったことを実行に移すため、中国、インド、韓国、マレーシア、シンガポールで、3年間のプログラムを立ち上げました。同プログラムでは、投資方針や実践へのESGの統合、受託者責任明確化の勧告を目指しています。

アジア・パシフィック

EMEIA

81%

北・中・南米

80%

79%

オーストラリア・ニュージーランド

94%

全体

81%

世界の投資家は、世間の注目を集める社会的・環境的事件に敏感に反応することが多く、パリ協定にも高い期待を抱いている。最近発覚したESG関連の法令違反を受け、非財務ディスクロージャーにかなり注視するようになった、またはある程度注視するようになった

EMEIA

北・中・南米

アジア・パシフィック

オーストラリア・ニュージーランド

全体

87%

85%

79%

100%

86%

パリ協定の「2度」という高い目標によって、企業の気候変動への対応やそれに関連するするリスク管理戦略のディスクロージャーが劇的にまたはある程度増える。

*: 各項目に「そう思う」と回答した投資家の割合

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14

投資家は、COP21が ESG報告インパクトをもたらすと期待3

2 0 1 5 年 1 2 月の パリ協 定(COP21、第21回締約国会議)の後、世界の気温上昇を産業革命前と比べて摂氏2度未満に抑えるという、史上初の普遍的かつ法的拘束力を伴う国際気候変動政策に195カ国が合意しました。

この合意は参加国に対し、炭素の実質排出量ゼロを今世紀半ばまでに達成するよう求めるものです。COP21合意は、各国がパリで提案された草案の範囲さえ超え、世界的な経済政策の一大転換をもたらすでしょう。金融経済市場はゼロエミッション技術、再生可能エネルギー源に向けて再編され、排出集約型産業の製品やサービス徐々になくなっていくとみられます。パリ協定で設定された高い目標が達成されたとしても、企業は気候変動により依然物理的影響を受け続けます。そのため、投資家は、予想される変化にいかに適応していくかを、今後ますます企業に問い続けていくでしょう。

投資家に実施した調査によると、回答者の27%が、COP21の「2度未満」目標によって、企業の気候変動対策や関連リスクマネジメント戦略に関するディスクロージャーが劇的に増加するるだろうと予測し、過半数(58%)がこうしたディスクロージャーがある程度増加すると予測しています。ディスクロージャーがほとんどまたはまったく変化しないと予測する投資家は15%にすぎませんでした(図4参照)。

投資家にとってCOP21に次いで重要な問題は、低炭素経済への移行をどのようにESG要素分析に取り込むかということであると、AMPキャピタルのカークマン氏は述べています。パリ協定に署名した各国が、国内法制化、規制の整備を行っている状況で、どの企業が勝者となり敗者となるか、企業がリスクや機会をいかに管理していくか

を、投資家は明確に認識する必要があります。COP21以前からすでに厳しい環境規制を実施してきた国で事業活動を行う企業は、「2度」目標への適応においてやや有利な立場にいるでしょう。

同氏によれば、「2度」目標に関するリスクを十分開示しない企業に対し投資家の不満が募っており、また、多くの企業が、将来を見据えたディスクロージャーよりも、事後報告的なディスクロージャーに向かう傾向にあります。こうしたことが、潜在的な座礁資産や利用不可能な資源といった潜在的な影響の開示を求める議決権行使に投資家を向かわせているのです。

COP21は、エネルギー業界に混乱をもたらし、また、技術が新たなエネルギー源への移行を加速させるとカークマン氏はみています。企業は対応に10年ないし15年の時間があると考えているかもしれませんが、実際には、技術の進歩により、6年から8年の時間しか残されていないかもしれないのです。

パリで2億ユーロのファンド・オブ・ファンズを運用するシーダー・アセット・マネジメントのファンド担当者、エドモンド・シャフ氏は、「企業よりも投資家の方が、気候変動や二酸化炭素排出量リスクの対策をとっている。この動きはCOP21前から始まっているが、パリ協定で勢いがついたようだ」と述べています。同氏によると米国の年金や基金などの機関投資家は単純に化石燃料関連のポジションを売却するなど、投資の撤退という方向に向かう傾向にあるのに対し、欧州の投資家は「炭素化」ポートフォリオや、二酸化炭素排出量に着目した投資、炭素戦略における企業との協同など、よりきめ細やかなアプローチをとっているようだということです。

ニューヨークのBNPパリバのCSR(企業の社会的責任)コーディネーター、エルベ・ドゥテイユ氏は、COP21の結果、2015年初頭に比べて経営者、役員、理事などの取締役を含め企業に劇的な変化が見られると述べています。COP21によって、気候問題に関する一般的な認識をが高まるとともに、

企業の気候変動対策や関連するリスク管理戦略についてのディスクロージャーは劇的に増加する。

企業の気候変動対策や関連するリスク管理戦略についてのディスクロージャーはある程度増加する。

企業の気候変動対策や関連するリスク管理戦略についてのディスクロージャーはほとんどまたはまったく変わらない。

15%

58%

27%

図4

パリ協定は発行体のディスクロージャーをさらに促進すると投資家は述べている。パリCOP21会合で「2度」の経済目標が決定されたことを受け、投資家は以下のように予測している。

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15投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

日本で 見られること牛島 慶一 EYJapanCCaSSリーダー

現場からの 報告

変化が起こるかどうかから、変化に対応するには何ができるかに論点が移りました。これは事業計画を立案する上で企業に役立つはずです。こうした状況の下、大手機関投資家だけでなくすべての投資家が、発行体によるディスクロージャーの必要性について率直に語るようになると思われます。

プルドム氏は、2017年の各社の年次報告書が出そろうまで、パリ協定の結果、企業にどのような変化が起きたかを語るには早すぎるかもしれない、と述べています。COP21がもたらす変化に最初に取り組むことになるのは、最も影響を受ける業界、すなわち石油、ガス、鉱業、石炭、化学です。医薬品、農業、食品、飲料、小売りなど、他業界の一部企業には気候変動リスクの影響がまだ及んでいませんが、いずれほぼすべての企業がこの問題に取り組むことになるでしょう。

ESG問題に関する最近の不祥事も、非財務ディスクロージャーに注目が集まる要因となっています。大手多国籍企業で最近の不祥事(ESG問題に対する期待を裏切るような事件)に関する質問では、調査した投資家の40%が、今回の不祥事を受け、発行体の非財務ディスクロージャーに従来より注視するようになったと答え、41%が従来よりある程度注視するようになったと回答しています(図5)。

排ガステストを不正にクリアする目的で違法なソフトウェアを搭載していたことが発覚した最近の事例は、ESGを統合した分析手法に投資家の耳目を集めたニュースの最たるものです。

COP21によって、気候問題に 関する一般的な認識が

高まるとともに、変化が起こるか どうかから、変化に対応するには

何ができるかに論点が 移りました。

>> 2015年に導入された日本版スチュワードシップ・コードの導入や年金積立管理運用独立行政法人(government pension fund、以下「GPIF」)による規則に沿ったESG投資への配慮といったここ最近の動向は、日本の外国人投資家から評価されています。中でもGPIFについては、「環境、社会、ガバナンスの要素を投資判断において考慮することにより、リスクを最小化し、中長期的な投資リターンの向上を期待できる」と声明を出しています。こうした動きは、企業のESGに関する情報開示の在り方について、他の企業にも影響を与えるものと考えられます。 <<

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16

私たちの調査は、投資家が今や、ESGディスクロージャーにいっそう注視するようになっていることを示しています。こうした傾向が、ESGパフォーマンスの価値を実証し、また、脆弱なガバナンスや貧弱な環境活動がどれほど投資に損失を与えるかを示す教訓となっています。事件にかかわった企業は集団訴訟の和解に多額の出費を余儀なくされるかもしれませんが、それ以上に、ス

テークホルダーの価値に対して大きな影響が及ぶでしょう。こうした出来事は、他の企業をESG情報の透明性向上に向かわせ、また、同業他社に同様の問題がないか検証する動きにもつながっていきます。

COP21や詳細に報じられた企業の環境・社会的課題の他、最近のいくつかの先進的な取組みによって、企業によるESG要素の報告の質が向上し、投資家のESGに対する関

心を高めています。2015年、フランスでは世界に先駆けて、機関投資家やその他の金融機関に投資における二酸化炭素排出量の報告を義務付ける法案が通過しました。報告は2017年6月から義務付けられます。同法は、投資とリスクマネジメントへのESG情報の利用状況に関しても報告を義務付けています。

もう一つの例は、気候関連財務ディスクロージャータスクフォースです。この団体は、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が座長を務め、気候変動リスクに関する有益なデータを投資家に提供する目的で、企業の気候に関する財務情報を無料で提供しています。タスクフォースは、2016年12月、その公式見解でいくつかの提言を行い、金融安定理事会は2017年6月に開催されるG20で、各国リーダーに対して同提言を伝える予定です。

最近発覚した不正事件を受け、非財務ディスクロージャーに従来より注視している。

最近発覚した不正事件を受け、非財務ディスクロージャーに従来よりある程度注視している。

最近発覚した不正事件は、非財務ディスクロージャーにまったく影響していない

19%

41%

40%

図5

不祥事により、投資家は非財務ディスクロージャーを精査するようになっている。最近発覚した大手多国籍企業での不正事件を受け、発行体の非財務ディスクロージャーに関しどの程度注意するようになりましたか?

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17投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

一企業の大きな不祥事によって、他社のESG情報の透明性が向上する傾向があります。

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18

投資家は企業のESG報告に対して、より多くを求めている4

調査した投資家は、投資判断をするに当たり、最も有益な非財務情報源は企業の年次報告であると回答しています。31%が「不可欠」であると答え、32%が「非常に役立つ」と答えています。その次に有用な情報源は統合報告書でした。18%が「不可欠」と答え、39%が「非常に役立つ」と答えています(図6参照)。

年次報告は非財務ディスクロージャーとして最も評価されていますが、調査に参加した投資家の大半(60%)は、事業に影響を及ぼす可能性のあるESGリスクの開示は十分でなく、企業はさらに開示すべきであると考えています。

いくつかのリサーチ会社が信頼性ある指標や分析を提供するようになり、ESG情報の質は上がってきているものの、なお向上の余地があるとAMPのカークマン氏は述べています。大型株の多国籍企業では、ESG報告は向上してきていますが、中型株や小型株企業では報告の質が著しく低下しています。英国、スイス、マレーシア、日本、その他の国における、機関投資家にとってスチュワードシップ・コードは、主要なESGリスクの報告を改善するために役立ちます。

カークマン氏はこうも述べています。ブラックロック・フィンク書簡の提言の一つは、投資業界の短期志向に疑問を呈するもの

今年の調査結果は、サステナビリティ報告書が 無難にまとまりすぎていないか、投資家向けにソリューションに偏りすぎていないかという

疑問を投げ掛けています。

5% 23% 47% 25%

8% 34% 44% 14%

10% 34% 42% 14%

12% 39% 32% 17%

18% 35% 35% 12%

11% 43% 32% 14%

15% 40% 34% 11%

15% 41% 36% 8%

18% 39% 34% 9%

31% 32% 30% 7%

年次報告書

統合報告書

マスコミ報道やビジネス解説

企業ウェブサイト(サステナビリティ、コーポレートガバナンス含む)

財務データプロバイダーからのESG情報

ブローカー、ディーラーによる株式調査や助言

サステナビリティ会計基準審議会の指標

企業の社会的責任(CSR)またはサステナビリティ報告

第三者によるサステナビリティまたはCSR指標格付け

Twitter、Facebook、YouTubeページなどの、企業のソーシャルメディアチャンネル

不可欠 非常に役立つ ある程度役立つ あまり役立たない

図6

投資家は価値ある非財務情報を求めて幅広く資料に当たっている。ただ一つの情報源によって判断が左右されるわけではない。投資判断に当たり、次の非財務情報源はどの程度有益だと思いますか?

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19投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

でありカークマン氏は、企業は、四半期業績や収益予測に終始するよりも、中長期的視野に立った企業報告を重視するようになるだろうと述べています。四半期報告は止めるべきときとさえ提案している投資家もいます。同氏は、こうした動きに対し、ESG情報はリスクと機会において、本来、中長期的な視点が適しているため、ESG要素を企業報告書に統合する上では好都合かもしれないと述べています。

報告書情報の質と適時性の両方について、企業のサステナビリティ報告書が投資家に不可欠であるといまだに証明されていないことは注目されます。サステナビリティやCSR報告書については、その理念は広く支持され、採用されているものの、今年の調査は、それらの可能性が発揮できていないことを示しています。サステナビリティ報告書について、非常に役立つまたは不可欠と答えたのは、回答者の半分以下(44%)でした。一般的な短期指向の財務報告という目標から解放された効果的なサステナビリティ報告書は、これまで認識されてきた価値に現実的な影響を及ぼす企業の他の資本(自然、社会、人間など)に議論を広げていく可能性を秘めています。しかし、倫理的行為、気候変動、現代の奴隷状態やグローバリゼーションなどをめぐるあらゆる問題が公然と議論されている状況にもかかわらず、外部のステークホルダーがCSR報告書を信頼できる資料と見なす例はほとんどないのが現状です。

今年の調査結果は、サステナビリティ報告書が無難にまとまりすぎていないか、投資家向けにソリューションに偏りすぎていないかという疑問を投げ掛けています。この種の報告書はその性質上、企業に都合のよいものとなるよりも、企業にとってはある種

不都合なことも公表されることになります。そうでなければ、大抵は成功事例のオンパレードとなり、長期的な信頼性に疑念が生じることになります。

カークマン氏は、ESG指標を漠然と羅列するのではなく、事業における一連の主要リスクや機会を企業自らが設定し、それらの要素に焦点を当てて報告する方が望ましいと述べています。

投資家が求める主要なESG要素の種類は業種ごとに異なるものの、ガバナンスはどの企業でも重要な問題です。環境問題も、いっそう顕著な問題となってきています。これは単に気候変動問題が要因になっている(b e c a u s e o f c l i m a t e c h a n g e issues)だけでなく、社会問題よりも環境問題の方が、有効なデータが多いということも一因です。投資家が関連リスクに焦点を当てるにつれて、人権問題はより重要になると思われます。

ESGディスクロージャーは、企業全体で統一化が図られています。。もっとも、グローバル報告イニシアチブによる標準指標リストでは投資家はもはや満足しないため、企業にとってESG報告の問題は、ますます解決が困難になるだろうと、BNP Paribasのプルドム氏は述べています。投資家が特定のESG情報について個別に要望することはよくありますが、企業がそうした要望に応えられない場合、投資家は画一化された資料しか得られません。

プルドム氏はこうも述べています。「私たちは、現在、ESGパフォーマンス指標は役立つが、それだけでは不十分であるという段階に差し掛かっています。私たちが真に望む情報は、企業戦略とESGリスクへの対処に関するものなのです。

プルドム氏によれば、こうした投資家の要望と企業報告のギャップを示す一例が、二酸化炭素排出量に関する報告です。企業により生み出される二酸化炭素のさまざまな発生源や量、カーボン価格予測の説明、価格の運用対策法、さまざまな企業プロジェクトへの影響について理解することは、投資家にとって重要情報となります。しかし、カーボン価格を機密情報とする場合や、カーボン関連資本支出として項目だてていないといった理由により、価格情報を公表しない場合があるのです。

同氏は続けます。現在、ESG要素に関し報告がないということは、その分投資家から否定的に評価される可能性が高いという事実を企業は理解し始めています。そのため、企業は、情報入手方法工夫を凝らしてます。数年前は、大半の企業ではESGに関する問合わせに対応するIR担当者は1名だけでした。今日では、担当役員や部門長への連絡先を提供する企業が多くなっています。とはいうものの、多くの企業では依然、検証されることとなる情報の開示については厳格にコントロールしようとしています。

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20

リスク管理における ESG分析の利点5

ESG分析が投資家に対してもたらす重要な利点の一つは、リスクの回避と測定です。特定の情報が開示されたことによって、投資計画を変更することがあるかを質問したところ、調査に回答した投資家のうち39%が、脆弱なガバナンスのリスクがある、または過去にリスクがあった場合に投資対象からすぐに除外すると答え、32%が事業により人権リスクが生じる場合、投資対象からすぐに除外すると答えました。また20%裏付けが乏しいデータや主張がある場合、投資対象からすぐに除外すると答えています(図7参照)。

投資を再考する理由のトップは、現状や過去の貧弱なガバナンスやそれに伴うリスクにあり、76%が再考すると答えています。資源不足によるリスクが75%でそれに続き、気候変動によるリスクが71%でした。

調査に回答した投資家は、業界や規制動向の調査、リスクや時間枠の検討、リスクによる株価評価の調整、資産配分や分散投資の決定、投資結果の評価といった、投資判断の全段階で、非財務情報を財務情報とほぼ同程度に取り扱っていると回答しました。非財務情報を「常に検討する」と「しばしば検討する」を合計した割合は、業種調査の段階が最大でした。 調査対象の投資家は、

投資判断の全段階において、 財務・非財務情報をほぼ同程度に

取り扱っていると回答した

図7

コーポレートガバナンス、環境、人権リスクは、投資家の判断を変える可能性が最も高い。投資先候補に関する以下のディスクロージャーは、投資決定にどのような影響を与えますか?

12% 59% 29%

8% 71% 21%

12% 75% 13%

15% 76% 9%

15% 68% 17%

20% 63% 17%

39% 58% 3%

32% 57% 11%

脆弱なガバナンスの現状・過去のリスク

事業による人権リスク

裏付けが乏しいデータや主張

管理していないサプライチェーンESGリスク

貧弱な環境パフォーマンスの現状・過去のリスク

資源不足によるリスク(水など)

短・中・長期的な価値創造に向けた、ESGへの取組みと事業戦略間との間に 直接的な関連がない

気候変動によるリスク

投資対象からすぐに除外する 投資を再検討する 投資計画は変更しない

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21投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

本調査は、投資家が取締役会と監査委員会を高く評価していることも示しています。これは通常、良好なコーポレートガバナンスおよびリスク管理にとって重要な点であるとされています。取締役会の監視義務と

監査委員会の監視のについて、「不可欠」「非常に役立つ」という回答はほぼ同割合で、調査対象の投資家にとっては、両項目とも重要であることが分かります。(図8参照)。

図8

高品質な非財務報告に関し最も説明責任があるのは経営陣と取締役会である。非財務パフォーマンス報告において、以下の各項目に対する説明責任はどの程度重要ですか?

不可欠 非常に役立つ ある程度役立つ あまり役立たない

20% 39% 30% 11%

26% 42% 27% 5%

28% 48% 3%21%

取締役会の監視義務

27% 49% 22%

2%監査委員会の監視

非財務情報の第三者による検証

企業の年次総会における株主承認

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22

投資家が求めるESG情報の種類は、1990年代に一部の企業が非財務パフォーマンスの報告を始めた頃から進展し続けています。

以前は、鉱業、石油・ガスといった重工業企業労働者の安全衛生に関する情報や、安全実績に関する責任を、投資家が重視していました。今日でもこうした情報は重要ですが、企業はすでに通常業務の一環として情報公開やリスク管理を実施しています。投資家は、社会からの期待の変化、破壊的技術の影響、人口動態の変化、水その他資源の不足、気候変動、金融危機後の役員報酬など、他のESG問題へと焦点を移しています。

今日では、サイバーセキュリティリスクの情報さえESGディスクロージャーと関連付けられることがあります。サイバーセキュリティリスクは、管理やデータ漏えい・ハッキングの防止といった観点からはガバナンスの問題となり、個人情報流出による深刻な潜在的顧客ロイヤリティー問題の可能性という点からは社会問題ともなります。

企業が生のデータを次から次へと発表するようになり、ESG情報も改善しています。

例えば、ブルムバーグは米国職業安全衛生管理局に報告されたデータを基に、従業員の総労働時間に対する業務上の負傷やインシデント件数の比率である、「インシデント発生率」を追跡・収集しています。また、サステナビリティ報告の中で、企業が自主的に安全衛生指標を報告することもよくあります。投資家は企業の安全文化の成熟度を評価するため、こうした数値を活用して投資分析に組み入れることができます。

さらにESG格付けも増えてきており、今日では100近くの機関がESG格付けを行っています。最近、モーニングスターとMSCIはファンドレベルESG指標の提供を始めました。また、S&Pはフィクストインカムについてより積極的に報告するようになっています。大手機関投資家にとって、ESG格付けと情報を多くの第三者が提供することは、特定証券に関する議論や問題に着目したり、情報網を拡げることを意味します。こうしたことによって、機関投資家のポートフォリオマネージャーやアナリストは綿密な調査を行ってその問題と投資との関連性や企業経営者との議論の必要性の判断材料を得ることができます。

投資家がESG情報を用いる手法も向上してきています。シーダー・アセット・マネジメントのシャフ氏によれば、以前、投資家はポ

ートフォリオ管理においてESGと財務的側面を厳密に区別するアプローチを好み、アナリストチームもそれぞれに分かれていました。現在は、多くの投資家がESG要素を通常の投資分析に統合しています。

また、投資家はESGの検討課題によるリスクと潜在機会について、より深く検討するようになっています。

調査した投資家が最も重視する非財務課題は、「良好なコーポレートシチズンシップおよび職業倫理に関する発行体の方針」に関するもので、35%がこの問題を「非常に重要」、57%が「重要」と回答しています(図9参照)。より多くの情報を求める顧客の要望についてはほぼ同水準で、31%が「非常に重要」、60%が「重要」としています。

回答した投資家のうち27%が、企業の非財務パフォーマンスは過去12カ月間の投資判断においてしばしば重要な役割を果たしたと回答しています。41%の回答者が、非財務パフォーマンスは時々重要な役割を果たしたと答え、27%が非財務パフォーマンスははとんど重要な役割を果たさなかったと答えています。

非財務パフォーマンスが投資判断にたびたび重要な役割を果たしていることから考えれば、調査対象の投資家のうち環境や社会

ESGの目標と優先課題は 進展している6

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23投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

>> EU全体での環境社会報告書義務化の導入は、ESGリスクと機会のディスクロージャーの一貫性を高める道を開くものです。これにより、顧客、投資家、規制当局、その他ステークホルダーと企業とのコミュニケーションや企業評価が高まる機会は、明らかに増大します。 <<

欧州、中東で 見られることクリストフ・シュメイツキー EY EMAIACCaSSリーダー

現場からの 報告

的要因について構造的検証を行ったと答える割合は驚くほど少ないものでした。調査対象の投資家のうち51%が、環境や社会に影響のある声明やディスクロージャーに対する評価は公式なものではないと答えました。これに対し、構造的、系統的評価を行ったと回答した率は26%で、22%がほとんどまたはまったく評価を行わなかったと回答しました。

投資判断する上で、非財務問題を考慮しない理由について尋ねたところ、回答した投資家の42%が、他社と比較できる非財務測定値がほとんど入手できないためと答え、また同数の投資家が、情報の一貫性がない、入手できない、または検証されていないためと答えました(図10参照)。非財務ディスクロージャーは重要性がない、または財務的影響がほとんどないとした回答者は、わずか16%でした。

27%の投資家が、企業の非財務業績は 過去12カ月間の投資判断において

しばしば重要な役割を 果たしたと答えました。

良好なコーポレートシチズンシップ(職業倫理に関する発行体の方針)

42% 41% 17%

25% 60% 15%

27% 58% 15%

31% 57% 12%

31% 60% 9%

35% 57% 8%

より多くの情報を求める顧客の要望

ESG投資が低リスクであることのエビデンス

ESG投資により将来的に株価の評価が向上することのエビデンス

ESGへの取組みに対する投資リターン

個人的価値観

図9

機関投資家とその顧客は、ESG・非財務課題に注目している。次の非財務課題は、投資判断においてどれくらい重要ですか?

非常に重要 重要 重要ではない

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250億米ドル超を運用する米国州政府年金基金のマネージャーは匿名で以下のように述べています。「ESG要因は投資オプションを制約するため考慮しません」

「現在、ESGは予測材料として有効であり、ESG要素をすべて検討すれば、検討しないよりも投資成績は向上するといった話が喧伝されています。メッセージとしてはいいでしょう。これが本当なら、(ウォールストリートの)全員がESG要素を考慮したいと思うでしょう。しかし実際は、(ウォールストリートのトレーダー)はESG要素を考慮していません。私もESG要素については通常ほぼ考慮しません」

前セクションで地域差について論じた通り、受託者責任の定義の拡大が、ESG報告

に大きな影響をもたらし、投資判断に非財務要素を考慮するという認識が定着すると思われます。ESG懐疑論者は、投資判断に非財務情報を考慮することは資産運用者の受託者責任に違反しかねないとことあるごとに主張しています。

しかしアメリカ合衆国労働省は、受託者の投資判断にESG要素を考慮することの合法化を支持してきました。2015年10月、労働省は新たな退職金制度ガイダンスを公表し、その中でESG要素を「投資の経済的・金融的価値と直接関係し得る」とし、その場合には、受託者はESG要素を投資分析に利用できると明記しました。

シーダー・アセット・マネジメントのシャフ氏は、ESG統合投資分析への進化により、受

託者がESG要素を分析に利用する動きが促進されると述べています。

「この統合アプローチは、ポートフォリオマネージャーの受託者責任とも合わせやすいアプローチです。なぜなら、貸借対照表のような金融データから得られる情報よりもさらに幅広い視野で、一連のリスクと機会を考察することにつながるからです。これは企業をより多角的に捉える一助となり、また受託者責任を果たす上でも有効です」

非財務問題を投資判断で考慮しない理由として、 あなたの考えに最も当てはまるのは 次のどれですか?

他社と比較できる非財務測定値が ほとんど入手できないため

非財務情報の内容が一貫性がない、入手できない、 または検証されていないため

非財務ディスクロージャーは重要ではないため、または財務的影響がほとんどないため

16%

42%

図10

投資家は比較可能な非財務情報の不足に不満を抱いている。

42%

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25投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

「この統合アプローチは、ポートフォリオマネージャーの受託者責任にも合わせやすいアプローチです。なぜなら、貸借対照表のような金融データから得られる情報よりもさらに幅広い視野で、一連のリスクと機会を考察することにつながるからです」

エドモンド・シャフ シーダー・アセット・マネジメント

ファンド選定担当

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機関投資家が非財務情報を投資判断の際に考慮することが多くなる中で、報告する側は次に何をすべきでしょうか?

とるべき行動は次の三つの領域に分かれると、私たちは考えています。

1. 現在と将来の投資家の期待に応える。

2. 自社のパフォーマンスについて語る機会を捉える。

3. 必須課題に対処する。

投資家の期待に応える

1. 長期的視野を持つ

長期的価値創造に影響を及ぼし得る重要な環境的、社会的、経済的側面と、それらへの対処法を伝えることで、投資家の要望に応えましょう。

2. グローバルなメガトレンドを考慮する

今後数十年にわたり業界を形成、混乱させる可能性がある事項を把握しましょう。現在のリスクと将来の機会のバランスを取り、事業モデルがきたるべき未来に適合していることを投資家に示しましょう。

3. 気候リスクに対処する

今世紀半ばまでに世界経済を脱炭素化するという法的枠組みの中で、投資家は気候に関する情報開示について、企業に大幅な再検討を期待しています。事業が直接、温室効果ガス排出に与える影響を報告するだけではなく、気候変動が資産やサプライチェーンに与える潜在的、物理的影響や、ゼロカーボン未来における現行事業モデルの維持方策を説明しましょう。

4. 資産とインフラをESGに配分する

投資家は、環境的、社会的パフォーマンスは非常に重要であり、またそれらが長期間見過ごされてきたと考えています。ESG問題とその規制に対処するプロセスや手順に配分した資産について、妥当性を評価しましょう。

機会を捉える

1. 証拠を信頼する

学術調査により、サステナビリティパフォーマンスが高い企業は、同業他社や市場一般の業績を上回ることが明らかになっています。環境的・社会リスク管理への投資は、結果につながるでしょう。

2. アジェンダを設定する

投資家は、ESG情報が業務実績に対してどれほど重要かを理解しているものの、こうした情報やデータの検討手法の多くはほとんど認められていません。この状況は絶好の機会です。直面するリスクや機会を把握しコントロールしていることをアピールし、先頭に立つことができるのです。

3. ステークホルダーを関与させる

事業のどの側面が最重要かの判断に、業界を超えた幅広いステークホルダーの意見を取り入れましょう。進捗について継続的に報告しましょう。

4. 取締役会を関与させる

調査によると、投資家は取締役会が戦略や情報開示を承認することを求めています。早い段階で取締役会を関与させることで、期待されるガバナンスを効かせることができ、望ましくない方向へ進む可能性を抑えることができます。

5. 報告を関連付ける

整合性がなかったり、開示された情報に矛盾があるという最悪の報告書を避けるため、との関連付けまたは統合の方法を検討しましょう。

次にすべきこと

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27投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

必須課題に対処する

1. マテリアリティは重要である

適切なマテリアリティプロセスを踏み、サステナビリティに関するディスクロージャーが「見せかけの環境活動」と見られることを避けましょう。十分に配慮された報告書とは、ステークホルダーに対して環境的、経済的、社会的リスクと機会、そしてこれらの現在と将来の事業に及ぼす影響を明確に示しているものです。前向きなものではあっても重要度の低い側面を主眼にすれば、読者からの信頼を最終的には損なう可能性があります。

2. 透明性を保つ

ESGパフォーマンス報告の有無にかかわらず、投資判断はESGパフォーマンスに基づいて行われています。直面する課題と対応策について透明性を保つことは、パフォーマンスの肯定的な面ばかりを強調する報告書よりも有効です。ESG側面に関する報告は、困難が伴います。困難がないという場合は、投資家がまだ知らない事実を実際に伝えているかを自らに問い直すべきでしょう。

3. 第三者保証を活用する

報告書作成過程の一環として独立した検証を行うことは重要です。投資家の3分の2が第三者検証が非常に有益または不可欠であるとしています。重要課題、データ、情報を第三者によって補強することは、投資家だけでなく全ステークホルダーに対して、報告書の信頼性を著しく高めます。

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2016年夏、投資判断における非財務情報利用について投資家の意見を調査するため、EYはインスティテューショナル・インベスター社のリサーチ・ラボに、機関投資家に対する3回目の調査を委託しました。今年の調査は、過去2年間に公表された同様の調査に続くものです。

これまでと同様、インスティテューショナル・インベスター社とEYは共同でアンケートを作成しました。アンケートには、過去の調査と同じ質問の他、近年争点となっているテーマに関連した質問も加えました。インスティテューショナル・インベスター社は、世界中の投資に決定権を持つバイサイドの投資家から計320の回答を集めました。さらに同社は、背景を捉える目的で10人の投資家にインタビューを実施しました。

28

本調査プログラム参加者の属性は以下の通りです。

25%

27%

42%

EMEIA

Americas(北・中・南米)

アジア・パシフィック

オーストラリア・ニュージーランド

5%

地域

13%

38%

17%

16%

17%

500億米ドル以上

100億~500億米ドル

50億~100億米ドル

10億~50億米ドル

10億米ドル以下

運用する資産額

今回の調査について

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29投資家に企業の真価を伝える非財務情報開示とは? |

インスティ テューショナル・インベスター社のカスタム・ リサーチ・

ラボとEYは、 本調査に

参加された アナリスト、

ポートフォリオマネージャー、

CIO、その他 投資意思決定者に感謝の意を 表します。

7%

3%

5%

9%

9%

13%

26%

27%

銀行

第三者投資運用機関

ファミリーオフィス

企業年金基金

保険会社

公的年金基金

財団

政府系ファンド

基金

その他

0%

1%

所属する機関

取締役社長

株式アナリスト

ポートフォリオマネージャー

最高投資責任者

リサーチ責任者

最高運用責任者

その他

14%

4%

8%

9%

18%

20%

27%

役職

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連絡先 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory

EYについて

EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。

EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.comをご覧ください。

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本書はEYG no. 01199-173Gblの翻訳版です。

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