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84 日看管会誌 Vol 11, No 2, 2008 The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol 11, No 2, pp 8491, 2008 一般病棟勤務看護者の高齢者看護における ジレンマの概要 Dilemmas of Nurses Are Experiencing Care to Elderly People in General Wards 山本美輪 Miwa Yamamoto Key words : dilemma, nurses, the elderly, general wards キーワード:ジレンマ,看護者,高齢者,一般病棟 Abstract The purpose of this study was to outline the types of emotional and moral distress experi- enced by nurses caring for senior citizens, and to propose conflict resolution strategies for these types of distress. Study participants were recruited from nursing staff working on general hospi- tal wards n=205. Outcome measurements included the prevalence of general emotional or moral distress when caring for the elderly, as well as the frequency with which nursing staff re- ported distress in seven specified conflict situations. The specified scenarios were developed through prior research and data mining. The results were as follows : 1. Approximately 80% of nursing staff reported emotional or moral distress in caring for el- derly patients. 2. Statistically significant percentages of nursing staff reported emotional or moral distress in the following situations : 1managing the physical security of elderly patients, 2managing quality of life aspects of care for elderly patients, 3medically treating elderly patients, 4car- ing for patients with dementia, 5managing conflicts within the medical team, and 6respond- ing effectively to emergency situations. For each of the six situations in which nursing staff reported significant moral or emotional distress, the distress may be classified as being either internally or externally driven. Coping with internal stressors may best be managed through experience and working with colleagues, as increased technical ability may lead to reduced discomfort in distressing situations. In contrast, we recommend that external stressors be managed through institutional support systems and modification of stressful organizational structures. 要  旨 本研究目的は,看護者が高齢者に看護を行っている中で感じるジレンマの概要を明らかに し,一般病棟における高齢者看護のジレンマに対して看護管理的な対応策の活用を考察するこ とである.対象は,高齢者に看護を行ったことのある看護者 205 名(協力の得られた関西圏下 にある一般病棟勤務看護者)に自記式にて質問紙調査を行った.その結果は以下のとおりであ る. 1.高齢患者に看護を提供する中でジレンマを感じたことのある対象者は約 8 割だった. 受付日:2006 10 13 日  受理日:2007 9 5 明治鍼灸大学看護学部老年看護学 Meiji University of Oriental Medicine School of Nursing Science 資料

一般病棟勤務看護者の高齢者看護における ジレンマ …janap.umin.ac.jp/mokuji/J1102/10000009.pdf類,ICN編『看護婦のジレンマ』(Tate, et al., 1977),Yamamotoらの高齢者への身体的抑制時

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84 日看管会誌 Vol 11, No 2, 2008

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol 11, No 2, pp 84─91, 2008

一般病棟勤務看護者の高齢者看護における ジレンマの概要

Dilemmas of Nurses Are Experiencing Care to Elderly People in General Wards

山本美輪Miwa Yamamoto

Key words : dilemma, nurses, the elderly, general wards

キーワード:ジレンマ,看護者,高齢者,一般病棟

AbstractThe purpose of this study was to outline the types of emotional and moral distress experi-

enced by nurses caring for senior citizens, and to propose conflict resolution strategies for these types of distress. Study participants were recruited from nursing staff working on general hospi-tal wards (n=205). Outcome measurements included the prevalence of general emotional or moral distress when caring for the elderly, as well as the frequency with which nursing staff re-ported distress in seven specified conflict situations. The specified scenarios were developed through prior research and data mining.

The results were as follows :1. Approximately 80% of nursing staff reported emotional or moral distress in caring for el-

derly patients.2. Statistically significant percentages of nursing staff reported emotional or moral distress

in the following situations : (1)managing the physical security of elderly patients, (2)managing quality of life aspects of care for elderly patients, (3)medically treating elderly patients, (4)car-ing for patients with dementia, (5)managing conflicts within the medical team, and (6)respond-ing effectively to emergency situations.

For each of the six situations in which nursing staff reported significant moral or emotional distress, the distress may be classified as being either internally or externally driven. Coping with internal stressors may best be managed through experience and working with colleagues, as increased technical ability may lead to reduced discomfort in distressing situations. In contrast, we recommend that external stressors be managed through institutional support systems and modification of stressful organizational structures.

要  旨本研究目的は,看護者が高齢者に看護を行っている中で感じるジレンマの概要を明らかにし,一般病棟における高齢者看護のジレンマに対して看護管理的な対応策の活用を考察することである.対象は,高齢者に看護を行ったことのある看護者205名(協力の得られた関西圏下にある一般病棟勤務看護者)に自記式にて質問紙調査を行った.その結果は以下のとおりである.

1.高齢患者に看護を提供する中でジレンマを感じたことのある対象者は約8割だった.

受付日:2006年10月13日  受理日:2007年9月5日明治鍼灸大学看護学部老年看護学 Meiji University of Oriental Medicine School of Nursing Science

資料

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Ⅰ.研究意義と目的

近年,高齢者看護の臨床現場において看護ケアに対する倫理意識の必要性が見直されている.これは,超高齢社会や年々複雑となる医療,そして患者の自己決定が尊重される意識の高まりに伴い,判断が困難な看護状況が増えているからである.さらに核家族化が進み,家族が高齢者の意思を正しく把握し代弁しにくい現状となっている.そのため,看護者は高齢者の意思をどのように尊重しサポートを行えばいいのか判断が難しい.海外の先行研究ですでにCrisham(1985)は,ジ

レンマ解決モデル(MORALモデル)で,ジレンマの概要を明らかにし,その選択肢を実行,評価・フィードバックしていくことが看護の質を高めることにつながると述べている.そして小島(1999)は,看護職は倫理的な問題への対処方法として,その約7割から9割が,看護職の同僚や看護の上司,主治医と話し合うことを明らかにした.これらより看護者自身がジレンマに向き合い,そのジレンマをチームで認識,共有する機会を臨床現場の中でもつことが,高齢者看護の質を向上させるために重要と思われる.しかし,高齢者看護の臨床現場におけるジレンマの概要を明らかにした研究はまだ少ない.したがって本研究目的は,看護者が高齢者に看

護を行っているなかで感じるジレンマの概要を明らかにし,一般病棟における高齢者看護のジレンマに対して看護管理的な対応策を考察することである.

Ⅱ.調査期間と研究方法

調査期間は,平成16年4~8月である.対象は,高齢者に看護を行ったことのある看護者205名(協力の得られた関西圏下にある一般病棟勤務看護者)で,自記式質問紙調査(留め置き法)を行った.調査票の概要は,①看護者の基本的属性,②高齢者看護におけるジレンマ経験の有無,③高齢者看護におけるジレンマ7項目(以下ジレンマ項目とする)の経験の有無,④ジレンマ7項目の自由記載である.ジレンマ7項目はCrisham(1985)のジレンマ分

類,ICN編『 看 護 婦 の ジ レ ン マ 』(Tate, et al.,

1977),Yamamotoらの高齢者への身体的抑制時に看護者が感じるジレンマ因子(2006)を参考に研究者が作成した高齢者看護におけるジレンマ,①高齢患者の身体の安全確保,②高齢患者のQOL

尊重,③高齢患者の治療に関する看護,④高齢患者の意思尊重・代弁すること,⑤認知症を有する高齢患者に対しての看護,⑥上司・先輩看護者,医師との意見対立,⑦緊急度の高い患者(生命の危険性が高い等)と高齢患者への看護業務内での優先順位に関する判断におけるジレンマである.そして,ジレンマ7項目の自由記載にはそれらのジレンマを経験した状況や内容について詳しく記載してもらった.

Ⅲ.用語の定義

高齢者看護におけるジレンマは「高齢患者を対

2.看護者は「高齢患者の身体の安全確保」,「高齢患者のQOL尊重」,「高齢患者への治療に関する看護」,「認知症を有する高齢患者への看護」,「先輩看護者・上司(師長等)・医師との意見対立」,「緊急度の高い患者と高齢患者への看護業務内での優先順位に関する判断」の6項目において,有意にジレンマを感じていた.有意差のみられたジレンマ6項目は,内部的ジレンマ,外部的ジレンマに分類され,内部的ジレンマへの対応としては,個人で高齢者に対するケアをマネジメントしていくことで看護者個人の対処能力は向上すると考える.そして,外部的ジレンマへの対応としては,組織によるジレンマサポートのマネジメントの必要性が示唆された.

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象に看護を行った経験のなかで看護判断において板ばさみとなる状況で,その判断に対し明確な答えがだせないことに対する複雑な心の動き」とした.高齢患者は「概ね65歳以上の男女の患者」とした.

Ⅳ.倫理的配慮

倫理的配慮は,対象病院・病棟の看護責任者に本研究の目的・質問紙配布方法・回収方法・研究者の所在を記述した依頼文を配布または研究者自ら説明した.対象者個人宛てには「ジレンマ」「高齢患者」の各用語の定義,回答方法・期間,目的,研究者の所在とプライバシーの保護,目的以外の使用はないこと,そして研究不参加における不利益性はない旨を記述した依頼状を添付し,回収をもって同意が得られたとした.また,本研究は大阪府立大学倫理委員会の承認を得た.

Ⅴ.分析方法

高齢者看護全般に関するジレンマの有無とジレンマ7項目の関係を明らかにするためχ2検定(Fisherの直接法)を行った.そして有意差のみられた項目のジレンマを感じた状況が書かれた自由記載を,テキストデータマイニングソフト(富士通トレンドサーチ)を用いて内容分析した.テキストデータマイニングとは,電子化された

手紙(Eメール等),および自由記載等の構造化されていない文章,つまりテキストデータをマイニング(採掘)することで,膨大な自然言語データの中に潜む単語の出現傾向,語と語の共起関係,または単語間の依存関係などを多角的視点から分析し,テキストデータの中に埋もれている傾向やモデル,情報を得るアプローチ法である.そして,本研究で用いた富士通トレンドサーチは,単語間の距離が近いほど関連が強いことを示している.しかし,日本語は文法上,文章の最後に述語が位置されるため,テキストデータの文脈を考慮し,名詞と名詞から派生する述語,そして同様に名詞

より派生する「ある」「いる」等の連体詞を分析対象とした.また「抑制」と「拘束」,「NS」と「看護者,看護師,看護職」,「Dr」と「医師,医者,主治医」等の同義語は統一を行い,コンセプトマッピング後,関連線がない用語や距離が遠く解釈が困難な用語は削除した.

Ⅵ.結果と考察

調査票配布数は205部で回収数は159部(回収率77.6%)だった.性別は女性が149名(93.7%),男性5名(3.1%),無回答は5名(3.1%)だった.看護系免許別では,看護師(保健師・助産師保持者含む)は124名(78.0%),准看護師は6名(3.8%)だった.これらの結果より男性,准看護師は少なかったため分析に影響はほぼないと考え,性別,看護系免許別での分析は行わなかった.しかしLee

(1994)は看護者が倫理的決断をするときには個人の信念,価値観,態度が基礎となることを述べており,性差や教育カリキュラムの異なる看護系免許別で今後検討する必要性がある.

1.高齢者看護全般に関するジレンマの有無とジレンマ7項目の関係高齢者看護全般に関するジレンマの有無とジレンマ7項目との関係を明らかにするためχ2検定を行った.その結果,④高齢患者の意思尊重・代弁すること,以外の6項目①高齢患者の身体の安全確 保(p<0.001), ② 高 齢 患 者 のQOL尊 重(p

<0.05),③高齢患者への治療に関する看護(p

<0.01),⑤認知症を有する高齢患者への看護(p

<0.001),⑥先輩看護者・上司(師長等)・医師との意見対立(p<0.05),⑦緊急度の高い患者と高齢患者への看護業務内での優先順位に関する判断(p<0.001)において,高齢者看護全般に関するジレンマと有意な関連がみられた.

2.ジレンマ6項目の内容分析有意差のみられたジレンマ6項目についてトレンドサーチを用いて内容分析を行った.その結

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果,①高齢患者の身体の安全確保(n=104)では〈ベッド柵〉を中心に〈転倒〉〈抑制〉の2つのグループに分類された.〈抑制〉グループでは抑制が行われる高齢患者の状態や背景,原因が表出された.〈転倒〉からは転倒・転落を繰り返すことや危険行為,また認知症高齢者の手術後の安静やドレーン・点滴抜去防止の状況であることが推測された(図1).②高齢患者のQOL尊重(n=40)では,〈受け入

れ〉と〈帰る〉の2つのグループに分類された.〈受け入れ〉では,散歩を行う時間もなく褥瘡が発生するような悪い環境,高齢者の不眠や不穏の訴えに対する家族の受け入れが悪い状況が表出されている.また〈帰る〉からは看護者は手術実施となる入院生活はQOLを低下させると思っていることや,高齢患者の食事やポータブルトイレ使用の状況,そして高齢患者は入浴などの清潔や保清に関する希望をもち,自宅や退院を希望している状況に看護者はジレンマを感じていると推測できる(図2).③高齢患者の治療に関する看護(n=72)では,

〈意思〉と〈高齢患者〉の2つのグループに分類された.〈意思〉のグループでは高齢患者の検査拒否の訴えや,点滴が入りにくい,点滴による制限,また高齢患者が意見決定と家族の希望が出されるとき,そして治療方針を理解してもらう状況が表出された.また〈高齢患者〉では医師の指示や処置に必要かと思う,苦痛を伴う治療が必要かと思う,認知症高齢者の手術や挿管となっている延命状態について考える状況にジレンマを感じていることが明らかとなった(図3).⑤認知症を有する高齢患者への看護(n=71)で

は,〈認知症高齢者〉と〈高齢患者〉を中心に2つのグループに分類された.〈認知症高齢者〉では看護者は,高齢者の認知症状の行為があり忙しく訴えはわかるがいらいらする,や徘徊への対応に困り悩んでいる状況が表出されていた.そして〈高齢患者〉ではケアや関わり拒否,コミュニケーションをとり説明するが理解する余裕がない,また治療のため夜間に抑制が行われる状況にジレンマを

感じていた(図4).⑥上司・先輩看護者,医師との意見対立(n=

32)では,〈対〉を中心に〈方針〉〈高齢患者〉〈治療〉の3つのグループに分類された.〈方針〉は医師が自分の都合で物事を行うや,家族と意見が異なる,看護者と医師との目標設定が違う状況が表出された.〈高齢患者〉では認知症の看護にはいろいろな案がある,社会的入院が高齢者には安静となり最善で適応とわかる,また〈治療〉では糖尿病経口薬やインスリン管理,苦痛を伴う治療が行われる状況にジレンマを感じていることが明らかとなった(図5).⑦緊急度の高い患者(生命の危険性が高い等)と

高齢患者への看護業務内での優先順位に関する判断(n=50)では,〈業務〉を中心に〈ある:動詞〉〈果たす〉の2つのグループに分類された.〈ある:動詞〉では認知症の食事介助よりも手術後の高齢患者で緊急度の高い患者や処置が優先される,また頻回なトイレコールに遅れる状況が表出された.そして〈果たす〉では,生命や転倒の可能性が高く目を離せない状態で危険なときには十分なケアを果たすことが業務と感じジレンマを感じていた(図6).これらの結果より,ジレンマ6項目における複

雑な倫理的問題を含む状況において一般病棟勤務看護者は,一般病棟で緊急性の高い患者に看護するなかでも高齢患者特有の状況において対応しなければならず,ジレンマを感じ業務している現状が明らかとなった.

Ⅶ.看護管理への展望

Mchutchionら(1989)は,高齢者の身体的抑制に関する看護ジレンマを外部と内部に分類し議論している.外部的なジレンマとは,病院における管理や法律,社会のシステムにおける状況下によるジレンマで,内部的なジレンマは看護者個人の看護業務環境や個人的な価値観によるものとしている.そして今回の結果で有意差のみられたジレンマ6項目でも内部的ジレンマとして,①高齢患

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説明

行動

転落

転倒

点滴

抜去

安静

事故

防ぐ

予防

する

去る

ない必要

抑制身体

行う

理解

不穏

徘徊夜間

使用確保

防止

必要性

ベッド

ルート

手術後

認知症

可能性

感じる

高齢患者

ベッド柵

危険行為

繰り返す

自己抜去

ドレーン

図1 高齢患者の身体の安全確保

業務 入浴

使用

保清

褥瘡発生

環境自宅

望む悪い

家族

不眠

不穏

見解

散歩

清潔

する言う

ない

説明

実施

退院希望

行う

帰る

生活

病棟

介助食事

ポータブルトイレ

手術入院

思う

低下

できるQOL

高齢者いそがしい

訴える

高齢患者

受け入れ

図2 高齢患者のQOL尊重

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聞く

手術徘徊悩む

多い

困難点滴

説明

抑制

する

強い

夜間

行動

対応 頻回

困る

いそがしい

得る

拒否ケア

よい

余裕

ない

理解

行為

行う

治療

分かる

ある:動詞

関わる

コミュニケーション

とれる

訴える

感じる

その人気持ち

認知症

高齢患者

認知症高齢者

いらいら

図4 認知症を有する高齢患者に対する看護

決定

手術検査

意思

伴う 苦痛

思う

医師

処置

家族

問う

この

指示

点滴

制限入る

意見

挿管 延命

拒否 状態

理解希望

行う

治療

にくい

高齢者

考える訴える

必要か

認知症

高齢患者

治療方針

図3 高齢患者への治療に関する看護

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食事

担う

観察

生命

ケア

状態

優先

業務

介助

離す

高い

床訪

対応

処置

転倒

十分

危険

頻回

コール

緊急度

ある:動詞

トイレ果たす

遅れる

重なる手術後

認知症

高齢患者

目:名詞

図6 緊張度の高い患者(生命の危険性が高い等)と高齢患者への看護業務内における優先順位に関する判断

入院

意見

立場

出る

物事 苦痛

方針

案適応

目標

看護

最善

設定

家族

違う

都合

方法

インスリン

安静

管理

上司

医師

退院

伴う行う 治療

わかる

社会的

ある:動詞関する

経口薬

糖尿病

看護者

認知症高齢患者

いろいろ

図5 上司・先輩看護者,医師との意見対立

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者の身体の安全確保,③高齢患者への治療に関する看護,⑤認知症を有する高齢患者に対する看護,外部的ジレンマとして,②高齢患者のQOL

尊重,⑥上司・先輩看護者,医師との意見対立,⑦緊急度の高い患者(生命の危険性が高い等)と高齢患者への看護業務内における優先順位に関する判断が分類できる.内部的ジレンマへの対応としては,医療従事者

として自己研鑽し,高齢者に対するケアをマネジメントしていくことで対応能力は向上すると考える.しかし,外部的ジレンマへの対応としては,ハード面や組織としての対応,そして個人レベルの機会をサポートする体制として,組織によるジレンマサポートのマネジメントが必要と思われる.このジレンマサポートがシステムとして看護職の卒後教育へ活用されれば,一般病棟内での高齢者看護の質を向上させる方法論の1つとしての可能性が示されると考察する.

Ⅷ.研究の限界

今回の対象者は,関西の一般総合病院勤務者のため回答に地域差がみられる可能性がある.また

人間の意識を変数としているため時間の経過による変化が考えられる.

謝辞:本研究にご協力いただいた関係各位に感謝

致します.

また,本研究は第10回日本看護管理学会にて発表

された一部である.

引用文献Crisham, P.(1985)MORAL : How can I do what’s right? :

Critical Nursing Management, 16, 42A─42N.小島操子(1999)看護における生命倫理教育,保健の科学,

41:4.Lee, S.(1994)Nursing ethics, In D.A. Gillies(ed.), Nursing

Management : A System Approach : 366─385, W.B. Saunders Company, Philadelphia.

Mchutchion, E. & Moese, J.M.(1989): Releasing restraints a nursing dilemma : Journal of Gerontological Nursing, 15(2): 16─21.

Tate, B.L. & International Council of Nurses(1977)The Nurses Dilemma─Ethical Consideration in Nursing Practice, Geneva, Switzerland/小玉香津子,尾田葉子訳;看護婦のジレンマ─業務における倫理上の諸問題:日本看護協会出版会.

Yamamoto, M., Izumi, K. & Usui, K.(2006)Dilemmas facing Japanese nurses regarding the physical restraint of el-derly patients : Japan Journal of Nursing Science, 3, 43─50.