32
教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 教育再生実行会議担当室

教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ

第5回議事録

教育再生実行会議担当室

Page 2: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

1

第5回教育再生実行会議技術革新ワーキング・グループ

議事次第

日 時:平成 30 年 12 月 10 日(月)13:59~16:03

場 所:中央合同庁舎第7号館3F2特別会議室

主席者:柴山文部科学大臣、浮島文部科学副大臣、中村文部科学大臣政務官、

有識者16名、馳衆議院議員、富田衆議院議員他

1.開 会

2.有識者からのヒアリング

3.第十一次提言中間報告案に関する討議

4.閉 会

Page 3: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

2

○佃主査 皆様、こんにちは。ただいまより第5回「教育再生実行会議技術革新ワーキン

グ・グループ」を開催いたします。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

政府・与党から、柴山文部科学大臣、中村文部科学大臣政務官、また、馳浩自民党・教

育再生実行本部長、富田茂之公明党・教育改革推進本部長にお越しいただきましたので御

紹介いたします。

なお、浮島文部科学副大臣は後ほど御出席の予定です。

それでは、議事に入りたいと思います。本日は、最初に有識者からのヒアリングを行い、

その後、第十一次提言中間報告案の審議を行う予定でございます。

本日、資料2-1として第十一次提言中間報告案概要、資料2-2として第十一次提言

中間報告案をそれぞれ配付しておりますけれども、これらの資料はいずれもまだ非公表で

ございますので、お取扱いをよろしくお願いします。

また、坪谷委員からも資料を御提出いただいておりますので、添付してございます。後

ほど御紹介いただければと思います。

それでは、有識者からのヒアリングに移ります。本日は、株式会社 LITALICO 代表取締

役社長の長谷川敦弥氏から 15 分程度で発表いただきまして、発表後に 10 分程度の質疑応

答の時間を設けますので、御質問はその際にお願いいたしたいと思います。

それでは、長谷川社長、どうぞよろしくお願いいたします。

○長谷川氏 ただいま御紹介にあずかりました、株式会社 LITALICO の代表をしています、

長谷川と申します。

本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

テーマは技術革新をどう教育に生かすのかというところで、LITALICO 自体がどんな会

社なのかというところと、具体的に当社がどう ICT を活用しているのかというところを本

日御説明させていただきたいと思います。

LITALICO は、創業してちょうど 13 年の会社になります。一貫して障害者の方の支援を

行ってきました。「障害のない社会をつくる」というビジョンに向かってやっておりまし

て、大事な考え方としては、あくまでも障害は人ではなくて社会の側にあるという考え方

に基づいています。実際に障害者の方というと、見ることに困難があったり、学ぶことに

困難があったり、仕事をすることに困難があったり、移動することに困難が事実あります

が、そういう困難を解決できるサービスやプロダクトを社会の側につくることによって、

障害のない社会を実現できる。例えば眼鏡やコンタクトレンズが社会の側にできたことに

よって、見る困難が随分と軽減された。同じようにして、今、彼らが持っている学ぶ困難

や働く困難を解決できるようなソリューション、プロダクトを社会の側に増やすことによ

って、障害のない社会をつくっていこうと考えています。

写真に出ているのが、当社が投資している新しい車椅子です。パーソナルモビリティ、

馳先生や富田先生にも以前乗っていただいたのですが、これは新しい電動車椅子になって

Page 4: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

3

います。以前、車椅子のユーザーさんにどんな車椅子が欲しいですかとインタビューする

と、iPhone みたいな車椅子が欲しいという話をよくされていました。なので、スタイリッ

シュなデザインでかつ性能もすぐれていて、通常の電動は 2.5 センチしか段差を上らない

ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

途中まで登っていきます。それぐらいパワフルなものがあることよって、もっと外出しよ

うとか、そもそももっと働いていこうとか、友達をつくりたいとか、そういう意欲の向上

にもつながっているものになります。

当社はそういうプロダクトをつくる事業もやっておりますが、一番始まりは、この

LITALICO ワークスという障害者の就職の支援から事業が始まりました。いわゆる職業訓

練学校のようなものが札幌から沖縄まで今 70 カ所展開しておりまして、年間に 1,200 人ぐ

らいの方が就職するようなサービスになっています。障害者の方の就職では一番実績を出

している会社になります。

実は利用者の方で多いのは、精神疾患でして、我々の考えとしては、精神障害になった

としても働くことに困難がない、自分らしく働いていけるような社会をつくろうというこ

とで、本人たちをエンパワーする一方で、地域の企業を障害のある方を生かせなかった企

業から生かせる企業に変革していくということをこの事業を通してやっております。ここ

が始まりです。

実は精神障害の方々、後天的な障害ですね。なぜ彼らは精神障害になったのだろうかと。

特にうちは統合失調症と呼ばれる幻聴が聞こえるとか幻覚が見えるという病気の方が多い

です。なぜ彼らが重度の精神障害になったのかを一人一人インタビューしていくと、多い

パターンは幼いころからの失敗体験の積み重ねによって若年性で精神疾患を発症している

方が多いのですね。勉強についていけなかった、いじめに遭ってしまった、家族から虐待

を受けていた方が多い。

もう一つは、ユニークな方が非常に多いです。個性的だなと。人間は嫌いです、動物は

大好きだけれども、コミュニケーションはやはり嫌いですというような方が多くて、仮説

は、ユニークな子供たちに合った教育環境がなかった結果、精神疾患になっている方が非

常に多いのではないかと。精神疾患で来ている方のうちの半分ぐらいは幼いころから何か

しらの問題を抱えている方が多い。なので、これはどこに障害があるのかを考えると、教

育がもっと個を生かすような教育になっていなかったことが一番の障害なのではないかと

考えて、では、そういうユニークな個性を持った子供たちを伸ばすような教育をつくろう

と始めたのが、この LITALICO ジュニアや LITALICO ワンダーという教育になっています。

今、発達障害のお子さんたちが 8,000 人以上当社に通っていますが、何と 1 万人以上の

方が待っています。

非常にユニークなお子さんたちがいます。4歳ぐらいから宇宙のビッグバンを調べてい

るようなお子さんもいたりとか、あるお子さんは小学校3年生なのですが、ロボットばか

りつくっているのです。将来何をしたいのと聞いたら、LITALICO の社員を幸せにしたい

Page 5: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

4

と。ありがとうと。どうやって幸せにするのと聞いたら、LITALICO の社員はみんな彼女

がいなさそうだから彼女のかわりになるロボットをつくってあげる、というようなお子さ

んがいたりとか、非常に将来の可能性を感じさせるユニークなお子さんがいっぱいいるの

ですが、なかなか学校との相性が悪くて、学校に行けば行くほど彼らは自己肯定感を下げ

ていたりして、非常にそれがもったいない。

例えば当社はそういうお子さんたちの個性を伸ばすために、想像力豊かなお子さんが多

いのです。プログラミング教育なども最近取り組んでおりまして、通常の勉強や体育の時

間だとなかなか活躍できないけれども、プログラミングでゲームをつくったり、iPhone の

アプリをつくらせたりしたらヒーローになれるお子さんはいっぱいいるのです。そういう

方は、社会の中で実際に IT 企業で活躍しているわけです。IT 企業の役員の方、私も学生

時代に働いていましたが、ゲームおたくの方が非常に多いですね。そういう彼らの持って

いるよさが、社会でできる活躍もあるのに、なかなか社会での多様な活躍と彼らの個性が

うまくつながっていないというのが非常にもったいないところであると考えています。も

っともっと学校教育自体が、多様なお子さんたちの個性を伸ばせる教育にどうやったらシ

フトできるのかというところを主眼に取り組んできました。

学校が悪いというよりは、学校の先生自体ももう抱え過ぎていて、なかなかそんな時間

もないしゆとりもないという状況があって、本当は予算があれば学校の先生、発達障害に

専門性を持った先生をもっと増やせるというところができるといいと思っています。委員

をされている坪谷さんにもリーダーシップをとっていただいて、2年ほど前に坪谷先生、

馳先生、富田先生のおかげで1万人の発達障害の専門性を持つ先生を増やすということを

決議いただきましたが、なかなか予算的にも制約があると思っていますので、今いる人員

でも専門性が高い支援ができるようにするにはどうしたらいいのかという観点で、当社の

方は ICT を活用しています。

具体的に2つありますが、1つ目が個別支援計画サポートシステムという形を行ってい

ます。これは当社の社員自体ももともと発達障害に専門性がある社員ばかりではないです。

そうではない社員を採用して、きちんと育成して、そうではない社員でもきちんと専門的

な教育ができるようなシステムをつくっています。

これは具体的には、まずアセスメントをするのです。多面的な行動の記録であったりと

か、今獲得しているスキルというのを指導員の目線で入力をしていって、その入力をした

結果、自動で個別支援計画がレコメンドされるようになっています。お子さんたちがそも

そもどういう目標で頑張ったらいいのかというのは、なかなか策定するのが難しいです。

目標のリストはうちに 7,000 リストあります。7,000 個の目標例があるのですが、7,000 か

らお子さんに合った目標を適切に選ぶというのは、なかなか最初に入ってきたばかりのス

タッフでは難しいところなので、そこを過去のデータを分析していって自動でレコメンド

して、お子さんの適切な目標が設定されやすいようなシステムを活用しています。それが

②で書いてある目標の設定と指導のポイントが具体的にレコメンドされるというところで

Page 6: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

5

す。

更に今踏み込んで開発しているのは、今度は目標が設定されたら、目標に合わせてどん

な教材を使ってどう指導したらいいのかという動画や教材とも自動でレコメンドで結びつ

けるようなところを目下開発中になっております。

既にこれは当社の中では運用しておりまして、これによってかなり支援員の負担も軽減

されて、入ってきたばかりのスタッフでも一定の質を担保した専門的な指導ができるよう

になっています。

あくまでもお子さんたちは当社に通うのは福祉のサービスなので、週2回ぐらいです。

ふだんは学校であったり家庭の中で過ごされているので、こういった支援の専門的なノウ

ハウを家庭や学校に共有して、将来的には三者一体となって専門的な支援ができるような

状況を目指していきたいと考えております。今、実際に埼玉県戸田市教育委員会さんとも

連携させていただいて、戸田市さんと当社の方で、実は学校版の支援システムというもの

を共同で研究開発をさせていただいております。当社の野口さんと教育長さんで連携させ

ていただいているのですけれども、このシステムを導入したら専門性がそれほどない先生

でも指導の質が担保できるとか、学校の先生も教材をつくる時間がなかなかないので、そ

ういった教員の負担を軽減する意味でも、学校版の開発というところをしっかりと取り組

んでまいりたいと思います。

もう一つ、人工知能の活用というところも取り組んでおります。少しマニアックな領域

にはなりますが、当社が2年半ほど前から取り組んでいるのは、人工知能を使って自殺の

予兆を発見するということを2年半ほど前からずっと研究で取り組んできました。実はこ

れは運用が非常にうまくいっています。これはお子さんよりは大人の精神疾患の方の支援

に使っているシステムになるのですが、非常に難しい問題として、自ら精神疾患の方の中

で命を絶たれる方というのは、一般の方よりも随分確率は高いです。家族や支援者として

も、なぜ彼が自ら命を絶ちたいと思っているまでのことを気づけなかったのかというとこ

ろを非常に周りの方ほど後悔もされていて、いわゆる自殺をしたいという念慮が明らかな

場合は支援しやすいですね。ただ、いざ全国で様々な自殺をされた方のデータをとってい

ってみると、念慮が全くなく、急に突然亡くなってしまった方も少なくない。どうしたら

そういった予兆に気づけるのかという過去の全国のデータを集めて、当社が AI に学習を

させたのです。

結果としては、鬱の傾向の悪化や緊張状態の高まり、一番は衝動性です。そういう傾向

を事前にどう察知できるのかというところが重要な要素であるとなってきましたが、今当

社の中では日々2,000 人通っています。2,000 人の日々の記録をとっているのですね。今日

こういう発言をしていました、今日、こういう行動をしていましたと。その行動のデータ

を人工知能が常時解析しています。人工知能でどの人が自殺のリスクが高いのかをランク

化しているのです。そのランキングを専門家が最後は目視で見て、この人は本当に危ない

という人がいたら、現場のセンターにエスカレーションして、家族と医療機関と連携して、

Page 7: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

6

服薬の量を一旦減らそうとか、大量服薬できないようにしようとか、家庭の中でどう連携

して支援するのかというところに取り組んできまして、これによって実は気づかなかった

自殺の念慮に気づいて命を守れたケースも複数できるようになってきています。

これは応用としては、恐らくいじめを受けている子供の発見や虐待を受けている子供の

発見も、同じように人工知能が役立つとかなり自信を深めております。例えば本当は学校

の中で毎日お子さんがつける日記や、もしかしたら月に1回お子さんに月報のようなもの、

今月どう過ごしたのか、今、自分はどう思っているのかを簡単に作文を書いてもらって、

それを常時人工知能が解析することによって、そういうお子さんたちが自ら命を絶ってし

まいたいとか、虐待を受けているとか、何かしら第三者からの介入支援が必要であるお子

さんを早期に発見して、早期に支援するということにも、人工知能を使っていけるのでは

ないかと思っています。

そのほかにもいろいろ活用していますが、時間も限りがありますので、当社の取組の紹

介は一旦以上とさせていただきます。

御清聴いただきまして、どうもありがとうございました。

○佃主査 どうもありがとうございました。

それでは、今の御発表に対しまして、皆さんから御質問等を受け付けたいと思います。

馳議員、どうぞ。

○馳衆議院議員 今日はありがとうございます。

2点ございまして、このいわゆるオーダーメード教育、個別学習というのは、公教育で

も展開すべきだと考えていますが、それにはどういう条件が必要かということが1点目。

2点目は、3年前に立法された教育機会確保法の3年後の見直し時期に来ておりまして、

こういう見直しをしたらよいというアドバイスがあったら、そのポイントは亀田さんから

お願いしたいと思います。

以上です。

○長谷川氏 ありがとうございます。

1点目について、まさに公教育でも導入できるようなまずはきちんとモデルをつくると

いうところで、今、戸田市さんとやらせていただいている共同研究、共同開発をしっかり

成功まで持っていって、戸田市できちんとこのシステムを導入した結果、お子さんが成長

した、家族も幸せになったという成功事例をまずしっかりつくるのが第一だと思っていま

す。それができた暁には、全小中学校さんに導入いただけるようにしたいと思っています

ので、そのための予算を是非各学校さんに確保いただきたいというのが1点目の回答にな

ります。

○亀田氏 LITALICO の亀田でございます。御質問いただきまして、ありがとうございま

す。

教育機会確保法の見直しということでございますが、法律の趣旨は子供が安心して学べ

る環境をつくるという趣旨かと存じます。したがいまして、学校の中でも、あるいは学校

Page 8: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

7

に行けない、行かないお子さんも個々の状況に応じて安心して学べるような環境をどうや

ってつくっていくか。学校の外で学んだとしてもそれを制度上位置づけるとか、そういっ

た安心して学べる環境づくりが必要ではないかと考えております。

ありがとうございます。以上でございます。

○佃主査 ありがとうございました。

そのほか、御質問は。

佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員 すばらしい御説明、ありがとうございます。

私も以前下村元大臣に、LITALICO さんを紹介され、見学をさせていただきました。御丁

寧にいろいろ教えていただき、ありがとうございました。

1つだけ質問です。LITALICO さんに入りたくても入れない生徒さんが1万人ぐらいにな

るということですね。それはどんな問題や課題や理由があって、1万人も希望されている

のに行くことができないのでしょうか。それを教えていただけたらと思います。

○長谷川氏 ありがとうございます。

当社自体は、やはり質を担保しながらきちんとサービスを届けていこうと思うと、これ

でも8年間近くで 100 店舗ぐらい出してきたのですが、それが最大、限界だと思っていま

す。むしろ社会全体でいけば、発達障害のお子さんを受け入れる福祉の事業所は 2 万業所

ぐらいあるのです。ほかの事業所は定員割れをしていたりする状況の中で当社に申込みが

殺到しているというのは、業界全体がまだ専門性が低いというところが非常に大きな問題

だと思っています。これは厚生労働省の所管にもなる福祉の事業なのですが、もう少し質

の高い事業所がきちんと利益を出していけるとか、質の高い事業所がきちんと評価される

という報酬の仕組みに変えていくというのがより大きくは重要だと思っています。

もう一個は、ふだんお子さんが過ごす時間は家庭や学校というところになっていきます。

今、当社は実際にうちに通っているお子さんたちが学校でも自分らしく学んでいけるよう

に、当社の職員に学校に訪問してもらって学校の先生とお互いにノウハウを共有するとい

うところにまさに取り組んでいるのですが、なかなか学校さんの受入れの体制、福祉の事

業所と何で連携しなければいけないのという形で拒まれることも非常に多くて、文部科学

省さん、厚生労働省さんで「トライアングル」プロジェクトを進めていただいて、学校も

福祉の事業所とちゃんと連携することを義務にするということが整ったのですが、まだそ

れが現場に浸透するのはこれからだと思っているので、そういった啓蒙活動ですね。発達

障害のお子さんの専門性を持った事業所がこういうところがあって、学校とこう連携した

らうまくいくのだよという成功事例をどう世の中に広めていくのかというところがこれか

ら課題であると認識しています。

○佃主査 ありがとうございました。

戸ヶ崎委員、どうぞ。

○戸ヶ﨑委員 それでは、長谷川社長様から戸田市教育委員会との共同研究について御紹

Page 9: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

8

介いただきましたので、そのことについての感想等をお話申し上げたいと思います。

まず、個別の支援計画サポートシステムについてですが、LITALICO さんといろいろな

共同研究をさせていただく中で、特にこのサポートシステムは、自治体としてもこれが軌

道に乗っていけば有り難いということを強く感じているところです。

その理由というのは、一つは質の高い指導計画の作成ということです。その作成を通し

てまさに盛んに今言われている個別最適化の実現がこのシステムを運用していく中で可能

になり、その後の指導等にも大きな成果が得られるのではないかと思っています。

特に個別の指導計画の作成につきましては、通常学級に在籍する発達障害のある子供た

ちには義務づけられているわけではないですけれども、なかなか進んでいないという現実

があります。一方で特別支援学級とか通級指導教室においては、それをつくるということ

までは達成していてもその後の活用に課題があります。また、記録そのものについても先

ほど支援する側の負担というお話がありましたが、学びのログ、成長のログというものを

効率的に記録を蓄積していくことがなかなかできていない。そのような課題が学校現場に

あります。

前回もこの特別支援教育のことで申し上げたわけですけれども、学校教育というのは勘

とか経験とか教員の匠の技というのですか、そういう部分に頼ってしまうところが多くあ

ります。特に特別支援教育に関してはその傾向が強かったのではないかと感じているとこ

ろです。そのような中で、この EdTech、ICT を導入していくことによって、効果的に質の

高い教育が行えると確信しているところです。将来的には個別の指導計画から個別の教育

支援計画、そちらの充実につながっていくことも期待しています。それらを含めたきめの

細かい、質の高いサポートに向けた関係機関との連携という部分についても、LITALICO

さんとの今の共同研究が間違いなく貢献していくと思っています。

最後ですけれども、この Society5.0 の社会というのは、距離とか時間だけではなくて、

先ほど来お話も出ていますが、様々な困難や社会にある多くの障害といったものを取り除

く可能性、そこに大変期待しています。

先日はたまたま有名な分身ロボットの開発の方にも授業をしていただく機会がありまし

た。その際に、肢体不自由や病弱の子供たちに対して様々な教育的支援の可能性を感じま

した。また、これも先ほど長谷川社長様からもお話があったように、本市でプログラミン

グ教育を適応指導教室の中に導入したところ、一夏でゲームの大作を仕上げたという子が

いました。とても生き生きと取り組み、これはまさに今言われているギフテッド教育に繋

がると感じました。このギフテッド教育というところにも視点を当てて、こういった個別

支援計画サポートシステムがどんどん進んでいくのではないかと期待しています。今後は、

LITALICO ワンダーなど産官学とも連携をとることによって、まだまだ様々な可能性が今

後も開けていくと共同研究を通して確信しています。学校側も独自に地道な実践を充実し

ていかなければいけないこともあるし、そういった連携も併せて深めていく必要があるの

ではないかと思っているところです。

Page 10: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

9

長くなりました。以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

そのほか、ございませんでしょうか。

工藤委員、どうぞ。

○工藤委員 とても参考になりました。

質の高い支援の在り方ということについて、もうちょっと具体的に教えてもらいたいこ

とがあります。個別の指導において、どんな目標を設定して、どのような具体的な支援を

行ったら、こんな効果が上がったみたいなことを1つ、2つ、教えてください。

○長谷川氏 そちらは野口から回答させていただきます。

○野口氏 具体的な子供さんの事例でお伝えしますと、例えば怒りのコントロールができ

なくて、すぐ暴力を振るってしまったりとか、そういったところに困難さがある子供さん

はよく当社の事業所にもいらっしゃるのですけれども、そういった方に対してどういった

支援をしたかというと、そもそも感情の理解はすごく抽象的でわかりづらいのです。なの

で、どんなときにどんな感情になるのかが何となく当たり前のように暗黙の了解で世の中

ではわかられていますけれども、どうしても自閉症スペクトラムの子だったりとか、ADHD

の子だと、その理解が難しくて、そういった子に何をするかというと、まずは感情と状況、

どんな状況のときに自分がどんな感情になるのかというところの結びつけからやっていき

ます。

例えばうれしいもそうですし、悲しいもそうですし、どんなときに自分はちょっといら

いらするのだろうというところを教えていって、そのときは、今ちょっと落ち着いている

ねとか、今、ちょっといらいらしているねみたいな形で、言葉と状況と感情をラベリング

していくことをサポートしています。

それができるようになったら、次は、すぐぶち切れてしまうのではなくて、いらいらし

た段階でクールダウンしていくということを今度は教えていきます。そうなると、ゼロか

ら 10 ですぐ 10 になるのではなくて、徐々にいらいらしていくはず。そのちょっといらい

らした段階で自分の気に入っている落ちつき方を一緒に探していくというのを次のステッ

プとしてはやっていく。子供によっては本当にそれがポケモンのキャラを歌えるかもしれ

ないし、お水を飲むかもしれないですし、そういった落ちつき方法を一緒に探していって、

今度はそれをマニュアル化して、こういうときはこういらいらするから、こう落ちつこう

みたいな形で視覚的に見えるようにしていきます。

今度、それは御家庭と学校の御協力が必要になっていって、実際の場面でそれをどう使

えるようにしていくかというと、そのマニュアルみたいなものを御家庭だったり学校さん

で確認を毎回毎日していただいて、それで実際にちょっといらいらし始めた段階でそれを

一緒に見ながら、こういうときはこういうふうに落ちつくのだったねという形で、実際に

殴ってしまうというところまで行く前にクールダウンする練習をしていくみたいなところ

を、例えば御家庭と学校と連携をしながらやっていったりしています。

Page 11: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

10

(浮島副大臣入室)

○佃主査 ありがとうございました。

○工藤委員 ソーシャルスキル的なことは私もイメージはつくのですけれども、学びのス

タイルというのですか、例えば耳が不自由な子とか、目が不自由な子とか、読み書きの不

自由な子とかを学校の中でどのような支援をして、そんな事例があると有り難いのです。

○野口氏 そういった点ですと、多いのがディスレクシアで、読み書き障害の子が非常に

多いです。そういった子供の場合は、もちろん ICT を活用して音声の読み上げというもの

を活用していくケースもありますし、あとは例えば漢字を学ぶにしても、うちは 20 個ぐら

いのプログラムがあります。学校だと一律で、漢字を学ぶときにはドリルで学ぶかと思う

のですけれども、そうではなくてその子に合った学び方。例えば絵と結びつけて覚えるの

が得意な方もいらっしゃいますし、若しくは言語的な手掛かりと結びつけて覚えるのが得

意な子もいるので、その子に合った学び方をその 20 個の中で選んでいくというようなやり

方で支援をしています。よろしいでしょうか。

○長谷川氏 私が自分で担当していたお子さんは小学校1年生だったのですが、なぜかバ

ッハが大好きで、バッハが死ぬ直前に何を考えたのかを知りたいと毎日言っているのです。

なので、バッハのウィキペディアとか、バッハの文献を持ってきて、国語の教科書は1年

生で読まないのですけれども、バッハの文献はすごく難しいのを読んでいくのです。それ

を使って国語の問題をつくったり、バッハが生まれた年と死んだ年というので算数につな

げていったりして、興味関心があることだったら異常なエネルギーを発揮して学んでいく

ようなお子さんもたくさんいたなと思います。

○佃主査 先ほど、浮島副大臣が到着されました。これから議論に是非参加していただき

たいと思います。よろしくお願いいたします。

北野委員、どうぞ。

○北野委員 お聞きしたかったのは、個別にいろいろな個性のある子供たちを伸ばすとい

うのですけれども、ただ、待機児童も含めすごく数が多いですね。これをスケールするた

めにはどうやって教えるのがよいのでしょうか。よいところを理解できる感受性のある先

生がいないとできないのではないかと思うのですが、今後の計画、又は、ほかと連動して

やれるとなったらすばらしいと思っているのですが、どういうことがあり得るのでしょう

か。

もう一つは、別のところで聞いた話になりますが、発達障害の子供たちをいろいろモニ

タリングして、普通の社会行動を起こすような方向に持っていくというもので、個性を見

るのではなくて、修正をかけるという話も聞いたことがあるのです。そういう方法が果た

してうまくいくのかは個人的には疑問なのですけれども、そのような試みに関する御意見、

その2つをお伺いできればと思います。

○長谷川氏 ありがとうございます。

私も友人が、ソニーコンピュータサイエンス研究所で遠藤謙という者が働いておりまし

Page 12: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

11

て、ロボット義足をつくるというのをずっとマニアックにやっている友人なのですが、北

野さんのおかげで個性が随分伸びていて、非常に感謝しておりました。

どうやったらそういう専門性を持った個別最適な教育をスケールできるのかという観点

ですが、本質的には組織やサービスは一貫性が最も重要であると思っておりまして、どう

学校自体のビジョンを設定して、そのビジョンに基づいてビジョンに合った人を採用して、

ビジョンに合った人が活躍しやすい働き方や評価の制度やサービス提供の仕組みをどう細

部に宿すまで一貫したものをつくるのかという話が私は一番本質的であると思っていま

す。

なかなか子供たちに主体的になれと言っても、先生が主体的で創造的でなかったり、そ

れを評価されない仕組みの中でそうなれと言われても、なかなかこれは実感できないです

ね。それよりもやはり実際にそれを体現している大人と接することができたり、それを体

現している文化と接することによって、これが主体的なのだ、これが挑戦的なのだという

ことを学んでいくことが本質的であると思っています。

それはかなり大規模な話になってしまうので、よりテクニカルなところになってくると、

先ほどのようなシステムですね。子供の個性を見るというのは、5つに子供の個性が分類

できるのだったら人間で判断できたりするのですね。でも、子供の個性が余りにも膨大み

たいな、では、発達障害の中のどの区分ですかとか、家族はどういう環境ですか、5科目

で何が得意ですか、感覚はどういう敏感さ、視覚優位なのか、感覚過敏なのか、どういう

感覚の特性を持っていますかと、子供の個性を見なければいけないものが 100、200、300、

詳細に言ったら何千とあるわけですね。それを人間がやるということに無理があると思っ

ているので、こういう ICT や AI を活用していって、見るべき個性をある程度限定して、

その個性自体を先生が理解しやすくする。理解された個性に対してどういうプログラムの

選択肢やどういう目標設定でプログラムをやったら過去効果があったのか、成功していっ

たのかをちゃんとデータで科学的にやっていくというところをみんなで蓄積していくとい

うのがすごく大事なのではないかと思うのです。

よく学校の先生と話をしても、この子にこういうことをやりたいのだけれども、アセス

メントがうまくできないというのと、もう一個は教材をつくる時間がないとよくおっしゃ

いますね。なので、全国の先生で共通してそういうシステムを使っていって、こういう子

にはこのプログラムを使ったらすごく効果が出たよというのを共有していって、エビデン

スがたまっていったらどんどんそこから各先生が引き出していく。引き出して駄目で、オ

リジナルでつくったものがあればまたそれをアップデートして共有システムに上げていく

という形で、知を集約していく使いやすいシステムをつくるのが非常に近道になるのでは

ないかと考えています。

○佃主査 どうもありがとうございました。

大橋委員、どうぞ。

○大橋委員 手短にちょっと違う観点から質問させていただければと思うのですけれど

Page 13: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

12

も、人工知能で自殺予兆はすごいことだなと思って伺っていたのです。この人工知能に関

してなのですが、例えばある生徒さんを見て、実際に勉強を始める前に、君の到達度はこ

こまでだよということも多分人工知能はできてしまうのではないかと思っていて、そうす

ると、本来可能性がある芽を摘むことにならないのかなと。人工知能の使い方で、これは

使ってよくてこれは駄目だという何か考え方があれば教えていただきたいというのが1点

目です。

2点目は、自殺予兆の話というのは、結局 AI が自分のことを自分以上に知っていると

いう話になってしまっているのではないかと思っていて、そうするとこのスコアリングと

いうのは個人情報の観点で考えるとどのように整理すればいいのかを簡単に教えていただ

ければと思います。

以上です。

○長谷川氏 わかりました。1点目ですが、非常に鋭い御指摘だと思っておりまして、最

終は、私は人間が判断すべきだと思っています。あくまでも当社も、自殺のリスクが高い

人をランク化してレコメンドはされるのです。ただ、本当にこの人はリスクが高いですか、

今、介入すべきですかというのは人間がそこの中から事実を確認して最終決断をするとい

う形にしないと、AI をうまく使えないと思っています。

恐らく教室で導入したりするときも、例えばこの子はこういうやり方が正しいとか、到

達点はここまでであるというのが先生の手元に出たとしても、あくまでも本当にそうなの

かとか、この方法がいいのか、先生が最終ジャッジをする。ただ、ジャッジをするための

ヒントをくれるのが AI であると。そういう使い方があくまでも正しい使い方、人間らし

い使い方だと考えています。

もう一個、個人情報の観点でいくと、正直まだ余り深くは考えていなかったというとこ

ろになるのですが、おっしゃるとおり非常に重要な情報になると思うので、うち全体の個

人情報が実はかなりシリアスなのです。なので、かなり厳重な管理をしていますが、学校

で導入するときも一番のセキュリティーを担保してやる必要があると感じています。あり

がとうございました。

○佃主査 どうもありがとうございました。

それでは、有識者からのヒアリング、以上でございます。どうもありがとうございまし

た。

○長谷川氏 ありがとうございました。

(長谷川氏、亀田氏、野口氏退室)

○佃主査 それでは、第十一次提言中間報告案の審議に移りたいと思います。

委員、オブザーバーを交えて自由に討議願いたいと思いますので、必要に応じて事務方

からも御意見を伺いたいと思っております。

それでは、松田委員、どうぞ。

○松田委員 4点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。

Page 14: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

13

まず1つ目はこれからの教育の在り方についてまとめられたところなのですが、特に AI

時代の変化を見越して、それを乗り越えていくとか先導していくとか、そういう部分も加

わるといいのではないかと思います。

特に議論でもございましたが、AI は与えられた課題に対して最適解を出すのには非常に

有力なツールだと思うのですが、何を問いとして立てるかとか、もっと言いますと、何が

価値なのかを考え、価値自体を創造していくということは苦手な技術でございますので、

価値を創造する力が今後の教育において非常に重要だということは、一言触れる必要があ

るのではないかと感じます。

その意味では、個人的には面白いということをつくり出していく力だとか、あるいは、

その意味で遊びの精神のようなものが実は重要になってきていて、失敗というものをチャ

レンジに変えたり、わからないものを面白いものに変えていくような、そういう力にも目

をやることが必要なのではないかと思いました。

2つ目は、教員養成に携わる者として、教師や教育支援職という形で外部人材を活用す

るということ、これは是非推進しないといけないと思うのですが、現状を見ていますと、

これでは弱い部分もあるかなと思っております。私が報告させていただいたときのクロス

アポイントメント制度の小中高での適用といいますか、つまり、3日間企業で勤めるけれ

ども、2日間は正規教員で学校に勤めるというような、これは法律改正をしないといけな

いので非常にハードルは高いところなのですが、そのような思い切った外部人材の適用に

ついても少し検討されるといいかなと思いました。

併せて教師の働き方改革についても重要な観点だと思うのです。この AI 時代に学びが

変わっていったときに、多分知識は非常に外部に豊富に存在しておりまして、そうします

と、教師自身も子供たちと学ぶとか、あるいは更に高度な学びを教師がすることで子供た

ちが引っ張られていくというような、教師という仕事自体が学ぶということを中心にした

非常に専門性の高い、その意味で教師の地位向上にもつながるような面があるのではない

かと思うのです。そういう意味で、ここに優秀な人材を集める必要もございますので、教

師の仕事というものが、大きく本当に面白いものに変わっていくのだというような、その

ような側面が少し加わるといいなと思いました。

最後にもう一点、AI 時代の生涯学習、社会教育や家庭教育との接点の問題です。このあ

たり、AI を内容として取り入れていくことも必要ですし、AI を使うことで逆に学校、家

庭、社会が学びという意味でつながっていくというのでしょうか。そのようなことを通し

てコミュニティーも形成されていくことを促していくことが観点として盛り込まれるとい

いなと感じました。ラーニングコネクションとかラーニングエクスチェンジ、といった「結

合」「交換」という概念を使って、それぞれの学びがリンクして行くことを求めるような

理念を打ち出すべきだと思います。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

Page 15: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

14

それから、文書で意見を出していただいておる坪谷委員からお願いします。

○坪谷委員 坪谷でございます。

同じようなことなのですが、大変たくさんのすばらしい案をいつまでにやり遂げられる

のか、やり遂げた案をどのように評価していくのかというのが、私は必要だと思いました。

アメリカのテキサス州におきましての ICT を公教育に導入する計画について皆様に御報

告するという約束を申し上げましたので、本日添付の資料としてつけさせていただいてお

ります。3ページものの資料でございます。

テキサス州は 15 年間を5年ごとのフェーズに分けて、長期的な計画のもと、具体的な目

標と予算を立てており、着実にその政策が実行されております。具体的なものに関しまし

ては、資料の2ページ、3ページを参照していただければと思います。

日本でも、先ほどお話がありましたように、教育の ICT 化に向けて本年度より5年間で

9,000 億という予算が実は確保されていると。しかし、それはあくまでも地方財政措置と

いう性質上、その使途は各自治体及びその首長に裁量が任されているのです。また、環境

整備というところからハード面に偏っておりまして、例えば教員の負担や ICT を活用した

プログラムであるとか、教員の研修であるといったソフト面は欠けている。ハード面とソ

フト面の両方からこの5年間、9,000 億でございますので、それをきちんと計画を立てて

具体的にどんな目標でやっていくのかを設定していくべきではないかと、先ほどのお話と

も通じるところですが、私はそれが重要ではないかと思うところです。

それと、アウトカムの評価ですね。どういうアウトカムの評価を、それの仕組みをきち

んと早急に構築しなくてはいけない。今のままだと自治体の裁量によるため、自治体間で

差が出てきてしまうのではないかと思う次第なのです。つまり、明確な具体的な計画、そ

れにかける予算、そのアウトカムの仕組みをきちんとつくっていく。これが必要だと思い

ますし、先ほどお話しいただきました中間報告案もたくさんのいい案が出ておりますので、

是非具体的に期限の設定と、それをどのように達したのかどうか、どこまで行っているの

かを評価する方法ですね。なおかつ、こちらに御参加いただいている自治体の首長さんの

ように意識の高い首長のいる都道府県は大変よい取り組みをしているけれども、そうでは

ないところがあると、これは住んでいる場所によって差が生じてしまう。これはいけない

ことですので、そういうことのないような御配慮をお願いしたいというところでございま

す。

ありがとうございました。

○佃主査 ありがとうございました。

堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 ありがとうございます。2点御意見を申し上げます。

1点目は、ネットワークをはじめとする ICT 環境整備が,本当に喫緊の課題であるとい

う認識でございます。これは今、坪谷委員がおっしゃったように、地方交付税があれだけ

交付されているのに、自治体のいろいろな事情で学校の ICT 環境は十分に整備されていな

Page 16: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

15

くて、学力調査すらネットワーク経由でできない状況になっています。その結果、人手が

かかって、時間もコストがかかって、みんなが大きな苦労をしています。

ですから、で学校の ICT 環境整備をしっかりと推進する意味でも、どうしても必要なこ

ととして、学習の、学校のためのネットワークの基盤、中心になるところは、高速道路の

ようなものだとイメージして、これは地方に任せず国が主導してやっていいのではないか。

高速道路をおりてからどのように家までと行くかいう経路のところは自治体が整備するし

かないと思いますけれども、基幹となる学校ネットワーク基盤については、もっと国が強

い働きかけで政策化ができないのかなと思うということです。

その次に、高速道路をおりてからの経路の整備については、もう少し具体的に、これと

これができるようにということをスペックとして明示すべきだと思うのです。例えば学力

調査で言うと、ネットワークで CBT でこのぐらいのファイルのやりとりがある調査をやる

ので、それがこのぐらいの時間内で滞りなくできること、何人同時に受験できることとか、

そのようなことをスペックとして入れるべきでしょう。また、災害があったときは学校は

避難所になりますから、避難所になったときでも使えるネットワークとして、堅牢である

と同時に、ユーザー認証が必ずしもそう簡単ではない、不特定多数がさまよってやってき

たとき、それでも使えるネットワークの整備、そして電源確保など、このようなことにつ

いてもちゃんと国の主導で指針を示して整備していただくようなことができないだろう

か。

それと、学校が発信する情報がいまだに紙ベースが中心となっているので、そのことに

対して民間と温度差が大きいために、働くお母さんたちから見たら「何で学校は今時全部

紙なの?」みたいな反発につながっています。学校だよりに書いてあることと学年だより

に書いてあることと学級だよりに書いてあることの文言が違っていて、どれに従えばいい

のみたいなことになっているのですが、学校情報のトータルな発信をネットワークで行う

ことで、いつでも情報を保護者が手にとることができるようになります。全部公開してし

まうと危険もありますから、保護者にしかわからないようにどうやってセキュアにやるか

という課題はありますけれども、それは運用問題だと思いますので、そういうことを含め

て、学校の情報化のうち、情報流通についてはこのようにここまで進めるのだという指針

をしっかり出すべきではないか。これが1つ目の意見です。

2つ目は、デジタル教科書の話とかデジタル教材の話とか、これらによって個別最適化

した学習ができるとか、それでスタディ・ログが活用できるとか、そういう話がいろいろ

進んできました。私はこれは総論自体は大賛成なのです。こういうものが円滑に進むため

にも、デジタル教科書のこのページは学習指導要領のどこに対応していて、各教材会社が

つくる教材は学習指導要領のどこに対応していてというようなメタ情報がちゃんと提供さ

れるようにすれば、これらの教材は自動的にリンクされるわけです。今はそのような教育

情報のデータ構造の基盤がないので、各会社が全部一生懸命手作業でリンクをこしらえて

いるわけです。リンクしていない場合は探せないことになりますが、新しい教材は次々と

Page 17: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

16

出てきますので、人手でやれることではありません。子供たちが学習で必要な教材を全部

子供自身が検索して苦労して探すことにならなくて済むように、これも基盤整備だと思う

のですけれども、教育情報をしっかりとつなげるような学習指導要領のコード化を基盤整

備として行い、国の基準等がコンピューターリーダブルになることが急がれるべきではな

いかと思います。

以上でございます。

○佃主査 ありがとうございました。

利根川委員、どうぞ。

○利根川委員 私から3点ほど。1つ目が教育の在り方についてですが、先ほども馳先生

から教育の機会確保法というキーワードが出ましたが、学びの場という観点が、既存の学

校教育が中心でこれだと何となく想定されて書かれているのかなと思っていまして、先ほ

どの LITALICO さんのような取り組みですとか、今の一条校の場でない場の取り組みにつ

いても、今後ますます重要になってくるだろうと。先般の私の発表でも言いましたが、学

びの場、教育の機会としてどういう場があるのかというのも、盛り込んでいただけるとい

いのではないかというのが1点目です。

2つ目は、教師の在り方、外部人材の活用についてですが、これは小学校現場にプログ

ラミングを入れている中で2つ感じる部分があります。これも子供たちと直接向き合う教

諭を想定されている書きぶりが多いかなと思うのですが、一つ大事なのが、校長などの管

理職ですとか、教育委員会の教育長、教育委員あるいは指導主事といった、学校の方向性

を決めていく立場の方へこの Society5.0 に向けて未来がこうなっていくのだということを

ちゃんとインストールしないと、なかなか現場の先生がやる気になったとしても上にはし

ごを外されるとか、「そんなこと適当にやっておけばいいよ」とか、「これはあの先生だ

からできるねとか、なかなか広まらない」というところがありますので、各中間の段階に

おいても、こういったところが広まるというところが含まれるといいかなと思っておりま

した。また、外部人材という観点で言いますと、ICT 支援員ですね。ここの制度について

も課題が多いかなと感じております。少し私の方で、ヒアリングした範疇ですと、現状、

自治体からの委託元企業との契約が変わるタイミングなどもあって非常に不安定であっ

て、いい人材が来ない、仕事が継続でない、キャリアが見えない、しかしながら ICT はど

んどん進歩していく、勉強する時間もなかなかないというところで、課題が山積みです。

個人的には外注するのではなくて中に抱えている自治体さんなどがうまくやっているなと

感じていますが、この ICT 支援員の制度についてもきちんと設計を見直しして、どういう

人が来るべきで、そのためにはどういう待遇が必要で、どういった自治体からの仕事の出

し方、どういう形がベストケースなのかを考えられるといいかなと感じました。

3つ目は、教育インフラについてですが、ここは堀田先生とほぼ共通で、非常に大事だ

と思うところですので、詳しくは述べませんが、その3点、私から意見させていただけれ

ばと思います。

Page 18: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

17

○佃主査 ありがとうございました。

戸ヶ﨑委員、どうぞ。

○戸ヶ﨑委員 私から気づいたことがありますので申し上げます。

先端技術導入に当たってのリスクの話について、その先端技術を活用する教育を進めて

いく中で特に留意しなくてはならないということが大きく2つあるのではないかと思って

います。

まず1つ目が、不便さとか不快さ、そういったものを子供たちが経験することが非常に

重要ではないかということです。というのは、現在はデジタルネーティブと言われている

子供たち、更に今後は AI ネーティブと呼ばれるような子供たちを教育することになると

思います。AI が当たり前のように生活の中に入ってきている、そういう子供たちは、例え

ば自分で要求する前に何か与えられてしまう環境にある。一例を挙げると、アマゾンとか

ユーチューブだとか、ネット検索をしていると、自分が要求しているわけではないのです

が、画面に次々と候補があらわれる。このようなものがどんどんこれから進展していくの

だろうと。そうなると、与えられたものだけを消費していくという危険に陥る可能性があ

るので、ここで大事なのは創造力を発揮することです。感受性が特に豊かな時代に様々な

経験を積ませるということは、Society5.0 の時代だからこそ重要なのかなと。便利な時期

に不便さだとか不快さということを経験することは、間違いなく将来その子供たちの財産

になっていくのではないかということが一つです。

もう一つ、留意すべきこととしては、集団の学びと実体験の重要性です。今後個別最適

化した学びがどんどん進んでいくことは間違いないだろうと思うのですが、人間としての

将来の強みを発揮していく中で不可欠なことは、他者と協働して知識を生かしてよりよく

生きるということです。そういう資質・能力も育んでいく中で、集団を通した学びも改め

て重要になると思います。また、AR とか VR とか通称 XR と呼ばれている、その進展の中

で、相対的にリアル(非デジタル)の価値や実体験は大変重要です。実際に五感を生かし

て学んでいくことの大切さも入れていかなくてはいけないと思っています。

それから、大きな柱として2つ目ですけれども、教育への先進技術導入についてですが、

必要感だけでなくてその価値も非常に重要なのだろうと思います。これが共有されていな

いと何か最新テクノロジーが教育を変えていくのだという、そういう絵姿になってしまう。

テクノロジーが教育を変えるということもある意味では大事なものなのかもしれませんけ

れども、これからの教育が技術革新を活用していくのだという姿を明確にするべきだろう

と。先進技術は何でも可能にする魔法の杖なわけではありませんから、手段の目的化に陥

らないよう、できることとできないことを明確にしていくことが大事であると思っていま

す。

○佃主査 どうもありがとうございました。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 デジタルハリウッドの佐藤です。

Page 19: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

18

先日、ある高校生とお話をしたときにこんなことを言ってました。中学生だった時の話

ですが、自分たちが学ぶ上で「検索する」という方法は必須になったにもかかわらず、ス

マホとかコンピューターの持込みが禁止ということはどういうことか、自分たちの学ぶ権

利を返せということでストライキでも起こそうか、学校へ行かないぞということを言おう

かと思っていた、と言う子がいました。学生や生徒というのは今そのぐらいまで進んでき

ておりますので、こういったことも見据えて、学習者がどういう環境であるべきかを中心

に考えるべきだという、エピソードとしてお話をさせていただきたいと思います。

特に重要だなと思う点はスタディ・ログでして、それが全てのハブになってくると思い

ます。例えば学習者のプロファイルや学習履歴、もちろん機微情報も含まれます。又は先

生たちの教え方、生徒たちの特性、そういったものも含まれてくる可能性があると思いま

す。しかし、何のデータをどういう形で蓄えるのかということについての議論がまだまだ

不十分だと思います。当然データ化できる部分と、人間がやるべきところもあると思いま

すので、その線引きを一体どこにするのかという議論を、もう本当にすぐに始めなければ

いけないというのが1点目です。

そしてこのスタディ・ログは、セキュアでポータビリティーがあるということがすごく

重要なことなのですけれども、ポータビリティーがあるということにおいては、例えば転

校したとか、小学校から中学校に上がるなどの進学の際、そして、それがまた社会につな

がるというような形で、どういった形でデータポータビリティーを持たせるのか。そうな

ったときに、一体このデータというのは誰のものなのか。学校のものなのか、それとも個

人の学習者のものなのか。この辺の整理は個人情報保護法上も、又はセキュリティーの問

題でも非常に重要な点になると思いますので、是非このスタディ・ログを絵に描いた餅に

ならないよう議論を早急に始めていただきたいというのが1点目です。

もう一つ、これから学校は恐らくコンテンツや先生、人も今度は足りなくなってくると

思いますので、恐らく民間、ベンチャー、また、海外のコンテンツなどもどんどん取り入

れていく必要があると思っております。その上で、自分たちでもすごく重要だと思ってい

るのですが、言葉が悪いですが、有象無象のものがたくさん出てきてしまうのではないか

というおそれもあります。そういった業界における認証評価の団体なりが必要になってく

ると思います。これは民間でやるべきかどうかはわからないのですが、ちなみにフィンラ

ンドでは Kokoa Standard という基準がありまして、それは有識者たちが教育に関係するア

プリやサービス、プロダクトに関して一定の評価を与えるというものをやっております。

学校は、そういったものも加味した上で上手な調達が必要になってくるのではないかと思

います。

以上です。

○佃主査 圓月委員、どうぞ。

○圓月委員 それでは、私から大学の位置づけについて1点だけ意見を述べさせていただ

きたいと思います。

Page 20: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

19

大学が出口の企業と歩調を合わせることは非常に重要だと思うのですけれども、もう一

つ、大学といたしましては、入り口の高校との連携というものも深めていく必要があるだ

ろうと考えております。例えば小・中・高等学校での遠隔教育の活用は小・中・高等学校

で自己完結した形ではなく、高大接続に関しまして、入学前教育などにも活用できるので

はないかという議論をしております。

更に今、入学者選抜改革関連の会議では、キーワードとしては高大接続の改善なのです

けれども、調査書の電子化というものの可能性を考えています。先ほど紙で行き交うとい

うことなどもありましたけれども、調査書も紙媒体で行っているのです。今、一番大事な

のは学力の3要素、特に3番目の要素の主体性、協働性を評価するということなのですけ

れども、調査書の活用がないと、なかなかこの3番目の要素を評価することが難しい。で

すから、これについてはできるだけ積極的に進めていきたいと思っております。

また、JAPAN e-Portfolio と呼ばれている電子ポートフォリオなどを活用して、データを

蓄積していく作業も必要なのではないかと思っていますので、そのあたりについても、特

に大学の位置づけというものももう少し踏み込んだ形でしていただければと思っておりま

す。ちなみに、今、ほとんどの大学で一番問題になっているものの一つは、電子ジャーナ

ルの問題なのですね。電子ジャーナル契約の問題は非常に難しい問題なのですけれども、

一度関係者の間で考えていただいたらという願いを込めて、一言だけ触れておきます。当

面のポイントとしては、高大接続に関しての調査書の電子化あるいはポートフォリオの活

用なども踏まえた文言を少し盛り込んでいただきたいというのが私の発言の趣旨でありま

す。ありがとうございました。

○佃主査 どうもありがとうございました。

八木委員、どうぞ。

○八木委員 Society5.0 で求められる教育の在り方ということなのですけれども、学校教

育はどう変わるのか、どう変わらなければならないのかということについて、具体的なと

ころを見ますと、「教育課程や教科書を含め学習指導を絶えず見直していく」、ここでと

どまっています。その後に「提言の取りまとめに向けて更に検討を深める」とありますか

ら、ここが更に詳しくなるのだろうと期待しているところです。

ずっと見ていくと、具体的なものとしては、スタディ・ログの活用は「実証研究を進め

る」、デジタル教科書は「ガイドラインを策定する」でとどまっておりまして、結局残る

のは、目玉は遠隔教育だけだと全体を俯瞰(ふかん)して見ると見えるのです。もう少し

具体的な策がなければ果たして提言を出す意味があるのかなと思いました。

それから、これは戸ヶ﨑委員からも御発言があったところですけれども、AI 時代だから

こそ読解力や数学的思考力などの基盤的な学力を育成していくのだという点は、強調しな

ければならないと思います。

最後ですが、水道法改正ではないのですけれども、水道管が老朽化してそれを直すのに

お金がものすごくかかるということですが、ICT の導入にものすごくお金がかかるわけで

Page 21: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

20

す。今日の発表を聞いていても、これはやった方がいいな、是非やるべきだというものが

たくさんあるわけですけれども、一方で、教育研究予算が極めて貧困だという現実があっ

て、この予算をどう確保していくのかというところが最大の課題なのではないかと思いま

す。大きな検討課題として位置づけるべきだと思いました。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員 私の方は1点だけですが、事務を効率化したら本当に子供たちと向き合う

時間がそんなに増えるのだろうかということです。

教師の場合は現状で、一番メインになるのは授業ですね。別に授業時間中に事務的作業

をやっている教師などはいないと思うのです。そうすると、授業の効率化を図るというこ

とがすごく必要ですね。私は以前学校教育においても習熟度別クラス編制をしたらどうか

と指摘しました。私は塾をやっていますけれども、保護者が塾の費用として負担している

金額は、日本全体で年間1兆円になっています。塾に来たくて来ている子もいますけれど

も、多くは現行の入試制度の中で、合格という結果が得たいから来ているのです。子供た

ちは朝8時から学校へ行って、その後塾に行って、塾を出るのは夜の 10 時、11 時ですよ。

モーレツ時代ならばいざしらず、働き方改革をしている中で、子供たちが夜の 10 時、11

時まで通っているのは、塾をやっている側でもこれはよくないと思うのです。

では、何でそうせざるを得ないのかといったら、公教育が十分にそういう子供たちに手

当てができないからです。つまり、知識・技能という学力の3要素のまず1つ目で、もう

付いていくことができなくなってしまっているわけです。わからないから来るわけです。

では、それを ICT でどうするのか。先生はある一定のスピードで、ある一定のレベルで

やりますよね。ついていけない子が ICT でやるといっても、いつ先生がその子供を見るの

ですか。私は 30 年前に個別指導を始めましたが、今、全国に類似したものが1万教室ぐら

いになっています。それぞれの個に応じた対応をしているから塾に来るのです。教えてい

るのはほぼ大学生です。だけれども、アンケートをとっていますが、学校の先生よりも教

え方が上手だと言うのです。

普通に考えたら、大学生の方が教え方が上手なわけはないはずですよね。なぜそんな結

果になるのかといったら、その子供の必要としているものにぴたっと合わせることが、1

対1だからやれているからなのですね。このことに踏み込まないと、いつまでも公教育は

不十分なままだと思うのです。

だから、是非教師の聖域というものが教えることにあるのだったら、それはもう手放し

ましょう。残念ながら、教え方が上手くない先生もいっぱいいるはずです。それよりも子

供たち一人一人の目的や目標、そして、そこからくる PDCA サイクルを回すことをどうやっ

てやるかをファシリテートし、コーチングする、要は教えることを目的としない教師にな

るべきなのです。民間では教えない授業とか教えない塾などがいっぱい出ています。それ

Page 22: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

21

は子供たちが主体的にやるからです。私は子供達が夜の 10 時、11 時まで塾に行かなけれ

ばいけないような状況はおかしいと思っています。公教育が踏み込むべきは、事務の効率

化という範疇ではなく、教えることをいかに手放すことかということを知っていただきた

いと思います。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

河野委員、どうぞ。

○河野委員 お願いいたします。

2点あります。1点目は、必要な経費が地方財政措置で講じられている点です。新しい

施策を実行するときには必ず新しい経費が必要です。今回の ICT 環境の整備についても新

しい経費が必要となりますが、地方財政措置ということで、それぞれの自治体の実情によ

って使われ方が別なものになってしまうという、先ほどから出されている意見のとおりで

す。

具体的には、これまで必要とされていた、例えば施設設備の耐震化や老朽化、最近では

ブロック塀への対応もありました。また、新学習指導要領に対応するための教材・教具の

整備についても国の方で予算化してありますが、自治体の方では積算どおりには使ってい

ない。学校図書館の充実についてもそうですし、消耗品も学校予算では足りない状況で、

先生方が自分で買うということも当然のようにあります。先生方の研修会への出張旅費に

ついても旅費が不足して行けなくなるなど、これらの課題はそれぞれの自治体であろうか

と思います。

ICT 環境の整備を進めるというのは当然急がなくてはいけないことだと思います。一方

では、必要とされている教育費がそのことによって削られることがあってもいけないと思

いますので、財源確保の工夫が必要ではないかということを現場の感覚からも思います。

2点目は、働き方改革についてです。校務の情報化はこれまでも言われておりますが、

出席簿とか指導要録の電子化も、自治体によっては既に取り組んでいるところであります

ので、これに取り組むことだけで果たして教師の多忙化の解消につながってくるのかと思

います。先生方が働き過ぎている環境を改善する必要もあると思いますし、教職というも

のをブラックではなくて魅力あるものにしていくことは、これからますます大事な視点に

なってくると思いますので、議論を深めていただけたらと思います。

最後に、学校における働き方改革について、先生方の業務の役割分担の中で、業務によ

ってはボランティアの方にお任せしたらどうかという議論もあるようですけれども、ボラ

ンティアにお願いすることが果たして持続可能な取組なのか、このあたりは現場にいて非

常に疑問に思っているところでございます。

○佃主査 ありがとうございました。

倉田委員、お願いします。

○倉田委員 箕面市長の倉田でございます。

Page 23: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

22

日本の子供たちの教育というのは、現実に圧倒的な数が公教育により行われているわけ

です。小中学校、特に義務教育を中心に公教育により行われているわけで、そこに対する

ICT であったり、新しい教育ノウハウの導入が進まないという現実がある。その構造的な

課題は何なのだ?ということのために多分私はここにいるのだろうと思っているのです

が、先ほど来、何人かの委員の方々に御指摘を頂いたとおり、まさしく 1,800 の市町村が

あって、1,800 の教育委員会が存在をしていて、1,800 人の首長がいて、そこにばらばらに

委ねられているから駄目なのだ、なかなか進まないのだというお叱りを先ほど来何人かか

ら頂いております。

実際、私自身もそれは一理あると思っていて、一応、うちの名誉のために言いますと、

うちは小学校の4、5、6年生にこの2学期から1人1台のタブレット体制に全校しまし

たし、中学校3年間も準備しているということで、バシバシ進めていくべきと思っている

のですが、例えば隣の市は1校当たり 50 台ぐらいしかないという現実があるわけです。

これは確かに自治体ごとに委ねられているから、なかなか進まないのだねと。そのこと

は真実なのですが、ここからが私の言いたいことなのですけれども、実態として、なぜば

らばらに委ねられていると進まないのか。これはお金の問題はもちろんあります。だけれ

ども、学校現場であったり、うちの教育委員会であったりを見ていて思うのは、結局、い

ろいろなノウハウやいろいろな方法論、ICT もその一つであるかもしれませんが、それら

のどれが正しいのか、どれがより効果があるのかということが、実は全然わからないので

す。

いろいろなノウハウを主張する方がいますが、世の中でそれが果たして証明されている

のか。確かに、ミクロのレベルで、例えばこの人数に対して効果があった、みたいなこと

を証明されているケースは幾らでもあるのですが、公教育で全校に大規模導入しようみた

いなことを考えたときに、本当にそれがマクロで効果があったのかみたいなことは必ずし

も証明されていないのです。例えば、学校現場で「こんなものをやったらどうなの?」と

私が聞いても、それを賛成する先生もいるし、それはちょっとこういう問題があってと言

う人もいるし、結局、神学論争みたいになってしまっていて、正しさや、より高い効果が、

必ずしも証明されていないのです。

それはなぜかといえば、結局、結果のデータがほとんど世の中にないからです。例えば、

全国学力テストにしても、経年変化はとっていないわけで、ある年のある子供の状態しか

わからない。翌年と比べようとしても、違う子供たちだから比較できないみたいな状況な

わけです。「これはこのように正しいはずだ」と皆さんが言っていることでも、よくよく

先生方に「効果があったのは何で?」と聞くと、「そんな気がする」みたいな世界になる

わけですね。

だから、日本は、世界もかもしれないですけれども、最近でこそエビデンス、エビデン

スと言われていますが、ちゃんとデータをとって、そこからより正しい、よりよい手法を、

これだな、これの方がよさそうだということをある程度証明して、それだったらお金をか

Page 24: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

23

けていこう、自治体もかけていこう、全国で証明されて導入されているんだからうちの自

治体もそれを入れざるを得ないよね、という状況にようやくなっていくわけですから、実

はそこの証明がすごく私は大事だと思っています。

そういう意味では、環境整備で、客観的な根拠を重視した教育政策の推進に資する調査

の利活用を促進するということが、私はすごく大事だと思っているのです。例えば、経年

変化分析調査、まだやっているのは箕面市であったり、埼玉ぐらいしかないのですごく貴

重なデータですが、増えていくだろうと思いますので、こうしたものを含めて、単に「デ

ータを有効に活用することができる環境醸成を進める」程度にとどめるべきではないと思

います。

例えば箕面市の場合、これは教育再生実行会議の本体会議で一度提出したことがありま

すが、全数調査を経年でやっているので、自己肯定感が有意に高い調査結果の出ている、

例えばある学校のある学年とか、あるクラスという単位がわかるのです。

ところが、ここから先が私たちの情けないところで、そこまではわかるのですが、では、

何でその学校はそうなのか、何でその学年はそうなのだろうというと、途端に推測するし

かないわけです。「多分こういうことをやっているからではないか」という推測しかでき

なくて、その推測を私たちなりほかのところにでもやってみて、うまくいったら「そうだ

っだね」だし、うまくいかなかったら「違ったのか」くらいしかできないのですが、この

データをもっとたくさんの方が研究をできたり、これは産も含めて活用できたりする環境

をしっかりつくって、教育データに基づく PDCA のサイクルをちゃんと回していくという

ことまで踏み込まないと、恐らく ICT ですらせっかく入れてもちゃんと使われない状態が

続くのではないかという危機感を私は持っています。

なので、研究結果をどう使うか、すなわち研究できるようにするところから実際のノウ

ハウの導入までのところを、自治体単独ではなかなか力が弱いのと、モチベーションが少

ないので、国として主導していく形で、全国の教育改革にちゃんとつなげていくという形

に是非していただければと思います。

テーマが「技術の進展に応じた教育の革新」なので、どうしても ICT の導入ばかりに意

識がいってしまうのですけれども、データがとれるようになったのもものすごい ICT の効

果ですから、是非それを活用できるようにしていただければと思います。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

工藤委員、お願いします。

○工藤委員 これまでの会でも、私はそもそも論というのは何度かお話をさせてもらった

のですけれども、あえてもう一度その辺をお話ししたいと思います。

今後の報告書には、何のためにこの提言があるのかを明確にしておく必要があると思う

のです。社会構造が変化して技術革新が信じられないぐらいのスピードで進んでいる。こ

のままでは日本の社会が世界についていけるのかとか、そういったことが問われている。

Page 25: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

24

10 年前にスマホが想像できなかった。でも、今後 10 年後に世の中がどう変わるのかわか

らない。こういう時代だからこそ、学びの本質みたいなも問い直す必要があると思うので

す。

簡単に言えば、子供たちが将来、社会でどのようなスタイルで生きているか。具体的に

言えば、社会でどのような知識とか技能、また、ビジネススタイルになるようなものを身

につけていけるかということを逆算して、これからの学校がどうあるべきか考えなければ

いけないのに、これまでの議論を通じた話題の中には、勘違いされる言葉があると思うの

です。例を挙げれば、読解力という言葉です。もちろん、今後も基礎的な力として読解力

が必要だということについては、私もそう思います。問題は、その読解力などの基礎的な

力を身につけさせるためのスタイルです。そのスタイル、つまり学び方は一斉授業のまま

でいいのか、一斉教授型のままでいいのかということです。私はそうではないと思います。

今日、障害のない社会をつくるという LITALICO さんの事例は、とてもいい事例だった

と思うのです。北野先生からもありましたけれども、北野先生のような貴重な人材を、今

の教育は潰しているのではないかと思うのです。高等学校の教育部会でも私は発言させて

もらったのですけれども、画一的な教育から多様な教育へと。多様な教育といったときに、

この言葉が一人歩きしてしまって、皆さん都合のいいようにとってしまうのです。多様な

教育というのは機会均等みたいに全ての子供に多様な教育を与えることと勘違いする方が

いて、そうすると、様々に広く、例えばプログラミング教育一つとっても、全ての子供に

教えていこうみたいな勘違いを起こすのです。今日も障害のある子供たちの中には本当は

物すごく貴重な人材が眠っていて、この子供たちは一律に一斉に教え込まれることによっ

て、自己否定をしたり、それだけではなくて、本当は開拓されるであろう能力まで失って

いる。そういった現実があると思うのです。

結果として、広く薄く様々なカリキュラムを網羅的に行うことによって、一層、経費が

かかるという問題も生じています。お金はやたらかかるけれども、効果は薄いと。本当は

やらなければいけないのは、障害のある子供、ない子供も含めて、多様な人材に対して最

適な教育をすることによって、結果として多様な人材を生む。それが人と人で結びついて、

今後の時代に適した社会をつくっていくことが、今、世界が目指していることだと思うの

です。この点で、日本は立ちおくれてしまうのではないかと思うのです。こんな網羅的な

教育ばかりやっていたら、すぐれた人材を生かせない。人と人、いろいろな人たち、多様

な人たちと結びつく力も生まれないのではと思います。戸ヶ﨑委員からもありましたけれ

ども、集団を生かした教育というのは、今まで日本がやってきた同質性を求める集団の教

育ではないと私は思うのです。新たな多様な人材を生かすことができるような集団の教育

が必要で、そういった時代が求められている。

今の学校現場を見てみれば、朝8時から、午後4時ぐらいまでカリキュラムがぱんぱん

です。必修教科が多すぎます。こういった状態で多様な教育ができるのでしょうか。その

ことをせっかく技術革新ワーキング・グループで議論しているのだから、しっかりと教育

Page 26: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

25

のそもそも論に立ち返って、今後のあるべき姿をこの提言に組み込まれるべきだと私は思

います。

北野先生のような人材が画一的な教育によって潰されることのないように、一人一人に

生かされた教育をどうしていくのか、そのために技術革新があるのではないかと私は思い

ます。

以上です。

○佃主査 北野委員、どうぞ。

○北野委員 私からのコメントは4つあります。

まず1つ目は、技術に対する認識が違うのではないかと思っています。いろいろな現実

世界を認知し、状況に意味づけをする人間の持つ能力は、人工知能は比較的得意なところ

で、データの量が多くなれば人間よりもよいものはもう既にできつつあるし、できると思

います。全ての領域かどうかというのは、それはその領域でデータがとれるかどうかにな

ります。ここは AI 対人間、又は新しい技術対人間という色彩が最初の方に出てしまって

いますが、本質はこれではなくて、AI を使える人と使えない人、使える国と使えない国の

リテラシーの差が根本的に重要なのであって、AI 対人間ではないのです。我々は技術を使

いこなしますから、そういう賢さというものを本質的に持っているので、この対比の仕方

は最初のトーン設定としては違うのではないかと思います。

先ほどの話に戻ってしまうのですけれども、例えば、非合理的なことをやるか、もめご

とをやるかというのは、AI は余りやらないので、実は人間が得意だったりするわけですね。

だから、この対比で始めてしまうと、AI がやらないことというと、暴れてもめるものの能

力を拡張しようみたいな話にしかなりません。それはそれで新しいことをやったりすると

いうのはあるかもしれませんけれども、使い方が違います。基本的に技術をどう使いこな

していくかというところで、それによって我々の能力が拡張するとか、新しいことができ

るであるとか、先ほどの LITALICO さんもそうですけれども、技術があるから障害がなく

なります。基本的には障害が顕在するのは技術に障害がある、技術がハンディキャップだ

という発想なのです。AI というのはまさにそれを乗り越える一つのツールにもなりますと

いうことを書いていただければと思います。

2つ目は、教育で、何を教えるべきかとどうやって教えるべきかの2つがあります。ど

うやって教えるべきかのところはかなり今、議論されましたので、何を教えるべきか、残

り2~3コメントしたいと思います。

全体として、「Society5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会」で出された文理分断か

らの脱却、このトーンがもう少し入ってもよいのかなという気がします。あの発表は主に

大学の話ではありますが、高大接続のことを考えると、ここで ICT 系の話がたくさん出て

いますが、高校の段階で、それをどうやってそれ以外の科目だとか世の中に当てはめるか

という応用のところが早い段階から学習されていった方がよいのではないかと思いますの

で、そこがもう少し書かれてもよいのかなというのが全体の印象です。

Page 27: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

26

3つ目は、情報活用能力はデータサイエンスや統計というのはもちろんその一つだけれ

ども、入ってきているデータなり、読み書きしたもの、読んだりしたものの評価なわけで

すね。だから、情報活用能力には情報にアクセスする、処理をする、評価をする、意思決

定をするという一連のチェーンがありますね。だから、情報をとるということだけでは、

これはフェイクニュースから何から全部ありますから、これは活用にはならないですね。

情報に押し流されてしまうことになります。

そう考えると、ロジカルシンキングであるとか、クリティカルシンキングであるとか、

そういうところが今後もっともっと重要になります。特に AI の新しいアルゴリズムでデ

ィープフェイクというものが出てきているのですけれども、これは本当にリアルな映像で

あるとか音声を好き勝手につくれてしまうのです。でたらめな情報がたくさん出て来ます

から、そういうものを見たときに、それが本物なのか、これはフェイクなのかどうかとい

うのは判定能力がないと、全く評価できなく、非常に有害なわけです。ですので、情報の

活用能力といったときに、それは一体何かというのが、アクセスして処理して評価して意

思決定をする、またそれをフィードバックするようなことだと明示的に書いていただいた

方がよいかと考えました。特にその中に批判的思考のようなものは決定的に重要です。そ

れがなくて情報だけとっても、よい話には今後ならないです。

最後に4つ目として、ICT、AI、データサイエンス、これらは近々の課題として非常に

重要なのですが、これから、生命科学がすごく変わってくるということを見越した場合に、

小学校、中学校で生命科学に全く触れないでいくのでよいかは懸念があります。これから

遺伝子操作もそうですし、いろいろな治療法であるとか、いろいろなことが出てくるので、

各方面で我々の日常生活での意思決定なり理解に相当かかわるのは、情報関係の技術の進

展と生命科学の2つが大きいです。マテリアルサイエンスや物性などはありますが、これ

は割と専門的なので、日々マテリアルサイエンスの成果に関して意思決定を迫られる場面

はほぼ普通の人はないです。ただ、生命科学は医学の問題でもあるし、体の健康もありま

すし、情報科学は毎日の生活ですから、この2つに関してのリテラシーを強化する必要が

あります。生命科学が大体この議論だとほとんど落ちているので、そこが入ったらバラン

スがとれるのではないかと思いました。

以上でございます。

○佃主査 ありがとうございました。

大橋委員、お願いします。

○大橋委員 どうもありがとうございます。

先ほど委員からもあったのですけれども、ICT の環境整備によって、これまでできなか

った教育なり、あるいは教育政策がどのようなものとなるのか、そのような世界を入れて

いただくのが、ICT 導入を何故やるのかの理由を示していただく意味でもすごくいいのか

なと思います。特に小さい自治体とか、多分余りこのテーマのについて必ずしも深い御理

解がない方もいらっしゃるような感じもしますので、そういう方々に ICT の環境整備に向

Page 28: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

27

けての取り組みは重要なのだということを前文も含めて訴えていただければと思うところ

が1点です。

それを踏まえた上で、では、全国に展開する上で必要経費がどれだけなのかということ

も是非言っていただいたらいいのではないかと思います。私は 1,800 億の大きさが余りイ

メージをつかめていないのですが、全体の中でどれだけ手当てされているのかというとこ

ろは、イメージとして皆さん少なくとも共有意識を持っていた方がいいのかなと思います。

ここはインフラなので、ある程度国が見ないといけないのかなと思います。理由は幾つ

かあるのですけれども、大きな理由は、今、ゼロレーティングということがいろいろなと

ころでサービスとして話題になっていると思いますが、例えば私が懸念しているのは、民

間の事業者がやってきて、児童生徒に特定のコンテンツとかソフトを見せることを前提と

して無料で端末を配ってあげるみたいなことも将来あり得るのではないかという気はして

いて、そういうことについて教育政策としてどう考えるのかということもプロアクティブ

に考えていった方がいいのかなという感じがいたします。

また、ICT はハードですけれども、ソフト側のことを考えてみると、先ほど北野さんか

らもあったのですが、フェイクニュースであったりとか、あるいは検索もそうですが、全

部民間事業者によって提供されていて、ICT とかこうした民間サービスを公教育の中に取

り入れるときに、何の規律もなくていいのかというところも一つあるかと思います。先ほ

ど認証というお話があったと思いますが、そうしたことも十分念頭に置いていくべきでは

ないかと思います。そこの部分が恐らく2ページ目に書いてあるリスクというものに対応

しているのかなと私は感じておりました。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

馳先生、どうもお待たせいたしまして、申し訳ございません。

○馳衆議院議員 ありがとうございました。私自身もこうした方がいいのかなという点を

幾つか申し上げさせていただきたいと思います。

まず1つ目は、情報活用能力という概念と教科横断型の取組というものは、多分違うと

思うのです。情報活用能力は、言語能力や問題発見・解決能力と並び、学習の基盤となる

資質・能力と位置づけられている。同時に、教科横断型というのは、まさしく総合的な学

習とも違うと思うのです。国語ならば国語で、数学ならば数学で、英語ならば英語で、こ

うした情報活用能力を使って、教科横断型のまさしく総合的な学びに主体的に参加できる。

その資質を身につけてもらうという方向性が表現されればいいのかなと思いました。

2つ目は、養成・採用・研修ですけれども、ここは養成と採用と研修と人事も是非概念

として入れていただきたいと思います。教員の養成の段階、採用の段階、そして、初任者

研修を含めた免許更新も含めた研修、これはやはり教師の評価に必ず反映されなければい

けないと思います。そういう意味では、教師のやりがいを誘導するような人事評価といっ

たものにも是非反映させてほしいと思います。

Page 29: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

28

次は、特別な配慮が必要な児童生徒について、ここは私もどう表現していいのか、特別

な配慮が必要な児童生徒だけなのか、全員特別な配慮が必要なのではないのか。私もどち

らかというと特別な配慮が必要な児童生徒の部類に入ると自分では思っているのですが、

ただ、それはみんなそう思っているのであって、その児童生徒にとって最適な学び、又は

長所、短所、ここを伸ばした方がもっと更によくなるといったアドバイスができるのは、

こういった技術を使ったもの(教育)が必要ではないかと思います。併せて、技術、また

教員の質ということですが、これは教授法としてほしいと思いました。教授法というのは、

実は単元によって、発達段階に応じて、季節に応じて、クラスの雰囲気に応じて、教師な

らではの教授法というものを持っているわけですね。このノウハウは極めて重要な能力と

いう認識を持っています。教師の質という表現ではなくて、具体的にプロの教師を私たち

は求めているので、教授法といったことについても、私は新たな教育の革新の上で分析を

して、教師が学ぶことができる能力ではないかと思います。

最後に、関係省庁との連携なのですが、私は昨日、経済産業省の浅野課長から「未来の

教室」実証事業について説明をいただきました。「未来の教室」実証事業、もちろん調べ

ていただいたらすぐわかると思うのですが、これは林大臣が提唱された私たちのこのチー

ムの方向性に極めてど真ん中に来る事業でありました。是非、文部科学省の担当課の皆さ

んも連携して「未来の教室」実証事業を、例えば条件不利地域で展開するとかして、先ほ

どお話があったように、モデル事業としてエビデンスを蓄積していく上でこういったこと

も連携してほしいということで、是非お願いしたいと思います。

以上です。

○佃主査 ありがとうございました。

鎌田座長、何かございますか。

○鎌田座長 今日は非常に多くの有益な御意見を頂戴いたしました。今、まとめようとし

ているのはあくまで中間報告で、最終報告をまとめるまでには数カ月の時間がありますの

で、御指摘いただいたものをできるだけ取り込んでいきたいと思います。また、今日も委

員の皆さん、発言したいことの半分ぐらいしかしゃべれていないと思いますから、委員だ

けの勉強会のようなもので議論を詰めて行って、できるだけ最終的な提言に盛り込んでい

きたいと考えています。

皆様から御指摘がありましたように、この技術革新と高等学校改革のどちらのワーキン

グ・グループでも、これからの時代を支える教育はいかにあるべきかという戦略的な絵柄

を描くことが教育再生実行会議の大きな役割だろうと思いますので、この問題に関連する

全ての省庁が連携して改革を進めていく、それを統括するような提言にしていきたいと思

っております。

そういう中で、財政的な問題は触れざるを得ません。これまでの提言でも財政問題にな

ると非常に盛り込むのが難しく、第八次提言にようやく入れたぐらいですけれども、しか

し、文部科学省の予算だけでできることは限られていますし、国家の情報基盤の形成とい

Page 30: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

29

う意味では関係省庁はたくさんあるわけですから、そういうところの予算のあり方全体に

働きかけられるような提言をつくっていくというのもこの実行会議の大きな役割だろうと

思っております。事務当局や大臣、副大臣、政務官と協議しながら、そういう方向でまと

めていけるように努力したいと思っておりますので、是非よろしく御協力のほどお願いい

たします。

○佃主査 どうもありがとうございました。

私は今まで5回このワーキング・グループの主査を務めさせていただきましたけれども、

確かにこの中間報告案というのは若干及び腰の案と、腰の引けた案と私自身も大変そうい

う印象を持っておりますので、また今日お伺いした御意見を参照しながら、事務局とよく

相談したいと思っております。

時間も迫ってまいりましたので、今日の議論をお聞きになって、柴山大臣、浮島副大臣、

中村政務官から御感想などをお伺いしたいと思います。

最初にまずは中村政務官から、よろしくお願いいたします。

○中村文部科学大臣政務官

政務官の中村です。大変熱心な御議論をありがとうございます。

私の 30 歳過ぎの子供が小学校に入ったころ、私はポケベルを持っていましたね。その後、

自動車電話をつけたり、ガラケーを持つようになったりして、それでも当時藤原正彦さん

が『国家の品格』という本の中で、「子供に携帯電話を持たせるなどというのは教育を放

棄する親と一緒だ。」というようなことを書いていた。つまり、そのことによる便利さと

リスクとを比較したら、かわいい子供に携帯電話など持たせるべきではないということを

書いていて、私もかわいい娘に携帯電話を絶対に持たせないと思って、高校を卒業するま

で絶対に携帯は駄目だと宣言をして、今 30 歳ぐらいの2人の子供に携帯電話を持たせない

で高校を卒業させたのです。よく言うことを聞いてくれたなと思いますし、今、そういっ

たことを言っても通用しないのかもしれないですね。

文部科学省がぼうっとしていても世の中はどんどん変わっていきます。そういう中で

9,000 億を地方にこういう趣旨だよと交付をしていっても、理解やその効果や、その目的

など、きちんと理解がなければ進んでいかないというのも事実だと思います。このやり方

が本当にいいのかということを考えなければならないし、2020 年までに 9,000 億円を交付

しても3クラスのうち1クラス分のパソコンということで、1人1台にはならないわけで

す。では、3クラスで1台ということの後に1人1台の時代を迎えるのに何年かかるのだ

ということもまだ計画が出されていない状況ですので、こうしたことを早急に文部科学省

として詰めて、国としてきちんと教育の基盤としてこれはやるのだというところをまず単

純に整理しないとならないのかなということを今の議論を聞いていて感じました。

そうしたまず基盤としての ICT 化、そして、それを活用する上でできることをどのよう

に効果的にやりながら、検証しながら、子供たちのために活用していくかということの全

体を構築していく必要があるなということを、今、皆さんの熱心な議論を聞きながらすご

Page 31: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

30

く感じました。

(教育は)投資ですから、余り金額にびびらないで頑張りましょうということを文部科

学省の皆さんと共有しながら頑張っていこうと思います。是非強気の報告、提言をいただ

ければと思います。ありがとうございます。

○佃主査 ありがとうございました。

浮島副大臣、お願いします。

○浮島文部科学副大臣

本日も御苦労さまでございます。たくさんの意見をいただきましたこと、心から感謝を

申し上げさせていただきたいと思います。

冒頭、今日はインターンシップの表彰式のため、そちらに参加させていただいていたの

で遅れましたこと、申し訳ございませんでした。

LITALICO さんからもお話があったと思いますけれども、私も部会長をさせていただい

ているときに何度か LITALICO さんに視察させていただき、また、文科委員会の理事をさ

せていただいたときに、文科委員会でも視察に行かせていただきました。

今日の御議論も皆様のお話を聞いていて、社会がどんどん変化していく中で、私も

Society5.0 社会に対応した教育の在り方 PT の座長もずっと務めさせていただいたところで

ございますけれども、AI をどう使いこなすのか。そこがとても重要なことだと思っていま

す。今、ずっとお話を聞いていて、そういう社会になっていくのですけれども、この価値

を創造する力とか創造力を発揮する実体験の重要性、また、集団を通した学び、様々なお

話をいただきましたけれども、これから必要になっていくのは、本当に一人一人に光を当

てた教育、ここが重要になってくると思います。

今も様々な議論がありましたけれども、そのために技術革新があると私も思っておりま

すので、今日いただきました皆様の御意見、一つ一つまたしっかりと受けとめさせていた

だきまして、しっかりとした報告ができるように話し合っていきたいと思いますので、今

後とも現場の声をいただきますようよろしくお願いいたします。

本日は大変ありがとうございます。

○佃主査 ありがとうございました。

それでは、最後に柴山大臣からお願いいたします。

○柴山文部科学大臣兼教育再生担当大臣

本日は非常に中身の濃い議論をありがとうございました。

11 月 22 日に「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新

プラン~」というものを発表させていただいています。何人もの皆様から御指摘をいただ

き、また、今もお話があったとおり、まず環境整備は待ったなしという強い意識を持って

おります。

もちろん今お話があったように、アウトカムの評価としっかりと結びつくことによって、

それぞれの自治体の皆様にしっかりと重要性を認識していただく。そして、自治体間格差

Page 32: 教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ 第5回議事録 › jp › singi › kyouikusaisei › ...ところを、これは段差5センチまで上るのです。駆動力もあるので実は山道も、高尾山を

31

をなくしていくことが極めて重要ですけれども、一般の地財措置にとどまらない格差を解

消しながら、2020 年代のなるべく早い時期に環境整備をしていく。もちろん物的あるいは

セキュリティーの面も含めた環境整備もそうですけれども、今日もたくさん御指摘をいた

だきましたが、支援員の普及を初めとした人的、それから、研修を含めた基盤整備をしっ

かりとしていかなければいけないということを強く感じております。

もう一つ、今日の大きな柱として LITALICO さんからのプレゼンもあったのですけれど

も、これからの AI や先端技術と人間のかかわりをどうするかということが非常に大きな

柱、テーマになっていたのかなと思います。今も浮島副大臣からお話があったとおり、一

人一人の個性、人に応じた形でのより効果的あるいはその人の持つ能力をどのように発揮

するのかということを先端技術を使ってどのようにしっかりと確保していかなければいけ

ないかということを、これも恐らく様々な事例を通じて我々は模索していかなければいけ

ないと思うのです。

その一方で、今日も幾つか懸念している声があったように、それが逆に人間としての価

値や能力発揮の足かせとなるようなことはないのか、あるいは集団を通じた学びですとか、

五感を通じて学ぶ大切さですとか、あるいは最近指摘されているようなコピペ全盛の読解

力、調査力といったものについての影響はどのようになっていくのかですとか、そういう

ことも多面的に議論して、この技術と人間との在り方というもののかかわりを考えていか

なければいけないのかなと思います。

特に馳先生からもお話があったように、我々一人一人違うというのは、特別支援学校と

かということに限ったことではないのですが、そういう障害とか特別支援の方々の方がよ

り個別性というものが求められているということも今日の発表のとおりだと思います。そ

ういうことも含めて、いろいろな事例を収集しながら、あるべき人と機械のかかわりとい

うものがこの提言の中に出せたらいいのかなと思っています。

本日はまことに貴重な御指摘をありがとうございました。

○佃主査 ありがとうございました。

中間報告案につきましては、本日頂いた意見を踏まえまして事務局と調整しまして、委

員の皆様に照会させていただきたいと思います。来年1月の第 44 回教育再生実行会議本会

議にお諮りしたいと考えてございますが、中間報告案の取りまとめにつきましては、私に

御一任いただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○佃主査 ありがとうございます。

それでは、中間報告案の取りまとめにつきましては、そのように進めてまいります。

それでは、本日の会議はこれで閉会とさせていただきます。次のスケジュール等はまた

事務局から御報告いたします。

本日はありがとうございました。