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敗血症に対するステロイド投与 N Engl J Med. 2018 Mar 1;378(9):797-808 2018. 3. 20 青栁佑加理

敗血症に対するステロイド投与introduction • 敗血症ショックの患者の死亡率は30-45%と報 告されている。N Engl J Med 2017; 377:414-7, Am J Respir

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敗血症に対するステロイド投与NEnglJMed.2018Mar1;378(9):797-808

2018.3.20青栁佑加理

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introduction

•  敗血症ショックの患者の死亡率は30-45%と報告されている。NEnglJMed2017;377:414-7,AmJRespirCritCareMed2016;193:259-72

•  グルココルチコイドは敗血症に40年以上も使用されてきた。AnnSurg1976;184:333-41

•  しかし、その安全性・有効性は未だ確立されていない。

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グルココルチコイド

Uptodateより引用

正常:5-24μg/dL侵襲下では45-50μg/dLにも増加ストレスホルモンと言われるように重症疾患コルチゾール代謝酵素↓腎機能低下:半減期の延長炎症性サイトカイン↑:受容体との親和性を増加不活化を無効に前駆体の転換を促進

頭部外傷、神経抑制、下垂体梗塞、副腎出血、感染、悪性腫瘍はHPAaxisを障害し、それでも相対的に不足している状態=相対的副腎不全 となり得る。⇨ショックが遷延する NEnglJMed.2003;348(8):727.重症疾患にステロイドは必要だが、その至適濃度は不明。JExpMed.1924;39(3):457.

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NEJM1984;311:1137-1143

1980年代

RCT重症敗血症患者59例(うち55名が昇圧薬を使用)メチルプレドニゾロン30mg/kg、デキサメタゾン6mg/kg、プラセボを比較。ショックから平均17.5時間で投与。24時間以内のショック離脱:7/24(19%) vs 7/22(32%) vs 0/16(0%) (corticosteroid groups vs. control group, P<0.05)院内死亡率:16/21(76%)vs17/22(77%)vs11/16(69%)

⇨高容量ステロイド投与により  ショック離脱は早いが、死亡率は変わらない。

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NEJM 1987; 317:653-658

多施設二重盲検プラセボ対照群RCT 382人診断から2時間以内に介入メチルプレドニゾロン(30mg/kgを4回)とプラセボを比較ショックの離脱・全体の死亡率には有意差なしサブ解析で血清Cr>2mg/dlの群では、むしろメチルプロドニゾロン群で14日死亡率が高くなった。(46/78[59%]vs.17/58[29%];P<0.01).

⇨高容量ステロイドは敗血症治療に有効ではない?

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多施設二重盲検プラセボ対照群RCTフランス19施設のICU敗血症性ショックの患者(適切な輸液+昇圧剤を1hr以上続けてもSBP<90mmHg)n=3008時間以内に投与ハイドロコルチゾン50mg6st+フルドロコルチゾン50μg/日(7日間) vsプラセボ介入前にACTH負荷試験(250μg投与)Responder(コルチゾール増加>9μg/dL) とNon-responderに分類 28日死亡率を比較

JAMA. 2002;288(7):862-871

2000年代 Frenchtrial

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全患者

Responder

Non-responder

ステロイド群

プラセボ群

ステロイド群プラセボ群

ステロイド群

プラセボ群

重症度:SAPSⅡ 57-6028日死亡率ステロイド群vsプラセボ群で、全患者:55%vs61%OR0.65(P=0.09)Non-responder:53%vs63%OR0.54(P=0.54)Responder:61%vs53%OR0.97(P=0.96)

全患者では有意差なし。Non-responder28日死亡率・ICU死亡率・院内死亡率↓

⇨重症度は高め。相対的副腎不全患者?では

ステロイドが有効そう

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CORTICUSstudy

多施設二重盲検プラセボ対照群RCT敗血症性ショック(適切な輸液or昇圧薬使用してもSBP<90mmHg) N=499ソル・コーテフ50mg6stvsプラセボ群 ×5日間投与して6日間かけて漸減72時間以内で介入ACTHテスト(250μg)⇨Response群(コルチゾール増加>9μg/dL)とNonresponse群28日死亡率を比較

NEnglJMed2008;358:111-24

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28日死亡率

39.2% vs 36.1%, P=0.69

28.8% vs 28.7%, P=1.00

34.3% vs 31.5%, P=0.51

重症度:SOFA10.6   SAPSⅡ4928日死亡率全群において有意差なし。ショック離脱はソルコーテフ群で早かった。(3.3日 vs5.8日(P=0.006))しかし新たな敗血症(OR1.37(95%CI,1.05-1.79))、高血糖、高Na血症が多かった。

⇨ソルコーテフは迅速ACTH負荷試験の結果に関わらず、死亡率を下げなかった。ショック離脱は早めた。☆プラセボ群での死亡率が予想の50%より低い。(32%)重症度もこれまでの研究と比較して低め。

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•  FrenchTrialでは相対的副腎不全の患者において、死亡率が改善。

•  CORTICUSstudyでは副腎機能に関わらず死亡率に差を認めず。

•  これらの結果の違いとして、FrenchTrialは重症度が高く、死亡率の高い集団であったこと、ハイドロコルチゾン投与が8時間以内と早期であったことが挙げられる。

⇨より重症な敗血症患者への早期投与は有用?

•  どちらにしてもショックからの離脱時間は早めそう。ショックからの離脱に有効なら、 ショックへの進展も予防

できるのでは?

2000年代 2つのRCT

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2016年 HYPRESSstudy 

多施設二重盲検プラセボ対照群RCTドイツ34施設のICU(N=380)

ハイドロコルチゾン投与14日以内の敗血症性ショックへの進展を検証

敗血症患者:SIRS>2つ、感染症、48時間以内に臓器不全 (SOFA6.3・ APACHEII19.0・ SAPSⅡ54.1・SAPS358.4)ショック:十分な輸液負荷後もMAP<65mmHgorSBP<90mmHg昇圧剤が必要な状態が4時間以上持続

ハイドロコルチゾン群:50mgボーラス ➡5日間200mg/日持続静注 (6日間かけて漸減)プラセボ群:マンニトールを投与

JAMA2016;316:1775-85

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ショック移行率・移行までの時間・死亡率は有意差なしせん妄が減少(11.2%vs24.5%(P=0.01))

高血糖が増加(90.9%vs81.5%(P=0.009))

58.4%(206人)にACTH負荷試験が行われ、そのうち33.5%(69人)で相対的副腎不全とされたが、それらの患者においてもハイドロコルチゾン投与による有意差は認められなかった。⇨敗血症患者のショックへの進行を予防しない。

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これらを受けて敗血症診療ガイドライン2016では…

(J-SSCG2016)

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ACTH負荷試験?

・一部の重症患者においてACTHの刺激なく血清コルチゾール≧9μg/dLに増加。この閾値が臨床的には有用でない可能性があるAnaesthIntensiveCare.2005;33(2):201.・ACTH負荷試験は同一人物に実施しても誤差が大きいAnnInternMed.1995;123(12):962.・総コルチゾール濃度測定では実際に生体内で活性を示すフリーコルチゾール濃度を正確に評価できない⇨重症患者では反応と解釈が一定せず、ステロイドが有効な症例を選別できないことからSSCG2008から「推奨されない(class2B)」となっている。

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Critical Care 2007, 11:R21フィンランドの4ICUによる多施設RCTハイドロコルチゾン 200 mg/day(5日間) 持続投与orBolus投与スケール対応で血糖値コントロール血糖推移を比較敗血症ショックの患者  n=48(APACHEⅡ22.6SAPSⅡ51.9SOFA10.2)

持続orボーラス?

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•  ショック離脱率、ICU死亡率に有意差なし•  平均血糖値は両群で有意差なし•  持続投与群で、高血糖(>126mg/dl)のエピソードは減少(15.7vs10.5

回/patient,p=0.039)

(重症高血糖(>150mg/dl)、低血糖(<40mg/dl)は両群で稀)•  持続投与群で、血糖コントロールに必要な看護仕事量は減少(p

=0.038)  

         ⇨nは少ないが、、持続投与の方が有利?血糖値 (P=0.34) インスリン必要量 (P=0.91)

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重症か敗血症性ショックで、ハイドロコルチゾン早期投与は

予後を改善するか?↓

大規模RCTによる検証が必要

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ADRENALtrial

N Engl J Med. 2018 Mar 1;378(9):797-808

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method

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デザイン

•  二重盲検RCT•  Australia,theUnitedKingdom,NewZealand,SaudiArabia,andDenmarkの5カ国、69ICU

•  ウェブのデータベースを利用•  スポンサーのtheGeorgeInstituteforGlobalHealth,Australiaが統計処理を含めた工程を担当したが、薬剤取得・盲検化についてはMaterPharmacyServices(Brisbane,Australia)が担当。

•  各施設の倫理委員会が承認し、全患者に十分なICが行われた。

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ジョージ国際保健研究所オーストラリアで設立された臨床、公衆衛生研究施設。

シドニー大学、北京大学健康科学センター、ハイデラバード大学、オックスフォード大学と系列関係。世界350人以上で構成させれており、40カ国以上でprojectが行われいる。同研究所は過去数年間の影響力でトップ10の世界的研究所の1つにランクされており、あらゆるエビデンスを構築。*MaterPharmacyServicesは詳細不明。

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対象Inclusioncriteria•  18歳以上•  人工呼吸器管理•  臨床的に強く感染症を疑う•  SIRScriteria>2•  血管収縮薬or強心薬を4時間以上使用(SBP<90mmHgorMBP<60mmHgで使用する)

Exclusioncriteria•  敗血症以外の理由でグルココルチコイド使用•  入院後にEtomidate(副腎機能抑制作用+)を使用•  真菌血症に対してアンホテンシンB使用•  中枢性マラリアの診断、寄生虫感染の診断•  予後が90日以内•  治療制限あり•  InclusionCriteriaを満たして24時間以上経過

1.中枢温>38度or<36度2.HR>90bpm3.RR>20回,orPaCO2<32mmHg,or人工呼吸器管理4.WBC>12x109/Lor<4x109/Lor幼若球>10%

Sepsis-3のsepticshock定義に近いcriteria

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介入

生理食塩水100mlor5%デキストラン100mlに混注し、infusionpumpで末梢静脈orCVラインから投与。•  大7日間、ICU退室or死亡した場合はその時点で終了•  患者・担当者は盲検化•  その他の治療については担当医師の裁量•  割付時に担当医は感染focusを調査され疑わしい場所を

解答。複数ある場合は3つまで解答。

ハイドロコルチゾン群200mg/day

プラセボ群(生理食塩水0.2ml)

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Primaryoutcome•  90日死亡率

Secondaryoutcome•  28日死亡率•  ショック離脱(血管収縮薬and強心薬off)までの時間•  ショック再発(再度、血管収縮薬and強心薬を使用)•  ICU滞在期間•  人工呼吸器時間•  RRT期間・頻度•  2-14日間の新たな菌血症・真菌血症•  ICUでの輸血使用率

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6つのサブグループに分けて解析•  入室経路(内科系vs.外科系)•  カテコラミン量(NADorepinephrine<15μg/分vs.≥15μg/分)

•  初期感染巣(呼吸器vs.それ以外)•  性別(malevs.female)•  APACHEIIscore(<25vs.≥25)•  ショックになってから介入されるまでの時間(<6hrvs6-12hrvs12-18hrvs18-24hr)

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割付ADRENALtrialやopのチームじゃない者が担当。1施設に対し381kit(全患者の10%相当)を配布し、その中からランダムに選ばれる。0.2ml無菌水orハイドロコルチゾンが入ったバイアル(ラッピング済)に、2mLの生理食塩水を入れて20秒撹拌、3分放置して投与。1.  未使用のバイアルに番号を振り記録2.  割付がわかるマスキングテープを剥がす3.  番号と割り付けを一致させる4.  セキュリティーバッグで管理5.  介入し結果が出た後、統計学者が解析

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統計•  サンプルサイズ=3800人(90日死亡率を33%と仮定、α=0.05、絶対尺度5%power=90%、1%の脱落を想定)•  ロジェステック回帰モデル(性別・年齢・APACHEⅡスコア・ランダム化までの時間・介入前の腎代替療法の共変量を加えて追加分析)•  線形回帰•  Kaplan–Meierプロット•  Cox比例ハザードモデル•  生理学的データを1日から14日の期間にわたって平均し、反復

測定、線形混合モデルの使用と比較し、対応する95%信頼区間との全体平均差として提示。事後分析は、1日目から7日目(試験レジメンの期間)および8日目から14日目まで別で計算

•  Fisher’sexacttest.•  Intention-totreat分析•  SASsoftware,version9.4

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result

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患者

1898人

1832人

1902人

1826人

21818人

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62歳男性6割内科系7割APACHEⅡ中央値は24.0カテコラミン使用はNADが98%、RRTは13%程度

背景

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背景

HR95bpmMBP72mmHgMBP 低値57mmHgLactate 高値34mg/dl(=3.77mmol/L)

両群に有意差なし

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•  割付から介入までの時間

0.8hr(IQR,0.4to1.6)vs0.8hr(IQR,0.4to1.5):有意差なし(P=0.28)

•  介入時間5.1日 [IQR,2.7to6.8]vs5.6日[IQR,2.9to6.8]:有意差なし(P=0.09)

•  遵守率95.2±11.3%vs94.9±12.1%:有意差なし(P=0.34)

•  介入中open-labelのグルココルチコイド使用

138人(7.4%)vs164人(8.8%) :有意差なし(P=0.13) 

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NAD 高使用量/日有意差なし平均差-0.69(-5.68-4.31),p=0.69他、強心薬・etomidate・スタチン・抗生剤の使用量に有意差なし

平均血圧差第1-7病日 5.39mmHg(95%CI4.78–5.99;P<0.0001).第8-14病日1.31mmHg(95%CI0.54–2.08)ハイドロコルチゾン群で早期の平均血圧が高い。

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HR第1-7病日-6.6bpm(95%CI-7.37--5.84;P<0.0001)第8-14病日 -1.36bpm(95%CI-2.32--0.34)ハイドロコルチゾン群で早期のHRが低い

乳酸値第1-7病日 0.08mmol/L(95%CI0.02–0.15;P=0.02)第8-14病日 0.04mmol/L(95%CI-0.05–0.14;P=0.38)ハイドロコルチゾン群で早期の乳酸値が高い

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PrimaryOutcome

90日死亡率は、両群で有意差を認めなかった。(P=0.50)27.8%vs28.8%(OR;0.95[0.82-1.10])

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Kaplan-Mayer

両群に有意差なし

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サブカテゴリー別

全グループ間で90日死亡率に有意なし

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Secondaryoutcomes

ショック離脱までが3vs.4日(p<0.001)、ICU退室までが10vs.12日(p<0.001)、人工呼吸器離脱までが6vs.7日(p<0.001) とハイドロコルチゾン群で短縮。輸血した割合は37.0%vs.41.7%(p=0.004) とハイドロコルチゾン群で少なかった。ICU生存退室率に有意差なし

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ショック離脱まで

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有害事象

イベントは合計28人・33件出現。 発生率は、ハイドロコルチゾン群で有意に多かった。 (1.1% vs 0.3%、P = 0.009) 重篤なイベント (出血, myopathy, 腸管虚血, 創部離開, 循環ショック)は ハイドロコルチゾン群で4人、 プラセボ群で2人であった。

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discussion

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•  重症敗血症へのステロイド使用は、プラセボと比較して90日死亡率を下げなかった。

•  ショック離脱を早め、輸血を受ける者を減らした。•  ICU退室を早め、初回の人工呼吸器使用期間を

短縮した。•  28日死亡率、ショック再発率、ICU退室後生存日

数、退院後生存日数、人工呼吸器の再装着、腎代替療法率、菌血症・真菌血症の新規発生率は、両群間に有意差はなかった。

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•  バイアスを減らすため盲検化を行った。盲検前に統計分析のプランを公開している。

•  Primaryoutcomeとして90日死亡率をあげ、対象を、重要臓器のサポートが必要な死亡リスクの高い患者に限定した。実際に抽出できた。

•  ほとんどの患者がフォローアップされている。•  対象となった患者のうち、実際に割付に至った

患者の割合は0.69であり他の大規模試験に近い。

•  5カ国69施設を含んでおり、整合性が高い。

strength

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•  炎症を軽減しショックを離脱することが示されているため、ハイドロコルチゾンを持続投与している。敗血症ショックのガイドラインには、infusionがグルココルチコイドの有害な反応を 小限に抑えることが示されている。 IntensiveCareMed2017;43:304-77.

•  近の研究ではグルココルチコイド漸減の有益性は示されていないため漸減していない。 JAMA2002;288:862-71.

•  コルチコトロピン=ACTH負荷試験は重症患者において有効性が示されていないため施行していない。 IntensiveCareMed2017;43:304-77.

•  Etomidate使用患者を除外している。•  有効性が示されていないため、フルドロコルチゾンは

投与していない。 JAMA2010;303:341-8.

今までの試験との違い

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limitation

•  イベント発生の判断は各担当医に一任されており、その判断の整合性については評価していない。

•  菌血症・真菌血症のみを記録している。二次感染についてはデータを収集していない。

•  抗生剤の妥当性は評価していない。•  Myopathyは各担当医がCK上昇や人工呼吸器

再装着などの臨床所見で総合的に評価したが、長期的な筋衰弱の評価はしていない。

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まとめ

•  ハイドロコルチゾン投与は90日死亡率を減少させなかった。

•  いくつかのsecondaryoutcomeを改善させている。•  ハイドロコルチゾンの血行力学的効果はこれまで

の研究と同様。•  費用対効果は検証していないが、今後考えるべ

き項目である。

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今月のNEJMにて…

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APROCCHSStrial

多施設共同二重盲検RCT敗血症性ショック患者 N=1241(SOFA>3の臓器不全を2つ以上・SBP≧90mmHgorMBP≧65mmHgを保つのにカテコラミン>0.25γor>1mg/hrが必要)重症度:SAPSⅡ56・SOFA12ステロイド群:ハイドロコルチゾン:50mg6st/日+フルドロコルチゾン経口50μg/日(7日間) vs プラセボ群(当初は活性化プロテインCも組み合わせた2×2比較であったが、製造が中止となりステロイドvsプラセボとなった)

90日死亡率を比較。

D.Annane NEJM 2018 Mar 1;378(9):809-818

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90日死亡率ステロイド群 43.0% vs プラセボ群49.1%(P=0.03、RR0.8895%CI;0.78-0.99)

また、ステロイド群では ・ICU退室時の死亡率 ・退院時死亡率

 ・180日死亡率が有意に低かった。

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昇圧薬freedays・臓器不全freedaysはステロイド群のほうが有意に多かった。また、昇圧薬離脱までの期間・人工呼吸器離脱までの期間・SOFA<6になるまでの期間はステロイド群で有意に短かった。

有害事象としては、高血糖(≧150mg/dl)は89.1%vs.83.1%(p=0.002)とステロイド群で増加した。

P<0.001

P<0.001

P=0.006

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重症敗血症患者において,ハイドロコルチゾン+フルドロコルチゾンを投与した群では90日死亡率が改善した。ステロイドは心血管機能を増強させる。これは必要な昇圧薬が減ったこととも一致。(鉱質ステロイドによる循環血漿量増加・糖質ステロイドの血管内皮受容体に関連した末梢血管抵抗増加)

French・APROCCHSSと、死亡率を改善させなかったCORTICUS・HYPRESSの違いとして

①フルドロコルチゾンを追加 ⇨鉱質コルチコイド作用が加わっている。敗血症はNF-κBに関連し鉱質コルチコイド受容体がダウンレギュレーション。CritCareMed2017;45(9):e954-e962.

鉱質コルチコイド作動薬は、α1受容体を表出させphenylephrineの反応性をあげ、またendotoxicshockのマウスの死亡率を改善。Neuroimmunomodulation2005;12:321-38.

②対象の重症度が高い。初期蘇生で改善せず昇圧薬を高容量で必要としている重症敗血症ショック患者=死亡率が高いLancet2005;365:63-78.

(APRROCCHSSをCORTICUSと比較すると、SOFA+1.5points、SAPSⅡ+7points)

そして、French・APPOCCHSSでは死亡率を改善させている。

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ADRENAL・APROCCHSS に対して

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•  コルチコステロイドは炎症を抑え感染に対する耐性を下げるが、44%もの死亡率を改善させなかった。JAMA 1963;183: 462-5.

高容量のレジメンは結果が悪く用いられなくなったClinMicrobiolInfect2009;15:308-18.

•  死亡率やショック離脱を改善させるとするシステマティックレ

ビュー がある一方、反する結論に至ったレビューもあり、大

規模なRCTが望まれていた。CochraneDatabaseSystRev2015;12、IntensiveCareMed2015;41:1220-34

•  ADRENAL・APROCCHSS、両試験とも大規模。•  死亡率に大きなばらつきがあるADRENALtrial27.9%vs28.8%[P=0.50]APROCCHSStrial,43.0%vs.49.1%[P=0.03]APATCHEと、SOFA・SAPSⅡで評価されているため単純比較はできないが、APPOCCHSSの方が重症そう。

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APPOCCHSSではフルドロコルチゾンを使用。今まで、ハイドロコルチゾン単独と併用との有効性の差は示されていなかった。 JAMA2010;303:341-8.ADRENALの方が外科手術が多い(31.5%vs.18.3%)RRT施行率が低い(12.7%vs27.6%)血液感染が低い(17.3%vs.36.6%)呼吸器感染が低い(35.2%vs.59.4%)尿路感染が低い(7.5%vs.17.7%)腹部感染が多い(25.5%vs.11.5%).両試験とも、ステロイド投与でショック・人工呼吸器離脱は早かった。ステロイドボーラス投与による高血糖を除き、有害事象の割合は低かった。ステロイドの有効性は重症度に依存するClinMicrobiolInfect2009;15:308-18.

という考えの妥当性を示唆した結果となった。治療抵抗性の重症敗血症ショックの患者に対して、低容量ハイドロコルチゾンをリスクを吟味し使用してみてもいいかもしれない。

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私見

•  ADRENALtrialについて、明確な課題設定・デザイン、十分なサンプルサイズを設定した大規模試験である。

•  外部者による割付、二重盲検化されており整合性は高い。•  介入以外の治療については各担当医に一任されている。•  今回は死亡率に有意差はでなかったが、より重症度の高い

対象者で行われたら差が出た可能性があると考える。•  ショック離脱を早めるのは間違いなさそう。•  有害事象としての高血糖については持続投与にするメリット

があるかもしれない。•  APROCCHSSではステロイド群が死亡率を改善させた要因とし

て、患者群の違いの他にフルドロコルチゾンが有効である可能性もあり、さらなる研究が望まれる。

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治療に難渋する重症敗血症ショック患者に低容量ステロイドの早期介入、

いかがでしょうか?

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補足)ステロイド

http://rockymuku.sakura.ne.jp/syoukjou%20bunnruifunou/suteroidonokannzann.pdf#search=%27