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認証社会と法人番号 —ネット特有の「顔の見えない相手」をいかに信用するか、ネットの特性を生かした「情報流通のデジタル化・シームレス化」によって、データドリブンな社会をいかに構築するか、またこれらによって社会的コストをいかに軽減して行くか。そういった社会的要請の中での法人番号の意義と課題を説明。
NPO法人EABuS副理事長 中井川禎彦
1
【少し長いイントロ】 2
相手の顔が見えないことに起因する様々な問題
ネットによるサービス(特に行政サービス)が受けられない サービスを受けるために窓口に出向かなければならない
サービスを提供する側でシェアしてもらえば済む情報も、個別に提出しなければならない。そのための手数料も必要(住民票や戸籍謄本など)
サービスを提供する側では、データの入力、入力ミスのチェックに大きな労力、外注費用の発生
ボーンデジタル(作成時点で電子化されているもの)な情報をわざわざ紙に落として流通させ、また電子化する無駄
成りすまし、ネット詐欺、標的型メールなど悪意のある行為が跋扈 悪意ある行為による甚大な被害
悪意ある行為からの被害を防ぐためのセキュリティ対策に、大きな費用
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ボーンデジタルなデータが、 デジタルなままで流通しない様々な障壁 「紙」によることとされている制度やワークフローの存在
○○は、紙で提出しなければならないとされている
枚挙にいとまがないが、例えば車検(継続検査)2100万件(2014年度)
オンライン申請を受付けている手続きも、バックヤードでは紙
データフォーマットの相違 同種の手続も機関によって記載内容が相違。それぞれのために別の様式を入手し手続しなければならない
機関間のデータ流通もフォーマット等を変換することが必要
文字コードの相違、語彙の相違 JIS漢字コード約10000字以外に外字が存在。各自治体が個別に外字フォントを作成しているため、漢字コードの総数
は116万字と言われている
データの定義が異なるため、システム間で情報を共有、活用できない
ネットワークが繋がっていない セキュリティ確保のため、ネットワークを分断。シームレスな情報連携に支障。
4
活用すればもっと社会が良くなるデータが眠っている 認証力の高いコアデータが存在するものの電子的に使えない
戸籍情報はほぼ電子化が完了しているが、戸籍謄抄本(紙)と同様の効果を電子的に実現するサービスは存在していない
ビッグデータとしての活用はこれから 各種のセンサー情報、地理情報などの活用が進みつつあるが、本格的にはこれから
行政保有情報の提供、活用のためのAPIの提供も進みつつあるが、さらなるオープンデータの推進が必要。利用する側が「どう使っていいかわからない」という面も
医療情報(診療データ、レセプト)の活用も課題
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ネット上で正しい属性を表す仕組みが存在しない
国籍・本籍、家族関係
氏名・住所・生年月日・性別
勤務先・役職
収入・所得
固定資産
・・
市区町村(住基台帳)
市区町村(法務省)(戸籍)
法務省(登記情報)
勤務先企業
金融資産 資産
A
さ
ん
の
属
性
確実な属性情報を提供できる機関・情報
証券会社 保険会社 銀行
税務署
市区町村(固定資産税)
電話番号・メールアドレス 電話会社 ISPなど
○:現在、ネット上で属性情報を提供可能なもの
○(JPKI)
×
× △
× ×
× ×
×
× ×
自治体税務部門 ×
学歴 学校(学籍簿など)
×
×
6
【本題〜法人番号の意義〜】 7
我が国初の法人共通番号の誕生 税、社会保険その他の手続で、各企業を表す番号は、各制度、システムごとにバラバラ。個別企業で数十の企業コードを管理 企業コードがバラバラなため、制度やシステムの間での情報の連携や利活用に支障
番号法に基づき制度化された法人番号は、国税庁が所管し、法務省の商業法人登記情報に基礎を置く企業等に共通の番号制度として成立 法人番号は、個人番号と異なり、基本3情報(法人の番号、名称、所在地)は公開 国税庁がデータベースを整備し、広範な利用が可能
法人を一意に特定する共通番号の誕生により、相手先により自社コードを使い分ける事務負担が軽減
企業情報を保有する機関(官・民とも)では、企業情報の連携、集約が可能となることにより大きな効果
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企業間連携
法人等 行政機関 間の連携
行政機関
届出・申請業務の ワンストップ化
企業 企業 行政 機関
国民
国民
行政 機関
法人情報の検索・ ダウンロード
Web-APIの提供
法人情報の検索・ ダウンロード
Web-APIの提供
平成27年10月~ 法人番号の通知を開始
法人番号の 通知
行政の効率化 公平性・公正性の向上 企業の事務負担軽減 新たな価値の創出
新たな利活用 サービス
法人番号を活用した新たなサービスがひろがる。 ➢ 行政機関間での法人番号を活用した情報連携が図られ、行政手続における届出・申請等のワンストップ化が実現すれば、
法人(企業)側の負担が軽減 ➢ 民間において、法人番号を活用して企業情報を共有する基盤が整備されれば、企業間取引における添付書類の削減等の事務効
率化が期待されるほか、国民に対しても有用な企業情報の提供が可能
ひろがる。
法人番号を軸に企業等法人がつながる。 ➢ 複数部署又はグループ各社において異なるコードで管理されている取引先情報に、法人番号を追加することにより、取引情報の
集約や名寄せ作業が効率化
➢ 行政機関間において、法人番号付で個別の法人に関する情報の授受が可能となれば、法人の特定や名寄せ、紐付け作業が効率化
つながる。
法人番号により企業等法人の名称・所在地がわかる。
➢ 法人番号をキーに法人の名称・所在地が容易に確認可能 ➢ 鮮度の高い名称・所在地情報が入手可能となり、取引先情報の登録・更新作業が効率化
わかる。
国税庁 指定・管理
通 知 公 表 情報 提供
法人番号で、わかる。つながる。ひろがる。
国税庁資料
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しかし、 法人番号の利活用を阻むいくつかの問題 法人番号の基礎(トラストアンカー)となる商業法人登記情報に正しくないものがある
活動実績のない法人が登記されたまま
所在地、代表者名等が更新されていないものがある など
行政手続等で必要な企業内の内部委任について、安価に簡便に使える仕組みがない 社会保険手続、事業所統計など、企業のブランチ単位で手続きを行う場合が多い
事業主が行う手続きを社員(経理担当者など)が行う場合が多い
(→公的個人認証を用いた電子委任証明書を新たに制度化する動きあり)
企業の諸手続きを代行する士業の委任関係の証明は紙(代理人届など) 手続きのオンライン化を進めるためには、委任関係や委任を受ける資格の有無を電子的に証明する仕組みが必要
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法人情報を他の情報と組み合わせ、補完することによって、より正確な情報を得ることが可能 行政が保有する情報(契約、各種届出、表彰など)との組み合わせ
士業の活動により得られる情報との組み合わせ 信用情報機関が保有する情報との組み合わせ 他の情報と組み合わせ、検証することによって、データのクレンジング(正確性の向上)が可能
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【まとめ】 12
官と企業,官と国民,企業と企業,企業と消費者等のいずれの間においても、セキュアでシームレスな情報の伝達・利活用を可能とするデジタル社会の実現
公的個人認証サービス(JPKI)及び法人番号に基礎を置く企業版マイナポータル(法人ポータル、ROBINSなど)をトラストアンカーとする官・企業・民を通ずる信頼性の高いネット環境の実現 個々にID/PWを求められない広範なシングルサインオン(SSO)の実現
個人がベネフィットを感じられる行政サービス、企業サービスの実現
官・企業・個人の諸活動がデジタル化されることによる社会的コストの低減
データ(情報)をヒト、モノ、カネに次ぐ第4の資源として意識することによる新たな価値の創造、新たなビジネスの創出〜データドリブンな社会の実現
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