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複雑な形状の吹出し口を有する室内気流の CFD 解析に関する研究 (その 10) 噴流理論を用いたアネモ型ディフューザー冷房設定時の吹出し気流のモデル化 CFD Analysis on Airflow in Room with Complicated Shape Diffuser (Part 10)Modeling of Diffused Airflow from Multi-cone Ceiling Diffuser for Cooling Setting using Isothermal Jet Theory Hiroe YASUMOTO* 1 Hisashi KOTANI* 1 Yoshihisa MOMOI* 1 Toshio YAMANAKA* 1 Kazunobu SAGARA* 1 * 1 Osaka University Many building service designers today are becoming to use Computational Fluid Dynamics (CFD) analysis when they take account of how indoor environment are achieved by HVAC equipment in the process of diffuser layout design. However there are some problems using CFD analysis for the room which has complicated shape diffusers. One is difficulty of creating complicated shape diffuser model and setting boundary conditions for CFD analysis. In previous study,the method for creating complicated shape diffuser model was proposed, but it didn't adapt to various situation. In this study,we make diffused airflow model using isothermal jet theory. 1. はじめに 複雑形状の空調吹出し口を有する室の CFD 解析では 詳細なメッシュ分割を要するため計算負荷が増大し、 実用性に欠ける。そのため計算負荷の軽減を目的と した吹出し口のモデリングに関する様々な研究が行 われており、その代表に吹出し口周辺に設定した仮 想境界面上に気流分布等の境界条件を規定して解析 を行う BOX 法や PV 法がある。これらの手法を適用す るには吹出し口周辺の詳細なデータが必要であり、 岡市ら 1) は測定により境界条件の作成を行い、澤田 2) はその測定結果を用いて CFD 上で吹出し気流の モデル化を行った。これらのモデルでは、風量の変 化や非等温吹出しに対応できる汎用性の高い吹出し 気流データを整備する必要がある。本報では吹出し 風量をパラメータとしたディフューザー周辺気流測 定結果 3) に基づき、噴流理論を用いてモデル化を行 いその性能について検証することを目的としている。 2. モデル作成を目的とした吹出し口周辺気流測定 既報 3) で行った CFD モデル作成を目的とした自由場 等温測定の概要を引用する。 2.1 アネモ型ディフューザー 今回測定の対象としたアネモ型デュフューザー ( 空 調技研工業 C2 タイプネック径 12.5 ㎝ ) を Figure1 示す。アネモ型ディフューザーは内部に数枚の羽根 があり、内部コーンの位置を変化させることで、暖 房時と冷房時で吹出し気流パターンを変えることが できる。本報では冷房用設定時のモデル化を行う。 2.2 測定装置 測定は自由場と見なせる大空間を有する大阪大 学内の実験室において行った。実験装置の構成を Figure2 に示す。実験装置は 1800 × 1800mm の板壁を天 井面と想定し、その中央に Figure1 に示すアネモ型ディ フューザーを取り付けた。本実験では浮力の影響が ない等温気流について測定を行うため測定の都合上、 上下を逆転して上向きに吹き出すように設置した。ア ネモ型ディフューザーの中心を原点として、仮想天 井面に対して鉛直方向を y 軸とし、平行な面を xy 面として座標設定を行った。 2.3 実験条件 実験条件を Table1 に示す。吹出し気流温度は等温 とし、風量はディフューザーネック部の風速 2.3m/s に対応する条件について測定した。 2.4 測定機器 風速測定には PIV(Particle Image Velocimetry) を用い た。 写真撮影は、 アネモ型ディフューザー冷房設定時 に発生すると予測される吹出し口中央からの軸流と天井 面沿いのふく流について測定するため、 吹出し口近傍の 800 × 700mm の領域を 3 分割して行った。 撮影時間間隔 はネック部風速により 1000 μ s ~ 2000 μ s の間で変化さ せた。 その他の解析条件を Table2 に示す。 〇安 本 浩 江(大阪大学) 甲 谷 寿 史(大阪大学) 桃 井 良 尚(大阪大学) 山 中 俊 夫(大阪大学) 相 良 和 伸(大阪大学) Figure 1  Dimensions of Anemostat type diffuser X Y 0 virtual ceiling surface 1800×1800mm laser fan chamber 600×600×600mm diffuser punched metal measured cross-section Figure 2 Experimental setup Table 1 Experiment condition

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複雑な形状の吹出し口を有する室内気流の CFD 解析に関する研究

(その 10) 噴流理論を用いたアネモ型ディフューザー冷房設定時の吹出し気流のモデル化

CFD Analysis on Airflow in Room with Complicated Shape Diffuser(Part 10)Modeling of Diffused Airflow from Multi-cone Ceiling Diffuser

for Cooling Setting using Isothermal Jet Theory

 Hiroe YASUMOTO*1 Hisashi KOTANI*1 Yoshihisa MOMOI*1

  Toshio YAMANAKA*1 Kazunobu SAGARA*1

*1Osaka University Many building service designers today are becoming to use Computational Fluid Dynamics (CFD) analysis when they take account of how indoor environment are achieved by HVAC equipment in the process of diffuser layout design. However there are some problems using CFD analysis for the room which has complicated shape diffusers. One is difficulty of creating complicated shape diffuser model and setting boundary conditions for CFD analysis. In previous study,the method for creating complicated shape diffuser model was proposed, but it didn't adapt to various situation. In this study,we make diffused airflow model using isothermal jet theory.

1. はじめに 

複雑形状の空調吹出し口を有する室の CFD 解析では

詳細なメッシュ分割を要するため計算負荷が増大し、

実用性に欠ける。そのため計算負荷の軽減を目的と

した吹出し口のモデリングに関する様々な研究が行

われており、その代表に吹出し口周辺に設定した仮

想境界面上に気流分布等の境界条件を規定して解析

を行う BOX 法や PV 法がある。これらの手法を適用す

るには吹出し口周辺の詳細なデータが必要であり、

岡市ら 1) は測定により境界条件の作成を行い、澤田

ら 2) はその測定結果を用いて CFD 上で吹出し気流の

モデル化を行った。これらのモデルでは、風量の変

化や非等温吹出しに対応できる汎用性の高い吹出し

気流データを整備する必要がある。本報では吹出し

風量をパラメータとしたディフューザー周辺気流測

定結果 3) に基づき、噴流理論を用いてモデル化を行

いその性能について検証することを目的としている。

2.モデル作成を目的とした吹出し口周辺気流測定

 既報 3) で行った CFDモデル作成を目的とした自由場

等温測定の概要を引用する。

2.1 アネモ型ディフューザー

今回測定の対象としたアネモ型デュフューザー ( 空

調技研工業 C2 タイプネック径 12.5 ㎝ ) を Figure1 に

示す。アネモ型ディフューザーは内部に数枚の羽根

があり、内部コーンの位置を変化させることで、暖

房時と冷房時で吹出し気流パターンを変えることが

できる。本報では冷房用設定時のモデル化を行う。

2.2 測定装置

 測定は自由場と見なせる大空間を有する大阪大

学内の実験室において行った。実験装置の構成を

Figure2 に示す。実験装置は1800× 1800mmの板壁を天

井面と想定し、その中央に Figure1に示すアネモ型ディ

フューザーを取り付けた。本実験では浮力の影響が

ない等温気流について測定を行うため測定の都合上、

上下を逆転して上向きに吹き出すように設置した。ア

ネモ型ディフューザーの中心を原点として、仮想天

井面に対して鉛直方向を y 軸とし、平行な面を xy 平

面として座標設定を行った。

2.3 実験条件

実験条件を Table1 に示す。吹出し気流温度は等温

とし、風量はディフューザーネック部の風速 2.3m/s

に対応する条件について測定した。

2.4 測定機器

風速測定には PIV(Particle Image Velocimetry) を用い

た。 写真撮影は、 アネモ型ディフューザー冷房設定時

に発生すると予測される吹出し口中央からの軸流と天井

面沿いのふく流について測定するため、 吹出し口近傍の

800 × 700mm の領域を 3 分割して行った。撮影時間間隔

はネック部風速により 1000 μ s ~ 2000 μ s の間で変化さ

せた。 その他の解析条件を Table2 に示す。

〇安 本 浩 江 (大阪大学) 甲 谷 寿 史(大阪大学)

桃 井 良 尚(大阪大学) 山 中 俊 夫(大阪大学)           相 良 和 伸(大阪大学)

Figure 1 Dimensions of

Anemostat type diffuser

X

Y

0

virtual ceiling surface1800×1800mm

laser

fan

chamber600×600×600mm

diffuser

punched metal

measured cross-section

Figure 2 Experimental setup

Table 1 Experiment condition

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2.5 風速ベクトル及び風速分布

ネック部風速 VN2.3m/s の条件について結果を風速ベク

トル及び風速分布として Figure3,Figure4 に示す。

 冷房設定時の吹出し気流性状の特徴として、 吹出し口

中心部から軸流、 仮想天井面沿いにふく流が発生してい

ることが分かる。 吹出し口中心部から発生する軸流は伏

流に比べると規模が小さく、 室内気流に及ぼす影響は小

さいとして良いと考えられる。 よって吹出し口中心部から

発生する軸流については次章以降では扱わないこととす

る。 また、 ふく流については放射状壁面噴流に似た気流

性状を持つと考えられる。

3. 噴流理論を用いた吹出し気流のモデル化の検討

3.1 放射状壁面噴流の式を用いたモデル式作成 

 CFD 解析への適用を目的として、噴流理論を用いた

吹出し気流のモデル化について検討する。既報 3) の

結果より、アネモ型ディフューザーの冷房設定時の

吹出し口から発生するふく流は Figure5 に示されるよ

うに、内部コーンに衝突して発生する。Figure6 にそ

の簡略図を示す。この壁面噴流は Figure7 に示すよう

な、軸対称噴流を垂直に衝突させて作られる、円周上

にベルト状の開口を持つ放射状壁面噴流と似た気流

性状になると考えられる。放射状壁面噴流の最大流

速分布式 4) を (1) 式に示す。また、今回は y 軸方向

の速度分布を求めるためにBakkeの実験式 4)(2)~(4)

に一部修正を加え用いた。Bakke が用いたフローモデ

ルを Figure8 に示す。式 (4) について、半値幅は吹出

し口中央からの距離と比例する 4)ため Figure9 に示さ

れる通り測定結果を用いて比例定数を求めた。

3.2 結果

 必要な測定データを選定し回帰式を用いてモデル

化を行う。今回は回帰元データ選定の妥当性を検討

するため、2通りのデータ選定を行う。ディフューザー

中央からの距離 x=20.6 ㎝~ 68.1 ㎝の約 6 ㎜ごと 80

Figure3 Velocity distribution

Figure 4 Velocity vector

Table 2 PIV Analysis Condition

300

400

500

600

-150 -50 50 150 2500

1

2

3

4

5

6

7

0

100

200

300

400

250 350 450 550 6500

100

200

300

400

-200 -100 0 100 2000

1

2

3

4

5

6

7

8

0 100-100-200 200 300 400 500 6000

100

200

300

400

500

600

350

350

0

1

2

3

4

5

6

7

8

(mm)

(mm)

(m/s)

0.51.01.5

0

100

200

300

400

-200 -100 0 100

300

400

500

600

700

-200 -100 0 100 200

300 400 500 6000 100-100-200 200 300 400 500 600

700

600

500

400

300

200

100

0

5m/s

(mm)

(mm)

δmu

mu

1/ 2b/ 2mu

0u

x

yH

r

Figure 8 Flow model(Bakke)

[ ]{ }1/ 2

0

21/ 2

1/ 2

K ( ) /

×exp 0.693× ( ) /

0.0160.078

m

m

u Hr x u

u u y b

xb x

δ

δ

=

= − −

==

opening

Figure 5 Airfrow with Anemostat type diffuser

opening

Figure 6 Flow model(Anemo) Figure 7 Flow model

um:最大流速 (m/s) u0:初速 (m/s)δ:境界層厚さ (mm) b1/2:半値幅 (mm) y:近接平板からの距離 (mm)

r:ノズル径 (mm)K:スロー定数 H:円形ノズルと  近接平板間の距離 (mm) x:吹出し口中心からの距離 (mm)

[ ]{ }1/ 2

0

21/ 2

1/ 2

K ( ) /

×exp 0.693× ( ) /

0.0160.078

m

m

u Hr x u

u u y b

xb x

δ

δ

=

= − −

==

(1)

(2)(3)(4)

distance from diffuser center( ㎜ )

b (㎜)

25

30

35

40

45

50

300 350 400 450 500

1/2

Figure 9 Relation between distance and half width

1/ 2 0.0897b x=

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断面のデータを用いた場合と、吹出し開口幅 2.5 ㎝

を d として吹出し口中心からの距離 x=12d,16d,20d 付

近の 3 断面のデータを用いた場合についてそれぞれ

x=12d,16d,20d 断面における結果を示す。Table3 に同

定したパラメータ H,K,u0,,r およびモデル上の吹出し

口での風量 Q0 を示す。いずれの結果もある程度精度

良く回帰出来ており、データ選定の違いによる精度の

差はほぼ無かった。同定した噴流パラメータの値は選

定した断面の位置によって多少異なってはいるもの

のほぼ一定となっている。この結果より、次章以降で

は 80 断面のデータを使って作成したモデルについて

のみ検証を行う。また、モデル上の吹出し風量 Q0 は

給気風量に対して 1.5 倍~ 1.7 倍の値となっており、

この原因として巻き込み気流の発生及びモデルと実

際の吹出し口の幾何性状の違いによる影響が考えら

れる。

4.作成した吹出し気流モデルのCFD解析への適用

 既報 5)で行ったモデル化手法を適用した CFD解析の

概要を引用する。

4.1 P.V法

 3 章で作成した吹出し気流

モデルの性能について検証

するため、 実際にモデルの

値を利用した CFD 解析を行

う。 作成したモデルでは風

速 x 軸成分のみ求められる

ため、 PV 法を適用して解析

Table3 Model Parameters Figure10 Model result

case0580case10100

-40 -30 40

40

30

30

0

[cm]

15

15

-1505

0

0

10

50

case0560

-50 50

50

0 [cm]

15

015-15

0.5 [m/s]

1.0 [m/s]

(1)Inlet boundary

(2)Points to set conditions

distribution of u,vk=0.3ε=18

X

Z

X

Y

X

Y

Inlet

D

L

XY

Z

300

420

210[cm]

Symmetry

Ceiling

Inlet(Virtual face to set condition)

CFD Code FLUENT14Turbulence model Standard k-εmodel

Finite difference scheme QUICKAlgorithm Steady State(SIMPLE)

Inlet boundarycondition (air supply)

U,V,W,k, (obtained from the result of CFD analysys chapter2)

Mesh size Cooling : 2.5cm

60cm(24d) 80cm(32d) 100cm(40d)5cm 2d) case0560 case058010cm 4d c) ase10100

Size of virtual spaceMain flow direction D ( l)horizonta

height L

Figure11 Analysis area

Figure12 Vertual face to set condition

Table4 Summary of CFD

Table5 Analysis case

Velocity(m/s)

y(mm)

Velocity(m/s)

y(mm)

Velocity(m/s)

y(mm)

Velocity(m/s)

y(mm)

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1 1.5

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1 1.5

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 10

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1 1.5

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1 1.5

Velocity(m/s)

y(mm)

y(mm)

Velocity(m/s)

PIV

model

PIV

model

PIV

model

PIV

model

PIV

model

PIV

model

3profile 80profile

x=12d

x=16d

x=20d

を行う。 PV 法は吹出し口近傍に仮想領域を設定し、 そ

の内側も解析領域とする。 仮想境界面は主流に直交す

る 1 面とする。 仮想境界面では風速 x 軸成分について、

同位置における 3 章のモデル式を用いた結果を規定す

る。 流入境界は単純な矩形として天井面中央に設け、 主

流方向の風速 (総流入量を流入面積で除して算出) お

よび乱流統計量 k, ε ( 詳細解析 5) における同位置の平均

値) を規定する。

4.2 解析概要

Fig.11 に解析空間、Table4 に解析概要を示す。メッ

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岡市敦雄 ,佐藤隆二 ,山中俊夫 ,甲谷寿史:ディフューザー吹出し噴流の閉鎖空間内性状に関する研究 , 日本建築学会大会近畿支部研究報告集第 39 号 pp181-184,1999.5澤田昌江 ,甲谷寿史 ,桃井良尚 ,相良和伸 ,山中俊夫:アネモ型ディフューザーを空調吹出し口に用いた室の気流解析に関する研究 ( その 11) 非構造格子 CFD 解析に基づく吹出し気流の BOX 法 , 日本建築学会近畿支部研究報告集第 52 号 , 環境系 pp.201-204,2012,6安本浩江 ,甲谷寿史 ,山中俊夫 ,桃井良尚 ,相良和伸:複雑な形状の吹出し口を有する室内気流の CFD 解析に関する研究 ( その 8) 噴流理論を用いたアネモ型ディフューザー冷房設定時の吹出し気流性状把握複雑な形状の吹出し口を有する室内気流の CFD 解析に関する研究 , 空気調和・衛生工学会学術講演会論文集 , 第 5 巻pp.173-176,2013.9N.Rajaratham 著 ( 野村安正訳 ):「噴流」1981、森北出版澤田昌江 ,甲谷寿史 ,桃井良尚 ,相良和伸 ,山中俊夫 ,安本浩江:複雑な形状の吹出し口を有する室内気流のCFD 解析に関する研究(その 6)吹出し気流のモデル化における境界条件の検討 , 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集 ,pp101-104

1)

2)

3)

4)

5)

シュ間隔は仮想領域内の z 方向のみ 2.5cm とし、その

他は 5cm とする。解析ケースを Table5 に示す。モデ

ル式が風量の変化に対応出来るかを検証するため、3

章で作成した 4 つのモデル式に u0=2m/s を代入して仮

想境界条件を作成する。流入境界には詳細解析 5) の

値を用いる。境界条件および条件規定点を Fig.12 に

示す。流入境界は天井面に設けた30cm×30cm(解析空

間上では 15cm) とし、この矩形の周囲に鉛直下方向へ

2.5cm の幅をもたせた面から水平方向に放射状の分布

となるよう総流入量を各メッシュの面積および吹出

し方向を考慮して調整した風速を規定する。

4.3 解析結果

 Fig.13 に z=1.25cm 水平面における PIV 測定データ

を使用した PV 法結果と既往の CFD 詳細解析データを

使用したPV法結果を示す。仮想境界面の位置が異なっ

ても水平面風速分布はほぼ一致していることが分か

る。ただし、case10100 では風速分布は同心円状であ

るのに対し、case0560,case0580 では多角形状であ

る。構造格子解析で放射状の気流を再現する場合、各

規定点に吹出し風向に対応する風速成分をそれぞれ

規定するが、各メッシュ内においては均一な風速と

して計算され多少の誤差が生じる。仮想境界面の直

径が小さいと、規定点が少なく、誤差が大きくなる

ものと思われる。PIV と詳細解析の風速水平方向分布

もほぼ一致する結果が得られた。Fig.14 に case10100

の x=57.5 ㎝ ,147.5 ㎝における x 軸風速分布を示す。

x=57.5 ㎝においてモデル値と詳細解析値はほぼ一致

しているが、x=147.5 ㎝においては境界層部分の再現

性に乏しい結果となっている。この原因として PV 解

析と詳細解析におけるメッシュ粗さの違いによる影

響が考えられる。壁面付近での解析精度を検証する

ために、今後低 Re 数型 k- ε乱流モデルを用いた詳

細解析を行う必要がある。また、x=57.5 ㎝断面にお

いてPIV測定結果と詳細解析結果を比較している。1.1

倍の給気流量比を考慮すれば、風速分布はほぼ一致

していると言える。

5. おわりに

 本報では、 等温自由場におけるアネモ型ディフュー

ザーの冷房設定時の吹出し気流性状について給気風量

をパラメータとした測定を行い、 給気風量が吹出し気流

に与える影響と吹出し気流の性状を把握した。 冷房設定

時には天井に沿って放射状壁面噴流と似た性状の気流

が発生することが分かった。 次に、 測定データを基に噴

流理論を適用した風速分布のモデル作成について検討

した。既往の実験式に改良を加え、モデル化を行った

ところある程度精度よく吹出し気流を再現出来た。こ

のモデルによって得た値を実際の CFD 解析の計算負

荷軽減手法の境界条件として用いることで、モデル

の性能検証を行った。その結果、既往の詳細解析と

ある程度良い結果を得られた。今後は、低 Re 数型 k-

ε乱流モデルを用いた詳細解析による精度検証と異

なるディフューザー径についてモデル作成を行う予

定である。

0

50

100

150

200

250

300

-0.1 0.4 0.9

X Velocity(m/s)

z(mm)

X Velocity(m/s)

z(mm)

x=57.5cm x=147.5cm

10100

detail

0

50

100

150

200

250

300

-0.1 0.4 0.9

10100detailPIV

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

modeling by CFD detail datamoedeling by PIV data

0.2

0.4

0.6

0.2

0.40.6

0.2

0.40.6

0.2

0.40.6

0.2

0.4

0.6

0.2

0.4

case

056

0ca

se 0

580

case

101

00

Condition at the virtual face

[m/s]

Virtual faceInlet boundary

(m)

(m)

Figure14 Velocity Profile

Figure13 Velocity contour at Z=1.25cm plane

参考文献

本研究を行うに当たって、多大なご協力を賜った澤田昌江

氏 ( 三菱電機 ( 株 ), 当時大阪大学院生 ) に心より感謝の意

を表します。

 謝辞