Upload
others
View
1
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1
膵臓の構造と機能
熊本大学大学院生命科学研究部(医学系) 分子生理学分野 教授 富澤 一仁
視能訓練士学科 解剖学 9
教科書:85−86頁
膵臓は、外分泌腺でもあり内分泌線でもある
外分泌腺とは?
分泌液を体内に分泌する腺。
内分泌腺とは?
分泌液を体外に分泌する腺。
生体の内外とは?�
体外:皮膚や粘膜を突き破らないで到達する部位。
体内:皮膚や粘膜を突き破って到達する部位。�
外分泌腺
・合成した分泌液を体外に運ぶための導管を有する。 ・腺細胞が集合する終末部がある → 外分泌液の合成
特徴
主な外分泌腺
・汗腺、皮脂腺
・乳腺
・唾液腺
・膵臓 → 膵液(消化酵素)
2
内分泌腺
・ホルモンを分泌する。
・直接、血液中に分泌する。
・遠くの組織・器官にも作用する。
特徴
主な内分泌腺
・視床下部
・下垂体
・甲状腺
・卵巣・精巣
・膵臓 → インスリン、グルカゴンなどのホルモン
膵臓の解剖 ①
・腹腔の後ろに存在。 → 後腹膜に埋まっている。 ・形態は、拳銃のような形。 → 膵頭、膵体、膵尾に区分される。
膵臓の解剖 ②
・膵管(導管の一種) → 膵液を十二指腸内に分泌される。
膵臓の組織解剖 ① A ランゲルハンス島 → 内分泌線 B 小葉 C 結合組織性中隔 D 小葉間導管
3
膵臓の組織解剖 ②
・膵臓の実質は、1~10mmの小葉に分けられる。 ・一つの小葉には、多数の腺房(外分泌腺)と1~数個のランゲルハンス島(膵島)が存在。 腺房 → 外分泌腺、ラ氏島(膵島) → 内分泌腺
小葉間導管
腺房
ランゲルハンス島
膵臓の生理
膵臓は、 ① 消化酵素を合成・分泌する器官である。 → 外分泌腺 ② 血糖を調節するホルモンの合成・分泌をする器官である。 → 内分泌腺
膵臓の生理①
外分泌腺としての機能
食物の消化
・消化酵素の合成と分泌 ・十二指腸内の pHを中和する。
膵外分泌部の構造
腺房は、 ① 腺房細胞 ② 腺房中心細胞 ③ 導管細胞から成る。
① 腺房細胞 腺房の大部分を占める。 消化酵素を合成・分泌。 ② 腺房中心細胞 腺房の中心に位置する。 小型の細胞。 導管細胞と同様の性質。 ③ 導管細胞 導管(duct)部分を構成する細胞。 重炭酸イオン(HCO3
-)を分泌 → 膵液をアルカリにすることにより、胃液と中和
4
腺房細胞で消化酵素は合成・分泌される 膵液
・消化酵素を含み、膵外分泌腺組織から分泌される。 ・成人で一日あたり約1500ml分泌。 ・食後数分で分泌は増大し、数時間持続する。 ・重量の98%は水、残りは無機電解質と消化酵素 ・水、無機電解質は、主に腺房中心細胞と導管細胞から分泌。 ・消化酵素は、腺房細胞から分泌。 ・腺房中心細胞、導管細胞から分泌される液の特長 1.電解質濃度は体液と同じ → 等張性 2.組成は、Na+が多く細胞外液に似る。 3.細胞外液との大きな違いは、HCO3
-が多量に含まれる。 → アルカリ性 → 胃液で酸性に傾いた十二指腸内を中 和させる → 膵臓からの消化酵素が機能できる。
膵臓の消化酵素
膵液には三大栄養素を分解する酵素がすべて含まれる。 すなわち唾液や胃液の消化酵素が無くても大丈夫。 管腔内消化の中心を担う。
膵液の分泌調節
ガストリン (CCKに構造が 似ている)
十二指腸、空腸粘膜のI細胞
十二指腸粘膜のG細胞
5
膵臓の生理②
血糖調節機構
血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度を調節する
糖について
糖のはなし
・生きるために糖は不可欠。
・我々の体(細胞)は、糖からエネルギーを作り出す。
三大栄養素とは?
1.炭水化物・・・ご飯、パンなど 2.蛋白質・・・肉、魚など 3.脂質・・・バター、天ぷら、揚げ物など
糖のはなし
体は、蛋白質、脂質からもエネルギーを作ることができる!
ご飯やパンを食べなくても大丈夫?
絶対にダメ!!
理由
炭水化物が、エネルギー効率が一番良い。
脳は、炭水化物しかエネルギーにできない。
6
糖のはなし
糖には、沢山種類がある。
1.多糖類 2.二糖類 3.単糖類
デンプンもその一種。米など
ぶどう糖(グルコース)
果糖・・・一番甘みが強い、蜂蜜、フルーツなど
ガラクトース・・・甘みが弱い。牛乳など
麦芽糖
乳糖・・・哺乳類の乳汁に含まれる
ショ糖・・・砂糖の主成分。虫歯の原因! 熱するとカラメルに変身。
我々は、ぶどう糖しかエネルギーにできない
血糖値について
血液中の ぶどう糖の 値(濃度)
血糖値のはなし
食事をすると、ただちに血糖値は上昇
食事から得た糖をすばやく分解して、すばやく吸収することができる。
食後1時間もすると、血糖値は食前の値まで低下する。
体には血糖値を下げる仕組みがある!
血糖値を調節するしくみ
血糖値は、ホルモンで調節される
どのようなホルモンか?
・膵臓のランゲルハンス島から分泌さ れるホルモン
7
血糖値を調節するしくみ
ランゲルハンス島は、インスリンとグルカゴンというホルモンを分泌している。
1.インスリン ランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌。 血糖値を下げる働き。 2.グルカゴン ランゲルハンス島のA(α)細胞から分泌。 血糖値を上げる働き。
マウスのランゲルハンス島
赤:A細胞、緑:B細胞
血糖値を調節するホルモン
重要!
インスリン、グルカゴンは、膵臓・ランゲルハンス島から分泌される。
血糖値を調節するしくみ
血糖値は、すごく狭い範囲(80~120mg/dl)に調節されている。
肝臓
筋肉 脂肪
生体は、余剰のグルコースをグリコーゲン として貯蔵する�
グルコース グリコーゲン
グルカゴン アドレナリン
インスリン
8
糖尿病について
糖尿病とは?
血糖値の調節機構が機能しなくなる。
血糖値が高い状態が長く続く病気
とくに血糖値を下げることができるホルモンはインスリンだけなので、インスリンに何かが起こると糖尿病になる。
糖尿病の診断
ぶどう糖負荷試験 空腹時血糖値 (mg/dl)
食後2時間 (mg/dl)
正常 100 未満 140 未満
正常高値 100~110 140 未満
糖尿病予備軍 110~126 140~200未満
糖尿病 126 以上 200 以上
75g経口ぶどう糖負荷試験 ① 12時間以上絶食します。ジュースなどもダメ。水はOK。 ② 300mlの炭酸水にグルコース75gを溶かした飲み物を、飲んでもらいます。 ③ 耳たぶから血液を採取して、ぶどう糖濃度を測定します。
0 20 40 60 80
100 120 140 160 180
0 30 60 90 120
健康な人
時間(分)
血清中受及厨糖濃度
( mg/dl)
9
0
50
100
150
200
250
300
0 30 60 90 120
健康な人
糖尿病の人
時間(分)
血清中受及厨糖濃度
( mg/dl)
糖尿病患者に対するぶどう糖負荷試験の結果
実際に血糖値を測定してみよう
その前に、問題
問題 コカコーラ500 ml中には、何グラムの砂糖が含まれるでしょうか?
1. 0 g 2. 10 g 3. 20 g 4. 55 g
それでは、 コカコーラ ZEROは?
糖尿病
糖尿病(Diabetes Mellitus: DM)は、糖代謝の異常によって起こるとされ、血糖値が病的に高まることによって、様々な特徴的な合併症をきたす危険性のある病気である。一定以上の高血糖では尿中にもブドウ糖が漏出する(尿糖)ため糖尿病の名が付けられた。
血糖値が高い状態が持続する疾患
世界の患者数 約1憶8000万人 (2006年推定患者数)
日本の患者数 約700万人(2005年推定患者数) *ただし予備軍を加えると1千万人を超えると推測されている。
患者数
10
糖尿病の分類
① 1型糖尿病 (若年、痩せ型の患者が多い) 自己免疫疾患等によるランゲルハンス島B細胞の破壊
② 2型糖尿病 (40歳以上の肥満の人に多い) 過食、運動不足、加齢などが原因で全糖尿病患者の 90%以上を占める。 ・血中のインスリン濃度は、上昇していることが多い。 ・標準的なインスリン濃度では、血糖値が低下せず(インスリン 抵抗性)、その代償機構としてインスリン分泌が亢進。 → インスリン抵抗性
膵B細胞の疲弊、インスリン分泌低下、細胞死
なぜ肥満になるとインスリン抵抗性になるのか?�
脂肪細胞は、脂肪蓄積以外にたくさんのサイトカインを産生・分泌する機能がある。
例えば、 ・レプチン・・・摂食抑制 ・アディポネクチン・・・中性脂肪含量低下、インスリン感受性亢進
レプチン アディポネクチン等
TNFα↑
肥満者の脂肪細胞からは、TNFαの分泌が促進�
インスリン受容体
TNFαR
TNFα
ⓟ IRS-1
インスリン受容体の働きを悪くする
アジア人種は高度肥満、インスリン抵抗性を示さない。��単純にインスリン分泌量が少ないことに起因する2型糖尿病が多い。�
11
清野裕, Medical Tribune Special Issue (2011.8.4)
アジア人種は肥満を伴わない糖尿病が多い�
糖負荷後時間(分)
日本人と米国白人のインスリン分泌能の比較�
清野裕, Medical Tribune Special Issue (2011.8.4) 耐糖能正常 耐糖能異常 糖尿病
糖尿病モデルマウス
1型糖尿病モデルマウス (非活性型Cdk5発現マウス)
2型糖尿病モデルマウス (レプチン受容体欠損マウス)
2型糖尿病モデルマウス アジア人種(日本人)型 & ヨーロッパ人種型
2型糖尿病モデルマウス
12
糖尿病治療法 ◎1型糖尿病
最初からインスリン投与+運動・食事療法
◎2型糖尿病
1.運動・食事療法
2.薬物療法
・経口血糖降下薬・・・スルフォニル尿素剤 フェニルアラニン誘導体 ・ブドウ糖吸収阻害薬・・・αグルコジダーゼ阻害薬 ・インスリン抵抗性阻害薬・・・ビグアナイド系 チアゾリジン系 ・GLP-1製剤、DPPIV阻害剤・・・最も新しい治療薬
3.インスリン投与