6
覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章 ・鈴木 幸一 北陸技術事務所 品質調査課 (〒950-1101 新潟県新潟市西区山田2310番地5) 北陸地方はその多くを山岳地で占めており、道路交通を確保する上でトンネルは不可欠であ る。北陸地方整備局でも、防災対応や渋滞緩和の観点から山岳地を通過する数多くの道路トン ネルを建設している。一方、昨今のコンクリート剥落事故によってコンクリート構造物に対す る安全性が危惧され、トンネルにおいても安全性、耐久性の向上が求められている。 本論文は、山岳トンネルの覆工コンクリートにおける品質向上対策について、既存資料や点 検記録等により効果を把握し、道路トンネルにおける長期耐久性に資する施工技術について検 討した結果を報告するものである。 キーワード 道路,トンネル,覆工コンクリート,長期耐久性 1.検討概要 道路トンネルでは、自動車等の通行の安全を確保 することが必要であり、構造上重大な欠陥がない限 り第一に覆工コンクリートの剥離剥落を防止するこ とが重要である。覆工コンクリートの剥離剥落はそ のほとんどがひび割れが原因であり、ひび割れの発 生を抑制することで覆工コンクリート、延いてはト ンネル本体の品質向上が可能となるものである。 本検討は、トンネル覆工コンクリートに関する様 々な技術資料を収集、ひび割れの原因と対策工法を 整理し、ひび割れ発生要因を把握するとともに、近 年施工された北陸地方整備局管内のトンネルについ て施工方法や点検記録等を整理・適用することで、 ひび割れ防止対策の効果や品質向上工法の抽出を行 い、今後の道路トンネルにおける長期耐久性に配慮 した覆工コンクリート施工技術の選定に向けた基礎 資料を得るものである。 2.検討内容 (1)技術資料収集整理 トンネル覆工コンクリートに関する技術として、 新技術や施工実績などから覆工コンクリートの品質 向上に寄与する効果的な対策を検索・抽出し、収 集資料を基に品質向上策の事例をカルテ化した。 品質向上策カルテの一例を図-1に示す。 更に、覆工コンクリートの施工手順から、各工 程に分類して工法を整理した。分類項目は以下の 通りである。 図-1 品質向上策カルテの一例 A.材料:フレッシュコンクリートの配合、添加剤 等、材料に関するもの B.型枠:セントルの構造等にかかわるもの C.打込み:コンクリートの打込み時の工夫に関する 技術 材料:A6 覆工コンクリートへの繊維混入 NETIS 登録番号 KT-100021-A HK-030007-V TH-110016-A HK-080006-V 概算 金額 バルチップ:4,095 円/m 3 クラックバスター:1,480 円/m 3 シムロック:910 円/m 3 スーパークラックノンパック:1500 円/m 3 1.概要 レディーミクストコンクリートに、繊維を混入し覆工コンクリー トを打設するもので、高速撹拌投入装置を用 いて現場でアジテータ内に投入する。近年 は、ポリプロピレン製の合成短繊維(クラッ クバスター、バルチップ、シムロック等が多 用される。) 想定外の土圧が想定される坑口部や低土被 り区間、地質的観点から適用範囲を設定する 事例やトンネル全線に採用する事例もある。 ・繊維の混入量は、0.3%程度が標準である。 2.期待される効果 覆工コンクリートに補強用繊維を添加することにより、引 張耐力が向上し、乾燥収縮ひび割れの抑制が可能となる。 曲げ、せん断耐力、靭性が向上し、偏土圧やせん断変 形 等に対処できる。 コンクリートの連続性を維持することにより、覆工コンク リート剥離・剥落を防止できる。 3.適用事例: 【北陸管内実績】 ・海老坂トンネル ・神代トンネル ・指崎トンネル ・北八代トンネル ・藪田宇波トンネル ・小栗トンネル ・山元トンネル ・田伏トンネル 繊維投入機 繊維投入状況 洗い試験器(繊維混入率試験) 4.適用上の留意点・特徴 一般に、繊維を混入することでスランプダウンが発生するため、試験練りを実施してベースコンクリートの配合 を設定する必要がある。 繊維によるひび割れ分散効果(橋架効果)により、覆工表面に亀甲状のひび割れが発生することがあるが、トン ネル構造及び維持管理上の問題はない。

覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

覆工コンクリートの品質向上に関する検討

田島 功章1・鈴木 幸一1

1北陸技術事務所 品質調査課 (〒950-1101 新潟県新潟市西区山田2310番地5)

北陸地方はその多くを山岳地で占めており、道路交通を確保する上でトンネルは不可欠であ

る。北陸地方整備局でも、防災対応や渋滞緩和の観点から山岳地を通過する数多くの道路トン

ネルを建設している。一方、昨今のコンクリート剥落事故によってコンクリート構造物に対す

る安全性が危惧され、トンネルにおいても安全性、耐久性の向上が求められている。

本論文は、山岳トンネルの覆工コンクリートにおける品質向上対策について、既存資料や点

検記録等により効果を把握し、道路トンネルにおける長期耐久性に資する施工技術について検

討した結果を報告するものである。

キーワード 道路,トンネル,覆工コンクリート,長期耐久性

1.検討概要

道路トンネルでは、自動車等の通行の安全を確保

することが必要であり、構造上重大な欠陥がない限

り第一に覆工コンクリートの剥離剥落を防止するこ

とが重要である。覆工コンクリートの剥離剥落はそ

のほとんどがひび割れが原因であり、ひび割れの発

生を抑制することで覆工コンクリート、延いてはト

ンネル本体の品質向上が可能となるものである。

本検討は、トンネル覆工コンクリートに関する様

々な技術資料を収集、ひび割れの原因と対策工法を

整理し、ひび割れ発生要因を把握するとともに、近

年施工された北陸地方整備局管内のトンネルについ

て施工方法や点検記録等を整理・適用することで、

ひび割れ防止対策の効果や品質向上工法の抽出を行

い、今後の道路トンネルにおける長期耐久性に配慮

した覆工コンクリート施工技術の選定に向けた基礎

資料を得るものである。

2.検討内容

(1)技術資料収集整理

トンネル覆工コンクリートに関する技術として、

新技術や施工実績などから覆工コンクリートの品質

向上に寄与する効果的な対策を検索・抽出し、収

集資料を基に品質向上策の事例をカルテ化した。

品質向上策カルテの一例を図-1に示す。

更に、覆工コンクリートの施工手順から、各工

程に分類して工法を整理した。分類項目は以下の

通りである。

図-1 品質向上策カルテの一例

A.材料:フレッシュコンクリートの配合、添加剤

等、材料に関するもの

B.型枠:セントルの構造等にかかわるもの

C.打込み:コンクリートの打込み時の工夫に関する

技術

材料:A6 覆工コンクリートへの繊維混入

NETIS 登録番号

KT-100021-A HK-030007-V TH-110016-A HK-080006-V

概算

金額

バルチップ:4,095 円/m3 クラックバスター:1,480 円/m3 シムロック:910 円/m3 スーパークラックノンパック:1500円/m3

1.概要

・ レディーミクストコンクリートに、繊維を混入し覆工コンクリー

トを打設するもので、高速撹拌投入装置を用

いて現場でアジテータ内に投入する。近年

は、ポリプロピレン製の合成短繊維(クラッ

クバスター、バルチップ、シムロック等が多

用される。)

・ 想定外の土圧が想定される坑口部や低土被

り区間、地質的観点から適用範囲を設定する

事例やトンネル全線に採用する事例もある。

・繊維の混入量は、0.3%程度が標準である。

2.期待される効果

・ 覆工コンクリートに補強用繊維を添加することにより、引

張耐力が向上し、乾燥収縮ひび割れの抑制が可能となる。

・ 曲げ、せん断耐力、靭性が向上し、偏土圧やせん断変 形

等に対処できる。

・ コンクリートの連続性を維持することにより、覆工コンク

リート剥離・剥落を防止できる。

3.適用事例:

【北陸管内実績】

・海老坂トンネル

・神代トンネル

・指崎トンネル

・北八代トンネル

・藪田宇波トンネル

・小栗トンネル

・山元トンネル

・田伏トンネル

繊維投入機 繊維投入状況 洗い試験器(繊維混入率試験)

4.適用上の留意点・特徴

・ 一般に、繊維を混入することでスランプダウンが発生するため、試験練りを実施してベースコンクリートの配合

を設定する必要がある。

・ 繊維によるひび割れ分散効果(橋架効果)により、覆工表面に亀甲状のひび割れが発生することがあるが、トン

ネル構造及び維持管理上の問題はない。

Page 2: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

D.締固め:コンクリートの締固め時の工夫に関する

技術

E.養生:脱型以降のコンクリート養生に関する技術

F.品質管理:コンクリートの充填状況や弱材齢時

の挙動等の計測センサーに関する技

G.維持管理:コンクリートの改質等、維持管理に

関する技術

H.その他:覆工背面の拘束状態の改善や、ひび割

れが生じた場合の剥落防止など、上記

以外の技術

品質向上対策工の整理結果を表-1に示す。

品質向上対策の効果分類にあたっては「土木工

事共通仕様書」を参考とした。土木工事共通仕様書

では、覆工コンクリートの施工に関して規定されて

おり、要約すると施工上の留意点として以下の事項

が示されている。

・コンクリートが分離しないようにするとともに、

充分締め固める。

・硬化に必要な温度及び湿度条件を保つ。

・打込んだコンクリートが必要な強度に達するまで

型枠を取り外さない。

これらは、覆工コンクリートの品質確保上重要

な事項を述べているものであり、品質向上対策で

はひび割れの要因となる以下の対応が重要である

ことを示しているものである。

①コンクリートが材料分離なく確実に充填できるこ

と(特に天端)

②水和反応時の温度応力によるひび割れを抑制する

こと。

③乾燥収縮によるひび割れの発生を抑制すること。

④型枠を外す時期は所定のコンクリート強度が得ら

れていること。

よって、品質向上対策の評価として、上記の4項

目を採用するものとした。分類の結果、③乾燥収縮

ひび割れ抑制対策が最も多く開発されており、覆工

コンクリートの品質向上においてひび割れの抑制が

重要であることが確認された。

(2)北陸地整管内での対策工法と点検記録の整理

近年北陸地整管内で建設された24箇所の道路トン

ネルについて、覆工コンクリートの施工方法と点検

結果の関係を整理し、特徴の抽出を行った。

特徴の抽出にあたっては、まず工事完成図書やト

ンネル定期点検結果から、各トンネルの概要を包括

的に把握できるカルテを作成した。カルテには、路

線、延長、掘削方式・工法、施工期間などのトンネ

ル諸元とともに、平面図・標準断面図、地形・地質

概要、地質縦断図、並びに定期点検結果より把握し

たひび割れ展開図や点検時の考察概要、品質向上対

策実施の有無について記載した。トンネル概要カル

テのイメージを図-2に示す。

表-1 品質向上対策工一覧

図-2 トンネル概要カルテのイメージ

① ② ③ ④ ⑤

天端密実性充填性向上

温度ひび割れ抑制

乾燥収縮ひび割れ抑制

脱枠時の強度確保

その他

A1 膨張剤の添加 ● ●

A2収縮低減型高性能AE減水剤の添加(チューポールLS・SR・NV-S)

A3 流動化剤の添加 ● ●

A4中流動コンクリート(粉体系)

A5中流動コンクリート(増粘剤系)

A6繊維(バルチップ,クラックバスター,シムロック)

小計 3 1 3 0 1

B1 検査窓の増設 ●

B2 自動ケレン装置 ●

B3 ツインアーチフォーム工法 ●

B4FRP製セントル(ハイパーフォーム)

B5 春秋コンクリート ●

小計 1 1 0 2 1

C1 自動配管切換えシステム ●

C2 肩部吹上げ打設孔の追加 ●

C3 吸引チューブの設置 ●

小計 3 0 0 0 0

D1

D2

D3

D4

小計 1 0 0 0 0

E01 覆工コンクリートトータル養生システム(トンネルバルーン) ● ●

E02 隔壁バルーン ● ●

E03 トンネルパーテーション ● ●

E04 ミスト養生 ● ●

E05 パラソルミスト30工法 ●

E06 断熱養生シートによる断熱養生 ● ●

E07 積算温度強度管理システム ●

E08 覆工コンクリート保温・養生システム ●

E09 覆工コンクリート湿潤養生システム ●

E10 ウォーター・キュア ●

E11 保温湿潤養生台車による覆工コンクリート養生 ● ●

E12 覆工コンクリート保温・養生システム保湿養生シート(LHT) ● ●

E13 レインボー工法 ●

E14超音波加湿養生システム(モイストキュア)

E15トンネル覆工湿潤養生(キュアリングシール工法)

E16 ラップユニット式覆工コンクリート養生工法 ● ●

E17浸水養生(アクアカーテン)

● ●

E18 EPSパネル養生工法 ● ●

E19 スルー・パス養生システム ● ●

E20高性能収縮低減剤の塗布(クラックセイバー,デンカクラッコウ他)

小計 0 11 19 1 0

F01 クッラク防止センサー ●

F02充填感知システム(ジューテンダー)

F03 完全充填システム(FCP) ●

小計 2 0 0 0 1

小計 0 0 1 0 1

H01 背面平滑型トンネルライニング工法 ●

H02トンネル二次覆工はく落防止(T-FREG工法,SAMM工法)

H03ひび割れ低減材(ハイパーネット)

小計 0 0 0 0 3

10 13 23 3 7

● ●

その他(H)

合計

維持管理(G)

G01覆工面へのコンクリート改質剤の塗布(マクサム,アイゾールEX,マジカルリペラー)

養生(E)

品質管理(F)

材料(A)

型枠(B)

打込み(C)

締固め(D)

トンネル天端用バイブレータ装置 ●

区分整理番号

対策工

Page 3: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

次に、覆工コンクリートの配合について整理した。

各トンネルの覆工コンクリート配合を表-2に示す。

整理結果から以下の内容が確認された。

・覆工コンクリートの強度は18N/mm2が標準規格

となっているが、脱枠時の初期強度の確保や工期短

縮、品質への影響などを考慮し、強度のランクアッ

プを実施している事例が多い。

・特に、近年では覆工の品質向上や地形・地質等の

特殊条件への配慮から、繊維補強コンクリートや膨

張性の少ない高性能コンクリートを採用する事例が

増えている。

表-2 覆工コンクリート配合一覧

④ インバート ⑤ 覆工(無筋) ⑥ 覆工(有筋)

24-8-40 BBW/C 55.5%,C=234kg

24-15-40 BBW/C 52.0%,C=277kg

24-15-40 BBW/C 52.0%,C=277kg

24-8-40 BBW/C 56.0%,C=254kg

24-15-40 BBW/C 56.0%,C=275kg

24-15-40 BBW/C 56.0%,C=275kg

18-8-40 NW/C 56.0%,C=245kg

24-15-40 NW/C 52.0%,C=294kg

24-15-25 NW/C 56.0%,C=289kg

18-8-40 NW/C 56.0%,C=245kg

18(27)-15-40 NW/C 56.0%,C=294kg

18(24)-15-25 NW/C 53.0%,C=306kg

18-8-40 NW/C 58.5%,C=241kg

18-12-40 BBW/C 50.0%,C=282kg

18-12-40 BBW/C 50.0%,C=282kg

18-8-40 BBW/C 58.0%,C=231kg

18-12-40 BBW/C 52.0%,C=272kg

18-12-40 BBW/C 52.0%,C=292kg

18-8-40 BBW/C 60.0%,C=230kg

18-12-40 BBW/C 52.0%,C=272kg

18-15-25 BBW/C 53.0%,C=329kg

-18-18(12)-25 BB

W/C 53.0%,C=315kg-

- -18-12(15)-25 BB

W/C 55.0%,C=282kg

- -18-20(15)-25 BB

W/C 53.0%,C=329kg

18-8-40 BBW/C 56.5%,C=237kg

18-15(18)-25 BBW/C 55.0%,C=298kg

18-15(18)-25 BBW/C 55.0%,C=298kg

18-8-40 BBW/C 56.5%,C=248kg

18-12(15)-40 BBW/C 52.6%,C=283kg

18-12(15)-25 BBW/C 54.0%,C=291kg

24-8-40 BBW/C 56.5%,C=248kg

24-15-25 BBW/C 56.5%,C=280kg

24-15-25 BBW/C 56.5%,C=280kg

21-8-40 BBW/C 59.0%,241kg

27-18(15)-40 BBW/C 50.0%,276kg

24-15-25 BBW/C 54.0%,C=286kg

24-8-40 BBW/C 56.5%,C=248kg

27-15-40 BBW/C 50.0%,292kg

27-15-25 BBW/C 50.0%,C=334kg

24-8-40 BBW/C 56.5%,252kg

30-15-25 NW/C 50.5%,311kg

30-15-25 NW/C 50.5%,311kg

21-8-40 BBW/C 57.5%,242kg

24-18(15)-25 BBW/C 46.6%,276kg

24-18(15)-25 BBW/C 46.6%,276kg

24-8-40 BBW/C 56.5%,248kg

30-21(15)-25 NW/C 50.5%,341kg

30-15-25 NW/C 50.5%,311kg

21-8-40 BBW/C 59.0%,C=251kg

24-15-25 BBW/C 55.0%,C=280kg

24-15-25 BBW/C 55.0%,C=280kg

21-8-40 BBW/C 58.5%,C=257kg

24-12-25 BBW/C 56.0%,C=284kg

24-12-25 BBW/C 56.0%,C=284kg

21-8-40 BBW/C 59.0%,C=251kg

24-12-25 BBW/C 55.5%,C=280kg

24-12-25 BBW/C 55.5%,C=280kg

21-8-40 BBW/C 59.0%,C=251kg

24-15-25 BBW/C 55.1%,C=280kg

24-15-25 BBW/C 55.1%,C=280kg

21-8-40 BBW/C 55.2%,C=276kg

24-15-25 BBW/C 55.1%,C=280kg

27-15-25 BBW/C 52.8%,C=313kg

24-8-40 BBW/C 55.1%,C=231kg

24-12-40 BBW/C 52.0 %,C=288kg

24-12-25 BBW/C 55.8 %,C=278kg

24-8-40 BBW/C 55.7%,C=264kg

24-12-40 BBW/C 55.7 %,C=271kg

24-12-25 BBW/C 56.2 %,C=287kg

24-8-40 BBW/C 55.2%,C=264kg

24-15-40 BBW/C 56.0 %,C=280kg

24-15-40 BBW/C 56.0 %,C=280kg

24-8-40 NW/C 56.0%,C=261kg

24-15-40 NW/C 57.5%,C=274kg

24-15-25 NW/C 57.8%,C=286kg

24-8-40 BBW/C 56.2%,C=265kg

24-18(15)-25NW/C 52.2%,C=320kg

24-18(15)-25NW/C 52.2%,C=320kg

24-8-40 BBW/C 55.9%,C=261kg

27-15-40 BBW/C 55.9 %,C=292kg

27-15-25 BBW/C 52.0 %,C=323kg

24-8-40 BBW/C 56.4%,C=262kg

24-18(15)-25BBW/C 52.8%,C=320kg

24-20(15)-25BBW/C 54.1%,C=320kg

24-8-40 BBW/C 56.9%,C=270kg

24-15-40 NW/C 57.2%,C=275kg

24-15-25 NW/C 57.6%,C=285kg

24-8-40 BBW/C 55.7%,C=264kg

24-15-40 NW/C 57.2%,C=271kg

27-15-40 NW/C 53.4%,C=291kg

-24-15-40 N

W/C 57.2%,C=271kg-

24-8-40 BBW/C 55.2%,C=276kg

24-15-40 NW/C 57.1%,C=284kg

21-8-40 BBW/C 56.9%,C=262kg

21-12-25 NW/C 58.5%,C=279kg

21-12-25 NW/C 58.5%,C=279kg

18-8-40 BBW/C 59.0%,C=234kg

24-15(17)-25 BBW/C 45.1 %,C=350kg

24-15(17)-25 BBW/C 45.1 %,C=350kg

示 方 配 合

・補強鉄筋区間での流動性を確保するため、流動化

剤や高性能AE減水剤が用いられている。

・覆工コンクリートのセメント種類は、塩化物遮蔽

性や化学抵抗性(塩害やアルカリ骨材反応等)、科

学的耐久性、ひび割れ抑制等の観点から、高炉セメ

ントB種が標準規格品となっているが、高炉セメン

トは普通ポルトランドセメントに比べ水和速度が遅

く初期強度の発現が遅いため脱枠までの養生時間を

長く取る必要があるため、普通ポルトランドセメン

トを採用する事例が増えている。

更に、施工方法と発生しているひび割れとの関係

を把握するため、以下の視点に着目し整理を行った。

・地質 ・掘削方式 ・掘削工法

・コンクリート締固め方法 ・脱枠時期 ・養生

・施工中のひび割れ対策 ・ひび割れ発生状況

各トンネル施工中のひび割れ対策とひび割れ発生状

況の整理結果を表-3に示す。

施工方法とひび割れとの関係についての整理結果

の概要は以下の通りである。

・金沢河川国道管内の卯辰トンネル、御所トンネル、

神谷内トンネル、月浦トンネル、森本トンネルでは、

ひび割れ密度が極めて高い。これらは同一事業の近

接箇所にて施工され、施行年次が早く、標準工法で

施行されたと推定されるトンネルである。

・富山河川国道管内の氷見第一トンネル、氷見第二

トンネル、氷見第三トンネル、氷見第四トンネル、

氷見第五トンネルでは、ほとんど目立ったひび割れ

は認められていない。これらは同一事業の近接箇所

にて施工され、施行年次が早く、標準工法で施行さ

れたと推定されるトンネルである。

・平成19年以降施工されたトンネルでは、ほとん

ど目立ったひび割れは認められていない。これらは

全て何らかの品質向上対策が実施されたと推定され

るトンネルである。

また、北陸地整管内のトンネルのひび割れの特徴

について把握した。特徴的な事例を図-3に示す。

一般的に、覆工コンクリートに発生するひび割れ

パターンは7種類に分類されるとされている。ひび

割れ発生パターンを図-4に示す。

今回の調査トンネルでは、その大部分を占めるひ

び割れパターンは①、②、⑥、⑦であった。その主

な要因としては、乾燥収縮、水和熱等温度変化によ

る影響、インバートの拘束、養生不足、繊維による

ひび割れ分散効果が考えられる。また、1トンネル

を除きそのほか全てのトンネルが同じ掘削工法で施

工されているにもかかわらずひび割れ発生に差が生

じており、地勢的な影響も可能性があると考えられ

る。

Page 4: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

表-3 各トンネル施工中のひび割れ対策と状況

図-3 特徴的なひび割れ事例

図-4 ひび割れ発生パターン

(3)覆工コンクリートの品質向上技術の検討

実績による品質向上技術の評価を行うため、調査

を行った24トンネルについて、更に詳細な実施され

た品質向上策と変状発生状況を整理した。変状発生

が少ないと評価できるトンネルは、高岡五十里、海

老坂、神代、正保寺、中小山、日の丸山、指崎、北

八代、薮田宇波、小栗、七尾、卯辰(上り)の12ト

ンネルであった。これらのトンネルで、各工程での

採用が最も多かった品質向上対策は以下の通りであ

る。

A.材料 A6:覆工コンクリートへの繊維の混入

B.型枠 B1:検査窓の増設

C.打込み C1:自動配管切り替えシステム

D.締固め D1:トンネル天端部の締固めシステム

E.養生 E1:覆工コンクリートトータル養生工法

F.品質管理 F2:充填感知システム

G.維持管理 G1:塗布型高性能収縮低減剤

各トンネルの詳細な整理結果を表-4に示す。

Page 5: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

表-4 各トンネルの品質向上策と変状・ひび割れ状況

また、外観上ひび割れがほとんどない、トンネル

点検結果でもひび割れ等変状がないトンネルは、高

岡五十里トンネル、神代トンネル、正保寺トンネル、

中尾山トンネルであった。この4トンネルでは、

A3:膨張材の添加

A6:覆工コンクリートへの繊維の混入

E7:積算温度強度管理システム

が採用されており効果があったものと推察される。

上記技術に加え、技術資料を収集整理した品質向

上対策について、効果、コスト、汎用性、施工性、

地域性の各項目について採点評価を行った。品質向

上対策に対する評価表を表-5に示す。

その結果、有効と考えられる品質向上対策は以下

の通りである。

A.材料 A2:収縮低減型高性能AE減水剤の添加

A3:流動化剤の添加

A6:覆工コンクリートへの繊維の混入

B.型枠 B1:検査窓の増設

B2:自動ケレン装置

C.打込み C1:自動配管切替システム

C2:肩部吹上げ打設孔の追加

D.締固め D1:トンネル天端部の締固めシステム

E.養生 E2:隔壁バルーン

E7:積算温度強度管理システム

F.品質管理 F1:クラック防止センサー装置

F2:充填感知システム

G.維持管理 G1:塗布型高性能収縮低減剤

上記の評価が高い工法については、現場ごとに資

機材の調達状況等を考慮し、種々の組み合わせで施

工することにより、覆工コンクリートの品質向上に

効果があると考えられる。

また、実績から勘案すれば、経済性を考慮した上

で複数(4工程以上で5工法以上)の組み合わせが望ま

しいと推察される。

締固め(D)

維持管理

(G)

A1 A2 A3 A4 A5 A6 B1 B2 B3 B4 B5 C1 C2 C3 D1 E1 E2 E3 E4 E5 E6 E7 E8~20 F1 F2 F3 G1 計

△ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8 繊維による亀甲状ひび割れ 0.05 0.00

0 全般的に少ない 0.16 0.01

○ 1

○ 1

△ 1

△ △ 2

△ △ 2 殆どない 0.00 0.00

○ 1 殆どない 0.00 0.00

△ 1 殆どない 0.00 0.00

△ ○ 2 全般的に少ない 0.17 0.06

△ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8 全般的に少ない 0.02 0.02

△ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 12 全般的に少ない 0.01 0.00

○ △ ○ ○10・19 △ 5 全般的に少ない 0.01 0.00

△ ○ ○ ○ ○ ○ ○20 ○ 7 全般的に少ない

○ △ ○ ○ ○10・19 △ 5 全般的に少ない

0

0

0

0 比較的多い 0.20 0.11

0 多い 0.27 0.16

0 多い 0.47 0.35

0 全般的に少ない 0.32 0.17

0 少ない 0.23 0.07

○ ○ ○ ○ 4 全般的に少ない 0.10 0.07

△ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8 全般的に少ない 0.03 0.00

○ ○ ○ ○ ○ ○ 6 全般的に少ない 0.04 0.02

○ ○ ○ ○ ○20 4 全般的に少ない 0.04 0.01

0 多い 0.30 0.10

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8 繊維による亀甲状ひび割れ 0.12 0.09

5 6 7 0 0 10 6 3 0 0 0 4 2 0 11 7 2 0 1 3 0 3 4 4 5 0 5 88 平均値 0.13 0.06

4 4 6 0 0 8 3 2 0 0 0 3 2 0 8 5 2 0 0 3 0 3 4 3 3 0 3 66

トンネル点検結果

変状発生比率

ひび割れ変状発生比率

0.00 0.00

0.01 0.00

0.50 0.25

殆どない

比較的少ない

0.01 0.01

材料(A)

多い

覆工品質向上対策 : 記号番号は,対策工一覧による

養生(E)品質管理(F)

型枠(B)打込み(C)

ひび割れ状 況

表-5 覆工コンクリートの品質向上対策の評価

更に、有効技術の中でも特に高評価な技術を抽出

し、現時点で標準工法に採用すべき技術を検討した。

選定にあたっては、北陸地整管内のひび割れの少な

いトンネルでの実績があり、大幅なコスト増加が無

い工法を評価した。今後標準化を推奨する工法を以

下に示す。

B.型枠 B1:検査窓の増設

F.品質管理 F2:充填感知システム

効果 コスト 汎用性 施工性 地域性 総合

A2収縮低減型高性能 AE減水剤の添加

◎ ○ ◎ ○ ◎ 18

A3 流動化剤の添加 ◎ △ ◎ ◎ ◎ 17

A4中流動コンクリート(粉体系)

◎ △ ○ ◎ △ 14

A5中流動コンクリート(増粘剤系)

◎ △ ○ ◎ △ 14

繊維(バルチップ)

繊維(クラックバスター)

繊維(シムロック)

繊維(スーパーノンクラックパック)

B1 検査(打設)窓の増設 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ 20

B2 自動ケレン装置 ◎ ○ ◎ ◎ ○ 18

B3 ツインアーチフォーム工法 ○ △ △ ○ △ 10

B4 FRP製セントル(ハイパーフォーム) ○ ◎ ○ ○ △ 15

B5 春秋コンクリート ○ △ △ ○ △ 10

C1自動配管切換えシステム(スパイダー打設システム)

◎ ○ ○ ◎ ○ 17

C2 肩部吹上げ打設孔の追加 ◎ ◎ ○ ○ ○ 18

C3 吸引チューブの設置 △ ◎ ○ ○ △ 13

E1覆工コンクリートトータル養生システム(トンネルバルーン)

◎ △ ○ △ ◎ 14

E2 隔壁バルーン ◎ ◎ ○ △ ○ 17

E3 トンネルパーテーション ○ ◎ ○ △ △ 14

E4 ミスト養生 ○ △ ○ △ ○ 11

E5 パラソルミスト30工法 ◎ △ ○ △ ○ 13

E6断熱養生シートによる 断熱養生

○ ◎ ○ △ △ 14

E7 積算温度強度管理システム ◎ ◎ ○ ○ ○ 18

E8覆工コンクリート保温・養生システム           「うるおい」

○ ○ △ △ △ 11

E9 覆工コンクリート湿潤養生システム ◎ △ △ △ △ 11

E10 ウォーター・キュア ◎ △ △ △ ○ 12

E11 保温湿潤養生台車による覆工コンクリート養生 ○ △ △ △ △ 9

E12覆工コンクリート保温・養生システム保湿養生シート「LHT」

○ △ ○ △ △ 10

E13 レインボー工法 △ ◎ △ △ △ 11

E14超音波加湿養生システム 「モイストキュア」

○ △ △ △ △ 9

E15トンネル覆工湿潤養生 「キュアリングシール工法」

○ ○ △ △ △ 11

E16 ラップユニット式覆工コンクリート養生工法 ○ ○ △ △ △ 11

E17 浸水養生「アクアカーテン」 ○ △ ○ △ △ 10

E18 EPSパネル養生工法 ○ ○ ○ △ △ 12

E19 スルー・パス養生システム ◎ △ △ △ △ 11

F1 クラック防止センサー ◎ ◎ ○ ○ ○ 18

F2充填感知システム(ジューテンダー)

◎ ◎ ○ ○ ◎ 19

F3 完全充填システム(FCP) ○ ○ ○ ○ △ 13

H1 背面平滑型トンネルライニング工法 ○ ◎ ○ △ △ 14

H3ひび割れ低減材(ハイパーネット)

○ ◎ ○ △ △ 14

評 価◎:優3○:良2△:可1区分

整理番号

対策工

17◎ △~○

◎ ○ ◎ 16◎ △

型枠(B)

打込み(C)

◎ ○ ◎

材料(A)

A1 膨張材の添加

A6

◎ 18◎ △~◎締固め(D)

D1トンネル天端用 バイブレータ装置

養生(E)

養生(E)

E20高性能収縮低減剤の塗布(クラックセイバー,デンカクラッコフ他)

○ ◎

○ 13

品質管理(F)

維持管理(G)

G1覆工面へのコンクリート改質剤の塗布(マクサム,アイゾールEX,マジカルリペラー)

◎ △ ○

◎ 18

その他(H)

H2トンネル二次覆工はく落防止(T-FREG工法,SAMM工法)

◎ ◎ ○ △

14○ ◎ ○ △ △

Page 6: 覆工コンクリートの品質向上に関する検討 - mlit.go.jp覆工コンクリートの品質向上に関する検討 田島 功章1・鈴木 幸一1 1北陸技術事務所

3.まとめ

本検討により得られた知見を周知すべく、まとめ

として「トンネル覆工コンクリートの品質向上対策

技術資料(案)」を作成した。北陸地整では、道路ト

ンネルに関する技術指針として「設計要領 道路編」

を運用しており、その補完として技術資料を作成し

たものである。

この技術資料は、現時点の新技術も含めた広範な

品質向上対策を体系的に整理するとともに、各工程

毎の有効技術を抽出し、対策の組み合わせによる品

質向上を目指すものである。作成にあたっては、山

岳トンネルの一般的事項も併せて記載し、本検討に

より得た知見により覆工コンクリートの変状や最新

技術の解説を補強するものとし、現場の道路管理者

が使用しやすいよう配慮した。「トンネル覆工コン

クリートの品質向上対策 技術資料(案)」を図-5に

示す。

なお、本検討における品質向上対策の抽出では、

あくまでも北陸地整での実績と資料収集により把握

したもので全ての技術を網羅したものではないた

め、抽出技術を即座に運用させるものではなく、ま

たその他の技術の採用を妨げるものでは無い。

図-5 技術資料(案)

トンネル覆工コンクリートの品質向上対策

技術資料

(案)

平成 26 年 3月

国土交通省 北陸地方整備局

北陸技術事務所

4.あとがき

覆工コンクリートの品質向上対策は、その施工技

術を採用することによって、道路トンネルの更なる

安全性の向上や維持管理の軽減を可能とするものと

考える。今回、技術資料を作成し、各工程毎の有効

技術を抽出し、対策の組み合わせによる品質向上手

法を提案したが、今後は道路管理者へ周知、試行す

ることを目指し関係部署と連携していく予定であ

る。なお、覆工コンクリートの品質向上では剥離・

剥落させないことが重要であり、またトンネル毎に

断面形状・延長・線形・地質・気象等の道路条件が

異なるとともにそれらに大きく影響を受けるため、

あらゆる条件下での長期耐久性の把握が重要であ

り、今後も点検等によって効果を確認していく。ま

た、近年の技術革新はめざましく最新技術の動向に

も注視していく必要がある。

山岳トンネルでは NATM 工法が採用されてから

既に二十有余年を経過し、覆工コンクリートに関し

ても材料やセントルの機能、打設・締固め・養生方

法など現状の標準工法と若干の隔たりも見受けら

れ、遠からず工法変更を検討する必要があると思慮

される。本検討による技術資料も含め、今後も覆工

コンクリートの品質向上に向けた検討の充実を図

り、更なる施工技術の高度化とライフサイクルコス

トの縮減を目指す必要があると考えている。

本検討が覆工コンクリート施工の参考となり、道

路トンネルにおける長期耐久性や維持管理に配慮し

た覆工コンクリートの品質向上の一助となれば幸い

である。