30
求核アシル置換反応 エステルの反応 カルボン酸の反応 アミドの反応 カルボン酸の活性化 求核アシル置換反応の機構(復習)

求核アシル置換反応 - 名城大学tnagata/education/ochem2/2019/ochem2...・Grignard 試薬は2回反応する(2当量必要) ・同じ Rʼ を2個持つ三級アルコールが生成

  • Upload
    others

  • View
    6

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

求核アシル置換反応

エステルの反応

カルボン酸の反応

アミドの反応

カルボン酸の活性化

求核アシル置換反応の機構(復習)

求核アシル置換反応の機構(復習)負電荷を持つ求核剤

電荷を持たない求核剤

C X

O+ Nu– C

O X

Nu– X–

C Nu

O

C X

O+ HOCH3 C

O X

O CH3H

– H+

CO X

OCH3

– X–C O

O

CH3

求核剤=水、アルコール、アミン

四面体中間体

H+ が先に外れる

求核アシル置換反応の機構(復習)酸性条件での反応

C OH

O H+C OH

OH

R''OHCOH

OH

OR''

H COH

OH

OR''– H+ H+

COH

OH

OR''

HC OR''

O H– H2O – H+

C OR''

O

最初に H+ がつく(求電子性を高める)

いったん H+ が外れる

もう一度 H+ がつく(よい脱離基を作る)

最後に H+ が外れる

求核剤=水、アルコール

エステルの反応

R C OR"

O脱離基=アルコキシ基(強塩基性)

① 負電荷を持つ求核剤求核剤:‒OH(水酸化物)、‒OR’(アルコキシド)(※ “R‒”[有機金属化合物]の反応は後述)

② 電荷を持たない求核剤求核剤:NH3(アンモニア)、RNH2, RR’NH(アミン)

③ 酸性条件での反応求核剤:H2O(水)、ROH(アルコール)

エステルと負電荷を持つ求核剤の反応

+ HO–R C O–

O+ OR'H

R C OR'

O

+ R''O–R C OR''

O+

R C OR'

OR'O–

水酸化物イオンとの反応:けん化

アルコキシドとの反応:エステル交換

カルボン酸の共役塩基

エステル

(塩基で促進される加水分解)

エステルけん化の反応機構

R C OR'

O+ HO–

R CO OR'

OH R C O–H

O+ R'O–

R C O–

O+ OR'H

四面体中間体 カルボン酸 アルコキシド

カルボン酸の共役塩基

アルコールこの平衡は圧倒的に右に偏る

(反応全体は不可逆)

HO‒ が再生されない→ 1当量の HO‒ が必要

(塩基触媒での)エステル交換の反応機構

R C OR'

O+ R''O–

R CO OR'

OR'' R C OR''

O+ R'O–

四面体中間体 エステル アルコキシド

・可逆反応・触媒量のアルコキシド+アルコールで反応は進行する

R''OH R''O–+ R'O– + R'OH(下の平衡で触媒が再生されるため)

アルコキシド(触媒)

エステルとアンモニア・アミンの反応

R C OR'

O+ R''NH2 R C NHR''

O+ OR'H

R C OR'

O+ NH3 R C NH2

O+ OR'H

R C OR'

O+

R C N

O+ OR'HN

R1

R2H R1

R2アミド

エステルのアミノリシス

エステルとアミンの反応:反応機構

R C OR'

O+ R''NH2 R C

O OR'

NH

R''

H

CO OR'

NH

R– H+

R C NHR''

O+ R'O– H+

R C NHR''

O+ OR'H

四面体中間体 H+ が外れる

アルコキシド さっき外れたH+ が付く

アルコール

・比較的遅い反応(アルコキシ基の脱離能が低いため)

酸性条件でのエステルの反応

水との反応:酸触媒加水分解

アルコールとの反応:酸触媒エステル交換

R C OR'

O+ H2O

R C OH

O+ OR'H

H+

R C OR'

O+ R''OH

R C OR''

O+ OR'H

H+

エステルの酸触媒加水分解の反応機構

C OR'

O H+C OR'

OH

H2OCOR'

OH

OH

H COR'

OH

OH– H+ H+

COR'

OH

OH

HC OH

O H– R'OH – H+

C OH

O

H+ がつく(求電子性を高める)

四面体中間体 いったんH+ が外れる もう一度

H+ がつく(脱離能を高める)

最後に H+ が外れる(酸触媒再生)

・すべてのステップが可逆(逆反応は「カルボン酸の酸触媒エステル化」)

カルボン酸の反応

脱離基=ヒドロキシ基(強塩基性)

① 負電荷を持つ求核剤(‒OH, ‒OR’, 有機金属, ヒドリド)② 電荷を持たない求核剤(NH3, R’NH2, R’R’’NH)

R C OH

O

使えない

R C O–H

O+ R''O–

R C O–

O+ OR''H

カルボン酸の共役塩基:求核剤と反応しない

(酸塩基反応が優先する)

カルボン酸の反応:酸触媒エステル化

R C OH

O+ R''OH

R C OR''

O+ OHH

H+

・可逆反応(エステルの酸触媒加水分解の逆反応)

酸性条件での反応:アルコールとの反応

カルボン酸の酸触媒エステル化の反応機構

C OH

O H+C OH

OH

R''OHCOH

OH

OR''

H COH

OH

OR''– H+ H+

COH

OH

OR''

HC OR''

O H– H2O – H+

C OR''

O

H+ がつく(求電子性を高める)

いったん H+ が外れる もう一度 H+ がつく

(脱離能を高める)

最後に H+ が外れる(酸触媒の再生)

アミドの反応

脱離基=アミノ基(非常に強い塩基性)

→ 酸で「‒NH3, ‒NH2R, ‒NHR1R2」に変えて脱離させる

R C NH2

O

+ + +「‒NH2, ‒NHR, ‒NR1R2」はこのままでは脱離できない

R C NH2

O+ H2O

R C OH

O+

H+NH4+

R C NH2

O+

R C OR''

O+

H+NH4+R''OH

酸性条件での反応:水・アルコールとの反応

加水分解

アルコリシス

アミドの酸性条件での加水分解

C NH2

O H+C NH2

OH

H2OCNH2

OH

OH

H CNH2

OH

OH– H+ H+

CNH2

OH

OH

HC OH

O H+ NH3 C OH

O+ NH4+

H+ がつく(求電子性を高める)

いったん H+ が外れる もう一度 H+ がつく

(脱離能を高める)

脱離したアンモニアが H+ と結合する

・酸はアンモニア(またはアミン)と結合して再生しない → 触媒ではなく、1当量以上必要

【練習問題】次の反応の機構を巻き矢印で書きなさい。HN

O

CH3 H+, H2O

カルボン酸の活性化

R C OH

O

=ヒドロキシ基の脱離能が低いカルボン酸の求核アシル置換反応の問題点

ヒドロキシ基を「脱離能が高い」基に変換すればよい

R C O

O

XR C OH

OX = 電子求引基

脱離能が高い置換基

カルボン酸と塩化チオニルの反応

R C OH

OSO

Cl Cl+

R C Cl

OH Cl+ + O

SO

カルボン酸 塩化チオニル 塩化アシル

R C O

OSO

Cl

※ 途中で下の化合物を経由する

「O‒電子求引基」=脱離能が高い置換基(クロロスルフィン酸アニオン)

カルボン酸と塩化チオニルの反応:反応機構

R C OH

O+ S

O

Cl Cl R C O

OS Cl

O Cl

H

– H+

R C O

OS Cl

O Cl

R C O

OSO

Cl

– Cl–

R C O

OSO

Cl Cl–+R C O

OSO

Cl

Cl

R C Cl

O

–O SO

Cl+

非常に電子不足弱い求核剤でも反応できる

Cl‒ が脱離

OSOCl が強く電子を引っ張っているので

弱い求核剤でも反応できる

OSOCl は非常に良い脱離基

※ クロロスルフィン酸は SO2 と HCl に分解する

–O SO

Cl OS

O+ Cl–

H+

OS

O+ H Cl

カルボン酸誘導体と強い求核剤の反応

エステルと水素化アルミニウムリチウムの反応

エステルと Grignard 試薬の反応

カルボン酸誘導体と Grignard 試薬の反応

R C X

O+ R' MgBr

・新しい C‒C 結合を作るのに有用

・「R‒」は脱離能が極めて低いので、X は何でもよい(ただし、カルボン酸はダメ:酸塩基反応が優先する)

・普通はエステルを使う(カルボン酸誘導体の中で最も入手しやすく安定なため)

エステルと Grignard 試薬の反応

R C OR"

O+ R' MgBr

RC

OR"O

R'– MgBr+

R C R'

O– –OR''

R C R'

O+ R' MgBr

– MgBr+

RC

R'O

R'

H+

RCR'HO

R'�����

四面体中間体 ‒OR が脱離する

 ケトン(またはアルデヒド)

Grignard 試薬がもう1分子反応する

同じ置換基を二つ持つアルコール

・第二段階の方が反応しやすい(エステルよりケトンの方が反応性が高いから)

エステルと Grignard 試薬の反応

R C OR"

O+ R' MgBr2

RC

R'HO

R'2 H+

�����

+ R''OH + 2 MgBr+

・Grignard 試薬は2回反応する(2当量必要)

・同じ R’ を2個持つ三級アルコールが生成・ギ酸エステル(R = H)から始めれば二級アルコールが生成

エステルと Grignard 試薬の反応:1当量では?

R C OR"

O R' MgBr

R C R'

O R' MgBr

RC

R'O

R'– –OR''

遅い 速い

※ エステル1分子とGrignard 試薬2分子が一気に反応する

(途中で止められない)

RC

R'HO

R'+ R''OH + MgBr+

R C OR"

O+

0.5 0.5 0.5 1: : :

R C OR"

O+ R' MgBr

H+

�����1 : 1

エステルが半分消費されたところでGrignard 試薬がなくなってしまう

カルボン酸誘導体とヒドリド試薬の反応

・カルボン酸の官能基変換に有効・「H‒」は脱離能が極めて低いので、X は何でもよい(ただし、カルボン酸はダメ:酸塩基反応が優先する)

・ヒドリド等価体の選択は重要NaBH4:反応性低い=エステルと反応しない

R C X

O+ "H–"

LiAlH4:反応性高い=エステルと反応する

・エステルを使うことが多い

水素化アルミニウムリチウム水素化アルミニウムリチウム lithium aluminum hydride

LiAlH4 Li Al

H

HHH

Al

H

HHH B

H

HHH

Al‒H の分極 > B‒H の分極LiAlH4 の方が求核性が高い

エステルと水素化アルミニウムリチウムの反応

– AlH3

RC

OR"O

H

– –OR''

R C H

O

R C H

O+ AlH3H

– AlH3

RC

HO

H

H+

RCHHO

H

四面体中間体 ‒OR が脱離する

アルデヒド

LiAlH4 がもう1分子反応する

一級アルコール

C OR''

O+ AlH3H

エステルと水素化アルミニウムリチウムの反応

R C OR"

O+ 2

RC

HHO

H

H+, H2O

�����

+ R''OH

+ 2 LiOH + 2 Al(OH)3

LiAlH4

・LiAlH4 は2回反応する(2当量必要)

・一級アルコールが生成・H が1個付加した段階で止めることはできない

H OH

【練習問題】カルボニル化合物と求核剤を用いて、ジフェニルメタノールを生成物として与える反応を3通り考えなさい。