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ConnectiveTissue Vo l. 13 No. 2 55-68 (1 981) ヒト耳下腺由来扇平上皮癌培養細胞の グリコサミノグリカン合成活性 内堀典保 名古屋保健衛生大学医学部病理学教室 GlycosaminoglycanSyntheticActivityofCulture CellDerivedfrom Cell CarcinomaofHumanParotidGland NoriyasuUchibori DepartmentofPathology Fujita-GakuenUniversitySchoolofMedicine Summary Theglycosaminoglycansynthetic activity ofculture ce lI s derived fromsquamous ce lI carcinomaoftheparotidofaJapanesemanwas observed byexamining incorpo- rationof3H-glucosamineintoglycosaminoglycansinthece lI sandinthe medium. The ce lI s secreted a large amount of glycosaminoglycans mainly hyaluronic acid into the medium. A significantamountofchondroitinsulfateanddermatansulfate wasalsosynthesizedbythesece lI s. EffectsofchangesinpHof themediumonthe glycosaminoglycan synthesis were tested. It was foundthathyaluronicacidsecreted bythece lI sdecreasedremarkablyinamountatlower p H. Sulfated glycosaminoglycan synthesis was not influenced bychangesinpH. Whenacommercialhyaluronicacid wasaddedto the medium the hyaluronic acid synthetic activity of the ce lI was enhancedsignificantly. The present ce lI line exhibits morphological characteristics of differentiated squamous ce lI carcinoma. It containstonofilaments and numerousdesmosomesinthe cytoplasm and hasatendencytokeratinize. It is conceivablethathyaluronic acid synthesis whichisoneofthebiologic characteristicsofsquamouscells isrelatedto keratinformation. ReceivedJune 30 1981; acceptedforpublicationAugust 17 198 1.

ヒト耳下腺由来扇平上皮癌培養細胞の - UMINKB細胞へ HeLaS3 細胞10)(し、す'hもヒト扇平 上皮癌由来培養細胞であり,愛知ガ、ンセンター

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Connective Tissue

Vol. 13, No. 2, 55-68 (1981)

ヒト耳下腺由来扇平上皮癌培養細胞の

グリコサミノグリカン合成活性

内 堀典保

名古屋保健衛生大学医学部病理学教室

Glycosaminoglycan Synthetic Activity of Culture Cell Derived from ~Squamous Cell

Carcinoma of Human Parotid Gland

Noriyasu Uchibori

Department of Pathology, Fujita-Gakuen University School of Medicine

Summary

The glycosaminoglycan synthetic activity of culture celIs derived from squamous

celI carcinoma of the parotid of a Japanese man was observed by examining incorpo-

ration of 3H-glucosamine into glycosaminoglycans in the celIs and in the medium. The 、celIs secreted a large amount of glycosaminoglycans, mainly hyaluronic acid, into the medium. A significant amount of chondroitin sulfate and dermatan sulfate

was also synthesized by these celIs. Effects of changes in pH of the medium on the

glycosaminoglycan synthesis were tested. It was found that hyaluronic acid secreted

by the celIs decreased remarkably in amount at lower pH. Sulfated glycosaminoglycan

synthesis was not influenced by changes in pH. When a commercial hyaluronic acid

was added to the medium, the hyaluronic acid synthetic activity of the celI was

enhanced significantly.

The present celI line exhibits morphological characteristics of differentiated

squamous celI carcinoma. It contains tonofilaments and numerous desmosomes in the

cytoplasm, and has a tendency to keratinize. It is conceivable that hyaluronic acid

synthesis, which is one of the biologic characteristics of squamous cells, is related to

keratin formation.

Received June 30, 1981 ; accepted for publication August 17, 1981.

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-D

結 合組織

I.緒 ー= E司

ヒト l盛淡j腺より発生する腫蕩fま多種多様であ

り,特に料i液産生を特色とするいくつかの特有

な腫蕩をみることが多いことは周知の通り であ

る。その中でも多形性腺!匝(~、わゆる混合腫蕩)

に含まれる粘液は古くから注目 され,その組織

発生の解明とともに多くの研究者の興味をひい

てきたトヘ 竹内 ら市〉はさきに唾液腺腫蕩の形

態学的特色, グリコサミノグリカ ン(GAG)合

成活性等を検索するために手術摘出組織および

それより得た培養細胞を観察して,1)多形性)腺

腫の粘液腫療部を占める紡錘形細胞は上皮由来

であ り, GAGを旺盛に産生していること, 2)

正常'の唾液l腺導管上皮細胞も旺盛な GAG合成

能を有しており,多形性腺腫の起源はかな り成

熟した導管上皮細胞である こと等を示 したが,

その過程において耳下腺由来の廟平上皮癌細胞

の長期培養,株化に成功した九今回著者はそ

の培養細胞株 (ST-10)の生物学的性状につい

て検索した結果, この細胞がヒアルロン酸を主

体とする GAGを旺盛に合成分泌していること

を見出した。 この細胞の性状, GAG合成の様

相を報告し, GAGの生物学的役割について考

察する。

lL 実験材料

l. ~音義細胞

ST-10細胞株 (1盛液腺導管上皮由来扇平上皮

癌細胞)を研究の対象とした。これは 47歳男

性耳下腺由来扇平上皮癌組織より樹立された細

胞株であり,摘出組織の HE染色襟本におい

て, 線車[t性結合組織に取 り閉まれて島状に扇平

上皮癌細胞の癌胞巣が見られ,角化傾向を有す

る良く分化した扇平上皮腐の像を示した (Fig.

1)。また摘出組織に種々の粘液染色(ムチカル

ミン染色,アルシアンブルー染色, トルイジン

フソレー染色)を施 し観察したが,粘液細胞の存

在は確認できず,粘表皮痛としての組織像を見

出す ことはできなかった。

ST-10細胞との混合培養には Hayflickら8)

がヒト胎児肺より樹立した正常2倍体線維芽細

で司~.;f._",・:~~・ -ー、、、.

、、‘ー也、

Fig.1. Microscopic section of primary tumor

tissue, showing a pattern of well differentiated squamous cell carcinoma with keratin formation

(arrows). HE. x 120

胞株 WI-38細胞 (大日本製薬より購入)を用

い, また細胞の生物学的性状を比較するために

KB細胞へ HeLaS3細胞10)(し、す'hもヒト扇平

上皮癌由来培養細胞であ り,愛知ガ、ンセンター

より恵与された)についても観察した。

2 培 養液

Eag!e's minima! essentia! medium (MEM

培地, GIBCO cat. No. F-12)に 10%牛胎児

血清 (GIBCO)および 10%仔牛血清 (阪大微

研)を加え, カナマイシン(100mg/!) , ペニ

シリン (10000u/!), NaHC03 (0目 35g/!)を添

加 したものを用いた。

m.実験方法

l 培養方法

1) 通?古の培養

細胞を大型ガラス角瓶またはプラスチック角

瓶 (ファルコン,床面積約 25cm2) に値え込

み,それぞれ培養液を 20m!またほ 10m!加

え, 37"C にて水平静置培養した。培養液の交

換は週 2回行い,細胞が培養瓶内いっぱいに増

殖した時に EDTA-トリプシンi容液 (disodium

ethy!enediamine tetraacetate O. 01%, トリプ

シン 0.05%,pH 7. 5)にて細胞をガラス面よ

り剥離し,遠沈 (800rpm, 10分)にて細胞を

集め,新鮮な培養液を力nえ,細胞浮遊液として

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内堀典保:扇平上皮癌のムコ多糖合成活性 - 57-

継代したコ

2) Leighton管による培養

あらかじめ小カバーグラスを入れておいた

Leighton管内に細胞浮遊液 2ml ~入れ, 3rc

で静置培養し,細胞が定着,増殖を始めた後適

当な時期に Leighton管からカパーグラスを取

り出し,ホルマリンアルコール等量液にて固定

し,後述する種々の染色を随して光顕的に観察

U',こO

3) 立体培養 (meniscus gradient culture,

three dimention culture)

Leighton管内に細胞浮遊液 2mlを入れ,

3rcで静置培養を行い,細胞がカ、ラス面に定着

して増殖を開始した時期に新鮮な塙養液 5ml

と交換すると同時に Leighton管を垂直位に保

ち 370Cで培養し,適宜カバーグラスを取り出

し固定し,染色を施し光顕的に観察した。

4) 線維芽細胞との混合培養(co-culture)

扇平上皮癌細胞のT-10,および KB)10万

個Imlの細胞浮遊液 1mlと同濃度の WI-38

細胞浮遊液 1mlを Leighton管内に植え込み,

370Cで混合培養し,培養開始後 5日 7日,

9日. 12日目にカパーグラスを取り出し固定染

色し,光顕的に観察した。

2. 形態的観察法

1) 光顕的観察

(固定)

細胞を植え込んだ後,適宜 Leighton管より

取り出した小カパーグラスおよびガラス角瓶よ

り機械的に剥離した細胞を 10%ホルマリン液

にて軽く洗浄,国定した後, 10%ホルマリン,

純ェタノール等量液にて 1時間固定した。染色

法によっては, l%CPC含有 10%ホルマリン

液にて 24時間固定した。

(染色)

HE (ヘマトキシリンエオジン)染色, HE-

アルシアンブルー重染E(pH2. 5),アルシアン

ブル{ーケルンエヒトロート重染色 (pH2. 5),

PAS反応,パパニコロウ染色,ズダン国染色,

オイルレッドO染色を施した。

2) 電顕的観察

透過型電顕用試料作製法の常法に従って行っ

た。緩衝液と Lて 0.05Mリン酸緩衝液,前固

定液には 2.5%グルタールアルデヒド液 (pH

7.4),後固定液には 2%四酸化オスミウム液

(pH 7. 4)をそれぞれ使用し,包埋剤としては

ケトールを用いた。

3. 生化学的分析方法

1) GAG合成活性測定法

細胞が培養瓶内いっぱいに増殖した時に培養

液を 3Hグルコサミン(濃度 2.5μci/ml)を含

有する培装液と交換し 370C24時間 incubate

した後.培養液を除き,細胞を EDTA トリプ

シン溶液にて剥離した。培養液, EDTA トリ

プシン処理後の上清(細胞膜表層物質抽出液)

および沈、誼(細胞)の 3画分のそれぞれにつし、

て含まれている GAGを精製し 3H-GAGの

量を測定した。

(GAGの精製)

試料に 3倍量の1.3%酢酸カリウム含有 95%

エタノールを加え固定し 80%エタノールにて

洗浄後アセトンにより脱水乾燥粉末とした。粉

末を O.3N NaOHで処理した後 1NHClにて

中和し Tris-HCl緩衝液で pH8.0に調整し

てプロナーゼによる消化を行った。遠沈 (6000

rpm, 10分)して不消化物を取り除き, J:清中

に含まれる 3H-GAGを同様にアセトン乾燥

粉末とし,一定量の蒸留水に溶解し A 部を

DNA量の測定に供した (DNA量の測定は

Burton11)の方法を用いた)0RN ase, DN ase

にて核酸を消化した後, 0.03 M r、JaClを含む

CPC (cetylpyridinium chloride)を加えること

により標識された GAGを沈股させた。この結

果生じた CPC-GAG複合体を 3MNaClにて

抽出し,エタノールによる沈殿をくり返して

CPC NaClを除き,乾燥粉末とした。精製し

た試料を適当量の蒸留水に溶かし U}sを特異

性の明らかな分解酵素(放線菌ヒアルロニダー

ゼ12))にて消化し酵素消化前,後の同一サン

フ。ルについて同時にセルロースアセテート膜電

気泳動を行い比較 Lて GAG各組成の同定を確

実にした。

(セルロースアセテート膜電気泳動法)

電極液としてピリジン:酢常:水(1: 9 :

115) (pH 3. 5)緩衝液を使用し標準 GAGと

ともに泳動を行った。泳動後 0.2%アルシアン

ブルーを含む O.lM酢酸溶液 (pH2. 5)にて染

色し、セルロースアセテート膜の標準 GAGの

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-D 結合組織

位置に一致する部分をそれぞれ切断 Lて,液体

シンチレーターを含むパイヤルに入れて放射活

性を測定した。また泳動後のセルロースアセテ

ートl撲を原点より 1mm間隔に切断して,同様

に放射活性を測定することにより, GAG各組

成聞の放射性同位元素の混入の有無および糖蛋

白への取り込み活性が GAGの取り込み活性に

およぼす影響を調べた。

2) ウロン酸定量

摘出腫疹組織を1.3%酢酸カリウム含有 95%

エタノーノレにて固定した後, アセトン乾燥粉末

とL.乾燥粉末に含まれる GAGを前述のごと

く常法に従い精製したものについて,カノレノくゾ

ール変法13)にて含有ウロン酸量を測定した。

3) 市販の GAG添加による影響

ST-10細胞 20万個Imlの細胞浮遊液を小

型フ ァルコンに植え込み, 細胞が増殖し始めた

時期に 3群に分け,それぞれ O.02%コンドロ

イチ γ6硫酸および 0.85%NaClを含む培養

液, 0.02%ヒアルロ γ酸および 0.85%NaCl

を含む培養液,対照として 0.85%NaClのみ

を含む培養液と交換して培養した。培養開始後

5日EI,10日目に 3H-グルコサミン含有の各培

養液と交換し, 24時間 incubateした後培養液

を取り, EDTA-トリプシン溶液にて細胞を剥

離し,前述の様に培養液, トリ プシ ン抽出液,

細胞の 3成分について GAGを精製し, GAG

各組成の放射活性を測定した。

4) 培養液 pHの変動による GAG合成活性の

変化

同じ様に ST-10細胞 20万個Imlの細胞浮遊

液を小型ファルコンに植え込み 2日後細胞が

分裂増殖を始めた時期に 3群に分け, 3段階の

pH (pH 7. 83, pH 7. 45, pH 6. 35)に調整した

培養液とそれぞれ交換し, 15時間 incubateし

た後,官Ij述同様に 3Hーク'ルコサミンにて 8時間

標識した。 Earl's液中で細胞を機械的に剥離し,

遠沈 (800rpm, 10分)にて細胞を集め,培養

液と細胞の 2成分について GAG合成活性を測

定し比較した。

また同じ条件下において Leighton管内で細

胞を培養し, 23時間後 (GAG合成活性測定の

時と同一培養時間)にカバーグラスを取り出

し,染色を施し光顕的に観察することにより,

培養液 pHの差による細胞の形態の変化および

GAG合成活性と形態的変化との関係について

検索した。

(培養液 pHの調整)

Eagle MEMアミノ酸ビタミン培地 (0.88gl

1)を Earl's液に溶解したものに 10%透析血

清, 5 N NaOH (1. 2 ml/l)を加え,市販の 3

種の bu任er: Tricine (N -Tris (hydroxymethy J methylglycine), HEPES (N-2-Hydroxyethyl-

piperazine-N仁 2-ethanesulfonic acid), MES

(2 -(N -morpholino J ethanesulfonic acid)をNa+

イオン濃度が一定になるように加えることによ

り,それぞれ pH7. 83, pH 7. 45, pH 6.35に

調整した。

(ヒアルロニダーゼ活性の影響)

培養液 pHのキIj異により生ずる GAG合成活

性の変化は,各 pHにおけるヒアルロニダーゼ

活性の有無および強さによって影響されている

可能性が考えられる。 そこで各 pH培養液にて

培養 (23時間)した細胞を 3種の pHに調整し

た 0.5M Tris-HCl buffer内で粉砕して soup

としそれを標準ヒアルロン酸を基質として反

応させた後, 1000

C 2分間煮沸して酵素活性を

停止させた。 1.3%酢酸カ リウム含有 95%エタ

ノールを加え,遠沈にてヒアルロン酸を沈殿さ

せ, ヒアルロ γ酸分解産物であるオリゴ糖を含

む上清を取り除き,沈殿したヒアルロン酸を脱

水,乾燥粉末として,カルパゾール変法にてウ

ロン酸量を基準として定量した。すなわち soup

内に含まれていると思われるヒアルロニダーゼ

活性によって影響されることなく残留している

ヒアルロン酸量を測定することにより, ヒアル

ロニダーゼ活性の目安とした。また基質として

のヒアルロン酸を加え・ないものおよび酵素活性

を不活化した細胞についても同様に測定し,細

胞自身が合成するヒアルロン酸の量および細胞

蛋白の影響についても比般検討した。

5) SDS (Sodium dodecylsulfate)ーディスク

ゲル電気泳動法

細胞内に含まれるケラチンを証明する目的で

ディスクゲル電気泳動を試みた。アセトンにて

乾燥した培養細胞を蛋白濃度が最終的に 2mgl

mlになる様に 1%SDSショ糖溶液にて可溶

化した試料を用いて Fairbanksら14)の方法に

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内堀典保.扇平上皮癒のムコ多糖合成活性 - 59-

準じてディスクヶール電気泳動を行ーった。ガラス

管 (直径 5mmX長さ 75mm)に 5.6%ポ リア

クリルアミドゲルを入れ,ゲル ヒに試 *-'1をの

せ,その 上に指標色素を積層してガラス管 1本

当り 3mAの電流を流して泳動した。同時に分

子量既知の指標蛋白も泳動し比較 した。泳動後

ゲルをクーマジープールーにて染色し,得られた

蛋白バンドについてデンシトメーター宏 用い

て定量的に分析した。また同一試料について

Sunら1日の方法を用いて水溶性蛋白を除外し

たものについても同様に泳動を行い比較した。

N.結果

1. 形態学的所見

1) 通常の培養

培養細胞株 ST-10細胞は多角形で細胞相互

の接着性は強く,単層で旺腐な増殖を示し(Fig.

2) ,培養瓶いっぱし、に増殖すると所々重層 し,

その中心部には水泡様の構造が認められた。こ

の水泡様の1tllf立は粘液染色(アルシアンプル{

(pH 2. 5), PAS)および脂肪染色(ス ダン III,

オイルレ、ソ卜‘0)の何れにも染色されなかった

(Fig. 3)。またパパニコロウ染色にて胞休は淡

く燈染 し,細胞が重層 した部分には燈色に濃染

する角化物質が認められた。細胞を培養瓶ガラ

Fig.2. Cultured cells in the plastic bottle

Polygonal tumor cells proliferating are seen.

x 200

ス面よりシ ート状に剥ぎ取りパラフィン切片を

作製し,光顕的に観察すると,細胞は重層をな

しており,ガラス而に接した細胞は立方形を呈

していたが,上層の培養液に而する細胞は扇平

で, 11f構造の角化様物質を形成しているものが

A

Fig.3. Cultured cells (ST-l0). A 5mall blister・

like structure is observed. HE, X 350

Fig.4. Microscopic section of the cultured cells

scraped from a glass surface. Keratin formation

(arrows) is observed in the cells of upper layer

HE, X 350

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- 60ー

多数認められた (Fig.4)。

z.土刷M

メ〉、口

電顕的には培養細胞の大部分はユー クロマチ

ンに富む卵円形の核を有する多角球形の細胞よ

りなり, 細胞質内には多数の張原細線維および

desmosomeが観察された。 細胞が重層した部

分の表層細胞は扇平で.多数の張原細線維を有

L.,ガラス而に援する立方形を呈する細胞から

表層細胞に向けて扇平上皮としての分化のパタ

ーンが観察され,角化を伴な ろ分化型崩ムIL上l文

癌の性絡が保たれてし、ることを示すことができ

Tこ (Fig.5)。

2) 立体培}~

ST-10 細胞;土居養液表層近傍において特に

旺盛な桶1舶を示 し数層にわたって重層し, 制)胞

は扇平となり W;に配列してパパニコロウ染色に

て燈色に強染した。また通常の培養の場合と比

較すると ,かなり大きな水泡様構造が見られ

た。Le:ghton管中層では細胞官)支は疎であっ

たが,底tJGで‘a細胞2EJ度は大で,細胞l点小型で

立方形ないしやや紡錘形を皐しパパニコロウ

染色により緑色調を帯び未分化な形態を示して

いたの しかし時聞の経過とともに底部の制胞に

は変性傾向が強〈見られるようになり ,創n胞の

ゆっくりとした剥i~ff が観察されたG

組 織

,守 .,、よ 胃J

'‘ 司‘・白雨.. ・ill....

・・..ー・、a静 一 .:,; .,' 巴}

、ョ.-~ -.--'. -~.、ー

、", ..・~"・l~~. ~. 一戸 、、

・'句、・.一'・‘' 、 ・ ~ ~:..~・・一、 ・一

Fig.6. M巴niscusgradient culture (2 w巴eks).KB

cells degenerated and detached, but ST-10 cells

survived in the bottom zone. I-IE, X 2白 3

KB細胞は培養期聞を通じて ST-lO創11胞!こ

比べて哨殖速度は速く ,j者袈液表層近傍におい

て者切な噌舶と重層を示したが,パパニコロ ウ

染色にて燈染し/t.かった。また中層,下聞の細

胞は紡錘形を呈 し早期より 剥離傾向が見られ.

培訴を続ける うちに (約 1O~ 14 日 後)訓n胞は

培!i:液表層近傍のものを残して全て剥肉Ifしてし

まった (Fig.6)。

3) 線維芽細胞との混合培養

ST-10細胞{ま培蕗瓶ガラス間へ定着寸るの

がゆっ J りしているのに対し,もiVI-38細胞は

ST-10制}]包よ り早く定着するため,地主開始

後 2日目ぐらいまて'U.WI-38細胞の噌殖が優

勢であった。 3日目頃より定着した ST-10細

胞は活発に噌殖発育し 5日目にはf:!fi胞毛t族は

WI-38潟IiIJ包によりとり囲まれ敷石状とな り,

fiE胞巣状櫛造を12わせるパターンを 見ることが

できた。 WI← 38中[1l}J包は増殖発育するものの,

地殖辿!支が遅いため ST-10制胞にプJラス回を

奪われ,細胞密度!主概めて政でふった。また周

辺を WI-38細胞に取り閉まれ 島興状となった

ST-10細胞は早くから重層し,その中心部で

は創11胞は衡に配列し,あたかも線利一芽細胞を認

識しているかの様に中心部へ向けて分化の傾向

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内痢!IQ保:扇平上皮癌のムコ多糖合成活性 - 61ー

Fig. 7. ST -10 cells co-cultured with fibroblasts

(cell line も"II-38). PAS-positive material is

ob只ervedin blister lik巴 structures.P AS, X 180

が見られ,その後中心部に水泡様構造ができ,

その中に PAS反応強|場性の物質が認められた

(Fig. 7)。

4) 各 pH培茶液による培養

pH 7. 45, pH 7. 83の培養液にて格設した

ST-lO細胞は比較的胞体に富み, 細胞突起の

形成が明瞭に認められた。一方, pH 6. 35の培

主主液にてi音益した場合には,細胞は)J包体に乏し

く!亥は濃縮して変性傾向がうかがわれた。

2 生化学的性状

1)~i摘出腫蕩組織の GAG 含量

唾液腺に生じた扇平上皮癌摘出組織 (ST-10

細胞を得た組織)の GAG含量をウロソ酸量を

指標として測定した結果,この腫 療は 0.11μ

mole/ mg dry tissueのウロン般を含有し,当

教室において比較対照として検索した他の摘出

1]重湯組織(唾液腺多形性腺Jlill(0. 015~0. 056μ

mole/ mg dry tissue) ,腺様嚢胞f:~i (0. 048~

O. 056μmo!e/mg dry tissue) および唾液腺炎

(0. 016~0. 017μmole/mg dry tissue)等と比

較すると非常に多量の GAGが含有されている

ことが認められた (Table1)。

Table 1. Glycosaminoglycan content of various

tumor tissues examined.

S午盟国、uscell carcin白閣(parotidgl副首)

Plec:m:J.rphic aden四国(Salivaryglandl

Adenoid cystic carcina旧 (Parotidgland)

Sialadenitis (Sub町田ndibularglanヨ)

Scirrhous carcinoma (I3reast)

Fibroaden臼旧 ln七racanalicular(I3reast)

Scirrhous carcin臼田(St,明白chl

抽詞ullarycarcinana (StanachJ

0.11

0.015-0.056

0.048-0.056

0.016-0.017

0.02-0.03

0.08-0.11

0.017

0.006-0.01

Hexuronic acid content (p mole/!珂むytissue)

2) :l'音益細胞 (ST-10) の GAG合成活性

(通常の培養)

ST-10細胞の :H-グルコサミン取り込み活

性は極めて旺盛で(18000dpm/mg dry weight,

24時間),同時に測定した KB細胞および He

LaS3細胞(1.、ずれも ヒ卜扇平i二皮jii,ii1'1:1来)の

12~ 16 倍にお よんだ。 合成された GAGの約

60%は 24時間の間に培長液中に分泌されたが,

Table 2. Radi03ctivity of 3I-Habeled GAG.

Ce11 line Tota1 glycosaminαJ1ycan Hya1uron工C Heparan Den田 tan Chondroitin 4-

(tota1 act工vity) (dpn/dry weight町) acid sulfate sulfate and 6-sulfate

ST-10 radit.un 10575 (61も) 58.6も 1.83も 0.54も 0.32も

(17310) trypsl.n 4770 (28%) 21.8主 4.20も 1.40% 0.84も

ce11 1965 (11も) 8.91% 0.77も 0.88も 0.44も

KB radium 567 (38も) 31.2も 4.18% 1.90% 0.76も

(1480) trypsin 436 (30も) 10.2も 1.80も 6.90% 11.1も

ce11 477 (32%) 3.52% 1.92% 10.9% 15.7も

HeLaS3 radium 580 (54%) 52.9% 0.36% 0.47% 0.50も

(1067) trypsin 236 (22%) 9.46も 0.66も 3.74% 8.14亀

ce11 251 (24%) 1. 20も 2.16も 3.12% 17.5%

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HA Medlum

HA HA

{

Ad『

zn¥maOHM匡aMV}、向日制J明〉J明日

VO伺O酬旬雌町民

m ぷ込

'" 結- 62ー

Fig.8. E仔ects of hyaluronic acid and sulfated

GAG on glycosaminoglycan synthetic activity of

ST-10 cells.

HA蕗~, hyal uronic acid; se三, su!fated GAG.

cont., sodium chloride (8.5 mg/ml) was added

to the medium. ch. S., chondroitin sulfate (200

μg/ml) was added to the medium. H.A.,

hyaluronic acid (200μg/ml) was added to the

medium

4) 培養液 pHの変動による GAG合成活性の

変化

培養液の pHを変化させると,培養液中に合

成分泌される 3H-GAGの量は pHの低下に伴

ない著明に減少 し,pH 6. 35では pH7. 45の

約 1/10,pH 7. 83では pH7. 45の約1.5倍で

あった。そして Fig.9に示すようにその大部

分は通常の培養液の場合(約 pH7.4に調整し

たものを使用している。)と同様にヒアルロン

酸によって占められており, ヒアルロン酸への

取り込み活性は pH6. 35では pH7. 45の約

1/20, pH 7. 83では pH7. 45の約 1.5倍であ

った。細胞内に認められる 3H-GAGの量は培

養液中のそれに比して少ないため顕著な差異を

認めなかったが, pHの変動による細胞内ヒア

ルロン酸合成活性の変化は培養液中において見

られたものとほぼ同様の傾向を示した。一般に

硫酸化 GAGの合成活性はヒアルロン酸の合成

活性に比べて極めて低値であるため,細胞内,

培養液中のいす'JLにおいても pHの変動による

合成活性の変化はほとんど認められなかった

(Fig. 9)。 またこの細胞のヒアノレロニダーゼ活

性はわずかに認められるものの,それは合成分

泌するヒアルロン酸の量に比較して極めて微弱

であり,かつ pHの変動により影響されなかっ

た。

Table 3. Radioactivity of 3I-I-labeled GAG of

each zone in meniscus gradient culture of ST-

10 cells.

Sulfat且ヨGAG

Hyaluronic acid

百,ta1GAG

{dpn/,可 dryw,唱ight)

8773 3661 (42亀}

2279 (23も)

5112 (58も}upper wne

工£副'erzone 7611(77も)

3) 市販の GAG添加lによる影響

培養開始後 5日目において,市販のヒアルロ

ン酸 (0.02%)添加群では細胞増殖は対照群と

の聞に差異が認められなかったが, ヒアルロン

酸の合成活性は培養液, トリプシン上清,細胞

の 3成分のいずれにおいても上昇 し,特に培養

液中に合成分泌される 3H-ヒアルロン酸の量は

約 30% の増加を示したじコンドロイチン 6硫

酸 (0.02%)添加群では細胞の噌殖はやや促進

され, ヒアルロン酸合成活性も上昇したが,そ

の程度は ヒアノレロン酸添加群と比較すると低値

であった (Fig8)。培養開始後 10日目に は 細

胞はほぼ培養瓶いっぱいに増殖しており,細胞

増殖, GAG合成活性のL、ずれにおいてもほと

んど差異が認められなかった。

トリ プシン上清中にも約 30% の GAGが 認 め

られ,細胞表層の構成成分として合成されてい

ることが明らかとなった。また細胞内にも約

10% の GAGが認められた。組成別にみると

合成された GAGの約 90% はヒアルロン酸に

よって占められており(放線菌ヒアノレロニダー

ゼに より90% 以上が消化され,消化率により

補正を行L、同定を確実にした)。同時に少量のへ

パラン硫酸,デルマタン硫酸,コソドロイチン

4硫酸および 6硫酸も認められた (Table2)。

(立体培長)

立体培養を行い,上層部と下層部の細胞の

3Hーグル コサミ γ取り込み活性を比較した。乾

燥粉末あたりの GAGへの取り込み活性には上

下層の間に大きな差異を認めなかったが,組成

別に比較すると下層ではヒアルロン敵の合成活

性が高く, 上層の約 1.5倍であったのに対し,

上層では ヒアルロ ン酸の合成活性は低く,相対

的に硫酸化 GAGの合成活性が高くなっている

ことがわかった。ちなみに合成された G AG 中

でヒアルロン酸が占める割合は と層 で 58%,

下層で 77%であった (Table3)。

9891

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Med1 ...

印 L 出

50

o

o

h

W

3

3え

〈実

RmsOH

5 5剖

j IO

内痢典保 :扇平上皮癌のムコ多結合成活性

0.11 HA

"仇

pH

Fig.9. Effects of changes in pH of the medium

on glycosaminoglycan synthetic activity of ST-

10 cells.

HA鼠露呈 hyaluronicacid. Se三ヨ, sulfated GAG

5) ディスクケeル電気泳動による検索

ST-10, KB細胞の乾燥粉末を l%SDSにて

可溶化後,その主要蛋白組成を SDSーゲル電気

泳動法にて比較 した。 ST-lO,KB両側胞の主

要蛋白組成は互いによく類似 しともに分子量

39000~68000 の聞に主蛋白のバンドを認め,

当教室において検索したヒ ト胃癌由来の細胞,

線維芽細胞とは全く異なるパターンを示した。

ST-lO細胞では分子量 61000の所に主となる

蛋白パンドがあるのに対し, KB細胞 ではその

位置に一致したバンドはなく, 上方(分子量大)

および下方(分子量小)にややずれて 2つのパン

ドが見られた。また ST-lO細胞では分子量

66000のパン ト‘がより濃染しているのに対し,

KB細胞では分子量 68000の位置に濃いノえンド

が認められた (Fig.10)。デ ンシトメーターに

よるトレース図におL、ても,ST-10細胞と KB

細胞の蛋白パターン全体の波形はほとんど一致

していたが,分子量 39000~68000 の聞の蛋白

は ST-10細胞に多量に認められ, KB細胞の

それの約 2倍の値を示した。また水溶性蛋白を

除外して泳動した場合には蛋白ノご ントーはかなり

消失したが,分子量 39000~68000 の主蛋白の

バンドに:土全く変化は見られず, Sun ら15)が

keratin五lamentの構成蛋白と して報告 したも

のと同様の結果であった。

- 63

、 量:斗手/

-A

-8

2 3 Fig.10. Total proteins as analyzed by 5. 6% SDS

polyacrylamide gels

1, KB cells. 2, ST-10 cells.

3, molecular weight standard, A, serum albumin,

M. W. 68000 ; B, trypsin inhibitor, M. VV. 21500,

ム M目 W.61000.

V. 考 察

人癌の解析に;主人1~!;~1 *聞)胞の培養株を得るこ と

が重要で」ちり,数多 くの ceJllineの確立 が報

告されているが. ヒト唾液腺由来の細胞株を樹

立したとの報告は少な く.Kondoら16)(1971),

Okabeら17) (T3M-1J (1979) をみるのみであ

る。 仁1)控粘膜由来の扇王子上皮府高)Tリj包には KB細

胞(1955),Hep-318) (1954)があり, また最近

は名倉ら 19) (1973),堀越ら加 (Ca-22J(1974),

臼田ら 21) (HSC-l] (1975), 小池ら 22)(MK-l]

(1980)の報告が見られる。 l唾液!腺|主!来の扇平

上皮癌は稀なもの であ り, Thackrayら23)

Gorlinら2.0はそれは唾液腺の成熟した導管;J二

皮由来であるとしている。 さきに著者らは ヒト

耳下腺由来扇平上皮痛細胞の株化に成功しそ

の性状について報告した7) が,木研究において

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- 64ー 結合 組織

さらにこの細胞について GAG合成活性を中心

にして検討した。

ST-10細胞は invitroで張原細線維, desmo・

someを形成し,角化傾向を有して,分化型扇平

上皮癌細胞の性格を示すと同時に多量の GAG

を合成分泌する能力を有していることを明らか

にし得た。このよう注性状は手術摘出時の同腫

場組織の組織学的所見とも一致し,生体内にお

げる細胞の特性は invitroにおいてもよく維

持され,発揮されていると考えられる。光顕的

にはアルシアンブルー染色, PAS反応により

GAG ij:認め得なかった。それは ST-10細胞

が旺盛な分泌能を有し,合成した GAGの大部

分を短時間のうちに培養液中に分泌してしまう

こと,合成する GAGの主成分がヒアルロン酸

であり,固定の段階で溶出しやすいことなどが

考えられる O

Satohら25) Ishimotoら26)は培養細胞を

virusにより transformさせると細胞のヒアル

ロン酸合成活性が著明に高くなることを報告し

ているが,現在まで ST-10細胞には電顕的観

察によって vlrusは証明され得ないので, この

細胞の有する旺盛なヒアルロン酸合成活性が

vlrusの影響によるものであることを示すこと

ができず, この性状はこの細胞本来のものと考

えられる。

立体培養による実験では, ST-10細 胞 は 培

養液表層近傍において旺盛な増殖を示し多層と

なり,多数の核分裂像を示すとともに,底部に

おし、ても長期にわたってかなり旺盛な増殖を続

けていくことがわかった。一方,それに比して

KB細胞では短期日の聞に底部の細胞は変性脱

離し液表層付近にわずかに増殖している細胞

集団をとどめるにすぎなかった。 また ST-10

細胞では,上層部と下層部の細胞の比較におい

て総 GAG合成活性には差異が認められなかっ

たが, ヒアルロン酸合成活性は下層部の細胞に

おいてより旺盛であった。 Leightonら27,28)は,

KB細胞の立体培養において認められたような

培養液表層から底部にいたる層状変化(相異)

は培養液中の酸素分圧によって生ずるものであ

ると L、っている。このような立体培養に見られ

る現象は,血管周囲にある癌細胞の増殖は旺盛

でしばしば多数の核分裂像を認めるが,血管か

ら遠ざかるにつれて癌細胞の変性壊死傾向をみ

るようになる病理組織学的によく観察される所

見に似て興味深い変化である。また竹内ら 2川土

立体培養を用いた実験で,培養液中にヒアルロ

ン酸,あるいはへパリン, コンドロイチン硫酸

等を加えると底部層における細胞の変性剥脱が

防止されることを報告している。このような事

実に鑑み, ST-10細胞が KB細胞とはちがっ

て,管!底部において変性,壊死に陥ることなく

旺盛な増殖を続けることを示した本実験の成績

は, ST-10細胞が KB細胞に比して極めて多

量のヒアルロン酸を合成分泌し,底部におし、て

もこの性格が維持され,むしろ克進されている

ことによるものであることが充分に考えられ

る。さらに竹内ら 30-32)はコンドロイチン硫酸,

ヒアルロン酸が,マウスに移植されたエールリ

ヅヒ腫蕩細胞の増殖に好適な環境をもたらすこ

とを示している。

唾液腺由来扇平 k皮癌は古くから悪性度が最

も強いと言われている 23,24)0 ST-10細胞が多

量のヒアルロン酸を合成,分泌していることか

ら,それは唾液腺扇平上皮癌細胞は多量のヒア

ルロン酸を分泌し, このヒアルロン酸の旺盛な

水分保持能力および強い粘調性によって周囲間

質を浮腫状に膨化させ,組織抵抗を弱めるとと

もに,環境因子の影響を緩和し, さらに自らは

ヒアルロン酸によって栄養血管の乏しい部位に

おいても変性,壊死に陥ることなく旺盛な増殖

を続けることができるためであると考えられ

Q 。

ディスクゲル泳動の結果, ST← 10細胞には

KB細胞とほぼ一致した蛋白組成を認めること

ができ,同時に検索 Lた胃癌由来細胞,線維芽

細胞と[土全く異なる蛋白ノ之ターンが示された。

胃癌由来細胞の聞でもお互いに共通の蛋白パタ

ーンが認められたことから,同ーの種類,起源

の細胞は共通の特異的な蛋白によって構成され

ていると考えられる。また角化傾向の強い ST

10細胞は角化傾向のほとんどない未分化な

KB 細胞より分子量 39000~68000 の蛋白量が

約 2倍の値を示し, Sunら15)が報告した kera-

tin filamentsの構成蛋白(分子量約 60000),

および線維間物質の前駆体であるケラトヒアリ

ン頼粒の高分子蛋白群(分子量約 55000) とほ

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内堀典保:扇平上皮癌のムコ多糖合成活性 - 65ー

ぽ一致しているものと思われる。このことはこ

の細胞が初代培養から 6年有余を経ている現在

でも角化を伴なう良く分化した性状を有してい

ることを裏づけるものである。またこれは細胞

の角化機構を解明する上に貴重なモデルとなり

得ることを示している。

扇平上皮の分化(角化)と GAGとの関係に

ついては古くから組織化学的検索によって,異

常角化層においてヒアルロン酸が増加すること

から GAGが落屑機構に関与しているのではな

いかと考えられてき t::.o また近年 Kellyら33)

はヒアルロン酸が desmosome中に存在し,細

胞相互の接着性に影響をおよぼしていることを

示唆している。 GAG合成活性を検索した結果,

分化程度の高L、(角化傾向の強L、)ST -10細胞

がより未分化な KB細胞, HeLaS3細胞より多

量のヒアルロン酸を合成分泌していることを明

らかにし得た。このことからヒアルロン酸は扇

平上皮細胞としての構築を形成するのに,例え

ば細胞内微細線維を集束して太い張原細線維束

を形成したり, desmosomeを形成したりする

のに必要ではないかと考えられる O

ST-10細胞と線維芽細胞 (WI-38)の混合培

養の結果, ST-lO細胞の集族が WI-38細胞に

とり固まれ島興状となった所で‘は ST-10細胞

が早期に重層しその中心部の細胞が密に配列

しあたかも線維芽細胞を認識しているかのよ

うに中心部へ向かつて分化(角化)している所

見を認めたが, これは摘出腫蕩組織片に見られ

る組織像 (Fig.1)を仇 vitroで実際に再現し

たものと考えられ,大変興味まうる所見と思われ

る。

生体内でのIti重傷増殖の場においては多かれ少

なかれ炎症が惹起され,一般に腫疹増殖の場お

よび炎症の場においては局所組織液の pHの低

下が認められる 341 pHの異なる培養液中で培

養すると, ST-10細胞の GAG合成分泌能は

pHの低下に伴ない著明に低下し, 特にヒアル

ロン酸の培養液中への分泌量は極めてj同少した

が,硫酸化 GAG合成能は全体に低く, pHの

差による影響がほとんど認められなかった。培

養細胞に対する培養液 pHの影響を検索した報

告は数多くあり Ceccariniら35), Rubinら36)

は種々の培養細胞を用いて,細胞の増殖率,接

触抑制,移動性は培養液の pHによって強く影

響されることを示しまた Lieら37)は線維芽

細胞を用いて硫酸化 GAG合成に対する pHの

影響を検索した結果, ヒト正常線維芽細胞では

培養液の pH6. 8~8. 0の範囲において pHの

上昇に比例して硫酸化 GAGの合成が促進され

ることを見出しこのことは培養液の pHの上

昇により,細胞が接触抑制から解放されるため

であろうと報告している。 また Ishimotoら26)

は線維芽細胞の GAG合成能を検索しヒアル

ロン酸合成酵素は細胞膜表層近傍におL、て認め

られることを報告しているo ST-10細胞にお

いても培養液 pHの変動により,短時間のうち

にヒアルロン酸の合成,分泌が強く影響された

ことは, この細胞においてもヒアルロン酸は外

環境因子の影響を受けやすいような部位におい

て合成されていると推察される。

Bernfieldら38-41) I土日台児の唾液腺の発生の経

過において,唾液腺腺房上皮の基底側にまずヒ

アルロン酸を主体とする GAGが出現しその

GAG中へ好んで腺房上皮が伸展していくこと

を観察している。また最近 Toolら42)は細胞外

マトリックス成分の主体をなすヒアルロン酸は

胎児性組織の増生や成体における再生増生に関

与しており,同様に腫蕩細胞の周囲組織への侵

入はそこに増量したヒアルロン酸によって導か

れていると述べている。一般に癌細胞によって

産生される GAGは基底膜の形成,固有間質の

誘導や組織としての構築に重要な役割を演じて

いると考えられる。

VI. 結 E苦

ヒト耳下腺扇平上皮府由来培養細胞 CST-10)

の種々の培長条件下における形態学的性状の変

化および GAG合成能を中心とした生化学的性

状を検索して,次の成績を得た。

1. 組織学的観察により, この細胞は invitro

で旺主主な増殖を示すと同時に角化傾向を伴った

扇平上皮癌の性状を保有していることが誌めら

れTこO

2. 電顕的観察により,細胞質内に多数の

desmosomeおよび張原細線維が認められた。

3. 立体培義により,培養液表層近傍では任、盛

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- 66ー 結合 組織

なi曽殖がみられ.管下層でも変性剥離をみるこ

となく長期にわたる増殖がみられた。

4. 線維芽細胞と混合培養すると,早期より重

層して摘出腫蕩組織にみられた癌胞巣状構造類

似の組織像を形成すると同時に癌胞巣中心部に

PAS反応強陽性物質を認めた。

5. 摘出腫蕩組織において,他の腫場組織と比

較して多量の GAGが認められた。

6. ヒトの他の扇平上皮癌培養細胞 (KB,He-

LaS,)に比して, 12~16 倍におよぶ GAG 合

成活性が見られ,合成分泌される GAGの約 90

%がヒアルロン酸によって占められていること

を認めた。

7 市販のヒアルロン酸を培養液に加えること

により, ST-10細胞のヒアルロ γ酸 合成活性

は約 30%上昇することが示された。

8. 培養液の pH の低下に伴~', GAG合成活

性;土低下し,特にヒアルロン酸の合成活性ば著

明に低下し pE6. 35では pH7.45の 1/20に

激減するが,硫酸化 GAGの合成活性,;tpHの

変動によりほとんど影響されなL、ことが明らか

』こなっTこ J

9. 角化傾向を有しないヒトの他の扇平上皮癌

細胞 (KB,HeLaS:) に比して, 分子量 39000

~68000 の蛋白を約 2 倍量多く合むをことを明ら

かにした。

謝辞

稿を終るに臨み,終始御懇篤なる御指導と御校闘

を賜った名古屋大学医学部附属病院検査部,竹内 純

教授に対し衷心より謝意を表するとともに,研究に

際し終始かわらぬ御指導をいただし、た吉田正彦博士,

名古屋大学理学部生物化学教室,祖父江三津子博士

ならびに愛知学院大学歯学部病理学教室,佐藤恵美

子先生に深く感謝いたします。

文 f鉄

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名古屋保健衛生大学病理学教室

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Department of Pathology, Fujita-Gakuen University School

of Medicine, 1-98 Dengakugakubo, Kutsukake-cho, Toyoake,

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