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2016 3 5 : 宇宙特集 小さいブラックホールと大きいブラックホール 1 (市川幸平 2 ) 2016 2 11 日、Advanced Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory (aLIGO) が重力波の検出 を発表 [1] し、(少なくとも天文分野の) 世間を騒がせました 3 。重力波の検出は非常に素晴らしい結果で、一般相対 性理論はやっぱり揺るぎなく正しいのであることが証明されたわけです。それだけでなく、この結果は天文学的に 非常に面白い発見でもありました。それは、重力波の発生源です。aLIGO の発表では、「30」太陽質量ぐらいの「連 星」ブラックホール (以下、ブラックホールは BH と略す) がその起源でした。この驚きを少し分かち合うために、 宇宙に存在する BH の研究がどの程度まで進んでいるのか、少しおさらいしてみましょう。 1 BHって何? BHって、そもそもどういうものなんでしょう。それを感覚的に知ってもらうために、とある状況を考えてみます。 今、あなたは地上に立っていて、いつかはスーパーマンのように地球を飛び回り、可能であったら地球を飛び出し てみたいと考えているとします。地球を飛び出すためには、あなたは地球の重力ポテンシャルを振り切る必要があ りますので、その分の運動エネルギーが必要でしょう。高校生の時にやったことがありそうな問題ですね。これを 数式で表すと、 1 2 mv 2 GmM r (1) となります。ちなみに、G は重力定数、M は地球の質量、r は地球の半径 (なにせ、今あなたは地上にいるんです から)m はあなたの質量です。これを、あなたが地球を飛び出す時の初速度 v に関して解くと、 v 2GM r (2) と書けますね。G は定数、M r も今は地球の質量 (M =6 × 10 24 kg) と半径 (r =6.3 × 10 3 km) を入れてあげ ればいいので、v 11 km/s と求まります。つまり、最初に 11 km/s よりも速くジャンプすれば、地球の重力ポテ ンシャルを振り切ることができるわけです。 さて、この数式 (2) は今、2 つの変数に依存しています。質量 M と半径 r です。片方の変数を止めて片方を動 かすことは、簡単に言うと、密度 (M/r 3 ) を変えていることと同義ですね。今回は M は固定して、r をどんどん 小さくしてやりましょう。つまり、地球の質量を保ちながら、密度をどんどん大きくしてやるわけです。式 (2) 右辺の値はどんどん大きくなるので、v はあるときには光速 c に到達してしまいます。このときの r r s と書きま しょう。 c = 2GM r s r s = 2GM c 2 (3) このような、極限的な密度をもった状況では、どんな物質も光の速さでさえそこから脱出することはできません。そ のような半径 r s を我々は BH の半径 4 と読んでいます。実際の BH はおそらく空間の特異点となっているわけですが、 実質的には schwarzschild 半径より内側から情報は私たちにまったく届きませんので、その領域を BH だ、とエイヤっ 1 今回の記事の pdf 版は http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/ ichikawa/UPP273 ichikawa.pdf にあります。 2 国立天文台ハワイ観測所 特任研究員. 25 他参加. https://motigomeman.wordpress.com/ 3 いわゆるふだん科学に興味を持たない人々がどの程度騒いだかは自明ではないですが、日本でも複数の大手新聞の一面にでていたらしいの で、世間と言っても問題ないかも。 4 正確には、schwarzschild 半径 1

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2016年 3月 5日: 宇宙特集

小さいブラックホールと大きいブラックホール1

(市川幸平2)

2016年 2月 11日、Advanced Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory (aLIGO) が重力波の検出を発表 [1]し、(少なくとも天文分野の) 世間を騒がせました3。重力波の検出は非常に素晴らしい結果で、一般相対性理論はやっぱり揺るぎなく正しいのであることが証明されたわけです。それだけでなく、この結果は天文学的に非常に面白い発見でもありました。それは、重力波の発生源です。aLIGOの発表では、「30」太陽質量ぐらいの「連星」ブラックホール (以下、ブラックホールは BHと略す) がその起源でした。この驚きを少し分かち合うために、宇宙に存在する BHの研究がどの程度まで進んでいるのか、少しおさらいしてみましょう。

1 BHって何?

BHって、そもそもどういうものなんでしょう。それを感覚的に知ってもらうために、とある状況を考えてみます。今、あなたは地上に立っていて、いつかはスーパーマンのように地球を飛び回り、可能であったら地球を飛び出してみたいと考えているとします。地球を飛び出すためには、あなたは地球の重力ポテンシャルを振り切る必要がありますので、その分の運動エネルギーが必要でしょう。高校生の時にやったことがありそうな問題ですね。これを数式で表すと、

12mv2 ≥ GmM

r(1)

となります。ちなみに、Gは重力定数、M は地球の質量、rは地球の半径 (なにせ、今あなたは地上にいるんですから)、mはあなたの質量です。これを、あなたが地球を飛び出す時の初速度 vに関して解くと、

v ≥√

2GM

r(2)

と書けますね。Gは定数、M も rも今は地球の質量 (M = 6 × 1024 kg) と半径 (r = 6.3 × 103 km) を入れてあげればいいので、v ≥ 11 km/sと求まります。つまり、最初に 11 km/sよりも速くジャンプすれば、地球の重力ポテンシャルを振り切ることができるわけです。さて、この数式 (2) は今、2つの変数に依存しています。質量M と半径 rです。片方の変数を止めて片方を動

かすことは、簡単に言うと、密度 (∝ M/r3) を変えていることと同義ですね。今回はM は固定して、rをどんどん小さくしてやりましょう。つまり、地球の質量を保ちながら、密度をどんどん大きくしてやるわけです。式 (2) の右辺の値はどんどん大きくなるので、vはあるときには光速 cに到達してしまいます。このときの rを rsと書きましょう。

c =√

2GM

rs⇔ rs =

2GM

c2(3)

このような、極限的な密度をもった状況では、どんな物質も光の速さでさえそこから脱出することはできません。そのような半径 rsを我々はBHの半径4と読んでいます。実際のBHはおそらく空間の特異点となっているわけですが、実質的には schwarzschild半径より内側から情報は私たちにまったく届きませんので、その領域をBHだ、とエイヤっ

1今回の記事の pdf 版は http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/∼ichikawa/UPP273 ichikawa.pdf にあります。2国立天文台ハワイ観測所 特任研究員. 夏 25 他参加. https://motigomeman.wordpress.com/3いわゆるふだん科学に興味を持たない人々がどの程度騒いだかは自明ではないですが、日本でも複数の大手新聞の一面にでていたらしいの

で、世間と言っても問題ないかも。4正確には、schwarzschild 半径

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と言ってしまうわけです5。地球だとこの半径は、だいたい 5 mmくらい。ちなみに、太陽質量M� = 2×1030 kg6だとだいたい 3 kmくらいになります。みなさんも、パワーがあったら、地球をギュッと 5 mmくらいにまで縮めてみてください。そうすれば、地球も BHになりますよ。

2 宇宙でのBHの作り方さて、BHを作りたかったら、ものをギュッと縮めればよい、ということがわかりました。問題は、ものをギュッと縮める機構は、宇宙に本当にあるのか、ということです。実はいくつか方法があるのではないかと言われていますが、少なくとも 1つ、現在知られている BHの作成方法があります。それは、大きい恒星の人生の最期に BHができる、というシナリオです。これは、恒星7 の質量が > 8M� の場合に起きる現象で、恒星の一生の最期におきます。恒星の内部では高温高密度な環境が整っているため、水素は核融合を起こし、ヘリウムになることができます。基本的に、鉄より軽い元素は核融合を行ったほうが安定な状態にいられるため、核融合後はエネルギーを放出します。このエネルギーが恒星を明るく輝かせているわけです。太陽のような比較的小さい恒星は水素を燃やし尽くした後、ヘリウムを燃やし始めた後、放射圧8 による膨張が収まらず、中心核に白色矮星のみを残して太陽のガスはやんわりと外側に放出されていくことになってしまいます。その一方で、今回考えているような> 8M�の恒星は、自己重力が大きいため、輻射圧に負けず、恒星内部で核融合を鉄まで行うことができます。鉄以降は核融合でエネルギーを放出することができなくなり、ある時を迎えると輻射圧がきかなくなり、外向きの力が得られなくなるため、自己重力により恒星はどんどん潰れていきます。中性子の縮退圧よりも自己重力が勝つ場合9、恒星の質量が 1点にまで収縮され、BHが作られるという寸法です。

3 BHを見るBHは大きい星を用意して、超新星爆発を起こしてやればよいことまでわかりました。では、天文学者はどうやってBHを見ているのでしょう? 最も簡単な方法は、BHが恒星と連星をなしている場合10 です。もし BHによる潮汐力が恒星の重力に打ち勝つ場合、恒星表面からガスが剥ぎ取られ、BHにガスがどんどん落ちていきます。それがガス円盤11を作りだし、互いのガスの摩擦を起こし始めます。摩擦が起きると熱が発生するので、光が出ます。それを我々が見ることで、BH (のまわりのガス) を観測することができます (図 1左参照)。降着円盤の温度は BHの質量に依存しますが、10M� くらいだと、だいたい 1000万度くらいになって、これはだいたい X線で明るく輝きます。X線衛星でこのような BH連星を観測すれば、ガスの運動や温度の情報を手に入れることができます12。また、X線の変動から X線放射領域の制限なども行えますね。図 1右にまとまっているように、2015年末時点で、BH連星は 20個ほど見つかっているのですが、そのうち最も質量が大きい BHで、だいたい 20 M� 程度くらいだろう、と思われています [5, 6]。このような BHを、我々は恒星質量 BH、と呼んでいます。実際、20 M�以上の BHを作るためには非常に大きな恒星を用意する必要がありますが、近傍宇宙ではそのような恒星は非常に作りづらいこと

5ここでの説明は本当は正確ではなくて、今回のように重力がものすごい効いてくるような領域では、一般相対性理論の環境できちんと計算をしないといけません。さらに言うと、(するどい人は気づいていると思いますが) 今回の説明では、初速度 v が cに到達するような半径になると、無限遠に抜けだすことができないということを言っているだけであって、実はその領域から一歩も出られない、というわけではありません。そういう意味でも、正確な説明は一般相対性理論で行われる必要があります。どうすればよいかというと、具体的には、アインシュタイン方程式を解く必要があります。実は、その計算をしても同じ schwarzschild 半径が出てきます。簡単にかいつまんで話すと、相対論では光の速度は不変で、その代わり、光子のエネルギーが小さくなる、という考え方をします。光子のエネルギー E は振動数を v、波長を λ、プランク定数をh とおいて、E = hν = hc/λ で書ける。場所 R で発した振動数 ν0 の光は無限遠ではどのように観測されるかというと、

ν∞ = ν0

r

1 −rs

R(4)

で書き表せます。光が無限遠ではギューっと伸ばされてしまう、つまり、エネルギーが 0 になってしまう条件から、ν∞ = 0 ⇔ R = rs となります。また、より細かいことを言うと、実はこれは BHのスピンが 0の時の話であって、スピンが変化すると、ここで言っている BHの半径も変化します。Kerr BH などで検索してみてください。

6太陽質量はなぜかM� と書きます。天文学で最もよく使われる質量の単位の一つです。7これは余談ですが、星といった場合、英語での “star” を指すので、惑星 (planet) は含みません。天文学者は惑星のことは必ず「惑星」と

言うはずです。惑星のことを「星」と言っている天文学者がいたら、その人は 99.9%モグリでしょう。8中心から外向きにかかる圧力です9元の恒星の質量がいくら以上であれば BHになるかは、まだ議論の決着がついていないトピックです。元の恒星の質量が 18–20 M� を境に

それ以上であれば BH になるという話もあります [3] が、だいたいの場合、> 40M� なら、ほとんど BH になるだろうと言われています [4]。10これを、BH 連星、英語では black hole binary と言います。binary black hole ではないというところに注意してください。11ガスが落ちてきてできるので、降着円盤といいます。12このように BH 連星、広く言えば X 線連星をターゲットにして降着円盤の観測を行っている人が湧源にもいまして、24 回参加の志達さんなどはこのあたりのエキスパートです [7, 8]。

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Figure 1: (左図) 降着円盤の想像図. c©NASA/Dana Berry, SkyWorks Digital. (右図) 現在見つかっている恒星質量 BH候補の質量推定 (Orosz氏のウェブサイトより抜粋)

が知られています。なぜ作りづらいかというと、非常に質量が大きな恒星は輻射が強く、恒星風を活発に出してしまうため、恒星表面のガスも大きく剥ぎとってしまいます。そのため、結局質量がどんどん小さくなってしまうセンスに働いてしまうからです。

4 大きいBH

さきほど紹介した BH連星以外にも、BHは観測されているのでしょうか。実は私達が住んでいる天の川銀河の中心にも BHが存在することが知られています。この BHの場所と質量は銀河中心の星の運動から求められていて、天の川銀河中心の複数の星の運動を数年に渡り観測し続けると、とある重心のまわりを運動することがわかってきました (図 2参照)。その重心には何も明るい天体は存在しないけれども、星の運動から、非常にコンパクトな領域に大きな質量を持った天体が存在しないといけません。これは BHくらいしか説明できないのですが、その質量はなんと 4 × 106 M� と非常に大きいものであることがわかりました [9]。このように、星13の力学的運動を元に BHの質量を求める方法は他の銀河にも数多く適用されていて [10]、その分布を調べてみたところ、銀河の中心に存在する BHの質量はおしなべて大きく、だいたい 106−10 M�であることがわかってきました。このような BHを我々は超大きな BHということで、英語で “Super-Massive BH”、通称 “SMBH”と呼んでいます。SMBHがどのようにしてできたのかは、天文学で未だ解けていない大問題の一つです。ちなみに、私の主な研究対象もこの SMBHで、特に、SMBHにまさしくガスが落ち込んでいる活動銀河核14 というのをターゲットにしています [11, 12, 13, 14]。要は、SMBHが今まさしく太っている現場を見ることで、SMBHの成長率などを探ろうという話ですね。

5 重力波の起源まとめると、BHにはだいたい最大で 20 M�程度の恒星質量 BH、そして、質量が 106−10 M�にも及ぶ SMBHの二種類が見つかっています。その一方で、その間を埋める質量の BHはまだ robustには見つかっていませんでした15。ここで、あらためて重力波の起源が何だったかを思い出してみましょう。今回の重力波は、30 M�程度の BHが合体して、だいたい 60 M� 程度の BH になった時に出てきたのでした。今回の重力波のシグナルは周期、振幅の絶対値、そして振幅の減少率まで綺麗に出ており、これは一般相対性理論から予想される計算と見事に一致します。simulationではなく計算なので、もうかなりカッチリと決まっています。ですので、この BHの質量に関しては、かなり揺るがないでしょう。つまり、今回の重力波検出は、ただの検出16にとどまらず、今までで最も大きな

13やガス14英語では Active Galactic Nuclei; AGN と呼んでいます。15まだ天文学者の中で議論が尽きないですが、105 M� 程度の SMBH は、幾つかの論文で報告があります [15, 16]。16もちろん、検出単体だけで、物理学的にすばらしい結果であるのは言うまでもありません。

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Figure 2: Keck望遠鏡近赤外線 K バンド で観測された銀河系中心にある SMBH周辺の星の運動の軌跡。銀河中心は塵がたくさん存在して、かつ星が込み入っている領域である。近赤外線は可視光にくらべて塵の吸収に強く、大型望遠鏡であるKeck望遠鏡を用いることで、遠くの込み入った領域も空間的に分解して観測することができる。S0-XXと表示されているのが星で、それぞれの色の線が時間ごとに動いた軌道の軌跡を表している。中心に書かれている星印を重心にして、星が運動している様子が見て取れる [9]。

恒星質量 BHの (非常に robustな) 発見にもなったわけです。このような大きな BHはなかなか作ることが難しいと言われていたのに、です。それだけでなく、それが 2つあって連星をなしているわけです17。この 2つが天文学者の私としては、驚きのポイントだったのです。

どうやってそのような大きな恒星質量 BHを作ったかについては、一つ有力な説があります。それは、金属量が少ない星を用意すると、大きい BHが作れるのではないか、という説です。さきほど、恒星は大きくなればなるほど、恒星風が強くなって、表面のガスを剥ぎとってしまうと言いましたが、このガスの剥ぎ取られ具合は、ガスの組成に強く依存します。ガスに断面積が大きい金属元素が多く含まれている場合、輻射に対して多くのガスが剥ぎ取られますが、ガスがほとんど水素だけになってしまえば、断面積が非常に小さいため、輻射が強くなろうがガスにはぶつからずにそのまま通り過ぎることができるわけです。そのような金属量が少ない環境は私達が住んでいる近傍宇宙では実現が難しく、宇宙空間がまだあまり汚染されていない、宇宙誕生直後の遠方宇宙に行かないといけません。そのような金属がほとんど含まれていない、宇宙誕生最初に生まれる星を pop III starと我々は呼んでいます。このような pop III starで大きな恒星を作り、恒星風の影響で質量が削られない状況であれば、今回のような BHは作ることができるだろうと思われています (図 1)。連星 BHがどのようにしてできているのか、そして、「いつ」連星 BHが作られたのか、というのも今後面白い

展開を見せるポイントでしょう。連星 BHが宇宙年齢以内に合体するためにはいくつかの条件を満たす必要があり、今回の観測では少なくとも宇宙に一つはそういうイベントがあることが示されたわけで、おそらく今後も aLIGOでどんどんそういうイベントが見つかってくるのでしょう。重力波天文学がいよいよ始まったのです。

References

[1] Abbott, B. P., Abbott, R., Abbott, T. D., et al. 2016, Physical Review Letters, 116, 061102

[2] Abbott, B. P., Abbott, R., Abbott, T. D., et al. 2016, ApJL, 818, L22

[3] Fryer, C. L., Belczynski, K., Wiktorowicz, G., et al. 2012, ApJ, 749, 91

[4] Ugliano, M., Janka, H.-T., Marek, A., & Arcones, A. 2012, ApJ, 757, 69

[5] Farr, W. M., Sravan, N., Cantrell, A., et al. 2011, ApJ, 741, 103

17今回のように、2 つの BH が連星をなしている場合は、BH binary ではなく、binary BH といいます。

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Figure 3: (左図) 太陽の金属量 Z� に対する恒星の金属量 Z の比と、作成可能な BH質量Mbh,max. (右図) 元となる恒星の質量MZAMSと作成される BHの質量Mrem. 金属量 (metallicity) が小さくなればなるほど、Mredが大きくできることがわかる (Abbot et al. 2016bより抜粋)。

[6] http://mintaka.sdsu.edu/faculty/orosz/web/

[7] Shidatsu, M., Ueda, Y., Tazaki, F., et al. 2011, PASJ, 63, S785

[8] Shidatsu, M., Ueda, Y., Nakahira, S., et al. 2013, ApJ, 779, 26

[9] Ghez, A. M., Salim, S., Weinberg, N. N., et al. 2008, ApJ, 689, 1044

[10] Kormendy, J., & Ho, L. C. 2013, ARA&A, 51, 511

[11] Ichikawa, K., Ueda, Y., Terashima, Y., et al. 2012, ApJ, 754, 45

[12] Ichikawa, K., Imanishi, M., Ueda, Y., et al. 2014, ApJ, 794, 139

[13] Ichikawa, K., Packham, C., Ramos Almeida, C., et al. 2015, ApJ, 803, 57

[14] Ichikawa, K., Ueda, J., Shidatsu, M., Kawamuro, T., & Matsuoka, K. 2016, PASJ, 68, 9

[15] Greene, J. E., & Ho, L. C. 2007, ApJ, 667, 131

[16] Baldassare, V. F., Reines, A. E., Gallo, E., & Greene, J. E. 2015, ApJL, 809, L14

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