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1 シリカコーティングによって安定化さ れた高分散性金ナノ粒子の開発 山梨大学 生命環境学域 生命農学系 准教授 新森 英之

シリカコーティングによって安定化さ れた高分散性 …...2 金ナノ粒子 Takonami et al. Anal. Chim. Acta, 2012, 716, 76. 表面プラズモン共鳴 我々が合成した多様な金ナノ粒子

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シリカコーティングによって安定化された高分散性金ナノ粒子の開発

山梨大学 生命環境学域 生命農学系

准教授 新森 英之

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金ナノ粒子

Takonami et al. Anal. Chim. Acta, 2012, 716, 76.

表面プラズモン共鳴

我々が合成した多様な金ナノ粒子

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3

0

0.5

1

1.5

300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300

Absorb

ance

Wavelength [nm]

金(Au)ナノロッドの特徴ある光学特性

ナノテクジャパンHPより

我々が合成した合成したAuナノロッドの光吸収

生体の第1光学窓 第2光学窓

生体の第1の窓 650~1000nm第2の窓 1000~1400nm

optical window

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Auナノロッド

Auナノロッドの応用

・バイオセンサー・医療への応用・電子デバイスへの応用

・光学材料への応用 ・触媒への応用

バイオイメージングイムノアッセイ

光増感反応表面増強ラマン散乱蛍光増強

フォトニック結晶

ナノワイヤーナノ配線チップ

ナノザイム

Glucose

Gluconate

+ H+

O2

H2O2

構造色

構造や物理的性質によって様々な応用が期待される

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本技術の概要

本技術では分裂型光吸収を持つ異方性金ナノロッドの界面シリカコーティングにより、安定化された高分散性微粒子材料を開発した。本技法の微粒子界面でのゾルゲル過程によるシリカのエピタキシャル成長反応は容易な手法であり、コストパフォーマンスが高い。

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従来技術とその問題点

具体的な問題点

・分散保護剤が必要(界面活性剤、ポリマー等)

・機能化を目指した硫黄化合物の修飾による界面の乱れ

・汎用性溶剤に対して溶解できない(殆どが水媒体のみ)

・保護剤や界面官能基による物性の変化

etc.

既にAuナノロッドの調製法(シード媒介成長法等)は確立されているが、多溶媒分散性が低い取り扱いや汎用性が困難

等の問題がある。

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 従来技術の問題点であった、低分散性を改良することに成功した。

• 個別にAuナノロッドをコーティングするために、ナノ粒子分野での最大の問題であった凝集を防ぐことができる。

• 保護層が無機材料(シリカ)であるが故に、安定性は向上し、粒子界面の乱れを防ぐ。

シリカコーティングされた金ナノロッド

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金ナノロッド(AuNRs)のシリカコーティング法

AuNRs SilicaAuNRs

TEOS, NaOH

1 day, 25℃

MeOHaq.

Au Au

シリカ層

53.1±5.2 nm,17.8±2.3 nm 46.9±13.7 nm,17.8±2.3 nmSilica thickness:20.6±1.7 nm

TEOS:Tetraethyl orthosilicate

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各種媒体へのコロイド分散性

AuNRs

SilicaAuNRs

多様な溶媒条件下で汎用的に取り扱いが可能

[Au] = 0.88 mM [Au] = 0.86 mM

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熱安定性及び乾固再利用

SilicaAuNRsを60℃で加熱した際の変化(メタノール中)

1. 乾固2. 再分散

加温殺菌耐久性を有するバイオ系薬品等への応用が期待

保存・保管が容易となり、消費期限が飛躍的に上昇する。

(メタノール中)

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0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 100

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0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

[ Au ] / mM

高濃縮が可能なシリカコート金ナノロッド

Abs

.

Abs

.[ Au ] / mM

in H2O in MeOH

AuNRs

AuNRsSilicaAuNRs

SilicaAuNRs

SilicaAuNRsでは光学特性を維持した状態で濃縮が可能

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Auナノロッドをシリカコーティングすることによって

・多溶媒への分散が可能・熱安定性を獲得・乾固後の再分散性を有する・高濃度分散が可能

という効果が確認できた。

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想定される用途

• 本技術により、金ナノ粒子の多種多様な媒体中で取り扱いが可能となる。このことは、様々な分野で汎用的な金ナノ粒子利用にメリットが大きい。

• 長期保存性あるいは加温殺菌耐久性を持った医薬品・診断薬への適用に期待される。(PDT、ハイパーサーミヤ、DDS等)

• 上記以外に、光デバイスやバイオセンサーの素材としても期待が持てる。(SERS、蛍光増強、光音響効果等)

• また、達成された凝集抑制や濃縮効果に着目すると、高濃度塗料の分野や用途に展開することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

• 現在、主に金微粒子についてシリカコートが可能なところまで開発済み。しかし、他金属種の微粒子への適用の可能性が未解決である。

• 今後、金以外の金属ナノ粒子について実験データを取得し、シリカコーティングする場合の条件検討を行っていく。

• 実用化に向けて、シリカ被膜の均一性の精度を更に向上させ、様々な形状の金属ナノ粒子への応用技術を確立する必要もあり。

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企業への期待

• 未解決の他金属種への応用については、様々な金属ナノ粒子調製により検討できると考えている。

• 微粒子合成の技術を持つ、企業との共同研究を希望。

• また、微粒子系バイオセンサーや診断・治療薬及び、塗料や触媒を開発中の企業、金ナノ粒子の発展的応用を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :シリカコーティングされた高分散性金ナノロッドの合成方法及び合成された金ナノロッドの分散液

• 出願番号 :特願2017-022728

• 出願人 :山梨大学

• 発明者 :新森英之、徳丸佳奈、望月ちひろ

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お問い合わせ先

山梨大学

研究推進・社会連携機構

社会連携・知財管理センタ―

産学連携コーディネーター

白井 隆之

TEL 055-220-8759

FAX 055-220-8757

e-mail [email protected]